(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0017】
1.第1の実施形態
1.1 シールリング10の構成
図1A,1Bは、本発明の第1の実施形態に係るシールリング10を示す図である。
図1Aはシールリング10の平面図であり、
図1Bはシールリング10の
図1AのA−A'線に沿った断面図である。
【0018】
図1Aに示すように、シールリング10は、中心軸Eを中心とする環状に形成されている。
図1Bには、中心軸Eに直交し、シールリング10の径方向に延びる平面Fが示されている。平面Fはシールリング10の中央を通り、シールリング10は平面Fについて対称な形状を有する。
【0019】
シールリング10は、弾性体で形成されている。シールリング10を形成する弾性体には、常にシャフト及びハウジングに隙間なく密着してシャフトとハウジングとの間を封止可能とする物性が求められる。
【0020】
具体的に、シールリング10を形成する弾性体には高い耐圧性が求められる。一般的には、硬度及び引張強度が高い弾性体において高い耐圧性が得られる。この観点から、シールリング10を形成する弾性体では、ショアA硬度が70以上であり、引張強度が8MPa以上であることが好ましい。
【0021】
弾性体のショアA硬度は、例えば、JIS K7215に基づき、タイプAデュロメータを用いて測定することができる。その際に、弾性体を適当な形状に切り出した測定サンプルを用いることができる。
弾性体の引張強度は、例えば、JIS K6251に基づく引張試験における最大の応力として得ることができる。引張試験の際には、弾性体を3号形ダンベル試験片に加工することができる。また、引張試験における引張速度は500mm/minとすることができる。
【0022】
また、シャフト及びハウジングに対する密着を長期間にわたって保持するために、シールリング10を形成する弾性体には低い圧縮永久歪が求められる。この観点から、シールリング10を形成する弾性体では、150℃で100時間保持した後の圧縮永久歪が90%以下であることが好ましい。
【0023】
弾性体の圧縮永久歪は、例えば、JIS K6262に基づいて測定することができる。その際、弾性体を長さ15mm、幅5mm、厚さ2mmに切り出した測定サンプルを用いることができる。
本測定では、まず、スペーサにより挟んだ測定サンプルを、スペーサ間に加圧力を加えることにより25%圧縮し、150℃で100時間保持する。その後、スペーサ間の加圧力を解除し、測定サンプルを室温で30分間静置する。150℃における圧縮永久歪みは、以下の式により算出することができる。
(150℃における圧縮永久歪み)=[(t0−t2)/t0−t1]×100 [%]
(ここで、t0:試験前の測定サンプルの厚さ(mm)、t1:スペーサの厚さ(mm)、t2:試験後(室温で30分静置した後)の測定サンプルの厚さ(mm)である。)
【0024】
シールリング10を形成する弾性体は、以上のようなショアA硬度、引張強度、圧縮永久歪みなどを基準として、各種樹脂材料や各種ゴム材料から選択可能である。更に、シールリング10を形成する弾性体は、樹脂材料やゴム材料に各種充填材が添加された複合材料として構成されていてもよい。
【0025】
シールリング10は、径方向に相互に対向する内周面11及び外周面12を有する。内周面11は、径方向内側を向き、中心軸Eに平行な円筒面として構成されている。外周面12は、径方向外側を向き、径方向外向きに突出した樽状の曲面として構成されている。外周面12は内周面11よりも中心軸E方向の幅が小さい。シールリング10では、外周面12がハウジングに対して摺動する摺動面として構成される。
【0026】
また、シールリング10は、中心軸E方向に対向し、平面Fに平行な側面13a,13bを有する。側面13a,13bは、内周面11の中心軸E方向の両側からそれぞれ径方向外向きに延びている。
【0027】
シールリング10をシャフト及びハウジングに組み込むためには、まずシールリング10をシャフトの溝部に装着する。シールリング10は中心軸E方向に対称な形状を有するため、シャフトの溝部に装着する際にシールリング10の向きを考慮する必要がない。これにより、シールリング10をシャフトの溝部に装着する際の作業性が向上する。
【0028】
また、シールリング10の内径(内周面11の径)は、シャフトの溝部の底面の径よりもやや小さい。このため、シールリング10は、径方向にやや拡張させられた状態で、シャフトの溝部に嵌め込まれる。これにより、シールリング10の内周面11がシャフトの溝部の底面に密着する。
【0029】
次に、シールリング10が溝部に装着されたシャフトが、ハウジングに挿通される。シャフトの溝部に装着されたシールリング10の外径(外周面12の径)は、ハウジングの内径よりもやや大きい。このため、シールリング10は、径方向にやや圧縮変形させられた状態で、シャフトとともにハウジングに挿通される。これにより、シールリング10の外周面12がハウジングの内周面に密着する。
【0030】
つまり、シャフト及びハウジングに組み込まれたシールリング10は、シャフトとハウジングとの間に挟まれて径方向に圧縮変形している。このため、シールリング10は、径方向に拡張しようとする弾性力によって、内周面11をシャフトの溝部の底面に押し付け、外周面12をハウジングの内周面に押し付けている。これにより、シールリング10は、シャフトとハウジングとの間を封止することができる。
【0031】
シャフトがハウジングに対して往復摺動する際には、シールリング10の外周面12がハウジングの内周面に対して接触を保ちながら摺動することにより、シャフトとハウジングとの間のシール性が維持される。シールリング10では、外周面12とハウジングの内周面との間の摩擦を低減するために、傾斜面14a,14bが設けられている。
【0032】
傾斜面14a,14bは、側面13a,13bをそれぞれ外周面12に接続している。傾斜面14a,14bは、平面Fに対して傾斜した平坦面として構成され、側面13a,13bから外周面12に向けて相互に近接している。したがって、シールリング10は、側面13a,13bから外周面12に向けて傾斜面14a,14bに沿って徐々に肉薄になり、径方向外向きに突出した形状となっている。
【0033】
シールリング10は、傾斜面14a,14bに沿って肉薄になるにつれて、径方向に圧縮変形しやすくなる。つまり、シールリング10は、外周面12側において径方向に圧縮変形しやすいため、より小さい力によって径方向に圧縮変形する。したがって、シールリング10では、充分に径方向に圧縮変形させられた状態においても、弾性力を小さく留めることができる。
【0034】
これにより、外周面12からハウジングの内周面に加わる押圧力が小さくなるため、外周面12がハウジングの内周面に対して摺動する際の摩擦が低減される。つまり、シールリング10では、ハウジングの内周面に対する外周面12の充分な密着性を得ながらも、ハウジングとの間の摩擦損失を低減することが可能である。
【0035】
図2は、
図1Bを拡大して示す、シールリング10の拡大断面図である。以下、
図2を参照してシールリング10の詳細について説明する。
【0036】
図2には、シールリング10の中心軸E方向の厚さW及び径方向の高さDが示されている。シールリング10の厚さW及び高さDは、シャフトとハウジングとの間を良好に封止可能なように、シャフト及びハウジングの構成に応じて決定される。
【0037】
具体的に、シールリング10の厚さWは、シャフトの溝部の溝幅よりもやや小さく設定される。これにより、シールリング10とシャフトの溝部の壁面との間に適度な間隔が形成され、シールリング10がシャフトの溝部内に適切に収まる。
【0038】
また、シールリング10の高さDは、シールリング10の内径と外径との差によって規定され、シャフトの溝部の底面とハウジングの内周面との間隔に対してやや大きく設定される。これにより、シールリング10を、シャフトの溝部の底面とハウジングの内周面との間で圧縮変形させることができる。
【0039】
外周面12は、
図2に示される接円Cによって規定される円弧形状に形成されている。接円Cは、接続部16a,16bにおいて傾斜面14a,14bに接している。つまり、接円Cの半径Rは、接円Cが傾斜面14a,14bに接するように決定される。これにより、接続部16a,16bにおいて段差や凹凸が生じることなく、外周面12と傾斜面14a,14bとが滑らかに接続される。
【0040】
傾斜面14a,14bは、稜部15a,15bにおいて側面13a,13bに接続され、側面13a,13bを含む平面に対して角度θを成している。稜部15a,15bは、面取りされていてもよく、R面であってもC面であってもよい。
【0041】
傾斜面14a,14bの角度θは適宜決定可能である。
例えば、シールリング10では、傾斜面14a,14bの角度θによって、高さDのうち傾斜面14a,14b及び外周面12が占める範囲を変化させることができる。つまり、傾斜面14a,14bの角度θによってシールリング10における径方向外向きの突出量Hを調整することができる。
【0042】
より詳細には、角度θを小さくして傾斜面14a,14bの側面13a,13bに対する傾斜を緩やかにすると、シールリング10の突出量Hが大きくなる。これにより、シールリング10では、径方向の圧縮変形が生じる範囲が広がるため、径方向に緩やかに圧縮変形が生じる。このため、シールリング10では、より安定した弾性力が得られるため、シール性が向上する。
【0043】
反対に、角度θを大きくして傾斜面14a,14bの側面13a,13bに対する傾斜を急峻にすると、シールリング10の突出量Hが小さくなる。これにより、シールリング10では、径方向の圧縮変形が生じる範囲が狭まるため、全体として変形が生じにくくなる。このため、シールリング10では、油圧が加わった状態においても姿勢が安定しやすくなる。
【0044】
上記の観点から、傾斜面14a,14bの角度θは、0°より大きく、65°未満であることが好ましい。また、傾斜面14a,14bの角度θは、10°〜50°であることが好ましく、20°〜40°であることが更に好ましい。
【0045】
引き続き、
図2を参照しながら、シールリング10の設計方法の一例について説明する。シールリング10の設計では、シャフトやハウジングの構成に応じて幅W及び高さDを決定した後に、接円Cの半径R、傾斜面14a,14bの角度θ、シールリング10の突出量Hを決定することができる。
【0046】
まず、シールリング10の突出量Hの理論上の最大値について検討する。突出量Hを大きくしていくことを想定すると、突出量Hが
図2に示すH1になるときに、傾斜面14a,14bが平面Fにおいて相互に接続され、外周面12が存在しなくなる。つまり、外周面12を存在させるためには、突出量HがH1より小さい必要がある。
【0047】
この条件は、下記の式(1)で表すことができる。
H<W/2tanθ(=H1) …(1)
式(1)を変形すると、下記の式(2)が得られる。
θ<tan
−1(W/2H) …(2)
また、式(2)に、傾斜面14a,14bの角度θがゼロより大きいとの条件を加えると、下記の式(3)が得られる。
0<θ<tan
−1(W/2H) …(3)
【0048】
したがって、本実施形態に係るシールリング10では、予め突出量Hを決定した後に、式(3)を満足するように角度θを決定することができる。
【0049】
次に、接円Cの半径Rの理論上の最大値について検討する。接円Cの半径Rを大きくしていくことを想定すると、接円Cの半径Rが
図2に示すR1になるときに、接続部16a,16bが稜部15a,15bと一致し、傾斜面14a,14bが存在しなくなる。つまり、傾斜面14a,14bを存在させるためには、接円Cの半径RがR1より小さい必要がある。
【0050】
この条件は、下記の式(4)で表すことができる。
R<W/2cosθ(=R1) …(4)
式(4)に、接円Cの半径Rがゼロより大きいとの条件を加えると、下記の式(5)が得られる。
0<R<W/2cosθ …(5)
【0051】
したがって、本実施形態に係るシールリング10では、予め角度θを決定した後に、式(5)を満足するように接円Cの半径Rを決定することができる。
【0052】
1.2 シールリング10の作用効果
図3は、シャフト20及びハウジング30に組み込まれたシールリング10の断面図である。シールリング10は、シャフト20の溝部21に嵌め込まれ、シャフト20とともにハウジング30に挿通されている。
【0053】
上記のとおり、シールリング10は、シャフト20の溝部21の底面22と、ハウジング30の内周面31と、に挟まれて径方向に圧縮変形している。そして、シールリング10は、径方向に拡張しようとする弾性力により、内周面11をシャフト20の溝部21の底面22に押し付け、外周面12をハウジング30の内周面31に押し付けている。
【0054】
これにより、シールリング10は、シャフト20の溝部21の底面22と、ハウジング30の内周面31と、の間を封止している。このように、シャフト20とハウジング30との隙間41,42がシールリング10によって隔てられているため、オイルが隙間41,42間を移動することができない。
【0055】
シールリング10では、上記のとおり、傾斜面14a,14bを設けることにより、径方向の圧縮変形が生じやすくなっている。したがって、シールリング10では、弾性力が抑制され、外周面12がハウジング30の内周面31に対して摺動する際の摩擦が小さく抑えられる。
【0056】
図4は、本実施形態に係るシールリング10の代わりに、本実施形態に関連するDリング110を利用した状態を示している。Dリング110は、外周面112が凸状の半円形状に形成され、D字状の断面を有する。Dリング110では、外周面112が側面113a,113bに直接接続されている。
【0057】
つまり、Dリング110では、本実施形態に係るシールリング10の傾斜面14a,14bに対応する構成が設けられていない。
【0058】
Dリング110も、本実施形態に係るシールリング10と同様に、径方向に圧縮変形している。このため、Dリング110は、径方向に拡張しようとする弾性力により、内周面111をシャフト20の溝部21の底面22に押し付け、外周面112をハウジング30の内周面31に押し付けている。
【0059】
これにより、Dリング110は、シャフト20の溝部21の底面22と、ハウジング30の内周面31と、の間を封止している。このように、シャフト20とハウジング30との隙間41,42がDリング110によって隔てられているため、オイルが隙間41,42間を移動することができない。
【0060】
ところが、Dリング110では、全体的に厚みが大きいため、径方向の圧縮変形が生じにくい。つまり、
図4に示すDリング110では、
図3に示すシールリング10と同程度の径方向の圧縮変形を得るために、シャフト20及びハウジング30からより大きい力を受けている。したがって、
図4に示すDリング110の弾性力は、
図3に示すシールリング10の弾性力より大きい。
【0061】
このため、
図4に示すDリング110の外周面112からハウジング30の内周面31に加わる押圧力は、
図3に示すシールリング10の外周面12からハウジング30の内周面31に加わる押圧力より大きい。したがって、Dリング110の外周面112では、本実施形態に係るシールリング10の外周面12よりも、ハウジング30の内周面31に対する摩擦が大きくなる。
【0062】
このように、本実施形態に係るシールリング10では、Dリング110よりも、ハウジング30との間の摩擦損失が低減される。
【0063】
図5は、
図3に示す状態からシャフト20とハウジング30との隙間41にオイルが流入し、シールリング10に油圧が加わっている状態を示している。
【0064】
このとき、シールリング10では、一方の側面13bに油圧が加わり、他方の側面13aがシャフト20の溝部21の壁面に押し付けられる。これにより、シールリング10では、内周面11に加えて側面13aもシャフト20の溝部21に密着するため、シャフト20との間のシール性が更に向上する。
【0065】
また、シールリング10には、油圧を受けることにより、クリープ現象などによる変形が生じる。より詳細に、シールリング10では、側面13b及び傾斜面14bが油圧を受けると、側面13a,13b間で圧縮された部分が、油圧を受けない傾斜面14a側に押し出される。これにより、シールリング10には、
図5に示すようなクリープ変形が生じる。つまり、外周面12が側面13a側に寄せられるとともに、傾斜面14aが隆起する。
【0066】
シールリング10では、傾斜面14a,14bに沿って肉薄になっているため、傾斜面14a,14bに隣接する位置に形成される楔状の空間S(
図3参照)」が比較的大きい。したがって、シールリング10に上記のような変形が生じても、シールリング10が楔状の空間S内に収まる。このため、変形後のシールリング10が、楔状の空間Sを超えて、シャフト20とハウジング30との隙間41,42に進入することを防止することができる。
【0067】
一方、
図6は、
図4に示す状態からシャフト20とハウジング30との隙間41にオイルが流入し、Dリング110に油圧が加わっている状態を示している。
【0068】
Dリング110では、側面113bが油圧を受けると、側面113a,113b間で圧縮された部分が外周面112側に押し出される。これにより、Dリング110には、
図6に示すようなクリープ変形が生じる。つまり、外周面112の頂部が側面113a側に寄せられるとともに、外周面112における油圧を受けない側面113a側の部分が隆起する。
【0069】
Dリング110では、本実施形態に係るシールリング10の傾斜面14a,14bに対応する構成が設けられておらず、外周面112に隣接する楔状の空間S(
図4参照)が小さい。したがって、Dリング110に上記のような変形が生じると、Dリング110が楔状の空間Sに収まりきらずに、シャフト20とハウジング30との隙間41,42に進入する場合がある。
【0070】
このような場合に、変形後のDリング110が、隙間41,42においてシャフト20とハウジング30との間に挟まると、シャフト20のハウジング30に対する往復摺動に支障をきたす虞がある。更に、Dリング110に発生する隆起が破断すると、油圧機器への破片の混入が発生する虞がある。
【0071】
1.3 シールリング10の変形例
シールリング10の構成は、上記の作用効果が得られる範囲内で、適宜変更可能である。
具体的に、外周面12は、円弧形状に限らず、径方向外向きに突出していればよい。例えば、外周面12の曲率は、一定でなくてもよく、連続的に変化していてもよい。
また、傾斜面14a,14bは、厳密に平坦である必要はなく、例えば、凸状や凹状に湾曲していてもよい。
更に、内周面11の形状は、円筒形状に限らず、例えば、凸状や凹状に湾曲していてもよい。
加えて、シールリング10の形状は、厳密に平面Fについて対称でなくてもよい。例えば、外周面12が側面13a,13bの一方の側にずれていてもよい。
【0072】
1.4 ハウジング30
図7は、本実施形態に係るシールリング10が装着されたシャフト20をハウジング30に挿通させる操作を説明するための図である。ハウジング30は、本実施形態に係るシールリング10が装着されたシャフト20を、端面32に設けられた挿入口からスムーズに挿通させることができるように構成されている。
【0073】
ハウジング30に挿通させる前のシャフト20に装着されたシールリング10では、外周面12がハウジング30の内周面31を超えて突出している。したがって、シャフト20をシールリング10とともにハウジング30に挿通させるためには、シールリング10を径方向に圧縮変形させる必要がある。
【0074】
この点、ハウジング30には、端面32と内周面31とを接続する面取部33が設けられている。面取部33は、典型的には、端面32と内周面31とが直交する縁部を面取りすることにより形成される。ハウジング30の面取部33の端面32に対する角度φは、シールリング10の傾斜面14a,14bの角度θより大きい。
【0075】
シャフト20をハウジング30の端面32から挿入していくと、やがてシールリング10がハウジング30の端面32まで到達し、シールリング10の外周面12がハウジング30の面取部33に当接する。そのままシャフト20をハウジング30に押し込むと、外周面12が面取部33に沿って内周面31に向けて移動する。これに伴い、シールリング10が面取部33から押圧されて徐々に径方向に圧縮変形する。
【0076】
そして、シールリング10の外周面12がハウジング30の内周面31に到達し、
図3に示す状態となる。このように、シャフト20をハウジング30に押し込む操作のみによって、シールリング10を径方向に圧縮変形させながら、シャフト20をハウジング30にスムーズに挿通させることができる。
【0077】
図8は、本実施形態に係るハウジング30の代わりに、本実施形態に関連するハウジング130を利用した状態を示している。ハウジング130では、端面32と内周面31とが直交する縁部133が面取りされていない。
【0078】
シャフト20をハウジング130の端面132から挿入していくと、やがてシールリング10がハウジング130の端面132まで到達し、シールリング10の外周面12又は傾斜面14aがハウジング30の縁部133に当接する。ハウジング30の縁部133は、シールリング10に対してシャフト20の押し込み方向とは反対の反力を加える。
【0079】
このため、ハウジング130ではシャフト20を挿通させにくい。また、シールリング10をハウジング130の内周面131に到達させるために、シャフト20をハウジング130に強い力で押し込むと、シールリング10に無理な力が働きやすい。これにより、シールリング10に損傷が加わる虞がある。
【0080】
2.第2の実施形態
本発明の第2の実施形態に係るシールリング10は、摺動面が外周面12ではなく内周面11である点で第1の実施形態とは異なる。第2の実施形態では、第1の実施形態に対応する構成には第1の実施形態と同一の符号を用い、第1の実施形態と共通の構成についての説明を適宜省略する。
【0081】
図9A,9Bは、第2の実施形態に係るシールリング10を示す図である。
図9Aはシールリング10の平面図であり、
図9Bはシールリング10の
図9AのB−B'線に沿った断面図である。本実施形態に係るシールリング1は、
図1A,1Bに示す第1の実施形態の構成と径方向の内側と外側とを反転させた構成となっている。
【0082】
つまり、内周面11は、径方向内側を向き、径方向内向きに突出した樽状の曲面として構成されている。外周面12は、径方向外側を向く円筒面として構成されている。傾斜面14a,14bは、側面13a,13bの内周面11側に設けられ、側面13a,13bをそれぞれ内周面11に接続している。
【0083】
図10Aは、シャフト20及びハウジング30に組み込まれたシールリング10の断面図である。ハウジング30の内周面31には、シールリング1が嵌め込まれる溝部34が設けられている。
図10Aに示す状態では、シールリング10が嵌め込まれたハウジング30にシャフト20が挿通されている。
【0084】
シールリング10は、径方向に圧縮変形し、ハウジング30の溝部34の底面と、シャフト20の外周面と、の間を封止している。このように、シャフト20とハウジング30との隙間41,42がシールリング10によって隔てられているため、オイルが隙間41,42間を移動することができない。
【0085】
図10Bは、
図10Aに示す状態からシャフト20とハウジング30との隙間41にオイルが流入し、シールリング10に油圧が加わっている状態を示している。
図10Bに示すように、シールリング10では、油圧を受けることによって傾斜面14a,14bに変形が生じても、傾斜面14a,14bが隙間41,42に進入することを防止できる。
【0086】
3.その他の実施形態
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0087】
例えば、本発明のシールリング10の構成は、オイルのみならず、オイル以外の液体やガスのシールにも有用である。