【実施例】
【0085】
以下、本実施形態を実施例によりさらに具体的に説明するが、本実施形態はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
尚、実施例及び比較例において行われた測定方法は以下のとおりである。
【0086】
[各種物性の測定方法]
各種物性の測定方法は下記のとおりである。
(1)ゼオライトの構造タイプ
粉末回折X線装置(Rigaku製、商品名「RINT」)を用いて、ゼオライトのX線回折パターンを測定し、公知のゼオライトの回折パターンを参照することで構造タイプを同定した。測定条件は、Cu陰極、管球電圧:40kV、管球電流:30mA、スキャンスピード:1deg/minに設定した。
【0087】
(2)ゼオライトのシリカ/アルミナ(SiO
2/Al
2O
3)モル比
ゼオライトを水酸化ナトリウム溶液に完全に溶解した溶解液を準備した。その溶解液中に含まれるSi及びAlの量をICP(誘導結合プラズマ)発光分析装置(Rigaku製、商品名「JY138」)を用いて常法により測定し、その結果からシリカ/アルミナモル比を導出した。測定条件は、高周波パワー:1kw、プラズマガス:13L/min、シースガス:0.15L/min、ネブライザーガス:0.25L/min、Si測定波長:251.60nm、Al測定波長:396.152nmに設定した。
【0088】
(3)ゼオライトの結晶化指数
ゼオライトの結晶化指数を、X線回折スペクトルから求められるMFI型ゼオライトに特徴的な2θが23〜24度の4本のピーク強度の総和と、測定の際に加えられる内部標準物質であるルチル型チタニア由来の2θ=27.4度のピークの強度との比で示されるものとして、次のように求めた。
【0089】
ゼオライト(又は、シリカ成形体触媒)に、ルチル型チタニアをゼオライト乾燥質量に対する質量比で、5:1となるように秤量し、添加した。この混合固体を自動式乳鉢で30分間らいかいして均一な粉末とした。得られたサンプルを、一般的なX線回折測定方法により、2θ=20〜30degの測定範囲を計測した。得られたX線回折スペクトルからMFI型ゼオライトに特徴的なピークである、23.06,23.22,23.70,23.90degの4本のピーク強度(単位cps)の総和(a)及びルチル型チタニア由来の27.42degのピーク強度(b)を求めて、結晶化指数=(a)/(b)を算出した。
【0090】
(4)シリカ成形体触媒の平均粒子径
シリカ成形体触媒の平均粒子径は、レーザー回折・散乱式粒度分布計(マイクロトラックベル社製、商品名「MT3000」)を用い、付属のマニュアルに従い、平均粒子径を測定した。
【0091】
(5)シリカ成形体触媒粒子の断面積に対する空孔部の面積の割合(空孔面積率)
シリカ成形体触媒粒子をポリエステル樹脂に包埋した後、それを研磨して触媒粒子の断面を削り出した。次に、画像処理システム(旭化成工業製、高精細画像解析ファイリングシステム、商品名「IP−1000」)を付設した電子顕微鏡(SEM、株式会社日立製作所製、商品名「S−800」)を用いて、削り出した触媒粒子の断面を観察した。この際、触媒の粒子の平均粒子径に対して直径が±10%の範囲にある粒子を選択し、球状粒子の表面部分でなく、中心に近い断面について観測するようにした。選択した粒子について、800〜2000倍の倍率で観察した粒子1個の断面積とその粒子の断面における空孔部の面積とを画像解析装置により測定し、粒子の断面積に対する空孔部の面積の割合を計算した。その一連の操作を100個の触媒の粒子について行い、算術平均(相加平均)したものを粒子の断面における空孔面積の割合とした。ここで、観測する球状粒子が空孔を有する場合、上述の「粒子の断面積」は空孔部分の面積を含む値とした。また、空孔が破裂したような形状の場合、「破裂」により円周の一部が切れた部分(開口部)の両端を、開口部を塞ぐようにして直線で結び、その直線と粒子の外周によって囲まれた範囲の面積を粒子の断面積とした。
【0092】
(6)シリカ成形体触媒の嵩密度
カサ比重測定器(筒井理化学器機(株)製、型式「Z−2504」)を用いて、常法により測定した。
【0093】
(7)シリカ成形体触媒のリン及び亜鉛の含有量
蛍光X線分析装置(Rigaku製、商品名「RIX3000」)を用いて、常法により測定した。その際の測定条件としては、P−Kα線を用い、管球電圧:50kV、管球電流:50mAとした。
【0094】
(8)シリカ成形体触媒の摩耗損失
噴流式流動装置として、ガス導入口に0.4mm孔三個を有するオリフィスを設置した、内径35mm、長さ700mmの粉体上昇部と、内径110mm、長さ600mmの粉体分離部と、微粉末捕集部とを備えるものを準備した。室温で水分2.5gを含むシリカ成形体触媒粒子52.5gを噴流式流動装置内に投入後、蒸気圧相当量の水分を含む空気を5.8NL/分でガス導入口から流通し、測定開始後0〜5時間、5〜20時間、20〜70時間に微粉末捕集部に回収されたシリカ成形体触媒微粉末の質量を測定した。磨耗損失は2段階で評価し、それぞれ下式に従って求められる値とした。
短期摩耗損失(質量%)=A/(B−C)×100
長期摩耗損失(質量%)=(A+D)/(B−C)×100
(上記式において、Aは測定開始後5〜20時間に回収されたシリカ成形体触媒微粉末の質量(g)を示し、Cは測定開始後0〜5時間に回収されたシリカ成形体触媒微粉末の質量(g)を示し、Dは測定開始後20〜70時間に回収されたシリカ成形体触媒微粉末の質量(g)を示し、Bは試験に供したシリカ成形体触媒の全質量(g)を示す。)
【0095】
(9)腐食指数
シリカ成形体触媒を圧縮成形機により押し固めた後、6〜16メッシュの粒子になるように砕いた。石英反応管に前記粒子12gをステンレス鋼(SUS304)の試験片(20mm×10mm、厚さ1mm)と共に充填した。前記石英反応管に水蒸気80vol%と窒素20vol%からなるガスを流しながら550℃で7日間保持した。試験後の試験片を顕微鏡により観察し、以下の式に従って腐食指数を測定した。
腐食指数=腐食孔数(個/cm
2)×平均腐食孔径(μm)×平均腐食深さ(μm)
(前記腐食孔数は前記試験後の試験片1cm
2当たりの腐食により生じた孔の数とした。前記平均腐食孔径は腐食により生じた孔の孔径を測定し、その算術平均値として得た。前記平均腐食深さは前記試験後の試験片を切断し、得られた断面から腐食により生じた孔の深さを測定し、その算術平均値として得た。)
【0096】
(10)コーク量測定
反応に供したシリカ成形体触媒に付着した炭素堆積物(コーク)の量は、日本ブルカー製の熱重量測定装置、「TG−DTA2000」を用いて、以下の条件で測定を行い、コーク燃焼前後の重量変化により求めた。
サンプル量:30mg
雰囲気 :AIR
測定条件 :10℃/分で200℃まで昇温後40分保持、
さらに10℃/分で700℃まで昇温後60分保持
【0097】
[実施例1]
流動床用触媒の調製
[原料ゼオライトの水熱合成]
特3号珪酸ソーダ(富士化学(株)製、SiO
225質量%、Na
2O8質量%)92kgに水95kgと硫酸アルミニウム16水和物7.3kg、及び硫酸(純度97%)3.0kgと、1,3−ジメチル尿素1.15kgを水150kgに溶かした溶液を攪拌しながら加えて均質なゲルを得た。このゲルを600リットルのオートクレーブに仕込み、攪拌しながら160℃で30時間水熱合成し、Na型ZSM−5ゼオライトスラリーを得た。このスラリーの濾過、水洗を濾液pHが9以下になるまで繰り返した後、120℃で20時間乾燥し、その後、550℃で3時間、空気中で焼成してNa型ZSM−5ゼオライト粉末を得た。
特3号珪酸ソーダ92kgに水245kgと硫酸アルミニウム16水和物7.3kg、及び硫酸(純度97%)3.8kg、そして、上記で得られたNa型ZSM−5ゼオライト粉末3kgを加えて、均質なゲルを得た。このゲルを600リットルのオートクレーブに仕込み、攪拌しながら150℃で10時間水熱合成し、種スラリーを得た。
次に、特3号珪酸ソーダ92kgに水245kgと硫酸アルミニウム16水和物3.5kg、及び硫酸(純度97%)4.9kg、そして、上記で得られた種スラリー167kgを加えて、均質なゲルを得た。このゲルを600リットルのオートクレーブに仕込み、攪拌しながら160℃で45時間水熱合成し、結晶化させた。
得られたスラリーを遠心濾過しながら、pHが9以下になるまで水洗した後、120℃で20時間乾燥し、その後、550℃で3時間、空気中で焼成してNa型ZSM−5ゼオライト粉末を得た。更に、この乾燥物を1規定硝酸水溶液中に10質量%スラリーとして、室温下、3時間イオン交換した後、遠心濾過しながら、pHが4.5以上になるまで水洗した。その後、120℃で20時間乾燥し、H型ZSM―5ゼオライト粉末を得た。
得られたH型ZSM−5ゼオライト5gにルチル型チタニア1gを添加し、電動乳鉢にて30分間らいかいしたサンプルのX線回折スペクトルを
図1に示す。X線回折の測定結果から、H型ZSM−5ゼオライトの結晶化指数を求めたところ3.73であった。また、そのシリカ/アルミナモル比(SAR)は40であった。
【0098】
[流動床触媒成型]
(工程1:原料混合物スラリーの調製)
34質量%のコロイダルシリカ(ナルコ社製)882gを撹拌しながら、61質量%硝酸水溶液(和光純薬製、特級試薬)18gを添加しpH=1とした後、水溶性化合物として硝酸アンモニウム(和光純薬製、特級試薬)100gをさらに添加した。このシリカ溶液を撹拌しながら、上記で得られたゼオライト300gを加え、最後に水1034gを加えて、30質量%の原料混合物を調製し、この原料混合物を25℃でさらに1時間撹拌した。
【0099】
(工程2:噴霧乾燥工程)
前記原料混合物を、スプレードライヤー(大川原化工機製、型式OC−16)を用いて噴霧乾燥することにより乾燥体を得た。噴霧は回転円盤方式を用い、熱風入口温度230℃、出口温度130℃で行った。
【0100】
(工程3:前焼成工程)
工程2で得られた噴霧乾燥体をマッフル炉にて、空気雰囲気下350℃で1時間焼成し、工程1で添加した硝酸アンモニウムが除去され、ゼオライトとシリカのみで構成される脱硝品を調製した。
【0101】
(工程4:リン担持処理工程)
得られた脱硝品へのリン酸塩の担持を以下のとおり行った。
9.8gのリン酸水素二アンモニウム(和光純薬製、特級試薬、水100gに対する溶解度:131g(15℃))をイオン交換水に溶解し、リン酸塩水溶液188gを調製した。粉体攪拌機(愛知電気(株)製、ロッキングミキサー)に前記脱硝品510gを充填し粉体を流動させながら、リン酸塩水溶液を25℃において均等に噴霧した。前記乾燥体はスラリー状にはならず、粉末状態を維持していた。
【0102】
(工程5:本焼成工程)
得られたリン酸塩を担持した脱硝品をマッフル炉にて、空気雰囲気下700℃で1時間焼成し、リン担持シリカ成形体触媒を得た。
【0103】
(工程6:亜鉛担持処理工程)
2Lのナスフラスコ内に46.4gの硝酸亜鉛・六水和物(和光純薬製、特級試薬)を加え、500gのイオン交換水に溶解した。続いて、工程5で得られたリン担持焼成済シリカ成形体触媒500gをナスフラスコに加え、80℃、250mmHgの圧力下で減圧乾燥し、亜鉛担持乾燥体を得た。
【0104】
(工程7:再焼成工程)
得られた亜鉛担持乾燥体をマッフル炉にて、空気雰囲気下600℃で1時間焼成し、亜鉛・リン担持シリカ成形体触媒Aを得た。
【0105】
得られた流動床触媒Aの各種物性値を測定した。尚、触媒Aに含まれるゼオライトの結晶化指数は、シリカ、リン、亜鉛の含有量から推定されるゼオライト含有量、又は成形体を完全溶解して測定したAl量及びゼオライトのシリカアルミナ比を基準に、成形体触媒に添加するチタニア量を算出して測定した。前者の測定方法より求められる結晶化指数を結晶化指数(1)とし、後者の測定方法により求められる結晶化指数を結晶化指数(2)とし、それぞれ下記7)に示した。
1)シリカ成形体触媒のリン、亜鉛元素含有量は、P=0.44質量%、Zn=2.0質量%であった。
2)シリカ成形体触媒の平均粒子径は、51μmであった。
3)シリカ成形体触媒の嵩密度は、0.93g/cm
3であった。
4−1)シリカ成形体触媒粒子の短期摩耗損失は、0.2質量%であった。
4−2)シリカ成形体触媒粒子の長期摩耗損失は、0.65質量%であった。
5)シリカ成形体触媒粒子の空孔面積率は、5%であった。
6)高温水蒸気雰囲気下のステンレス鋼の腐食指数は、3000であった。
7)シリカ成形体触媒中のゼオライトの結晶化指数(1)は3.70であり、結晶化指数(2)は3.75であった。
【0106】
上記の通り、シリカ成形体触媒Aは、流動床触媒に適した形状、強度を有し、特に、長期にわたる耐摩耗性に優れており、高温水蒸気雰囲気下で長時間運転する際にもステンレス鋼の材質腐食が起こりにくい。
【0107】
[流動床反応評価結果]
上記で得られた成形体触媒A;22.2gを、内径23.9mmφで、触媒支持ガス供給器としてのSUS製金網(目開き10μm)、温度計鞘管を設置しているステンレス製流動床型反応器(有効断面積4.16cm
2)に充填し、温度525℃、圧力0.14MPaG、93質量%エタノール(残りは水分)を流量16.7g/hrの条件、ガス線速度(LV)1.35cm/sec、接触時間4.3sec(尚、LV、接触時間は、供給エタノール1モルから水、エチレンが各々、1モル生成するとして求めた。)にてエタノール転化反応を行った。原料供給開始から反応生成物を反応器出口から直接ガスクロマトグラフィー(TCD、FID検出器)に導入して組成を分析した。
尚、ガスクロマトグラフ(GC)による分析は以下の条件で行った。
【0108】
(ガスクロマトグラフ分析条件)
装置: 島津製作所社製GC−17A
カラム:米国SUPELCO社製カスタムキャピラリーカラム SPB−1(内径 0.25mm、長さ 60m、フィルム厚 3.0μm)
サンプルガス量: 1mL(サンプリングラインは200〜300℃に保温)
昇温プログラム: 40℃で12分間保持し、次いで5℃/分で200℃まで昇温した後、200℃で22分間保持する。
スプリット比: 200:1
キャリアーガス(窒素)流量:120mL/分
FID検出器:エアー供給圧 50kPa(約500mL/分)、水素供給圧 60kPa(約50mL/分)
測定方法:TCD検出器とFID検出器を直列に連結して、水素及び炭素数1及び2の炭化水素をTCD検出器で検出し、炭素数3以上の炭化水素をFID検出器で検出する。分析開始10分後に、検出の出力をTCDからFIDに切り替える。
適宜、反応生成物の分析を実施しながら、24時間継続して反応を行なった。24時間目の反応成績で比較した結果を表1に示す。
【0109】
[比較例1]
触媒として、実施例1に記したシリカ成形体触媒の調製手順のうち、工程3、4を実施しない(Pを含んでいない)触媒(シリカ成形体触媒B)を用いたほかは、実施例1と同様に、流動床型式エタノール転化反応を実施した。結果を表1に示す。
【0110】
尚、得られたシリカ成形体触媒Bの各種物性値を測定した結果は次のとおりであった。
1)シリカ成形体触媒のリン、亜鉛元素含有量については、P=0.0質量%、Zn=2.0質量%であった。
2)シリカ成形体触媒の平均粒子径は、51μmであった。
3)シリカ成形体触媒の嵩密度は、0.93g/cm
3であった。
4−1)シリカ成形体触媒粒子の短期摩耗損失は、0.26質量%であった。
4−2)シリカ成形体触媒粒子の長期摩耗損失は、0.72質量%であった。
5)シリカ成形体触媒粒子の空孔面積率は、5%であった。
6)高温水蒸気雰囲気下のステンレス鋼腐食指数は、0であった。
【0111】
[比較例2]
実施例1と同様に触媒を調製し、工程6、7を実施しない(Znを含んでいない)触媒(シリカ成形体触媒C)を用いたほかは、実施例1と同様に、流動床型式エタノール転化反応を実施した。結果を表1に示す。
【0112】
尚、得られたシリカ成形体触媒Cの各種物性値を測定した結果は次のとおりであった。
1)シリカ成形体触媒のリン、亜鉛元素含有量は、P=0.46質量%、Zn=0質量%
2)シリカ成形体触媒の平均粒子径は、52μmであった。
3)シリカ成形体触媒の嵩密度は、0.93g/cm
3であった。
4−1)シリカ成形体触媒粒子の短期摩耗損失は、0.2質量%であった。
4−2)シリカ成形体触媒粒子の長期摩耗損失は、0.7質量%であった。
5)シリカ成形体触媒粒子の空孔面積率は、6%であった。
6)高温水蒸気雰囲気下のステンレス鋼の腐食指数は、3000であった。
【0113】
【表1】
【0114】
なお、「BZ」はベンゼンを示し、「Aromatics」は芳香族炭化水素含有化合物を示し、「TOL」はトルエンを示し、「C8A」は炭素数8の芳香族炭化水素含有化合物を示し、「C9A」は炭素数9の芳香族炭化水素含有化合物を示す(以下同様)。また、表1の結果に基づいて反応開始から12時間経過時の炭化水素基準収率を触媒ごとに示したグラフを
図2に示す。
【0115】
実施例1及び比較例1から、本実施形態のシリカ成形体触媒は、リンを含有する事により、芳香族炭化水素含有化合物収率が高く、また、極めて高い耐コーキング劣化性能を発現していることが判る。さらに、実施例1及び比較例2から、本実施形態のシリカ成形体触媒は、亜鉛を含有することにより、芳香族炭化水素含有化合物収率が高い事が判る。
【0116】
[実施例2]
[原料ゼオライトの水熱合成]
珪酸エチル130gをエタノール278gに溶解させた液に、硫酸アルミニウム16水和物1.5gを溶解させた10質量%テトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液291gを添加した。この混合液をホモジナイザーにて5000rpmで10分間混合攪拌し、均一な透明液を得た。この溶液の350gを1リットルオートクレーブに仕込み、500rpmで攪拌しながら125℃で110時間水熱合成し、結晶化させた。
得られたスラリーを濾過しながら、pHが9以下になるまで水洗した後、120℃で20時間乾燥し、その後、550℃で3時間、空気中で焼成した。更に、この乾燥物を1規定硝酸水溶液中に10質量%スラリーとして室温下、3時間イオン交換した後、濾過水洗した。その後、120℃で10時間乾燥し、H型ZSM―5ゼオライト粉末を得た。
得られたH型ZSM−5ゼオライト5gにルチル型チタニア1gを添加し、電動乳鉢にて30分間らいかいしたサンプルのX線回折スペクトルを
図3に示す。X線回折の測定結果から、H型ZSM−5ゼオライトの結晶化指数を求めたところ4.37であった。また、そのシリカ/アルミナモル比は290であった。
【0117】
[流動床触媒成型]
(工程1:原料混合物スラリーの調製)
実施例1の工程1において、使用するゼオライトを上記で得られたシリカ/アルミナモル比290のゼオライトに代えた以外は同様に行い、原料混合物スラリーを調製した。
【0118】
(工程2:噴霧乾燥工程)
得られた原料混合物スラリーに対し、実施例1の工程2と同様の条件で噴霧乾燥を行い、乾燥体を得た。
【0119】
(工程3:前焼成工程)
工程2で得られた噴霧乾燥体をマッフル炉にて、空気雰囲気下350℃で1時間焼成し、工程1で添加した硝酸アンモニウムが除去され、ゼオライトとシリカのみで構成される脱硝品を調製した。
(工程4:リン担持処理工程)
得られた脱硝品へのリン酸塩の担持を以下のとおり行った。
2.5gのリン酸水素二アンモニウムをイオン交換水に溶解し、リン酸塩水溶液152gを調製した。粉体攪拌機に前記脱硝品500gを充填し粉体を流動させながら、リン酸塩水溶液を25℃において均等に噴霧した。前記乾燥体はスラリー状にはならず、粉末状態を維持していた。
【0120】
(工程5:本焼成工程)
得られたリン酸塩を担持した乾燥体を実施例1の工程5と同様の方法で焼成し、リン担持シリカ成形体触媒を得た。
【0121】
(工程6:亜鉛担持処理工程)
得られたリン担持シリカ成形体触媒に対し、実施例1の工程6と同様の方法で亜鉛担持を行い、亜鉛担持乾燥体を得た。
【0122】
(工程7:再焼成工程)
得られた亜鉛担持乾燥体に対し、実施例1の工程7と同様の方法で焼成し、亜鉛・リン担持シリカ成形体触媒Dを製造した。
【0123】
得られた触媒Dの各種物性値を測定した結果は次のとおりであった。
1)シリカ成形体触媒のリン、亜鉛元素含有量は、P=0.11質量%、Zn=2.0質量%であった。
2)シリカ成形体触媒の平均粒子径は、52μmであった。
3)シリカ成形体触媒の嵩密度は、0.93g/cm
3であった。
4−1)シリカ成形体触媒粒子の短期摩耗損失は、0.45質量%であった。
4−2)シリカ成形体触媒粒子の長期摩耗損失は、0.9質量%であった。
5)シリカ成形体触媒粒子の空孔面積率は、7%であった。
6)高温水蒸気雰囲気下の腐食指数は、0であった。
【0124】
得られた触媒Dを用いて、実施例1と同様の方法にて、エタノール転化反応評価実験を実施した。結果を表2に示す。シリカアルミナ比が290と比較的高い触媒においても、結晶化指数の高いゼオライトを得、P/Znを担持した、シリカバインダー触媒とすることで、コーキング劣化耐性を付与する事ができる。
【0125】
【表2】
【0126】
[実施例3]
(シリカ成形体触媒Aのエタノール原料系テスト)
反応時間を48時間とした以外は、実施例1と同様に反応を実施した。48時間の反応を終えた触媒を回収し、電気炉にて580℃で5Hr焼成し、触媒再生を行った。再生完了後の触媒を、再度、反応器に充填し、引き続き、反応に供した。この反応/再生のサイクルを適宜、繰り返しながら、触媒活性の変化を追った。反応結果を
図4に示す。
【0127】
[比較例3]
(シリカ成形体触媒Bのエタノール原料系テスト)
実施例3との比較として、触媒にシリカ成形体触媒Bを用いた以外は、実施例3と同様に反応/再生繰り返し試験を実施した。反応結果を
図4に示す。
【0128】
実施例3及び比較例3から、本実施形態におけるシリカ成形体触媒は、繰り返し反応に伴う劣化に強く、高活性を継続維持できる事、且つ、成形体触媒の摩耗損失テストからもわかるように、触媒の損耗も少ない。かかる特徴は、工業的に実施する上で極めて効果的である。
【0129】
[実施例4]
(エタンスチームクラッカー想定実験)
エタンスチームクラッカー出口に本実施形態における流動床反応(流動床接触環化反応)器を接続する方法を模擬する運転条件として、エチレン/水素/窒素/水を供給し、触媒Aを用い、反応/再生サイクルテストを2回実施した。なお、エタンを含むパラフィン系炭化水素は、ほぼ、イナートゆえ窒素で代替することとした。
エチレン供給速度 0.176 mol/Hr(23.8mol%)
水素 供給速度 0.176 mol/Hr(23.8mol%)
窒素 供給速度 0.143 mol/Hr(19.3mol%)
水 供給速度 0.244 mol/Hr(33.1mol%)
(反応条件)
反応温度:525℃ 反応圧力:0.14MPaG 触媒量:22.2g
LV:1.35cm/sec 接触時間:4.29秒
反応結果を表3及び
図5に示す。
【0130】
[比較例4]
(エタンスチームクラッカー想定試験比較例)
触媒Bを用いて、実施例4と同様に反応評価を行った。結果を表3及び
図5に示す。
【0131】
【表3】
【0132】
実施例4及び比較例4から、本実施形態においては、原料オレフィン濃度が芳香族炭化水素含有化合物収率、コーキング劣化に影響が大きいことが判るが、オレフィン濃度が比較的低い条件でも、本実施形態におけるシリカ成形体触媒は、繰り返し反応に伴う劣化に強く、高活性を継続維持できる。かかる特徴は、工業的に実施する上で極めて効果的である。
【0133】
[実施例5]
(シリカ成形体触媒Aのメタノール原料系テスト)
実施例1で得られた成形体触媒A;22.6gを、実施例1で用いたステンレス製流動床型反応器に充填し、温度450℃、圧力0.14MPaG、メタノール流量15.5g/hrの条件にてメタノール転化反応を行った。出口製品のGC分析は、実施例1と同様に実施した。結果を表4に示す。
【0134】
【表4】
【0135】
本実施例から、本実施形態の触媒は、メタノールから芳香族炭化水素含有化合物を製造する事にも適している。
【0136】
[実施例6]
(シリカ成形体触媒Dのメタノール原料系テスト)
実施例2で得られた成形体触媒D;22.4gを、実施例1で用いたステンレス製流動床型反応器に充填し、圧力0.14MPaG、メタノール流量15.5g/hrの条件にて、450℃〜500℃まで経時的に温度を上げて、メタノール転化反応を行った(反応開始34時間後に475℃へ温度UP、54時間後に500℃に温度UP)。出口製品のGC分析は、実施例1と同様に実施した。結果を表5に示す。
【0137】
【表5】
【0138】
実施例5及び実施例6からメタノールを原料とした場合、シリカアルミナモル比によって、芳香族炭化水素含有化合物の生成組成が変化することがわかり、特に高いシリカアルミナ比のゼオライトを選択することにより、工業的に主要な芳香族成分であるC6〜C8の芳香族炭化水素含有化合物が多く得られる傾向にある。
【0139】
[実施例7]
[流動床触媒成型]
(工程1:原料混合物スラリーの調製)
実施例1の工程1において、使用するゼオライトをゼオリストインターナショナル社のZD03030(シリカ/アルミナモル比42)に代えた以外は同様に行い、原料混合物スラリーを調製した。また、このゼオライト5gにルチル型チタニア1gを添加し、電動乳鉢にて30分間らいかいしたサンプルのX線回折スペクトルを
図6に示す。X線回折の測定結果から、H型ZSM−5ゼオライトの結晶化指数を求めたところ4.45であった。
【0140】
(工程2:噴霧乾燥工程)
得られた原料混合物スラリーに対し、実施例1の工程2と同様の条件で噴霧乾燥を行い、乾燥体を得た。
【0141】
(工程3:前焼成工程)
得られた噴霧乾燥体をマッフル炉にて、空気雰囲気下350℃で1時間焼成し、ゼオライトとシリカのみで構成される脱硝品を調製した。
【0142】
(工程4:リン担持処理工程)
得られた脱硝品へのリン酸塩の担持を以下のとおり行った。
19.8gのリン酸水素二アンモニウムをイオン交換水に溶解し、リン酸塩水溶液170gを調製した。粉体攪拌機に前記脱硝品500gを充填し粉体を流動させながら、リン酸塩水溶液を25℃において均等に噴霧した。前記脱硝品はスラリー状にはならず、粉末状態を維持していた。
【0143】
(工程5:本焼成工程)
得られたリン酸塩を担持した乾燥体を実施例1の工程5と同様の方法で焼成し、リン担持シリカ成形体触媒を得た。
【0144】
(工程6:亜鉛担持処理工程)
得られたリン担持シリカ成形体触媒に対し、実施例1の工程6と同様の方法で亜鉛担持を行い、亜鉛担持乾燥体を得た。
【0145】
(工程7:再焼成工程)
得られた亜鉛担持乾燥体に対し、実施例1の工程7と同様の方法で焼成し、亜鉛・リン担持シリカ成形体触媒Eを製造し、得られた触媒Eの各種物性値を測定した。
1)シリカ成形体触媒のリン、亜鉛元素含有量についは、P=0.90質量%、Zn=2.0質量%であった。
2)シリカ成形体触媒の平均粒子径は、54μmであった。
3)シリカ成形体触媒の嵩密度は、0.92g/cm
3であった。
4−1)シリカ成形体触媒粒子の短期摩耗損失は、0.5質量%であった。
4−2)シリカ成形体触媒粒子の長期摩耗損失は、0.9質量%であった。
5)シリカ成形体触媒粒子の空孔面積率は、5%であった。
6)高温水蒸気雰囲気下の腐食指数は、4800であった。
【0146】
触媒として、シリカ成形体触媒Eを用いたほかは、実施例1と同様に、流動床型式エタノール転化反応を実施した。結果を表6に示す。
【0147】
【表6】
【0148】
実施例7より、市販のゼオライトの中でも、結晶化指数の高いゼオライトを選択する場合、本実施形態の方法により、強度に優れ、長期運転の際にも問題にならない成形体触媒を得る事ができ、また芳香族炭化水素含有化合物収率も高いことがわかる。
【0149】
[比較例5]
[流動床触媒成型]
実施例7の工程1において、水溶性化合物である硝酸アンモニウムを添加しなかった以外は実施例7と同様に行い、シリカ成形体触媒Fを製造し、得られた触媒Fの各種物性値を測定した。
1)シリカ成形体触媒のリン、亜鉛元素含有量についは、P=0.2質量%、Zn=2.0質量%であった。
2)シリカ成形体触媒の平均粒子径は、51μmであった。
3)シリカ成形体触媒の嵩密度は、0.68g/cm
3であった。
4−1)シリカ成形体触媒粒子の短期摩耗損失は、5.6質量%であった。
4−2)シリカ成形体触媒粒子の長期摩耗損失は、9.3質量%であった。
5)シリカ成形体触媒粒子の空孔面積率は、34%であった。
6)高温水蒸気雰囲気下の腐食指数は、3200であった。
【0150】
触媒として、シリカ成形体触媒Fを用いたほかは、実施例1と同様に、流動床型式エタノール転化反応を実施したが、触媒の粉化に起因する、反応器出口フィルターの閉塞による圧力変動、出口ガス分析ラインへの触媒粉混入により、反応評価が困難となり、運転継続は断念せざるを得ず、反応を停止した。
【0151】
比較例5より、本実施形態での規定よりも空孔面積率が高いシリカ成形体は、摩耗損失試験の結果から、強度が大きく劣る。即ち、本実施形態に係る芳香族炭化水素含有化合物の製造方法と同様の反応を工業的に実施する場合、摩耗による触媒粉化による反応器からの飛散、飛散触媒を補填する為に、過剰な触媒量が必要になる事から、安定に芳香族炭化水素含有化合物の製造を実施する事ができず、不利である。
【0152】
[参考例1]
(水蒸気存在下での経年活性劣化確認試験)
本実施形態の触媒の水蒸気存在下での経年劣化挙動は、650℃の水蒸気雰囲気下でゼオライトを処理し、その前後での活性(滴定酸量)を比較する事により、定常活性を想定することができる。ゼオライトの結晶化指数の違いによる差異を以下の参考例、参考比較例にて確認した。
実施例2で合成したH型ZSM−5ゼオライト粉末(結晶化指数4.37)(ゼオライトaとする)を、圧縮成形機により押し固めた後、6〜16メッシュの粒子になるよう砕き、石英反応管にその粒子10gを充填した。その石英反応管に水蒸気80vol%と窒素20vol%からなるガスを流しながら650℃で24時間処理した後、反応管から抜き出し、水蒸気処理ゼオライトa’を得た。
【0153】
ゼオライトa及びa’の酸量を、液相イオン交換/濾液滴定法により分析した。ここで、液相イオン交換/濾液滴定法とは、日本化学会誌、[3],P.521−527(1989)等に記載されている方法である。具体的には、各ゼオライトを乳鉢でらいかいし、120℃の温度で乾燥し、2.5gを精秤した後、4.3mol/LのNaCl水溶液25mL中で2℃、10分間イオン交換を行った。得られた混合物を濾過した後、50mLの純水でゼオライトを洗浄し、洗浄に用いた水を含む濾液を全量回収した。この濾液(洗浄に用いた水を含む)を規定濃度のNaOH水溶液により中和滴定し、中和点から滴定酸量を求めた。結果を表7に示す。
【0154】
[参考比較例]
ゼオリストインターナショナル社のCBV2802(シリカアルミナ比280)を上述の方法により結晶化指数を測定したところ、2.90であった(ゼオライトbとする)。また、参考例1と同様の方法で水蒸気処理を行い、水蒸気処理ゼオライトb’を得た。
【0155】
上記ゼオライトb及び水蒸気処理ゼオライトb’について、参考例1と同様の方法で滴定酸量を求めた。結果を表7に示す。
【0156】
【表7】
【0157】
参考例1及び参考比較例から、水蒸気共存下での気相反応に用いられる本実施形態の触媒に用いられるゼオライトは、結晶化指数の高いものが有利であることが判る。実際には、成形、リン、亜鉛担持、焼成工程等により、活性は制御されるものであるが、原料ゼオライトが、水蒸気による変質を起こさないものである必要がある事が判る。
【0158】
[参考例2]
(反応雰囲気下での亜鉛挙動の確認試験)
触媒Aを圧縮成型し、8〜16メッシュに破砕分級した。得られた、触媒Aの圧縮成型物を内径1インチのステンレス(SUS−316)製反応管に、6g充填した。
しかる後、以下の条件で水素/水/窒素を供給し、時間ごとに触媒上の亜鉛を測定した。エタン分解直結想定での水蒸気濃度での亜鉛逃散挙動を試験したものである。
反応温度:550℃ 反応圧力:0.14MPaG
水素/水/窒素供給濃度=24/42/34 mol%
触媒接触時間 5秒
結果を
図7に示す。
【0159】
本参考例の結果から、本反応系では亜鉛が還元され難く、そのため、亜鉛が飛散する事が抑制されることが判る。従って、従来行われてきたようにアルミナと亜鉛との複合酸化物で安定化させる必要がなく、コーキングにも有利なシリカをバインダーに選択する事が可能である。また、シリカバインダーでの高強度な流動床触媒は得られ難いという従来技術の問題についても、本実施形態によれば、シリカをバインダーに用い、且つ、空孔面積の割合が、粒子の断面積に対して30%以下であるものを製造できるので、強度にも問題はない。これらの特徴は、工業的に実施する上で極めて、有利である。
【0160】
[実施例8]
[流動床評価装置]
図8に示す、再生器と反応器とを接続した装置を、実施例8で使用した。
上記装置について、以下で詳細に説明する。
流動床反応器2では、本実施形態で用いる反応器供給ガス(原料)とシリカ成形体触媒を接触させ、芳香族炭化水素含有化合物(反応ガス)を製造する。
原料や水蒸気は、原料予熱器1にて加熱され、流動床反応器2の下部から供給される。
流動床反応器2としては、特に限定されないが、例えば、菱化製作所(株)製の反応器(内容積:1.12m
3、内径:400mm、材質:SUS304)等を用いることができる。
流動床反応器2には、流動するシリカ成形体触媒を捕集、回収し、シリカ成形体触媒と反応ガスを分離するサイクロン3を具備している。反応ガスと分離された触媒はサイクロン3下部から流動床反応器2に戻される。触媒と分離した反応ガスの流通ラインには、圧力制御弁4を設け、流動床反応器2を所望の圧力に制御する。
反応に供されたコーク付着触媒は触媒捕集堰15で捕集され、配管を通じてストリッパー5に送られる。ストリッパー5の下部からはストリッピングガスとして窒素を流入し、触媒に付随する反応ガスをシリカ成形体触媒から除去する。
ストリッパー5を通過したシリカ成形体触媒は、粉体通過量を制御できるスリット弁6を介して流動床再生器10に送られる。なお、スリット弁6の開度を制御することで、流動床反応器2内のシリカ成形体触媒量を調節することが可能である。
流動床再生器10では、酸素含有ガスを用いて、シリカ成形体に堆積したコークを燃焼除去する。
流動床再生器10としては、特に限定されないが、例えば、菱化製作所(株)製の再生器(内容積:0.7m
3、内径:300mm、材質:SUS304)等を用いることができる。
流動床再生器10で少なくとも一部のコークを燃焼除去されたシリカ成形体触媒は触媒捕集堰15で捕集され、配管を通じてストリッパー13に送られる。ストリッパー13の下部からはストリッピングガスとして窒素を流入し、触媒に付随する再生ガスをシリカ成形体触媒から除去する。
ストリッパー13を通過したシリカ成形体触媒は、反応器と同様の粉体通過量を制御するスリット弁14を介して流動床反応器2に送られる。なお、スリット弁14の開度を制御することで、流動床再生器10内のシリカ成形体触媒量を調節することができる。
スリット弁6及びスリット弁14の開度を適宜調節することで、触媒循環を伴う連続反応−再生評価も実施可能となる。
シリカ成形体触媒に付着したコークを燃焼除去するための酸素含有ガスは、再生ガス予熱器9で加熱され、流動床再生器10の下部に供給される。
流動床再生器10には、流動するシリカ成形体触媒を捕集、回収し、触媒と再生ガスを分離するサイクロン11を具備している。再生ガスと分離された触媒はサイクロン11下部から流動床再生器10に戻される。触媒と分離した再生ガスは、ブロワー7を用いて、循環使用する。その際、触媒に堆積したコークの燃焼によって発生する水蒸気、一酸化炭素、二酸化炭素の蓄積を防ぐために、圧力制御弁12から適宜、再生ガスの一部をパージする。
【0161】
[シリカ成形体触媒の前処理(プレコーキング)]
実施例1の方法に倣い製造したシリカ成形体触媒A:170kgを流動床反応器2に充填し、エチレン73.9kg/hr、水56.6kg/hr、各ノズルパージ、置換に用いられる窒素8.66Nm
3/hrを供給した。供給ガス組成は、エチレン42.7mol%、水51.0mol%、窒素6.3mol%に相当する。流動床反応器2は、内温525℃、圧力0.14MPa・Gの条件に整定されており、ガス線速度は39cm/secであった。10時間後に反応を停止し、流動床反応器2からコーク付着触媒を全量抜き出し、回収した。
さらに170kgの触媒を上記と同様の方法で処理し、反応後に回収したコーク付触媒を、1回目の回収コーク付触媒と混合し、均一化した後、熱重量測定装置を使ってコーク付着量を測定したところ、回収触媒のコーク量は平均1.15質量%であった。
【0162】
[流動床反応評価]
上記前処理により、1.15質量%のコークが堆積したシリカ成形体触媒A:196kgを流動床反応器2に充填し、エチレン73.9kg/hr、水56.6kg/hr、各ノズルパージ、置換に用いられる窒素8.66Nm
3/hrを供給した。供給ガス組成は、エチレン42.7mol%、水51.0mol%、窒素6.3mol%のバイオエタノール想定模擬ガス組成である。流動床反応器2は、内温525℃、圧力0.14MPa・Gの条件に整定されており、ガス線速度は39cm/secであった。
エチレン転化反応中は、流動床反応器2中の触媒の一部を、スリット弁6にて、25kg/hrの排出量に制御して連続的に抜き出し、流動床再生器10に移送した。該抜き出し触媒の流量は、触媒移送配管が具備する流量制御バルブにて調整した。
流動床再生器10には、上記前処理により1.15質量%のコークが堆積したシリカ成形体触媒A:95kgを投入した。
ブロワー7を用いて、再生ガスを循環させながら、適宜、空気/窒素を供給し、入口ガス中の酸素濃度を制御する事で流動床反応器2及び流動床再生器10内の触媒のコーク量を一定に保った。
流動床再生器10では、内温515℃、圧力0.14MPa・G、ガス流速50cm/secの条件で、触媒再生を行った。流動床再生器10の温度は、再生ガス予熱器9を制御することで調整した。
触媒循環を伴う連続反応−再生運転中は、スリット弁6及びスリット弁14の開度を調節して同排出量(25kg/hr)に保ち、流動床反応器2及び流動床再生器10内の触媒量を一定に保った。
適宜、流動床再生器10内の温度、及び酸素濃度計8で測定される再生器入口酸素濃度を制御する事で、反応器中の触媒のコーク堆積量を一定に維持して、20日間、連続反応−再生運転を継続した。
上記条件での経過時間10日後、15日後及び20日後の反応生成物を、反応器出口から直接ガスクロマトグラフィー(TCD,FID検出器)に導入して組成を分析した。反応結果を表8に示す。尚、ガスクロマトグラフ(GC)による分析は、実施例1の分析装置により、解析した。
【0163】
【表8】
【0164】
本実施例8の結果から、シリカ成形体触媒Aを用いることにより、高線速流動、サイクロンでの捕集、触媒移送の際の摩耗による触媒形状破壊を抑制でき、長期に亘り安定的に流動床反応を行うことが可能であることが分かった。また、流動床反応器のシリカ成形体触媒Aの一部を連続的に抜き出して、触媒再生装置にて付着したコークを除去した後に流動床反応器に連続的に戻す連続循環再生を実施することにより、触媒の経時的劣化(コーキング)を抑え、長期に亘り安定的に芳香族炭化水素を高収率で製造することが可能であることが分かった。