特許第6574035号(P6574035)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6574035
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】水処理システム
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/50 20060101AFI20190902BHJP
   C02F 1/76 20060101ALI20190902BHJP
【FI】
   C02F1/50 510A
   C02F1/50 520B
   C02F1/50 520F
   C02F1/50 520P
   C02F1/50 531M
   C02F1/50 532H
   C02F1/50 540D
   C02F1/50 540E
   C02F1/50 550C
   C02F1/50 550Z
   C02F1/50 560Z
   C02F1/76 A
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-161993(P2018-161993)
(22)【出願日】2018年8月30日
【審査請求日】2018年9月21日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390016540
【氏名又は名称】内外化学製品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】丸亀 和雄
(72)【発明者】
【氏名】近藤 佑介
【審査官】 宮部 裕一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−098451(JP,A)
【文献】 特開2008−229573(JP,A)
【文献】 特開2006−230256(JP,A)
【文献】 特開平11−128963(JP,A)
【文献】 特開平09−206769(JP,A)
【文献】 特開2009−022864(JP,A)
【文献】 特開2005−254223(JP,A)
【文献】 特開2004−148234(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 61/00−61/65
A01K 61/80−63/10
A01N 25/00−65/48
A01P 1/00−23/30
C02F 1/00、1/50、1/76
C02F 3/00
E02B 15/00−15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
菌数管理が必要な水域に設置され、予め水中に形成されている水流の方向を変更して新たな水流を形成する水流形成部と、
前記新たな水流が形成された前記水域に対して殺菌処理を施す水処理成分を放出する放出部と、を備え、
前記水流形成部は、水平方向に沿って複数配置され、対象水域の流れを仕切る仕切り部を有し、
前記仕切り部は、上下方向に沿って設置されるスクリーンと、前記スクリーンの上部に接続された浮きと、前記スクリーンの下部に接続された錘とを有し、
隣り合う前記仕切り部同士のうちの一方の前記仕切り部は、その上部が水面に浮いて設置され、他方の前記仕切り部は、その下部が水底に接して設置されており、
前記放出部は、前記一方の仕切り部に対しては、前記錘に接続され、前記他方の仕切り部に対しては、前記浮きに接続されることを特徴とする水処理システム。
【請求項2】
前記水域には、前記新たな水流が上方から下方に向かって転換するか、または、下方から上方に向かって転換する方向転換部が形成され、
前記放出部は、前記方向転換部に臨んで設置される請求項1に記載の水処理システム。
【請求項3】
り合う前記仕切り部同士は、前記水中での配置高さが異なる請求項1または2に記載の水処理システム。
【請求項4】
菌数管理が必要な水域に設置され、予め水中に形成されている水流の方向を変更して新たな水流を形成する水流形成部と、
前記新たな水流が形成された前記水域に対して殺菌処理を施す水処理成分を放出する放出部と、を備え、
前記水流形成部は、対象水域の流れを仕切る仕切り部を有し、
前記仕切り部は、上下方向に沿って設置されるスクリーンと、前記スクリーンの上部に接続された浮きと、前記スクリーンの下部に接続された錘とを有し、
前記水処理成分は、一般細菌に対して殺菌効果を発揮する殺菌成分を含み、
前記殺菌成分は、二酸化塩素を含むか、または、二酸化塩素を発生させるものであることを特徴とする水処理システム。
【請求項5】
前記一般細菌は、大腸菌群または腸球菌である請求項に記載の水処理システム。
【請求項6】
当該水処理システムは、海の沿岸部近傍に設置されるものである請求項1ないしのいずれか1項に記載の水処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、海洋や河川等の水面には、船舶等から漏洩・流出した油が浮いている場合がある。この場合、油回収装置、すなわち、オイルフェンスを用いて、油を吸着して回収することがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の油回収装置は、水面に浮いた油を回収することができるが、例えば、水中内を浮遊しているゴミ等を回収することはできない。さらに、水中の大腸菌群、腸球菌および一般細菌等の菌も除去することはできない。そのため、遊泳時やウォータースポーツ時において衛生上問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017−136900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、水処理を効果的に行うことができる水処理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的は、下記(1)〜()の本発明により達成される。
(1)菌数管理が必要な水域に設置され、予め水中に形成されている水流の方向を変更して新たな水流を形成する水流形成部と、
前記新たな水流が形成された前記水域に対して殺菌処理を施す水処理成分を放出する放出部と、を備え、
前記水流形成部は、水平方向に沿って複数配置され、対象水域の流れを仕切る仕切り部を有し、
前記仕切り部は、上下方向に沿って設置されるスクリーンと、前記スクリーンの上部に接続された浮きと、前記スクリーンの下部に接続された錘とを有し、
隣り合う前記仕切り部同士のうちの一方の前記仕切り部は、その上部が水面に浮いて設置され、他方の前記仕切り部は、その下部が水底に接して設置されており、
前記放出部は、前記一方の仕切り部に対しては、前記錘に接続され、前記他方の仕切り部に対しては、前記浮きに接続されることを特徴とする水処理システム。
【0008】
) 前記水域には、前記新たな水流が上方から下方に向かって転換するか、または、下方から上方に向かって転換する方向転換部が形成され、
前記放出部は、前記方向転換部に臨んで設置される上記()に記載の水処理システム。
【0009】
(3) 隣り合う前記仕切り部同士は、前記水中での配置高さが異なる上記(1)または(2)に記載の水処理システム。
【0013】
菌数管理が必要な水域に設置され、予め水中に形成されている水流の方向を変更して新たな水流を形成する水流形成部と、
前記新たな水流が形成された前記水域に対して殺菌処理を施す水処理成分を放出する放出部と、を備え、
前記水流形成部は、対象水域の流れを仕切る仕切り部を有し、
前記仕切り部は、上下方向に沿って設置されるスクリーンと、前記スクリーンの上部に接続された浮きと、前記スクリーンの下部に接続された錘とを有し、
前記水処理成分は、一般細菌に対して殺菌効果を発揮する殺菌成分を含み、
前記殺菌成分は、二酸化塩素を含むか、または、二酸化塩素を発生させるものであることを特徴とする水処理システム。
) 前記一般細菌は、大腸菌群または腸球菌である上記()に記載の水処理システム。
【0016】
) 当該水処理システムは、海の沿岸部近傍に設置されるものである上記(1)ないし()のいずれかに記載の水処理システム。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、水域に対して水処理を効果的に行うことができる。すなわち、優れた殺菌性を発揮することができる。これにより、例えば、前記水域への大腸菌群、腸球菌および一般細菌の侵入を防止することができ、よって、前記水域を衛生上好ましい状態に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明の水処理システムの第1実施形態を示す部分垂直断面図である。
図2図2は、図1に示す水処理システムを矢印Aから見たときの平面図である。
図3図3は、本発明の水処理システムの第2実施形態を示す部分垂直断面図であって、満潮時を示す図である。
図4図4は、本発明の水処理システムの第2実施形態を示す部分垂直断面図であって、干潮時を示す図である。
図5図5は、本発明の水処理システムの第3実施形態を示す部分垂直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の水処理システムを添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0020】
<第1実施形態>
図1は、本発明の水処理システムの第1実施形態を示す部分垂直断面図である。図2は、図1に示す水処理システムを矢印Aから見たときの平面図である。なお、以下では、説明の都合上、図1中の上側を「上」または「上方」、下側を「下」または「下方」と言う。また、図1および図2中の右側を「海岸側」、左側を「沖合い側」と言う。
【0021】
また、本明細書中での「水」とは、例えば、純水だけでなく、例えば、海水や下水等、純水以外の成分を含む概念のものである。以下では、海水を例に挙げて説明する。
【0022】
図1に示すように、水処理システム1は、海Qの沿岸部近傍に設置されて用いられるものである。ここで、「沿岸部近傍」とは、海岸線に沿ったある程度の広さを持った陸地の部分と、当該陸地を海水が覆う水域とを含む領域のことを言う。
【0023】
この水処理システム1は、菌数管理が必要な水域の海中(水中)Q1に設置され、水流WSを形成する水流形成部2と、水流WSが形成された海中Q1(水域)に対して殺菌処理を施す水処理剤31(水処理成分)を放出する放出部3と、を備えている。そして、水処理システム1よりも海岸側は、例えば、ヨット競技、サーフィン競技、水泳(マラソンスイミングやトライアスロン時の水泳を含む)等を行う競技水域Q2となる。以下、水処理システム1を構成する各部について説明する。
【0024】
図1図2に示すように、水流形成部2は、海中Q1を水平方向、すなわち、図中の左右方向に沿って仕切る仕切り部4を有している。本実施形態では、仕切り部4は、水平方向に沿って3つ配置されている。これらの仕切り部4を沖合い側から海岸側に向かって順に「仕切り部4A」、「仕切り部4B」、「仕切り部4C」と言うことがある。なお、仕切り部4の設置数は、3つに限定されず、例えば、1つまたは4つ以上であってもよい。
【0025】
図1に示すように、隣り合う仕切り部4Aと仕切り部4Bとは、海中Q1での配置高さが異なっている。同様に、隣り合う仕切り部4Bと仕切り部4Cも、海中Q1での配置高さが異なっている。なお、仕切り部4Aと仕切り部4Cとは、海中Q1での配置高さがほぼ同じとなっている。
【0026】
このように配置された仕切り部4により、沖合い側から海岸側に向かう水流WSを、図1に示すように、上下方向に蛇行させることができる。これにより、海中Q1を浮遊するゴミや、海面(水面)Q3に浮かんだ油等の異物(以下単に「異物」と言う)を仕切り部4(特に、スクリーン41)で捕捉することができ、沖合い側から競技水域Q2に入り込むのをできる限り抑えることができる。その結果、異物に付着した菌(例えば、大腸菌群、腸球菌および一般細菌等)が競技水域Q2に入り込むのをできる限り抑えることができる。
【0027】
なお、沖合い側の仕切り部4Aと仕切り部4Bとの配置間隔と、海岸側の仕切り部4Bと仕切り部4Cとの配置間隔とは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0028】
各仕切り部4は、海中Q1に上下方向に沿って設置されるスクリーン41と、スクリーン41の上部に接続された浮き42と、スクリーン41の下部に接続された錘43とを有している。
【0029】
スクリーン41は、自然に生じた海水の流れに影響を与える、すなわち、仕切ることができる素材であれば特に限定されず、完全に海水を遮断する素材であってもよく、若干海水を通過させる素材であってもよい。
【0030】
スクリーン41としては、例えば、可撓性を有するナイロン製の線状体を編み込んで構成した編組体とすることができる。これにより、スクリーン41は、例えば、水流WSから受ける力を適度に分散させることができ、よって、海中Q1を所定位置で安定して仕切ることができる。また、スクリーン41は、水流WSから力を受けても破損するのが防止される。
【0031】
なお、スクリーン41は、1枚の編組体で構成されていてもよいし、編組体が複数枚連結された連結体で構成されていてもよい。また、スクリーン41の上下方向の長さは、水深に応じて変更するのが好ましい。スクリーン41の水平方向の長さは、競技水域Q2の広さに応じて変更するのが好ましい。
【0032】
スクリーン41の上部には、浮き42が接続されている。浮き42は、スクリーン41に1つ以上配置されている。図2に示す構成では、浮き42は、図中の上下方向に沿って等間隔に複数配置されている。これにより、スクリーン41を海中Q1に安定して浮かせることができる。
【0033】
なお、浮き42の形状は、本実施形態では球状をなしているが、これに限定されず、例えば、スクリーン41の上端部に沿って連結された長尺体をなしていてもよい。
【0034】
スクリーン41の下部には、錘43が接続されている。これにより、スクリーン41は錘43による下方への重力と、浮き42による上方への浮力とが相まって、上下方向に広がって伸びた状態が維持される。
【0035】
また、錘43は、スクリーン41に1つ以上配置されている。錘43を複数配置する場合、各錘43の配置箇所としては、各浮き42の下方延長線上とするのが好ましい。これにより、海中Q1でのスクリーン41の配置位置をできる限り維持することができる。なお、錘43の形状は、本実施形態では台形円錐状をなしているが、これに限定されない。
【0036】
隣り合う仕切り部4Aと仕切り部4Bとのうち、仕切り部4Aは、その上部が浮き42によって海面Q3に浮いて設置されている。また、仕切り部4Aの錘43は、海底(水底)Q4から離間している。一方、仕切り部4Bは、その下部が錘43によって海底(水底)Q4に接して設置されている。また、仕切り部4Bの浮き42は、海面Q3よりも下方に位置している、すなわち、海中Q1に沈んだ状態となっている。
【0037】
また、隣り合う仕切り部4Bと仕切り部4Cとは、仕切り部4Bは、前述したように、その下部が錘43によって海底Q4に接して設置されている。一方、仕切り部4Cは、仕切り部4Aと同様に、その上部が浮き42によって海面Q3に浮いており、錘43が海底Q4から離間して設置されている。
【0038】
このように各仕切り部4が設置されていることにより、上下方向に蛇行した水流WSを円滑に形成することができる。
【0039】
図1に示すように、水処理システム1では、水流WSが形成された海中Q1に対して処理を施す水処理剤31を、放出部3によって放出することができる。放出部3は、水処理剤31と、水処理剤31を収納する袋体32とを有している。
【0040】
袋体32は、メッシュ状をなすものであるのが好ましいが、これに限定されない。図示のようにメッシュ状をなす場合、そのメッシュサイズは、水処理剤のタブレットよりも十分に小さいのが好ましい。
【0041】
また、スクリーン41は、大腸菌群、腸球菌および一般細菌に対して抗菌性を有するのが好ましい。これにより、スクリーン41にて捕捉した大腸菌群、腸球菌および一般細菌に対して抗菌性を発揮することができる。また、放出部3が放出する水処理剤31との相乗効果によって、海中Q1をより衛生上好ましい状態に維持することができる。
【0042】
スクリーン41に抗菌性を担持させる方法としては、特に限定されず、スクリーン41
を、抗菌成分を練り込んだ材料で構成する方法や、抗菌性を有さない材料でスクリーン41を製造し、表面に抗菌成分を含む被膜を形成する方法等が挙げられる。
【0043】
抗菌成分としては、有機系抗菌成分であってもよく、無機系抗菌成分であってもよい。 有機系抗菌成分としては、特に限定されないが、例えば、第四級アンモニウム塩、ビグアナイド、カルボン酸、ピリジン系、イミダゾール系、トリアゾール系、トラサイド等の合成系抗菌成分やキチン・キトサン、ヒノキチオール、カテキン、アップル・フェノン、孟宗竹エキス、エコペルモンビタミンC等の天然系抗菌成分等が挙げられる。
【0044】
一方、無機系抗菌成分としては、例えば、金属銀、銀塩(銀錯体を含む)等の銀系や、銅、酸化亜鉛、酸化チタン等の非銀系等が挙げられ、これらを各種ゼオライト等の担持体に担持させた構成のものが挙げられる。
【0045】
水処理剤31は、大腸菌群、腸球菌および一般細菌(各種雑菌等)のうちの少なくとも1つ(本実施形態では、全部)に対して殺菌効果を発揮する殺菌成分を含む。これにより、水処理剤31は、水流WSに乗って競技水域Q2に向かうことができ、その途中、すなわち、競技水域Q2に到達するまでの間に、海中Q1内を殺菌することができる。これにより、競技水域Q2は、衛生上好ましい状態が維持される。
【0046】
また、水処理剤31は、袋体32に収納されている状態では、塊状、すなわち、タブレット状となっているのが好ましい。これにより、水処理剤31は、そのままの状態で、または、水流WSによって、袋体32から海中Q1に過不足なく溶け出すことができる。
【0047】
また、各水処理剤31の大きさは、特に限定されないが、50cm以上10000cm以下であるのが好ましく、100cm以上500cm以下であるのがより好ましい。これにより、水処理剤31の補充作業の回数を減らすことができる。
【0048】
水処理剤31としては、特に限定されないが、二酸化塩素または二酸化塩素を発生させるものを含むのが好ましい。これにより、十分な殺菌力を発揮することができる。
【0049】
水処理剤31が二酸化塩素を含む場合、液状をなしているのが好ましい。この場合、例えば、浮き42内に形成され、水処理剤31を貯留する貯留部と、貯留部から浮き42の外部に連通する放出路とを有する構成とすることができる。
【0050】
水処理剤31が二酸化塩素を発生させるものを含むである場合、例えば、水処理剤31は、塩素酸、塩素酸塩、亜塩素酸および亜塩素酸塩からなる群のうちの少なくとも1つを含むのが好ましい。
【0051】
これにより、二酸化塩素を好適に発生させることができ、優れた殺菌性を発揮することができる。特に、水処理剤31の使用の初期の段階における殺菌性の発揮(即効性)に寄与する。
【0052】
塩素酸塩としては、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
【0053】
亜塩素酸塩としては、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
【0054】
水処理剤31は、上記の中でも亜塩素酸塩を含んでいるのが好ましい。これにより、保存時の高い安定性を発揮することができるとともに、他の成分と反応させて好適に二酸化塩素を発生させることができる。
【0055】
また、亜塩素酸塩としては、亜塩素酸ナトリウム(NaClO)であるのが好ましい。亜塩素酸ナトリウムは、各種亜塩素酸塩の中でも、特に安定性が高いとともに、コスト的にも有利である。
【0056】
また、水処理剤31は、N−ハロゲン化ヒダントイン誘導体を含むことが好ましい。これにより、優れた殺菌性を発揮することができる。特に、遅行性の成分として機能し、殺菌性の持続性に大きく寄与する。
【0057】
N−ハロゲン化ヒダントイン誘導体は、式(1)で示されるヒダントインの2つの窒素原子に結合する水素原子のうちの少なくとも一方がハロゲン原子で置換された骨格を有する化合物である。
【0058】
【化1】
【0059】
なお、式(1)中XおよびXは、ハロゲン原子を表し、RおよびRは、アルキル基を表す。また、XおよびXは、同じであってもよく異なっていてもよい。また、RおよびRは、同じであってもよく異なっていてもよい。
【0060】
N−ハロゲン化ヒダントイン誘導体の具体例としては、1−ブロモ−3−クロロ−5,5−ジメチルヒダントイン、1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントイン、1,3−ジクロロ−5,5−ジメチルヒダントイン、1−クロロ−3−ブロモ−5,5−ジメチルヒダントイン、等が挙げられる。
【0061】
なお、水処理剤31は、亜塩素酸塩と、N−ハロゲン化ヒダントイン誘導体との双方を含んでいるのが好ましい。これにより、下記式(2)に示すように、N−ハロゲン化ヒダントイン誘導体由来の塩素と亜塩素酸塩とが効率よく反応し、二酸化塩素を効率よく生成することができる(二液法)。
Cl+2NaClO→2ClO+2NaCl…(2)
【0062】
さらに、水処理剤31が亜塩素酸塩と、N−ハロゲン化ヒダントイン誘導体との双方を含んでいることにより、水処理剤31の使用の初期の段階における殺菌性と、十分な殺菌力を発揮することのできる期間・長期的な殺菌性とをより高いレベルで両立することができる。
【0063】
なお、上記では、二酸化塩素を発生させる方法として、N−ハロゲン化ヒダントイン誘導体由来の塩素と亜塩素酸塩とが反応することにより二酸化塩素が発生するいわゆる二液法を例に挙げて説明したが、本発明ではこれに限定されず、例えば、塩素酸塩と塩酸とを反応させる酸分解法や、次亜塩素酸塩と塩酸とを反応させる三液法や、塩素酸塩と還元させる塩素酸法等を用いてもよい。
【0064】
また、このような水処理剤31は、大腸菌群、腸球菌および一般細菌のみならず、微生物がスクリーン41や浮き42や袋体32に付着するのを防止または抑制する効果も発揮することができる。特に、袋体32に微生物が付着するのを防止することにより、袋体32に微生物による目詰まりが生じるのを防止または抑制することができる。よって、さらに長期にわたって十分な殺菌力を発揮することができる。
【0065】
また、水処理剤31は、例えば、水溶性セルロース誘導体(カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース等)等のバインダーを含んでいてもよい。これにより、水処理剤31を所望の形状に成形しやすくなる。
【0066】
また、海中Q1には、仕切り部4の配置高さに応じて、水流WSが上方から下方に向かって転換するか、または、下方から上方に向かって転換する方向転換部Q5が形成される。図1に示す構成では、仕切り部4Aおよび仕切り部4Cの下方には、それぞれ、水流WSが下方から上方に向かって転換する方向転換部Q5が形成される。仕切り部4Bの上方には、水流WSが上方から下方に向かって転換する方向転換部Q5が形成される。
【0067】
そして、放出部3は、方向転換部Q5に臨んで設置される。特に、上方に位置する仕切り部4Aおよび仕切り部4Cに対しては、放出部3は、錘43に接続されている。また、下方に位置する仕切り部4Bに対しては、放出部3は、浮き42に接続されている。
【0068】
方向転換部Q5では、水流WSの流速が増加され、水処理剤31の拡散を促進することができる。よって、水処理剤31による殺菌効果を、広範囲に効果的に及ぼすことができる。
【0069】
なお、放出部3は、錘43に接続されている場合、各錘43に接続されていてもよいし、選択された所定の錘43に接続されていてもよい。これと同様に、放出部3は、浮き42に接続されている場合、各浮き42に接続されていてもよいし、選択された所定の浮き42に接続されていてもよい。
【0070】
また、放出部3は、スクリーン41に接続されていてもよい。この場合、放出部3の接続箇所は、スクリーン41の上下方向または水平方向の途中とすることができる。
【0071】
以上のように、水処理システム1では、放出部3によって、海中Q1に対して優れた殺菌性を発揮することができる。すなわち、水処理を効果的に行うことができる。これにより、競技水域Q2への大腸菌群、腸球菌および一般細菌の侵入を防止することができ、よって、衛生上好ましい状態の競技水域Q2で各種競技を安全に行うことができる。
【0072】
<第2実施形態>
図3は、本発明の水処理システムの第2実施形態を示す部分垂直断面図であって、満潮時を示す図である。図4は、本発明の水処理システムの第2実施形態を示す部分垂直断面図であって、干潮時を示す図である。
【0073】
以下、この図を参照して本発明の水処理システムの第2実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態は、水流形成部の構成が異なること以外は前記第1実施形態と略同様である。
【0074】
図3および図4に示すように、本実施形態では、仕切り部4Dは、スクリーン41と浮き42との間に設けられたメッシュ部材44を有している。また、本実施形態では、袋体32は、浮き42に連結されている。
【0075】
メッシュ部材44は、例えば金網のように海水を通過させるとともに、スクリーン41よりも剛性が高い部材で構成されている。このため、仕切り部4Dでは、海面Q3の位置の変化によって、スクリーン41が優先的に撓んで変化するよう構成されている。
【0076】
図3に示す満潮時では、浮き42が海面Q3に位置し、錘43が海底Q4に位置しており、かつ、スクリーン41は、張った状態となっている。この状態では、メッシュ部材44を海水が通過すると、水流WSが形成される。このため、水流WSが形成された海中Q1に対して処理を施す水処理剤31を、放出部3によって放出することができる。
【0077】
一方、図4に示す干潮時には、浮き42が海面Q3に位置し、錘43が海底Q4に位置しており、かつ、スクリーン41は、撓んだ状態となっている。なお、この状態では、メッシュ部材44は、撓んでいないか、スクリーン41の撓みよりも少ない撓み量となっている。
【0078】
このため、海面Q3の位置が低くなったとしても、スクリーン41によって海中Q1を仕切ることができるとともに、メッシュ部材44によって水流WSを形成することができる。
【0079】
このように、本実施形態では、海の満ち引きによって海面Q3の位置が変化するにも関わらず、海中Q1を仕切るとともに水流WSを形成することができる。よって、海の満ち引きの影響を受けることなく、第1実施形態と同様の効果をさらに確実に発揮することができる。
【0080】
<第3実施形態>
図5は、本発明の水処理システムの第3実施形態を示す部分垂直断面図である。
【0081】
以下、この図を参照して本発明の水処理システムの第3実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0082】
本実施形態は、放出部が省略され、かつ、水流形成部が抗菌性を有すること以外は前記第1実施形態と略同様である。
【0083】
本実施形態の水処理システム1は、菌数管理が必要な水域に設置され、水中に水流を形成する水流形成部2を備え、水流形成部2は、抗菌性を有し、対象水域の流れを仕切る仕切り部4を有する。また、本実施形態では、スクリーン41’が抗菌性を有する。
【0084】
また、スクリーン41’は、大腸菌群、腸球菌および一般細菌に対して抗菌性を有するのが好ましい。これにより、スクリーン41’にて捕捉した大腸菌群、腸球菌および一般細菌に対して抗菌性を発揮することができる。
【0085】
スクリーン41’に抗菌性を担持させる方法としては、特に限定されず、スクリーン41’を、抗菌成分を練り込んだ材料で構成する方法や、抗菌性を有さない材料でスクリーン41’を製造し、表面に抗菌成分を含む被膜を形成する方法等が挙げられる。
【0086】
抗菌成分としては、有機系抗菌成分であってもよく、無機系抗菌成分であってもよい。 有機系抗菌成分としては、特に限定されないが、例えば、第四級アンモニウム塩、ビグアナイド、カルボン酸、ピリジン系、イミダゾール系、トリアゾール系、トラサイド等の合成系抗菌成分やキチン・キトサン、ヒノキチオール、カテキン、アップル・フェノン、孟宗竹エキス、エコペルモンビタミンC等の天然系抗菌成分等が挙げられる。
【0087】
一方、無機系抗菌成分としては、例えば、金属銀、銀塩(銀錯体を含む)等の銀系や、銅、酸化亜鉛、酸化チタン等の非銀系等が挙げられ、これらを各種ゼオライト等の担持体に担持させた構成のものが挙げられる。
【0088】
このような水処理システム1によれば、スクリーン41’によって大腸菌群、腸球菌および一般細菌を捕捉することができ、また、スクリーン41’が捕捉した大腸菌群、腸球菌および一般細菌を減少させることができる。すなわち、水処理を効果的に行うことができる。その結果、競技水域Q2への大腸菌群、腸球菌および一般細菌の侵入を防止することができ、衛生上好ましい状態の競技水域Q2で各種競技を安全に行うことができる。
【0089】
以上、本発明の水処理システムを図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、水処理システムを構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
【0090】
また、本発明の水処理システムは、海で用いられる場合について説明したが、これに限定されず、例えば、川、用水路、池、湖や、プール等の菌数管理が必要とされる貯水槽にも適用することができる。
【0091】
また、本発明の水処理システムは、海における競技領域に対して用いられる場合について説明したが、これに限定されず、例えば、海水浴場に対しても用いることができる。
【0092】
また、水処理剤については、大腸菌群、腸球菌および一般細菌に対して殺菌効果を発揮するものを一例として説明したが、これに限定されず、大腸菌群、腸球菌および一般細菌以外の菌に対して殺菌効果を発揮するものや、その他、浮遊物質を沈殿させる機能を有する水処理剤や、消臭機能を有する水処理剤や、微生物の死骸を除去する機能を有する水処理剤等が挙げられる。
【0093】
また、水処理剤の状態は、塊状、すなわち、タブレットであったが、これに限定されず、例えば、粉末状であってもよい。
【0094】
また、前記各実施形態では、水処理剤を水の処理に用いる場合について説明したが、本発明ではこれに限定されず、例えば、水域の汚染の予防に用いてもよい。
【符号の説明】
【0095】
1 水処理システム
2 水流形成部
3 放出部
31 水処理剤
32 袋体
4 仕切り部
4A 仕切り部
4B 仕切り部
4C 仕切り部
4D 仕切り部
41 スクリーン
41’ スクリーン
42 浮き
43 錘
44 メッシュ部材
Q 海
WS 水流
Q1 海中
Q2 競技水域
Q3 海面(水面)
Q4 海底(水底)
Q5 方向転換部
【要約】
【課題】水処理を効果的に行うことができる水処理システムを提供すること。
【解決手段】水処理システム1は、海中Q1に設置され、水流WSを形成する水流形成部2と、水流WSが形成された海中Q1に対して処理を施す水処理剤31を放出する放出部3と、を備えている。水流形成部2は、海中Q1を仕切る仕切り部4を有し、仕切り部4により、水流WSが上下方向に蛇行することができる。また、海中Q1には、水流WSが上方から下方に向かって転換するか、または、下方から上方に向かって転換する方向転換部Q5が形成されている。そして、放出部3は、方向転換部Q5に臨んで設置されている。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5