(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記台車部が、前記軌条の頭頂部の上面に当接して回動可能な走行車輪と、前記軌条の頭頂部をその両側から挟んだ状態で回動可能な少なくとも一対の保持車輪と、を備えた請求項1記載の軌条探傷装置。
前記検出手段及び前記計測手段によって得られた探傷データを無線送信する送信手段と、前記送信手段から送信された探傷データを受信して前記軌条のクラックの位置及び摩耗量を表示する補助表示手段と、を備えた請求項1〜6の何れかに記載の軌条探傷装置。
【背景技術】
【0002】
工場設備の操業上必要とされる天井クレーンのメンテナンスにおいては、従来、走行軌条の点検並びにメンテナンスが行われている。天井クレーンの場合、走行軌条の経年劣化に伴うウェブ内の亀裂に起因する頭部の欠損並びに軌条頭部の摩耗に起因するトラブルが多く発生することから、1回/年実施される点検において、軌条の亀裂や摩耗の測定は重要点検項目となっている。
【0003】
従来の点検方法は、軌条の補修を行ってきた履歴や経験に基づいて亀裂などが多く発生する箇所を推定し、ノギスやコンベックスなどによる測定や超音波探傷器を用いた測定を行うというものであった。
【0004】
従来の点検方法は、軌条の特定箇所に対する亀裂・摩耗の調査に留まっていたので、測定した箇所以外の部分における亀裂や摩耗の進捗度合を検知することができず、亀裂などが発見された時点で対処するという、事後対応が主流となっていた。
【0005】
しかしながら、近年においては、軌条にて想定された個所以外の部分において亀裂などが発生するケースも多くなっているので、軌条全長に対する点検・調査のニーズが高まっている。
【0006】
一方、本発明に関連する従来技術として、例えば、特許文献1に記載された「レール探傷器(レール用超音波探傷装置)」がある。
【0007】
前記「レール探傷器」は、レール種類毎の、レール基準高さ・音速度・アンプ感度・検出しきい値・警報範囲の測定パラメータを予め記憶させたメモリーと、レール種類の選択による測定パラメータの自動設定機能と、ワンタッチでレールの正確な位置に探触子を接触させて接触媒質を供給できる機構と、測定結果の表示機能と、警報機能と、を有している。
【0008】
前記「レール探傷器」は、探触子をレールに接触させるだけで、自動的に測定してレールの可否を判定し、判定結果に応じて異なる音響を出すことにより、作業者に警報報知することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に記載された「レール探傷器」においては、コイルバネと押え板を用いて探触子がホルダー内に高さ方向に移動可能に取り付けられており、測定の際には、レールに接触した探触子がホルダー内に押し込まれることによって生じるコイルバネの弾性復元力で探触子がレールに一定圧力で接触する機構が採用されている。このため、測定ポイントが限定され、所謂、ピンポイントでの測定となり、軌条全長の測定・調査(探傷)を行うに至っていないのが実状である。
【0011】
また、前記「レール探傷器」においては、探触子とレール面との間での接触媒質の保持手段として弾性体のリングが使用され、探触子の周りを前記リングで囲んで「堰」の機能を生じさせることにより、探触子周辺に液溜まりを形成するようになっている。このため、探傷箇所を移動させるときに探触子が検体から離れたり、探傷箇所近傍に隙間や段差が存在することにより探触子周辺に隙間が生じたりすると、接触媒質(界面活性剤の希釈水溶液など)が流出し、探傷精度が低下することがある。
【0012】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、軌条全長にわたって連続的に探傷可能であり、軌条の段差や異物などに起因する探傷精度の悪化を防止することができる軌条探傷装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る軌条探傷装置は、
軌条の長手方向に沿って移動可能な台車部と、
前記台車部を移動するため前記台車部に立設された操作ハンドルと、
前記軌条の頭頂部の上面に沿って移動可能な状態で前記台車部に設けられた探触子ケースと、
少なくとも前記探触子ケースの移動方向の前端に設けられた橇状部若しくは前記探触子ケースに付設された橇状部材と、
前記探触子ケースに形成された空洞部内に前記空洞部の内周面との間に隙間を設けた状態で格納された超音波探触子と、
前記隙間に接触媒質を供給する
媒質供給手段と、
前記軌条の長手方向への前記台車部の移動距離を計測する計測手段と、
前記超音波探触子で計測される超音波エコーに基づいて前記軌条のクラック及び摩耗量を検出する検出手段と、
前記検出手段及び前記計測手段によって得られた探傷データに基づいて前記軌条のクラックの位置及び摩耗量を表示する表示手段と、
前記検出手段及び前記計測手段によって得られた探傷データを保存する記憶媒体と、
少なくとも前記超音波探触子、前記検出手段、前記計測手段及び前記表示手段を作動させる電源と、を備えたことを特徴とする。
【0014】
前記軌条探傷装置においては、前記台車部が、前記軌条の頭頂部の上面に当接して回動可能な走行車輪と、前記軌条の頭頂部をその両側から挟んだ状態で回動可能な少なくとも一対の保持車輪と、を備えたものであることが望ましい。
【0015】
前記軌条探傷装置においては、前記保持車輪の軌条幅方向の間隔並びに軌条高さ方向の位置が変更可能であることが望ましい。
【0016】
前記軌条探傷装置においては、前記探触子ケースが、前記軌条の頭頂部の上面に対し接近離隔する方向に移動可能であることが望ましい。
【0017】
前記軌条探傷装置においては、前記探触子ケースが、前記軌条を横断する方向の軸体を中心にシーソー状に傾動可能に保持されることが望ましい。
【0018】
前記軌条探傷装置においては、前記検出手段が、クラック及び基準値を超える摩耗量を検出したときに警報を発するものであることが望ましい。
【0019】
前記軌条探傷装置においては、前記検出手段及び前記計測手段によって得られた探傷データを無線送信する送信手段と、前記送信手段から送信された探傷データを受信して前記軌条のクラックの位置及び摩耗量を表示する補助表示手段と、を備えることが望ましい。
【0020】
前記軌条探傷装置においては、前記操作ハンドルが、前記台車部の移動方向に回動可能であることが望ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明により、軌条全長にわたって連続的に探傷可能であり、軌条の段差や異物などに起因する探傷精度の悪化を防止することができる軌条探傷装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、
図1〜
図15に基づいて、本発明の実施形態である軌条探傷装置100について説明する。
図1〜
図4に示すように、本実施形態に係る軌条探傷装置100は、台車部10、操作ハンドル30、探触子ケース50、橇状部材60、超音波探触子70、媒質供給手段80、計測手段90、超音波探触子70、検出手段20、表示手段40、記憶媒体41及び電源42などを備えている。
【0024】
計測手段90は軌条Rの長手方向Lへの台車部10の移動距離を計測する機能を有し、検出手段20は超音波探触子70で計測される超音波エコーに基づいて軌条Rのクラック及び摩耗量を検出する機能を有する。表示手段40は、検出手段20及び計測手段90によって得られた探傷データに基づいて軌条Rのクラックの位置及び摩耗量を表示する表示画面40aを有する。記憶媒体41は、検出手段20及び計測手段90によって得られた探傷データを保存する機能を有する。また、超音波探触子70、検出手段20、計測手段90及び表示手段40などは電源42から供給される電気で作動する。
【0025】
軌条探傷装置100は、検出手段20及び計測手段90によって得られた探傷データを無線送信する送信手段21を有し、送信手段21から送信された探傷データを受信して軌条Rのクラックの位置及び摩耗量を表示する補助表示手段45を備えている。
【0026】
図1〜
図8に示すように、台車部10は、軌条Rの長手方向Lに沿って移動可能であり、台車部10を移動するための操作ハンドル30が台車部10に起伏可能に立設されている。操作ハンドル30を構成する直線状の本体部30aの先端側(下端側)には、一対の脚部31a,31aを有する門型(コ字状)の連結部材31が設けられ、脚部31a,31aの先端側が支軸32を介して台車部10に回動可能に軸支されている。
【0027】
支軸32は軌条Rを横断する方向に配置され、支軸32の両端部にはそれそれぞれクランプレバー33が起伏可能に軸支されている。クランプレバー33を緩めると操作ハンドル30は支軸32を中心に回動可能となり、クランプレバー33を締めると操作ハンドル30は回動不能に係止される。従って、台車部10に対する操作ハンドル30の係止角度は、支軸32を中心として操作ハンドル30が回動可能な範囲内の任意の角度とすることができる。
【0028】
操作ハンドル30の本体部30aの基端側(上端側)には、く字状の折曲部30b及び直線状の把持部30cが設けられている。把持部30cは、折曲部30bを介して、本体部30aと直交姿勢をなすように本体部30aに連接されている。把持部30cの先端部には操作ボックス34が取り付けられている。操作ボックス34には3つのスイッチ35,36,37が設けられている。スイッチ35を押すと探傷が開始され、スイッチ36を押すとデータマーキングが行われ、スイッチ37を押すと探傷が停止される。
【0029】
台車部10は、軌条Rの頭頂部R1の上面Raに当接して回動可能な複数対の走行車輪11,11,12,12と、軌条Rの頭頂部R1の左右の側面Rb,Rbを挟んだ状態で回動可能な二対の保持車輪13,14と、を備えている。走行車輪11,12は軌条Rの頭頂部R1の上面Raに当接した状態で軌条Rの長手方向Lに沿って回転可能であり、保持車輪13,14はそれぞれ軌条Rの左右の側面Rb,Rbに当接した状態で軌条Rの長手方向に沿って回転可能である。
【0030】
台車部10を構成する平板状の基板15の下面の前後方向に離れた位置には、支持板16,17が垂下状に取り付けられている。これらの支持板16,17の両側面をそれぞれ挟むようにして複数対の走行車輪11,11,12,12が軸支されている。また、基板15の下面には、走行車輪12,12と同期して回転する計測手段(ロータリエンコーダ)90が設けられている。計測手段90は、走行車輪12,12の回転量に基づいて、軌条Rの長手方向Lへの台車部10の移動距離を計測する機能を有する。計測手段90によって得られた計測信号は信号ケーブルS2を介して検出手段20へ送信される。
【0031】
台車部10の基板15の上面には2枚のスライド板1,2が基板15と平行に重ね合わせた状態で、それぞれ幅方向Wにスライド可能に配置されている。スライド板1,2の上面側には、2本のハンドル付きボルト3,3が立設され、これらのハンドル付きボルト3,3はスライド板1,2を貫通してそれぞれ基板15に螺着されている。ハンドル付きボルト3,3を緩めるとスライド板1,2は互いに幅方向Wにスライド可能となり、ハンドル付きボルト3,3を締めるとスライド板1,2はスライド不能に係止される。
【0032】
スライド板1,2の幅方向Wの側縁にはそれぞれ昇降板1a,2aがハンドル付きボルト1b,2bによって取り付けられている。ハンドル付きボルト1b,2bを緩めると、昇降板1a,2aはそれぞれスライド板1,2に対して鉛直方向に昇降可能であり、ハンドル付きボルト1b,2bを締めると、昇降板1a,2aはそれぞれスライド板1,2に係止される。
【0033】
基板15の上面側には、基板15を貫通する拡縮ハンドル5が立設され、拡縮ハンドル5の下端側は、基板15の下面に設けられたギヤボックス6に内蔵されたラック&ピニオン機構(図示せず)を介して、2本の拡縮棒7,8に連接されている。拡縮棒7,8の先端部はそれぞれ昇降板1a,2aに接合されている。ハンドル付きボルト3,3を緩めた状態で、拡縮ハンドル5を回動(正転・逆転)させると、拡縮棒7,8はギヤボックス6から出たり、入ったりするので、これに伴って2枚の昇降板1a,2aの間隔が広がったり、狭まったりする。ハンドル付きボルト3,3を締めると、昇降板1a,2aの間隔は一定に保持される。
【0034】
昇降板1a,2aの下縁側には、それぞれ複数の水平軸1c,1c,2c,2cが幅方向Wに拡がる方向に突設され、水平軸1c,1c(2c,2c)に対してスライド部材1d(2d)が水平軸1c,2cの軸心方向に移動可能に取付けられている。また、スライド部材1d,2dを水平軸1c,2cに沿って移動させるためのハンドル付きボルト1e,2eがそれぞれスライド部材1d,2d及び昇降板1a,2aを貫通した状態で螺合されている。また、ハンドル付きボルト1e,2eの係止ネジ1f,2fがスライド部材1d,2dの上面からハンドル付きボルト1e,2eに向かって螺着されている。
【0035】
係止ネジ1f,2fを緩めた状態でハンドル付きボルト1e,2eを回動(正転・逆転)させると、スライド部材1d,2dが水平軸1c,2cに沿ってその軸心方向に移動する。係止ネジ1f,2fを締め付けると、ハンドル付きボルト1e,2eが回動不能に係止され、スライド部材1d,2dは、それぞれ水平軸1c,2cの長さ方向の所定位置に係止される。
【0036】
スライド部材1d,2dの下方部分(水平軸1c,2cより下方部分)には、それぞれ水平軸1c,2cと平行な複数の貫通孔1g,2gが開設され、複数の可動軸1h,2hがそれぞれ貫通孔1g,2g内に軸心方向にスライド可能に挿通されている。可動軸1h,1h(2h,2h)の先端部(軌条Rに近い部分)に、軌条Rと略平行な支持部材1j(2j)が取り付けられ、可動軸1h,2hの基端部(軌条Rから遠い部分)にはフランジ状に拡径したストッパ1k,2kが設けられている。
【0037】
軌条Rを挟んで対向する支持部材1j,2jには、それぞれ複数の保持車輪13,14が回動可能に軸支されている。また、保持車輪13,14を軌条Rの側面Rbに向かって弾性的に押圧するためのスプリング1s,2sが、スライド部材1d,2dと支持部材1j,2jとの間に挟持された状態で、可動軸1h,2hの周りに環装されている。
【0038】
ハンドル付きボルト1b,2bを緩めた状態で、昇降板1a,2aを鉛直方向に昇降させることにより、台車部10の基板15に対する保持車輪13,14の高さ方向の位置を変更することができ、ハンドル付きボルト1b,2bを締めると、保持車輪13,14は所定の高さに係止される。
【0039】
係止ネジ1f,2fを緩めた状態で、ハンドル付きボルト1e,2eを回動(正転・逆転)させることにより、軌条Rを挟んで対向する保持車輪13,14の幅方向Wの間隔を変更することができ、係止ネジ1f,2fを締めると、保持車輪13,14の幅方向Wの間隔は所定状態に係止される。保持車輪13,14はスプリング1s,2sによって軌条Rの側面Rbに向かって弾性的に押圧されているため、軌条Rの側面Rbに凹凸や段差などがあっても保持車輪13,14は側面Rbから離れることなく追従可能である。
【0040】
前述したように、軌条探傷装置100においては、保持車輪13,14の軌条Rの幅方向Wの間隔並びに軌条Rの高さ方向Hの位置が変更可能であるため、軌条Rの種類によって頭頂部R1のサイズや形状が異なっていても、台車部10を軌条R上に的確にセットすることができる。
【0041】
図1,
図2,
図5,
図6,
図9に示すように、台車部10構成する基板15の操作ハンドル30側の端部に探触子ケース50が配置されている。探触子ケース50は、台車部10とともに軌条Rの頭頂部R1の上面Raに沿って移動可能な状態で台車部10に取り付けられている。探触子ケース50の下面には橇状部材60が着脱可能に付設されている。
【0042】
台車部10の基板15のハンドル30側の端部に垂直板18が取り付けられ、この垂直板18に対し、ブラケット18a,18bを介して、垂直板18と平行な複数の垂直軸19,19が取り付けられている。ブラケット18a,18bの間に位置する垂直軸19,19には、垂直軸19,19の軸心方向にスライド可能な昇降部材56が取り付けられている。
【0043】
昇降部材56の側面には「〔 」形状をした一対の連接部材57,57が取り付けられ、これらの連接部材57,57を介して、探触子ケース50が昇降部材56に一体的に取り付けられている。探触子ケース50は連接部材57,57の先端部に、軌条Rを横断する方向(幅方向W)の軸体53,53を介して取り付けられている。探触子ケース50及び橇状部材60は、軸体53,53を中心にシーソー状に傾動可能に保持されている。
【0044】
また、昇降部材56を垂直軸19,19の軸心方向の下方側に向かって弾性的に押圧するためのスプリング19sが、垂直軸19,19の間に垂直軸19,19と平行配置された補助軸19aの周りに環装されている。探触子ケース50は、軌条Rの頭頂部R1の上面Raに対し接近離隔する方向に移動可能である。
【0045】
スプリング19sの弾性復元力により、昇降部材56及び連接部材57,57を介して探触子ケース50及び橇状部材60が軌条Rの頭頂部R1の上面Raに向かって弾性的に押圧される。後述するように、軌条探傷装置100を軌条Rの頭頂部R1にセットしたとき、スプリング19sの弾性復元力により、橇状部材60の下面が軌条Rの頭頂部R1の上面Raに当接した状態に保持される。
【0046】
図1〜
図3,
図9に示すように、超音波探触子70は探触子ケース50に着脱可能に格納され、超音波探触子70と検出手段20とは信号ケーブルS1を介して連結されている。媒質供給手段80は、接触媒質Xが収容されたタンク81と、タンク81内の接触媒質Xを探触子ケース50に向かって供給する供給管82と、を備えている。操作ハンドル30において、台車部10より高い位置にタンク81が着脱可能に係止され、供給管82の基端部がタンク81に接続され、供給管82の先端部が、探触子ケース50の側面に開設された供給口54(
図11参照)に接続されている。タンク81の係止位置は操作ハンドル30の本体部30aの長さ方向に沿って変更可能である。
【0047】
図6,
図9に示すように、探触子ケース50の下面50bに付設された橇状部材60は、その平面視形状が長方形の平板状の部材であり、軌条Rの長手方向Lと交差する方向をなす二つの辺縁部分にそれぞれ傾斜部61,62を有している。傾斜部61,62は、台車部10の移動方向(矢線L1方向または矢線L2方向)に向かって迎角を有するように上反りした形状をなしている。
【0048】
図9〜
図11に示すように、円柱形状の超音波探触子70は、探触子ケース50に形成された略円筒形状の空洞部51内に、空洞部51の内周面52との間に隙間G1を設けた状態で格納されている。探触子ケース50の側面には、接触媒質Xの供給管82を接続するための供給口54が空洞部51と連通した状態で開設されている。探触子ケース50の側面において、供給口54と180度反対側の部分には、空洞部51と連通するネジ孔55が開設されている。
【0049】
ネジ孔55は、探触子ケース50の空洞部51内に格納された超音波探触子70の固定ネジ(図示せず)を螺着するための雌ネジ孔である。ネジ孔55に螺着した固定ネジを緩めると、超音波探触子70は、空洞部51に挿入・離脱可能であり、空洞部51内にて昇降可能である。空洞部51内に超音波探触子70を格納した状態で固定ネジを締め付けると、超音波探触子70は昇降及び離脱不能な状態で空洞部51内の所定の位置に固定される。このように、ネジ孔55に螺着された固定ネジを緩めたり、締め付けたりすることにより、空洞部51内に格納された超音波探触子70の高さ方向(空洞部51の軸心方向)の固定位置は調整可能である。
【0050】
図10,
図11に示すように、探触子ケース50の下面50bに固着された橇状部材60には、空洞部51の下方開口端51bと同形状の開口部63が開設されている。橇状部材60の厚みは3mm〜6mm程度であるが、これに限定するものではない。超音波探触子70の下面70bには、厚さが0.1mm〜0.3mm程度の透液性・保液性を有する保護シート71が付設(貼着)されており、後述するように、毛細管の原理により、接触媒質Xが保護シート71に浸透し、その状態を保つことができる。
【0051】
図1に示すように、軌条探傷装置100を軌条Rにセットしたとき(橇状部材60の下面60bが軌条Rの上面Raに当接しているとき)、超音波探触子70の下面70bと軌条Rの上面Raとの間に0.1mm〜0.3mm程度の隙間G2が形成されるように超音波探触子70の固定位置を設定することが望ましい。超音波探触子70の固定位置の調整(変更)は、前述した
図11に示すように、探触子ケース50のネジ孔55に螺着した固定ネジ(図示せず)を緩めた状態で超音波探触子70を昇降させることによって行うことができる。
【0052】
本実施形態においては、一つの超音波探触子70が探触子ケース50内に垂直状態で保持されているが、これに限定するものではないので、複数の超音波探触子を配置したり、軌条Rの上面Raに対して斜めに超音波探傷子を配置したりすることもできる。
【0053】
ここで、
図12〜
図14に基づいて、探触子ケース50の構造、機能などについて説明する。
図12〜
図14に示すように、探触子ケース50は、外形が略直方体形状の部材であり、上面50aから下面50bに向かって貫通する円筒形状の空洞部51を有する。空洞部51の内径は超音波探触子70が挿通可能なサイズであり、空洞部51の内周面には、その軸心51cと平行な複数の凹溝58が形成されている。複数の凹溝58は空洞部51の軸心51cを中心に等間隔に配置され、凹溝58の横断面形状は円弧形状をなし、凹溝58の下端部58bは探触子ケース50の下面50bに開口している。
【0054】
凹溝58の長さ58s(凹溝58の上端部58aから下端部58bまでの長さ)は、空洞部51の軸心51c方向の長さ51sの4/7程度である。凹溝58の上端部58aと探触子ケース50の上面50aとの間の領域には、空洞部51の上方開口端51aの内径より大きな内径を有する拡径部59が形成されている。拡径部59は、供給口54及びネジ孔55と連通している。供給口54、ネジ孔55が開設された探触子ケース50の側面50c,50dにおいて、供給口54、ネジ孔55よりも下面50b寄りの部分には、軸体53(
図9参照)の係止孔53aが開設されている。
【0055】
次に、
図1〜
図15に基づいて、軌条探傷装置100の使用方法について説明する。軌条探傷装置100を使用して軌条の亀裂や摩耗を測定する作業(探傷作業)を行う場合、
図1〜
図4に示すように、軌条探傷装置100を軌条Rに据え付ける。このとき、軌条Rの種類に応じて保持車輪13,14の幅方向Wの間隔及び高さ方向Hの位置を調整し、二対の保持車輪13,13,14,14がそれぞれ軌条Rの頭頂部R1の側面Rb,Rbに当接するようにセットする。
【0056】
軌条Rに対する軌条探傷装置100の据え付け完了後、検出手段20及び表示手段40などの電源をONすると、表示手段40の表示画面40aに所定の設定画面が表示されるので、軌条タイプなどの選定を行う。選定が完了したら、供給管82の途中にある開閉弁83を開いて、タンク81から探触子ケース50の空洞部51内への接触媒質Xの供給を開始するとともに、操作ボックス34のスイッチ35を押した後、操作ハンドル30の把持部30cを把持して、台車部10を軌条Rの長手方向Lに沿って移動させると、測定作業が開始される。
【0057】
図10,
図11に示すように、探触子ケース50の空洞部51内へ供給された接触媒質Xは隙間G1を経由して隙間G2へ流入し、超音波探触子70の下面70bの保護シート71に浸透するとともに、隙間G2内が接触媒質Xで満たされた状態(湿潤状態)に保たれる。本実施形態においては、接触媒質Xとして界面活性剤の水溶液を使用しているが、これに限定するものではない。
【0058】
測定作業中、作業者は、軌条Rの長手方向Lに沿って、操作ハンドル30を押すことによって台車部10を移動させることができるが、状況に応じて、操作ハンドルを引くことによって台車部10を移動させることもできる。台車部10の移動速度は通常の人間の歩行速度程度であることが望ましい。
【0059】
測定作業中、表示手段40の表示画面40aには、
図15に示すような測定結果画面47が表示される。
図15に示すように、測定結果画面47には、亀裂探傷結果を示す亀裂探傷グラフ43と、摩耗測定結果を示す摩耗測定グラフ44と、が表示される。
【0060】
亀裂探傷グラフ43には、軌条Rの測定開始地点から長手方向Lに沿っての台車部10の移動距離と、亀裂の深さ方向の位置及び亀裂の長さとの関係が「線」で示される。摩耗測定グラフ44には、軌条Rの測定開始地点から長手方向Lに沿っての台車部10の移動距離と、軌条Rの上面Raから底面Rc(
図7参照)までの距離が「線」で連続的に示される。
【0061】
軌条探傷装置100においては、検出手段20が、クラック及び基準値を超える摩耗量を検出したときに警報を発するので、警報を知った作業者が操作ボックス34のスイッチ36を押すと、亀裂探傷グラフ43及び摩耗測定グラフに柱位置のマーキングMが行われる。なお、操作ボックス34のスイッチ37を押すと探傷作業が停止され、操作ボックス34のスイッチ35を押すと探傷作業を再開される。
【0062】
図15に示す測定結果画面47は、
図1中に示す補助表示手段45の表示画面45aにも表示されるので、軌条探傷装置100による測定作業現場から離れた場所においても、測定作業と並行して、測定結果を確認することができる。
【0063】
軌条探傷装置100においては、
図10,
図11に示すように、超音波探触子70を探触子ケース50に格納し、接触媒質Xを常時溜める空隙G1,G2を継続的に形成するとともに、探触子ケース50の進行方向に橇状部材60の傾斜部61,62を設けているため、軌条Rの継目の段差や異物を回避し、滑らかな測定を実現することができ、段差通過時の衝撃による超音波探触子70の故障を防止し、連続測定が可能である。
【0064】
また、接触媒質Xを溜める空隙G1,G2を設け、測定作業中は常時湿潤状態とし、軌条Rの上面Raとの間に音響カップリング層を形成することにより、超音波探触子70からのデータを継続的(例えば、3mmごと)に採取することを可能とした。
【0065】
また、傾斜部61,62を有する橇状部材60を探触子ケース50の下面50bに付設したことにより、軌条Rの上面Raにおける段差と超音波探触子70との直接干渉に起因する故障を防止することができ、台車部10の滑らかな走行が可能となり、連続測定に耐えることができる。
【0066】
従来、軌条Rの点検は工場の操業内に行うことから、軌条Rに付着した異物(粉塵やグリースなど)によって、目視による全長調査が困難であり、重篤な亀裂や摩耗などを見逃す可能性があったが、軌条探傷装置100を使用することにより、軌条Rの亀裂や摩耗などを連続的に測定することが可能となり、重篤な亀裂になり得る問題箇所を早期発見することが可能となり、操業上のリスクを排除し、予防保全を実現することができる。
【0067】
このように、軌条探傷装置100は軌条Rの全長にわたって連続的に探傷可能であり、軌条Rの段差や異物などに起因する探傷精度の悪化を防止することができる。
【0068】
なお、
図1〜
図15に基づいて説明した軌条探傷装置100は、本発明に係る軌条探傷装置の一例を示すものであり、本発明に係る軌条探傷装置は前述した軌条探傷装置100に限定されない。