(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで,従来の位置測定技術において,端末装置(電波識別リーダー)は,基地局(ビーコン装置)との相対的な位置関係を測定して自己端末の位置を求めることは可能であるものの,自己端末と他の装置等との位置関係を求めることはできなかった。特に,端末装置の近傍に無線信号を発信する無線タグが位置している状況において,端末装置が,自己端末の位置だけでなく,その無線タグの位置を正確に測定することができれば様々な場面で有用である。しかしながら,従来の位置測定技術において,端末装置が無線タグの位置を測定することは出来ないものであった。
【0006】
そこで,本発明は,端末装置が自己端末と無線タグとの位置関係を効率的に測定することのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の発明者らは,上記課題の解決手段について鋭意検討した結果,携帯端末が,複数の基地局から発信されている無線信号に基づいて自己端末の位置を特定するとともに,基地局と無線タグの間の距離に関する情報を基地局から受け取ってその無線タグの位置を特定することで,GPSなどを利用しなくても自己端末と無線タグとの位置関係を求めることができるようになるという知見を得た。そして,本発明者らは,上記知見に基づけば,従来技術の課題を解決できることに想到し,本発明を完成させた。具体的に説明すると,本発明は以下の構成を有する。
【0008】
本発明の第1の側面は,端末装置に関する。端末装置は,基地局間距離測定部と,自己端末位置特定部と,タグ位置特定部とを有する。基地局間距離測定部は,各基準位置に設けられた複数の基地局が発信する無線信号に基づいて,当該基地局と自己端末の間の第1距離を測定する。自己端末位置特定部は,上記のようにして求めた第1距離に基づいて,自己端末の位置を特定する。タグ位置特定部は,少なくとも,無線タグが発信する無線信号を受信した基地局によって送信された当該基地局と無線タグの間の第2距離に関する情報に基づいて,当該無線タグの位置を特定する。
【0009】
本発明には様々な利用形態がある。例えば,本発明は,動物の観察に利用することができる。具体的に説明すると,観察対象となる動物(対象物)に無線タグを取り付けておけば,動物の位置を端末装置にて即座に確認することができる。また,例えば,所有物に無線タグを取り付けておくことで,それを紛失した場合であっても,端末装置が無線タグからの無線信号を受信可能な範囲にあれば,端末装置にてその紛失物の位置を確認することができる。また,例えば,歩行者に無線タグを持たせ,端末装置を車両に搭載し,基地局を交差点や信号機の周囲に配置しておけば,車両の端末装置において歩行者の位置を確認できるため,歩行者と車両との衝突回避にも利用することができる。ただし,本発明はこれらの利用形態に限定されず,様々な商品やサービスに適用することができる。
【0010】
本発明において,端末装置は,タグ間距離測定部をさらに有することが好ましい。タグ間距離測定部は,無線タグが発信する無線信号に基づいて,当該無線タグと自己端末の間の第3距離を測定する。端末装置において無線タグから無線信号を受信することにより,自己端末と無線タグとの位置関係をより高い精度で求めることが可能になる。
【0011】
本発明において,無線タグが発信する無線信号には,当該無線タグが取り付けられた対象物固有の識別情報が含まれていることが好ましい。また,端末装置は,撮影部と,撮影対象推定部をさらに有することが好ましい。撮影対象推定部は,撮影部による撮影時に端末が無線タグから所定距離範囲内にある場合に,当該無線タグが取り付けられた対象物の撮影に成功したと推定する。この実施形態は,移動する対象物(動物など)の観察に特に有用である。すなわち,対象物の近くで端末装置による撮影が行われたときには,その対象物の撮影が行われたと推定できる。通常,撮影画像を解析してその画像内に対象物が含まれているかどうかを判断する必要があるが,上記実施形態によれば,このような端末装置での処理を省略することができる。
【0012】
また,本発明において,端末装置は,撮影部による撮影方向を特定する撮影方向特定部をさらに有していてもよい。この場合に,撮影対象推定部は,撮影部による撮影方向が無線タグの存在方向と一致している場合に,当該無線タグが取り付けられた対象物の撮影に成功したと推定することもできる。また,例えば,撮影対象推定部は,撮影時に,端末が無線タグから所定距離範囲内にあり,かつ,撮影部による撮影方向が無線タグの存在方向と一致している場合に,当該無線タグが取り付けられた対象物の撮影に成功したと推定してもよい。
【0013】
本発明の第2の側面は,コンピュータプログラムに関する。本発明に係るコンピュータプログラムは,スマートフォンなどの携帯情報端末を,上記した第1の側面に係る端末装置として機能させる。コンピュータプログラムは,携帯情報端末に予めインストールすることもできるし,インターネットを通じて携帯情報端末にダウンロードすることもできる。
【0014】
本発明の第3の側面は,位置測定システムに関する。本発明に係るシステムは,端末装置,無線タグ,及び各基準位置に設けられた複数の基地局を備える。基地局は,無線タグが発信する無線信号に基づいて,当該無線タグと自己基地局との間の第2距離を測定し,第2距離に関する情報を端末装置へと送信する。端末装置は,基地局が発信する無線信号に基づいて,当該基地局と自己端末の間の第1距離を測定し,第1距離に基づいて自己端末の位置を特定し,少なくとも第2距離に関する情報に基づいて,当該無線タグの位置を特定する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば,端末装置において自己端末と無線タグとの位置関係を効率的に測定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下,図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。本発明は,以下に説明する形態に限定されるものではなく,以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜変更したものも含む。
【0018】
図1は,本発明に係る位置測定システム100の実施形態を示している。また,
図2は,位置測定システムを構成する各種装置の機能構成を示している,
図1及び
図2に示されるように,本実施形態に係る位置測定システム100は,無線タグ10と,基地局20と,端末装置30と,管理サーバ40とを備える。なお,管理サーバ40は必須の構成ではないため,省略することも可能である。
【0019】
図1に示されるように,本実施形態において,位置測定システム100は動物の管理に利用される。具体的に説明すると,無線タグ10は,観察の対象物である動物に取り付けられている。また,基地局20は,動物を飼育しているエリア内に複数設置されており,例えば樹木などに取り付けておくことができる。また,端末装置30は,本システムのユーザによって所持される。各基地局20は,基準位置に設けられており,この基準位置の位置情報(位置座標)は既知である。
【0020】
端末装置30は,各基地局20から発せられたビーコンなどの無線信号を受信し,その受信強度を求めることで各基地局20との距離を測定したうえで,三角測量法などによって自己の位置情報を特定する。さらに,各基地局20は,無線タグ10から発せられているビーコンなどの無線信号を受信し,その受信強度を求めることで無線タグ10との距離を求める。基地局20と無線タグ10との間の距離は,各基地局20から端末装置30へと伝達される。そして,端末装置30は,基地局20と無線タグ10との間の距離に関する情報を利用し,あるいはこれに加えて自己端末と無線タグ10との間の距離に関する情報を利用して,無線タグ10の位置を特定する。このようにすれば,例えば端末装置30の表示部に,自己端末と無線タグ10との位置関係,具体的には無線タグ10までの距離や無線タグ10が存在している方向を示すことが可能となる。以下,位置測定システム100の各部の構成について詳しく説明する。
【0021】
無線タグ10は,位置を特定する対象物に取り付けられる電子機器である。無線タグ10は,例えばBluetooth(登録商標)などの無線信号発信機やRFID(Radio Frequency IDentification)によって実現されるものであり,電磁界や電波等を用いた非接触型の近距離無線通信によって,基地局20や端末装置30との交信を行う。本発明において,無線タグ10の回路は,例えば,パッシブ型,セミパッシブ型,又はこれに準ずる構造を有するものを採用できる。
【0022】
無線タグ10は,基本的に,発信部11とICチップ12とを備える。ICチップ12は,無線タグ10またはそれが取り付けられた対象物固有のID情報(タグID)を記憶した記憶部を有しており,このタグIDを含む無線信号を発信部11を介して発信する。例えば,パッシブ型の無線タグ10は,基地局20や端末装置30から発信された電波を受信し,受信した電波を,アンテナのコイルやショットキーダイオードにより起電力に変換し,この起電力によってICチップ12を起動する。ICチップ12は,起動すると,記憶部に保持されている固有のタグIDを読み出し,発信部11を介して,基地局20や端末装置30に対し,記憶部から読み出した固有のタグIDを発信する。パッシブ型の無線タグ10は,電波を起電力に変換して作動するものであるため,電源(例えば電池)が不要であり,製造が安価であるとともに,ほぼ恒久的に使用可能であるというメリットがある。また,セミパッシブ型の無線タグ10も使用可能である。セミパッシブ型の無線タグ10は,基地局20や端末装置30から発信された電波を受信し,これを契機として内部の電源を作動させる。そして,電源から得た電力を利用して,ICチップ12を起動し,基地局20や端末装置30に対して,記憶部に記憶されている固有のタグIDを発信する。無線タグ10から発せられた無線信号は,例えば半径1m〜10m程度まで到達させることができ,その無線信号の到達範囲は適宜調整可能である。なお,無線タグ10,基地局20,及び端末装置30の間の近距離無線通信は,Bluetooth(登録商標)などの公知の規格に従って行えばよい。
【0023】
また,無線タグ10は,心拍センサ
13や体温センサ
14などの生体信号をセンシングするための生体センサや,加速度センサ
15などの対象物の動作情報をセンシングするための動作センサを有していてもよい。心拍センサ
13は,無線タグ10が取り付けられた動物の心拍数を測定し,体温センサはその動物の体温を測定する。加速度センサ
15は,無線タグ10が取り付けられた動物が移動する際の加速度を測定する。これらの各種センサ
13〜
15が取得したセンシング情報は,無線タグ固有のID情報(タグID)とともに,発信部11を介して基地局20や端末装置30に向けて発信される。
【0024】
基地局20は,位置座標が既知の基準位置に設置されている。例えば,各基地局20は,基地局制御部21,記憶部22,及び近距離無線通信部23を有する。基地局制御部21は,CPUなどのプロセッサで構成されており,他の要素22〜24を制御する。記憶部22には,少なくとも基地局固有のID情報(基地局ID)が記憶されている。また,記憶部22には,基地局20が設置された座標情報が記憶されていてもよい。基地局制御部
21は,記憶部22から基地局IDを読み出して,近距離無線通信部23を通じて,当該基地局IDを端末装置30に伝達する。また,基地局制御部
21は,基地局20の位置情報(座標情報)を近距離無線通信部23を通じて,端末装置30に伝達することもできる。近距離無線通信部23は,例えばBluetooth(登録商標)などの公知の規格に従って,無線タグ10から無線信号を受信するとともに,所定の情報を端末装置30に向けて発信する。
【0025】
基地局制御部21は,タグ間距離測定部21aを含んでいる。タグ間距離測定部21aは,無線タグ10から無線信号を受信したときに,その無線タグ10の自己基地局との間の距離を測定する。タグ間距離測定部21aは,例えば無線タグ10から受信した無線信号の受信強度を測定し,その受信強度に基づいてその無線タグ10との距離を求めればよい。無線タグ10と基地局20の間の距離に関する情報は,その無線タグ10のタグIDとその基地局20の基地局IDとともに,近距離無線通信部23を通じて,端末装置30へと送信される。これにより,端末装置30は,どの無線タグ10と基地局20とが通信に成功したかを識別することができるとともに,通信を行っている無線タグ10と基地局20の間の距離を取得することができる。
【0026】
また,基地局20は,ネットワーク通信部24を有していてもよい。基地局20は,ネットワーク通信部24を介して,無線タグ10と通信した日時や通信時間,タグ間距離測定部21aで求めた距離に関する情報を,インターネットを介して管理サーバ40に送信することができる。また,基地局20は,無線タグ10が発しているセンシング情報を受信したときに,そのセンシング情報を管理サーバ40へと送信することができる。管理サーバ40は,基地局20から受信した各種情報をデータベースに登録することで,無線タグ10が取り付けられた動物の行動履歴や生体情報などを管理する。例えば,動物の行動履歴や生体情報に異常がある場合には怪我や病気が生じている可能性があるため,管理サーバ40でこれらの情報を管理・分析することで,そのような動物を捕捉して治療などを施すことが容易になる。このように,無線タグ10自体にインターネットに接続するための機器を搭載しなくても,基地局20を経由して,無線タグ10で取得した各種の有用なセンシング情報をインターネット上の管理サーバ40に提供することができる。
【0027】
端末装置30は,本システムのユーザによって所持されている携帯情報端末である。ユーザは,端末装置30を通じて,自己端末と無線タグ10の位置関係を知ることができる。端末装置30は,端末制御部31,記憶部32,近距離無線通信部33,ネットワーク通信部34,撮影部35,撮影方向特定部36,表示部
37,及び操作部
38を有している。なお,
図2では,端末装置30の機能構成として一般的なものを例示している。本システムでは,端末装置30が複数台存在していてもよい。各端末装置30はすべてが同じ構成を有している必要はなく,異なる構成を有していてもよい。
【0028】
端末制御部31は,端末装置30が備える他の要素32〜38を制御する演算処理を行う。端末制御部31としては,CPU又はGPUといったプロセッサを利用することができる。端末制御部31は,記憶部32に記憶されているアプリケーションプログラム(コンピュータプログラム)を読み出し,このアプリケーションプログラムに従って他の要素を制御する。また,端末制御部31は,アプリケーションプログラムに従った演算結果を記憶部32に適宜書き込んだり読み出したりすることができる。
【0029】
端末装置30の記憶部32は,端末制御部
31での演算処理等に用いられる情報を記憶するための要素である。具体的に説明すると,記憶部32は,汎用的な携帯型の情報通信端末を,本発明に係る端末装置30として機能させるアプリケーションプログラムを記憶している。このアプリケーションプログラムは,インターネットを経由して端末装置30にダウンロードされたものであってもよいし,端末装置30にプリインストールされたものであってもよい。また,記憶部32には,本システム用のアプリケーションプログラム以外にも,その他のプログラムが記憶されていてもよい。ユーザからの指示により,アプリケーションプログラムが起動されると,このプログラムに従った処理が実行される。記憶部32のストレージ機能は,例えばHDD及びSDDといった不揮発性メモリによって実現できる。また,記憶部32は,端末制御部
31による演算処理の途中経過などを書き込む又は読み出すためのメモリとしての機能を有していてもよい。記憶部32のメモリ機能は,RAMやDRAMといった揮発性メモリにより実現できる。
【0030】
また,端末装置30の記憶部32は,無線タグ10固有のタグIDと,それが取り付けられた対象物(例えば動物)に関する情報を関連付けたタグテーブルを有している。例えば,タグテーブルには,タグIDをキー項目として,無線タグ10が取り付けられた対象物固有のID情報や,対象物の種類,名前,年齢,アイコン画像等の情報が記憶されている。このため,端末装置30は,無線タグ10や基地局20からタグIDを受信することができれば,そのタグIDに関連付けられた各種の情報をタグテーブルから読み出すことで,その無線タグ10が取り付けられた対象物を特定することができる。
【0031】
また,端末装置30の記憶部32は,基地局20固有の基地局IDと,その基地局20の位置情報を関連付けた基地局テーブルを有している。例えば,基地局テーブルには,基地局IDをキー項目として,基地局の座標情報が記憶されている。基地局の座標情報は,予め端末装置30の基地局テーブルに記憶されていてもよいし,あるいは端末装置30と基地局20との間で通信に成功したときに,基地局20から端末装置30に送信されたものであってもよい。端末装置30は,基地局20から基地局IDを受信することができれば,その基地局IDに関連付けられた基地局の座標情報を基地局テーブルから読み出すことで,その基地局20位置を特定することができる。また,基地局20が特定のオブジェクトに取り付けられている場合,基地局テーブルには,そのオブジェクトに関する情報を記憶しておくこともできる。
【0032】
端末装置30の近距離無線通信部
33は,例えばBluetooth(登録商標)などの公知の規格に従って,無線タグ10及び基地局20からビーコンなどの無線信号を受信する。無線タグ10から発信される無線信号には,少なくとも無線タグ10固有のタグIDが含まれる。また,無線タグ10の無線信号には,各種センサ
13〜15が取得したセンシング情報が含まれていてもよい。基地局20から発信される無線信号には,基地局20固有の基地局ID,当該基地局20との通信を行った無線タグ10のタグID,及び基地局20のタグ間距離測定部21aが測定した基地局20と無線タグ10との間の距離に関する情報が含まれる。また,基地局20の無線信号には,その基地局20の座標情報が含まれていてもよい。端末装置30の近距離無線通信部
33は,これらの情報を,無線タグ10及び基地局20から受信することができる。
【0033】
端末装置30のネットワーク通信部34は,無線タグ10又は基地局20と通信した日時や通信時間,端末制御部31での演算結果(例えば自己端末の位置や無線タグの位置に関する情報,撮影に成功した対象物に関する情報など)を,インターネットを介して管理サーバ40に送信することができる。また,端末装置30は,無線タグ10が発しているセンシング情報を受信したときに,そのセンシング情報を管理サーバ40へと送信することができる。管理サーバ40は,端末装置30から受信した各種情報をデータベースに登録することで,端末装置30を持つユーザの行動履歴や,無線タグ10が取り付けられた動物の行動履歴,生体情報などを管理する。
【0034】
撮影部35は,静止画又は動画の画像データを取得するためのカメラである。撮影部35を構成するカメラは,端末装置30に内蔵されているものを利用する。撮影部35によって取得された画像データは,端末制御部31へと送出され所定の演算処理が行われた後に,記憶部32に保存される。カメラは,例えば,レンズ,メカシャッター,シャッタードライバ,CCDイメージセンサユニットやCMOSイメージセンサユニットといった光電変換素子,光電変換素子から電荷量を読み出し画像データを生成するデジタルシグナルプロセッサ(DSP),ICメモリなどで実現される。
【0035】
撮影方向特定部36は,撮影時における端末装置30の向き(具体的には撮影方向)を特定する機能を持つ。撮影方向特定部36の機能は,例えば公知の加速度センサ36aやジャイロセンサ36bによって実現することができる。また,加速度センサ36aは,端末装置30の移動速度の変化を検知する。ジャイロセンサ36bは,端末装置30の傾きの変化を検知する。加速度センサ36aとジャイロセンサ36bによって検知された情報に基づいて,端末装置30は撮影時の向きなどを特定することができる。
【0036】
表示部37は,端末制御部31による演算結果などを表示する。表示部37は,例えばLCD(Liquid Crystal Display;液晶ディスプレイ)やOELD(Organic Electro Luminescence Display;有機ELディスプレイ)のような表示装置である。また,操作部38は,ユーザが入力した操作を受け付けて,その入力信号を
CPUに送出する機能を有する。操作部38の例は,タッチパネル,キーボード,マウス,及びテンキーである。また,表示部37と操作部38が一体となったタッチパネルディスプレイを採用することとしてもよい。タッチパネルディスプレイには,静電容量方式,電磁誘導方式,赤外線方式,又は抵抗膜方式などの公知の方式のものを採用できる。
【0037】
管理サーバ40は,インターネットを通じて基地局20及び端末装置30と接続されており,これらの装置からアップロードされた情報を管理する。具体的には,管理サーバ40は,ネットワーク通信部34を介して情報を取得し,サーバ制御部41で所定の演算を行って,各種情報をデータベース42に記憶する。例えば,管理サーバ40のデータベースには,無線タグ10が取得したセンシング情報(動物の生体情報)や,無線タグ10の位置情報・行動履歴,端末装置30の位置情報・行動履歴を記憶することができる。また,管理サーバ40は,端末装置30に対してアプリケーションプログラムを提供してもよいし,また端末装置30に対してタグテーブルや基地局テーブル(基地局の位置情報が記憶されたもの)を提供することもできる。
【0038】
続いて,
図3〜
図6を参照して,端末装置30が実行する処理のフローについて説明する。
図2に示したように,端末装置30の端末制御部31は,基地局間距離測定部31a,自己端末位置特定部31b,タグ位置特定部31c,タグ間距離測定部31d,撮影対象推定部31eを機能ブロックとして有している。
図3は,端末装置30が備える各機能ブロックによって実行される処理を示したフロー図である。
【0039】
図3に示されるように,端末装置30は,近距離無線通信部33を通じて,複数の基地局20から無線信号を受信する(ステップS1)。端末装置30と基地局20の通信は近距離無線通信により行われるため,端末装置30は所定の範囲内(半径1〜10m程度)に位置している複数の基地局20から無線信号を受信することとなる。
【0040】
端末装置30の基地局間距離測定部31aは,基地局20から受信した無線信号に基づいて,自己端末と各基地局20の間の距離を測定する(ステップS2)。自己端末−基地局間の距離は,例えば,基地局20が発信する無線信号の受信強度に基づいて測定することができる。すなわち,無線信号の受信強度が強いほど自己端末と基地局の間の距離は近い。基地局間距離測定部31aは,無線信号の受信強度に基づいて基地局との間の距離を演算することとしてもよいし,受信強度と距離を対応付けたテーブルを参照して基地局との間の距離を求めてもよい。
【0041】
端末装置30の自己端末位置特定部31bは,上記のようにして求めた自己端末−基地局間の距離に基づいて,自己端末の位置を特定する(ステップS3)。端末装置30の位置を特定する方法の例は,
図4及び
図5に示されている。
図4及び
図5に示されるように,3つの基地局20のxy座標(x1,y1),(x2,y2),(x3,y3)は既知であり,各基地局20と端末装置30の間の距離a1,a2,a3は,端末装置30の基地局間距離測定部31aによって測定される。そして,端末装置30の自己端末位置特定部31bは,各基地局20のxy座標と自己端末−基地局間の距離に基づいて,三角測量法により端末装置30の座標(xa,ya)を求めることができる。このように,端末装置30が少なとも3つの基地局20から無線信号を受信可能な位置にあれば,その端末装置30の座標を特定することができる。
【0042】
端末装置30のタグ位置特定部31cは,基地局20の無線信号に含まれている当該基地局20と無線タグ10の間の距離に関する情報を抽出する(ステップS4)。すなわち,基地局20は,無線タグ10から無線信号を受信すると,タグ間距離測定部21aによってその無線タグ10との間の距離を測定して,その距離情報を無線信号に乗せて発信している。このため,端末装置30は,基地局20との通信に成功したときに,各基地局20が発している無線信号から,基地局−タグ間距離の情報を抽出することができる。
【0043】
その後,タグ位置特定部31cは,複数の基地局20から得た基地局−タグ間距離の情報に基づいて,無線タグ10の位置を特定する(ステップS5)。例えば,
図5に示されるように,3つの基地局20のxy座標(x1,y1),(x2,y2),(x3,y3)は既知であり,また各基地局20と無線タグ10の間の距離b1,b2,b3は,各基地局20のタグ間距離測定部
31dによって測定され,基地局20から端末装置30に送信されている。このため,端末装置30のタグ位置特定部31cは,各基地局20のxy座標と基地局−タグ間距離に基づいて,三角測量法により無線タグ10の座標(xb,yb)を求めることができる。このように,端末装置30が少なとも3つの基地局20から無線信号を受信可能な位置にあり,この3つの基地局20が同じ無線タグ10から無線信号を受信可能な位置にあれば,端末装置30と無線タグ10が直接通信していない状態であっても,端末装置30はその無線タグ10の座標を特定することができる。
【0044】
他方で,端末装置30が無線タグ10と直接通信できる場合もある(ステップS6)。端末装置30と無線タグ10の通信は近距離無線通信により行われ,端末装置30は所定の範囲内(半径1〜10m程度)に位置している無線タグ10から無線信号を受信することとなる。この場合,端末装置30のタグ間距離測定部31dは,無線タグ10から受信した無線信号に基づいて,自己端末と無線タグ10の間の距離を測定する(ステップS7)。自己端末−タグ間の距離は,例えば,無線タグ10が発信する無線信号の受信強度に基づいて測定することができる。すなわち,無線信号の受信強度が強いほど自己端末と無線タグ10の間の距離は近い。タグ間距離測定部31dは,無線信号の受信強度に基づいて無線タグ10との間の距離を演算することとしてもよいし,受信強度と距離を対応付けたテーブルを参照して無線タグ10との間の距離を求めてもよい。
【0045】
自己端末−タグ間の距離の測定に成功した場合,端末装置30のタグ位置特定部31cは,自己端末−タグ間の距離を利用して,無線タグ10の位置を特定することもできる(ステップS5)。例えば,
図4に示されるように,2つの基地局20のxy座標(x1,y1),(x2,y2)は既知であり,またこれら2つの基地局20によって,基地局20と無線タグ10の間の距離b1,b2が測定されて,端末装置30に送信されている。また,端末装置30のxy座標(xa,xb)はステップS3において既に特定済みであり,端末装置30と無線タグ10の間の距離b3もステップS7において既に測定済みである。このため,端末装置30のタグ位置特定部31cは,2つの基地局20のxy座標(x1,y1),(x2,y2),自己端末のxy座標(xa,xb),2つの基地局−タグ間距離b1,b2,及び自己端末−タグ間距離b3に基づいて,三角測量法により無線タグ10の座標(xb,yb)を求めることができる。このように,無線タグ10が2つの基地局20としか通信できない状況においても,その無線タグ10と端末装置30が直接通信可能であれば,端末装置30はその無線タグ10の座標を特定することができる。
【0046】
上記のステップにより,端末装置30は,自己端末の位置情報と無線タグ10の位置情報を求める。このようにして求めた自己端末と無線タグ10の位置情報は,表示部37に表示することとしてもよい。例えば,地図画像の上に端末装置30と無線タグ10を表示すれば,ユーザは端末装置30と無線タグ10の位置関係を把握しやすくなる。また,無線タグ10の位置情報とともに,その無線タグ10が取り付けられた対象物(動物等)に関する情報,例えば対象物の種類や名前,アイコン画像などを表示することもできる。また,端末装置30には,無線タグ10までの距離や方位を表示してもよい。
【0047】
続いて,本発明の実施形態の一例として,本発明のシステムを,対象物(動物)を撮影してその画像を図鑑に登録するレクレーションに適用する場合の例について詳しく説明する。
【0048】
図3に示されるように,端末装置30の位置及び無線タグ10の位置が特定された後に,端末装置30が備える撮影部35によって撮影が行われたとする(ステップS8)。この場合,撮影をトリガーとして,端末装置30の撮影対象推定部31eは,自己端末と無線タグ10の間の距離が所定範囲内にあるかどうかを判断する(ステップS9)。前述ように,端末装置30の座標(xa,ya)と無線タグ10の座標(xb,yb)は既に特定されているため,これらの座標に基づいて両者の距離を求めることができる。また,端末装置30と無線タグ10が直接通信可能な状態にあれば,無線タグ10の無線信号の受信強度に基づいて,端末装置30と無線タグ10の間の距離を測定できる。ここにいう所定範囲は,適宜調節することができるが,例えば1m〜5m程度とすればよい。
【0049】
端末装置30の撮影対象推定部31eは,例えば
図4に示されるように,自己端末と無線タグ10の間の距離が所定範囲内にあると判断した場合,その無線タグ10の撮影に成功したと判断する(ステップS11)。他方で,撮影対象推定部31eは,自己端末と無線タグ10の間の距離が所定範囲内にないと判断した場合,撮影部35の撮影方向と無線タグ10の存在方向が一致しているか否かを判断する(ステップS10)。前述ように,端末装置30の座標(xa,ya)と無線タグ10の座標(xb,yb)は既に特定されているため,これらの座標に基づいて両者の位置関係を求めることができる。これにより,撮影方向と無線タグ10の存在方向の一致/不一致を判断できる。なお,撮影方向は,撮影部35の画角を考慮して,その画角の範囲内に無線タグ10が存在しているかどうかを判断すればよい。
【0050】
端末装置30の撮影対象推定部31eは,例えば
図5に示されるように,自己端末と無線タグ10の間の距離が所定範囲内にない場合であっても,その撮影方向が無線タグ10の存在方向と一致していると判断した場合には,無線タグ10の撮影に成功したと判断する(ステップS11)。他方で,自己端末と無線タグ10の間の距離が所定範囲内になく,且つ,撮影方向が無線タグ10と一致していない場合には,撮影に失敗したものと判断する(ステップS12)。
【0051】
なお,
図3に示した例では,「端末装置と無線タグの距離」と「撮影方向」のどちらか一方を満たしてれば「撮影成功」と判断するOR条件としている。ただし,「端末装置と無線タグの距離」と「撮影方向」の両方を満たしている場合に限り「撮影成功」と判断するAND条件とすることも可能である。すなわち,AND条件の場合には,端末装置30と無線タグ10の間の距離が所定範囲内にあり,且つ,その撮影方向が無線タグ10の存在方向と一致している場合に限り,その無線タグ10の撮影に成功したと判断する。OR条件とAND条件のどちらを選択するかは,撮影対象の特性や,レクレーションの難易度を考慮して決めればよい。例えば,撮影対象がユーザの触れられる場所に居る小動物であるような場合にはAND条件が好ましく,鳥類のような離れた場所に居る動物であるような場合にはOR条件を採用すればよい。また,レクレーションの難易度は,一般的に,OR条件の方が易しく,AND条件の方が難しくなる。
【0052】
続いて,撮影対象推定部31eは,撮影に成功したと判断した無線タグ10のID情報等を利用して,その対象物の種類を推定する(ステップS13)。すなわち,端末装置30の記憶部32のタグテーブルには,無線タグ10のタグIDに関連付けて,それが取り付けられている対象物の種類等に関する情報が記憶されている。従って,タグIDをキーとしてタグテーブルを検索すれば,対象物の種類を特定することができる。ステップS9〜ステップS13の処理を行うことで,撮影対象を容易に推定することができる。つまり,撮影対象を正確に特定するためには,撮影画像を分析してその画像の中に含まれる対象物を抽出するなどの高度な画像処理が必要となるが,本発明では,このような画像処理を行わなくても,ある程度の精度で撮影対象を推定できる。また,高度な画像処理が不要であるため,撮影後すぐに撮影対象の推定が可能である。なお,本発明は,撮影画像を分析して撮影対象を特定する画像処理を排除するものではなく,このような画像処理を行うこととしてもよい。その場合には,ステップS13の後に画像処理を実行して,ステップS13で推定した撮影対象が正しいか否かの検証を行うようにすることもできる。
【0053】
続いて,端末装置30の端末制御部31は,ステップS8で撮影した撮影画像を,ステップS13で特定した対象の種類と関連付けて,記憶部32に保存する(ステップS14)。具体的には,記憶部32には,撮影画像を保存するための記憶空間が設けられており,撮影画像は,記憶部32に図鑑形式で保存されることが好ましい。例えば,
図6には,撮影画像を保存するための図鑑の一例が示されている。
図6に示されるように,図鑑用の記憶空間には,対象物(動物)の撮影画像を,対象物の種類に分けて記録できるようになっている。例えば,No.002用の記憶領域には,ウサギ用の撮影画像が記録できるようになっており,No.003用の記憶領域には,イヌ用の撮影画像が記録できるようになっている。このため,ステップS13において撮影対象がウサギであると推定した場合には,その撮影画像を,No.002用の記憶領域(ウサギ用の記憶領域)に保存する。このように,撮影画像を図鑑形式で保存できるようにすれば,動物を観察しながらその撮影画像をコレクションしていくというレクレーションを,端末装置30を所持するユーザに対して提供することができる。このように,本発明のシステムでは,端末装置30の撮影画像を解析しなくても,その撮影画像に含まれる対象の種類を特定し,撮影画像を図鑑形式で保存しておくことが可能となる。
【0054】
以上,本願明細書では,本発明の内容を表現するために,図面を参照しながら本発明の実施形態の説明を行った。ただし,本発明は,上記実施形態に限定されるものではなく,本願明細書に記載された事項に基づいて当業者が自明な変更形態や改良形態を包含するものである。