特許第6573977号(P6573977)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6573977エンドキャップを有するタービンブレード
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6573977
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】エンドキャップを有するタービンブレード
(51)【国際特許分類】
   F01D 5/20 20060101AFI20190902BHJP
   F01D 11/08 20060101ALI20190902BHJP
   F01D 25/00 20060101ALI20190902BHJP
   F02C 7/28 20060101ALI20190902BHJP
【FI】
   F01D5/20
   F01D11/08
   F01D25/00 M
   F02C7/28 A
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-524414(P2017-524414)
(86)(22)【出願日】2015年11月3日
(65)【公表番号】特表2017-537257(P2017-537257A)
(43)【公表日】2017年12月14日
(86)【国際出願番号】FR2015052954
(87)【国際公開番号】WO2016071620
(87)【国際公開日】20160512
【審査請求日】2018年10月9日
(31)【優先権主張番号】1460618
(32)【優先日】2014年11月4日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】516227272
【氏名又は名称】サフラン・エアクラフト・エンジンズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オリーブ,レミ・フィリップ・オズワルド
(72)【発明者】
【氏名】デ・メエスチャルク,ツィス・ヒー・モニク
(72)【発明者】
【氏名】ラバニョーリ,セルジョ
(72)【発明者】
【氏名】パニアグア,ギレルモ
【審査官】 北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2014/0044557(US,A1)
【文献】 米国特許第5660523(US,A)
【文献】 米国特許第5503527(US,A)
【文献】 特表2012−528275(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 5/20
F01D 11/08
F01D 25/00
F02C 7/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービンエンジンのタービンブレード(1)であって、上方表面(11)と、下方表面(12)と、前縁部(13)と、後縁部(14)と、タービンブレードの頂部におけるスクイーラ先端部(2)であって、前記スクイーラ先端部(2)が、リム(2a)によって画定され、前記スクイーラ先端部(2)を画定するリム(2a)から離間した内側リブ(3)を備えた、スクイーラ先端部(2)とを備え、前記内側リブ(3)が、スクイーラ先端部の内側においてキャビティ(4)を規定するように形成され、このキャビティ内において漏洩流(5)の通過が制限されており、スクイーラ先端部(2)が底部(2b)を備えており、キャビティ(4)が、内側リブ(3)によって囲まれたスクイーラ先端部(2)の底部(2b)の一部によって形成されていることを特徴とする、タービンエンジンのタービンブレード(1)。
【請求項2】
内側リブ(3)が、上方表面(31)、下方表面(32)、前縁部(33)、および後縁部(34)を備え、内側リブ(3)の前縁部(32)が、ブレードの下方表面(12)からほぼ一定の間隔で離間しており、内側リブ(3)の上方表面(31)が、ブレード(1)の上方表面(11)からほぼ一定の間隔で離間していることを特徴とする、請求項1に記載のブレード。
【請求項3】
内側リブ(3)が、その前縁部(33)において、上流側の延長部分(331)を備えていることを特徴とする、請求項2に記載のブレード。
【請求項4】
内側リブ(3)が、その後縁部(34)において、下流側の延長部分(341)を備えていることを特徴とする、請求項2または請求項3に記載のブレード。
【請求項5】
上流側開口(131)が、前縁部(13)においてリム(2a)に形成されていることを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のブレード。
【請求項6】
上流側開口(131)が、下方表面(12)のリム(2a)、かつ、上方表面(11)の前縁部(111)の端部分に形成されていることを特徴とする、請求項5に記載のブレード。
【請求項7】
下流側開口(141)が、後縁部(14)においてリム(2a)に形成されていることを特徴とする、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のブレード。
【請求項8】
下流側開口(141)が、下方表面(12)のみのリム(2a)に形成されていることを特徴とする、請求項7に記載のブレード。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のブレード(1)を備えていることを特徴とするタービンディスク。
【請求項10】
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のブレード(1)を備えていることを特徴とする、ターボジェットエンジンの高圧タービン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タービンエンジンのタービンブレードの分野に関する。
【0002】
本開示は、特に、ターボジェットエンジンの燃焼チャンバの流出部において、高圧タービンである場合に、有利な用途を見出している。
【背景技術】
【0003】
慣習的に、ブレードの先端部におけるクリアランスが、タービンエンジンのタービンのブレードと、内部で前記ロータが回転するリングの内側面との間に設けられており、このクリアランスにより、前記ロータが回転することができる。ロータの動き、および、ブレードの下方表面と上方表面との間の圧力差に起因して、漏洩流が、各ブレードの先端部と、リングの内側面との間のクリアランスにおいて生じる。これら流れ、および、これら流れが上方表面において形成する渦は、タービンエンジンの性能に直接影響する空力および空熱に関する多くの問題の原因である。
【0004】
ブレードの先端部とリングの内側表面との間のクリアランスは、通常、これら流れを低減するように調整される。いずれにしろ、このクリアランスの低減により、ブレードとリングの内側表面との間の接触のリスクが増大し、ブレードの耐用年数をひどく制限している。さらに、この接触は、ブレ−ドの先端部の温度の上昇をも生じ、この温度上昇も、ブレードの耐用年数に影響する。
【0005】
この欠点を補償するために、慣習的に、ブレードの上面においてスクイーラ先端部を設けることが知られている。この先端部により、ブレードとリングとの間の接触面を制限することが可能である。これらスクイーラ先端部は、通常、閉じた輪郭の境界を定めるリムによって画定され、この目的のために、リムは、ブレード端部において、上方表面と下方表面とに沿って、前縁から後縁に延びる。
【0006】
具体的には、ブレードの空力および空熱に関する性能を最適化することが意図されたスクイーラ先端部の構成が提案されている。
【0007】
たとえば、本出願人による国際公開第2009/115728号パンフレットの特許出願が知られている。この出願により、ブレードの頂部にスクイーラ先端部を有するブレード先端部の構成の例が提案されている。このスクイーラ先端部は、ディフレクタを形成する壁部が内部に位置するキャビティを備えている。前記壁部は、スクイーラ先端部を画定するリムに接続されていない。
【0008】
しかしながら、今日において従来技術で既知である解決策は、特に新世代のターボジェットエンジンに必要とされる性能に関して、不十分であることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2009/115728号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の全体の目的は、空力および空熱に関するタービンブレードの性能を向上させることである。
【0011】
具体的には、本発明は、タービンの効率の増大を可能にするブレードの頂部のスクイーラ先端部の構造を提案する。
【0012】
ここで、ターボジェットエンジンの場合、タービンの効率の増大は、ターボジェット自体の効率および固有の燃料消費に直接反映されることに留意されたい。このことは、提案の解決策が、ターボジェットエンジンの高圧タービンブレードの場合に有利な用途を見出すことに関する理由である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
具体的には、一態様によれば、本発明は、タービンエンジンのタービンブレードであって、上方表面と、下方表面と、前縁部および後縁部と、タービンブレードの頂部におけるスクイーラ先端部であって、前記スクイーラ先端部が、リムによって画定され、前記スクイーラ先端部を画定するリムから離間した内側リブを備えた、スクイーラ先端部とを備え、前記内側リブが、スクイーラ先端部の内側においてキャビティを規定するように形成され、このキャビティ内において漏洩流の通過が制限されており、上流側開口が前縁部においてリム内に形成されており、下流側開口が後縁部においてリム内に形成されていることを特徴とする、タービンエンジンのタービンブレードで構成される。
【0014】
別の態様によれば、内側リブは、上方表面、下方表面、前縁部、および後縁部を備え、内側リブの下方表面が、ブレードの上方表面から、ほぼ一定の間隔で離間している。
【0015】
追加の態様によれば、内側リブは、その前縁部において、上流側の延長部分を備えている。
【0016】
追加の態様によれば、内側リブは、その後縁部において、下流側の延長部分を備えている。
【0017】
追加の態様によれば、上流側の開口は、下方表面のリム内、かつ、上方表面の前縁部の端部の一部において形成されている。
【0018】
別の態様によれば、下流側の開口は、下方表面においてのみ、リム内に形成されている。
【0019】
追加の態様によれば、スクイーラ先端部は底部を備え、キャビティは、内側リブによって囲まれたスクイーラ先端部の底部の一部によって形成されている。
【0020】
本発明の他の特徴、目標、および利点は、非限定的な例として与えられる添付図面を参照して、以下の詳細な説明を読むことによって明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1の実施形態に係るスクイーラ先端部が構築された、インペラのブレードの先端部の斜視図である。
図2】本発明の第2の実施形態に係るスクイーラ先端部が構築された、インペラのブレードの先端部の斜視図である。
図3】本発明の第3の実施形態に係るスクイーラ先端部が構築された、インペラのブレードの先端部の斜視図である。
図4】本発明の第4の実施形態に係るスクイーラ先端部が構築された、インペラのブレードの先端部の斜視図である。
図5】本発明の第3の実施形態に係るブレードの上面図である。
図6】本発明の第4の実施形態に係るブレードの上面図である。
図7】本発明の第5の実施形態に係るブレードの上面図である。
図8】本発明の第5の実施形態に係るブレードの上面図であり、ブレードの前縁部に対する漏洩流の流れの方向を特定している。
図9】上方表面の構造を詳細に示す、第1の実施形態に係るブレードの上面図。
図10】タービンの図であり、前記タービンの軸が示されている。
図11】ブレードの上面図であり、前記ブレードの翼型中心線が示されている。
図12】一実施態様に係るブレードの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
ターボジェットエンジンの高圧タービンのブレード1が、図1および以下に示されている。ターボジェットエンジンでは、タービンは、複数のブレード1が周状に設けられたディスクを備えている。このディスクおよびブレードは、燃焼チャンバの下流側に位置するリングの内側に配置されている。タービンブレードおよびリングは、リングとブレードとの間のクリアランスが制限されるような寸法になっている。
【0023】
そのようなブレード1は、空力プロファイルを有し、また、凸状上方表面11と凹状下方表面12とを有している。これら凸状上方表面11と凹状下方表面12との両方は、一方側における、前縁部13を形成する、丸まった上流側の縁部と、他方側における、後縁部14との間に延びている。
【0024】
その先端部において、リングの内側面に面することが意図されて、ブレード1は、リム2aによって画定されたスクイーラ先端部2を有している。リム2aは、上方表面11および下方表面12に沿って、前縁部13から後縁部14に延びることにより、前記スクイーラ先端部の底部2bの境界を成している。変形形態によれば、スクイーラ先端部2のリム2aは、上方表面11、下方表面12、前縁部13、または後縁部14に沿ってリム2aがその部分上で延びていないが、たとえばブレード1の先端部の内側に向かって入り込むことにより、上方表面11、下方表面12、前縁部13、または後縁部14から分離している、少なくとも1つの部分を備えている。実際、リム2aは、ブレード1の先端部において、ブレード1の輪郭に沿うとともに、ブレード1の前記輪郭の一部となり得るか、輪郭の一部から離れ得るリブで構成されている。
【0025】
上方表面11は、ブレード1の前縁部13の近位に位置している肘部110を備えている。上方表面11は、肘部110によって分離された2つの部分、
前縁部13と肘部110との間に位置する前縁部の端部分111と、
肘部110の後ろに位置し、前縁部の端部分111によって前縁部13から分離した中心部分112と、
を備えている。
【0026】
内側リブ3は、前記スクイーラ先端部2の内側に位置しており、前記内側リブ3は、リム2aと同じ高さである。
【0027】
図5および以下に示すように、この内側リブ3は、内側リブ3自体を取り囲み、こうして、スクイーラ先端部2の内側のキャビティ4を形成し、これにより、前記キャビティ4内の漏洩流5の通過を制限するようになっている。しかしながら、可能性のある変形形態によれば、内側リブ3は、その壁内に少なくとも1つの穴を備えることができる。キャビティ4内の漏洩流5の大部分の通過を制限している事実により、漏洩流5によってキャビティ4の加熱を制限しつつ、ブレード1の空熱に関する特性を向上させることが可能になる。キャビティ4の加熱を制限しているという事実により、ブレード1の先端部において、比較的低温のゾーンを形成することが可能になる。この低温のゾーンは、ブレードの先端部全体を冷却する役割を果たし、こうして、ブレードの耐用年数を増大させる。より正確には、漏洩流5の最もエネルギの高い部分のみが、内側リブ3に止められずにキャビティ4内に流れる。
【0028】
キャビティ4は、ブレード冷却回路とは連通していない。キャビティ4は、実際、内側リブ3によって囲まれたスクイーラ先端部2の底部2bの一部である。このため、スクイーラ先端部2はただ、平坦である単一の底部2bを備えている。この底部2bの一部は、内側リブ3によって囲まれており、こうして、キャビティ4を形成している。したがって、キャビティ4の底部は、ブレード1上の、内側リブ3によって囲まれていない、スクイーラ先端部2の底部2bの残りの部分と同じ高さに位置している。
【0029】
図12に示すように、ブレード1は、スクイーラ先端部2の下の、ブレードの内側に位置するキャビティによって形成された内部の冷却回路6を備えており、漏洩流5よりも低温の空気の流れが、前記キャビティ内を循環する。この内部の冷却回路は、スクイーラ先端部2を冷却する役割を果たす。スクイーラ先端部2は、内部の冷却回路6から材料Mの厚さだけ分かれている。図12に示すように、材料Mの厚さは、ブレード1の先端部全体にわたって一定である。
【0030】
ブレードの先端部を可能な限り良好に冷却するために、材料Mの厚さは、可能な限り薄くしなければならない。さらに、ブレード1の回転によって生じる遠心力を低減するためには、前記ブレード1の、先端部における質量を低減することが好ましい。しかしながら、材料Mの最小厚さの値は、ブレード1が、タービンエンジンの作動中に達する極度の温度および圧力に耐えることができるようにするのに、必要である。このため、キャビティ4が、内側リブ3によって囲まれた、スクイーラ先端部2の底部2bの一部で形成されているという事実により、ブレード1の先端部の質量を低減し、スクイーラ先端部2全体を効率的に冷却することが可能になる。さらに、図1から図7の各々に示すように、内側リブ3は、空力学的形状を有している。すなわち、別の言い方をすると、内側リブ3はタービンブレードの形状を有している。このため、
ブレード1の上方表面11に面して位置する凸状上方表面31と、
ブレード1の下方表面12に面して位置する凹状下方表面32と、
内側リブ3の上流部分を形成する、ブレード1の前縁部13に面して位置する前縁部33と、
内側リブ3の下流部分を形成する、ブレード1の後縁部14に面して位置する後縁部34と、
を有している。
【0031】
このため、内側リブ3の前縁部33と下方表面32とにわたって流れることによってキャビティ4内に流れ込む漏洩流5の最もエネルギの高い部分により、内側リブ3の上方表面31に対して押圧され、こうして、より大きい負荷力の回復が可能になる。
【0032】
変形形態では、この変形形態に係り、内側リブ3が、少なくとも内側リブ3の壁に穴を備え、この穴は、内側リブ3の前縁部33に位置付けされていてはならず、またはそうでなければ、漏洩流5は、何の障害もなくキャビティ4内に流入することができる。このため、限定ではないが、好ましくは、内側リブ3は、その後縁部34において穴を備えている。
【0033】
内側リブ3の上方表面31は、一定の間隔でブレード1の上方表面11から離間しており、内側リブ3の下方表面32も、一定の間隔でブレード1の下方表面から離間している。こうして、内側リブ3は、スクイーラ先端部2を画定するリム2aの形状に類似の形状を有しており、キャビティ4は、スクイーラ先端部2の形状に類似の形状を有している。
【0034】
そのような内部のリブ3により、前記内側リブ3に対して押圧される漏洩流5の負荷力の一部を回復することが可能になる。より正確には、漏洩流5は、内側リブ3の前縁部33において2つの別々の流れ51と52とに別れ(図5から図7)、第1の流れ51がリブ1の上方表面11と内側リブ3の上方表面31との間を流れ、第2の流れ52がブレード1の下方表面12と内側リブ3の下方表面32との間を流れる。これら流れが通過する間、第1の流れ51は、ブレード1の上方表面11に沿ってリム2aに対して押圧し、第2の流れ52は、内側リブ3の下方表面31に対して押圧し、こうして、負荷力の回復が可能になる。この漏洩流5の負荷力の回復により、ブレード1の空力学的性能を向上させることが可能になる。
【0035】
図5に示すように、漏洩流5は、前縁部13に対する接線Δ13にほぼ垂直な方向である。
【0036】
変形実施形態によれば、図3から図7に見ることができるように、内側リブ3は、内側リブ3の前縁部33に位置する上流側の延長部分331、または、内側リブ3の後縁部34に位置する下流側の延長部分341を備えることができる。上流側の延長部分331は、内側リブ3の前縁部33に接続された第1の端部と、ブレード1の前縁部13に面して位置する第2の端部と、を備えている。同様に、下流側の延長部分341は、内側リブ3の後縁部34に接続された第1の端部と、ブレード1の後縁部14に面して位置する第2の端部と、を備えている。
【0037】
上流側の延長部分331および下流側の延長部分341は、キャビティ4の境界の規定に関わらない内側リブ3の部分である。有利な一変形形態によれば、上流側の延長部分331および下流側の延長部分341の幅は、上方表面31、下方表面32、前縁部33、および後縁部34における内側リブ3の幅にほぼ等しい。上流側の延長部分331と下流側の延長部分341とは、これら上流側の延長部分331と下流側の延長部分341とをブレード1の前縁部13と後縁部14とに近付けることにより、内側リブ3の上流側部分と下流側部分とを連続して延長している。
【0038】
内側リブ3が上流側の延長部分331を備えている場合、漏洩流5は、ブレード1の前縁部13に面して位置する上流側の延長部分331の端部において、2つの別個の流れ51と52とに分けられる。
【0039】
上流側の延長部分331および下流側の延長部分341により、内側リブ3の表面積を増大させることが可能になる。この内側リブ3の表面積にわたって、第2の流れ52のスクイーラ先端部2内の通過の間、第2の流れ52が押圧する。
【0040】
追加の実施形態によれば、内側リブ3は、上流側の延長部分331と下流側の延長部分341とを同時に備えることができる。したがって、上流側の延長部分331または下流側の延長部分341により、より大きい負荷力を回復することにより、ブレード1の空力学的性能を向上させることが可能になる。
【0041】
別の変形実施形態によれば、図2図4図6、および図7に見ることができるように、スクイーラ先端部2の境界を規定するブレード1の先端部のリム2aは、前縁部13に位置する上流側開口131と、後縁部14に位置する下流側開口141とを備えている。こうして提供される本実施形態は、上流側開口131および下流側開口141を備えているが、追加の変形形態によれば、リム2aは、下流側開口141なしで上流側開口131のみを備えることができ、または、上流側開口131なしで下流側開口141のみを備えることができる。
【0042】
上流側開口131により、一方では、ブレード1の回転速度を考慮すると重要である、ブレード1の質量をブレード1の先端部において制限することが可能になり、他方では、ブレード1による負荷力の回復量を増大させるように、制御された方式で、スクイーラ先端部に入る漏洩流5の量を増大させることが可能になる。好ましくは、上流側開口131は、主に、ブレード1の下方表面11に位置するリム2aの一部に形成されている。より好ましくは、上流側開口131は、上方表面11の前縁部111の端部分に位置するリム2a上に形成されている。
【0043】
そのような上流側開口131により、前記上流側開口131を通って流入する漏洩流5を、ブレード1の下方表面12と内側リブ3の下方表面32との間のキャビティと、ブレード1の上方表面11と内側リブ3の上方表面31との間のキャビティとの両方において、通流させることが可能になる。そのような上流側開口131により、前記上流側開口131を通って流入する漏洩流5が、ブレード1の下方表面12と内側リブ3の下方表面32との間のキャビティ内に主に通流される。こうして、漏洩流5がより強くリブ3の下方表面32を押圧するように第2の流れ52の流量を増大させるとともに、やはり、漏洩流5がより強くブレード1の上方表面11を押圧するように第1の流れ51の流量を増大させることで、そのような上流側開口131により、負荷力の回復量を増大させることが可能になる。
【0044】
好ましくは、上流側開口131がブレード1の下方表面12のリム2a内、かつ、前縁部111の端部分に形成されるが、この理由は、ブレード1の前縁部13に対する漏洩流5の入射角を考慮すると、
ブレード1の上方表面11の前縁部111の端部分上のリム2aにおいてのみ形成された上流側開口131が、漏洩流5をブレード1の上方表面11と内側リブ3の上方表面31との間のキャビティ内に通流させるのみであり、
下方表面12のリム2aにおいてのみ形成された上流側開口が、漏洩流5をブレード1の下方表面12と内側リブ3の下方表面32との間のキャビティ内にのみ通流させる
ためである。
【0045】
下流側開口141により、一方では、上流側開口131と同様の方式で、ブレード1の質量をブレード1の先端部において制限し、他方では、後縁部14により、漏洩流5の排出を容易にすることが可能になる。こうして、漏洩流5の適切な排出により、漏洩流5のスクイーラ先端部2における停滞に起因するスクイーラ先端部2の加熱を制限することが可能になる。好ましくは、下流側開口141は、ブレード1の上方表面11または下方表面12上のリム2aにのみ形成されている。可能性のある好ましい実施形態では、下流側開口141は、ブレード1の下方表面12上のリム2aにのみ形成されている。そのような開口により、漏洩流5の最適な排出が可能になり、ブレード1の先端部と、回転するブレード1が置かれるリングの内側面との間の許容可能なクリアランスを維持することができる。
【0046】
さらなる変形形態によれば、図4図6、および図7に見ることができるように、内側リブ3は、上流側の延長部分331または下流側の延長部分341を備え、スクイーラ先端部2を画定するリム2aは、上流側開口131または下流側開口141を備えている。当然、内側リブ3が上流側の延長部分331および下流側の延長部分341を備えるようにすることが可能であり、リム2aが上流側開口131および下流側開口141を備えるようにすることが可能である。リム2aが上流側開口131および下流側開口141を備えた変形形態は、ブレード1の空力と空熱との性能の間の折衷に有利であり、この理由は、これにより、一方では、ブレード1の質量の制限をより大きくすることができ、他方では、依然としてブレード1の先端部の加熱を制限しつつ、より多くの負荷力を回復するように、スクイーラ先端部2内の漏洩流5のよりよい循環が可能であるためである。
【0047】
有利には、ブレード1の前縁部13と内側リブ3の前縁部33との間の距離が、ブレードの軸方向の弦の1%から25%に含まれる。軸方向の弦は、タービンのY軸上のブレード1の弦の投影である。タービンのY軸は図10に示されている。内側リブ3が上流側の延長部分331を備えている場合、ブレード1の前縁部13と上流側の延長部分331の端部との間の距離は、ブレードの軸方向の弦の1%から25%に含まれている。
【0048】
さらに、好ましくは、ブレード1の後縁部14と内側リブ3の後縁部34との間の距離が、ブレードの軸方向の弦の1%から25%に含まれている。内側リブ3が下流側の延長部分341を備えている場合、ブレード1の後縁部14と下流側の延長部分341の端部との間の距離は、ブレードの軸方向の弦の1%から25%に含まれている。
【0049】
有利な変形形態によれば、ブレード1の上方表面11と内側リブ3の上方表面31との間の空間は、ブレードの最大厚さEの1%から30%の間、好ましくは、15%から30%の間に含まれている。そのような空間により、スクイーラ先端部に流入する漏洩流5の最大部分が、ブレード1の上方表面11と内側リブ3の上方表面31との間に残っていることを確実にすることが可能になる。リブの最大厚さEは、ブレード1の下方表面12と上方表面11との間の最大の距離であり、前記最大の距離Eは、図11に示されているように、ブレードの翼型中心線Sに対して垂直に測定される。翼型中心線Sは、ブレード1の下方表面12と上方表面11とから等しい距離にあるすべてのポイントからなる。
【0050】
好ましい変形形態によれば、ブレード1の下方表面12と内側リブ3の下方表面32との間の空間は、ブレードの最大厚さEの1%から30%の間、好ましくは、15%から30%の間に含まれている。そのような空間により、スクイーラ先端部に流入する漏洩流5の最大部分が、ブレード1の下方表面12と内側リブ3の下方表面32との間に残っていることを確実にすることが可能になる。
【0051】
有利な変形形態によれば、キャビティ4の表面は、スクイーラ先端部2の総表面積の15%から40%の間、好ましくは、スクイーラ先端部2の総表面積の20%から30%の間、さらにより好ましくは、スクイーラ先端部2の総表面積の25%に含まれる。この特徴により、スクイーラ先端部の内部の漏洩流5の良好な循環を確実にし、スクイーラ先端部2の表面積の大部分の加熱を制限することが可能になる。
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図12