特許第6573978号(P6573978)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6573978車両挙動に影響を及ぼす変数を予測する方法および対応する仮想センサ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6573978
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】車両挙動に影響を及ぼす変数を予測する方法および対応する仮想センサ
(51)【国際特許分類】
   B60W 40/103 20120101AFI20190902BHJP
   B60W 30/02 20120101ALI20190902BHJP
   B60W 40/068 20120101ALI20190902BHJP
   B60T 8/172 20060101ALI20190902BHJP
   B62D 6/00 20060101ALI20190902BHJP
【FI】
   B60W40/103
   B60W30/02
   B60W40/068
   B60T8/172 D
   B62D6/00
【請求項の数】16
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2017-526773(P2017-526773)
(86)(22)【出願日】2015年8月3日
(65)【公表番号】特表2017-532253(P2017-532253A)
(43)【公表日】2017年11月2日
(86)【国際出願番号】IB2015055895
(87)【国際公開番号】WO2016020834
(87)【国際公開日】20160211
【審査請求日】2018年7月25日
(31)【優先権主張番号】TO2014A000631
(32)【優先日】2014年8月4日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】517037135
【氏名又は名称】モデルウェイ・ソチエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ
【氏名又は名称原語表記】MODELWAY S.R.L.
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100125874
【弁理士】
【氏名又は名称】川端 純市
(74)【代理人】
【識別番号】100189544
【弁理士】
【氏名又は名称】柏原 啓伸
(72)【発明者】
【氏名】マリオ・ミラネーゼ
(72)【発明者】
【氏名】カルロ・ノヴァーラ
(72)【発明者】
【氏名】イラーリオ・ジェルレーロ
(72)【発明者】
【氏名】マリオ・ボナンソーネ
【審査官】 田中 将一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−273187(JP,A)
【文献】 特開2007−099178(JP,A)
【文献】 特開平04−238745(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00 − 10/30
B60W 30/00 − 50/16
B60T 7/12 − 8/1769
B60T 8/32 − 8/96
B62D 6/00 − 6/10
B62D 101/00 − 137/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両挙動(10)に影響を及ぼす少なくとも1つの変数(β;v,v,Ψ,μ)の予測のための方法であって、
前記車両(10)の動的変数(MQ)を移動中に測定することと、
リアルタイムで前記変数(β;v,v,Ψ)の予測
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を、前記測定された動的変数(MQ)に基づいて算出することと、
を含み、
前記少なくとも1つの変数(β;v,v,Ψ,μ)の前記予測を、予測手順(DVSβ;DVSβv;DVSβvμ)により算出すること(230)であって、
前記車両(10)の移動中に測定される動的変数(MQ)のセットを、各々の時間間隔(n,n,nΨ,n,nα)において考慮すること、および、
前記測定される動的変数(MQ)のセットにおいて、前記変数(β;v,v,Ψ)に対して算出される少なくとも1つの最適な非線形回帰関数
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を適用して、前記変数(β;v,v,Ψ,μ)の前記予測を取得するために予測することであって、
前記最適な非線形回帰関数
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は、
基準データ(D)の取得されたセットおよび前記車両(10)の移動中に測定される前記動的変数(MQ)のセットに基づいて、所望の精度レベル(ε)に対して、動作条件(OC)の所与のセットにおける前記所望の精度レベル(ε)以下の予測エラーを与える回帰関数
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を見つけること、
を含む、最適な算出手順(220)により取得され、
前記基準データ(D)の取得されたセットは、前記動作条件(OC)の所与のセットにおいて、前記車両(10)の前記測定された動的変数(MQ)および前記車両(10)の横速度(v)および縦速度(v)に対応する変数を含む変数の基準データ(D)のセットを取得すること(210)により取得される、
予測すること、
を備える、算出すること、
により特徴づけられる、方法。
【請求項2】
前記測定される動的変数(MQ)は、ステアリング角(α)、横加速度(a)、4つの車輪速度(w)、ヨーレート
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、縦加速度(a)を含み、前記動作条件(OC)の所与のセットにおいて、基準データ(D)のセットを取得する(210)前記動作は、前記測定される動的変数(MQ)および横速度(v)および縦速度(v)に関するデータを取得することを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記基準データ(D)のセットを、テスト車両(10’)においてテストすることにより、および/または、前記車両(10)のシミュレータ(10’’)により、取得すること(210)により特徴づけられる、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
最適な非線形回帰関数
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を取得する前記動作(220)は、
所与のフェージングメモリを伴う関数のクラス
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に属する関数
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を考慮して、任意の時間間隔tに対する、および、動作条件(OC)の所与のセット全体に対する、前記変数(β;v,v,μ)に対する最大予測エラー
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を最小にする前記クラス
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における前記関数を見つけるステップと、
前記前のステップにおいて最適な非線形回帰
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関数として見つかった前記関数を割り当てて、前記車両挙動に影響を及ぼす前記変数の前記予測
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を取得する(220)ステップと、
を含むことを特徴とする、請求項1から3のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
予測される車両挙動(10)に影響を及ぼす前記少なくとも1つの変数((β;v,v,Ψ,μ)は、前記横滑り角
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であることを特徴とする、請求項1から4のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
車両挙動(10)に影響を及ぼす前記少なくとも1つの変数(β;v,v,Ψ,μ)は、前記横速度(v)および前記縦速度(v)を含み、
縦速度の予測
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は、前記縦速度(v)に関連する前記測定された動的変数(MQ)のセットのサブセット(r)に基づいて前記最適な算出により算出される最適な非線形回帰関数
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として取得され、
前記サブセット(r)は、ステアリング角(α)、4つの車輪速度(w)、および、縦加速度(a)と関連するデータを含み、
横速度の予測
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は、横加速度(a)およびヨーレート
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を含む前記測定された動的変数(rβ)のセットの追加的なサブセット(r)および先に取得された縦速度の前記予測
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に基づいて前記最適な算出により算出される最適な非線形回帰関数
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として取得されることを特徴とする、請求項1から4のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記横滑り角
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の前記予測を、前記横速度の予測
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および前記縦速度の予測
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の関数として、特に、それらの比率の逆正接として算出することを含むことを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記基準データセット(D)を複数(L)の基準サブセット(Dd1,Dd2,..,DdL)に、前記動作条件(OC)の所与のセットにおける対象の動作条件((μ))の値(μ1,μ2)にしたがって、特に、前記道路タイヤ摩擦係数(μ)にしたがって分割することと、
前記基準サブセット(Dd1,Dd2,..,DdL)に対応して、さらに値がリアルタイムで前記車両(10)において測定され
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、値が前記対象の条件(μ)に依存する、前記車両挙動に影響を及ぼす変数
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の複数の予測
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を、最適な非線形回帰関数
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を取得する(220)前記動作により取得することと、
前記測定された変数
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と、係数のベクトル
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により判定される前記係数を有する前記車両挙動に影響を及ぼす前記変数
の予測
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の線形的な組み合わせとの間の差を最小にする最適化問題の係数解決策のベクトル
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を取得することと、
を含むことを特徴とする、請求項1から5のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記対象の動作条件の前記実時間値(μ1,μ2)を、係数の前記ベクトル
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に基づいて検出することを含み、前記対象の動作条件は、特に、前記道路タイヤ摩擦係数であることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記基準サブセット(Dd1,Dd2,..,DdL)に対応する前記横滑り角の予測
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を、最適な非線形回帰関数
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を取得する前記動作(220)により取得することと、
前記横滑り角(β)の前記予測
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を、前記線形パラメータ
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の前記横滑り角予測の線形的な組み合わせとして算出することと、
を含むことを特徴とする、請求項8または請求項9に記載の方法。
【請求項11】
車両挙動(10)に影響を及ぼす少なくとも1つの変数(β;v,v,Ψ,μ)の予測のための仮想センサであって、処理モジュール(11)に実装され、前記車両(10)の移動中に測定される前記動的変数(MQ)のセットを利用して、前記測定された動的変数(MQ)のセットに少なくとも1つの最適な非線形回帰関数
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を適用する前記車両(10)の移動力学を示す少なくとも1つの変数(β;v,v,Ψ,μ)の前記予測を算出して(230)前記予測を取得するよう構成され、前記最適な非線形回帰関数
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は、請求項1から請求項10のうちのいずれか1項に記載の方法にしたがって取得される、仮想センサ。
【請求項12】
前記処理モジュール(11)は、電子制御ユニットまたは前記車両(10)の電子制御ボードに備えられる、請求項11に記載のセンサ。
【請求項13】
前記センサは、前記車両(10)の移動中に測定される前記動的変数(MQ)のセットを、ESC(電子安定制御)システムを備える前記車両(10)の動的変数(MQ)を測定するよう構成されるモジュール(12)から受信することを含む、請求項11または請求項12に記載のセンサ。
【請求項14】
車両挙動(10)に影響を及ぼす少なくとも1つの変数(β;v,v,Ψ,μ)の予測のためのシステムに統合され、前記車両(10)の動的変数(MQ)を移動中に測定するよう構成される前記モジュール(12)を含み、
前記処理モジュール(11)は、リアルタイムで、車両挙動(10)に影響を及ぼす少なくとも1つの変数(β;v,v,Ψ,μ)の予測
[この文献は図面を表示できません]
を、前記測定される動的変数(MQ)に基づいて算出するよう構成されることを特徴とする、請求項11から13のうちのいずれか1項に記載のセンサ。
【請求項15】
請求項11から14のうちのいずれか1項に記載のセンサを備える、特に自動車である、車両。
【請求項16】
少なくとも1つのコンピュータのメモリ内にロードされることができ、製品が少なくとも1つのコンピュータ上で実行されると、請求項1から10のうちのいずれか1項の方法のステップを実行可能なソフトウェアコードの部分を備える、コンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本記載は、車両挙動に影響を及ぼす少なくとも1つの変数の仮想センサを策定する技術に関し、リアルタイムで対象の変数の信頼できる予測を、生産車および大型車両において典型的に利用可能な電子安定制御システムまたは他のデバイスから測定されるデータを使用して提供することが可能である。
【0002】
これらの技術は、特に、車両の横滑り角および/または横および縦速度および/またはタイヤ−道路摩擦係数を予測することに向けられている。リアルタイムで生産車において、これらの変数の信頼できる予測を取得することにより、現在のシステムよりも大幅な性能向上を達成する安定性、トラクション、および、ブレーキング制御システムの策定が可能となり得る。
【背景技術】
【0003】
多くの方法が、この数年で本発明の技術的な問題の焦点に関して、すなわち、車両挙動に影響を及ぼす変数(例えば、横滑り角)の予測に関して提案されており、その直接的な測定は、生産車での使用には複雑および/または高価すぎるセンサの使用を必要とする。これらの方法の全ては、2段階の手順に基づく。最初に、車両の適切なモデル(例えば、所与の自由度を伴う動的または運動学方程式を含むモデル)が導出される;その後、適切な予測アルゴリズム(とりわけ、カルマンフィルタ、または、スライディングモードオブザーバ、または、移動水平予測器、または、粒子フィルタに基づき得る)は、導出されたモデルに基づいて策定され、リアルタイムで対象の変数(例えば、横滑り角)を、ESCシステムまたは他の車両デバイスから入手可能なデータ(例えば、ステアリング角、車輪速度、ヨーレート、横加速度などに関する信号)を使用して予測するために電子ボードに実装される。
【0004】
これらの2段階の方法は、重大な欠点に悩まされ、以下のように合成的に記載される。予測アルゴリズムは、実際の車両の動的挙動の近似的記載に過ぎない特定モデルで動作する。非常に正確なモデルが取得され得る場合でさえ、最適な予測(すなわち、最小変数)を見つけることは、特定モデルが非線形の場合は計算的に扱いにくく、計算的に扱い易いが必然的に近似の方法が使用される。モデル化および予測段階での近似値に起因して、どのくらい2段階の方法が正確であり得るかを評価するための方法は存在しない。予測エラーの有界性でさえ、複雑なシステムでは容易に達成されない。より関連性が強くても、車両モデルは、リアルタイムの値が通常の生産車で検出されない異なる動作条件(道路の乾湿、タイヤ摩耗状態、車両負荷など)にしたがって変化し得るパラメータに依存している。これらの問題(モデルおよび予測近似、可変動作条件)に起因して、いずれの上述された方法も、受け入れ可能な予測精度を達成する、横滑り角、縦および横速度、タイヤ−道路摩擦係数に対する予測アルゴリズムを策定する能力を達成したようには見えない。これは、さらに、これらの方法で策定されたこれらの変数の予測器が、商業車で利用可能となっていないことにより証明される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
1つ以上の実施形態の目的は、先行技術で達成可能な解決策に固有の制限を克服することである。
【0006】
1つ以上の実施形態によると、その目的は、請求項1に指定される特徴を有する車両挙動に影響を及ぼす変数を予測する方法により、達成される。1つ以上の実施形態は、対応するシステム、仮想センサモジュール、そのようなシステムまたは仮想センサモジュールを備える車両に関するものであり得、さらに、少なくとも1つのコンピュータのメモリ内へロードされることができ、製品が少なくとも1つのコンピュータ上で実行されると、方法のステップを実行可能であるソフトウェアコードの部分を備える、コンピュータプログラム製品に関するものであり得る。本明細書において使用される場合、そのようなコンピュータプログラム製品という記載は、実施形態による方法の実装を統合するために処理システムを制御する命令を包含するコンピュータ可読手段という記載と同等であると、理解される。「少なくとも1つのコンピュータ」という記載は、モジュール形式および/または分散形式で実装される本実施形態の可能性を強調することが明白に意図される。少なくとも1つのコンピュータは、例えば、車両の電子制御ボード、または、上述の方法を実装するソフトウェアコードの部分を備える、いわゆる電子制御ユニット(ECU)のレベルであり得る。
【0007】
請求項は、様々な実施形態と関連して本明細書において提供される技術的な教示の不可欠な部分を形成する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書に記載の解決手段によれば、本方法は、少なくとも1つの変数の予測を予測手順により算出することを含む。
予測手順は、
各々の時間間隔における車両の移動中に測定される動的変数のセットを利用すること、および、
測定された動的変数のセットにおいて、変数に対して算出される少なくとも1つの最適な非線形回帰関数を適用して、変数の予測を取得するために予測することを備える。
最適な非線形回帰関数は、オフラインの最適な算出手順により取得される。
オフラインの最適な算出手順は、基準データの取得されたセットおよび車両の移動中に測定される動的変数のセットに基づいて、所望の精度レベルに対して、所望の精度レベル以下の予測エラーを動作条件の所与のセットにおいて提供する回帰関数を見つけることを含む。
基準データの取得されたセットは、動作条件の所与のセットにおいて、車両の測定された動的変数および車両の横および縦速度に対応する変数を含む変数の基準データのセットを取得することにより得られる。
【0009】
様々な実施形態において、テスト車両および/または車両シミュレータから取得される測定変数は、ステアリング角、横加速度、4つの車輪速度、ヨーレート、縦加速度を含み、基準データのセットを取得する動作は、測定される変数および横速度および縦速度に関するデータを取得することを含み、後者は、テスト車両で動作する特定のセンサおよび/または車両シミュレータから取得される。
【0010】
様々な実施形態において、基準データのセットは、テスト車両でテストすることにより、および/または、車両のシミュレータにより、取得される。
【0011】
様々な実施形態において、非線形回帰関数を取得する動作は、所与のフェージングメモリを伴う関数のクラスに属する関数を考慮すると、横速度の縦速度に対する比率の逆正接を伴って、前回の時間間隔で測定された変数のデータのベクトルにおいて算出された、当該関数の異なるモジュールの測定の時間間隔における最大値を最小にするクラスにおいて関数を見つけることを含み、見出された関数を非線形回帰関数として割り当てて予測を取得する。
【0012】
様々な実施形態において、横滑り角は、横速度および縦速度の予測の関数として、特にそれらの比率の逆正接として算出され、縦速度の予測は、縦速度に関連する測定された変数の当該セットのサブセットに基づいて算出される最適な非線形回帰関数として取得され、サブセットはステアリング角、4つの車輪速度および縦加速度に関するデータを含み、横速度の予測は、横加速度およびヨーレートを含む測定された変数のセットのさらなるサブセット、および、事前に取得された縦速度の予測に基づいて算出される最適な非線形回帰関数として取得される。
【0013】
様々な実施形態において、車両挙動に影響を及ぼす少なくとも1つの変数の予測のためのセンサが、処理モジュールに実装され、車両の移動力学を表す少なくとも1つの変数の予測を、車両の移動中に測定される動的変数のセットを利用して、測定された動的変数のセットへ少なくとも1つの最適な非線形回帰関数を適用して算出し、当該予測を取得するよう構成され、最適な非線形回帰関数は、前述の実施形態のうちの任意の実施形態の方法にしたがって取得される。
【0014】
様々な実施形態において、センサは、電子制御ユニットまたは車両の電子制御ボードに備えられる処理モジュールを有する。
【0015】
様々な実施形態において、センサは、車両の移動中に測定される動的変数のセットを、ESC(電子安定制御)システムを備える車両の動的変数を測定するよう構成されるモジュールから受信する。
【0016】
様々な実施形態において、センサは、車両挙動に影響を及ぼす少なくとも1つの変数の予測のためのシステムに統合され、その移動中に車両の動的変数を測定するよう構成される当該モジュールと、リアルタイムで、車両挙動に影響を及ぼす少なくとも1つの変数の予測を、そのような測定された動的変数に基づいて算出するよう構成される処理モジュールと、を含む。
【0017】
以下、実施形態を、付属の図を参照して限定されない単なる例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、リアルタイムで横滑り角を予測するために、オンラインで車両において1つの実施形態による方法を実施する仮想センサシステムのブロック図を示す。
図2図2は、仮想センサを策定するために、当該方法によりオフラインで行われる動作のブロック図を提示する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次の記載は、実施形態の詳細な理解を目的とする様々な特定の詳細を示す。実施形態は、特定の詳細の1つ以上を伴わずに、または、他の方法、コンポーネント、材料などを伴って、実施されてよい。他の事例において、実施形態の様々な態様が不明瞭にされないように、既知の構造、材料、または、動作は、詳細に説明または記載されていない。
【0020】
本記載のフレームワークにおける「実施形態」または「1つの実施形態」という記載は、実施形態と関連して記載される特定の構成、構造、または、特徴が、少なくとも1つの実施形態に包含されることを示すように意図されている。同様に、本記載の様々な部分に存在し得る、「実施形態において」または「1つの実施形態において」などの語句は、必ずしも1つの同じ実施形態を指していない。さらに、特定の形態、構造、または、特徴は、1つ以上の実施形態に適切に組み合されてよい。
【0021】
本明細書において使用される記載は、単に利便性を目的としており、したがって、実施形態の保護の領分または範囲を規定しない。
【0022】
図1において、車両の横滑り角のリアルタイム予測のための仮想センサの実施形態を概略的に提示するブロック図が示される。
【0023】
数的な参照10を伴って、測定される横滑り角βが関連付けられる車両を提示するブロックが示される。ESCシステム12は、または、車両10の安定性を車両10の移動中における変数の値の測定に基づいて制御する車両の別のシステムは、本質的に既知の手法において、車両10の以下の測定変数MQ:ステアリング角α、横加速度a、4つの車輪速度w、ヨーレート
[この文献は図面を表示できません]
、縦加速度aを移動中に測定する。上述されたように、これらは基本的にESCシステムにより測定される変数であり、本明細書に記載される方法は、リアルタイムで、好ましくは、ESC12により測定される変数にのみ基づいて動作する。そのような変数MQは、横滑り角の仮想センサモジュール11に提供され、この仮想センサモジュール11は、そのような変数に基づいて、リアルタイムで、車両10の横滑り角βの予測
[この文献は図面を表示できません]
を供給する。
【0024】
仮想センサ11は、車両の移動に影響を及ぼす変数、特にこの事例においては、横滑り角の予測のための手順DVSβを実施し、図2に概略が記載される方法により策定される。方法は、テスト車両10’からの測定により、または、車両シミュレータ10’’を介するシミュレーションにより、または、データの一部を測定してデータの他の部分をシミュレートすることにより、基準データセットDを取得するステップ210を含む。基準データの測定による取得に関連して、テスト車両10’は、センサ11が実装される車両10の種類と同じでなければならない。
【0025】
その後、基準データセットDは、仮想センサDVSβを策定する動作220へ渡され、仮想センサDVSβは、その後、ステップ230において、ソフトウェアモジュール11で実施される。このモジュールは、車両10で利用可能なECUに埋め込まれ、リアルタイムで車両電子安定制御12により測定される測定変数MQに関する信号、すなわち、
[この文献は図面を表示できません]
のみを受信し、リアルタイムで、横滑り角βの予測
[この文献は図面を表示できません]
を供給する。
【0026】
本明細書に記載される実施形態において、基準サンプルデータDのセットは、以下である。
【数1】
[この文献は図面を表示できません]
(1)
【0027】
tが取得の時間間隔を示し、ΔtからN*Δtへ変化し、ここで、Δtはサンプリング時間であり、Nは取得サンプルの数である。以下において表記を簡素化するために、サンプリング時間Δt=1と見なす。この基準データセットDは、テスト車両で、特に自動車または大型車両で、典型的に測定される、考慮中の車両の動的性能を評価するための実験データを含んでよく、特に車両モデルを構築およびテストする既知の2段階の方法により使用される変数のデータを含んでよい。しかしながら、そのような基準データは、または、この基準データの一部は、さらに、直接的な測定により取得されるだけでなく、シミュレーションにより取得され得る:車両の信頼できるシミュレータが利用可能である場合、方程式(1)の基準データセットDのデータは、そのようなシミュレータにより生成され得る。いずれの事例においても、基準データセットDのそのようなデータは、実行またはシミュレートされた、速度、ブレーキング、道路−タイヤ摩擦状態、車の負荷、運転スタイル、および、他のパラメータに対する所与の範囲内で行われる運転テストと関連しなければならず、車両10の異なる動作条件OCを規定し、特に対象の動作条件を規定する。
【0028】
方程式(1)の通り、基準データセットDは、車両10において車両の移動中に測定された変数MQに対応し、ESCシステム12により仮想センサ11へ供給される取得基準データ
[この文献は図面を表示できません]
すなわち、ステアリング角α、横加速度a、4つの車輪速度w、ヨーレート
[この文献は図面を表示できません]
、縦加速度aを含む。しかしながら、基準データセットDは、さらに、縦速度vおよび横速度vと関連する、さらに取得された基準データを含む。これらの縦速度vおよび横速度vデータは、好ましくは、車両シミュレータにより、仮想センサ11のオフライン策定に必要な測定装置を最小に維持するために提供され得る。しかしながら、基準データセットDがテスト車両における測定から取得される事例において、これらのデータは、GPSセンサを加えた実験用の光または慣性センサにより、本質的に既知の手法で提供され得る。縦速度vおよび横速度vデータは、仮想センサ11により実施される予測手順DVSβの既定または策定においてのみ使用され、実時間予測には必要とされない。
【0029】
本明細書において、一般的に、車両挙動に影響を及ぼす変数の予測に対する解決策が記載される。以下に記載される実施形態は、主に横滑り角の予測を取得することに向けられているが、これらの実施形態の一部において、本明細書に記載される方法は、車両の移動を表す際に対象となる他の変数を予測するために、必ずしも横滑り角をさらに取得する必要なく活用され得る。
【0030】
本明細書に記載される解決策の実施形態は、一般的に、以下の形式の離散時間型の非線形回帰方程式として、仮想センサDVSβの実現に基づく。
【数2】
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すなわち、変数MQが測定される時間tを考慮すると、次の時間間隔t+1で予測される横滑り角
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は、所与の整数である各々の時間間隔n、n、nΨ、n、および、nαにおいて測定される、車両10のESCシステム12から取得される変数のベクトルである引数ベクトル
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で評価される非線形回帰関数
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の値により取得される。そのような時間間隔n、n、nΨ、n、および、nαは、仮想センサDVSβのメモリを規定し、他とは異なるものとして設定され得る。
【0031】
仮想センサDVSβを策定する動作220は、以下のε−ロバスト設計の問題の解決策である関数
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を見つけることにより取得される:基準データDのセットに包含されるデータおよび測定精度の情報を利用すること、すなわち、各々の測定値は、その測定精度またはエラーを伴って考慮され、所望の精度レベルεに対して、
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として有界の予測エラーを与える回帰関数
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を見つけること、すなわち、横滑り角βとその予測
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との間の差のモジュールは、任意の時間tに対する、対象の動作条件OCの範囲全体(動作条件OCは、とりわけ、道路−タイヤ摩擦、車の負荷、タイヤの状態を含み得る)に対して所望の精度レベルε以下であり、テスト車両またはシミュレータは、そのような動作条件OCを受けて、データセットDをステップ210で取得する。
【0032】
3つの実施形態の例が、本明細書において提示される。
【0033】
(実施の形態1)
第1の実施形態において、DVSβとして示される仮想センサに至り、オフライン動作220は、以下の最適化問題の回帰関数
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解決策を見つけることと関連する。
【数3】
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(3)
ここで、基準データセットDに包含されるデータは、(3)の右端側を計算するために使用される。
【0034】
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は、以下のように規定される所与のフェージングメモリを伴う関数のクラスである。
【数4】
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すなわち、クラス
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の関数
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は、各時間tに対するリプシッツ条件を順守する。リプシッツ条件の定数は、k番目の出力に対するパラメータγ、ρの生成物であり、ここで、0≦γ<∞、0≦ρ<∞であり、kは1からmへ変化し、ここで、m=max[n,n,nΨ,n,nα]であり、すなわち、変数MQの測定の異なる間隔の中の最大間隔である。
【0035】
規定により、横滑り角が、方程式(2)を参照して、
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および
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であることを考えると、(3)の回帰関数
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の解決策は、任意の時間間隔tに対して、および、基準データセットDを取得するために使用される実験的な条件を構成する対象の動作条件OC(道路の乾湿または道路−タイヤ摩擦係数、車の負荷、タイヤの状態など)の範囲全体に対して、最大予測エラー
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を最小にするフェージングメモリ関数の当該クラス
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における関数
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として見つけられる。
【0036】
方程式(3)および(4)におけるρおよびmの値は、予測手順DVSβの設計パラメータである。すなわち、大きい値が選択されるほど、達成され得る予測エラーεは低くなるが、予測
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の過渡応答時間は大きくなる。
【0037】
基準データDにおいて動作するパラメータyの値は、C.Novara、F.Ruiz、M.Milaneseによる論文「Direct Filtering: A New Approach to Optimal Filter Design for Nonlinear Systems(直接フィルタリング:非線形システムの最適なフィルタ設計に対する新しい手法)」(IEEE Trans. on Automatic Control, 58, pp.89−99, 2013)の項Dに記載される手順のステップ5bにしたがって選択され得る。
【0038】
同じ論文の項II.Dにおいて、最適化問題(3)を解決する方法が記載されている。
【0039】
最終的に、εが以下のように計算される。
【数5】
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ここで、基準データセットDに包含されるデータは、(5)の右端側を計算するために使用される。
【0040】
関数
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により記載される予測手順DVSβのエラーは、全ての時間tおよびデータセットDに含まれる動作条件OCの範囲全体に対して、
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として境界を示される。その後、
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の場合、導き出された仮想センサDVSβは、ε−ロバスト設計問題に対する解決策である。
【0041】
(3)から(5)の計算の全ては、オフライン動作220により、基準データセットDに包含されるデータを使用して行われる。
【0042】
この実施形態をリアルタイムで車両において実施する仮想センサは、図1の11により提示され、目下の時間tに横滑り角β(t)の予測β(t)を以下のように計算する。
【数6】
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ここで、要求時間における
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の値はESCモジュール12から取得され、
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は、オフラインで(3)の解決策として計算される回帰関数である。
【0043】
したがって、第1の実施形態は、実施形態において横滑り角βである、車両10の挙動に影響を及ぼす少なくとも1つの変数の予測のための方法に関し、方法は、車両10の変数MQを移動中に測定すること、リアルタイムで横滑り角βにより提示される当該変数の予測
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を、そのような測定変数MQに基づいて算出すること、車両10の移動中に各々の時間間隔n,n,nΨ,n,nαにおいて測定される変数MQのセット、すなわち、ESCシステム12から取得される変数のベクトル
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を利用すること、および、そのような測定変数のセットにおいて、そのような横滑り角βに対して算出された最適な非線形回帰関数
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を適用して、そのような予測を取得するために予測することを備える横滑り角βの予測を予測手順DVSβにより算出するステップ230を行うことを含み、当該の最適な非線形回帰関数
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は、以下を含む、オフラインの最適な算出手順により、すなわち、動作220により取得される:基準データDの取得されたセットに基づいて、所望の精度レベルεに対して、当該の所望の予測レベルε以下の予測エラーを動作条件OCの所与のセットにおいて与える回帰関数fβを見つけることであって、取得された基準データDのセットは、動作条件OCの当該所与のセットにおいて、車両10の当該の測定変数MQおよび車両10の横速度vおよび縦速度vに対応する変数を含む変数の基準データDのセットを取得する動作210により取得される、見つけること。
【0044】
(実施の形態2)
車両の横滑り角の仮想センサに至り、DVSβvとして示される第2の実施形態は、それぞれDVSvxおよびDVSvyと示される、縦速度vおよび横速度vの2つの仮想センサの策定に基づく。
【0045】
これらの2つの仮想センサは、オフラインの動作220により策定され、以下のように基準データDを利用する。
−仮想センサDVSvxは以下の式で取得される。
【数7】
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【0046】
は、測定変数MQのサブセット、すなわち、4つの車輪速度w、縦加速度a、および、ステアリング角αからなるベクトルである。様々な実施形態において、ベクトルrを構成するサブセットに対する他の選択が可能である。
【0047】
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は、最適化問題の解決策である。
【数8】
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ここで、基準データセットDに包含されるデータは、(8)の右端側を計算するために使用される。
【0048】
上記の最適化問題の
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解決策は、任意のtに対する、および、基準データセットDを取得するために使用される実験条件を構成する対象の動作条件OC(道路の乾湿、車の負荷、タイヤの状態など)の範囲全体に対する、最大予測エラー
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を最小化する縦速度v(t)の予測
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を与える。
−仮想センサDVSvyは、以下の式で取得される。
【数9】
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【0049】
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は、測定変数MQのサブセット、すなわち、横加速度a、ヨーレート
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からなる、(7)および(8)から取得される縦速度
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の予測を加えたベクトルである。様々な実施形態において、ベクトルrを構成するサブセットに対する他の選択が可能である。
【0050】
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は、最適化問題の解決策である。
【数10】
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ここで、基準データセットDに包含されるデータは、(10)の右端側を計算するために使用される。
【0051】
上記の最適化問題の
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解決策は、任意のtに対する、および、基準データセットDを取得するために使用される実験条件を構成する対象の動作条件OC(道路の乾湿、タイヤの状態など)の範囲全体に対する、最大予測エラー
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を最小化する縦速度
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の予測
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を与える。
−この第2の実施形態にしたがって策定される仮想センサDVSβvに提供される横滑り角βの予測
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は、以下のように規定される。
【数11】
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すなわち、縦速度vの最適な予測
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に対する横速度vの最適な予測
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の比率の逆正接として、規定される。
−量
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は、以下のように計算される。
【数12】
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ここで、基準データセットDに包含されるデータは、(11)の右端側を計算するために使用される。
【0052】
この量は、この第2の実施形態にしたがって策定される仮想センサDVSβvの予測エラーにおいて境界を提供し、すなわち、全ての時間tに対する、および、データセットDに含まれる動作条件OCの範囲全体に対する
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を提供する。その後、
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の場合、導き出される予測手順DVSβvは、ε−ロバスト設計問題に対する解決策である。最適化問題(8)および(10)の
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および
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解決策は、先に引用されたNovara−Ruiz−Milaneseの論文に記載されているアルゴリズムを使用して取得され得る。
【0053】
(7)から(11)までの全ての計算は、オフラインで動作220により、上述されたように、基準データセットDに包含されるデータを使用して行われる。
【0054】
この実施形態をリアルタイムで車両において実施する仮想センサDVSβvは、図1において11により提示され、目下の時間tに、以下の動作を行う横滑り角
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の予測
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を計算する。
−目下の時間tにおける縦速度
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の予測
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は、以下のように計算される。
【数13】
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ここで、要求時間におけるw,a,αの値は、オンラインでESCモジュール12から取得され、
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は、オフラインで(8)の解決策として計算される回帰関数である。
−目下の時間tにおける横速度
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の予測
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は、以下のように計算される。
【数14】
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ここで、要求時間における
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の値は、オンラインでESCモジュール12から取得され、要求時間における
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の値は、オンラインで(12)から計算される縦速度の最適な予測であり、
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は、オフラインで(10)の解決策として計算される回帰関数である。
−仮想センサDVSβvにより提供される目下の時間tにおける横滑り角
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の予測
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は、以下のように計算される。
【数15】
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ここで、
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および
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は、(12)および(13)を介して事前に計算された最適な予測である。
【0055】
この第2の実施形態は、第1の実施形態により与えられる仮想センサDVSβより精度が高くあり得る横滑り角βの仮想センサDVSβvを与えることに加えて、さらに、仮想センサDVSvxおよびDVSvyを提供し、それぞれが車両の縦速度および横速度の予測を与える。これらの変数の信頼できる予測を取得することは、本質的に関連する技術の態様を提示し、トラクションおよびブレーキング制御システム、衝突回避システムなどを最適化するのに良好な値である
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および
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の知識であることに、留意されたい。
【0056】
横速度
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および縦速度
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の予測を与える(12)および(13)の計算は、横滑り角
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を予測する方程式(14)の算出の前に起こるので、本明細書に記載される第2の実施形態により、横速度および/または縦速度のみを予測する仮想センサDVSvxおよびDVSvyを、必ずしも横滑り角をさらに予測する必要なく策定できる。
【0057】
(実施の形態3)
方法の第3の実施形態は、DVSβμとして示される横滑り角の仮想センサの策定に至り、ステップ210で、基準データセットDをL個の基準サブセットDd1,Dd2,..,DdLに分割するように動作することを想定する。動作条件OCの当該の所与のセットにおける対象の判定された動作条件により特定される当該サブセットの各々は、対象の動作条件の同じ値(または、値の範囲)に対して取得されるデータを包含する。本明細書に記載される実施形態において、分割は車両挙動に影響を及ぼす最も関連性の高い動作条件OCであると見なされ得る道路−タイヤ摩擦係数μ,μ,..,μにしたがって行われると見なされる。説明の簡易化を目的として、L=2サブセットにおける分割が考慮されるが、方法は、以下に示されるように、より大きいLの値へ容易に拡張され得る。基準データセットDにおいてt=1,..,Mに対するデータが摩擦係数μ≒μ1を伴って取得され、t=M+1,..,Nに対するデータがμ≒μ2を伴って取得されると仮定すると、2つの基準サブセットは以下である。
【数16】
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【0058】
そのような分割ステップの後、オフラインの動作220において、以下の予測器が、ε−ロバスト設計問題の解決策である関数を見つけることにより評価される。すなわち、
−横滑り角の第1の予測器は、以下の式で評価される。
【数17】
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ここで、rβ(t)は方程式(2)において与えられ、
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は以下の最適化問題の解決策である。
【数18】
[この文献は図面を表示できません]
ここで、第1の基準データセット
[この文献は図面を表示できません]
に包含されるデータは、(16)の右端側を計算するために使用される。
−横滑り角の第2の予測器は、以下の式で評価される。
【数19】
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ここで、
[この文献は図面を表示できません]
は、以下の最適化問題の解決策である。
【数20】
[この文献は図面を表示できません]
ここで、第2の基準データセット
[この文献は図面を表示できません]
に包含されるデータは、(17)の右端側を計算するために使用される。
−動作220により、以下の式のヨーレートの第1の予測器が評価される。
【数21】
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ここで、
[この文献は図面を表示できません]
は、測定変数MQのサブセット、すなわち、4つの車輪速度w、横加速度a、および、ステアリング角αからなるベクトルであり、
[この文献は図面を表示できません]
は、以下の最適化問題の解決策である。
【数22】
[この文献は図面を表示できません]
ここで、第1の基準データセット
[この文献は図面を表示できません]
に包含されるデータは、(18)の右端側を計算するために使用される。
−ヨーレートの第2の予測器は、以下の式により評価される。
【数23】
[この文献は図面を表示できません]
ここで、
[この文献は図面を表示できません]
は、以下の最適化問題の解決策である。
【数24】
[この文献は図面を表示できません]
ここで、第2の基準データセット
[この文献は図面を表示できません]
に包含されるデータは、(19)の右端側を計算するために使用される。
【0059】
(16)から(19)の全ての計算は、オフラインの動作220により、上述されたように、基準データセットDd1およびDd2に包含されるデータを使用して行われる。最適化問題(16)(17)(18)(19)の
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解決策は、先に引用されたNovara−Ruiz−Milaneseの論文に記載されるアルゴリズムを使用して取得され得る。
【0060】
この実施形態をリアルタイムで車両において実施する仮想センサは、図1において11により提示され、目下の時間tに、以下の動作を行う。
−目下の時間tにおけるヨーレート
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の2つの予測
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および
[この文献は図面を表示できません]
は、以下のように計算される。
【数25】
[この文献は図面を表示できません]

[この文献は図面を表示できません]
【数26】
[この文献は図面を表示できません]

[この文献は図面を表示できません]
ここで、要求時間における
[この文献は図面を表示できません]
の値はESCモジュール12から取得され、
[この文献は図面を表示できません]
および
[この文献は図面を表示できません]
は、オフラインで(18)および(19)において計算される回帰関数であり、実際の動作条件が、それぞれμ=μまたはμ=μであると見なす。
−以下の最適化問題の解決策
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が計算される。
【数27】
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すなわち、リアルタイムでESCモジュール12において測定される、目下の時間tにおけるヨーレート
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と、パラメータλの係数関数を有する第1のヨーレート予測
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および第2のヨーレート予測
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の線形的な組み合わせとの間の差の絶対値を考慮して、0から1の中に包含されるパラメータλの値を見つけ、そのような差を最小化する。この最適化問題は、オンラインで既知の線形検索方法を使用して効率的に解決され得る。
−目下の時間tにおける横滑り角
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の2つの予測
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および
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は、以下のように計算される。
【数28】
[この文献は図面を表示できません]

[この文献は図面を表示できません]
【数29】
[この文献は図面を表示できません]

[この文献は図面を表示できません]
ここで、要求時間における
[この文献は図面を表示できません]
の値は、ESCモジュール122から取得され、
[この文献は図面を表示できません]
および
[この文献は図面を表示できません]
は、オフラインで(16)および(17)において計算される回帰関数であり、実際の動作条件は、それぞれμ=μまたはμ=μであると見なす。
−最終的に、目下の時間tでの横滑り角
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の予測
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は、以下のように計算される。
【数30】
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すなわち、最適なパラメータ
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の係数関数として有する横滑り角の第1および第2の予測の線形的な組み合わせとして、要するに、最適なパラメータ
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、および、それを補完する負の値として計算される。
【0061】
したがって、先ほど記載された第3の実施形態は、横滑り角βの予測
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を、ヨーレートの予測を介して取得する。この実施形態の論拠は、以下の通りである。
【0062】
方程式(20)および(21)は、リアルタイムでヨーレートの予測を与える2つの仮想センサを規定する。
【0063】
しかしながら、ヨーレートは、リアルタイムでESCシステム12により実際に測定されるため、予測される必要はない。ヨーレート予測は、2つのヨーレート予測をESCシステム12により実際に測定される値と比較することにより最適化問題(22)の解決策として取得される、最適なパラメータ
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を使用して、タイヤ−道路摩擦係数μの値をリアルタイムで検出するために実際に利用される。
【0064】
車両10が、例えば、道路上で実際の摩擦係数μを伴って動作している場合、第1のヨーレート予測
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は、(18)を参照すると、同じ摩擦係数μの条件で測定されるデータから策定される
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であり、(19)を参照すると、実際のものとは異なる摩擦係数μに対して策定される
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である第2のヨーレート予測
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より精度の高い予測を与える。したがって、最適化問題(22)の解決策は、
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に至り、したがって、実際に車両10は摩擦係数μで動作していることを検出する。その後、方程式(25)から、横滑り予測
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が提供される。方程式(16)および(25)から確認され得るように、横滑り角の予測
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は、動作条件μに対する予測エラーを最小化する回帰関数
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により記載される仮想センサにより取得される。したがって、この予測は、基準データの分割をμの値にしたがって利用し、リアルタイムでタイヤ−道路摩擦係数の値を検出せずに、データセットDが構成するμの値の範囲に対する予測性能のバランスを取る必要がある第1の実施形態の仮想センサDVSβおよび第2の実施形態の仮想センサDVSβvにより達成可能な精度より良好な(または、最大限でも同等の)精度を達成する。
【0065】
仮想センサDVSβおよびDVSβvと比べて上述された予測精度の向上とは別に、この第3の仮想センサDVSβμの追加的な興味深い特性は、この第3の実施形態が、DVSμと示される、リアルタイムで目下の時間tにおけるタイヤ−道路摩擦係数
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の予測
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を提供する仮想センサの取得を可能とすることであり、以下のように計算される。
【数31】
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【0066】
リアルタイムでのタイヤ−道路摩擦係数の予測は、本質的に関連する技術態様を提示する。この情報は、実際に、多くの車両挙動の問題に対する、例えば、トラクションおよびブレーキング制御、車両挙動制御、衝突回避などに対する関連値であるが、現段階で、通常の生産車において利用可能となっていない。タイヤ−道路摩擦係数のみを予測する仮想センサDVSμの策定は、最適化問題(18)および(19)のみのオフライン解決策、および、動作(20)(21)(22)および(26)のみのオンラインの実行を必要とする。
【0067】
上述されたように、L=2サブセットへの分割に対して先ほど記載された動作は、より大きいL個の基準サブセットの値へ容易に拡張され得る。オフラインの動作220において、L個の関数
[この文献は図面を表示できません]
およびL個の
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は、方程式(16)(17)および(18)(19)と類似のL個の方程式から計算され、各々が対応する基準サブセットDd1,Dd2,..,DdLに基づく。リアルタイムで車両において動作する仮想センサ11は、目下の時間tにおいて、方程式(20)(21)と類似するL個の方程式により取得されるヨーレート
[この文献は図面を表示できません]
のL個の予測
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および、方程式(23)(24)と類似するL個の方程式により取得される、横滑り角
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のL個の予測
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を計算する。ヨーレートの予測は、方程式(22)のベクトルのバージョンにおいて使用され、ヨーレート
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と、そのような予測
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の線形的な組み合わせとの間の差を最小化する合計を有する正の係数のベクトル
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の値を判定し、係数として当該ベクトル
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のコンポーネントを有する。最終的に、横滑り角は、方程式(25)のベクトルのバージョンを使用して、すなわち、横滑り予測の線形的な組み合わせ
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を使用して取得され、係数として当該ベクトル
[この文献は図面を表示できません]
のコンポーネントを有する。
【0068】
目下の実施形態は、値がリアルタイムで車両(10)において測定され、予測される対象の条件に、例えば、道路−摩擦係数μに依存する変数の特定の例としてヨーレート(
[この文献は図面を表示できません]
)に関して示されている。
【0069】
しかしながら、第3の実施形態に関して記載される動作は、より一般的に、対象の動作条件OCの実時間値を係数の当該ベクトル
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に基づいて検出するために使用され得ることが明白であり、以下のために使用され得ることが明白である。
基準データセットDを複数のL個の基準サブセットDd1,Dd2,..,DdLに、動作条件OCの所与のセットにおける対象の動作条件の値にしたがって分割すること、
当該の基準サブセット(Dd1,Dd2,..,DdL)に対応して、その値がリアルタイムで車両10において測定され対象の当該条件OCに依存する、車両挙動に影響を及ぼす変数の複数の予測を、最適な非線形回帰関数を取得する当該動作220により取得すること、
測定変数と、係数の当該ベクトルにより判定される係数を有する車両挙動に影響を及ぼす変数の該当予測の線形的な組み合わせとの間の差を最小化する最適化問題の係数解決策のベクトルΛを取得すること。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本明細書に記載される様々な実施形態による解決策により、以下の利点を取得することが可能となる。
【0071】
本明細書に記載される様々な実施形態による方法および仮想センサにより、従来技術の方法と異なり、通常の生産車に実装可能な対象の変数のリアルタイム予測が取得可能となる。特に、方法は、計算的に扱い易く、リアルタイムの値が生産車において検出されない生産車が動作しなければならない異なる動作条件(例えば、道路−タイヤ摩擦係数、負荷、タイヤの状態)において達成され得る予測精度を保証することが可能となる。
【0072】
もちろん、実施形態の原理を害することなく、構築の詳細および実施形態は、次の請求項で規定される本実施形態の範囲から逸脱することなく、単なる例として本明細書におい記載および示されるものに対して幅広く変化してよい。
【0073】
解決策はESCシステムにより測定される変数に関して記載されているが、解決策は、さらにリアルタイムで車両において利用可能な他の測定を使用して実施され得る。
【0074】
本明細書において記載および特許請求される解決策は、車両の安定性、ステアリング、トラクションおよびブレーキングの監視および制御に関する自動車の安全システムの関連変数である車両の横滑り角、縦速度および横速度、タイヤ−道路摩擦係数の予測への特別な注意を伴って開発された。しかしながら、これらの特定の変数の記載は、いかなる手法においても、実施形態を限定するものとして理解されず、例えば、鉛直および回転変数など、サスペンション制御システムに関する他の車両挙動変数;例えば、航空機および海上船舶における姿勢予測など、自動車とは異なる分野に関する変数にも適用可能である。
図1
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図2
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