(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記エンハンスメント層と前記アウトカップリング層との間に介在層を更に含み、前記介在層は、1〜10nmの厚みと0.1〜4.0の屈折率を有する請求項1に記載のデバイス。
前記プラズモン材料が、Ag、Au、Al、及びPtからなる群から選択される金属、Ag、Au、Al、及びPtの任意の組合せの合金からなる群から選択される金属、ドープされた酸化物、又はドープされた窒化物である、請求項1に記載のデバイス。
前記エンハンスメント層が、周期的、準周期的、又はランダムに配列される波長サイズ又はサブ波長サイズの形状から形成される少なくとも一組の格子である請求項1に記載のデバイス。
前記エンハンスメント層が、プラズモン材料の層及び誘電材料の層を含む積層体であり、前記プラズモン材料層が、Ag、Au、Al、Pt、及びこれらの材料の任意の組合せの合金からなる群から選択される金属である請求項2に記載のデバイス。
【背景技術】
【0003】
有機材料を利用する光電子デバイスは、いくつもの理由から、次第に望ましいものとなりつつある。そのようなデバイスを作製するために使用される材料の多くは比較的安価であるため、有機光電子デバイスは無機デバイスを上回るコスト優位性の可能性を有する。加えて、柔軟性及び障害に対する許容範囲等の有機材料の固有の特性により、該材料は、フレキシブル基板上での製作等の特定用途によく適したものとなり得る。有機光電子デバイスの例は、OLED、有機光トランジスタ、有機光電池及び有機光検出器を含む。OLEDについて、有機材料は従来の材料を上回る性能の利点を有し得る。例えば、有機発光層が光を放出する波長は、概して、適切なドーパントで容易に調整され得る。
【0004】
OLEDはデバイス全体に電圧が印加されると光を放出する薄い有機膜を利用する。OLEDは、フラットパネルディスプレイ、照明及びバックライティング等の用途において使用するためのますます興味深い技術となりつつある。数種のOLED材料及び構成は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、特許文献1、特許文献2及び特許文献3において記述されている。
【0005】
リン光性発光分子の1つの用途は、フルカラーディスプレイである。そのようなディスプレイの業界標準は、「飽和(saturated)」色と称される特定の色を放出するように適合された画素を必要とする。特に、これらの標準は、飽和した赤色、緑色及び青色画素を必要とする。色は、当技術分野において周知のCIE座標を使用して測定することができる。
【0006】
緑色発光分子の一例は、下記の構造:
【化1】
を有する、Ir(ppy)
3と表示されるトリス(2−フェニルピリジン)イリジウムである。
【0007】
この図面及び本明細書における後出の図面中で、本発明者らは、窒素から金属(ここではIr)への配位結合を直線として描写する。
【0008】
本明細書において使用される場合、用語「有機」は、有機光電子デバイスを製作するために使用され得るポリマー材料及び小分子有機材料を含む。「小分子」は、ポリマーでない任意の有機材料を指し、且つ「小分子」は実際にはかなり大型であってよい。小分子は、いくつかの状況において繰り返し単位を含み得る。例えば、長鎖アルキル基を置換基として使用することは、「小分子」クラスから分子を排除しない。小分子は、例えばポリマー骨格上のペンダント基として、又は該骨格の一部として、ポリマーに組み込まれてもよい。小分子は、コア部分上に構築された一連の化学的シェルからなるデンドリマーのコア部分として役立つこともできる。デンドリマーのコア部分は、蛍光性又はリン光性小分子発光体であってよい。デンドリマーは「小分子」であってよく、OLEDの分野において現在使用されているデンドリマーはすべて小分子であると考えられている。
【0009】
本明細書において使用される場合、「上部」は基板から最遠部を意味するのに対し、「底部」は基板の最近部を意味する。第一層が第二層「の上に配置されている」と記述される場合、第一層のほうが基板から遠くに配置されている。第一層が第二層「と接触している」ことが指定されているのでない限り、第一層と第二層との間に他の層があってもよい。例えば、間に種々の有機層があるとしても、カソードはアノード「の上に配置されている」と記述され得る。
【0010】
本明細書において使用される場合、「溶液プロセス可能な」は、溶液又は懸濁液形態のいずれかの液体媒質に溶解、分散若しくは輸送することができ、及び/又は該媒質から堆積することができるという意味である。
【0011】
本明細書において使用される場合、当業者には概して理解されるであろう通り、第一の「最高被占分子軌道」(HOMO)又は「最低空分子軌道」(LUMO)エネルギー準位は、第一のエネルギー準位が真空エネルギー準位に近ければ、第二のHOMO又はLUMOエネルギー準位「よりも大きい」又は「よりも高い」。イオン化ポテンシャル(IP)は、真空準位と比べて負のエネルギーとして測定されるため、より高いHOMOエネルギー準位は、より小さい絶対値を有するIP(あまり負でないIP)に相当する。同様に、より高いLUMOエネルギー準位は、より小さい絶対値を有する電子親和力(EA)(あまり負でないEA)に相当する。上部に真空準位がある従来のエネルギー準位図において、材料のLUMOエネルギー準位は、同じ材料のHOMOエネルギー準位よりも高い。「より高い」HOMO又はLUMOエネルギー準位は、「より低い」HOMO又はLUMOエネルギー準位よりもそのような図の上部に近いように思われる。
【0012】
本明細書において使用される場合、当業者には概して理解されるであろう通り、第一の仕事関数がより高い絶対値を有するならば、第一の仕事関数は第二の仕事関数「よりも大きい」又は「よりも高い」。仕事関数は概して真空準位と比べて負数として測定されるため、これは「より高い」仕事関数が更に負であることを意味する。上部に真空準位がある従来のエネルギー準位図において、「より高い」仕事関数は、真空準位から下向きの方向に遠く離れているものとして例証される。故に、HOMO及びLUMOエネルギー準位の定義は、仕事関数とは異なる慣例に準ずる。
【0013】
本明細書において使用される場合、OLED分野の当業者には概して理解されるであろう通り、「発光体」、「発光材料(emissive material)」、「発光材料(light emitting material)」という用語は、等価な意味を有し、相互変換可能に用いられる。これらの材料は、燐光材料、蛍光材料、熱活性化遅延蛍光材料、化学発光材料、及びあらゆるクラスの他の有機発光を示す有機材料である、あらゆる有機材料を包含すると理解される。
【0014】
本明細書において使用される「シャープエッジ」という用語は、その断面が0〜10nm、好ましくは0〜5nm、より好ましくは0〜2nmの曲率半径を有する2つの表面間に形成されるエッジを意味する。
【0015】
本明細書において使用されるOLEDの「有機発光層」という用語は、発光材料から構成される、又は発光材料と1つ以上のホスト及び/又は他の材料から構成されるOLED中の層を意味する。典型的な有機発光層の厚みは、0.5〜100nm、より好ましくは0.5〜60nmである。有機発光層が発光材料と1つ以上のホスト又は他の材料から構成される場合、前記発光材料は、0.01〜40重量%、より好ましくは0.1〜30重量%、最も好ましくは1重量%〜20重量%で、前記発光層にドープされる。
【0016】
本明細書において使用される「波長サイズの形状」という用語は、その寸法が、OLEDの前記有機発光層における前記有機発光材料の固有発光波長の1つ以上と一致する形状を意味する。本明細書において使用される「サブ波長サイズ」という用語は、その寸法が、OLEDの前記有機発光層における前記有機発光材料の固有発光波長のいずれかよりも小さい形状を意味する。固有発光波長は、OLEDの前記有機発光層の屈折率から離れた(divided)自由空間に発光していると仮定した場合に、前記有機発光材料が発するであろう波長を意味する。
【0017】
OLEDについての更なる詳細及び上述した定義は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる特許文献4において見ることができる。
【0018】
近年、表面プラズモンポラリトン又は局在化表面プラズモンポラリトンの光電子デバイスでの使用が、OLED業界で認識されてきている。しかしながら、これらのシステムは、発光体の輻射速度を向上させることと、表面プラズモンモードへの無輻射性エネルギー移動(クエンチングとしても知られる)を防ぐこととの間のトレードオフをバランスさせることに依っている。輻射速度の向上と無輻射性クエンチングはいずれも、発光材料とプラズモン材料との間の距離の強い関数である。輻射速度の向上を達成するために、これまでに報告されるところによれば、発光材料とプラズモン材料層との間に誘電スペーシング層を用いてクエンチングを防いでいる。誘電スペーシング層の正確な厚みは、多数の因子に依存する。この多数の因子としては、例えば、プラズモン材料の組成、プラズモン材料層の厚み、プラズモン材料層がパターン化されているかどうか、プラズモン材料層の表面粗さ、プラズモン材料がナノ粒子の形態で設けられる場合には、ナノ粒子のサイズ及び形状、プラズモン材料層に接触する誘電スペーサー層の誘電率、及び発光材料の発光波長などが挙げられる。
【発明を実施するための形態】
【0043】
概して、OLEDは、アノード及びカソードの間に配置され、それらと電気的に接続された少なくとも1つの有機層を含む。電流が印加されると、アノードが正孔を注入し、カソードが電子を有機層(複数可)に注入する。注入された正孔及び電子は、逆帯電した電極にそれぞれ移動する。電子及び正孔が同じ分子上に局在する場合、励起エネルギー状態を有する局在電子正孔対である「励起子」が形成される。光は、励起子が緩和した際に、光電子放出メカニズムを介して放出される。いくつかの事例において、励起子はエキシマー又はエキサイプレックス上に局在し得る。熱緩和等の無輻射メカニズムが発生する場合もあるが、概して望ましくないとみなされている。
【0044】
初期のOLEDは、例えば、参照によりその全体が組み込まれる米国特許第4,769,292号において開示されている通り、その一重項状態から光を放出する発光分子(「蛍光」)を使用していた。蛍光発光は、概して、10ナノ秒未満の時間枠で発生する。
【0045】
ごく最近では、三重項状態から光を放出する発光材料(「リン光」)を有するOLEDが実証されている。参照によりその全体が組み込まれる、Baldoら、「Highly Efficient Phosphorescent Emission from Organic Electroluminescent Devices」、395巻、151〜154、1998;(「Baldo−I」)及びBaldoら、「Very high−efficiency green organic light emitting devices based on electrophosphorescence」、Appl.Phys.Lett.、75巻、3号、4〜6(1999)(「Baldo−II」)。リン光については、参照により組み込まれる米国特許第7,279,704号5〜6段において更に詳細に記述されている。
【0046】
図1は、有機発光デバイス100を示す。図は必ずしも一定の縮尺ではない。デバイス100は、基板110、アノード115、正孔注入層120、正孔輸送層125、電子ブロッキング層130、発光層135、正孔ブロッキング層140、電子輸送層145、電子注入層150、保護層155、カソード160、及びバリア層170を含み得る。カソード160は、第一の導電層162及び第二の導電層164を有する複合カソードである。デバイス100は、記述されている層を順に堆積させることによって製作され得る。これらの種々の層の特性及び機能並びに材料例は、参照により組み込まれるUS7,279,704、6〜10段において更に詳細に記述されている。
【0047】
これらの層のそれぞれについて、更なる例が利用可能である。例えば、フレキシブル及び透明基板−アノードの組合せは、参照によりその全体が組み込まれる米国特許第5、844、363号において開示されている。p−ドープされた正孔輸送層の例は、参照によりその全体が組み込まれる米国特許出願公開第2003/0230980号において開示されている通りの、50:1のモル比でm−MTDATAにF
4−TCNQをドープしたものである。発光材料及びホスト材料の例は、参照によりその全体が組み込まれるThompsonらの米国特許第6,303,238号において開示されている。n−ドープされた電子輸送層の例は、参照によりその全体が組み込まれる米国特許出願公開第2003/0230980号において開示されている通りの、1:1のモル比でBPhenにLiをドープしたものである。参照によりその全体が組み込まれる米国特許第5,703,436号及び同第5,707,745号は、上を覆う透明の、導電性の、スパッタリング蒸着したITO層を持つMg:Ag等の金属の薄層を有する複合カソードを含むカソードの例を開示している。ブロッキング層の理論及び使用は、参照によりその全体が組み込まれる米国特許第6,097,147号及び米国特許出願公開第2003/0230980号において更に詳細に記述されている。注入層の例は、参照によりその全体が組み込まれる米国特許出願公開第2004/0174116号において提供されている。保護層についての記述は、参照によりその全体が組み込まれる米国特許出願公開第2004/0174116号において見ることができる。
【0048】
図2は、反転させたOLED200を示す。デバイスは、基板210、カソード215、発光層220、正孔輸送層225、及びアノード230を含む。デバイス200は、記述されている層を順に堆積させることによって製作され得る。最も一般的なOLED構成はアノードの上に配置されたカソードを有し、デバイス200はアノード230の下に配置されたカソード215を有するため、デバイス200は「反転させた」OLEDと称されることがある。デバイス100に関して記述されたものと同様の材料を、デバイス200の対応する層において使用してよい。
図2は、いくつかの層が如何にしてデバイス100の構造から省略され得るかの一例を提供するものである。
【0049】
図1及び2において例証されている単純な層構造は、非限定的な例として提供されるものであり、本発明の実施形態は多種多様な他の構造に関連して使用され得ることが理解される。記述されている特定の材料及び構造は、事実上例示的なものであり、他の材料及び構造を使用してよい。機能的なOLEDは、記述されている種々の層を様々な手法で組み合わせることによって実現され得るか、又は層は、設計、性能及びコスト要因に基づき、全面的に省略され得る。具体的には記述されていない他の層も含まれ得る。具体的に記述されているもの以外の材料を使用してよい。本明細書において提供されている例の多くは、単一材料を含むものとして種々の層を記述しているが、ホスト及びドーパントの混合物等の材料の組合せ、又はより一般的には混合物を使用してよいことが理解される。また、層は種々の副層を有してもよい。本明細書における種々の層に与えられている名称は、厳しく限定することを意図するものではない。例えば、デバイス200において、正孔輸送層225は正孔を輸送し、正孔を発光層220に注入し、正孔輸送層又は正孔注入層として記述され得る。一実施形態において、OLEDは、カソード及びアノードの間に配置された「有機層」を有するものとして記述され得る。有機層は単層を含んでいてよく、又は、例えば
図1及び2に関して記述されている通りの異なる有機材料の多層を更に含んでいてよい。
【0050】
参照によりその全体が組み込まれるFriendらの米国特許第5,247,190号において開示されているもののようなポリマー材料で構成されるOLED(PLED)等、具体的には記述されていない構造及び材料を使用してもよい。更なる例として、単一の有機層を有するOLEDが使用され得る。OLEDは、例えば、参照によりその全体が組み込まれるForrestらの米国特許第5,707,745号において記述されている通り、積み重ねられてよい。OLED構造は、
図1及び2において例証されている単純な層構造から逸脱してよい。例えば、基板は、参照によりその全体が組み込まれる、Forrestらの米国特許第6,091,195号において記述されている通りのメサ構造及び/又はBulovicらの米国特許第5,834,893号において記述されている通りのくぼみ構造等、アウトカップリングを改良するための角度のついた反射面を含み得る。
【0051】
別段の規定がない限り、種々の実施形態の層のいずれも、任意の適切な方法によって堆積され得る。有機層について、好ましい方法は、参照によりその全体が組み込まれる米国特許第6,013,982号及び同第6,087,196号において記述されているもの等の熱蒸着、インクジェット、参照によりその全体が組み込まれるForrestらの米国特許第6,337,102号において記述されているもの等の有機気相堆積(OVPD)、並びに参照によりその全体が組み込まれる米国特許第7,431,968号において記述されているもの等の有機気相ジェットプリンティング(OVJP)による堆積を含む。他の適切な堆積法は、スピンコーティング及び他の溶液ベースのプロセスを含む。溶液ベースのプロセスは、好ましくは、窒素又は不活性雰囲気中で行われる。他の層について、好ましい方法は熱蒸着を含む。好ましいパターニング法は、参照によりその全体が組み込まれる米国特許第6,294,398号及び同第6,468,819号において記述されているもの等のマスク、冷間圧接を経由する堆積、並びにインクジェット及びOVJD等の堆積法のいくつかに関連するパターニングを含む。他の方法を使用してもよい。堆積する材料は、特定の堆積法と適合するように修正され得る。例えば、分枝鎖状又は非分枝鎖状であり、且つ好ましくは少なくとも3個の炭素を含有するアルキル及びアリール基等の置換基は、溶液プロセシングを受ける能力を増強するために、小分子において使用され得る。20個以上の炭素を有する置換基を使用してよく、3〜20個の炭素が好ましい範囲である。非対称構造を持つ材料は、対称構造を有するものよりも良好な溶液プロセス性を有し得、これは、非対称材料のほうが再結晶する傾向が低くなり得るからである。溶液プロセシングを受ける小分子の能力を増強するために、デンドリマー置換基が使用され得る。
【0052】
本発明の実施形態にしたがって製作されたデバイスは、バリア層を更に含んでいてよい。バリア層の1つの目的は、電極及び有機層を、水分、蒸気及び/又はガス等を含む環境における有害な種への損傷性暴露から保護することである。バリア層は、基板、電極の上、下若しくは隣に、又はエッジを含むデバイスの任意の他の部分の上に堆積し得る。バリア層は、単層又は多層を含んでいてよい。バリア層は、種々の公知の化学気相堆積技術によって形成され得、単相を有する組成物及び多相を有する組成物を含み得る。任意の適切な材料又は材料の組合せをバリア層に使用してよい。バリア層は、無機若しくは有機化合物又は両方を組み込み得る。好ましいバリア層は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第7,968,146号、PCT特許出願第PCT/US2007/023098号及び同第PCT/US2009/042829号において記述されている通りの、ポリマー材料及び非ポリマー材料の混合物を含む。「混合物」とみなされるためには、バリア層を構成する前記のポリマー及び非ポリマー材料は、同じ反応条件下で及び/又は同時に堆積されるべきである。ポリマー材料対非ポリマー材料の重量比は、95:5から5:95の範囲内となり得る。ポリマー材料及び非ポリマー材料は、同じ前駆体材料から作成され得る。一例において、ポリマー材料及び非ポリマー材料の混合物は、ポリマーケイ素及び無機ケイ素から本質的になる。
【0053】
本発明の実施形態にしたがって作製されたデバイスは、種々の電気製品又は中間部品に組み込まれることができる多種多様な電子部品モジュール(又はユニット)に組み込まれることができる。このような電気製品又は中間部品としては、エンドユーザーの製品製造者によって利用されることができるディスプレイスクリーン、照明デバイス(離散的光源デバイス又は照明パネル等)が挙げられる。このような電子部品モジュールは、駆動エレクトロニクス及び/又は電源を任意に含むことができる。本発明の実施形態にしたがって作製されたデバイスは、組み込まれた1つ以上の電子部品モジュール(又はユニット)を有する多種多様な消費者製品に組み込まれることができる。このような消費者製品は、1つ以上の光源及び/又は1つ以上のある種の表示装置を含む任意の種類の製品を含む。このような消費者製品の幾つかの例としては、フラットパネルディスプレイ、コンピュータモニター、メディカルモニター、テレビ、掲示板、屋内若しくは屋外照明及び/又は信号送信用のライト、ヘッドアップディスプレイ、完全又は部分透明ディスプレイ、フレキシブルディスプレイ、レーザープリンター、電話、携帯電話、タブレット、ファブレット、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)、ラップトップコンピュータ、デジタルカメラ、カムコーダー、ビューファインダー、マイクロディスプレイ、3−Dディスプレイ、車、大面積壁、劇場又はスタジアムのスクリーン、或いは看板を含む。パッシブマトリックス及びアクティブマトリックスを含む種々の制御メカニズムを使用して、本発明にしたがって製作されたデバイスを制御することができる。デバイスの多くは、18℃から30℃、より好ましくは室温(20〜25℃)等、ヒトに快適な温度範囲内での使用が意図されているが、この温度範囲外、例えば、−40℃〜+80℃で用いることもできる。
【0054】
本開示の態様によれば、エネルギーが通常失われてしまうので、金属電極における表面プラズモンポラリトン(「SPP」)の無輻射性モードへの励起子エネルギー移動を防止又は阻害しようとしてきた従来の教示と異なり、開示の方法は、意図的にできる限り多くのエネルギーを無輻射性モードにし、次いで、アウトカップリング層を用いて、そのエネルギーを光として自由空間に取り出す。
【0055】
本開示の態様によれば、有機発光材料を含む有機発光層を含むOLEDの動作を改善するための方法が開示される。前記方法は、前記有機発光層からの閾距離以内に、前記有機発光材料と無輻射的に結合する、表面プラズモン共鳴を示すプラズモン材料を含むエンハンスメント層を位置させることによって、前記エンハンスメント層における前記有機発光材料からの励起状態エネルギーの表面プラズモンポラリトンへの無輻射性遷移を最大にすることと、前記エンハンスメント層の隣りに設けられるアウトカップリング層を通して、前記表面プラズモンポラリトンからのエネルギーを散乱することによって、前記エンハンスメント層から自由空間に光を発することとを含み、前記有機発光材料は、前記エンハンスメント層の存在によって、全無輻射性崩壊速度定数及び全輻射性崩壊速度定数を有し、前記閾距離は、前記全無輻射性崩壊速度定数が、前記全輻射性崩壊速度定数と等しい場所である。前記発光材料が前記エンハンスメント層に近いほど、OLED性能は向上すると予想される。幾つかの実施形態においては、前記アウトカップリング層によって自由空間にアウトカップリングされる光の波長を調節するために、前記エンハンスメント層と前記アウトカップリング層との間に介在層が設けられる。
【0056】
発光体からの励起子エネルギーがSPPの無輻射性モードに十分に捕捉された後、前記アウトカップリング層を通してSPPエネルギーを散乱することによって、このエネルギーは、前記エンハンスメント層から光として自由空間に発せられる。
【0057】
前記エンハンスメント層は、プラズモン材料、光学活性メタマテリアル、又はハイパーボリックメタマテリアルから構成することができる。本明細書において使用される場合、プラズモン材料は、電磁スペクトルの可視又は紫外領域において誘電率の実部がゼロを横切る材料である。一般に、メタマテリアルは、異なる材料から構成され、全体として、その材料部分の合計とは異なる作用をする媒質である。特に、本発明者らは、光学活性メタマテリアルを、負の誘電率(permittivity)と負の透磁率を有する材料と定義する。
【0058】
一方、ハイパーボリックメタマテリアルは、空間的方向が異なると、誘電率又は透磁率の符号が異なる異方性媒質である。光学活性メタマテリアル及びハイパーボリックメタマテリアルは、媒質が、光の波長の長さスケールで、伝播方向において均一に見える点で、分散ブラッグ反射器(Distributed Bragg Reflectors)(「DBR」)などの他の多くのフォトニック構造と厳密に区別される。当業者が理解できる用語を使用すると、伝播方向におけるメタマテリアルの誘電率は、有効媒質近似で記述することができる。プラズモン材料及びメタマテリアルは、OLED性能を様々な方法で向上させることができる、光の伝播を制御するための方法を提供する。
【0059】
幾つかの実施形態においては、前記エンハンスメント層は、前述した材料のフィルム層として設けられる。一つの好ましい実施形態においては、前記エンハンスメント層は、周期的、準周期的、又はランダムに配列される波長サイズの形状、又は周期的、準周期的、又はランダムに配列されるサブ波長サイズの形状から形成される少なくとも一組の格子である。他の好ましい実施形態においては、前記波長サイズの形状及び前記サブ波長サイズの形状は、シャープエッジを有する。
【0060】
格子とは、本質的に同一、平行、長尺である要素の規則的な間隔を有する集合体を意味する。格子は、通常、一組の長尺要素からなるが、二組からなっていてもよく、この場合、第2の組が、通常、第1の組と異なる角度を向いている。例えば、第2の組は、第1の組と直交していてもよい。前記エンハンスメント層の格子の実施形態について、以下、更に詳細に説明する。
【0061】
OLED発光体の発光速度定数の上昇は、前記エンハンスメント層からの前記発光体の距離に大きく依存する。前記発光体が閾距離よりも近いと、より良好な性能を達成するためには、前記発光材料を前記エンハンスメント層により近づけることが必要である。より良好なOLED性能を達成するための、前記エンハンスメント層から発光材料(「EML」)を含む前記有機発光層までの好ましい距離は、100nm以下であり、より好ましくは、60nm以下であり、最も好ましくは、25nm以下である。本開示の他の態様によれば、ある場合には、製造性の理由から、前記エンハンスメント層と前記EMLとの間の距離を5〜100nmとすることが望ましいことがあり、より好ましくは、5〜60nm、最も好ましくは、5〜25nmである。前記EMLと前記エンハンスメント層との間の前記望ましい距離を達成するためには、前記EMLと前記エンハンスメント層とが直接接触しないように、前記EMLと前記エンハンスメント層との間に各種機能性OLED層の1つ以上を設けることが必要であることがある。そのような機能性OLED層は、当該技術分野でよく知られている。例えば、前記エンハンスメント層と前記発光材料層との間にホール注入層を含有させて、OLEDの動作電圧を低下させることができる。
図10及び
図11は、前記EMLと前記エンハンスメント層との間に設けられていてもよい各種機能性OLED層を示すOLEDデバイス構造を示す。この実施形態における最小閾距離は、5nmであることが望ましい。その理由は、本発明者らが、その値が、各種材料が実際に機能する(working functional)OLED層を形成するのに必要な略最小厚みであることを見出したからである。
【0062】
SPPの無輻射性モードを用いることと、前記EMLと前記エンハンスメント層との間距離を閾距離以下に制御することの利点に対する理解は、発光材料の崩壊速度定数から始まる。任意の発光体の場合、フォトンの量子収率(QY)は、輻射性と無輻射性崩壊速度定数の比として表現することができ、励起状態当たりに発せられるフォトンの数として明確に定義される。
【数1】
式中、
【数2】
は、全ての輻射性プロセスの合計であり、
【数3】
は、全ての無輻射性プロセスの合計である。自由空間において孤立した発光体の場合、分子輻射及び無輻射性崩壊速度定数k
0rad及びk
0non−radを定義することができる。孤立分子の場合、量子収率(QY°)は、下式で表される。
【数4】
しかしながら、OLEDなどの光電子デバイスにおいては、全輻射性及び無輻射性崩壊速度定数に影響を及ぼす多くの他のプロセスが存在する。これらの幾つかは、金属などのプラズモン材料における表面プラズモンの輻射性及び無輻射性崩壊モードへのエネルギー移動である。これらのモードは、発光材料がプラズモン材料の近傍にあるとき、重要になる。これは、プラズモン材料の存在下での全輻射性崩壊速度定数及び全無輻射性崩壊速度定数の両方の値の上昇をもたらす。量子収率において、これらの更なるプロセスは、具体的に下式で説明することができる。
【数5】
式中、
【数6】
と
【数7】
は、それぞれ、SPPと相互作用するときの発光体の輻射性及び無輻射性崩壊速度定数である。
【0063】
図3に、
【数8】
と
【数9】
の定性的プロットを、金属膜などのエンハンスメント層からの発光材料の距離の関数として示す。エンハンスメント層に近い距離では、
【数10】
は、
【数11】
項によって支配され、
【数12】
は、
【数13】
によって支配される。したがって、
図3は、全輻射性及び無輻射性崩壊速度についても記述する。これは、全輻射性崩壊速度定数:
【数14】
の、全無輻射性崩壊速度定数:
【数15】
に対する比である
図3の右側軸に示される。
図3の左側軸に示されるように、2つのプラズモンベース崩壊速度定数は、金属層からの発光体の距離に対して異なる関数従属性を有する(この場合、無輻射性の場合は、1/r^6、輻射性速度の場合は、1/r^3)。エンハンスメント層からの距離に対する異なる従属性は、輻射性崩壊速度定数が表面プラズモンとの相互作用により最大速度定数となる距離の範囲に起因する。この特定範囲内の距離の場合、そのフォトン収率は、エンハンスメント層がない孤立分子のフォトン収率よりも大きくなり、QYを上昇させる。これは、量子収率が、金属膜からの発光材料の距離の関数としてプロットされている
図4Aのプロットに示される。無輻射性崩壊速度定数の値が輻射性崩壊速度に近くなると、QYは低下し始め、ある特定距離でQYのピークが生じる。
【0064】
発光材料とエンハンスメント層の所定のペアの場合、全無輻射性崩壊速度定数と全輻射性崩壊速度定数が存在する。発光材料層がエンハンスメント層に近づくにつれて、無輻射性崩壊速度定数は、輻射性崩壊速度定数よりも急速に大きくなる。ある距離で、エンハンスメント層の存在下での発光材料の全無輻射性崩壊速度定数は、エンハンスメント層の存在下での発光材料の全輻射性崩壊速度定数と等しくなる。これを、本明細書において、閾距離1と称する。閾距離1は、以下の記述が成り立つエンハンスメント層からの発光層の距離である。
【数16】
【0065】
閾距離1よりもエンハンスメント層に近い距離では、全無輻射性崩壊速度は、輻射性崩壊速度よりも大きく、量子収率は、0.5又は50%よりも小さい。これらの距離では、無輻射性崩壊速度定数が輻射性崩壊速度定数を超えるので、エネルギーが発光体から放出される速度に遥かに大きな速度上昇がある。閾距離1以下のエンハンスメント層−発光体間距離は、次の条件を満たす。
【数17】
【0066】
閾距離1よりも大きな距離では、全輻射性崩壊速度定数は、全無輻射性崩壊速度定数よりも大きい。しかしながら、発光材料の量子収率は、エンハンスメント層が存在しない場合よりも低下する。したがって、発光体は、依然としてクエンチされるが、これは、典型的な光電子デバイスにおいて避けられているものの、本発明の作用に必須であるプロセスである。
【0067】
クエンチングが始まるエンハンスメント層からの発光体の距離を、本明細書では、閾距離2と定義する。この距離では、エンハンスメント層の存在下及び不存在下での発光体のQYは同じである。発光体をエンハンスメント層に近づけると、QYは低下する。閾距離2は、以下の記述が成り立つエンハンスメント層からの発光層の距離である。
【数18】
式中、QY
0は、発光材料の固有量子収率であり、QYは、エンハンスメント層が存在する場合の量子収率である。これは、エンハンスメント層のプラズモン材料による輻射性及び無輻射性崩壊速度定数を説明するときに、以下の式を導く。
【数19】
ここで、
【数20】
について解くことで、閾距離2での崩壊速度定数として次の式を得る。
【数21】
概念上は、閾距離2は、エンハンスメント層が存在しない発光材料の量子収率の値に等しい量子収率の値から、より簡単に理解される。
図4Aを参照のこと。
【0068】
閾距離1又は閾距離2のいずれを考慮しても、閾距離の物理的値は、表面プラズモンポラリトンの頻度、発光材料の振動子強度、及び発光材料層の誘電率などの多数の因子に依存する。したがって、有機発光材料とエンハンスメント層のプラズモン材料の好適な材料の組を選択することによって、閾距離を調節することができる。
【0069】
無輻射性エネルギー移動OLEDの測定可能パラメータ
無輻射性エネルギー移動OLEDは、発光材料の量子収率の測定値によって、他のプラズモンOLEDと区別することができる。エンハンスメント層−発光体距離が様々である、エンハンスメント層を有するが電極は有さない多数のOLEDデバイスと、エンハンスメント層を有さない1つのサンプルを作製する。各サンプルにおいて、吸収される各フォトン当たりに発せられるフォトンの数として定義される量子収率を測定する。閾距離1は、全輻射性崩壊速度定数が全無輻射性崩壊速度定数と等しい距離であり、この距離で、フォトルミネッセント量子収率は、エンハンスメント層なしで50%になる。閾距離2では、量子収率は、エンハンスメント層なしでの値と同じになる(
図4A参照)。SPPカップリングが、輻射性又は無輻射性速度を上昇させているかどうかについての更なる測定は、OLEDの温度を測定することである。励起子の無輻射性クエンチングは、フォトンではなく熱を発するので、OLEDの温度は上昇する。OLEDに発生する熱は、アウトカップリング層が存在しない場合、無輻射性再結合励起子の収率に比例する。
【数22】
発光体と金属膜との間の距離が変わると、OLEDの全伝熱性は、本質的に一定のままであるが、熱収率(heat yield)は、大きく変化する。
【0070】
図4Bは、一定動作電流密度で発光体と金属膜層との間の距離が変わる場合の、OLEDの定常状態温度を模式的に示す。発光層の金属表面からの距離が大きい場合、輻射性又は無輻射性崩壊速度定数の向上はない。OLEDの温度は、全動作電流密度と、発光材料の効率にのみ依存する。発光体が金属膜層に近づくと、輻射性崩壊速度定数が上昇し、フォトン収率が上昇し、OLED中で発生する熱を低減し、且つOLEDの定常状態温度を低減する。閾距離2よりも短い距離の場合、発光体の励起子は、熱としてクエンチされ、OLEDの規格化された温度が上昇する。
【0071】
本発明者ら以外にも、本明細書で例として提案する2種の温度関連実験、即ち、無輻射性表面プラズモン速度定数がクエンチングをもたらすのに十分大きい状態で、発光体がエンハンスメント層から閾距離2以内に位置するかどうかを判定するために行うことができる実験、を提案することができる。無輻射性崩壊速度定数がクエンチングをもたらしている場合、輻射性崩壊速度定数が量子収率を上昇させている場合よりも、OLEDの温度は上昇する。1つ目の実験では、OLEDの動作温度を、様々な金属膜−発光体距離を有する多数のOLEDについて測定する。一定電流密度で動作する各デバイスにおいて、OLEDの温度を測定する。OLEDの温度は、金属膜−発光体距離が閾距離2よりも短くなるにつれて上昇する。2つ目の実験では、金属膜に代えて、強い表面プラズモン共鳴を有さない透明伝導性酸化物を用いるコントロールOLEDを構築することができる。そのような材料の1つは、ITOである。ITO層を有するコントロールデバイスの温度を測定し、金属膜を有する他のデバイスと比較することができる。金属膜を有するOLEDの温度が、ITOを有するコントロールデバイスよりも高い場合、無輻射性速度が支配的であり、金属膜と発光体との間の距離が閾距離2以下である。
【0072】
有機発光材料からの距離がいずれかの閾距離以内であるエンハンスメント層を設けるために、他の多数のOLED機能層の1つをエンハンスメント層及び有機層との間のスペースに設けることができる。そのようなOLED機能層は、当業者によく知られている。そのようなOLED機能層の幾つかの例が、例えば、
図10及び
図11に示される。
【0073】
OLED性能の上昇は、エンハンスメント層に遷移する発光材料エネルギーの励起状態により生じる。OLED蛍光又は燐光分子のエンハンスメント層への双極子モーメントカップリングを向上すると、(1)発光体の発光速度定数が上昇する、及び(2)分子からエンハンスメント層へ移動するエネルギーが上昇する。
【0074】
現象(1)は、エンハンスメント層のユニークな光学特性の結果である。エンハンスメント層は、発光体が、あるスペクトル範囲に亘って状態密度の上昇を経験するモードを変更する。状態密度の上昇は、発光体の輻射性及び無輻射性崩壊速度定数を上昇させる。状態密度の上昇が広帯域ではない場合には、状態密度の上昇が発光体の発光スペクトルを変える。これらの効果は、Purcell効果と称される。
【0075】
ハイパーボリックメタマテリアル及びプラズモン材料は、広帯域のフォトン状態を有するので、OLEDにおけるPurcell効果の向上に非常に適している。これは、フォトンの状態密度の上昇が狭いスペクトル範囲で生じるDBR又はマイクロキャビティと対照的である。ハイパーボリックメタマテリアルは、量子ドット及びレーザー染料の発光速度定数と発光強度を上昇させるのに用いられている。
【0076】
ハイパーボリックメタマテリアル及びプラズモン材料は、元来広帯域であるが、パターニングによって、狭く又は共鳴するようにすることができる。パターニングは、横方向又は縦方向のいずれかで行うことができる。以下、パターニングについて、より詳細に述べる。
【0077】
現象(1)は、エンハンスメント層をOLEDに導入することにより、発光体がサンプリング(sample)できるフォトン状態の上昇の結果である。次いで、現象(1)は、OLED性能に対して変化をもたらす。輻射性崩壊速度定数の上昇により、所定の電流密度で、OLEDデバイスの発光層内での励起子密度は、エンハンスメント層がないデバイスに対してより低くなる。これは、高輝度での、三重項三重項消滅及び三重項−電荷消滅など2種類の粒子衝突に依存する損失メカニズムを低減し、高輝度でのOLED性能を改善する。発光体の発光速度定数の上昇もまた、発光体が励起状態で費やす平均時間を短縮し、所定動作電流密度でOLEDに蓄えられる合計エネルギーを低減する。このことは、分子がエージングにより非発光種になる速度の低下をもたらし、その結果、OLEDデバイスの寿命をより長くすると予想される。
【0078】
エンハンスメント層によるPurcell効果と光学マイクロキャビティとの間には、大きな違いがある。1つ目は、層の厚み(物理的又は光学的)が非常に異なる点である。
【0079】
エンハンスメント層の効果は、キャビティの全厚みに依存せず、発光体からエンハンスメント層までの距離にのみ依存する。更に、構成及び発せられたフォトンの部分的反射鏡との干渉に依存するマイクロキャビティに生じるような、性能の上昇にノード(節、node)がない。代わりに、性能の向上は、発光材料がエンハンスメント層から遠去かるにつれて低下する。エンハンスメント層は、ミラー又はミラー状である必要はなく、部分的に反射性である必要もない。最後に、エンハンスメント層の厚みは、OLED発光体の特性を変えるのに、分散ブラッグ反射器の場合と同様に、光の波長のオーダーである必要はない。
【0080】
現象(2)により、エンハンスメント層に対する発光分子の合計エネルギーの散逸がより大きくなる。これにより、基板モード及びコンタクト層に失われる発光が低減される。光がエンハンスメント層から自由空間に取り出されると仮定すると、現象(2)により、1電子当たり発せられるフォトンの数がより大きくなる。これらの2つの結果は、独立して又は協力して働き、OLED性能を向上させる。
【0081】
好ましくは、エンハンスメント層は、これまでOLEDに用いられている典型的なDBR及びマイクロキャビティと異なり、光の波長に対して均一であるようにする必要がある。前述のように、エンハンスメント層は、例えば、金属膜、光学活性メタマテリアル、及びハイパーボリックメタマテリアル、又はそれらの任意の組合せの1つ以上から形成することができる。
【0082】
前述のように、幾つかの実施形態においては、エンハンスメント層は、金属膜、光学活性メタマテリアル、及びハイパーボリックメタマテリアルの単一層であることができる。
【0083】
性能の更なる向上は、エンハンスメント層をパターン化すると達成することができる。好ましくは、そのようなパターン化されたエンハンスメント層は、周期的、準周期的、又はランダムに配列される波長サイズの形状、又は周期的、準周期的、又はランダムに配列されるサブ波長サイズの形状から形成される少なくとも一組の格子である。1つの好ましい実施形態においては、波長サイズの形状及びサブ波長サイズの形状は、シャープエッジを有することができる。
【0084】
エンハンスメント層のパターニングにより、デバイス性能を各種方法で向上させることができる。第1に、シャープエッジを有する波長サイズ又はサブ波長サイズの形状でエンハンスメント層をパターニングすると、発光種の水平方向に向いた分子双極子により効率的に結合するフリンジング場(fringing fields)が生成される。これは、発光材料の無輻射性崩壊速度定数を上昇させ、発光体の耐久性と空中にアウトカップリングされる光の合計量を上げることができる。
【0085】
第2の性能向上は、共鳴プラズモンモードを生成するエンハンスメント層を周期的な波長サイズの形状でパターニングすると得られる。パターニングの周期性の上昇に伴い、表面プラズモンモードの帯域幅を狭めることができる。周期的ホールアレイでパターン化されたプラズモン材料などの高度に周期的な構造は、上昇したクオリティファクター、より狭いスペクトル幅、又はより低い損失を有し得る共鳴プラズモンモードを生成する。表面プラズモンモードの狭まった帯域は、ポテンシャル的に他の波長の発光体を変更せずに、表面プラズモンの特定発光波長との選択的カップリングを可能にする。選択的カップリングは、白色OLED及び積層OLEDなど、多数の発光体を有するデバイス構造に有用であり得る。エンハンスメント層は、ランダム又は準周期的波長サイズ形状を、マルチ波長発光体又は広帯域発光体における応答帯域を広げるために用いることができる。
【0086】
最後に、エンハンスメント層のパターニングにより、表面プラズモンの無輻射性モードの空中へのアウトカップリングを容易にすることができる。これは、表面プラズモンの無輻射性モードからのエネルギーをパターニングにより直接空中に散乱する、又は表面プラズモンの無輻射性モードとアウトカップリング層との間のカップリングを上昇させることにより達成できる。幾つかの実施形態においては、エンハンスメント層のパターニングは、発光層の発光スペクトルにおける全ての波長において、表面プラズモンの無輻射性モードからのエネルギーを空中にアウトカップリングするように構成することができる。他の実施形態においては、エンハンスメント層のパターニングは、発光層から発せられる波長のスペクトルにおける1つの波長又は一部の波長を意図して構成することができる。これは、また、本明細書に開示されるアウトカップリング層にも当てはまる。
【0087】
パターン化されたエンハンスメント層は、各種方法で作製することができる。最も正確な方法としては、フォトリソグラフィー、インプリントリソグラフィー、又は電子ビームリソグラフィーが挙げられる。準周期性は、エンハンスメント層に自己組織化層を堆積する又は自己組織化層をそのテンプレートにすることにより達成できる。準周期的又はランダムなパターニングは、OLEDデバイスの基板を粗してエンハンスメント層にテクスチャを付与することにより達成できる。これらの方法を用いて、ベタ(solid)金属膜をパターン化し、光学活性メタマテリアルエンハンスメント層を達成できる。エンハンスメント層は、基板そのものの上にパターン化して、パターン化エンハンスメント層の上に直接OLEDが堆積することができる、又はエンハンスメント層は、別の基板にパターン化して、次いでOLEDデバイスに載置することができる。載置方法としては、スタンピング、ウェハーボンディング、ウェット転写、及び超音波ボンディングが挙げられる。
【0088】
共鳴プラズモン効果を生成するためのエンハンスメント層のパターニングは、2次元(2D)又は3次元(3D)パターニングにより達成できる。周期的にパターン化されたエンハンスメント層も、格子と称することができる。2D格子において、格子を形成する構造的形状、即ち、波長サイズ又はサブ波長サイズ形状は、エンハンスメント層の面内において一方向(即ち、
図13Aにラベルされるようにx方向又はy方向)に沿って均一な周期的パターン状に配列される。
図13Aと
図13Bのトップダウン図は、その例を示す。3D格子において、エンハンスメント層は、二組の格子から形成され、各組の格子は、異なる方向を向いている。幾つかの好ましい実施形態においては、二組の格子における構造的形状は、互いに直交する。3D格子を構成する二組の格子の各格子における波長サイズ又はサブ波長サイズの形状によって形成される周期的パターンは、エンハンスメント層の面における一方向に沿って均一又は不均一であることができる(即ち、エンハンスメント層の面におけるx方向
又はy方向)。
図13Aと
図13Bにおいて、暗色領域と白色領域は、エンハンスメント層を形成する2種の異なる材料を表す。当業者に理解されるように、各材料(即ち、図中の暗色領域又は白色領域)は、格子を形成する波長サイズ又はサブ波長サイズの形状と考えることができる。エンハンスメント層が多数の層の積層体を含む(例えば、
図5及び6に記載される単位セル)他の実施形態においては、積層体における層の1つ以上が2D又は3Dパターン化格子層であることができる。
【0089】
また、上に特定されるエンハンスメント層のラテラルパターニングを用いて、スペクトル幅、周波数、及びエンハンスメント層プラズモンモードの損失を調整することができる。狭いプラズモンエンハンスメントは、発光体の色調節を可能にする。損失のある(lossy)エンハンスメント層が少ないと、OLEDデバイスの効率を上昇させる。エンハンスメント層における共鳴プラズモンモードは、発光体の発光の速度定数に対するエンハンスメントを上げることができる。
【0090】
エンハンスメント層は、少なくとも一組の格子として形成することができる。1つの層が1つの格子パターンを有する2Dパターン化格子の実施形態においては、格子は、波長サイズ又はサブ波長サイズの形状が一方向に沿って均一に配列される周期的パターンを有することができる。波長サイズ又はサブ波長サイズの形状は、10〜90%デューティサイクル(duty cycle)を有する100〜2000nmピッチ、より好ましくは、30〜70%デューティサイクルを有する20〜1000nmピッチで配列することができる。パターンは、エンハンスメント層における線又は穴から構成することができる。しかしながら、パターンは、対称的である必要はない。これは、1マイクロメートルの距離に亘って局所的にパターン化し、次いで、パターンを再度繰り返す前に数マイクロメートルに亘りパターンを有さないことができる。
【0091】
3Dパターン化格子の実施形態においては、エンハンスメント層は、二組の格子から形成され、各組の格子において、波長サイズ又はサブ波長サイズの形状は、10〜90%デューティサイクルを有する100〜2000nmピッチで一方向に沿って不均一に配列され、各組の格子は、異なる方向を向いている。二組の格子は、互いに直交することができる。波長サイズ又はサブ波長サイズの形状は、10〜90%デューティサイクルを有する100〜2000nmピッチでx方向及びy方向に配列することができる。好ましくは、波長サイズ又はサブ波長サイズの形状は、x方向及びy方向の両方向で、30〜70%デューティサイクルを有する20〜1000nmピッチで配列することができる。また、3Dパターニングにも、対称性に関する要件はない。
【0092】
本開示の態様によれば、エンハンスメント層が膜層又は少なくとも一組の格子として設けられるかどうかに拘わらず、エンハンスメント層を、垂直方向に積層された繰り返し単位セルとして形成することができる。積層体の単位セルはいずれも同一であることができる、又は積層体の単位セルのそれぞれが異なる材料組成を有することができる。好ましくは、エンハンスメント層は、最大10個の単位セル、より好ましくは、最大5個の単位セルを有することができる。1つの単位セルを有する実施形態においては、そのような単位セルは、ベタ膜層であろうと格子層であろうと、プラズモン材料の単一層であることができる。但し、エンハンスメント層における単位セルのより多くが、必ずしもより高い性能を示すとは限らない点で、DBRとは異なる。
【0093】
多数の層状単位セルを有する実施形態においては、単位セルは、
図5に示すように、サブコンポーネントを有することができる。
図5は、各単位セルが2つのサブコンポーネント層S1及びS2を有する3つの単位セル310、320、及び330から構成されるエンハンスメント層300であることを特徴とする。
【0094】
幾つかの実施形態においては、各サブコンポーネント層は、更に、多数の材料層から形成することができる。そのような構成の例を
図6に示す。単位セル310において、第1のサブコンポーネントS1は、金属層311であり、第2のサブコンポーネントS2は、誘電体層312である。単位セル320において、第1のサブコンポーネントS1は、第1の金属層321と第2の金属層322を含み、第2のサブコンポーネントS2は、誘電体層323である。単位セル330において、第1のサブコンポーネントS1は、金属層331であり、第2のサブコンポーネントS2は、第1の誘電体層332と第2の誘電体層333を含む。単位セル340において、第1のサブコンポーネントS1は、第1の金属層341と第2の金属層342を含む。第2のサブコンポーネントS2は、第1の誘電体層343と第2の誘電体層344を含む。プラズモン材料は、Ag、Au、Al、Pt、及びこれらの材料の任意の組合せの合金からなる群から選択される金属であることができる。また、プラズモン材料は、伝導性のドープされた酸化物(例えば、In−Ga−ZnO及びIn−Sn酸化物など)又はドープされた窒化物であることができる。最も好ましくは、プラズモン材料は、Agである。
【0095】
幾つかの実施形態においては、エンハンスメント層は、屈折率の虚部が、400〜750nmの波長スペクトルの一部に亘って1より大きい。
【0096】
エンハンスメント層は、多数の加工技術によって堆積することができ、例えば、電子ビーム蒸着、熱蒸着、原子層堆積、スパッタリング、及び各種化学的蒸着技術などで堆積することができる。誘電体層は、小さな有機分子、高分子、広いバンドギャップの酸化物(例えば、SiO2、TiO2、Al2O3など)、絶縁性窒化物、及びドープされていない半導体(例えば、Si及びGeなど)を含むことができる。これらの材料の屈折率の実部は、1.3〜4.1であることができる。虚部は、400〜750nmの波長範囲に亘って1未満であることができる。誘電体層は、熱蒸着、インクジェットプリンティング、有機蒸気ジェットプリンティング、スピンコーティング、ドクターブレーディング、Langmuir−Blodgett法、パルスレーザー堆積、スパッタリング、及び原子層堆積などの各種化学的蒸着技術などで堆積することができる。また、光学活性メタマテリアルは、ベタ金属膜にパターン化された溝で形成することができる。膜は、上に引用した方法で堆積することができる。
【0097】
図7の例を参照すると、幾つかの実施形態においては、エンハンスメント層は、プラズモン材料の膜410と接着材料の膜412を含む積層体400である。プラズモン材料は、Ag、Au、Al、Pt、及びこれらの材料の任意の組合せの合金からなる群から選択される金属である。接着材料は、Ni、Ti、Cr、Au、Ge、Si、及びこれらの材料の任意の組合せの合金からなる群から選択される。好ましくは、接着材料は、Ni、Ti、又はGeであり、より好ましくは、Geである。1つの好ましい実施形態においては、プラズモン材料がAgであり、接着材料がGeである。
【0098】
好ましくは、プラズモン材料の層は、0.2〜50nmの厚みを有し、接着材料の層は、0.1〜10nmの厚みを有する。より好ましくは、接着材料の層は、0.2〜5nmの厚みを有する。プラズモン材料のより好ましい厚みは、正確な(exact)OLED構造に依存するが、通常、5〜30nmである。この好ましい構造を用いると、2μm×2μmの面積で測定されるエンハンスメント層のRMS表面粗さは、0〜5nmであり、より好ましくは、0〜2nmである。Ag層の抵抗値は、0.1〜100オーム/スクエアであり、より好ましくは、0.5〜20オーム/スクエアである。400〜800nmの波長範囲における好ましい構造の透明度は、40〜100%であり、より好ましくは、60〜95%である。
【0099】
エンハンスメント層は、各種方法でOLEDに組み込むことができる。
図8A〜
図8C及び
図9は、エンハンスメント層を有するトップエミッション及びボトムエミッションOLEDの例を示す。OLEDの発光は、単色、多色、又は白色であることができる。
図8A〜
図8Cは、エンハンスメント層に加えて、アノードコンタクト層とカソードコンタクト層の両方が設けられている、本開示に係るOLEDの幾つかの例を示す。
図8Aは、基板411、第1の電極412(この場合、アノード)、有機EML層413、第2の電極414(この場合、カソード)、エンハンスメント層415、介在層416、及びアウトカップリング層417を、この位置順で含むトップエミッションOLED410の例を示す。
図8Bは、透明基板421、アウトカップリング層422、介在層423、エンハンスメント層424、アノード425、有機EML層426、及びカソード427を、この位置順で含むボトムエミッションOLED420の例を示す。
図8Cは、透明基板431、アウトカップリング層432、介在層433、第1のエンハンスメント層434、アノード435、有機EML層436、カソード437、第2のエンハンスメント層438、第2の介在層439A、及び第2のアウトカップリング層439Bを、この位置順で含むツーウェイ発光OLED430を示す。
【0100】
本明細書に開示されるように、本開示に係るOLEDの幾つかの実施形態においては、OLEDは、エンハンスメント層もコンタクト層であるように構成することができる。
図9A〜9Eは、そのような例を示す。
図9Aは、透明基板511、アウトカップリング層512、介在層513、エンハンスメント層514、1層以上の光学機能層515、有機EML516、及びカソード517を、この位置順で含むボトムエミッションOLED510を示す。OLED510において、エンハンスメント層514は、アノードコンタクト層として用いられる。
図9Bは、基板521、アノード522、有機EML523、1層以上の光学機能層524、エンハンスメント層525、介在層526、及びアウトカップリング層527を、この位置順で含むトップエミッションOLED520を示す。OLED520において、エンハンスメント層525は、カソードコンタクト層として用いられる。
図9Cは、透明基板531、第1のアウトカップリング層532、第1の介在層533、第1のエンハンスメント層534、アノード535、有機EML536、1層以上の光学機能層537、第2のエンハンスメント層538、第2の介在層539A、及び第2のアウトカップリング層539Bを、この位置順で含むツーウェイ発光OLED530を示す。OLED530において、第2エンハンスメント層538は、カソードコンタクト層として用いられる。
図9Dは、透明基板541、第1のアウトカップリング層542、第1の介在層543、第1のエンハンスメント層544、1層以上の光学機能層545、有機EML546、カソード547、第2のエンハンスメント層548、第2の介在層549A、及び第2のアウトカップリング層549Bを、この位置順で含むツーウェイ発光OLED540を示す。OLED540において、第1のエンハンスメント層544は、アノードコンタクト層として用いられる。
図9Eは、透明基板551、第1のアウトカップリング層552、第1の介在層553、第1のエンハンスメント層554、第1の組の1層以上の光学機能層555、有機EML556、第2の組の1層以上の光学機能層557、第2のエンハンスメント層558、第2の介在層559A、及び第2のアウトカップリング層559Bを、この位置順で含む他のツーウェイ発光OLED550を示す。OLED540において、第1のエンハンスメント層554及び第2のエンハンスメント層558は、それぞれ、アノードコンタクト層及びカソードコンタクト層として用いられる。
【0101】
図9A〜
図9Eの例において、種々の組の1層以上の光学機能層515、524、537、545、555、557、並びにエンハンスメント層と有機EML層との間に位置するコンタクト層535及び547は、対応するエンハンスメント層が各有機EML層からの閾距離以内にあるという条件を満たすように、適切な厚みを有するように構成される。
【0102】
図8A、
図8B、及び
図9A〜9Eは、介在層を含むデバイスの実施形態を示す。しかしながら、明細書全体に亘って述べるように、介在層を含まない実施形態もまた、本開示の範囲内である。
【0103】
OLEDのコンタクト材料は、多くの場合、Fermi準位が電荷をデバイスに注入するように選択され、エンハンスメント層の金属層は、その光学的性質で選択される。しかしながら、ホール及び電子注入層を用いると、エンハンスメント層をOLEDのコンタクト層として作用させる電荷注入を促進することができる。したがって、エンハンスメント層をコンタクトとして用いることは、層の要件ではないが、製造の複雑さを低減する機会である。
【0104】
エンハンスメント層をコンタクトとして用いない場合、OLEDコンタクト層は、通常、透明伝導性酸化物(TCO)又は金属膜から構成される伝導性材料である。TCOがエンハンスメント層とEMLとの間にない場合、典型的なTCO厚みは、50〜200nmであり、より好ましい厚みは、80〜150nmである。TCOがエンハンスメント層とEMLとの間に存在する場合、合計厚みは、閾厚みよりも小さい必要がある。金属コンタクト層は、エンハンスメント層とEMLとの間にない場合、通常、7〜300nmの厚みである。
【0105】
エンハンスメント層がコンタクトとして選択される場合、2種類の方法で行うことが可能である。即ち、構造全体がコンタクトになる又はサブコンポーネントがコンタクトになる。部分的伝導性誘電材料がサブコンポーネント層に含まれる場合(それが、光学的要件を満たすとして)、エンハンスメント層全体が、伝導性となり、コンタクトとして作用する。これに対して、エンハンスメント層は、コンタクトになり得る金属層サブコンポーネントを含むことができる。これは、正確なOLED構成(トップエミッションであるかボトムエミッションであるか)に応じて、エンハンスメント層内に第1の金属層を用いること、又は最後の金属層をエンハンスメント層に用いることを含む。
図9A〜
図9Eは、エンハンスメント層がOLEDコンタクトの少なくとも1つとして用いられる場合の、OLEDデバイス内にエンハンスメント層を載置することを示す各種デバイス構成を示す。
【0106】
OLED発光体の発光速度定数の上昇は、発光体のエンハンスメント層からの距離に強く依存する。より良好なOLED性能を達成するためには、エンハンスメント層からEMLまでの好ましい距離は、閾距離以内であり、本明細書に述べる上限下限範囲内でできるだけ小さい距離である。燐光分子の場合の典型的な閾距離は、100nm未満であり、より典型的には、60nm未満である。EMLとエンハンスメント層との間の距離を短くするためには、コンタクト層、又は有機EML層とエンハンスメント層との間に設けられ得る他の1層以上の機能層の厚みを制御することによる、OLED構成の調節が必要になることがある。
図10及び
図11は、エンハンスメント層と有機EML層との間の所望の距離を達成するために用いることができる、そのような1層以上の機能層の幾つかを示すOLEDデバイスの構成の例を示す。
【0107】
図10は、ボトムエミッションOLED600を図示する。OLED600は、透明ガラス基板601、前記基板上に配置されるアウトカップリング層602、介在層603、エンハンスメント層604、第1の組の1層以上の光学機能層605、有機EML層606、第2の組の1層以上の光学機能層607、及びカソードコンタクト層608を、この位置順に含む。本開示の態様によれば、この例におけるエンハンスメント層604は、2層のサブコンポーネント層、即ち、接着層604a及びプラズモン材料膜層604bから形成される。第1の組の1層以上の光学機能層605は、保護TCO層605a、ホール注入層605b、ホール輸送層605c、及び電子ブロッキング層605dから選択することができる。第2の組の1層以上の光学機能層607は、ホールブロッキング層607a、電子輸送層607b、及び電子注入層607cから選択することができる。
【0108】
図11は、トップエミッションOLED700を図示する。OLED700は、基板701、アノード702、第1の組の1層以上の光学機能層703、有機EML層704、第2の組の1層以上の光学機能層705、エンハンスメント層706、介在層707、及びアウトカップリング層708を、この位置順に含む。第1の組の1層以上の光学機能層703は、ホール注入層703a、ホール輸送層703b、及び電子ブロッキング層703cから選択することができる。第2の組の1層以上の光学機能層705は、ホールブロッキング層705a、電子輸送層705b、及び電子注入層705cから選択することができる。エンハンスメント層706は、3つの単位セル706a、706b、及び706cの積層体を含み、各単位セルが、プラズモン材料膜716aとしてのAg、及びホスト材料膜716bからなる。そのような積層単位セル構造については、
図5及び
図6に関連して上に述べる。
【0109】
エンハンスメント層をOLEDのコンタクトとして用いる場合、エンハンスメント層により近いOLEDのEMLにおいて分子を励起状態にするために、ホール又は電子注入層として、従来とは異なる材料を用いる又は材料を全く用いないことが有益であることがある。上で定義した材料に加えて、本発明者らは、ホール注入材料は、OLEDにおけるドーパントより低い又はこれに等しいHOMOを有する任意の材料であると定義する。これにより、HILのHOMOの好ましい範囲は、−8eV〜−4.7eVとなる。重要なこととして、発光体材料そのものが、ホール注入層として働くことができる点がある。同様に、電子注入材料は、OLEDドーパントのLUMOレベルよりも僅かに低い〜高いLUMOレベルを有する材料である。EIL材料のLUMOの好ましい範囲は、−4eV〜−1.5eVである。また、電荷注入は、ドーパントそのものによって、ニートな層として又はホスト中に高度にドープされて達成することができる。
【0110】
エンハンスメント層を用いる場合、最良の結果を達成するためには、エンハンスメント層とEMLとの間の層は、閾距離よりも薄いことが好ましい。例えば、エンハンスメント層をアノードの近傍又はアノードとして用いる場合、HIL及びHTL層は、非常に薄い必要がある。OLEDのデバイス収率又は製造性を改善するために、OLEDの全体厚みを大きくする必要がある場合がある。
【0111】
理論上は、OLEDは、任意の厚みであることができる。しかしながら、より厚いOLEDの場合、電荷輸送層を通る電荷輸送における抵抗損失により動作電圧が上がると予想される。したがって、単一積層体OLEDの場合、好ましいOLEDの厚み範囲は、10〜500nmであり、より好ましくは、20〜300nmである。多数のEMLを有するOLEDの場合、厚みは、EMLの数に比例する。例えば、2EMLデバイスの好ましいOLED厚み範囲は、20〜1000nmであり、より好ましくは、40〜600nmである。
【0112】
OLEDにエンハンスメント層を用いる場合、エンハンスメント層に対向する層が発光体の性質に与える影響は、特に、励起子がEML内に閉じ込められる場合、最小限となる。しかしながら、エンハンスメント層OLEDの性能を改善するために最大化できる副次的効果がある。
【0113】
OLEDの合計厚みが変わると、発光分子にエンハンスメント層が生成する状態密度に変化が生じる。
図12は、空中での発光速度定数に対する、OLEDでの発光体の発光速度定数の算出されたエンハンスメントを、OLEDの合計厚みと発光体のピーク発光波長の関数としてプロットした図である。発光速度定数は、これらのデバイス構造では、無輻射性及び輻射性崩壊の合計であるが無輻射性崩壊に支配されている全崩壊速度定数である。エンハンスメント層−発光体距離は、一定に維持した。OLED厚みの約150nmごとに性能の上昇にノードが生じる(530nmの発光体ピーク発光を参照)。しかしながら、速度定数エンハンスメントの変化は、ピーク時に、トラフにおける場合よりも〜10〜30%高い、即ち、発光体を金属膜からより遠くに移動させる場合よりも小さい変化である。
【0114】
エンハンスメント層における表面プラズモンの面内運動量は、エンハンスメント層と境を接する層の屈折率に依存する。エンハンスメント層とアウトカップリング層との間に介在層を挿入することにより、一定の周期性を有するアウトカップリング層によって自由空間にアウトカップリングされる光の波長を調節することができる。また、エンハンスメント層とアウトカップリング層との間の材料の屈折率は、合計モードオーバーラップを変えるので、これら2層間を流れるエネルギーの一部を変える。介在層の屈折率の実部は、1.1〜4.0であり、より好ましくは、1.3〜2.4である。介在層は、誘電材料、半導体材料、金属、又はこれらの任意の組合せであることができ、1〜20nmの厚み、より好ましくは、1〜10nmの厚みを有する。
【0115】
エンハンスメント層を用いてOLEDのEQEを上げる利点は、エンハンスメント層を、自由空間に向かうフォトンの数を増加させるアウトカップリング層と組み合わせて用いることによって、最もよく実現することができる。EMLにおける発光体の励起状態崩壊速度定数の上昇は、エンハンスメント層の表面プラズモンの無輻射性モードに遷移する励起状態エネルギーによる。エネルギーが表面プラズモンに遷移すると、表面プラズモンは、全てのエネルギーを自由空間に取り出すことができない。アウトカップリング層は、捕捉したエネルギーをエンハンスメント層から移動し、その光を自由空間に取り出す。
【0116】
カップリング層と共にエンハンスメント層を設けると、40%高いEQE、理論上は、100%のEQEを有するOLEDをもたらし得る。〜43%を超えるEQEは、従来の限界を超えて、多数の垂直方向の発光体においても達成することができる。発光材料がエンハンスメント層に近いほど、エンハンスメント層の性能に与える分子配向の影響は小さくなる。これは、典型的なOLED構造と対称的である。アウトカップリング層が、OLEDの上部ではなく、基板の上部に直接載置される場合、アウトカップリング層は、OLEDの堆積に先立ち基板上に作製できる。これにより、アウトカップリング層における材料に対して行われる高温プロセスが可能になる。これは、また、フォト、干渉、ナノインプリント、e−ビーム、イオンビーム、集束イオンビーム、及び通常、OLEDに含有される有機材料を破壊する他のリソグラフィー技術を用いるアウトカップリング層の高解像度パターニングを可能にする。
【0117】
実施形態によれば、アウトカップリング層は、絶縁材料、半導体材料、金属、又はそれらの任意の組合せから構成することができる。アウトカップリング層は、エンハンスメント層に平行な面に沿って異なる屈折率を有する2種の材料からなることができる。好ましくは、2種の材料は、実部の差が0.1〜3.0、より好ましくは、0.3〜3.0である異なる屈折率を有する。
【0118】
アウトカップリング層をパターン化して、エンハンスメント層の無輻射性モードからの光の散乱効率を向上させることができる。このパターニングは、周期的、準周期的、又はランダムであることができる。好ましい周期性は、アウトカップリング層の媒質における光の波長の倍数のオーダーである(m*λ、ここで、mは、1から始まる整数であり、λは、その材料における光の波長である)。より好ましい周期性は、アウトカップリング層の媒質における光の波長のオーダー又はそれよりも短い。エンハンスメント層における光の散乱は、Bragg又はMie散乱によって生じ得る。アウトカップリング層は、絶縁性、半導体性、金属材料、又はこれらの材料タイプの組合せから構成することができる。好ましい場合は、屈折率コンスタントコントラスト(refractive index constant contrast)を有する2種の材料である。幾つかの例は、透明な高屈折率材料(例えば、TiO2、ZrO2、ダイヤモンド、Si3N4、ZnO、高屈折率ガラス(通常、これらの材料を成分として有する))、高屈折率光吸収性材料(Si、Ge、GaAs、GaPのような第4族及び第3〜5族半導体)、及び低屈折率材料(SiO2、大部分のガラス、ポリマー、有機分子(〜1.6〜1.8)、MgF2、LiF、空気又は真空である。
【0119】
高周期性構造の好ましい例は、2種の材料からパターン化した線形格子である。Bragg散乱は、x−y平面において異なる誘電率を有する2種の材料による高周期性干渉により生じる。線形格子は、2D又は3Dにおいて周期的であることができる。2種の材料間の屈折率実部の差は、0.1〜3である必要がある。より好ましくは、0.3〜3である。2Dパターニングの場合、好ましいピッチは、10〜90%デューティサイクルを有する10〜6000nmであり、より好ましくは、30〜70%デューティサイクルを有する20〜1000ピッチである。3Dパターニングの場合、好ましいピッチは、x方向において、10〜90%デューティサイクルを有する10〜6000nmピッチであり、より好ましくは、30〜70%デューティサイクルを有する20〜1000ピッチであり、y方向において、10〜90%デューティサイクルを有する10〜6000nmピッチであり、より好ましくは、30〜70%デューティサイクルを有する20〜1000ピッチである。線形格子の好ましい例は、格子材料の1つが金属である場合である。
【0120】
アウトカップリング層の周期性は、エンハンスメント膜から外に散乱される光の色を決めるだけでなく、空中に取り出される光の角度も決める。アウトカップリング層の屈折率又は周期を変えると、角度の関数としてのOLEDの強度を意味する「角度依存性」が変わる。望ましい発光の角度依存性に応じて、種々のアウトカップリング構造を用いることができる。エンハンスメント層から取り出されるエネルギー量を最大にする幾つかのアウトカップリング構造は、自由空間への光の望ましい角度分布を与えない場合がある。この場合、OLEDデバイスは、OLED発光の角度依存性を所望形状に変えるために、画素の前に載置されるディフューザーを有することができる。また、アウトカップリング層材料とパターニングを調整し、自由空間モードに向かう光の量を向上させることもできる。
【0121】
発光の偏光は、アウトカップリング層を用いて調節することができる。アウトカップリング層の寸法及び周期性を変えることにより、空中に優先的にアウトカップリングされる偏光のタイプを選択することができる。
【0122】
周期的、準周期的、又はランダムであることができるアウトカップリング層の実施形態は、ホストマトリックス内のマイクロ又はナノ粒子の懸濁物である。粒子の周期性は、ホストマトリックス全体に亘ってランダムであることができるが、粒子のサイズ分布は、非常にタイトである場合がある(したがって、周期性が高い)。マイクロ又はナノ粒子は、球状、棒状、四角形、又はシャープエッジを有し且つホスト材料と異なる屈折率を有する他の3次元形状材料であることができる。本明細書に開示される高屈折率材料はいずれも、金属を含むアウトカップリング層に用いることができる。粒子散乱のためのホストは、誘電体性、金属性、又は半導体性であることができる。マイクロ又はナノ粒子の充填は、5〜95重量%であることができる。マイクロ又はナノ粒子の好ましいサイズは、その媒質における可視光の波長のオーダー又はそれ以下である少なくとも1つの寸法、通常、50nm〜800nmの寸法を有する。ホストと散乱媒質との間の屈折率コントラストは、散乱効率を調節する上で重要である。差の好ましい絶対値は、0.1〜3.0、より好ましくは、0.4〜3.0である。アウトカップリングされる光の色調節は、散乱粒子のサイズ及び充填フラクションを変えることにより可能である。アウトカップリング層の好ましい実施形態は、シャープエッジを有する金属マイクロ又はナノ粒子である。
【0123】
種々の格子技術が、空中にアウトカップリングされる光量を犠牲にすることなく、分子の固有ピークから最大50nmの色シフトを達成できることが予想される。また、格子は、固有分子発光スペクトルを狭めることも可能である。FWHMを低くするように設計すると、FWHMは、10〜50nmになり、より好ましいアウトカップリング層は、10〜30nmのFWHMを達成する。
【0124】
幾つかの実施形態においては、アウトカップリング層は、周期的、準周期的、又はランダムに配列される波長サイズの形状、又は周期的、準周期的、又はランダムに配列されるサブ波長サイズの形状から形成される少なくとも一組の格子である。1つの好ましい実施形態においては、波長サイズの形状及びサブ波長サイズの形状は、シャープエッジを有する。
【0125】
幾つかの実施形態においては、格子は、スペーシングピッチを有し且つ2種の交互に用いられる材料からなる線形的にパターン化された格子である。線形パターンは、2D又は3D状であることができる。2D実施形態においては、各格子材料は、10〜90%デューティサイクルを有する100〜2000nmピッチ、より好ましくは、30〜70%デューティサイクルを有する20〜1000nmピッチで、一方向に沿って均一に配列される波長サイズ又はサブ波長サイズの長尺形状を形成する。誘電材料を、2種の格子材料に用いることができる。
【0126】
3D線形パターン実施形態の場合、アウトカップリング層は、二組の格子から形成され、各組の格子が、2種の材料から形成されており、各組の格子において、各材料は、10〜90%デューティサイクルを有する100〜2000nmピッチで一方向に沿って不均一に配列される波長サイズ又はサブ波長サイズの形状を形成し、各組の格子は、異なる方向を向いている。各組の格子は、互いに直交する(即ち、x方向及びy方向)ことができる。誘電材料を、2種の格子材料に用いることができる。
【0127】
幾つかの実施形態においては、アウトカップリング層は、よく画定されたスペーシングを有する一組の同心円状の環を有するブルズアイ格子である。格子の好ましいピッチ又は周期性は、100〜2000nmであり、1.3〜4の屈折率を有する誘電材料を含み、格子間のスペースは、屈折率の実部が0.1〜4である任意の材料で充填されている。
【0128】
幾つかの実施形態においては、準周期的アウトカップリング層は、チャープ格子である。チャープ格子においては、周期性は、1つ又は2つの寸法に亘って距離の関数として変化する。チャープ格子アウトカップリング層の好ましい構造は、10〜2000nmの基本周期を有し、1周期当たり10〜60%上昇する。アウトカップリング層は、1.3〜4の屈折率を有する誘電材料を含む。
【0129】
幾つかの実施形態においては、アウトカップリング層は、ホスト材料に複数の粒子を含み、複数の粒子が、自由空間に発せられる光の波長よりも小さい物理的寸法を有する。好ましくは、粒子の物理的寸法は、50〜800nmであり、より好ましくは、200〜800nmである。幾つかの実施形態においては、複数の粒子は、棒状、立方体状、及び多面体などの3次元形状を有する非球状ナノ粒子である。複数の粒子は、誘電材料、半導体材料、又は金属であることができる。粒子が金属である場合、最も誘電体性又は半導体性である材料をホスト材料として用いることができる。粒子が誘電体性又は半導体性である場合、ホスト材料は、より高い屈折率を有する別の誘電体性又は半導体性材料であることが好ましい。
【0130】
幾つかの実施形態においては、アウトカップリング層は、パターン化金属膜を含む。
【0131】
幾つかの実施形態においては、エンハンスメント層は、第2の電極である。
【0132】
幾つかの実施形態においては、デバイスは、介在層とアウトカップリング層との間に配置される第2の電極を更に含む。
【0133】
エンハンスメント層は、自由空間にアウトカップリングされる光のフラクションを最大にするために、光学干渉を必要としない。エンハンスメント層のFermi準位は、コンタクトのFermi準位から独立できるので、OLEDは、更なる作製上の制約なしに反転させることができる。このことは、Ge/Agの好ましいエンハンスメント層にも当てはまる。Ge/Agエンハンスメント層が、Alカソードを有する典型的なOLEDデバイスにおけるITO又はIZOアノードに置き換わるとすると、2つのコンタクトは略同じFermi準位になる。EIL及びHIL材料を使用することにより、効率的な電荷注入を可能とし、エンハンスメント層とAl層との間の有機層を反転させることができる。
【0134】
典型的なOLEDは、1つの反射性コンタクトに依存して、自由空間に取り出される発光量を上げる。エンハンスメント層をアウトカップリング層と共に用いる場合、双極子のエネルギーを全て、OLEDの後部にミラーなしで、前面自由空間モードに取り出すことができる。このことは、OLED全体が透明であることを可能にすると共に1−サイドディスプレイであるを可能にし、ディスプレイの後部に向かう発光にエネルギーを浪費することがない。
【0135】
エンハンスメント層をアウトカップリング層と組み合わせる場合、全体構造は、周囲光がユーザに反射されるのを防ぐための前面偏光子を必要としない場合がある。これを達成するためには、アウトカップリング層は、エンハンスメント層から生じる発光をアウトカップルしつつ、入射した輻射をOLEDを通して吸収媒質に伝える必要がある。
【0136】
エンハンスメント層をアウトカップリング層と共に用いる場合、励起状態のエネルギーを全て、前面自由空間モードに取り出すことができる。周囲光の反射の防止は、2つの異なる方法で行うことができる。1つ目の方法は、透明OLEDを構築することである。周囲光は、OLEDを通って伝わり、吸収媒質で被覆されたOLEDの後部で吸収される。2つ目の方法は、「ダークカソード」で光を吸収することである。ダークカソードは、吸収性が高い伝導性材料である。これは、反射金属のテクスチャリング、又は伝導性であるが吸収性である材料(高度にドープされた半導体)の使用など、多くの方法で達成することができる。
【0137】
アウトカップリング層と共に又はアウトカップリング層なしで、エンハンスメント層をフレキシブル基板に形成することができる。フレキシブル基板としては、薄いガラス、ポリマーシート、薄いシリコン、金属シート、及びペーパーシートが挙げられる。典型的なエンハンスメント層は、通常、厚みが1マイクロメートル未満であり、好ましくは、100nmより薄いので、効率及び寿命に対する利点を達成しつつ、OLED全体がフレキシブルとなる。
【0138】
フレキシブル基板上でのエンハンスメント層又はアウトカップリング層の成長には、堆積前に基板の粗さを滑らかにする平坦化層が必要になる場合がある。或いは、アウトカップリング層又はエンハンスメント層は、高圧スパッタリング、スプレーコーティング、原子層堆積、化学蒸着、又はプラズマ促進化学蒸着などの技術を用いるコンフォーマルな加工工程で成長させることができる。通常、コンフォーマルでないと考えられる技術、例えば、真空熱蒸着などは、それらをオフアクシスソース(off−axis source)及びオフアクシスローテーション(off−axis rotation)と共に用いれば、十分にコンフォーマルであることができる。平坦化層のrms表面粗さは、25nm未満、好ましくは、10nm未満、より好ましくは、5nm未満、最も好ましくは、<3nm未満である必要がある。
【0139】
エンハンスメント層の積層構造は、また、酸素及び水拡散バリアとして作用することにより、フレキシブルOLEDに有利になり得る。
【0140】
エンハンスメント層の効果は、発光体のエンハンスメント層からの距離に強く依存するので、混合発光体OLEDの性能を上げるためにエンハンスメント層を用いることができる。好ましい実施形態は、青色発光材料と少なくとも1つの低エネルギー発光材料を有する白色OLEDである。好ましい実施形態においては、エンハンスメント層は、青色発光材料の最も近くに位置する。これは、青色発光材料が最も耐久性が低い発光材料であるからである。この実施形態では、エネルギー発光を低下させるために、エンハンスメント層は、少なくとも半透明である必要がある。更に、アウトカップリング層を用いる場合、エネルギー発光を低下させる又はより低いエネルギー発光及び青色発光材料からの青色発光をアウトカップリングするためには、透明である必要がある。白色OLEDでエンハンスメント層を用いる場合、白色OLEDは、単一のEMLデバイス又は積層構造であることができる。エンハンスメント層に最も近い、EMLにおける発光体は、向上した性能を有する。積層構造において、更なるEMLの数及び厚みは、エンハンスメント層と完全に独立して調節することができる。
【0141】
エンハンスメント層を有するOLEDの1つの実施形態においては、ディスプレイは、ファイン金属マスキングステップなしで製造される。この実施形態においては、各副画素の色は、2つの方法の一方で決定される。1つ目の方法は、各副画素の下のアウトカップリング層の周期性及び屈折率を変えることである。各副画素は、所望の周波数で光とアウトカップリングするために調節される、アウトカップリング層の周期性を有する。2つ目の方法は、各副画素に同一のアウトカップリング層の周期性及び屈折率を維持するが、各副画素の介在層の屈折率を変えることである。ボトムエミッションエンハンスメント層OLEDの場合、アウトカップリング層又は介在のパターニングは、OLED堆積前に基板上で完了する。多色発光材料から構成される単一のEMLを有する白色OLEDは、アウトカップリング層上に均一に作製され、ファイン金属マスクなしでディスプレイを達成する。この製造技術は、ブランケットOLED堆積を用いる点で、白色プラスカラーフィルターボトムエミッションOLEDディスプレイと同様である。各画素は、アウトカップリング層とエンハンスメント層の組合せによって画定される。エネルギーが発光材料からエンハンスメント層の無輻射性モードに移動するので、アウトカップリング層も存在しないと光が発せられない。したがって、ブランケットOLEDは、アウトカップリング層が存在しない場合は発光せず、ブランケットOLED堆積により、金属マスクなしで、1インチ当たりの画素数が多いディスプレイの作製を可能とする。
【0142】
また、非常に解像度が低いマスキングで、R、G、B画素又は副画素を有するディスプレイを設計することも可能である。この技術の利点は、赤色及び緑色の駆動電圧が、シャドーマスクを用いない場合のように、青色発光体によって決定されない点である。この場合、ディスプレイの動作電力は、低下する。
【0143】
エンハンスメント層は、アウトカップリング層が共に設けらていない場合には、輻射を発さないように設計することができる。したがって、アウトカップリング層を高解像度にパターニングすることによって、各色OLEDの非常に粗い解像度のマスキングを高解像度画素に変えることができる。この高解像度パターニングは、多数の作製技術を用いて行うことができ、基板が、パターン化したときに、その上に有機材料を有しない場合があるので、温度又は溶媒の使用によって限定されない。
【0144】
アウトカップリング層のファインパターニングの後、R、G、B画素の低解像度マスクを用いてR、G、及びB OLEDを作製することができる。OLED材料が堆積されるがアウトカップリング層を有しない領域は、光を発さず、これは、ディスプレイが、シャドーマスクの低い解像度ではなく、ファインパターニングされたアウトカップリング層の解像度を有することを意味する。
【0145】
エンハンスメント層とアウトカップリング層の組合せから生じる発光スペクトルは、指向性を有するように設計することができる。ヘッドアップディスプレイ及び仮想現実用ディスプレイにおいては、指向性を有する発光を示すディスプレイが有益であり得る。発光の指向性の向上は、ヒトがOLEDに対して一方向を見ている場合、眼に光を投影するということだけのために用いることができる。1つの実施形態においては、エンハンスメント層とアウトカップリング層を有するOLEDデバイスは、ヘッドアップディスプレイ又は仮想現実ディスプレイに用いられる。
【0146】
エンハンスメント層をアウトカップリング層と結合させることにより、非常に明るく指向性の高いOLEDが得られる。そのようなOLEDは、オートモーティブテールライトとしての使用のためによく設計される。
【0147】
エンハンスメント層は、OLED内の発光体の励起状態崩壊速度定数を上昇させる。近赤外フォスファーは、固有無輻射性崩壊速度定数が輻射性崩壊速度定数よりも遥かに大きいので、フォトルミネセンス量子収率が低い。エンハンスメント層が無輻射性崩壊定数を固有無輻射性崩壊定数よりも遥かに大きい値に上げると、効率的な近赤外OLEDが作製される。
【0148】
共鳴プラズモンモードを特徴とするエンハンスメント層は、誘導放出を経験するのに十分大きなクオリティファクターを維持することができる。コンタクトからの電荷の注入により誘導放出がポンピングされると、最終的な結果は、有機半導体を用いて電気的にポンピングされたレーザーとなる。
【0149】
幾つかの実施形態においては、本開示の方法は、更に、エンハンスメント層とアウトカップリング層との間に介在層を設けることを含み、介在層は、50nm未満の厚み、好ましくは20nm未満の厚み、より好ましくは1〜10nmの厚みを有する。介在層は、誘電材料又は半導体材料であることができる。介在層の屈折率は、0.1〜4.0であることが好ましい。1つの好ましい実施形態においては、介在層の屈折率は、1.4〜4.0である。介在層は、その実部が1.1〜4.0、より好ましくは、1.3〜2.4である屈折率を有する。
【0150】
本開示の他の態様によれば、向上されたOLEDデバイスが開示される。前記OLEDデバイスは、基板と、第1の電極と、前記電極の上に配置される、有機発光材料を含む有機発光層と、前記有機発光材料に無輻射的に結合し、前記発光材料からの励起子エネルギーを表面プラズモンポラリトンの無輻射性モードに遷移させる、表面プラズモン共鳴を示すプラズモン材料を含み、前記第1の電極と反対側の前記有機発光層の上に配置されるエンハンスメント層と、前記表面プラズモンポラリトンからのエネルギーをフォトンとして自由空間に散乱する、前記エンハンスメント層の上に配置されるアウトカップリング層とを含み、前記エンハンスメント層は、前記有機発光層からの閾距離以内に設けられ、前記有機発光材料は、前記エンハンスメント層の存在による全無輻射性崩壊速度定数及び全輻射性崩壊速度定数を有し、前記閾距離は、前記全無輻射性崩壊速度定数が、前記全輻射性崩壊速度定数と等しい場所である。この向上されたOLEDデバイスの幾つかの実施形態においては、更に、前記エンハンスメント層と前記アウトカップリング層との間に介在層が配置され、前記介在層は、1〜10nmの厚みと0.1〜4.0の屈折率を有する。前記介在層は、上に述べた特性を有する。
【0151】
幾つかの実施形態においては、基板が透明であり、エンハンスメント層と反対側のアウトカップリング層の隣りに配置される(即ち、ボトムエミッションデバイス)又は基板が有機発光層と反対側の第1の電極の隣りに配置される(即ち、トップエミッションデバイス)。
【0152】
幾つかの実施形態においては、OLEDデバイスは、1層より多いエンハンスメント層を有することができる。幾つかの実施形態によれば、OLEDデバイスは、透明であることができる基板と、前記基板の上に配置される第1のアウトカップリング層と、
前記第1のアウトカップリング層の上に配置される第1のエンハンスメント層と、
前記第1のエンハンスメント層の上に配置される、有機発光材料を含む有機発光層と、
前記有機発光層の上に配置される第2のエンハンスメント層と、
前記第2のエンハンスメント層の上に配置される第2のアウトカップリング層とを含み、
前記第1のエンハンスメント層は、前記有機発光材料に無輻射的に結合し、前記有機発光材料からの励起状態エネルギーを表面プラズモンポラリトンの無輻射性モードに遷移させる、表面プラズモン共鳴を示す第1のプラズモン材料を含み、
前記第1のエンハンスメント層は、前記有機発光層からの閾距離以内に設けられ、
前記第2のエンハンスメント層は、前記有機発光材料に無輻射的に結合し、前記発光材料からの励起状態エネルギーを表面プラズモンポラリトンの無輻射性モードに遷移させる、表面プラズモン共鳴を示す第2のプラズモン材料を含み、
前記第2のエンハンスメント層は、前記有機発光層からの閾距離以内に設けられ、
前記有機発光材料は、前記第1及び第2のエンハンスメント層の存在によって、全無輻射性崩壊速度定数及び全輻射性崩壊速度定数を有し、前記閾距離は、前記全無輻射性崩壊速度定数が、前記全輻射性崩壊速度定数と等しい場所であり、
前記第1及び第2のアウトカップリング層は、表面プラズモンポラリトンからのエネルギーをフォトンとして自由空間に散乱する。他の実施形態においては、このOLEDデバイスは、更に、第1のアウトカップリング層と第1にエンハンスメント層との間に配置される第1の介在層、及び第2のエンハンスメント層と第2のアウトカップリング層との間に配置される第2の介在層を含む。
【0153】
本開示の他の実施形態によれば、プラズモンOLEDデバイスの製造方法も開示される。トップエミッション有機発光デバイスを製造するための方法は、基板を準備することと、第1の電極を堆積することと、有機発光材料を含む有機発光層を前記第1の電極の上に堆積することと、前記有機発光層の上に配置されるプラズモン材料を含むエンハンスメント層を、前記有機発光層からの閾距離以内に堆積することと、前記エンハンスメント層の上に配置されるアウトカップリング層を堆積することとを含み、前記有機発光材料は、前記エンハンスメント層の存在によって、全無輻射性崩壊速度定数及び全輻射性崩壊速度定数を有し、前記閾距離は、前記全無輻射性崩壊速度定数が、前記全輻射性崩壊速度定数と等しい場所である。幾つかの実施形態においては、前記方法は、前記アウトカップリング層を堆積する前に、前記エンハンスメント層の上に配置される介在誘電体層を堆積することを更に含み、前記介在誘電体層は、1〜10nmの厚みと0.1〜4.0の屈折率を有する。
【0154】
他の実施形態においては、ボトムエミッション有機発光デバイスを製造するための方法は、透明基板を準備することと、前記透明基板の上に配置されるアウトカップリング層を堆積することと、前記アウトカップリング層の上に配置されるプラズモン材料を含むエンハンスメント層を堆積することと、前記エンハンスメント層の上に有機発光材料を含む有機発光層を、前記エンハンスメント層からの閾距離以内に堆積することと、前記有機発光層の上に電極を堆積することとを含み、前記有機発光層と前記エンハンスメント層は、前記エンハンスメント層の存在によって、全無輻射性崩壊速度定数及び全輻射性崩壊速度定数を有し、前記閾距離は、前記全無輻射性崩壊速度定数が、前記全輻射性崩壊速度定数と等しい場所である。幾つかの実施形態においては、前記方法は、前記エンハンスメント層を堆積する前に、前記アウトカップリング層の上に配置される介在誘電体層を堆積することを更に含み、前記介在誘電体層は、1〜10nmの厚みと0.1〜4.0の屈折率を有する。
【0155】
エンハンスメント層からの光のアウトカップリングは、また、OLEDデバイスの性質によって調節される。エンハンスメント層のOLED側(有機発光層側)を、自由空間を向いているエンハンスメント層の側とカップリングさせることは、各界面での屈折率に依存する。OLEDの輸送層は、屈折率が様々であり得るので、輸送層及び合計厚みを選択することにより、エンハンスメント層からアウトカップリングされる光のフラクションを調節することができる。更に、トップエミッションエンハンスメント層OLEDにおいては、アウトカップリング層をエンハンスメント層に加えることで、その層からのアウトカップリングが調節される。アウトカップリング層の屈折率の好ましい値は、0.1〜2.4であり、好ましい厚みは、5〜150nmである。より好ましい範囲は、発光体の発光波長が決まらないと特定できない。
【0156】
図10に、好ましいエンハンスメント層OLEDデバイス構造が示される。OLEDは、カソードコンタクトの厚みに応じて、ボトム又はトップエミッションOLEDであることができる。好ましい層の厚みが図に標示される。0オングストロームを含む厚み範囲を有する層は、任意の層であり、エンハンスメント層を用いる場合、OLEDが正常に機能するのに必要ではないが、典型的なOLEDデバイスには、特徴的な層である。
【0157】
図6の好ましい構造は、3つの繰り返し単位セル706a、706b、及び706cから構成されるエンハンスメント層を有する
図11のトップエミッションOLEDである。各単位セルは、プラズモン金属層716aとしての5〜15nmのAgと5〜20nmのホスト誘電材料層716bのから構成される。ホスト誘電材料は、屈折率の実部が、可視スペクトルに亘って1.9〜1.7である。ホスト誘電材料は、エンハンスメント層の光学特性を変えずに、実部が1.4〜4.0である屈折率を有することができる。ホスト誘電材料の屈折率の虚部は、可視スペクトルに亘って0.2未満である必要がある。屈折率の虚部が大きくなると、OLEDのアウトカップリングの損失をもたらすが、発光速度定数の改善は維持される。
【0158】
燐光青色発光材料の1つの実施形態においては、エンハンスメント層は、アウトカップリング層なしで用いられる。エンハンスメント層からの青色発光体の距離を入念に制御することによって、エンハンスメント層の無輻射性モードに損失されるフォトンの数をバランスしつつ、青色発光材料の耐久性の上昇を観測することができる。これは、エンハンスメント層からエネルギーを取り出すアウトカップリング層を追加することなしに達成することができる。したがって、青色燐光発光材料は、エンハンスメント層なしで、青色燐光発光材料よりも高い耐久性を達成しつつ、蛍光青色発光材料のEQEの1〜3倍のEQEで機能することができる。
【0160】
本発明者らは、あらゆる発光分子にエンハンスメント層を用いる場合に、励起状態崩壊速度定数の上昇を示すエンハンスメント層を有するOLEDの初期シミュレーションを行った。シミュレーションは、好ましい構造(
図11)に対して行った。シミュレートしたエンハンスメント層OLEDを、典型的なボトムエミッション及びトップエミッションデバイスと比較する。発光体の固有発光速度定数は、全てのシミュレーションで1E6 s−1に設定した。
【0161】
11nmAg/11nmHOST/11nmAg/11nmHOST/11nmAg及びHOSTの60nmのアウトカップリング層の実施例のエンハンスメント層を用いる
図6の好ましいエンハンスメント層構造に対する光学モデリングにより、本発明者らは、合計OLED厚みに応じて、発光体の発光速度が4.7E6〜3.6E6 s−1まで上昇することを見出した。これに対して、典型的なトップエミッションデバイスにおける発光速度は、1.37E6 s−1であり、ボトムエミッションデバイスで1.53E6 s−1である。エンハンスメント層を特徴とするデバイスは、励起状態崩壊速度定数において約3倍の上昇を示す。本発明者らは、シミュレートした構造のアウトカップリングが、エンハンスメント層OLEDとコントロールボトム及びトップエミッションOLEDで20%を超えることに注目する。したがって、エンハンスメント層を用いる場合、デバイスから取り出すことができるフォトンの数が失われないと予想される。発光速度定数の同様の上昇が、典型的な製造材料と製造厚みで構成されるエンハンスメント層の場合に観測することができる。例えば、Agに代えて15nmのMg:Ag10%を用いるエンハンスメント層のモデリングにより、Mg:Agは、Agよりも損失があるのでアウトカップリングは低下するものの、Agを用いる場合と同一範囲の寿命が得られることが示される。
【0162】
図14A〜Cは、
図11の構造の光学モデリングを示す。固有分子(1E6)に対する発光速度の上昇は、可視光発光で明らかである。励起状態崩壊速度定数は、全可視発光範囲に亘って広く上昇している。また、エンハンスメント層OLEDは、エンハンスメント層がない典型的なOLEDに匹敵するアウトカップリングを示す(
図14Bのプロットを参照)。作製した構造を
図11に、デバイスの発光スペクトルを
図15に示す。キャビティは、34〜40nmの半値全幅を有するモデル化された結果と同様に狭い発光を示す。
【0163】
これらの観測をまとめると、エンハンスメント層を用いる場合のOLED発光体の発光速度定数は、発光体及びデバイス構成に強く依存する。エンハンスメント層から10nmの位置の発光材料は、その励起状態崩壊速度定数の上昇が5倍のオーダーであり、閾距離により近いと考えられる。典型的な燐光発光体は、1.25E7〜2E5 1/sの発光速度定数を有し、エンハンスメント層の存在下で予想される発光速度は、6.25E7〜1E6 1/sである。エンハンスメント層から5nmの発光体の場合、予想される励起状態崩壊速度定数の上昇は、20倍のオーダーである。これらの速度定数の向上は、マイクロキャビティで可能な向上、又は速度向上が1.5〜2のオーダーであるOLEDのフォトン状態密度を変えるという他の通常用いられる方法で可能な向上よりも著しく大きい。
【0164】
光学モデリングにより、エンハンスメント層を用いると、好ましい実施形態の場合に、平均励起状態崩壊速度定数が1.5〜400倍上昇すると予想される。Ag及びAl2O3薄膜の積層体を含むより複雑なエンハンスメント層の理論的推定によれば、励起状態崩壊速度定数の上昇は、1000倍にもなる。改善された発光速度定数とOLED耐久性との間の正確な関係は分からない。発光体の励起状態崩壊速度定数の上昇は、発光体が励起状態にある時間がより短く、発光体の性能を劣化させる事象を経験する時間がより短いことを意味する。拘束されるものではないが、エンハンスメント層を用いるOLED耐久性の予想される上昇は、1.5〜10000倍である。エンハンスメント
層を用いる場合の発光体の発光ライン形状が変化する可能性により、OLEDの耐久性に対する改善は、1)一定電流エージング又は2)一定発光効率エージングの下で生じ得る。明確に言えば、発光ライン形状を狭めること、又はエンハンスメント層によるオフピーク発光の向上は、OLEDの初期発光効率を変え得る(ヒトの眼の感受性により)。したがって、一定発光効率下でエージング速度を直接比較することにより、一定電流下でOLEDをエージングさせる場合と異なるレベルの改善を示すことがある。
【0165】
本明細書において記述されている種々の実施形態は、単なる一例としてのものであり、本発明の範囲を限定することを意図するものではないことが理解される。したがって、特許請求されている通りの本発明は、当業者には明らかとなるように、本明細書において記述されている特定の例及び好ましい実施形態からの変形形態を含み得る。なぜ本発明が作用するのかについての種々の理論は限定を意図するものではないことが理解される。