特許第6573974号(P6573974)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6573974安全に関わる可動構成部材の制御式ロック又はロック解除装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6573974
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】安全に関わる可動構成部材の制御式ロック又はロック解除装置
(51)【国際特許分類】
   E05B 47/00 20060101AFI20190902BHJP
【FI】
   E05B47/00 J
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-520957(P2017-520957)
(86)(22)【出願日】2015年7月24日
(65)【公表番号】特表2017-531113(P2017-531113A)
(43)【公表日】2017年10月19日
(86)【国際出願番号】EP2015067021
(87)【国際公開番号】WO2016058718
(87)【国際公開日】20160421
【審査請求日】2018年3月28日
(31)【優先権主張番号】102014015389.4
(32)【優先日】2014年10月17日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】516027731
【氏名又は名称】オイヒナー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング プルス コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】EUCHNER GmbH + Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ベアント ヘアマン
【審査官】 秋山 斉昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開平5−1484(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0186673(US,A1)
【文献】 特開2012−193584(JP,A)
【文献】 英国特許出願公開第2225375(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00−85/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
防護扉又は防護フラップ等の、安全に関わる可動構成部材(55)の制御式のロック又はロック解除装置であって、可動のロック部材(57)と、ロック位置とロック解除位置との間での前記ロック部材(57)の調節移動を制御するセルフロック式の駆動装置(5,17,19,21,23,27)とを備えており、
前記駆動装置(5,17,19,21,23,27)により移動可能な作動子としてタペット(33)が設けられており、該タペット(33)は、前記駆動装置(5,17,19,21,23,27)により前記ロック部材(57)をロック解除位置へ移行させるために、前記ロック部材(57)と機械的に連結されており、且つ前記駆動装置(5,17,19,21,23,27)とは関係なく前記ロック部材(57)をロック解除位置へ移行させるために、前記ロック部材(57)から連結解除可能であり、
当該ロック又はロック解除装置は、タンブラーピン(57)の形態のロック部材を備えた、ピンタンブラーの形態のロック装置(53)を有しており、前記タンブラーピン(57)は、ロック位置とロック解除位置との間で移動するために、前記タペット(33)の直線的な変位運動に対して同軸的に支持されており、且つエネルギ蓄え器(61)により予荷重を加えられてロック位置へ移動されるようになっており、
前記タペット(33)は、前記駆動装置(5,17,19,21,23,27)とは反対の側の端部に、後退運動を伝達するために前記タンブラーピン(57)に位置する当接面(66)と協働する連行体(51)を有しており、前記タンブラーピン(57)には連結解除区間(65)が形成されており、前記連行体(51)が前記当接面(66)から持ち上げられると、前記タンブラーピン(57)は、前記連結解除区間(65)の長さにわたり、作用する前記エネルギ蓄え器(61)の予荷重力に抗して、ロック位置からロック解除位置へと移動することができるようになっていることを特徴とする、制御式のロック又はロック解除装置。
【請求項2】
駆動装置として、電動モータ(5)の駆動軸(7)の回転運動を、前記駆動軸(7)の軸線(9)に対して同軸的な、前記タペット(33)の直線運動に変換する伝動装置(15)を備えた回転駆動装置(5,17,19,21,23,27)が設けられている、請求項1記載の装置。
【請求項3】
遊星歯車伝動装置(15)と、該遊星歯車伝動装置(15)により駆動可能であり、前記タペット(33)を前進切換位置と後退切換位置との間で移動させるスピンドル駆動装置(17)と、が設けられている、請求項1または2記載の装置。
【請求項4】
記タペット(33)は、当該ロック装置のケーシング(53)の中央の通路(52)内へ延びるロッドの形態で設けられている、請求項1からまでのいずれか1項記載の装置。
【請求項5】
前記タンブラーピン(57)は、前記駆動装置(5,17,19,21,23,27)に向かって軸方向に延びるスリーブ部分(63)を有しており、該スリーブ部分(63)に、前記タペット(33)の前記連行体(51)用の連結解除区間として案内軌道(65)が形成されており、該案内軌道(65)の長さにわたり、前記タンブラーピン(57)は、前記連行体(51)に対して相対的に、前記エネルギ蓄え器(61)の予荷重力に抗して軸方向に移動することができるようになっている、請求項1からまでのいずれか1項記載の装置。
【請求項6】
前記タンブラーピン(57)は、前記ケーシング(53)の開放端部において、半径方向に張り出したフランジ部分(60)でもって案内されており、該フランジ部分(60)には、エネルギ蓄え器として設けられた、前記フランジ部分(60)と前記ケーシング(53)の前記通路(52)内の段部(62)とに支持されたコイルばね(61)の形態の閉鎖ばねによって包囲されたスリーブ部分(63)が続いている、請求項記載の装置。
【請求項7】
非常操作手段(73〜77)が設けられており、該非常操作手段(73〜77)を用いて、前記タンブラーピン(57)を、前記タペット(33)の前記連行体(51)が前記当接面(66)から持ち上げられた状態で、前記コイルばね(61)の作用に抗して手動でロック位置からロック解除位置へと移動させることができるようになっている、請求項記載の装置。
【請求項8】
前記非常操作手段は、前記ケーシング(53)内で駆動装置の駆動軸の軸線(9)に対して横方向に可動のロッド(74)に結合された非常ボタン(73)を有しており、前記ロッド(74)は、ケーシング通路(52)内に延びている端部に傾斜面(76)を有しており、該傾斜面(76)は、前記非常ボタン(73)の作動時に、前記タンブラーピン(57)の前記スリーブ部分(63)の突出したフランジ縁部(77)に作用して、前記タンブラーピン(57)を前記コイルばね(61)の作用に抗して移動させることができるようになっている、請求項記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防護扉又は防護フラップ等の、安全に関わる可動構成部材の制御式のロック又はロック解除装置であって、可動のロック部材と、ロック位置とロック解除位置との間でのロック部材の調節移動を制御するセルフロック式の駆動装置と、を備えるものに関する。
【背景技術】
【0002】
このような形式の装置は従来技術であり、好適には、安全システムの構成部材を形成している装置に使用される。この安全システムにおいて、可動構成部材は、防護されるべき空間範囲用に、機械の危険領域に設けられる防護装置として、例えば防護扉又は防護フラップの形態で立入り又は介入を防ぐ、境界を形成する位置においてロックすることができる。冒頭で述べた形式の装置は、独国特許出願公開第102009041101号明細書の文献に開示されている。この刊行物には、ロック装置の2つの変化形態が記載されており、それぞれ、1つの回転駆動装置が電動モータを備えて設けられている。1つのケースでは、電動モータの駆動軸に平歯車が設けられており、平歯車は、タンブラーピンとして形成されたロック部材に設けられたラック状の歯列と噛み合っており、タンブラーピンは、電動モータの一方又は他方の回転方向での回転運動により、ロック位置又はロック解除位置へと軸方向に移動するようになっている。モータ駆動軸と直接に結合された歯車/ラック/伝動装置を備えたこの駆動装置の構成は、冒頭で述べた形式とは異なり、セルフロック式ではない。つまり、電動モータに電気エネルギが供給されない場合、又は電動モータの機能不全時に、例えば振動又は衝撃が加えられると、タンブラーピンは意図せずに移動する可能性があり、例えばロック位置からロック解除位置へと変位する可能性がある。安全に関わる構成部材のためのロック装置において、このことは甘受することができない。
【0003】
上記文献に記載された上記形式の第2の装置変化形態は、電動モータとロック部材との間に、ウォームギヤとトグルレバーアセンブリとを有する伝動装置ユニットを設けることにより、このような安全上の欠点を回避している。このような伝動装置ユニットはセルフロック式なので、駆動装置の故障時にロック部材がロック位置からロック解除位置へと動かされることによる不本意なロック解除が生じる危険は回避されているが、その代わりに、包囲された空間範囲への立入り又は介入が必要とされる危険な状態において、いわゆる脱出用ロック解除を可能にするための、駆動装置故障時の非常操作の意味での操作も一切不可能である、という欠点を考慮する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この問題に鑑みて、本発明の課題は、従来技術の上記の安全上の欠点を回避する、冒頭で述べた形式の装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、本発明に基づき、請求項1記載の全ての特徴を有する装置によって解決されている。
【0006】
請求項1の特徴部によれば、本発明の重要な特徴は、セルフロック式の駆動装置により移動可能な作動子が設けられており、作動子は、駆動装置によりロック部材をロック解除位置へ移行させるために、ロック部材と機械的に連結されており、且つ駆動装置とは関係なくロック部材をロック解除位置へ移行させるために、ロック部材から連結解除可能である。セルフロック式の伝動装置を、本発明で設けられた、作動子とロック部材との間を連結解除する手段と組み合わせて使用することにより、ひとつには、駆動装置の機能障害及びロック部材に対する力の作用時の不本意なロック解除の危険が回避されるようになっている。更に、本発明に基づき提供された、作動子とロック部材との間の連結解除手段は、駆動装置とは関係無く行われる脱出用ロック解除を可能にすることにより、危険な状態における安全上のリスクをも回避している。
【0007】
特に有利には、本発明による装置は、ピンタンブラーとして、タンブラーピンの形態のロック部材を備えて形成されていてよく、タンブラーピンは、ロック位置とロック解除位置との間で移動するために、作動子の直線的な変位運動に対して同軸的に支持されており、且つエネルギ蓄え器により予荷重を加えられてロック位置へと移動される。
【0008】
当該装置用に、電動モータの駆動軸の回転運動を、駆動軸の軸線に対して同軸的な、作動子の直線運動に変換する伝動装置を備えた回転駆動装置が設けられていてよい。
【0009】
電動モータを有するこのような駆動装置の場合、特に有利には、駆動装置にセルフロック特性を与える伝動装置として、遊星歯車伝動装置と、遊星歯車伝動装置により駆動可能であり、作動子を前進切換位置と後退切換位置との間で移動させるスピンドル駆動装置と、が設けられていてよい。伝動装置構成部材として遊星歯車伝動装置を利用することにより、最小スペースに対する高トルクの伝達が可能になると同時に、高い伝達比が実現可能であり、且つスピンドル駆動装置との組合せにおいて、当該装置の固定されたケーシングの特にコンパクトな構成形式を可能にするので、当該装置は提供される取付けスペースが小さな場合でも、難なく安全技術的な設備に組み込まれる。
【0010】
特に有利には、作動子として、ロック装置のケーシングの中央の通路内へ延びている、ロッドの形態のタペットが設けられていてよい。
【0011】
この装置は、有利には、タペットが駆動装置とは反対の側の端部に、後退運動を伝達するためにタンブラーピンに位置する当接面と協働する、張り出した連行体を有するようになっていてよい。タンブラーピンには連結解除区間が形成されており、連行体が当接面から持ち上げられると、タンブラーピンは連結解除区間の長さにわたり、作用するエネルギ蓄え器の予荷重力に抗して、ロック位置からロック解除位置へと移動することができるようになっている。これにより、前進したロック位置にあるタンブラーピンはタペットの連行体から連結解除され、タンブラーピンは、これに作用する予荷重力に抗して、タペットが占めている軸方向位置に関係なく、必要な場合にはロック位置からロック解除位置へと移動することができるようになっている。
【0012】
特に有利な実施例では、タンブラーピンは、駆動装置に向かって軸方向に延びるスリーブ部分を有しており、このスリーブ部分に、タペットの連行体用の連結解除区間として案内軌道が形成されており、この案内軌道の長さにわたり、タンブラーピンは、連行体に対して相対的に、エネルギ蓄え器の予荷重力に抗して軸方向に移動することができるようになっている。
【0013】
この装置は、特に有利には、タンブラーピンがケーシングの開放端部において、半径方向に張り出したフランジ部分でもって案内されており、フランジ部分には、エネルギ蓄え器として設けられた、一方ではフランジ部分に支持され且つ他方ではケーシングの通路内の段部に支持されたコイルばねの形態の閉鎖ばねによって包囲されたスリーブ部分が続いている。このようにして、ロック装置は特にコンパクトな構成形式で実現可能である。
【0014】
必要な場合に実施されるべきロック装置の脱出用ロック解除又は非常用ロック解除のために、非常操作手段が設けられていてよく、非常操作手段を用いてタンブラーピンを、タペットの連行体が当接面から持ち上げられた状態で、コイルばねの作用に抗して手動でロック位置からロック解除位置へと移動させることができるようになっている。有利な構成では、非常操作手段は、ケーシング内で軸線に対して横方向に可動の操作ロッドに結合された非常ボタンを有していてよく、操作ロッドは、ケーシング通路内に延びている端部に傾斜面を有しており、この傾斜面が非常ボタンの作動時に、タンブラーピンのスリーブ部分の突出したフランジ縁部に作用して、タンブラーピンをコイルばねの作用に抗して移動させることができるようになっている。
【0015】
以下、本発明を図示の実施例に基づき詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明による装置の1つの実施例のための回転駆動装置を、付属のロック装置無しで示す斜視図である。
図2】実施例の回転駆動装置の個別部品を分解して示す斜視図である。
図3】駆動装置を長手方向に切断して示す斜視図である。
図4】実施例を長手方向に切断して示す斜視図であり、駆動装置は中断されて図示されており、ロック装置はピンタンブラーの形態で防護扉のロック状態で図示されている。
図5図4に相当する図であり、ロック解除状態が示されている。
図6図4及び図5に相当する図であり、脱出用ロック解除状態が図示されている。
図7図4図6に対して切断面を回動して示す簡略的な部分縦断面図であり、略示したに過ぎない扉のロック状態が図示されている。
図8図7に相当するが中断して示した部分縦断面図であり、図6に示した脱出用ロック解除状態が図示されている。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、防護扉用のピンタンブラーの形態のロック装置の例を図面に関して説明するものであり、電動モータ5を備えた回転駆動装置が設けられている。図1図3に、付属のロック装置無しで示したこの駆動装置は、ケーシング部材1,3から形成された駆動装置ケーシングを有しており、駆動装置ケーシングは、図1に示した閉鎖状態では、正方形の横断面を有する、長方形の直方体の形状を有している。図2及び図3には、駆動装置がより詳細に示されている。図2において右側に位置するケーシング部材1は、電動モータ5用のモータケーシングを形成しており、電動モータ5は、ケーシング部材1内で、電動モータ5の駆動軸7がケーシング部材1,3の長手方向中心軸線9に沿って延びるように支持されている。駆動軸7にはピニオン11が設けられている。駆動装置ケーシングを形成するように組み立てられるケーシング部材1,3の間には、遊星歯車伝動装置15及びねじ山付きスピンドル17用の伝動装置空間13が形成されている。ねじ山付きスピンドル17は、スピンドルケーシングを形成しているケーシング部材3の端面壁20に設けられた雌ねじ山19に係合している。
【0018】
遊星歯車伝動装置15は3つの遊星歯車21を有しており、これらの遊星歯車21は、太陽歯車を形成するピニオン11と噛み合っている。遊星歯車21は、定置の回転軸線を備えて遊星キャリヤ23の軸ピン22に支持されている。円形プレートの形態の遊星キャリヤ23は、この遊星キャリヤ23のピン孔25に係合する、ケーシング部材1の突出したピン24に不動に取り付けられている。遊星歯車伝動装置15の被動側の伝動装置要素としてリングギヤ27が設けられており、リングギヤ27は、ねじ山付きスピンドル17と共に1つの一体的な構成部材を形成している。リングギヤ27は、ポット29を包囲する円筒形のカバー28を有しており、ポット29のポット底部30からは、ねじ山付きスピンドル17が同軸的な付加部として延びている。ポット29の内壁は、遊星歯車21の歯が噛み合っている歯列31を有している。カバー28の軸方向長さ、ひいては歯列31の軸方向長さは、遊星歯車21により生じる駆動装置の回転運動時に、ねじ山付きスピンドル17が所定の作動行程又は移動距離にわたり移動する間、歯列31が遊星歯車21の歯と噛み合い続けるように選択されている。電動モータ5の回転方向に応じて前進方向又は後退方向で駆動軸7に対して同軸的に行われる、リングギヤ27の直線的な変位運動を、制御されるべきロック装置(図1図3には図示せず)に伝達する作動子としては、ねじ山付きスピンドル17に同軸的な付加部としてタペット33が取り付けられており、タペット33は、ケーシング部材3の端面壁20を貫通して外側に向かって延びている(図1参照)。
【0019】
両回転方向での電動モータ5の動作を制御する、従来技術に相当する電子制御ユニットは、ケーシング上面に接触している回路板35を有している。図2及び図3に示すように、回路板35からは複数の支持体37が伝動装置空間13内へ延びており、これらの支持体37にはそれぞれ、ライトバリア39が設けられている。回路板35に接続されたライトバリア39の信号を評価するセンサ装置を形成するために、リングギヤ27のカバー28の前方の周縁に、軸方向に突出したエッジリブ41が形成されていると共に、後方の周縁にエッジリブ43が形成されており、これらのエッジリブ41,43はそれぞれ螺旋状に延びていることから、各エッジリブ41,43には段部45が形成されている。作動変位運動の前方の終端位置に近づくと、段部45に続くエッジリブ41が、ライトバリア39の光路に進入して位置を検出する。後退運動の場合は、終端位置に近づくと、エッジリブ43の、段部45に続く部分が、対応配置されたライトバリア39の光路に進入し、これによりやはり、位置信号が発せられる。リングギヤ27、ひいては作動子を形成するタペット33の終端位置決め用に機械的なストッパが設けられている場合には、ライトバリア39の信号に基づき、機械的なストッパに到達する前にモータ5を制動する又は停止させることができる。エッジリブ41,43により影響を及ぼされるライトバリア39に対して、代替的に、リングギヤ27のカバー28の外面の明暗コントラストを、光学的な位置検出に利用することができる。
【0020】
図4図8には、ピンタンブラーの形態のロック装置の1つの実施例が示されている。ロック装置を制御するために、軸方向に可動の作動子を形成するタペット33は、半径方向に張り出した連行体51で終わり且つロック装置のケーシング53の中央の通路52内へ延びている、より長いロッドの形状を有している。ケーシング部材1,3から形成された駆動装置ケーシングを有する駆動装置は、通路52の開放端部54においてケーシング53に挿入されており、ケーシング53は、その開放端部54の方からケーシング部材3を包囲している。ロック装置は、防護扉55(図4図8には縁部条片部分のみ略示)のロック又はロック解除用に、タンブラーピン57を有しており、タンブラーピン57はロック位置とロック解除位置との間で、タペット33の直線運動の軸線に対して同軸的に変位可能である。タンブラーピン57は、図4では前進したロック位置で示されており、図5及び図6では後退したロック解除位置で示されている。
【0021】
タンブラーピン57は、ケーシング53の通路52の開放自由端部に挿入されて、中空シリンダ59を包囲している案内体58内で案内されており、タンブラーピン57は、中空シリンダ59内で、半径方向に張り出したフランジ部分60でもって案内されている。フランジ部分60と通路52の段部62とに支持された閉鎖ばね61は、タンブラーピン57に予荷重を加えて、図4に示すロック位置に移動させている。タンブラーピン57は、フランジ部分60から出発して、スリーブ部分63の形で続いており、スリーブ部分63は閉鎖ばね61を貫通して、通路52の拡張された終端部分64まで延びている。スリーブ部分63は、フランジ部分60に続く開始部分に、タペット33の連行体51用の案内軌道65を形成しており、案内軌道65は、フランジ部分60から遠い方の端部において、半径方向内側に突出した、連行体51用の当接面66により区切られている。
【0022】
図4が示すロック状態では、タンブラーピン57が、ばね61の予荷重力により、扉55のピン開口67内へ押し込まれている。タペット33は進出位置にあり、このときタペット33の連行体51は、当接面66に当接している。ロック解除状態へ移行させるためにタペット33が後退させられると、当接面66に当接しているタペット33の連行体51が、閉鎖ばね61の力に抗してタンブラーピン57をロック解除位置へ連行する。この動作状態は、図5に示されている。タペット33とタンブラーピン57が占めている各位置を検出するために、通路52の拡張された終端部分64にライトバリア68,69が配置されている。図5に示す状態では、タペット33に取り付けられたカップ状のカラー70がライトバリア68の光路を中断する一方で、スリーブ部分63の端部において側方に張り出した端部部分71が、ライトバリア69の光路を中断している。
【0023】
図5に示した状態は、「通常ロック解除」の場合を表しており、通常ロック解除の場合、タンブラーピン57は、作動装置により生じるタペット33の後退運動により、閉鎖ばね61の力に抗して引き戻されている。作動装置が故障した場合、ロック装置は脱出用ロック解除を可能にする。タペット33が前進した位置に残されているこの動作状態は、図6に示されている。図6に示したように、ばね力に抗して行われるタンブラーピン57の移動のために、連行体51に対する相対運動用にスリーブ部分63に設けられた案内軌道65の長さによって、連結解除区間が形成されており、タンブラーピン57は、連結解除区間の長さにわたり、ロック解除位置へ移動することができるようになっており、このときタペット33の連行体51は当接面66から持ち上がっている。この場合、タンブラーピン57のロック解除状態は、図5に示した「通常ロック解除」の場合と同様に、端部部分71がライトバリア69の光路を中断することによって信号化される。但し、図5に示した場合とは異なり、タペット33が前進させられた状態は、ライトバリア68の光路が中断されていないことによって信号化される。本発明による装置は、自体公知のRFID技術を介して、安全に関わる各可動構成部材(防護扉、防護フラップ)に配置された、特に開閉状態に関する少なくとも1つの情報を当該装置とその制御部材へ伝達する操作体(図示せず)と協働することができる。
【0024】
図7及び図8には、脱出用ロック解除を手動で実施可能な非常操作手段が簡略的に示されている。非常操作手段は、操作ロッド74に結合された非常ボタン73を有している。操作ロッド74は、ケーシング通路52内へ延びる端部に操作フォーク75を有しており、操作フォーク75は、タンブラーピン57のスリーブ部分63に被さるように係合していると共に斜めの制御面76を有している。斜めの制御面76は、非常ボタン73が作動すると、タンブラーピン57の突出したフランジ縁部77に作用し、図7図8との比較が示すように、タンブラーピン57を、ばね61の作用に抗してロック解除位置へ引き戻す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8