特許第6574029号(P6574029)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6574029
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】3,4−ヘキサンジオンの合成方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 45/40 20060101AFI20190902BHJP
   C07C 49/12 20060101ALI20190902BHJP
   C07C 45/82 20060101ALI20190902BHJP
   C07C 45/85 20060101ALI20190902BHJP
   C07C 49/17 20060101ALI20190902BHJP
   C07C 45/72 20060101ALI20190902BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20190902BHJP
【FI】
   C07C45/40
   C07C49/12
   C07C45/82
   C07C45/85
   C07C49/17 E
   C07C45/72
   !C07B61/00 300
【請求項の数】8
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2018-138214(P2018-138214)
(22)【出願日】2018年7月24日
(65)【公開番号】特開2019-55940(P2019-55940A)
(43)【公開日】2019年4月11日
【審査請求日】2018年7月24日
(31)【優先権主張番号】201710858949.9
(32)【優先日】2017年9月20日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】518262486
【氏名又は名称】淮陰工学院
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】何 磊
(72)【発明者】
【氏名】云 山
(72)【発明者】
【氏名】洪 坤
(72)【発明者】
【氏名】郭 探
(72)【発明者】
【氏名】朱 秀芳
(72)【発明者】
【氏名】張 加棟
(72)【発明者】
【氏名】李 華挙
(72)【発明者】
【氏名】王 朝宇
(72)【発明者】
【氏名】陳 静
(72)【発明者】
【氏名】許 瑩
【審査官】 三上 晶子
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第101514150(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第107032967(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第101565362(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第106397151(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 1/00−409/44
C07B 31/00− 61/00
CAplus/CASREACT/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピオノインの酸化工程を含み、
前記プロピオノインの酸化工程において、水が触媒として使用され、酢酸が助触媒であり、オゾンが酸化剤であることを特徴とする3,4−ヘキサンジオンの合成方法。
【請求項2】
前記プロピオノイン、水および酢酸の混合モル比が0.3〜0.4:1:0.008〜0.015であることを特徴とする請求項1に記載の3,4−ヘキサンジオンの合成方法。
【請求項3】
前記オゾンが0.25〜0.35L/分の流速を有することを特徴とする請求項1に記載の3,4−ヘキサンジオンの合成方法。
【請求項4】
プロパナールを原料として縮合によりプロピオノインを得る工程1と、
前記工程1で得られたプロピオノインを酸化反応させて3,4−ヘキサンジオンを製造する工程2とを含み、
前記工程2において、必要量のプロピオノインを水と混合し、酢酸を加えてよく攪拌した後、オゾンを導入して反応させ、反応後、減圧下で蒸留して3,4−ヘキサンジオンを得ることを特徴とする請求項1に記載の3,4−ヘキサンジオンの合成方法。
【請求項5】
前記工程2において、プロピオノイン、水および酢酸の混合モル比が0.3〜0.4:1:0.008〜0.015であることを特徴とする請求項4に記載の3,4−ヘキサンジオンの合成方法。
【請求項6】
前記工程2において、オゾンが0.25〜0.35L/分の流速を有することを特徴とする請求項4に記載の3,4−ヘキサンジオンの合成方法。
【請求項7】
前記工程2において、反応温度が5〜15℃であることを特徴とする請求項4に記載の3,4−ヘキサンジオンの合成方法。
【請求項8】
前記工程2において、酸化反応が完了した後、亜硫酸水素ナトリウムを反応系に添加して、溶液中に残存するオゾンを除去することを特徴とする請求項4に記載の3,4−ヘキサンジオンの合成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3,4−ヘキサンジオンの合成方法に関し、化学製品の合成技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
3,4−ヘキサンジオンは、ジプロピオニルとしても知られ、バターの香りを有し、飲料、冷凍食品、キャンディー、ゼリーおよびプリンのスパイスとして使用されている。3,4−ヘキサンジオンは、また重要な反応中間体であり、フラノンなどのファインケミカル製品の合成に使用できる。
【0003】
現在広く用いられている3,4−ヘキサンジオンの合成経路では、プロピオノインの酸化において、水和硫酸第二鉄、塩化第二鉄またはジョーンズ試薬のような酸化剤がしばしばプロピオノインを酸化するために使用され、それによって3,4−ヘキサンジオンが得られる。この合成方法により最終製品が得られると、処理や分解が困難な大量の下水を生成し、環境に大きな害をもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、3,4−ヘキサンジオンの合成方法を提供し、最終生成物を得る際に下水を生成せず、収率が大幅に向上し、既存方法がもたらす深刻な環境汚染問題を有効に解決する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の技術的問題を解決するために、本発明は以下の解決案を採用する。
本発明に係る3,4−ヘキサンジオンの合成方法において、当該合成方法はプロピオノインの酸化工程を含み、前記プロピオノインの酸化工程において、水が触媒として使用され、酢酸が助触媒であり、オゾンが酸化剤である。
【0006】
上記3,4−ヘキサンジオンの合成方法は、
プロパナールを原料として縮合によりプロピオノイン(propionoin)を得る工程1と、
工程1で得られたプロピオノインを酸化反応させて3,4−ヘキサンジオンを製造する工程2とを含み、工程2は、具体的に、必要量のプロピオノインを水と混合し、酢酸を加えてよく攪拌した後、オゾンを導入して反応させる。反応後、減圧下で蒸留して3,4−ヘキサンジオンを得る。
【0007】
より好ましくは、工程2において、プロピオノイン、水および酢酸の混合モル比は、0.3〜0.4:1:0.008〜0.015である。
【0008】
さらに好ましくは、工程2において、前記オゾンが0.25〜0.35L/分の流速を有し、オゾンの流速は適切な反応速度を確保することができる。
【0009】
より好ましくは、工程2において、反応温度が5〜15℃であり、反応温度が低すぎると反応材料の反応性が不十分であり、高すぎるとオゾン分解が速くなり、水への溶解度が低下するため、生成したオゾン酸化物も不安定であり、副産物が増加する。
【0010】
より好ましくは、工程2において、酸化反応が完了した後、亜硫酸水素ナトリウムを反応系に加えて過酸化物価を除去する。
【0011】
本発明の3,4−ヘキサンジオン合成方法の化学反応過程は次の通りである。
【0012】
【化1】
【発明の効果】
【0013】
従来技術と比較して、本発明の請求項の有益な効果として、本発明の3,4−ヘキサンジオン合成方法は、プロピオノインの酸化プロセスにおいて、プロピオノインを水中に入れ、オゾンを用いて行われ、酢酸が助触媒であり、酸化反応の全過程が穏やかであり、操作が簡単であり、最終生成物(3,4−ヘキサンジオン)を得る際に廃水が発生せず、収率が大幅に向上する。本発明の合成方法は、エコ、安全、環境に優しいという利点を有する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の具体的な実施例を参照して本発明の技術案についてさらに説明する。
【0015】
(実施例1)
本発明に係る3,4−ヘキサンジオン合成方法におけるプロピオノインの酸化工程
500mLの三口フラスコに最初に116.2gのプロピオノイン(1mol)および41gの水(2.5mol)を入れて混合し、次いで三口フラスコに助触媒である1.5gの酢酸(0.025mol)を添加する。三口フラスコを水浴に置き、5℃を維持して撹拌し続ける。混合材料にオゾンを導入して酸化反応を開始させ、オゾン流速を0.3L/分に保ち、反応の進行をガスクロマトグラフで追跡する。反応終了後、反応系に亜硫酸水素ナトリウムを加えて溶液中のオゾンを除去する(溶液中の残存オゾンを除去し、そうでなければその後の蒸留工程で加熱すると、残留オゾンは反応し続けて副生成物を生成する)。最後に減圧蒸留により3,4−ヘキサンジオンの完成品を得る。3,4−ヘキサンジオンの収率は全工程を通してプロピオノインで計算すると、96.2%であった。
【0016】
(実施例1)で作製した生成物は
H NMR(400MHz,CDCl):δ2.78(4H,q,2−CH−);δ1.11(6H,t,2−CH)である。
【0017】
(実施例2)
本発明に係る3,4−ヘキサンジオン合成方法におけるプロピオノインの酸化工程
500mLの三口フラスコに最初に116.2gのプロピオノイン(1mol)および54gの水(3mol)を入れて混合し、次いで三口フラスコに助触媒である2.7gの酢酸(0.045mol)を添加する。三口フラスコを水浴に置き、10℃を維持して撹拌し続ける。混合材料にオゾンを導入して酸化反応を開始させ、オゾン流速を0.35L/分に保ち、反応の進行をガスクロマトグラフで追跡する。反応終了後、反応系に重亜硫酸ナトリウムを加えて溶液中のオゾンを除去し、最後に減圧蒸留により3,4−ヘキサンジオンの完成品を得る。3,4−ヘキサンジオンの収率は全工程を通してプロピオノインで計算すると、89.2%であった。
【0018】
(実施例2)で作製した生成物は
H NMR(400MHz,CDCl):δ2.78(4H,q,2−CH−);δ1.11(6H,t,2−CH)である。
【0019】
(実施例3)
本発明に係る3,4−ヘキサンジオン合成方法におけるプロピオノインの酸化工程
500mLの三口フラスコに最初に116.2gのプロピオノイン(1mol)および54gの水(3mol)を入れて混合し、次いで三口フラスコに助触媒である1.5gの酢酸(0.025mol)を添加する。三口フラスコを水浴に置き、15℃を維持して撹拌し続ける。混合材料にオゾンを導入して酸化反応を開始させ、オゾン流速を0.25L/分に保ち、反応の進行をガスクロマトグラフで追跡する。反応終了後、反応系に重亜硫酸ナトリウムを加えて溶液中のオゾンを除去し、最後に減圧蒸留により3,4−ヘキサンジオンの完成品を得る。3,4−ヘキサンジオンの収率は全工程を通してプロピオノインで計算すると、84.8%であった。
【0020】
(実施例3)で作製した生成物は
H NMR(400MHz,CDCl):δ2.78(4H,q,2−CH−);δ1.11(6H,t,2−CH)である。
【0021】
本発明の3,4−ヘキサンジオンの合成方法では、助触媒としての酢酸が水中でのオゾンの溶解性を効果的に高めることができる(すなわち、酢酸は水中でのオゾンの溶解を促進する)と同時に、オゾンの酸化を抑制することもできる(オゾンの酸化性が強すぎると副反応や副生成物が増加する)が、酢酸濃度が高すぎると反応活性が低下し、濃度が低すぎると副生成物が増加する。オゾンを水に溶解して、より酸化性の強いヒドロキシルラジカルを生成させてからやっと反応できるので、本発明の方法では、水が溶媒であり、触媒でもある。
【0022】
既存の3,4−ヘキサンジオン合成方法におけるプロピオノイン酸化法と本発明の3,4−ヘキサンジオン合成方法におけるプロピオノイン酸化法によって生成された3,4−ヘキサンジオン生成物の収率と汚水量の比較は表1に示す。
【0023】
【表1】
【0024】
表1は、本発明の3,4−ヘキサンジオンの合成方法におけるプロピオノインの酸化プロセスにおいてオゾンが酸化剤として使用され、酢酸が共触媒であるため、酸化工程全体が穏やかで操作が簡単で、生成物(3,4−ヘキサンジオン)の収率が大幅に向上するだけでなく、反応中に廃水を生成せず、環境汚染の問題を効果的に解決することができる。
【0025】
(付記)
(付記1)
プロピオノインの酸化工程を含み、
前記プロピオノインの酸化工程において、水が触媒として使用され、酢酸が助触媒であり、オゾンが酸化剤であることを特徴とする3,4−ヘキサンジオンの合成方法。
【0026】
(付記2)
前記プロピオノイン、水および酢酸の混合モル比が0.3〜0.4:1:0.008〜0.015であることを特徴とする付記1に記載の3,4−ヘキサンジオンの合成方法。
【0027】
(付記3)
前記オゾンが0.25〜0.35L/分の流速を有することを特徴とする付記1に記載の3,4−ヘキサンジオンの合成方法。
【0028】
(付記4)
プロパナールを原料として縮合によりプロピオノインを得る工程1と、
前記工程1で得られたプロピオノインを酸化反応させて3,4−ヘキサンジオンを製造する工程2とを含み、
前記工程2において、必要量のプロピオノインを水と混合し、酢酸を加えてよく攪拌した後、オゾンを導入して反応させ、反応後、減圧下で蒸留して3,4−ヘキサンジオンを得ることを特徴とする付記1に記載の3,4−ヘキサンジオンの合成方法。
【0029】
(付記5)
前記工程2において、プロピオノイン、水および酢酸の混合モル比が0.3〜0.4:1:0.008〜0.015であることを特徴とする付記4に記載の3,4−ヘキサンジオンの合成方法。
【0030】
(付記6)
前記工程2において、オゾンが0.25〜0.35L/分の流速を有することを特徴とする付記4に記載の3,4−ヘキサンジオンの合成方法。
【0031】
(付記7)
前記工程2において、反応温度が5〜15℃であることを特徴とする付記4に記載の3,4−ヘキサンジオンの合成方法。
【0032】
(付記8)
前記工程2において、酸化反応が完了した後、亜硫酸水素ナトリウムを反応系に添加して、溶液中に残存するオゾンを除去することを特徴とする付記4に記載の3,4−ヘキサンジオンの合成方法。