特許第6573970号(P6573970)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6573970外部放射線治療システムによって投与された線量を推定する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6573970
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】外部放射線治療システムによって投与された線量を推定する方法
(51)【国際特許分類】
   A61N 5/10 20060101AFI20190902BHJP
   G01T 1/29 20060101ALI20190902BHJP
   G01T 1/17 20060101ALI20190902BHJP
【FI】
   A61N5/10 Q
   G01T1/29 B
   G01T1/17 C
【請求項の数】13
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-513350(P2017-513350)
(86)(22)【出願日】2015年5月22日
(65)【公表番号】特表2017-516610(P2017-516610A)
(43)【公表日】2017年6月22日
(86)【国際出願番号】EP2015061393
(87)【国際公開番号】WO2015177343
(87)【国際公開日】20151126
【審査請求日】2018年4月20日
(31)【優先権主張番号】1454631
(32)【優先日】2014年5月22日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】516349633
【氏名又は名称】エスアーエス デー.エール.ウ.アー.エム.
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100163212
【弁理士】
【氏名又は名称】溝渕 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100156535
【弁理士】
【氏名又は名称】堅田 多恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【弁理士】
【氏名又は名称】林 道広
(74)【代理人】
【識別番号】100116757
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 英雄
(72)【発明者】
【氏名】ブートリー−デュティ,クリスティーヌ
【審査官】 石田 智樹
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2014/0105355(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0250971(US,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第02248551(EP,A1)
【文献】 Daniel A. Low et al.,A technique for the quantitative evaluation of dose distributions,Medical Physics,米国,the American Association of Physicists in Medicine,1998年 5月,Vol.25, No.5,pp.656-661
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 5/10
G01T 1/17
G01T 1/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポータルイメージング装置を備えた外部放射線治療システムによって投与される線量を推定する方法であって、
(a)前記ポータルイメージング装置を使用してポータル画像が取得される段階(610)と、
(b)前記ポータル画像の中心で、前記ポータルイメージング装置と照射ビームの軸との交点に対応する画素のグレーレベルNが決定される段階(640)と、
(c)前記システムによって投与された前記線量が、D/D10eq=α+βln(N/Ng,10)を使用して水中の基準深さ(zref)で計算される段階(650)とを含み、Ng,10が、線量と基準放射条件に関して得られた前記ポータル画像の中心での画素のグレーレベルであり、D10eqが、所定の一定線量であり、α,βが、事前較正フェーズで予め決定された係数である方法。
【請求項2】
前記段階(b)の前に、放射がない状態で取得された画像を前記ポータル画像から減算することによって前記ポータル画像からバックグラウンドノイズが除去され(620)、ノイズ抑制ポータル画像が得られる、請求項1に記載の線量を推定する方法。
【請求項3】
前記段階(b)の前に、前記ノイズ抑制ポータル画像が、前記ポータルイメージング装置の環境による前記照射ビームの後方散乱に起因する成分を除去することによって補正される(630)、請求項2に記載の線量を推定する方法。
【請求項4】
前記事前較正フェーズが、
−複数の線量D,k=1,…,Kと基準放射状態に関しての複数Kのポータル画像を取得する段階(810)と、
−前記ポータル画像から、放射がない状態で取得された画像を減算することによってノイズを除去して、複数Kのノイズ抑制ポータル画像を得る段階(820)と、
−前記ポータルイメージング装置の環境による前記後方散乱に起因する成分を除去するために前記ノイズ抑制ポータル画像を補正する段階(830)と、
−値D/D10eqおよびln(N/Ng,10),k=1,…,Kから係数α,βを計算し、ここで、Nが、取得されたk番目のポータル画像の中心での画素のグレーレベルである、段階(840)とを含む、請求項3に記載の線量を推定する方法。
【請求項5】
前記係数α,βが、線形回帰を使用して値D/D10eqおよびln(N/Ng,10),k=1,…,Kから得られる、請求項4に記載の線量を推定する方法。
【請求項6】
前記事前較正フェーズが、更に、
−前記ポータル画像が取得された前記線量のそれぞれの前記基準深さで投与された線量の二次元分布を測定する段階であって、複数Kの測定線量画像を供給する段階(850)と、
−取得したポータル画像を線量画像に変換して複数Kの計算線量画像を提供する段階(860)と、
−前記測定線量画像を前記計算線量画像と比較する段階(870)とを含み、前記測定線量画像と前記計算線量画像とが一致した場合に係数α,βが確認される係数α,β確認フェーズを含む、請求項5に記載の線量を推定する方法。
【請求項7】
各ポータル画像k=1,…,Kが、関係キャレットD(i,j)/D10eq=α+βln(N(i,j)/Ng,10)を使用して線量画像に変換され、ここで、D(i,j)が、取得されたk番目のポ−タル画像の前記画素における推定された線量であり、N(i,j)が、前記取得されたk番目の前記ポータル画像の前記画素(i,j)の前記グレーレベルである、請求項6に記載の線量を推定する方法。
【請求項8】
前記測定線量画像と前記計算線量画像が、指標γの解析を使用して比較される、請求項6に記載の線量を推定する方法。
【請求項9】
ポータルイメージング装置を備えた外部放射線治療システムの治療計画を確認するための方法であって、前記治療計画が、基準深さでの線量の複数Mの二次元分布によって定義され(700)、各二次元分布が、入射角、モニタ単位の量および照射ビームの構造と関連付けられ、線量の各二次元分布が、公称線量画像を提供し、
−入射角、モニタ単位の量および照射ビームの構造のそれぞれのポータル画像を取得して、前記同じ複数Mの取得したポータル画像を得るようにする段階と、
−取得したポータル画像が線量画像に変換されて複数Mの計算線量画像が提供される段階と、
−前記計算線量画像が、前記公称線量画像と比較される段階とを含み、
事前較正フェーズが、
−複数の線量D,k=1,…,Kと基準放射状態で複数Kのポータル画像を取得する段階(810)と、
−前記ポータル画像から、放射がない状態で取得された画像を減算することによってノイズを除去して、複数Kのノイズ抑制ポータル画像を得る段階(820)と、
−前記ノイズ抑制ポータル画像を補正して、前記イメージング装置の環境による後方散乱に起因する成分を除去する段階(830)と、
−値D/D10eqおよびln(N/Ng,10),k=1,…,Kから係数α,βを計算する段階(840)とを含み、ここで、Ng,10が、線量および基準放射条件の場合に画像の中心での画素のグレーレベルであり、Nが、取得されたk番目のポータル画像の中心画素のグレーレベルであり、D10eqが、所定の一定の線量である、方法。
【請求項10】
前記変換する段階の前に、前記放射がない状態で取得された画像から減算することによって取得された前記ポータル画像からバックグラウンドノイズが除去される(720)、請求項9に記載の治療計画を確認する方法。
【請求項11】
前記変換する段階の前に、前記ポータルイメージング装置の環境による前記照射ビームの後方散乱に起因する成分を除去することによって取得された前記ノイズ抑制ポータル画像が補正される(730)、請求項10に記載の治療計画を確認する方法。
【請求項12】
前記計算線量画像と前記公称線量画像との前記比較が、ガンマ指標(γ)の解析を使用して行われる、請求項9に記載の治療計画を検証する方法。
【請求項13】
前記係数α,βが、前記事前較正フェーズにおいて、線形回帰を使用して値D/D10eqおよびln(N/Ng,10),k=1,…,Kから計算される、請求項9に記載の治療計画を確認する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、外部放射線治療における線量測定の分野に関する。本発明は、特に、電子ポータルイメージング装置を備えた外部放射線治療システムに適用されうる。
【背景技術】
【0002】
外部放射線治療システムは、先行技術において周知である。このシステムは、近くにある健常組織を温存しながら癌腫瘍に高エネルギー粒子(約数MeV)の線量を投与することを可能にする。これらの粒子のイオン化効果は、これらの粒子が帯電されたときの直接イオン化によるか帯電されないときの間接イオン化によるかに関わらず、細胞分裂とタンパク質合成の役割をもつ核酸の損傷によって照射細胞を死滅させる。
【0003】
外部放射線治療システムは、電子線形加速器を利用する。そのようなシステムでは、電子は、電子銃から放出され、次にマグネトロンまたはクライストロンによって作成された高周波交番磁界によって加速される。タングステンで作成されたターゲットの介入により、約20MeVに達することがある光子ビームが生成される。従来、一般的な言い方で、光子のエネルギーは、一般に、放射線治療においてMVで測定される。
【0004】
腫瘍を外部放射線治療によって処置することは、所定の空間範囲のゾーン内で所定のエネルギーの線量を投与することにある。近くにある健常組織を温存するために、線量は、いくつかの所定の暴露角度での照射によって投与され、各角度で基本線量が投与される。さらに、各暴露角度で、光子源によって放射されたビームは、健常組織の照射をできるだけ少なくするように特定のプロファイルに従って平行化される。したがって、暴露角度、ビームプロファイル、およびこれらの角度のそれぞれで投与される線量を正確に計画することが必要である。実際には、処置は、患者ごとに治療計画装置(TPS)を使用してシミュレートされる。この装置は、放射線スキャナ(CT)を使用して取得された患者の三次元解剖学的画像から、暴露角度ならびにビームプロファイルと各角度の線量を決定することを可能にする。
【0005】
腫瘍の三次元形状に適応されるこの放射線治療法は、「原体照射療法」とも呼ばれる。最近、他の先進技術、詳細にはビームの強度変調放射線治療(空間的と時間的)(IMRT)またはアーク治療VMAT(容積変調アーク治療)によって提供される先進技術が現れた。
【0006】
検討中の放射線治療法に関わらず、腫瘍に投与される全線量が、実際に、求められている線量であるだけでなく、癌組織と健常組織の間の線量勾配設定点が実際に考慮されたものになるように、患者に有効に投与される線量が、治療計画の際に提供された線量と実際に適合していることを確認することが特に重要である。原体照射治療システムにおいて患者に投与される線量を確認する方法は、特許文献1に記載されている。
【0007】
現在、線量測定制御を行なう多数のハードウェアおよびソフトウェアが市販されている。最近の外部放射線治療システムは、一般に、電子ポータルイメージング装置(EPID)を備える。イメージング装置は、放射線治療における治療照射野から画像を収集するように適応された装置として定義される。ポータル画像と呼ばれるそのような取得画像は、照射ゾーンを示し、治療照射野内の患者の位置決めを確認することを可能にする。
【0008】
図1は、イメージング装置を備えた外部放射線治療システムを図で示す。
【0009】
外部放射線治療システムは、電子銃110によってエネルギー供給され加速器ヘッド(図示せず)で終端する線形加速器120を含む。電子銃と線形加速器は、軸Dのまわりに回転しゲート190と一体になった機械式アーム180に一体化される。加速器のヘッドには、詳細には、ターゲット130、一次コリメーションシステム、等化コーンビームおよび二次マルチブレードコリメーションシステム140が取り付けられる。ターゲット(タングステンで作成された)が、加速器から来る電子によって衝撃され、X光子の線源を構成する。ポータルイメージング装置160は、また、光子の線源の反対側で、機械式アームに組み込まれる。したがって、アームの回転中に、ポータルイメージング装置は、常に、ビームの主軸に対して直角の平面内に配置される。治療中、患者は、線源とポータルイメージング装置の間に配置された治療台160と呼ばれる台上にある。機械式アームの回転軸Dとビームの主軸Fとの交点δは、システムのアイソセンタと呼ばれる。
【0010】
最新世代のポータルイメージング装置は、アモルファスシリコン検出器を使用する。直接検出型や間接検出型の様々な型のアモルファスシリコン検出器がある。直接検出型は、蛍光スクリーンを使用するだけでなく、X線を電荷に変換する光伝導体を直接使用する。しかしながら、間接検出型は、蛍光スクリーンを使用して光子を可視光子に入射変換し、その可視光子が、測定される信号を構成する電荷に変換される。
【0011】
図2は、先行技術で既知の間接変換によるアモルファスシリコン検出器を図示する。
【0012】
この検出器は、金属板(一般に銅210)を含み、入射X光子(一次光子)が、コンプトン効果によってエネルギーの一部分を電子に伝達する。これらの電子は、例えばテルビウムドープトガドリニウム酸化硫化物(GdS:Tb)220からなるリンシンチレータまたは蛍光スクリーンにぶつかって、可視域内の光子(二次光子)を生成する。
【0013】
そのような二次光子は、電界が印加されたアモルファスシリコン層230内に電子正孔対を作成する。電子正孔対によって生成された電流は、入射光流量に比例する。
【0014】
検出器は、アモルファスシリコン層がフォトダイオードのアレイを構成するという点で画素化される。アモルファスシリコン内で生成された電荷は、行電極と列電極を使用する電界効果トランジスタアレイによって読み取られる。そのように、各画素は、デジタル化されグレーレベルによって表わされる値を提供する。このように、数値配列またはフレームが得られる。
【0015】
フレームの読み取りは、所定の周波数(フレームレート)で行われ、線量は、所定の繰返し率の連続較正パルスの形で投与される。フレームは、1つずつ記録されてもよく(連続モードと呼ばれる)、ある期間にわたって平均化されてもよい(統合モードと呼ばれる)。この後者のモードでは、ポータル画像が、実際には、ビームの暴露期間中にアモルファスシリコン内に生成された電荷の時間平均を表わすことを理解されたい。ポータル画像は、EPIDのイメージング装置にグレーレベルで表示される。
【0016】
線量測定の難しさはすべて、ポータル画像から、投与された線量(より正確には、検出器に到達する光子の線量)または線量画像を得ることにある。
【0017】
実際には、投与される線量は、モニタ単位すなわちMUの量に関係する。モニタ単位は、所定の持続時間および周波数の放射パルスに関して放射線の持続時間を設定するマシン単位である。放射線治療システムは、1モニタ単位が、水ファントム内、基準深さzref、ビームの軸上、10×10cmの照射野サイズで、所定の付着線量(一般に1cGy)に対応するように較正され、水ファントムの上側面は、光子線源から基準距離(例えば、100cm)に配置される。較正プロトコルは、非特許文献1に記載されている。グレイ(Gray)が、質量に対して与えられたエネルギー単位であることを想起されたい。深さzで与えられるエネルギーは、深さzで高さdzの小さい体積に入るエネルギーと、この小さい体積から出るエネルギーと差である。深さzにおける線量は、D=dE/ρSdzによって示され、ここで、dEは、深さzにおける前述のエネルギーの差であり、ρSdzは、関連する質量であり、Sは、照射野の面であり、ρは、被照射物質の密度である。放射線治療における水ファントムの参照は、人体内で水の割合が高いことが根拠となる。
【0018】
ポータル画像を線量測定画像に変換する種々の方法が提案されてきた。
【0019】
モデル用語「CU」で知られる第1の方法は、非特許文献2に記載されている。この方法は、線量とポータル画像内のグレーレベルと露光時間との間の線形関係を想定しており、すなわち次式となる。
【数1】
ここで、キャレットDは、投与され方法によって推定された線量であり、Nは、画像内の画素のグレーレベルであり、Tirradは、ビームに対する暴露時間であり、aは、計数逓減率である。
【0020】
モデル用語「フレーム」で知られる第2の方法は、非特許文献3に記載されている。この方法は、投与された線量とポータル画像内のグレーレベルとポータル画像内で干渉するフレームの総数との間の線形関係を想定しており、すなわち次式となる。
【数2】
ここで、キャレットDは、投与され方法によって推定された線量、Nは、画像内の画素のグレーレベルであり、Nは、ポータル画像内で干渉するフレームの総数であり、aは、計数低減率であり、bはオフセット値である。
【0021】
他のモデルは、特に、非特許文献4に提案された。このモデルは、ポータル画像内のグレーレベルと、フレーム周期中のモニタ単位の数との非線形関係に基づき、すなわち次式となる。
【数3】
ここで、Nは、画像内の画素のグレーレベルであり、UMは、モニタ単位の数であり、a,bは定数である。実際に、前述の論文で述べられているように、ビーム立ち上げを考慮するために投与線量の補正を再び行わなければならない。
【0022】
最後に、特許文献2は、外部放射線治療システムによって投与された線量をポータル画像から推定する方法を提案している。この方法は、特定のビーム補正アレイによる倍増を使用する画像補正段階と、空気中の線量から水中の等価線量を得るためにディストリビューションコアによるコンボルーション段階と、最後に較正チャートから線量を補正する段階とを含む。
【0023】
しかしながら、これらの方法はいずれも、低線量(検出器における投与線量が40cGyのしきい値未満)では満足な結果を提供しない。しかしながら、現在の原体照射治療法における暴露角度の倍増によって、所定の暴露の投与線量が前述のしきい値より少なくなることが多い。
【0024】
さらに、ポータル画像から得られた投与線量の値は、一般に、ビームの軸から外れたときに正しくなくなる。この場合、複雑な補正式は、非特許文献5に記載されているように使用される。
【0025】
従って、本発明の目的は、前述の欠点がなく、特に線量が低いときを含む線量の適正推定値を得ることができる、ポータルイメージング装置を備えた外部放射線治療システムによって投与された線量を確認するための方法を提案することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0026】
【特許文献1】欧州特許出願公開第2 248 551号明細書
【特許文献2】米国特許第8,130,905号明細書
【非特許文献】
【0027】
【非特許文献1】AIEAによるレポートTRS398 2000年6月
【非特許文献2】Radiotherapy and Oncology No.71(2004), pp.222-234に公開された「The use of an a Si-based EPID for routine absolute dosimetry pre-treatment verification of dynamic IMRT fields」と題するVan Eschらによる論文
【非特許文献3】Med. Phys. Vol.31, No.2, February 2004で公開された「Dose response and ghosting effects of an amorphous silicon electronic portal imaging device」と題するMcDermottらによる論文
【非特許文献4】Med. Phys., vol.32, No.10, October 2005, pp. 3095-3105で公開された「Data response characteristics of an amorphous silicon EPID」と題するP. Winklerらによる論文
【非特許文献5】Phys. Med. Biol., vol.52, 2007, pp. N355-N365で公開され「Implementation and validation of portal dosimetry with an amorphous silicon EPID in the energy range from 6 to 25 MV」と題するP. Winklerらによる論文
【非特許文献6】Med. Phys., vol.40, no.7, July 2013, pp. 071703-1 to 071703-9で公開された「A method for removing arm backscatter from EPID images」と題するB.W. Kingらによる論文
【非特許文献7】Med. Phys., Vol.25, No.5, pp.656-661の記事で公開された「A technique for the quantitative evaluation of dose distributions」と題する D.A. Lowらによる論文
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明は、ポータルイメージング装置を備えた外部放射線治療システムによって投与される線量を推定する方法によって定義され、この方法は、
(a)ポータルイメージング装置を使用してポータル画像が収集される段階、
(b)ポータル画像の中心で、ポータルイメージング装置と照射ビームの軸の交点に対応する画素のグレーレベルNが決定される段階、
(c)システムによって投与される線量が、D/D10eq=α+βln(N/Ng,10)を使用して水中の基準深さ(zref)で計算され、ここで、Ng,10は、線量および基準放射条件の場合に画像の中心での画素のグレーレベルであり、D10eqは、所定の一定線量であり、α,βは、事前較正フェーズで予め決定された係数である段階による。
【0029】
段階(b)の前に、有利には、照射がない状態で得られた画像をポータル画像から減算することによってポータル画像からバックグラウンドノイズを除去してノイズ抑制ポータル画像を得る。
【0030】
同様に、段階(b)の前に、ポータルイメージング装置の環境によるビームの後方散乱に起因する成分を除去することによってノイズ抑制画像を補正することができる。
【0031】
事前較正フェーズは、有利には、
−複数の線量D,k=1,…,Kと基準放射状態の場合に複数Kのポータル画像を取得する段階と、
−前記ポータル画像から、照射がない状態で取得された画像を減算してノイズを除去して、複数Kのノイズ抑制画像を得る段階と、
−ノイズ抑制画像を補正してイメージング装置の環境による後方散乱に起因する成分を除去する段階と、
−値D/D10eqとln(N/Ng,10),k=1,…,Kから係数α,βを計算する段階とを含む。
【0032】
係数α,βは、線形回帰を使用して、値D/D10eqおよびln(N/Ng,10),k=1,…,Kから得られ有利である。
【0033】
前記事前較正フェーズが、さらに、
−ポータル画像が取得された線量のそれぞれの基準深さで投与された線量の二次元分布を測定する段階であって、複数Kの測定線量画像を供給する段階と、
−取得したポータル画像を線量画像に変換して、複数Kの計算線量画像を供給する段階と、
−前記測定線量画像を前記計算線量画像と比較する段階とを含み、第1と第2とが一致した場合に係数α,βが確認される係数検証フェーズを含むことができる。
【0034】
代替によれば、各ポータル画像k=1,…,Kは、関係キャレットD(i,j)/D10eq=α+βln(N(i,j)/Ng,10)を利用して線量画像に変換され、ここで、N(i,j)は、取得されたk番目のポータル画像の画素(i,j)のグレーレベルである。
【0035】
次に、測定線量画像と計算線量画像が、指標γの解析を使用して比較されうる。
【0036】
本発明は、更に、ポータルイメージング装置を備えた外部放射線治療システムの治療計画を確認するための方法に関し、治療計画は、基準深さでの線量の複数Mの二次元分布によって定義され、各二次元分布が、入射角、モニタ単位量および照射ビームの構造と関連付けられ、線量の各二次元分布が公称線量画像を提供し、前記方法が、
−入射角、モニタ単位の量および照射ビームの構造のそれぞれのポータル画像を取得して、前記同じ複数Mの取得ポータル画像を得るようにする段階と、
−取得したポータル画像が線量画像に変換されて複数Mの計算線量画像が供給される段階と、
−前記計算線量画像が、公称線量画像と比較される段階とを含む。
【0037】
変換する段階の前に、照射がない状態で取得された画像をポータル画像から減算することによって、取得されたポータル画像からバックグラウンドノイズが有利に除去される。
【0038】
同様に、変換段階の前に、ポータルイメージング装置の環境によるビームの後方散乱に起因する成分を除去することによって、取得されたノイズ抑制ポータル画像を補正することができる。
【0039】
計算線量画像と公称線量画像との比較は、指標γの解析を使用して行なわれうる。
【0040】
この場合、事前較正フェーズは、
−複数の線量D,k=1,…,Kと基準放射状態で複数Kのポータル画像を取得する段階と、
−前記ポータル画像から、放射がない状態で取得された画像を減算することによりノイズを除去して複数Kのノイズ抑制画像を得る段階と、
−ノイズ抑制画像を補正してイメージング装置の環境による後方散乱に起因する成分を除去する段階と、
−値D/D10eqおよびln(N/Ng,10),k=1,…,Kから係数α,βを計算する段階(840)とを含む。
【0041】
係数α,βは、有利には、線形回帰を使用して、値D/D10eqおよびln(N/Ng,10),k=1,…,Kから計算することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
本発明の他の特徴および利点は、添付図面を参照して本発明の好ましい実施形態を読むときに明らかになる。
【0043】
図1】先行技術内の既知のポータルイメージング装置を備えた外部放射線治療システムを示す図である。
図2図1の外部放射線治療システムで使用される検出器の既知の例を示す図である。
図3図3A及び図3Bは等価深さを決定する方法を示す図である。
図4図4A図4B図4C図4Dは外部放射線治療システムによって投与された線量をポータル画像から推定することを可能にするモデリングの段階を示す図である。
図5A】等価深さでのコリメータの開口係数、組織最大比率および基準深さでのコリメータの開口の係数の逆数の変形を示す図である。
図5B】等価深さでのコリメータの開口係数、組織最大比率および基準深さでのコリメータの開口の係数の逆数の変形を示す図である。
図5C】等価深さでのコリメータの開口係数、組織最大比率および基準深さでのコリメータの開口の係数の逆数の変形を示す図である。
図6】本発明の一実施形態による外部放射線治療システムによって投与された線量を推定する方法のフローチャートを示す図である。
図7】外部放射線治療システムによって治療計画を確認する方法のフローチャートを示す図である。
図8図6により投与された線量を推定する方法または図7により治療計画を確認する方法の較正方法を示す流れ図である。
図9】治療計画による公称線量画像とポータル画像からの計算線量画像との間の指標γの解析による比較を示す図である。
図10】治療計画による公称線量画像とポータル画像からの計算線量画像との間の指標γの解析による比較を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下では、導入部分で述べたようなポータルイメージング装置を備えた外部放射線治療システムが検討される。ポータルイメージング装置は、直接変換によるものでも間接変換によるものでもよい。変換方法にかかわらず、一次または二次光子が、画素化半導体検出器、例えば先行技術で既知のアモルファス半導体検出器内に電子正孔対を生成する。
【0045】
このシステムによって投与された線量を推定する方法は、イメージング装置によって提供される画像ポータルを使用する。以下で、線量は、所定の基準深さzrefで、質量単位によって水中でビームによって与えられたエネルギーを意味する。従来、この基準深さは、ビームの品質により、水の表面から5または10cmに選択される。
【0046】
ポータル画像は、暴露の持続時間にわたるN個の連続フレームの平均で構成される。同様に、ある時点に投与された線量は、フレームのそれぞれの持続時間中に、この時点で投与された基本線量の和である。1フレーム当たりの線量が、一定で、平均線量チルダDと等しいと仮定することができる。
【0047】
投与線量を推定する方法は、本発明によれば、ポータル画像のグレーレベルを1フレーム当たりの線量と結び付けるオリジナルモデルに基づく。より正確には、ポータル画像内の画素のグレーレベルが、以下の関係を使用して、1フレーム当たりの線量に結び付けられることが示された。
【数4】
ここで、Nは、ポータル画像のグレーレベルであり、チルダDは、フレームの持続時間中に放射線治療システムによって投与される線量であり、Aは、ゼロ線量の場合に検出器の応答を表わす定数であり、Bは、入射光子のエネルギーに依存するパラメータであり、検出器内に光子の減衰を表わす。
【0048】
g,10とチルダD10eqはそれぞれ、基準状態で、ポータル画像の中心におけるグレーレベルとそれに対応する線量を表わす。以下で、フレームによって推論し、単純化するために表記DおよびD10eqが使用されるものとする。
【0049】
一般に、所定の深さで与えられた線量は、線源から来て最初に物質と相互作用する光子に起因する主成分と呼ばれる第1の成分と、最初に物質と既に相互作用した光子に起因する散乱成分と呼ばれる成分とを含む。散乱成分は、特に、照射野のサイズに依存し、所定の深さで与えられる線量は、物質の入口におけるフルエンスと共に線形にしか変化しない。
【0050】
他方、等価深さと呼ばれzeqとして示される水の深さがあり、等価深さでは、ポータルイメージング装置の応答が、照射野のサイズに関係なく、この深さで与えられる線量に比例することが分かった。
【0051】
図3A図3Bに、この等価状況が示される。
【0052】
図3Aは、検出器Ωに到達するビームFを放射するX光子の線源を示す。ビームの照射野が、正方形サイズで寸法C×C(cmで表された)のものであると想定する。ポータル画像の中心におけるグレーレベルは、Nとして示される。
【0053】
図3Bは、図3Aと同じ光子ビームを有する同じ線源Sを示す。この場合、ビームは、水ファントムに入射する。また、上記で定義された用語で、水等価深さzeqもある。水等価深さでの平面内の照射野のサイズは、C×Cである。この平面は、線源からの基準距離(この場合は100cm)で選択される。
【0054】
投与線量に関するポータルイメージング装置の応答の線形性から、次の式が得られる。
【数5】
ここで、Ng,10は、較正の条件、すなわち照射野のサイズが10×10cmで1フレーム当たりの線量が100MUに対応する場合に得られるグレーレベルである。
【0055】
測定から、等価深さzeqが入射光子のエネルギーに応じて変化するが、水中の平衡深さzより常に少ないままであることが分かる。この結果、基準深さとして等価深さを使用できなくなる。
【0056】
本発明の基本にある概念は、等価深さzeqで投与された線量によるこのイメージング装置の応答から、基準深さzrefで投与された線量によるポータルイメージング装置の応答を推測することである。
【0057】
この推測は、図4A図4Dに示されたモデルリング段階を進めることによって得られる。
【0058】
図4Aは、単純に図3B、換言すると、等価深さでの照射野のサイズがC×Ccmになるように上側面がビーム形状を有する光子線源から100cm−zeqに配置された水ファントムを使用する。
【0059】
図4Bは、図4Aの状況と同じ状況を示し、違いは、照射野のサイズが、基準場のサイズ10×10cmであることである。従って、ビームは、異なる発散を有する。
【0060】
eqが、寸法C×Ccmの正方形ビームの水中の等価深さzeqで与えられた線量を示し、D10eqが、サイズ10×10cmの照射野を除き水中の等価深さで与えられた線量を示す場合、次の関係がある。
【数6】
ここで、FOCeqは、水中の等価深さzeqで測定されたコリメータの開口係数である。同様に、
【数7】
【0061】
照射野サイズCによるコリメータの開口係数の逆数の変形1/FOCeq(C)が、図5Aに示される。
【0062】
図4Cは、図4Bと同じ状況を示し、違いは、水中で与えられた線量を決定する深さが、等価深さzeqではなく基準深さzrefになることである。水中の任意の深さで与えられた線量と最大線量Dmaxの関係は、線量測定法において「組織最大比率」(RTM)と呼ばれる。
【0063】
この比率RTMは、図5Bに示した曲線により水の深さに従って変化する。この曲線は、与えられた線量がその最大値に達する平衡深さzまでの増強部分と呼ばれる第1の部分と、与えられた線量が指標関数的に減少する平衡部分と呼ばれる第2の部分を示す。
【0064】
換言すると、組織最大比率は、最大投与量によって標準化された単に与えられた線量である。その結果、以下の関係がある。
【数8】
同様に、
【数9】
ここで、D10refは、基準照射条件(線源から平面までの距離が100cm、この平面で照射野のサイズが10×10cm)の場合に水中の基準深さで与えられた線量である。
この結果、次の式が得られる。
【数10】
【0065】
図4Dは、図4Cと同じ状況を示し、違いは、この場合、ビームが、基準深さにおける照射野サイズC、換言すると図4Aのビームと同じ照射野サイズを有することである。
【0066】
水ファントム内の基準深さで与えられた線量が、推定しようとする線量Dであることを想起されたい。後者は、次の関係によって線量D10refに結びつけられる。
【数11】
ここで、FOCrefは、水中の基準深さzrefで測定されたコリメータの開口係数である。
【0067】
式(7)、式(9)および式(10)から次の式が得られる。
【数12】
【0068】
照射野サイズCによるコリメータの開口係数の変形FOCref図5Cに示した。
【0069】
基準深さでのコリメータの開口係数が、対数の法則により等価深さでのコリメータの開口係数に関連付けられることが分かり、換言すると、次の式が得られる。
【数13】
ここで、定数α’,β’は、入射光子のエネルギーだけに依存する。
【0070】
この関係は、式(6)、(9)および(10)を考慮して表わされる。
【数14】
ここで、α=α’(RTM(zref)/RTM(zeq))、β=β’(RTM(zref)/RTM(zeq))である。
【0071】
ポータル画像の中心でのグレーレベルが、等価深さで測定された線量に比例する場合、式(5)から次の関係が得られる。
【数15】
ここで、Ng,10は、較正の条件、すなわち照射野サイズが10×10cmで1フレーム当たりの線量が100MUに対応する場合に得られるグレーレベルである。
【0072】
式(13)および(14)から次の式が得られる。
【数16】
または、等価に、
【数17】
ここで、A=exp(−α/β)、B=1/βである。
【0073】
したがって、式(15)から、ポータル画像を投与線量画像に変換できることが分かる。この変換は、ビームのコリメーションに従うコアまたは複雑な補正による畳み込みを必要としない。
【0074】
より正確には、図6は、本発明の一実施形態による外部放射線治療システムによって投与される線量を推定する方法を図示する。
【0075】
段階610で、ポータル画像が、ポータルイメージング装置を使用してグレーレベルで収集される。画像は、画像の画素のグレーレベルN(i,j)である要素の配列Nによって表わされうる。
【0076】
段階620で、ポータル画像から、暗視野像(DFI)とも呼ばれるバックグラウンドノイズが除去される。この画像は、照射がない状態でポータルイメージング装置によって行なわれる捕捉を有することによって得られる。Nが、暗視野内の画素のグレーレベルである要素の配列を示すために使用される場合、バックグラウンドノイズを除去する操作は、単に、ノイズ抑制配列と呼ばれる配列N−Nを計算することにある。
【0077】
段階630で、そのようにノイズ抑制画像が、放射線治療システムの機器、特に機械式アームによって後方散乱された放射線を考慮するように補正される。この補正は、後方散乱による成分を画像から除去することによって行われる。この補正は、非特許文献6に記載されたように行われうる。
【0078】
段階640で、ポータル画像の中心、すなわちビームの軸とポータル画像の交点における画素のグレーレベルNが決定される。
【0079】
段階650で、投与線量Dが、グレーレベルNから式(15)を使用して計算され、パラメータα,βは、後述する従来の較正手順を使用して得られた。
【0080】
段階620および630が、投与線量の正確な推定値を得るために必要とされる場合、もっと大雑把な推定で十分なときは省略されてもよいことに注意されたい。
【0081】
図7は、本発明の一実施形態による外部放射線治療システムによって投与された線量を確認する方法を図示する。
【0082】
この方法は、特に、放射線治療計画の枠組みで適用されうる。
【0083】
700は、外部放射線治療による治療計画の段階を示す。この段階は、複数Mのビームの入射角を決定することと、入射角ごとに、ビームの構造(すなわち、コリメータのブレードの配置)と、線源から治療台までの距離と、モニタ単位の量とを決定することにある。換言すると、入射角ごとに、線量の二次元配列が決定され、バーD(i,j),i,j=1,…,Nは、患者に投与される線量のマッピングを表わす。この線量の二次元配列は、グレーレベルに関して線量バーD(i,j)を有する座標(i,j)の各画素の公称線量画像Iとして表わすことができる。
【0084】
平行して、710で、患者が存在しない状態で、様々な構造に従いまた治療計画で指定されたMUの数で、様々な入射角のEPID検出器を使用してビームのポータル画像の取得が行われる。各ポータル画像m=1,…,Mは、その画素のグレーレベル、すなわちN(i,j),i,j=1,…,Nによって定義される。
【0085】
これらの画像はそれぞれ、720で、前述のようなバックグラウンドノイズの除去によって補正され、730で、放射線治療システムの機器によって後方散乱された放射線の除去によって補正されうる。
【0086】
段階740で、ポータル画像は、次の式を使用して投与線量画像に変換される。
【数18】
【0087】
段階750で、前の段階でそれぞれ計算された線量画像D(i,j),m=1,…,Mが、治療計画によって供給される公称線量画像バーD(i,j),m=1,…,Mと比較される。計算された画像と公称画像との比較は、線量測定の分野で知られ後述される指標γの解析を使用して実行されると有利である。
【0088】
段階760で、計算された線量画像と公称線量画像が、指標γの解析の点で一致した場合、治療計画が有効になる。
【0089】
あるいは、当業者は、関係(16)を使用して公称線量画像を公称ポータル画像に変換し、取得したポータル画像を公称ポータル画像と比較することができることを理解するであろう。この比較は、指標γの解析を使用して行うこともできる。
【0090】
図8は、図6の投与線量を推定する方法または図7の治療計画を確認する方法の較正方法を図示する。
【0091】
段階810で、外部放射線治療システムのEPID検出器を使用して複数Kの画像が収集される。画像は、複数の線量、例えば2〜400MUの線量に関して収集される。この取得は、患者のいない状態で、参照放射状態、すなわち、ビームが検出器上でサイズ10×10cmの正方形場を有するように適合された状態で行われる。検出器は、光子Xの線源から100cmの距離に配置される。
【0092】
段階820で、取得された画像の第1の補正が、図6の段階620と関連して前述されたようなバックグラウンドノイズを除去することによって実行される。
【0093】
段階830で、画像の第2の補正が、環境によって(詳細には、システムの機械式アームによって)後方散乱された放射線によるようなノイズ抑制画像を除去することによって実行される。この補正は、図6の段階630と関連して前述されたように実行される。
【0094】
段階840で、係数α,βは、座標の点、D/D10eqとln(N/Ng,10),k=1,…,K上で線形回帰を行うことによって計算され、ここで、Dは、画像kを生成するために使用される1フレーム当たりの線量、Nは、画像k=1,…,Kの中心(換言すると、ビームの軸上)における画素のグレーレベルであり、Ng,10は、ビームに対応する1フレーム当たりの線量が10×10cmと100MUの場合の画像の中心でのグレーレベルを表わす。
【0095】
必要に応じて、段階850〜870を使用して係数α,βが実際に正しいことを確認することができる。
【0096】
より正確には、段階850で、イオン化チャンバを使用して、水中で投与された線量の二次元分布(または、単にビームの対称面内の線量の横断プロファイル)が、基準深さで測定される。この分布は、段階810で画像が得られた線量の値のそれぞれに関して測定されうる。したがって、測定によって、線量のK二次元分布が得られる。これらのK二次元分布は、測定線量画像D(i,j);i,j=1,…,N;k=1,…,Kと見なすことができる。
【0097】
段階860で、取得したポータル画像は、次の関係式を使用して計算線量画像に変換される。
【数19】
ここで、N(i,j)は、取得されたk番目のポータル画像の画素(i,j)のグレーレベルである。
【0098】
段階870で、前の段階で計算された線量画像が、段階850で測定された線量画像と比較される。この比較は、前述したような指標γの解析に基づいて行なわれる。
【0099】
これらの画像が一致するとき、係数α,βの妥当性を結論付けることができる。
【0100】
2つの画像を指標γに基づいて比較する方法は、非特許文献7に記載され、以下に想起される。
【0101】
指標γの解析に基づいて比較する方法によって、画像を基準画像に対して比較することができる。これは、二次元変数I(x,y)(比較される画像)とI(x,y)(基準画像)によってそれぞれ表わすことができ、そのような変数は、例えば、線量の値またはポータル画像のグレーレベルでよい。
【0102】
二次元変数I(x,y)およびI(x,y)は、三次元空間内で層によって表わすことができ、座標の各点x,yで、縦座標点I(x,y),resp.I(x,y)と関連付けられる。以下では、基準層は、Λと呼ばれ、基準画像層とカレント層はΛと呼ばれ、画像の層が比較される。
【0103】
基準層の座標(x,z=I(x,y))のΛの各点Pで、半径δrmaxと高さδImaxの回転楕円面が位置決めされる。次に、楕円内にカレント層の点Qがあるかどうかが決定される。
【0104】
より正確には、座標点(x,y)で評価された指標γは、次の式によって示される。
【数20】
ここで、δI=|I(x,y)−I(x,y)|、δr=√(x−x+(y−yである。
【0105】
1未満の指標γの値は、検討中の点における2つの画像間の一致を示す。
【0106】
図9は、指標γの解析による、治療計画による公称線量画像910とポータル画像920から計算された線量画像との比較を示す。この場合、公称線量は、100MUのサイズ10×10cmの照射野内で均一である。指標γは、930で示される。940は、公称線量画像(実線)と計算線量画像(丸)の軸OXによるプロファイルを示す。2つのプロファイルがよく一致していることに注意されたい。指標γの画像に示されたように、計算された画像の下側部分だけが公称画像に対して僅かな歪みを有する930(画像の右上の部分)。この場合、この僅かな歪みは、後方散乱成分の補正の欠如によるものである。
【0107】
図10は、指標γの解析による、治療計画による公称線量画像1010とポータル画像1020から計算された線量画像との比較を示す。この場合、公称線量は、照射野内で勾配を有する(100MU、サイズ10×10cmの照射野、およびビームの軸に対して60°に向けられた角のフィルタ)。指標γは、1030で示される。1040は、公称線量画像(実線)と計算線量画像(丸)の垂直軸によるプロファイルを示す。2つのプロファイルがよく一致していることに注意されたい。指標γの画像に示されたように、計算画像の下側部分だけが公称画像に関して僅かな歪みを有する1030(画像の右上の部分)。この場合、この僅かな歪みは、後方散乱成分の補正の欠如によるものである。
【符号の説明】
【0108】
110 電子銃
120 線形加速器
130 ターゲット
140 コリメーションシステム
160 ポータルイメージング装置
180 機械式アーム
190 ゲート
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8
図9
図10