(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6574067
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】SPIベースのヘッドアップディスプレイバックライトの制御方法
(51)【国際特許分類】
G09G 3/34 20060101AFI20190902BHJP
G09G 3/20 20060101ALI20190902BHJP
H04N 5/74 20060101ALI20190902BHJP
【FI】
G09G3/34 J
G09G3/20 680B
G09G3/20 641T
G09G3/20 611E
G09G3/34 D
G09G3/20 612L
H04N5/74 Z
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2018-540747(P2018-540747)
(86)(22)【出願日】2017年2月6日
(65)【公表番号】特表2019-507377(P2019-507377A)
(43)【公表日】2019年3月14日
(86)【国際出願番号】IB2017000078
(87)【国際公開番号】WO2017134515
(87)【国際公開日】20170810
【審査請求日】2018年8月3日
(31)【優先権主張番号】201610080936.9
(32)【優先日】2016年2月5日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】508097870
【氏名又は名称】コンチネンタル オートモーティヴ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Continental Automotive GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】シー チャン
【審査官】
斎藤 厚志
(56)【参考文献】
【文献】
特開2016−4121(JP,A)
【文献】
特開2016−006496(JP,A)
【文献】
特開2015−133251(JP,A)
【文献】
特開2013−88526(JP,A)
【文献】
特表2007−535709(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09G 3/34
G09G 3/20
H04N 5/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
SPIベースのヘッドアップディスプレイ(HUD)バックライトの制御方法であって、
前記HUDは、車両コントローラ、ディスプレイ用のバックライトを提供するLEDデバイス、およびLEDコントローラを有しており、前記車両コントローラは、バックライトの制御を実行するために、バックライトセッティングコマンドを前記LEDコントローラに伝送する、SPIベースのHUDバックライトの制御方法において、
前記車両コントローラが、バックライト値の計算の頻度として前記HUDのビデオソース信号の周波数を使用し、該頻度でバックライト値を計算し、
前記車両コントローラが、計算によって取得された複数のバックライト値をバックライトセッティングコマンドに含ませ、該バックライトセッティングコマンドを、SPIバスを介して前記LEDコントローラに伝送し、
前記バックライトセッティングコマンドを取得した後に、フレーム同期信号が取得される度に、前記LEDコントローラが、前記バックライトセッティングコマンド中のバックライト値を1つずつ連続的に適用する
ことを含むことを特徴とする、SPIベースのHUDバックライトの制御方法。
【請求項2】
前記バックライトセッティングコマンドが伝送される頻度は、バックライト値の個数に関連付けられていることを特徴とする、請求項1記載のSPIベースのHUDバックライトの制御方法。
【請求項3】
前記車両コントローラは、3個、6個または12個のバックライト値を、1つのバックライトセッティングコマンドに含ませることを特徴とする、請求項1記載のSPIベースのHUDバックライトの制御方法。
【請求項4】
前記ビデオソース信号の周波数は60Hzであり、前記フレーム同期信号の周波数は60Hzである、請求項1記載のSPIベースのHUDバックライトの制御方法。
【請求項5】
前記HUDは、ディジタルライトプロセッシングコントローラも有し、前記フレーム同期信号は、前記ディジタルライトプロセッシングコントローラによって前記LEDコントローラに伝送される、請求項1記載のSPIベースのHUDバックライトの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドアップディスプレイの制御の分野に関し、特にSPIベースのヘッドアップディスプレイ(HUD)バックライトの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘッドアップディスプレイ(HUD)は、ドライバが運転中に自身の頭を下に向けることなく所要の情報を見られるようにし、したがって運転の安全性の向上に役立ち、また情報の取得をより便利にする。
【0003】
目下のところ、産業界では、HUDの性能を向上させることができる解決手段の研究および開発もさらに行われている。一例は、車載ヘッドアップディスプレイ用途のために専用に設計されたディジタルライトプロセッシング(DLP)チップセットであり、これはテキサス・インスツルメンツ(TI)社から販売されている。チップセットは、主に、ディジタルマイクロミラーデバイス(DMD)および対応するDLPコントローラから成る。DLPヘッドアップディスプレイ用途の場合、ディスプレイに関連付けられたLEDバックライトの制御は、一般的に、相互に協働する2つのコントローラによって実行される。一方は、発光ダイオード(LED)コントローラであり、主としてLEDバックライトの色および輝度の制御を担う。他方は、車両コントローラであり、主として、周囲パラメータ(周囲光など)およびユーザパラメータ(バックライト輝度レベル)の入力に基づいて、所定の光調整アルゴリズムにしたがって設定されるべきバックライト値を出力する。バックライト値は、SPIバスを介してLEDコントローラに送信され、またLEDコントローラは、赤色LED、緑色LEDおよび青色LEDを相応に制御する。目下のところ、ビデオソース信号の周波数は60Hzであるので、60Hzのフレーム同期信号が、DLPコントローラによってLEDコントローラに供給される。フレーム同期信号が到来すると、LEDコントローラは、SPIコマンドを用いて車両コントローラから伝送されたバックライト値を適用することができる。LEDコントローラがバックライト値を更新する周波数が実効値で60Hzに達することを保証するために、車両コントローラがバックライト値を伝送する周波数は60Hzであることが、すなわち1つのバックライト値が16.67ms毎に伝送されることが要求される。この要求に関する既存の解決手段は、以下の通りである:車両コントローラがバックライトセッティングコマンドを出力し、また他のSPIコマンドをSPIキューに出力し、続いて所定の伝送周期に基づいて、キュー内のコマンドを順次伝送する。
【0004】
上記に挙げた解決手段では、バックライトセッティングコマンドを伝送することが必要になったとき、SPIバスがその瞬間に他のSPIコマンドによって占有されている場合があるので、SPIバスが解放される前に、そのコマンドの伝送が完了し、機能の実行が完了したという対応するフィードバックが取得されるまで待機することが必要になり、SPIバスが解放されたときにしか、SPIバスリソースをバックライトセッティングコマンドの伝送に使用することができない。したがって、バックライトセッティングコマンドが16msまたは17ms毎に伝送されることを保証するのは非常に困難であり、その結果、バックライトの変化が十分円滑に行われず、ディスプレイが明滅することになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明によって解決される課題は、SPIベースのHUDバックライトの制御方法を提供し、またディスプレイの明滅を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この問題を解決するために、本発明のSPIベースのHUDバックライトの制御方法においては、HUDが、車両コントローラ、ディスプレイ用のバックライトを提供するLEDデバイス、およびLEDコントローラを有しており、車両コントローラは、バックライトの制御を実行するために、バックライトセッティングコマンドをLEDコントローラに伝送するものであって、この方法は、
車両コントローラが、バックライト値の計算の頻度としてHUDのビデオソース信号の周波数を使用し、この頻度でバックライト値を計算し;
車両コントローラが、計算によって取得された複数のバックライト値をバックライトセッティングコマンドに含ませ、そのバックライトセッティングコマンドを、SPIバスを介してLEDコントローラに伝送し;
バックライトセッティングコマンドを取得した後に、フレーム同期信号が取得される度に、LEDコントローラが、バックライトセッティングコマンド中のバックライト値を1つずつ連続的に適用する
ことを含むことを特徴とする。
【0007】
従来技術と比較して、上述の解決手段は、以下の利点を有している:バックライトセッティングコマンドの伝送周期が、複数のバックライト値を1つのバックライトセッティングコマンドに含ませることによって拡大される。一方では、SPIバスの負荷が低減される。何故ならば、伝送周期の拡大は、バックライトセッティングコマンド伝送時間に対する要求を緩和するからである。他方では、伝送周期の拡大によって、LEDコントローラが各バックライトセッティングコマンドを受信して、それらのバックライトセッティングコマンド中のバックライト値をより均一に広範に適用する時間も得られ、その結果、バックライトの変化の円滑性が高まり、それによってディスプレイの明滅が改善される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明によるSPIベースのHUDバックライトの制御方法の1つの実施の形態の概略図を示す。
【
図2】本発明の方法を使用するHUDバックライトの制御の1つの実施の形態の概略図を示す。
【
図3】本発明による方法の実施の形態における信号間の関係を表す概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の記述においては、当業者が本発明をより包括的に理解できるようにするために、多数の特定の詳細を説明する。しかしながら、当業者であれば、本発明の実施の形態は、それらの特定の詳細の一部を省略できることが分かる。さらに、本発明は記述する特定の実施の形態に限定されるものではないと解されるべきである。それどころか、本発明を実施するための下記に挙げる特徴および重要な要素が異なる実施の形態に関連するか否かにかかわらず、それらの特徴および重要な要素の任意の組合せを使用することも考えられる。さらに、下記に挙げる態様、特徴、実施の形態および利点は単に例示的なものであって、特許請求の範囲に明示的に記載されていない限り、特許請求の範囲の定義または重要な要素と見なされるべきではない。
【0010】
図1が示すように、本発明の1つの実施の形態によれば、車両コントローラが、周囲パラメータ(例えば、周囲光)およびユーザパラメータ(例えば、バックライト輝度レベル)を取得した後に、それらの入力にしたがい、バックライト値を計算する。続けて伝送されるバックライト値が、HUDにおけるLEDコントローラによって適用されるときに、HUDのビデオソース信号と同期していることを保証するために、ビデオソース信号の周波数が、バックライト値の計算の頻度として使用されるべきである。例えば、ビデオソース信号が60Hzである場合、バックライト値の計算の頻度も、これに一致すべきである。つまり、1つのバックライト値は、16.67ms毎に計算されるべきである。複数のバックライト値が複数回のバックライト値計算によって取得された場合、車両コントローラは、複数のバックライト値を含むバックライトセッティングコマンドを、LEDコントローラとの通信コネクションを介して、LEDコントローラに伝送する。バックライトセッティングコマンドにおいては、各バックライト値が、計算された順序通りに配置されている。
【0011】
バックライトセッティングコマンドを受信すると、LEDコントローラは、先ず、フレーム同期信号の受信後に、第1のバックライト値を適用し、続けて別のフレーム同期信号の受信後に、第2のバックライト値を適用し、この適用はバックライトセッティングコマンド中の複数のすべてのバックライト値が適用されるまで繰り返される。その後、別のバックライトセッティングコマンドの受信後に、LEDコントローラは依然として、上述したように動作する(フレーム同期信号が取得される度に、バックライトセッティングコマンド中のバックライト値を1つずつ連続的に適用する)。このことから、本発明の1つの実施の形態においては、フレーム同期信号を受信したときに、LEDコントローラが既に利用可能なバックライト値を有していることが分かる。つまり、バックライト値に基づいてバックライトの制御が実行される度に、ビデオソース信号の周波数を一致させ、より円滑なバックライト変化を達成することができる。
【0012】
図2は、車載HUDにおける本発明の方法の適用構造の簡略図を提供する。特に、車載HUDを制御するチップセットは、TI社のDLPチップセットであってよい。
図2を参照すると、この実施例において使用されるDLPチップセットは、DLPコントローラと、DLPコントローラによって制御されるDMDと、Piccolo MCU LEDコントローラと、LEDコントローラによって制御される、赤/緑/青の三色LEDと、を有している。LEDコントローラによるLEDバックライトの色および輝度の制御、ならびにDLPコントローラによるDMDの制御を介して、表示されるべき内容が、車両のフロントガラス、またはヘッドアップディスプレイ用の他のディスプレイインタフェースに最終的に投影される。
【0013】
この例において、車両コントローラは、SPIバスを介してLEDコントローラに接続されており、またLEDコントローラと協働し、それによってバックライトセッティングコマンドがLEDコントローラに伝送される。さらに、車両コントローラは、CAN通信モジュールを介して、CANバスからCANメッセージを取得する。例えば、他の車両サブシステムから周囲パラメータおよび/またはユーザパラメータが到来する場合(例えば、周囲温度が機器から取得される)、車両コントローラは、それらのパラメータをCANメッセージによって取得することができる。バックライト値の計算の基本的なプロセスおよび車両コントローラによるバックライトセッティングコマンドの伝送は、上記において説明した通りであるが、以下では、特定のビデオソース信号の例と関連させてさらに説明する。
【0014】
図3を参照すると、ビデオソース信号が現時点では比較的一般的な60Hzである場合が例として挙げられており、車両コントローラは16.67ms毎にバックライト値を計算する。3つのバックライト値を計算した後に、車両コントローラは、計算によって取得されたそれら3つのバックライト値を、バックライトセッティングコマンドを用いてLEDコントローラに伝送する。現実の状況を考慮すると、車両コントローラが3つのバックライト値の計算を終了した時点と、バックライトセッティングコマンドが伝送されるときのSPI通信との間に、時間遅延t1が存在することになる。別の3つのバックライト値を計算した後に、車両コントローラは、計算によって取得された3つのバックライト値を、後続のバックライトセッティングコマンドを用いてLEDコントローラに再び伝送する。この原理を拡張させ、車両コントローラはバックライトセッティングコマンドを50ms毎にLEDコントローラに伝送する。
【0015】
バックライトセッティングコマンドを受信した後に、LEDコントローラは先ず、自身の固有のバックライトセッティングキューにバックライト値データを連続的に記憶し、DLPコントローラからのフレーム同期信号を待機する。現実の状況を考慮すると、LEDコントローラがバックライトセッティングコマンド中の3つのバックライト値を受信した時点と、フレーム同期信号の受信後にそれらが適用され始める時点との間に時間遅延t2も存在することになる。フレーム同期信号を受信した後に、LEDコントローラはバックライト値を適用することになる。フレーム同期信号の周波数も60Hzであるので、バックライトセッティングコマンドが50ms毎にLEDコントローラに伝送されることを車両コントローラが保証できる限りは、最後のバックライト更新周波数も60Hzになる。したがって、バックライト更新周波数がビデオソース信号に一致するだけでなく、車両コントローラもこの時点においては、コマンド伝送のためにより多くの時間を有することになるので、円滑な光調整を実現することの困難さが緩和される。一方、バックライトセッティングコマンド伝送周期の拡大によって、他のSPIコマンドのための時間も残されるので、他のSPIコマンドの伝送の成功率も高まる。
【0016】
車両コントローラがバックライト値を計算し、バックライトセッティングコマンドを伝送する頻度を、3回の計算および1回の伝送に限定する必要はない。つまり、6回の計算および1回の伝送であってもよく、つまりその場合、車両コントローラは、6個のバックライト値を含む1つのバックライトセッティングコマンドを100ms毎にLEDコントローラに伝送する。時間遅延の影響を要求に対応させることができる場合には、12個のバックライト値を含む1つのバックライトセッティングコマンドの200ms毎の伝送も考えられる。したがって、バックライトセッティングコマンドを伝送する前に最後に計算されたバックライト値の数は、実際の状況に応じて求める必要がある。この例におけるビデオソース信号は60Hzであるので、このビデオソース信号の周波数が変化した場合には、相応の計算および調整を上記の説明にしたがって行うこともできる。
【0017】
上記においては、本発明を有利な実施の形態に基づいて説明したが、本発明はそれらに限定されるものではない。本発明の精神および範囲内で当業者によってなされるあらゆる種類の変更および修正は、本発明の保護の範囲に含まれる。したがって、本発明の保護の範囲は、特許請求の範囲によって定義された範囲である。