(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、油圧ショベルの油圧制御システムを開示している。以下、その詳細を説明する。
【0003】
油圧ショベルの油圧制御システムは、エンジンによって駆動されるメインポンプ及びパイロットポンプと、メインポンプから吐出された圧油によって駆動する油圧アクチュエータ(詳細には、例えばブームシリンダ)と、メインポンプから油圧アクチュエータへの圧油の流れを制御する制御弁と、制御弁を操作するパイロット弁とを備えている。
【0004】
パイロット弁は、パイロットポンプ及び後述するアキュムレータのうちのいずれか一方から供給された圧油の圧力を元圧(一次圧)として、操作レバーの操作量に対応するパイロット圧(二次圧)を生成し、このパイロット圧によって制御弁を操作するようになっている。
【0005】
油圧ショベルの油圧制御システムは、パイロットポンプの吐出側とパイロット弁を接続する油路と、この油路に設けられたポンプ用逆止弁と、油路のポンプ用逆止弁よりパイロットポンプ側に接続されたアンロード弁と、油路のポンプ用逆止弁よりパイロットポンプ側に接続されたリリーフ弁と、油路のポンプ用逆止弁よりパイロット弁側に接続されたアキュムレータと、油路のポンプ用逆止弁よりパイロット弁側に設けられた圧力センサと、コントローラとを更に備えている。
【0006】
ポンプ用逆止弁は、パイロットポンプからパイロット弁及びアキュムレータへの圧油の流れを許容し、アキュムレータからパイロットポンプへの圧油の流れを阻止する。圧力センサは、パイロット弁に供給される圧油の圧力を検出してコントローラへ出力する。
【0007】
コントローラは、圧力センサで検出された圧力に応じてアンロード弁を遮断位置と連通位置に選択的に切換える。アンロード弁が遮断位置である場合は、パイロットポンプから吐出された圧油がパイロット弁及びアキュムレータに供給される。一方、アンロード弁が連通位置である場合は、パイロットポンプから吐出された圧油がアンロード弁を介しタンクに逃がされる。これにより、パイロットポンプの出力を低減するようになっている。
【0008】
アキュムレータは、アンロード弁が遮断位置である場合に(すなわち、パイロットポンプの高出力時に)、パイロットポンプから吐出された圧油の一部を蓄える。一方、アンロード弁が連通位置である場合に(すなわち、パイロットポンプの低出力時に)、パイロット弁へ圧油を供給するようになっている。
【0009】
油圧ショベルの油圧制御システムは、ブームシリンダからの戻り油をアキュムレータへ供給するための回収管路と、回収管路に設けられた回生弁と、回生弁とアキュムレータの間に設けられた回生用逆止弁と、パイロット圧センサとを更に備えている。
【0010】
回生用逆止弁は、回生弁からアキュムレータへの圧油の流れを許容し、アキュムレータから回生弁への圧油の流れを阻止する。パイロット圧センサは、パイロット弁から制御弁へ出力されたパイロット圧を検出してコントローラへ出力する。
【0011】
コントローラは、圧力センサで検出された圧力とパイロット圧センサで検出されたパイロット圧に応じて回生弁を遮断位置と連通位置に選択的に切換える。回生弁が連通位置である場合は、ブームシリンダからの戻り油がアキュムレータに供給される。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の第1の実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0020】
図1は、本実施形態における油圧ショベルの構造を表す図である。
【0021】
本実施形態の油圧ショベルは、車体1とフロント作業装置2を備えている。車体1は、クローラ式の下部走行体3と、下部走行体3の上側に旋回可能に設けられた上部旋回体4とで構成されている。下部走行体3は、左側及び右側の走行モータ5(
図1では、左側の走行モータ5のみ示す)の回転駆動によって走行するようになっている。上部旋回体4は、旋回モータ(図示せず)の回転駆動によって旋回するようになっている。
【0022】
フロント作業装置2は、上部旋回体4の前部に鉛直方向に回動可能に連結されたブーム6と、ブーム6に鉛直方向に回動可能に連結されたアーム7と、アーム7に鉛直方向に回動可能に連結されたバケット8とを備えている。ブーム6、アーム7、及びバケット8は、ブームシリンダ9、アームシリンダ10、及びバケットシリンダ11の伸縮駆動によってそれぞれ回動するようになっている。
【0023】
上部旋回体4の前部には運転室12が設けられ、上部旋回体4の後部には機械室13が設けられている。機械室13には、エンジン14(後述の
図2参照)等の機器が搭載されている。
【0024】
運転室12には、運転者が着座する運転席(図示せず)と、左側及び右側の走行用操作部材(詳細には、図示しないものの、操作ペダル及び操作レバーを一体化したもの)が設けられている。そして、運転者が左側の走行用操作部材を前後方向に操作して左側の走行モータ5の動作を指示し、右側の走行用操作部材を前後方向に操作して右側の走行モータ5の動作を指示するようになっている。
【0025】
また、運転室12には、左側の作業用操作部材(詳細には、図示しないものの、操作レバー)と、右側の作業用操作部材15(詳細には、後述の
図2及び
図3で示すように、操作レバー)が設けられている。そして、運転者が左側の作業用操作部材を前後方向に操作してアームシリンダ10の動作を指示し、左側の作業用操作部材を左右方向に操作して旋回モータの動作を指示するようになっている。また、運転者が右側の作業用操作部材15を前後方向に操作してブームシリンダ9の動作を指示し、右側の作業用操作部材15を左右方向に操作してバケットシリンダ11の動作を指示するようになっている。
【0026】
次に、本実施形態の油圧ショベルの油圧制御システムについて説明する。
図2は、本実施形態における油圧ショベルの油圧制御システムの構成のうち、ブームシリンダ9の駆動に係わるメイン回路の構成を表す図である。
図3は、本実施形態における油圧ショベルの油圧制御システムの構成のうち、ブームシリンダ9の駆動に係わるパイロット回路の構成を表す図である。
図4は、本実施形態におけるコントローラの機能的構成を関連機器と共に表すブロック図である。
【0027】
本実施形態の油圧制御システムは、上述したエンジン14と、エンジン14によって駆動される可変容量型のメインポンプ16及び固定容量型のパイロットポンプ17と、メインポンプ16から吐出された圧油によって駆動するブームシリンダ9(油圧アクチュエータ)と、メインポンプ16からブームシリンダ9への圧油の流れを制御するパイロット操作式の制御弁18と、制御弁18を操作する操作装置19とを備えている。
【0028】
操作装置19は、上述した作業用操作部材15と、操作部材15の前後方向の操作によって作動する一対のパイロット弁20(油圧機器)とを有している。パイロット弁20は、パイロットポンプ17(油圧ポンプ)及び後述するアキュムレータ21のうちのいずれか一方から供給された圧油の圧力を元圧(一次圧)として、操作部材15の操作量に対応するパイロット圧(二次圧)を生成し、このパイロット圧によって制御弁18を操作するようになっている。
【0029】
詳しく説明すると、一方のパイロット弁20は、操作部材15の前側の操作量に対応するパイロット圧Pdを生成し、このパイロット圧Pdを制御弁18の受圧部22Aへ出力して、制御弁18を切換える。これにより、メインポンプ16からブームシリンダ9のロッド側油室に圧油が供給され、ブームシリンダ9のボトム側油室から圧油が排出されて、ブームシリンダ9が縮短する。したがって、ブーム6が下がる。なお、パイロット圧Pdは、後述するパイロット操作式の逆止弁23にも出力される。
【0030】
他方のパイロット弁20は、操作部材15の後側の操作量に対応するパイロット圧Puを生成し、このパイロット圧Puを制御弁18の受圧部22Bへ出力して、制御弁18を切換える。これにより、メインポンプ16からブームシリンダ9のボトム側油室に圧油が供給されて、ブームシリンダ9のロッド側油室から圧油が排出されて、ブームシリンダ9が伸長する。したがって、ブーム6が上がる。
【0031】
制御弁18とブームシリンダ9のロッド側油室は管路24Aで接続されている。制御弁18とブームシリンダ9のボトム側油室は管路24Bで接続され、管路24Bにはパイロット操作式の逆止弁23が設けられている。逆止弁23は、パイロット弁20からのパイロット圧Pdが入力されない場合に、ブームシリンダ9のボトム側油室への圧油の流入を許容するものの、ブームシリンダ9のボトム側油室からの圧油の排出を阻止する(逆流防止機能)。これにより、フロント作業装置2の自重によってブームシリンダ9が縮短するのを防止するようになっている。逆止弁23は、パイロット弁20からのパイロット圧Pdが入力された場合に、前述した逆流防止機能を無効化する。これにより、ブームシリンダ9のボトム側油室からの圧油の排出を許容するようになっている。
【0032】
本実施形態の油圧制御システムは、パイロットポンプ17の吐出側とパイロット弁20を接続する油路25Aと、油路25Aに設けられたポンプ用逆止弁26と、油路25Aのポンプ用逆止弁26よりパイロットポンプ17側に油路25Bを介し接続されたアンロード弁27(ポンプ出力切換装置)と、油路25Aのポンプ用逆止弁26よりパイロット弁20側に油路25Cを介し接続されたアキュムレータ21と、油路25Aのポンプ用逆止弁26よりパイロット弁20側に油路25Dを介し接続されたリリーフ弁28と、油路25Aのポンプ用逆止弁26よりパイロット弁20側に設けられた圧力センサ29と、コントローラ30とを更に備えている。
【0033】
ポンプ用逆止弁26は、パイロットポンプ17からパイロット弁20及びアキュムレータ21への圧油の流れを許容し、アキュムレータ21からパイロットポンプ17への圧油の流れを阻止する。
【0034】
アンロード弁27は、遮断位置と連通位置に選択的に切換わることで、パイロットポンプ17を高出力と低出力に選択的に切換える。詳しく説明すると、アンロード弁27が遮断位置である場合は、パイロットポンプ17から吐出された圧油がパイロット弁20及びアキュムレータ21に供給される。一方、アンロード弁27が連通位置である場合は、パイロットポンプ17から吐出された圧油がアンロード弁27を介しタンクに逃がされる。これにより、パイロットポンプ17の出力を低減するようになっている。
【0035】
アキュムレータ21は、アンロード弁27が遮断位置である場合に(すなわち、パイロットポンプ17の高出力時に)、パイロットポンプ17から吐出された圧油の一部を蓄える。一方、アンロード弁27が連通位置である場合に(すなわち、パイロットポンプ17の低出力時に)、パイロット弁20へ圧油を供給するようになっている。
【0036】
リリーフ弁28は、パイロット弁20に供給される圧油の圧力Piが規定圧(本実施形態では、後述する上限値Phと同じ)を超えないように制限する。すなわち、リリーフ弁28は、圧力Piが規定圧を超えた場合に、油路25Aの圧油をタンクへ逃がすようになっている。圧力センサ29は、パイロット弁20に供給される圧油の圧力Piを検出してコントローラ30へ出力する。
【0037】
コントローラ30は、プログラムに基づいて演算処理や制御処理を実行する演算制御部(例えばCPU)と、プログラムや演算処理の結果を記憶する記憶部(例えばROM、RAM)等を有するものである。コントローラ30は、機能的構成として、ポンプ出力制御部31及び異常判定部32を有している。
【0038】
コントローラ30のポンプ出力制御部31は、圧力センサ29で検出された圧力Piに応じてアンロード弁27を制御する。その詳細を、
図5を用いて説明する。
図5は、本実施形態におけるコントローラ30のポンプ出力制御部31の処理内容を表すフローチャートである。
【0039】
ステップS101にて、ポンプ出力制御部31は、アンロード弁27へ閉指令(高出力指令)を出力して(具体的には、駆動信号を出力しないで)、アンロード弁27を遮断位置とする。これにより、パイロットポンプ17から吐出された圧油がパイロット弁20及びアキュムレータ21に供給される。したがって、パイロットポンプ17から吐出された圧油の一部がアキュムレータ21に蓄えられるとともに、パイロット弁20に供給される圧油の圧力Piが上昇する。
【0040】
ステップS102に進み、ポンプ出力制御部31は、圧力センサ29の圧力検出値Piが予め設定された上限値Ph以上であるか否かを判定する。圧力検出値Piが上限値Ph未満である場合は、ステップS101に戻って上記同様の手順を繰り返す。一方、圧力検出値Piが上限値Ph以上である場合は、ステップS103に移る。
【0041】
ステップS103にて、ポンプ出力制御部31は、アンロード弁27へ開指令(低出力指令)を出力して(具体的には、駆動信号を出力して)、アンロード弁27を連通位置とする。これにより、パイロットポンプ17から吐出された圧油がアンロード弁27を介しタンクに逃がされる。また、アキュムレータ21に蓄えられた圧油がパイロット弁20へ供給される。したがって、パイロット弁20に供給される圧油の圧力Piが下降する。
【0042】
ステップS104に進み、ポンプ出力制御部31は、圧力センサ29の圧力検出値Piが予め設定された下限値Pl(但し、Pl<Ph)以下であるか否かを判定する。圧力検出値Piが下限値Plを超える場合は、ステップS103に戻って上記同様の手順を繰り返す。一方、圧力検出値Piが下限値Pl以下である場合は、ステップS101に戻って上記同様の手順を繰り返す。
【0043】
本実施形態の要部であるコントローラ30の異常判定部32は、ポンプ出力制御部31からアンロード弁27へ出力する指令が変化していない状態の指令継続時間を演算し、この指令継続時間に基づいてアンロード弁27が異常であるか否かを判定し、その判定結果を出力する。その詳細を、
図6を用いて説明する。
図6は、本実施形態におけるコントローラ30の異常判定部32の処理内容を表すフローチャートである。
【0044】
ステップS111にて、異常判定部32は、指令継続時間として、アンロード弁27への閉指令の出力を開始してから開指令の出力へ切換わるまでの時間をカウントする。あるいは、アンロード弁27への開指令の出力を開始してから閉指令の出力へ切換わるまでの時間をカウントする。
【0045】
ステップS112に進み、異常判定部32は、指令継続時間(カウント値)が所定値Cerr(詳細には、後述の
図7で示すように、アンロード弁27が正常である場合の指令継続時間の最大値Cnより大きくなるように予め設定された値)以上であるか否かを判定する。指令継続時間が所定値Cerr未満である場合は、ステップS113に進み、アンロード弁27が正常であると判定する。
【0046】
指令継続時間が所定値Cerr以上である場合は、ステップS114に進み、異常判定部32は、アンロード弁27が異常であると判定する。そして、油圧ショベルの運転室12内のモニタ33に異常発生情報を送信して表示させて、運転者に報知する。また、メンテナンス員が所持する携帯端末35に通信装置34を介し異常発生情報を送信して表示させて、メンテナンス員に報知する。
【0047】
次に、本実施形態の動作及び作用効果を、
図7〜
図10を用いて説明する。
【0048】
図7〜
図10は、本実施形態における圧力検出値の変化と指令継続時間の変化を表すタイムチャートである。
図7はアンロード弁27が正常である場合を示し、
図8はアンロード弁27が連通位置で固着した状態の異常が発生した場合を示し、
図9はアンロード弁27が遮断位置で固着した状態の異常が発生した場合を示し、
図10はアンロード弁27が中間位置で固着した状態の異常が発生した場合を示す。
【0049】
まず、
図7を用いて、アンロード弁27が正常である場合を説明する。エンジン14の起動時(時刻T0)、アキュムレータ21に圧油が蓄えられていなければ、圧力センサ29の圧力検出値Piがゼロである。コントローラ30のポンプ出力制御部31は、アンロード弁27へ閉指令を出力して、アンロード弁27を遮断状態とする。これにより、圧力センサ29の圧力検出値Piが上昇する。
【0050】
コントローラ30のポンプ出力制御部31は、圧力センサ29の圧力検出値Piが上限値Phに上昇するまでの間(時刻T0〜時刻T1の間)、アンロード弁27への閉指令の出力を継続する。この間、コントローラ30の異常判定部32は、閉指令の継続時間をカウントし、この閉指令の継続時間が所定値Cerr未満であるから、アンロード弁27が正常であると判定する。なお、アンロード弁27が正常であれば、起動開始直後の閉指令の継続時間が最大値Cnとなる。
【0051】
圧力センサ29の圧力検出値Piが上限値Phまで上昇すると(時刻T1)、コントローラ30のポンプ出力制御部31は、アンロード弁27へ開指令を出力して、アンロード弁27を連通状態とする。これにより、圧力センサ29の圧力検出値Piが下降する。
【0052】
コントローラ30のポンプ出力制御部31は、圧力センサ29の圧力検出値Piが下限値Plに下降するまでの間(時刻T1〜時刻T2の間)、アンロード弁27への開指令の出力を継続する。この間、コントローラ30の異常判定部32は、開指令の継続時間をカウントし、この開指令の継続時間が所定値Cerr未満であるから、アンロード弁27が正常であると判定する。
【0053】
圧力センサ29の圧力検出値Piが下限値Plまで下降すると(時刻T2)、コントローラ30のポンプ出力制御部31は、アンロード弁27へ閉指令を出力して、アンロード弁27を遮断状態とする。これにより、圧力センサ29の圧力検出値Piが上昇する。
【0054】
コントローラ30のポンプ出力制御部31は、圧力センサ29の圧力検出値Piが上限値Phに上昇するまでの間(時刻T2〜時刻T3の間)、アンロード弁27への閉指令の出力を継続する。この間、コントローラ30の異常判定部32は、閉指令の継続時間をカウントし、この閉指令の継続時間が所定値Cerr未満であるから、アンロード弁27が正常であると判定する。以降、これを繰り返す。
【0055】
次に、
図8を用いて、アンロード弁27が連通位置で固着した状態の異常が発生した場合について説明する。アンロード弁27が連通位置で固着した状態の異常が発生し(時刻T4)、その後、圧力センサ29の圧力検出値Piが下降してPlに達すると(時刻T5)、コントローラ30のポンプ出力制御部31は、アンロード弁27へ閉指令を出力する。また、コントローラ30の異常判定部32は、閉指令の継続時間をカウントする。
【0056】
しかし、アンロード弁27が連通位置で固着した状態であるため、連通位置から遮断位置に切換わらず、圧力センサ29の圧力検出値Piがさらに下降する。そして、圧力検出値Piが上限値Ph以上とならないため、閉指令の継続時間が所定値Cerrに達する(時刻T6)。これにより、コントローラ30の異常判定部32は、アンロード弁27が異常であると判定する。
【0057】
次に、
図9を用いて、アンロード弁27が遮断位置で固着した状態の異常が発生した場合について説明する。アンロード弁27が遮断位置で固着した状態の異常が発生し(時刻T7)、その後、圧力センサ29の圧力検出値Piが上昇してPhに達すると(時刻T8)、コントローラ30のポンプ出力制御部31は、アンロード弁27へ開指令を出力する。また、コントローラ30の異常判定部32は、開指令の継続時間をカウントする。
【0058】
しかし、アンロード弁27が遮断位置で固着した状態であるため、遮断位置から連通位置に切換わらず、圧力センサ29の圧力検出値Piがリリーフ弁28の規定圧(本実施形態では、上限値Ph)となる。そして、圧力検出値Piが下限値Pl以下とならないため、開指令の継続時間が所定値Cerrに達する(時刻T9)。これにより、コントローラ30の異常判定部32は、アンロード弁27が異常であると判定する。
【0059】
次に、
図10を用いて、アンロード弁27が連通位置と遮断位置の間の中間位置で固着した状態の異常が発生した場合について説明する。アンロード弁27が中間位置で固着した状態の異常が発生すると(時刻T10)、圧力センサ29の圧力検出値Piが上限値Phと下限値Plの間の中間値となる。そして、圧力検出値Piが上限値Ph以上若しくは下限値Pl以下とならないため、指令継続時間が所定値Cerrに達する(時刻T11)。これにより、コントローラ30の異常判定部32は、アンロード弁27が異常であると判定する。
【0060】
以上のように本実施形態においては、アンロード弁27へ出力する指令が変化していない状態の指令継続時間を演算し、この指令継続時間が所定値Cerr以上である場合にアンロード弁27が異常であると判定する。これにより、アンロード弁27の異常の状態(特に、アンロード弁27が遮断位置で固着した状態や、アンロード弁27が中間位置で固着した状態)にかかわらず、アンロード弁27の異常を検知することができる。
【0061】
なお、第1の実施形態においては、特に説明しなかったが、コントローラ30の異常判定部32は、アンロード弁27が異常であると判定した場合に、圧力センサ29の圧力検出値Piに応じて異常の状態を識別してもよい。このような変形例を、
図11を用いて説明する。
図11は、本変形例におけるコントローラ30の異常判定部32の処理内容を表すフローチャートである。
【0062】
ステップS111〜S114は、第1の実施形態と同じである。ステップS114にて異常判定部32はアンロード弁27が異常であると判定した後、ステップS115に移る。
【0063】
ステップS115にて、異常判定部32は、圧力センサ29の圧力検出値Piが下限値Pl未満であるか否かを判定する。圧力検出値Piが下限値Pl未満である場合は、ステップS116に進み、アンロード弁27が連通位置で固着した状態の異常と特定する。圧力検出値Piが下限値Pl以上である場合は、ステップS117に進み、圧力センサ29の圧力検出値Piが上限値Ph以上であるか否かを判定する。圧力検出値Piが上限値Ph以上である場合は、ステップS118に進み、アンロード弁27が遮断位置で固着した状態の異常と特定する。圧力検出値Piが上限値Ph未満である場合は、ステップS119に進み、アンロード弁27が中間位置で固着した状態の異常と特定する。
【0064】
そして、コントローラ30の異常判定部32は、アンロード弁27の異常発生情報及び異常状態情報をモニタ33及び携帯端末35に送信して表示させる。これにより、アンロード弁27の異常対応の一助とすることができる。
【0065】
本発明の第2の実施形態を、
図12〜
図15を用いて説明する。なお、本実施形態において、第1の実施形態と同等の部分は同一の符号を付し、適宜、説明を省略する。
【0066】
図12は、本実施形態における油圧ショベルの油圧制御システムの構成のうち、ブームシリンダ9の駆動に係わるパイロット回路の構成を表す図である。
図13は、本実施形態におけるコントローラの機能的構成を関連機器と共に表すブロック図である。
【0067】
本実施形態の油圧制御システムは、パイロットポンプ17Aが可変容量型である。そして、第1の実施形態のアンロード弁27の代わりに、パイロットポンプ17Aを予め設定された大容量と小容量に選択的に切換えるポンプ容量切換装置36を備えている。ポンプ容量切換装置36は、パイロットポンプ17Aの斜板の傾転角を切換えることで、パイロットポンプ17Aの容量を切換えるようになっている。
【0068】
アキュムレータ21は、パイロットポンプ17Aが大容量である場合に(すなわち、パイロットポンプ17の高出力時に)、パイロットポンプ17から吐出された圧油の一部を蓄える。一方、パイロットポンプ17Aが小容量である場合に(すなわち、パイロットポンプ17の低出力時に)、パイロット弁20へ圧油を供給するようになっている。
【0069】
コントローラ30Aのポンプ出力制御部31Aは、圧力センサ29で検出された圧力Piに応じてポンプ容量切換装置36を制御する。その詳細を、
図14を用いて説明する。
図14は、本実施形態におけるコントローラ30Aのポンプ出力制御部31Aの処理内容を表すフローチャートである。
【0070】
ステップS201にて、ポンプ出力制御部31Aは、ポンプ容量切換装置36へ大容量指令(高出力指令)を出力する。この大容量指令に応じて、ポンプ容量切換装置36はパイロットポンプ17を大容量とする。これにより、パイロットポンプ17から吐出された圧油がパイロット弁20及びアキュムレータ21に供給される。したがって、パイロットポンプ17から吐出された圧油の一部がアキュムレータ21に蓄えられるとともに、パイロット弁20に供給される圧油の圧力Piが上昇する。
【0071】
ステップS202に進み、ポンプ出力制御部31Aは、圧力センサ29の圧力検出値Piが上限値Ph以上であるか否かを判定する。圧力検出値Piが上限値Ph未満である場合は、ステップS201に戻って上記同様の手順を繰り返す。一方、圧力検出値Piが上限値Ph以上である場合は、ステップS203に移る。
【0072】
ステップS203にて、ポンプ出力制御部31Aは、ポンプ容量切換装置36へ小容量指令(低出力指令)を出力する。この小容量指令に応じて、ポンプ容量切換装置36はパイロットポンプ17を小容量とする。これにより、アキュムレータ21に蓄えられた圧油がパイロット弁20へ供給される。したがって、パイロット弁20に供給される圧油の圧力Piが下降する。
【0073】
ステップS204に進み、ポンプ出力制御部31Aは、圧力センサ29の圧力検出値Piが下限値Pl以下であるか否かを判定する。圧力検出値Piが下限値Plを超える場合は、ステップS203に戻って上記同様の手順を繰り返す。一方、圧力検出値Piが下限値Pl以下である場合は、ステップS201に戻って上記同様の手順を繰り返す。
【0074】
本実施形態の要部であるコントローラ30Aの異常判定部32Aは、ポンプ出力制御部31Aからポンプ容量切換装置36へ出力する指令が変化していない状態の指令継続時間を演算し、この指令継続時間に基づいてポンプ容量切換装置36が異常であるか否かを判定し、その判定結果を出力する。その詳細を、
図15を用いて説明する。
図15は、本実施形態におけるコントローラ30Aの異常判定部32Aの処理内容を表すフローチャートである。
【0075】
ステップS211にて、異常判定部32Aは、指令継続時間として、ポンプ容量切換装置36への大容量指令の出力を開始してから小容量指令の出力へ切換わるまでの時間をカウントする。あるいは、ポンプ容量切換装置36への小容量指令の出力を開始してから大容量指令の出力へ切換わるまでの時間をカウントする。
【0076】
ステップS212に進み、異常判定部32Aは、指令継続時間(カウント値)が所定値(詳細には、ポンプ容量切換装置36が正常である場合の最大指令継続時間より大きくなるように予め設定された値)以上であるか否かを判定する。指令継続時間が所定値未満である場合は、ステップS213に進み、ポンプ容量切換装置36が正常であると判定する。
【0077】
指令継続時間が所定値以上である場合は、ステップS214に進み、異常判定部32Aは、ポンプ容量切換装置36が異常であると判定する。そして、油圧ショベルの運転室12内のモニタ33に異常発生情報を送信して表示させて、運転者に報知する。また、メンテナンス員が所持する携帯端末35に通信装置34を介し異常発生情報を送信して表示させて、メンテナンス員に報知する。
【0078】
以上のように本実施形態においては、ポンプ容量切換装置36へ出力する指令が変化していない状態の指令継続時間を演算し、この指令継続時間が所定値以上である場合にポンプ容量切換装置36が異常であると判定する。これにより、ポンプ容量切換装置36の異常の状態(特に、ポンプ大容量で固定された状態や、ポンプ中容量で固定された状態)にかかわらず、ポンプ容量切換装置の異常を検知することができる。
【0079】
なお、第2の実施形態においては、特に説明しなかったが、コントローラ30Aの異常判定部32Aは、ポンプ容量切換装置36が異常であると判定した場合に、圧力センサ29の圧力検出値Piに応じて異常の状態を識別してもよい。このような変形例を、
図16を用いて説明する。
図16は、本変形例におけるコントローラ30Aの異常判定部32Aの処理内容を表すフローチャートである。
【0080】
ステップS211〜S214は、第2の実施形態と同じである。ステップS214にて異常判定部32Aはポンプ容量切換装置36が異常であると判定した後、ステップS215に移る。
【0081】
ステップS215にて、異常判定部32Aは、圧力センサ29の圧力検出値Piが下限値Pl未満であるか否かを判定する。圧力検出値Piが下限値Pl未満である場合は、ステップS216に進み、ポンプ小容量で固定された状態の異常と特定する。圧力検出値Piが下限値Pl以上である場合は、ステップS217に進み、圧力センサ29の圧力検出値Piが上限値Ph以上であるか否かを判定する。圧力検出値Piが上限値Ph以上である場合は、ステップS218に進み、ポンプ大容量で固定された状態の異常と特定する。圧力検出値Piが上限値Ph未満である場合は、ステップS219に進み、ポンプ中容量で固定された状態の異常と特定する。
【0082】
そして、コントローラ30の異常判定部32は、ポンプ容量切換装置36の異常発生情報及び異常状態情報をモニタ33及び携帯端末35に送信して表示させる。これにより、ポンプ容量切換装置36の異常対応の一助とすることができる。
【0083】
また、第1の実施形態においては、ポンプ出力切換装置としてアンロード弁27を備えた場合を例にとって説明し、第2の実施形態においては、ポンプ出力切換装置としてポンプ容量切換装置36を備えた場合を例にとって説明したが、これに限られず、本発明の趣旨及び技術思想を逸脱しない範囲内で変形が可能である。例えばアンロード弁27とポンプ容量切換装置36の両方を備えてもよい。あるいは、パイロットポンプ17を電動機によって駆動するように構成し、パイロットポンプ17を予め設定された高回転と低回転に選択的に切換えるインバータを備えてもよい。このような場合も、上記同様の効果を得ることができる。
【0084】
本発明の第3の実施形態を、
図17〜
図20を用いて説明する。なお、本実施形態において、第1の実施形態と同等の部分は同一の符号を付し、適宜、説明を省略する。
【0085】
図17は、本実施形態における油圧ショベルの油圧制御システムの構成のうち、ブームシリンダ9の駆動に係わるメイン回路及びパイロット回路の構成を表す図である。
図18は、本実施形態におけるコントローラの機能的構成を関連機器と共に表すブロック図である。
【0086】
本実施形態の油圧制御システムは、パイロットポンプ17の吐出側と操作装置19のパイロット弁20を接続する油路25Aと、油路25Aに設けられたポンプ用逆止弁26と、油路25Aのポンプ用逆止弁26よりパイロットポンプ17側に油路25Bを介し接続されたアンロード弁27と、油路25Aのポンプ用逆止弁26よりパイロット弁20側に油路25Cを介し接続されたアキュムレータ21と、油路25Cに設けられた逆止弁付の減圧弁37と、油路25Aのポンプ用逆止弁26よりパイロットポンプ17側に油路25Dを介し接続されたリリーフ弁28と、油路25Aのポンプ用逆止弁26よりパイロット弁20側に設けられた圧力センサ29と、コントローラ30Bとを備えている。
【0087】
逆止弁付の減圧弁37は、アキュムレータ21側の圧力が油路25A側(詳細には、ポンプ用逆止弁26の下流側)の圧力より高い場合に、アキュムレータ21からの圧油を減圧して油路25A(すなわち、パイロット弁20)へ供給する。一方、油路25A側(詳細には、ポンプ用逆止弁26の下流側)の圧力がアキュムレータ21側の圧力より高い場合に、油路25A(すなわち、パイロットポンプ17)からの圧油をアキュムレータ21へ供給するようになっている。
【0088】
本実施形態の油圧制御システムは、管路24Bにおける制御弁18と逆止弁23の間から分岐接続され、油路25Cに合流接続された回収管路38と、回収管路38に設けられて遮断位置と連通位置に選択的に切換わる回生弁39(電磁切換弁)と、回生弁39とアキュムレータ21の間に設けられた回生用逆止弁40と、パイロット圧センサ41とを更に備えている。
【0089】
回収管路38は、ブームシリンダ9が縮短するときのブームシリンダ9のボトム側油室からの戻り油をアキュムレータ21へ供給するためのものである。回生用逆止弁40は、回生弁39からアキュムレータ21への圧油の流れを許容し、アキュムレータ21から回生弁39への圧油の流れを阻止する。パイロット圧センサ41は、操作装置19のパイロット弁20から制御弁18の受圧部22Aへ出力されたパイロット圧Pdを検出して、コントローラ30Bへ出力する。
【0090】
コントローラ30Bは、機能的構成として、回生制御部42、ポンプ出力制御部31、及び異常判定部32Bを有している。第1の実施形態と同様、ポンプ出力制御部31は、圧力センサ29で検出された圧力Piに応じてアンロード弁27を制御する。
【0091】
コントローラ30Bの回生制御部42は、圧力センサ29で検出された圧力Piとパイロット圧センサ41で検出されたパイロット圧Pdに応じて回生弁39を制御する。その詳細を、
図19を用いて説明する。
図19は、本実施形態におけるコントローラ30Bの回生制御部42の処理内容を表すフローチャートである。
【0092】
ステップS301にて、回生制御部42は、回生弁39へ閉指令を出力して(具体的には、駆動信号を出力しないで)、回生弁39を遮断位置とする。ステップS302に進み、回生制御部42は、圧力センサ29の圧力検出値Piが上限値Ph未満であるか否かを判定する。圧力検出値Piが上限値Ph以上である場合は、ステップS301に戻って上記同様の手順を繰り返す。一方、圧力検出値Piが上限値Ph未満である場合は、ステップS303に移る。
【0093】
ステップS303にて、回生制御部42は、パイロット圧センサ41の圧力検出値Pdが予め設定された閾値を超えるか否かを判定する。圧力検出値Pdが閾値未満である場合は、ステップS301に戻って上記同様の手順を繰り返す。一方、圧力検出値Pdが閾値を超える場合は、ステップS304に移る。
【0094】
ステップS304にて、回生制御部42は、回生弁39へ開指令を出力して(具体的には、駆動信号を出力して)、回生弁39を連通位置とする。これにより、ブームシリンダ9のボトム側油室からの戻り油がアキュムレータ21へ供給される。
【0095】
本実施形態の要部であるコントローラ30Bの異常判定部32Bは、回生弁39が遮断位置である場合に、ポンプ出力制御部31からアンロード弁27へ出力する指令が変化していない状態の指令継続時間を演算し、この指令継続時間に基づいてアンロード弁27が異常であるか否かを判定し、その判定結果を出力する。その詳細を、
図20を用いて説明する。
図20は、本実施形態におけるコントローラ30Bの異常判定部32Bの処理内容を表すフローチャートである。
【0096】
ステップS111〜S114は、第1の実施形態と同じである。それらの前段階であるステップS110にて、異常判定部32Bは、回生制御部42から回生弁39へ閉指令が出力されているか否かを判定することにより、回生弁39が遮断位置であるか否かを判定する。回生弁39が遮断位置でないと判定した場合は、ステップS110を繰り返す。一方、回生弁39が遮断位置であると判定した場合は、ステップS111へ移る。
【0097】
以上のように構成された本実施形態においても、第1の実施形態と同様、アンロード弁27の異常の状態にかかわらず、アンロード弁27の異常を検知することができる。
【0098】
なお、第3の実施形態においては、特に説明しなかったが、コントローラ30Bの異常判定部32Bは、アンロード弁27が異常であると判定した場合に、圧力センサ29で検出された圧力Piに応じて異常の状態を識別してもよい(上述の
図11参照)。
【0099】
また、第3の実施形態においては、ポンプ出力切換装置としてアンロード弁27を備えた場合を例にとって説明したが、これに限られず、本発明の趣旨及び技術思想を逸脱しない範囲内で変形が可能である。第2の実施形態と同様、ポンプ容量切換装置36を備えてもよいし、若しくはアンロード弁27とポンプ容量切換装置36の両方を備えてもよい。あるいは、パイロットポンプ17を電動機によって駆動するように構成し、パイロットポンプ17を高回転と低回転に選択的に切換えるインバータを備えてもよい。これらの場合も、上記同様の効果を得ることができる。
【0100】
なお、以上においては、油圧ショベルの油圧制御システムであって、人力操作式のパイロット弁20(油圧機器)とパイロットポンプ17(油圧ポンプ)の間の油路に接続されたアキュムレータ21を備えた構成に本発明を適用した場合を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、例えば、操作部材の操作量を検出する検出器と、この検出器で検出された操作部材の操作量に対応する駆動信号を生成して出力するコントローラの操作制御部と、コントローラの操作制御部からの駆動信号によって駆動される電気操作式のパイロット弁(電磁比例弁)と、このパイロット弁とパイロットポンプの間の油路に接続されたアキュムレータとを備えた構成に本発明を適用してもよい。また、パイロット弁以外の他の油圧機器と油圧ポンプの間に接続されたアキュムレータを備えた構成に本発明を適用してもよいし、油圧ショベル以外の他の作業機械の油圧制御システムに本発明を適用してもよい。