特許第6573952号(P6573952)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6573952
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】ラビリンスパッキンの櫛歯高さ研削装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 49/03 20060101AFI20190902BHJP
   B24B 19/26 20060101ALI20190902BHJP
【FI】
   B24B49/03 Z
   B24B19/26 Z
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-230479(P2017-230479)
(22)【出願日】2017年11月30日
(62)【分割の表示】特願2017-107983(P2017-107983)の分割
【原出願日】2017年5月31日
(65)【公開番号】特開2018-202601(P2018-202601A)
(43)【公開日】2018年12月27日
【審査請求日】2018年12月17日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】509328928
【氏名又は名称】株式会社日立プラントコンストラクション
(74)【代理人】
【識別番号】100091306
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 友一
(74)【代理人】
【識別番号】100174609
【弁理士】
【氏名又は名称】関 博
(72)【発明者】
【氏名】小松 啓樹
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 浄治
(72)【発明者】
【氏名】塩谷 憲弘
(72)【発明者】
【氏名】山田 学
(72)【発明者】
【氏名】久保田 益生
【審査官】 須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−134106(JP,A)
【文献】 特開2003−175459(JP,A)
【文献】 特開平07−035243(JP,A)
【文献】 特開2009−045722(JP,A)
【文献】 特開平11−197927(JP,A)
【文献】 特開2007−203407(JP,A)
【文献】 特開平07−060630(JP,A)
【文献】 特開2002−273644(JP,A)
【文献】 特開昭63−293365(JP,A)
【文献】 実開平06−024857(JP,U)
【文献】 特開2014−000614(JP,A)
【文献】 特開昭50−071094(JP,A)
【文献】 米国特許第04728233(US,A)
【文献】 中国特許出願公開第102554355(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B1/00−1/04
B24B9/00−19/28
B24B41/00−51/00
B23Q3/06
B25B5/14
B23D5/00−5/04
B23C3/00−3/34
F16J15/16−15/32
F16J15/324−15/3296
F16J15/40−15/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
研削対象とするラビリンスパッキンの長手方向に沿うX軸方向と、前記ラビリンスパッキンの幅方向に沿うY軸方向への移動を可能とするステージと、
前記ステージ上に配置され、前記ラビリンスパッキンを固定する把持機構と、
前記ラビリンスパッキンの櫛歯上面を研削する研削手段と、
前記研削手段を前記ラビリンスパッキンの高さ方向に沿うZ軸方向へ移動させるZ軸アクチュエータと、
前記ラビリンスパッキンに形成された複数の櫛歯に対し、各櫛歯毎に前記櫛歯上面のX軸方向に沿った少なくとも3点のZ軸座標を計測する計測手段と、
前記計測手段によって計測されたZ軸座標と、各計測点におけるX軸座標に基づいて加工データを作成し、前記ステージと前記Z軸アクチュエータとに対して、前記加工データに基づく制御信号を出力する制御手段と、
を備え
前記Z軸座標の計測は、X軸に沿った点を隣接させて行い、
前記加工データの作成は、計測点の座標に基づく前記櫛歯上面の形状から、近似する円弧形状を算出し、前記円弧形状に基づき、前記研削手段により前記櫛歯の上面を予め定められた研削量で研削するための加工データを作成することを特徴とするラビリンスパッキンの櫛歯高さ研削装置。
【請求項2】
前記把持機構は、前記ステージ上に固定された固定当板と、前記固定当板に対向して配置される可動当板、および前記可動当板の動作をガイドする支柱とを有し、
前記ラビリンスパッキンは、前記支柱を基点として配置高さが定められ、前記固定当板と前記可動当板により把持される構成としたことを特徴とする請求項1に記載のラビリンスパッキンの櫛歯高さ研削装置。
【請求項3】
前記固定当板と前記可動当板には、前記ラビリンスパッキンの円弧に倣った円弧状の切欠きが備えられている事を特徴とする請求項2に記載のラビリンスパッキンの櫛歯高さ研削装置。
【請求項4】
前記計測手段は、前記Z軸アクチュエータに付帯されたスライダに備えられ、計測位置と退避位置との移動が可能な構成とされていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のラビリンスパッキンの櫛歯高さ研削装置。
【請求項5】
前記計測手段は、前記櫛歯上面の幅より大きく、並列配置される複数の櫛歯間のピッチより小さい線状の接触部を持つ計測ピンを備えた接触型計測手段であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のラビリンスパッキンの櫛歯高さ研削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研削装置に係り、特にラビリンスパッキンにおける櫛歯の高さを研削するのに好適な装置に関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電所のタービンは、一定の周期で定期点検工事を行う事が電気事業法により定められている。ラビリンスパッキンは、タービンの軸周りに設置されている非接触のシールであり、タービンに流れる気体の漏れ量を低減させる役割を担う。ラビリンスパッキンは、シール面に櫛歯状のフィンを有する。そして、ラビリンスパッキンには、定期点検工事毎に、この櫛歯状のフィンの修正加工が施される。
【0003】
従来、この櫛歯状のフィンの修正加工作業は、その形態の特殊性から、作業者による手作業で行われていた。しかし、修正加工の仕上がりや、加工に要する時間は、作業者の熟練度により大きく変わってきてしまう。
【0004】
このような実状を鑑み、ラビリンスパッキンを修正加工する際の自動化を検討すると、被加工物を切削、あるいは研削する装置としては種々の提案が存在している事がわかった。その殆どの装置は、特許文献1に開示されているように、被加工物を保持して水平移動するステージと、回転工具を垂直方向に移動させる機構を備えたものである。また、特許文献2に開示されているように、被加工物の長手方向にステージを移動させ、回転工具を被加工物の幅方向に移動させるといった装置も提案されている。特許文献2に開示されている装置では、被加工物の研削部に対して、回転工具を斜めに接触させる構成としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−60630号公報
【特許文献2】特開2002−273644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
長尺物の自動加工を実施する場合には、上記のような移動軸を備えた装置を用いる事が前提となると考えられる。しかし、提案されている装置の殆どは、加工面が平坦(直線状)であったり、新規の被加工物を加工対象としている。
【0007】
このため、ラビリンスパッキンのように、タービンの固体によって、曲率や大きさが異なり、使用年数や使用環境により、状態が異なる被加工物の修正加工に対応できる装置は存在しない。
【0008】
そこで本発明では、上記問題を解決し、曲率や大きさ、状態の如何によらずに修正加工を実施することのできるラビリンスパッキンの櫛歯高さ研削装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明に係るラビリンスパッキンの櫛歯高さ研削装置は、研削対象とするラビリンスパッキンの長手方向に沿うX軸方向と、前記ラビリンスパッキンの幅方向に沿うY軸方向への移動を可能とするステージと、前記ステージ上に配置され、前記ラビリンスパッキンを固定する把持機構と、前記ラビリンスパッキンの櫛歯上面を研削する研削手段と、前記研削手段を前記ラビリンスパッキンの高さ方向に沿うZ軸方向へ移動させるZ軸アクチュエータと、前記ラビリンスパッキンに形成された複数の櫛歯に対し、各櫛歯毎に前記櫛歯上面のX軸方向に沿った少なくとも3点のZ軸座標を計測する計測手段と、前記計測手段によって計測されたZ軸座標と、各計測点におけるX軸座標に基づいて、前記櫛歯上面を予め定められた研削量で研削するための加工データを作成し、前記ステージと前記Z軸アクチュエータとに対して、前記加工データに基づく制御信号を出力する制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、上記のような特徴を有するラビリンスパッキンの櫛歯高さ研削装置において前記Z軸座標の計測は、X軸に沿った点を隣接させて行い、前記制御手段は、計測点の座標に基づく前記櫛歯上面の形状から、近似する円弧形状を算出し、前記円弧形状に基づき、前記研削手段により前記櫛歯の上面を予め定められた研削量で研削するための加工データを作成する構成とすることもできる。
【0011】
また、上記のような特徴を有するラビリンスパッキンの櫛歯高さ研削装置において前記把持機構は、前記ステージ上に固定された固定当板と、前記固定当板に対向して配置される可動当板、および前記可動当板の動作をガイドする支柱とを有し、前記ラビリンスパッキンは、前記支柱を基点として配置高さが定められ、前記固定当板と前記可動当板により把持される構成とすると良い。このような特徴を有する事により、ラビリンスパッキンの位置決めが容易となる。よって、ラビリンスパッキンの配置固定に要する労力を軽減し、時間を短縮する事ができる。
【0012】
また、上記のような特徴を有するラビリンスパッキンの櫛歯高さ研削装置における前記固定当板と前記可動当板には、前記ラビリンスパッキンの円弧に倣った円弧状の切欠きを備えるようにすると良い。このような特徴を有する事により、ラビリンスパッキンを把持した際、固定当板と可動当板に把持されるラビリンスパッキンの面積を十分確保できる。よって、ラビリンスパッキンの固定状態を安定させる事ができる。
【0013】
また、上記のような特徴を有するラビリンスパッキンの櫛歯高さ研削装置において、前記計測手段は、前記Z軸アクチュエータに付帯されたスライダに備えられ、計測位置と退避位置との移動が可能な構成とされていると良い。このような特徴を有する事により、計測手段は、スライダを介してその配置位置を変更する事が可能となる。
【0014】
さらに、前記計測手段は、前記櫛歯上面の幅より大きく、並列配置される複数の櫛歯間のピッチより小さい線状の接触部を持つ計測ピンを備えた接触型計測手段とすると良い。このような特徴を有する事により、計測手段の計測ピンと櫛歯との位置がY軸方向にズレることによる計測ミスを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0015】
上記のような特徴を有するラビリンスパッキンの櫛歯高さ研削装置によれば、ラビリンスパッキンの曲率や大きさ、状態の如何によらずに櫛歯高さの研削を行うことができる。このため、作業者の熟練度に依存する事なく、短時間で高精度にラビリンスパッキンの修正加工を行う事が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態に係るラビリンスパッキンの櫛歯高さ研削装置の外観構成を示す正面図である。
図2】実施形態に係るラビリンスパッキンの櫛歯高さ研削装置の外観構成を示す左側面図である。
図3】実施形態に係るラビリンスパッキンの櫛歯高さ研削装置の外観構成を示す平面図である。
図4】把持機構の構成を示す拡大側面図である。
図5】把持機構の構成を示す拡大正面図である。
図6】ラビリンスパッキンの櫛歯と計測手段における計測ピンの関係を示す部分拡大図である。
図7】制御手段を含むラビリンスパッキンの櫛歯高さ研削装置のシステム全体のイメージを示すブロック図である。
図8】実施形態に係るラビリンスパッキンの櫛歯高さ研削装置によりラビリンスパッキンの櫛歯研削を行う際の工程を示すフロー図である。
図9】計測点を複数とし、計測点に基づいて近似する円弧形状を求め、加工データを作成する場合の例を説明するために示したラビリンスパッキンの部分拡大正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明のラビリンスパッキンの櫛歯高さ研削装置に係る実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、図面において、図1から図3は、実施形態に係るラビリンスパッキンの櫛歯高さ研削装置の外観構成を示す正面図、左側面図、および平面図である。また、図4は、把持機構の構成を示す拡大側面図であり、図5は、同正面図である。また、図6は、ラビリンスパッキンの櫛歯と計測手段における計測ピンの関係を示す部分拡大図である。また、図7は、制御手段を含むラビリンスパッキンの櫛歯高さ研削装置のシステム全体のイメージを示すブロック図である。さらに、図8は、実施形態に係るラビリンスパッキンの櫛歯高さ研削装置によりラビリンスパッキンの櫛歯研削を行う際の工程を示すフロー図である。
【0018】
[研削装置の構成]
実施形態に係るラビリンスパッキンの櫛歯高さ研削装置(以下、単に研削装置10と称す)は、ベース12と、ステージ14、研削手段34、Z軸アクチュエータ26、計測手段38、および制御手段42を有する。ベース12は、実施形態10に係る研削装置の土台である。
【0019】
[ステージについて]
ステージ14は、X軸方向、およびY軸方向への移動を行うテーブルである。また、ステージ14上には、被加工物であるラビリンスパッキン60を固定するための把持機構24が備えられている。本実施形態においてX軸とは、図1図3において矢印Aで示す方向であり、ラビリンスパッキン60を把持機構24により固定した際、その長手方向に沿う方向となる。また、Y軸とは、図2図3において矢印Bで示す方向であり、ラビリンスパッキン60を把持機構24により固定した際、その幅方向に沿う方向となる。
【0020】
実施形態に係るステージ14は、X軸機構16とX軸ステージ18、Y軸機構20、およびY軸ステージ22とを備える構成としている。X軸機構16は、ベース12上に、X軸に沿って配されたガイドレール16aとボールネジ16b、およびボールネジ16bを回転させるX軸モータ16cとを備えて構成される。X軸ステージ18は、ボールネジ16bの回転に伴って移動するスライダであり、ガイドレール16aに沿う摺動部18aを有する。
【0021】
Y軸機構20は、X軸ステージ18上に、Y軸に沿って配されたガイドレール20aと、ボールネジ20b、およびボールネジ20bを回転させるY軸モータ20cとを備えて構成される。Y軸ステージ22は、ボールネジ20bの回転に伴って移動するスライダであり、ガイドレール20aに沿う摺動部22aを有する。また、Y軸ステージ22上には、把持機構24が備えられる。
【0022】
[把持機構について]
把持機構24は、ラビリンスパッキン60を固定するための手段であり、実施形態に係る研削装置10では、固定当板24aと可動当板24b、支柱24c、およびクランプ24dを有する。固定当板24aは、ステージ14を構成するY軸ステージ22に固定される位置決め用の部材である。可動当板24bは、固定当板24aに対向配置され、固定当板24aと可動当板24bとの間にラビリンスパッキン60を挟み込む役割を担う部材である。支柱24cは、固定当板24aを基点としてY軸方向に沿って延設され、可動当板24bを貫通して配置される、可動当板24bのスライドガイドである。本実施形態の場合、X軸に沿って2本一対の支柱24cを設ける構成としている。
【0023】
また、本実施形態では、固定当板24aと可動当板24bの上端に、円弧状の切欠き24a1,24b1(図5参照)を設けている。切欠き24a1,24b1の円弧形状は、研削対象とするラビリンスパッキン60の円弧形状に倣うものとすれば良い。把持機構24を構成する固定当板24aと可動当板24bに円弧状の切欠き24a1,24b1を設ける事により、円弧状の形態を有するラビリンスパッキン60の把持面積を十分確保でき、把持状態の安定化を図る事ができる。また、切欠き24a1,24b1を成す円弧は、全体の直径が大きなラビリンスパッキン60の円弧に合わせて形成すると良い。大きな円弧に合わせて切欠き24a1,24b1を形成する事で、小さな直径のラビリンスパッキン60にも対応可能となるからである。
【0024】
また、対を成して配置される支柱24cは、その配置高さをラビリンスパッキン60の把持高さに合わせる事で、ラビリンスパッキン60の配置高さを支柱24cを基点として定める事ができる。よって、ラビリンスパッキン60の配置(位置決め)を容易に行う事ができる。
【0025】
クランプ24dは、ラビリンスパッキン60を把持した可動当板24bを固定当板24aへ押し付け、ラビリンスパッキン60の固定状態を維持するという役割を担う。クランプ24dは、その役割を担うものであれば、具体的な構成を問うものではなく、例えばシャコマンのようなものであっても良い。本実施形態では、ラビリンスパッキン60を把持する工程の容易さを考慮して、横方向押し付け型のトグル式クランプを採用している。クランプ24dの本体をY軸ステージ22に固定し、押し付け部を可動当板24bに当接させることで、レバーの揺動に従った押し付けと開放を行う事が可能となる。本実施形態では、クランプ24dをX軸に沿った2点に配置し、把持状態の安定化を図るようにしている。
【0026】
[研削手段について]
研削手段34は、ラビリンスパッキン60における櫛歯62の上面を研削するための要素である。本実施形態では、研削手段34としてルータを選択し、このルータを後述するZ軸アクチュエータ26のスライダ30に取り付けることで、X軸、Y軸、Z軸といった3軸に対する相対的な動作を可能な構成としている。
【0027】
研削手段34は、回転砥石36を備えている。また、研削手段34は、Z軸アクチュエータ26のスライダ30に対して、回転砥石36の回転軸がY軸に沿うこととなるように配置されている。
【0028】
[Z軸アクチュエータ]
Z軸アクチュエータ26は、X軸とY軸の双方に直交する方向(垂直方向)への移動軸(Z軸)に対する動作を担う要素である。Z軸アクチュエータ26の構成は、基本的にはX軸機構16やY軸機構20と同様とすることができる。すなわち、ベース12を基点としてZ軸方向に沿って立設された垂直ベース28に沿って配置されるガイドレール26aと、ボールネジ26b、Z軸モータ26cを備える動力部と、ボールネジ26bの回転に伴って移動するスライダ30を備え、スライダ30に対してブラケット32が付帯されている。このような構成とすることで、Z軸モータ26cへの制御信号により、スライダ30をZ軸に沿って移動させる事が可能となる。
【0029】
[計測手段について]
計測手段38は、ラビリンスパッキン60における櫛歯62上面のZ軸座標を計測するための要素であり、本実施形態では、Z軸アクチュエータ26のスライダ30に備えられたブラケット32に取り付けられている。計測手段38によりラビリンスパッキン60における櫛歯62上面のZ軸座標を計測する事で、研削を行う際のゼロ点を導き出す事ができる。また、X軸方向に沿って少なくとも3点のZ軸座標を計測する事で、研削対象とするラビリンスパッキン60における櫛歯62上面の曲率半径を算出する事ができる。これにより、Z軸アクチュエータ26とX軸機構16との関係において、研削手段34の相対的な移動経路を求める事が可能となる。
【0030】
また、本実施形態では、計測手段38と研削手段34の回転砥石36との配置位置が近い事より、計測手段38とブラケット32との間にスライド機構40を備える構成としている。スライド機構40を備える事により、計測手段38の配置位置は、計測位置と退避位置とに切り替える事が可能となる。
【0031】
スライド機構40の具体的な構成としては、ブラケット32に対してZ軸方向に沿ったレールと、このレール上を移動可能なスライダを備えるものであれば良く、計測手段38を、このスライダに固定すれば良い。スライダの駆動形式は、限定するものでは無いが、段階的な移動制御を必要とせず、配置位置の切り替え時間を短くし、かつ構成を簡易なものとするという観点から、本実施形態においては、エアシリンダ型のものを採用している。
【0032】
また、本実施形態では、計測点が平面では無く、ラビリンスパッキン60における櫛歯62の上面という幅の狭い凸部としていることより、接触型の計測手段38を採用している。また、計測手段38の計測ピン38aは図6に示すように、櫛歯62上面の幅より大きく、隣接配置されている櫛歯62と櫛歯62のピッチよりも小さい線状の接触部38a1を持つものを採用し、櫛歯62の延設方向と交差する方向に線状部が配置される構成としている。このような構成とする事で、Y軸方向(図6中矢印Bで示す方向)に対する位置がズレることによる計測ミスを防ぐ事ができる。
【0033】
[制御手段について]
制御手段42(図7参照)は、ステージ14とZ軸アクチュエータ26、研削手段34、計測手段38およびスライド機構40等の動作制御を行い、研削手段34によりラビリンスパッキン60における櫛歯62の上面を研削させる役割を担う。実施形態に係る研削装置10に適用される制御手段42の構成の一例を図7に示す。制御手段42には、予め定められた要素データの入力が成される。なお、要素データの入力は、制御手段42に付帯された制御用PC等の入力端末44を介して行う。また、入力端末44には、研削装置10を制御するためのプログラム(例えば研削アプリ44a)が記憶されていれば良い。
【0034】
制御手段42には、入力端末44との間で制御信号の授受を行うインターフェースとして、モーションコントロールボード46やルータコントローラ48、および計測手段用アンプ50などが備えられている。モーションコントロールボード46は、研削装置10におけるステージ14、およびZ軸アクチュエータ26を制御するための要素であり、X軸ドライバ46a、Y軸ドライバ46b、およびZ軸ドライバ46cを介して、駆動制御のための制御信号(駆動パルス)の生成、出力を行う。X軸モータ16c、Y軸モータ20c、およびZ軸モータ26cは、各ドライバ(46a〜46c)から出力された制御信号に応じて回転動作が成される。
【0035】
ルータコントローラ48は、研削手段34や計測手段38、およびスライド機構40の動作制御を行うための要素である。ルータコントローラ48は、直接的には、研削手段34における回転砥石36の回転数の制御のための信号を出力する。一方、間接的には、計測手段38における計測ピン38aの位置制御や、スライド機構40における計測位置と退避位置の切り替え制御などを行う。具体的には、計測手段38とスライド機構40には、圧縮空気を供給するためのコンプレッサ52が接続されている。コンプレッサ52から計測手段38に供給される圧縮空気は、計測手段38の計測ピン38aをスタンバイ状態に伸張させる役割を担う。また、コンプレッサ52からスライド機構40に供給される圧縮空気は、計測手段38を退避位置から計測位置へ移動させる役割を担う。
【0036】
コンプレッサ52と、計測手段38、並びにスライド機構40との間には、圧縮空気の供給圧を調整するためのレギュレータ54と、バルブ56a,56bが備えられている。バルブ56a,56bは、電磁弁などの切り替え弁であれば良く、ルータコントローラ48からの制御信号が入力される事により、圧縮空気の供給経路を開放する。
【0037】
計測手段用アンプ50は、ラビリンスパッキン60における櫛歯62の計測に起因して計測手段38から出力される電気信号を増幅し、検出信号として入力端末44に出力する役割を担う。
【0038】
[研削制御について]
以下、上述した要素データの説明と共に、図8を参照して、研削装置によるラビリンスパッキン60における櫛歯62の研削について説明する。
【0039】
まず、上述した入力データである要素データとしては、割れ数や、弓寸法、櫛歯数、櫛歯ピッチ、開始計測点、および指定加工量などを挙げる事ができる。ここで、割れ数とは、ラビリンスパッキン60の分割数である。ラビリンスパッキンは、タービン(不図示)の軸径に合わせた円形を成すものであり、加工対象となるラビリンスパッキン60(正確にはラビリンスパッキン片)は、円形のラビリンスパッキンを複数に分割した片の1つとなる。また分割は、等分とされていることより、分割数の入力により、円の内角を求める事ができる。
【0040】
弓寸法とは、研削対象とするラビリンスパッキン60における櫛歯62の上面の端部間距離、すなわち、円弧の弦にあたる部分の長さである。1回の研削におけるX軸の移動距離を定めることができる。また、割れ数により二等辺三角形の頂点の内角が求められるため、弓寸法により底辺の長さ(弓寸法)を入力する事で、二等辺三角形を構成する二つの辺の長さ(円弧の半径R)を求めることができる。具体的には、底辺の長さをa、底辺の両端に位置する内角をθとして、a/(2×cosθ)を計算する事で求めることができる。
【0041】
櫛歯数とは、研削対象とする1つのラビリンスパッキン60に備えられている櫛歯62の数である。研削を行う回数を定めるためである。また、櫛歯ピッチとは、Y軸方向に沿った櫛歯62の配置間隔である。各櫛歯62を研削する際における回転砥石(研削手段)のY軸方向の移動距離を定めるためである。
【0042】
また、開始計測点は、最初に加工を行う櫛歯62における3点のXY座標であり、指定加工量は、櫛歯62の上面を研削する研削量である(S10:要素データ入力)。
【0043】
このような要素データを入力された制御手段42では、まず、スライド機構40と計測手段38に対して圧縮エアの供給を行い、計測手段38を計測位置に移動させると共に、計測ピン38aを伸長させてスタンバイ状態にする。その後、入力された要素データに基づいて算出したラビリンスパッキン60における櫛歯62上面の半径Rに基づいてX軸モータ16cとY軸モータ20c、およびZ軸モータ26cに対して制御信号を与え、計測手段38による櫛歯62の上面位置における3点のZ軸座標の計測を行う。その後、計測された3点のZ軸座標と、当該座標を計測したX軸座標に基づき、ラビリンスパッキン60における櫛歯62上面の曲率半径を算出する(S20:計測)。
【0044】
櫛歯62上面の曲率半径を求めた後、入力された要素データと算出された曲率半径に基づき、加工経路やX軸モータ16c、Y軸モータ20c、およびZ軸モータ26cの動作量、研削手段34の回転速度等の加工データの作成を行う(S30:加工データ作成)。
【0045】
加工データ作成後、加工データに従って各種制御を行い、ラビリンスパッキン60における櫛歯62上面の研削を行う。なお、計測手段38は、Z軸座標の計測終了後、少なくとも研削工程の前までに、退避位置に移動させる制御が成される(S40:研削)。
【0046】
研削工程が終了した後、再び計測手段38を計測位置に移動させ、計測工程で計測した3点のZ軸座標の計測を行う(S50:再計測)。研削工程前の計測値と、研削工程後の計測値に基づき、加工量の計算が成される(S60:加工量計測)。算出された加工量が、指定加工量に近似する値となっているか否かを判定する。ここで、近似の範囲は、求める加工精度に応じて予め定めた閾値の範囲とすれば良い(S70:判定)。
【0047】
判定により、加工量が閾値の範囲内である場合には、ラビリンスパッキン60の研削加工が終了する。一方、加工量が閾値の範囲外である場合には、再度加工量の入力を行い(S80:加工量再入力)、S30に戻り、加工データの作成を行い、ラビリンスパッキン60の研削が成される。ここで、加工量が閾値の範囲外となる要因としては、回転砥石36の摩耗や、研削手段34における回転軸の逃げなどを挙げる事ができる。よって、必要に応じて再加工の前に回転砥石34の寸法や、研削手段34の取付状態のチェックを行い、要素データの再入力の必要性を判定しても良い。
【0048】
[作用効果]
上記のような研削装置10によれば、ラビリンスパッキン60の曲率や大きさ、状態の如何によらず研削加工を行う事ができる。このため、作業者の熟練度に依存する事なく、短時間で高精度に修正加工を行う事が可能となる。
【0049】
[変形例]
また、上記実施形態に係る研削装置10には、次のような機能、および機構を備えるようにしても良い。
【0050】
まず、上記実施形態では、回転砥石36の回転軸(研削手段34の回転軸)について、Y軸に沿った方向(X軸に直交する方向)に配置する旨記載した。しかしながら、回転砥石36の回転軸は、Y軸に対して斜めになるようにセットしても良い。このような配置形態とする事で、回転砥石36は、櫛歯62に対して斜めに接触することとなる。これにより、回転砥石36と櫛歯62との接触面積を増やす事ができる。このため、回転砥石36の編摩耗を抑制する事が可能となる。
【0051】
また、回転砥石36の編摩耗を抑制する手段として、櫛歯62を研削する毎に移動させるY軸の移動量を、櫛歯62のピッチに対してプラス・マイナス数%ずつずらすようにしても良い。回転砥石36に対する櫛歯62の接触箇所を分散させる事が可能となるからである。
【0052】
さらに、研削装置10には、研削工程終了時に、回転砥石36をクリーニング(ならす)作業を行うための機能を備えるようにしても良い。このような機能を備える事によっても、回転砥石36の編摩耗を抑制する事ができるからである。
【0053】
また、上記実施形態では、加工データを作成する際、計測手段38により、ラビリンスパッキン60のX軸方向に沿った3点で、櫛歯62上面のZ軸座標を計測し、各計測点におけるX軸座標とZ軸座標に基づいて曲率半径を算出する旨記載した。しかしながら、本発明の研削装置10における加工データの作成は、種々の計測値に基づくデータを利用して成されるものであって良い。
【0054】
例えば、Z軸座標を計測するX軸に沿った点を隣接させ、その数を増やした場合には、連続して得られる計測点の座標そのものが櫛歯62上面の形状(プロフィール)を表すデータの近似値とすることが可能となる。制御手段42では、計測された実測座標に基づく櫛歯62上面のプロフィールから、近似する円弧形状を算出し、この円弧形状に基づいて加工データの作成を行う。ここで、近似する円弧形状とは、図9にラビリンスパッキン60の部分拡大図を示すように、凹部、あるいは凸部として示される複数の計測点に位置する座標(aからxで示す点)を直線、あるいは弧状の曲線で接続して示される形状のうち、凸となる複数の点(図9中では、例えばb、c、i、j、m、n、w、x等)を通過するように定めた円弧(図9中には、二点鎖線で示す)とすれば良い。このように定める事で、研削加工は、最も凸となる点を基準として成されることとなり、研削深さが深く成る事によるラビリンスパッキン60に対する回転砥石36の逃げや、加負荷による損傷を防ぐ事ができるからである。なお、図9では、説明を解りやすくするために、櫛歯62上面の凹凸を誇張して示している。
【0055】
また、その他の加工データ作成手法として、各計測座標と、予め定められた研削量とに基づいて、各計測点ごとの研削量を定め、各点が指定された研削量となるように加工を行うデータを作成するようにしても良い。
【符号の説明】
【0056】
10………研削装置、12………ベース、14………ステージ、16………X軸機構、16a………ガイドレール、16b………ボールネジ、16c………X軸モータ、18………X軸ステージ、18a………摺動部、20………Y軸機構、20a………ガイドレール、20b………ボールネジ、20c………Y軸モータ、22………Y軸ステージ、22a………摺動部、24………把持機構、24a………固定当板、24a1………切欠き、24b………可動当板、24b1………切欠き、24c………支柱、24d………クランプ、26………Z軸アクチュエータ、26a………ガイドレール、26b………ボールネジ、26c………Z軸モータ、28………垂直ベース、30………スライダ、32………ブラケット、34………研削手段、36………回転砥石、38………計測手段、38a………計測ピン、38a1………接触部、40………スライド機構、42………制御手段、44………入力端末、44a………研削アプリ、46………モーションコントロールボード、46a………X軸ドライバ、46b………Y軸ドライバ、46c………Z軸ドライバ、48………ルータコントローラ、50………計測手段用アンプ、52………コンプレッサ、54………レギュレータ、56a,56b………バルブ、60………ラビリンスパッキン、62………櫛歯。
図1
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図9