特許第6574075号(P6574075)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6574075
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】飛行体
(51)【国際特許分類】
   B64C 27/28 20060101AFI20190902BHJP
   B64C 27/08 20060101ALI20190902BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20190902BHJP
【FI】
   B64C27/28
   B64C27/08
   B64C39/02
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2019-1353(P2019-1353)
(22)【出願日】2019年1月8日
【審査請求日】2019年6月11日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2018年6月14日、GoFly Prize Group,LLC、http://goflyprize.com/the−winners/、http://goflyprize.com/news/meet−the−10−winners−of−gofly−phase−i/、http://goflyprize.com/wp−content/uploads/2018/06/GoFly−Winning−Team−Designs.zip 2018年9月12日、日本放送協会、おはよう日本 2018年9月12日、日本放送協会、https://www.nhk.or.jp/ohayou/biz/20180912/index.html 2018年3月31日、テトラ・アビエーション株式会社、https://www.tetra−gofly.com/ 2018年7月11日、読売新聞グループ本社、https://www.yomiuri.co.jp/topics/ichiran/20180711−OYT8T50012.html、https://www.yomiuri.co.jp/topics/ichiran/20180711−OYT8T50012.html?page_no=2 2018年5月31日、株式会社オライリー・ジャパン、http://makezine.jp/event/makers2018/m0129/2018年8月4日、2018年8月5日、中井佑、Maker Faire Tokyo 2018 2018年8月24日、経済産業省、http://www.meti.go.jp/press/2018/08/20180824001/20180824001.html、http://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/air_mobility/pdf/001_02_05.pdf 2018年8月29日、中井佑、第1回 空の移動革命に向けた官民協議会 2018年6月20日、株式会社 PR TIMES、https://prtimes.ip/main/html/rd/p/000000003.000034983.html 2018年6月4日、中井佑、テトラ・アビエーション株式会社 中井佑の名刺、裏面 2018年6月4日以降の別紙に記載の日、中井佑、テトラ・アビエーショ
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518210225
【氏名又は名称】テトラ・アビエーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093861
【弁理士】
【氏名又は名称】大賀 眞司
(74)【代理人】
【識別番号】100129218
【弁理士】
【氏名又は名称】百本 宏之
(72)【発明者】
【氏名】中井 佑
(72)【発明者】
【氏名】岡田 勝
(72)【発明者】
【氏名】水谷 彰宏
(72)【発明者】
【氏名】桑村 航矢
【審査官】 林 政道
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2010/0327122(US,A1)
【文献】 特開2013−010466(JP,A)
【文献】 特表2009−513435(JP,A)
【文献】 特表2016−517821(JP,A)
【文献】 米国特許第07874513(US,B1)
【文献】 米国特許第6478262(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 27/28
B64C 27/08
B64C 39/02
B64C 29/00−29/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のロータを備える飛行体であって、
1以上の前記ロータを含む底面領域と、1以上の前記ロータを含む背後領域との間にペイロードを搭載可能な搭載空間を有し、
前記搭載空間を挟む前記底面領域と前記背後領域とのなす角は90度よりも大きく180度未満であり、
前記底面領域には第1ロータおよび第2ロータが含まれ、
前記背後領域には第3ロータおよび第4ロータが含まれ、
前記第3ロータおよび前記第4ロータは、操舵可能な翼である可動翼を前記搭載空間とは逆側かつ第3ロータおよび第4ロータの下流に備える飛行体。
【請求項2】
請求項に記載の飛行体において、
前記底面領域において前記第1ロータおよび前記第2ロータは略同一平面に配置され、
前記第1ロータおよび前記第2ロータは当該飛行体の中心線に対して左右対称な位置に配置され、
前記第1ロータおよび前記第2ロータは、上反角を有する飛行体。
【請求項3】
請求項または請求項に記載の飛行体において、
前記背後領域において前記第3ロータおよび前記第4ロータは略同一平面に配置され、
前記第3ロータおよび前記第4ロータは当該飛行体の中心線に対して左右対称な位置に配置され、
前記第3ロータおよび前記第4ロータは、上反角に相当する角度を有する飛行体。
【請求項4】
請求項1から請求項までのいずれか一項に記載の飛行体において、
化石燃料を動力とする内燃機関、バッテリ、および前記内燃機関の出力を用いて前記バッテリを充電可能なコンバータをさらに備え、
前記複数のロータは、前記内燃機関の出力および前記バッテリの出力により動作可能な飛行体。
【請求項5】
請求項1から請求項までのいずれか一項に記載の飛行体において、
前記搭載空間を挟む前記底面領域と前記背後領域とのなす角は120度である飛行体。
【請求項6】
請求項1から請求項までのいずれか一項に記載の飛行体において
前記搭載空間に操舵不可能な固定翼を有する飛行体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛行体に関する。
【背景技術】
【0002】
地上を走行する自動車と同様に、上空を飛行する飛行体は古くから研究開発が盛んに行われている。特許文献1には、3以上の回転翼が取り付けられた機体と、前記機体に軸支された主翼と、前記機体に対する相対的な前記主翼の傾きを制御する制御部と、を備えることを特徴とする飛行体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018−20742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されている発明では、水平飛行時および垂直飛行時の両方の場面でロータが発生させる推進力を有効に利用できない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様による飛行体は、複数のロータを備える飛行体であって、1以上の前記ロータを含む底面領域と、1以上の前記ロータを含む背後領域との間にペイロードを搭載可能な搭載空間を有し、前記搭載空間を挟む前記底面領域と前記背後領域とのなす角は90度よりも大きく180度未満であり、前記底面領域には第1ロータおよび第2ロータが含まれ、前記背後領域には第3ロータおよび第4ロータが含まれ、前記第3ロータおよび前記第4ロータは、操舵可能な翼である可動翼を前記搭載空間とは逆側かつ第3ロータおよび第4ロータの下流に備える
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、水平飛行時および垂直飛行時の両方の場面でロータの発生させる推進力を有効に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】飛行体1の外観図
図2】飛行体1から可動翼201、第1固定翼202、第2固定翼203、上部カウル251、および下部カウル252を取り外した図
図3図2の左側面図
図4図2の正面図
図5図2の平面図
図6】飛行体1の構成の概要図
図7】駆動装置群2の構成を示す図
図8図8(a)は水平飛行時の飛行体1の飛行姿勢を示す図、図8(b)は垂直飛行時の飛行体1の飛行姿勢を示す図。
図9】水平飛行時における第1固定翼202の作用効果を示す図
図10図10(a)〜(b)は飛行体1の水平加速を示す図、図10(c)〜(e)は比較例飛行体1Zの水平加速を示す図。
図11図11(a)は底面領域130に3つのロータ100が含まれる場合を示す図、図11(b)〜(c)は底面領域130に4つのロータ100が含まれる場合を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
―実施の形態―
以下、図1図10を参照して、飛行体の実施の形態を説明する。
【0009】
(飛行体1の外観)
図1は、飛行体1の外観図である。飛行体1は、左前ロータ101と、右前ロータ102と、左後ロータ103と、右後ロータ104と、可動翼201と、第1固定翼202と、第2固定翼203と、上部カウル251と、下部カウル252と、を備える。また上部カウル251の後方であって、左後ロータ103および右後ロータ104の前方に人間などのペイロードを搭載可能なスペースである搭載空間10が設けられる。以下では、飛行体1に搭乗する人間を「ユーザ」と呼ぶ。上部カウル251の内部には駆動装置群2が格納される。また第1固定翼202と上部カウル251は一体に成形されている。
【0010】
以下では、左前ロータ101、右前ロータ102、左後ロータ103、および右後ロータ104をまとめてロータ100と呼ぶ。ロータ100のそれぞれは、同一の寸法を有し、同方向に回転する回転翼を2つ備える。左前ロータ101と左後ロータ103に備えられる回転翼の回転方向は同一、たとえば時計回りである。右前ロータ102と右後ロータ104に備えられる回転翼の回転方向は逆方向に同一、たとえば反時計回りである。ロータ100および可動翼201は、駆動装置群2により駆動される。なお、左前ロータ101、右前ロータ102、左後ロータ103、および右後ロータ104は、第1ロータ、第2ロータ、第3ロータ、および第4ロータと呼ぶこともできる。
【0011】
ロータ100に備えられるそれぞれの回転翼は、回転することで上向および前方に進行する方向に推力が生じるように角度が設定されている。それぞれロータ100は、飛行体1に対して位置および姿勢が固定されている。ただしそれぞれのロータ100の回転数は独立して調整できる。
【0012】
図2図5を参照してロータ100の配置を詳述する。図2は、飛行体1から可動翼201、第1固定翼202、第2固定翼203、上部カウル251、および下部カウル252を取り外した図である。図3は、図2に示す飛行体1を飛行体1の左側面から見た左側面図である。図4は、図2に示す飛行体1を飛行体1の前方から見た正面図である。図5は、図2に示す飛行体1を飛行体1の上方から見た平面図である。
【0013】
図2では、図1において他の構成に隠れていたフレーム350が示されおり、カウルや固定翼が表示されていないのでロータ100の配置が明確になっている。それぞれのロータ100は外周部が他のロータ100に接しており、たとえば左前ロータ101は右前ロータ102および左後ロータ103に接する。他のロータ100も、それぞれ2つのロータと接する。搭載空間10は周囲をロータ100に囲まれているが、いずれのロータ100の回転平面も搭載空間10とは交差しない。ただしここで言う回転平面とは、ロータ100の回転翼を径方向に延長して回転させることで得られる平面である。搭載空間10はロータ100の径方向の延長線上に存在しないので、万が一回転翼が破損しても強い運動エネルギーを持つ回転翼、またはその破片が搭載空間10に進入するおそれがない。
【0014】
図3に示すように、左前ロータ101と左後ロータ103とは、大きな角度、たとえば120度の開きを持つように配置される。なおここで示した角度の120度は一例であり、より小さい角度やより大きい角度でもよい。ただし左前ロータ101と左後ロータ103との角度は、90度よりも大きく180度よりも小さい。また図3では右前ロータ102および右後ロータ104は隠れているが、左前ロータ101および左後ロータ103と同様の関係にある。すなわち右前ロータ102と右後ロータ104とは、大きな角度、たとえば120度の開きを持つように配置される。
【0015】
図4に示すように、左前ロータ101と右前ロータ102とは、180度よりも小さな角度、たとえば160度の開きを持つように配置される。なおここで示した角度の160度は一例であり、より小さい角度やより大きい角度でもよい。ただし左前ロータ101と右前ロータ102との角度は、90度よりも大きく180度よりも小さい。なお左前ロータ101と右前ロータ102はそれぞれ、同一の小さな上反角、たとえば20度の上反角を有する。なお左前ロータ101と右前ロータ102の上反角とは、飛行体1の左右方向を示す直線LRとなす角である。左前ロータ101と右前ロータ102の上反角がそれぞれ20度の場合は、左前ロータ101と右前ロータ102のなす角は搭載空間10側で140度である。
【0016】
図5に示すように、左後ロータ103と右後ロータ104のなす角は、搭載空間10側で180度よりも小さな角度、たとえば140度の開きを持つように配置される。すなわち左後ロータ103と右後ロータ104の位置関係は、左前ロータ101と右前ロータ102と同様である。換言すると、左後ロータ103と右後ロータ104はそれぞれ、同一の小さな上反角に相当する角度、たとえば20度の上反角に相当する角度を有する。
【0017】
(構成の概要)
図6は、図1図5を参照して説明した飛行体1の構成の概要図である。飛行体1は、左前ロータ101、右前ロータ102、左後ロータ103、および右後ロータ104を備える。左前ロータ101および右前ロータ102は、底面領域130に含まれる。左後ロータ103および右後ロータ104は、背後領域140に含まれる。底面領域130と背後領域140との間に、人間などのペイロードを搭載可能なスペースである搭載空間10を有する。底面領域130と背後領域140のなす角は90度よりも大きく180度未満、たとえば120度である。
【0018】
底面領域130において左前ロータ101および右前ロータ102は略同一平面に配置される。左前ロータ101および右前ロータ102は、飛行体1の中心線Cに対して左右対称な位置に配置される。左前ロータ101および右前ロータ102は、搭載空間10から遠ざかるように、図4に示したように上反角を有する。換言すると図4に示すように飛行体1の幅方向の中心部が下方向に出っ張るように、左前ロータ101および右前ロータ102が配置される。
【0019】
背後領域140において左後ロータ103および右後ロータ104は略同一平面に配置される。左後ロータ103および右後ロータ104は、飛行体1の中心線Cに対して左右対称な位置に配置される。左後ロータ103および右後ロータ104は、搭載空間10から遠ざかるように、図5に示したように上反角に相当する角度を有する。換言すると図5に示すように飛行体1の幅方向の中心部が飛行体1の後方に出っ張るように、左後ロータ103および右後ロータ104が配置される。
【0020】
上反角は、図4を参照した際に飛行体1の左右方向を示す直線LRとなす角であると説明した。しかし上反角は、直方体である底面領域130の上面または底面と、左前ロータ101および右前ロータ102のなす角であるとも言える。ただし底面領域130の上面とは、搭載空間10に最も近い面である。上反角と同様に、図5を参照して説明した上反角に相当する角度とは、直方体である背後領域140の前面または後面と、左後ロータ103および右後ロータ104のなす角であるとも言える。
【0021】
(駆動装置群2の構成)
図7は駆動装置群2の構成を示す図である。駆動装置群2は、内燃機関301と、発電機302と、AC/DCコンバータ303と、DC/DCコンバータ304と、速度制御部305と、電動機306と、発電制御部307と、飛行制御部308と、バッテリ管理部309と、入力部310と、可動翼制御部311とを備える。
【0022】
内燃機関301は、たとえば二輪車用エンジンである。内燃機関301は、不図示の燃料タンクに貯蔵された化石燃料、たとえばガソリンを燃焼させて運動エネルギーを発生させる。発電機302は、内燃機関301が発生させた運動エネルギーを用いて交流電力を発生させる。AC/DCコンバータ303は、発電機302が発生させた交流電力を直流電力に整流する。DC/DCコンバータ304は、飛行制御部308の動作指令を受ける変換ICを備え、AC/DCコンバータ303が出力する直流電力を所定の電圧に変換する。
【0023】
速度制御部305は、飛行制御部308の動作指令を受ける速度ICを備え、電動機306の速度、すなわち回転数を制御する。速度制御部305は、DC/DCコンバータ304またはバッテリ管理部309から電力が供給される。電動機306は速度制御部305から供給される電力に基づきロータ100を回転させる。なお図7では速度制御部305および電動機306を1つのみ図示しているが、4つのロータにそれぞれ2つの翼が備えられるので、実際には速度制御部305および電動機306は8つ備えられる。ただし速度制御部305に備えられる速度ICは8よりも少ない数でもよいし、1つのロータ100ごとに速度制御部305が1つのみ備えられてもよい。
【0024】
発電制御部307は、飛行制御部308から動作指令を受ける発電ICを備え、飛行制御部308の動作指令に基づき内燃機関301および発電機302を動作させる。飛行制御部308は、入力部310から入力される動作指令に基づき、DC/DCコンバータ304、速度制御部305、発電制御部307、およびバッテリ管理部309に動作指令を出力する。また飛行制御部308は、不図示のセンサを用いて内燃機関301に備えられる燃料の残量を把握し、バッテリ管理部309からバッテリの残量の情報が伝達される。
【0025】
バッテリ管理部309は、充放電が可能なバッテリ309Aおよびバッテリ309Aを管理するバッテリICを備える。バッテリICは、不図示のセンサを用いてバッテリ309Aの残容量を測定して飛行制御部308に出力する。またバッテリICは、飛行制御部308の動作指令に基づきDC/DCコンバータ304が出力する電力を用いてバッテリ309Aを充電する。さらにバッテリICは、飛行制御部308の動作指令に基づきバッテリ309Aに蓄積された電力を速度制御部305および可動翼制御部311に供給する。
【0026】
入力部310は、飛行体1に搭乗するユーザが飛行体1に動作指令を与えるために使用される。入力部310はたとえば、複数の押しボタンおよび操縦桿から構成される。ただし入力部310の構成はこれに限定されず、たとえばタッチ式の液晶ディスプレイやスイッチにより構成されてもよい。ユーザによる入力部310への入力は、飛行制御部308に伝達される。
【0027】
可動翼制御部311は、飛行制御部308から動作指令を受ける可動翼ICを備え、飛行制御部308の動作指令に基づき可動翼201を動作させる。
【0028】
(飛行姿勢)
図8(a)は水平飛行時の飛行体1の飛行姿勢を示す図であり、図8(b)は垂直飛行時の飛行体1の飛行姿勢を示す図である。以下では、図8(a)に示す姿勢を「水平姿勢」と呼び、図8(b)に示す姿勢を「垂直姿勢」と呼ぶ。なお水平飛行時は、第1固定翼202および第2固定翼203から揚力が得られるが、垂直飛行時にはそれらは得られない。なお符号Gで示す位置は、飛行体1の重心である。
【0029】
図8(a)に示す水平姿勢では、左前ロータ101および右前ロータ102の回転面が重力方向と略直行する。換言すると、水平姿勢では左前ロータ101および右前ロータ102の回転面が水平線と略平行となる。この水平姿勢では、左前ロータ101および右前ロータ102が生じる推進力は主に重力へ対抗するために用いられる。また水平姿勢において左後ロータ103および右後ロータ104が生じる推進力は、重力への対抗および前方への移動に用いられる。水平姿勢では可動翼201は主に、前方への推進力が増すように水平線と水平になるように制御される。
【0030】
図8(b)に示す垂直姿勢は、4つのロータ100の推進力の合力が重力に対して最も効果的に働く姿勢である。すなわち垂直姿勢では、左前ロータ101と左後ロータ103とが鉛直方向に伸びる仮想的な線vに対して線対称である。また飛行体1の重心Gは、垂直姿勢における左前ロータ101と左後ロータ103との水平方向中心にあり、姿勢が安定する。左前ロータ101と左後ロータ103とのなす角が120度の場合には、水平線hと左後ロータ103とのなす角は30度となる。垂直姿勢では、左後ロータ103が発生する推進力を重力を打ち消す方向に最大限に生かす目的で、可動翼201は左後ロータ103に対して垂直に設定される。
【0031】
飛行体1は、ロータ100の回転数および可動翼201の角度により水平姿勢から垂直姿勢へと変化させる。飛行体1は、水平姿勢と垂直姿勢のそれぞれが安定しているだけでなく、遷移中の姿勢も安定している。
【0032】
(第1固定翼202の効果)
図9は、水平飛行時における第1固定翼202の作用効果を示す図である。これまで第1固定翼202の位置を詳しく説明していなかったが、本実施の形態における第1固定翼202は、重心Gよりも前方に配される。図10では水平飛行時に左後ロータ103および第1固定翼202により生じる力を示している。左後ロータ103および右後ロータ104により発生する推進力103fは重心Gよりも上方に位置するので、この推進力103fは飛行体1を重心Gを中心として図10において反時計回りに回転させる回転力103rとなる。
【0033】
その一方で、第1固定翼202は水平飛行時には図示上方に向かう揚力202fが生じる。前述のとおり第1固定翼202は重心Gよりも前方に配されているので、揚力202fは回転力103rを打ち消す力、すなわち飛行体1の反時計回りの回転を抑制し、姿勢を安定させる働きを有する。以上をまとめると第1固定翼202は、重心Gよりも前方に配されているので飛行体1の水平飛行時の姿勢を安定させる。なお図10では第1固定翼202は重心Gよりも上方に配されているが、重心Gよりも下方に配されてもよい。いずれに配されても揚力202は回転力103rを打ち消す働きを有するからである。
【0034】
(姿勢制御)
飛行体1による姿勢制御の概要を説明する。以下に説明する姿勢制御は、たとえば飛行制御部308において実行可能である。飛行制御部308は次に説明する第1ステップ〜第3ステップを短い時間周期、たとえば10ミリ秒ごとに繰り返す。飛行制御部308は第1ステップでは、目標とする飛行体1の姿勢角(以下、「目標姿勢角」とよぶ)および目標とする飛行体1の位置(以下、「目標位置」と呼ぶ)と、現在の姿勢角および位置との差分を算出する。
【0035】
飛行制御部308は第2ステップでは、目標姿勢角と現在の姿勢角との差分がゼロとなるように可動翼201の偏角を算出し、算出した偏角を反映するように可動翼201の角度を制御する。飛行制御部308は第3ステップでは、可動翼201の角度を第2ステップにおいて制御したことによる推力の変化を算出し、高度を目標値に保つためのロータ100の回転数を補正する。なおここで、目標位置と現在の位置との差分から求まる推力の分配を次の目標姿勢角に加算することで水平位置を目標状態に補正する。
【0036】
なお、ロータ100の回転数を補正することによる姿勢角の補正と、可動翼201を用いた姿勢角の補正とでは、投入電力の増減あたりの姿勢角変化速度は可動翼201によるほうが大きいため、姿勢角を安定に保つことができる。第1ステップ〜第3ステップの処理をまとめると、飛行制御部308は可動翼201を用いて姿勢を迅速に制御し、次に可動翼201の変化を考慮して応答の遅いロータ100の目標値を設定する。
【0037】
(左右加速)
図10は、左右方向への水平加速を示す図であり、図10(a)〜(b)は飛行体1を用いる場合を示し、図10(c)〜(e)は比較例飛行体1Zを用いる場合を示す図である。図4に示したように、左前ロータ101と右前ロータ102との間にはあらかじめ角度がつけられている。図10(a)に示すように、左右方向への加速を行わない場合は、左前ロータ101および右前ロータ102の出力を等しくすることで、飛行体1の左方向への推進力と飛行体1の右方向への推進力とが相殺される。そしてたとえば飛行体1の左方向へ水平方向に加速するためには、右前ロータ102の出力を左前ロータ101の出力よりも大きくすればよい。これにより左右方向の推進力のバランスが崩れて左方向への推進力が残るので、飛行体1は左方向へ加速する。
【0038】
図10(c)〜(e)に示す比較例飛行体1Zは、左右方向に並ぶロータに角度が設けられていない。この比較例飛行体1Zも、左右方向への加速を行わない場合は図10(c)に示すように左右のロータの出力を等しくする。たとえば図10(d)に示すように比較例飛行体1Zの図示左側のロータの出力を大きくすると、図10(e)に示すように比較例飛行体1Zが傾き、その後に比較例飛行体1Zは図示右方向へ加速する。
【0039】
なお飛行体1も左右への水平方向への加速の際に傾きが全く発生しないわけではない。しかし原理的に傾かなければ左右方向への加速が不可能な比較例飛行体1Zに比べれば、左右方向への加速に際して飛行体1の傾きは小さくできる。また飛行体1の傾きを比較例飛行体1Zと同程度に許容するのであれば、飛行体1は比較例飛行体1Zよりも迅速に左右方向の加速が可能である。
【0040】
(動作例)
飛行体1は化石燃料、たとえばガソリンとバッテリ309Aの2つのエネルギー源を有する。内燃機関301の始動時には、バッテリ309Aに貯蔵されたエネルギーを用いて内燃機関301を始動させる。垂直飛行時、すなわち上昇、下降、ホバリングの場合は、主に発電機302から供給されるエネルギーを用いてロータ100を動作させる。ただし突風が吹いた場合などはバッテリ309Aに貯蔵されたエネルギーも補助的に用いて期待を安定させる。
【0041】
水平飛行時には、発電機302から供給されるエネルギーを用いてロータ100を動作させ、なおかつ余剰エネルギーでバッテリ309Aを充電する。ただし内燃機関301に何らかの問題が発生した際には、バッテリ309Aに貯蔵されたエネルギーを用いてロータ100を動作させて緊急着陸する。そのためバッテリ309Aの容量は、緊急着陸に必要なエネルギー量以上とする。なお緊急着陸に必要なエネルギー量は、たとえば想定される飛行体1の飛行高度と飛行体1の重量などから緊急着陸に必要な時間を算出し、ロータ100の消費電力を加味して算出できる。
【0042】
飛行体1は、化石燃料およびバッテリ309Aという複数のエネルギー源を有することにより、次の利点を有する。化石燃料は入手が容易であり、かつ短時間で補給が完了する。バッテリ309Aに蓄積された電力は瞬時に利用できるため、突風に対応して姿勢を維持する場合などに利用できる。内燃機関301が高効率で運転できる回転数で動作した場合に、ロータ100や可動翼201では消費しきれない余剰エネルギーをバッテリ309Aに蓄積して有効に活用できる。バッテリ309Aだけで飛行に必要なエネルギーを賄う場合は、航続距離などの要求仕様にあわせてバッテリの容量を調整する必要があるが非常にコスト高となる。しかし化石燃料と組み合わせる場合には、化石燃料を貯蔵するタンクの容量を変更することは容易なのでコストを低減できる。
【0043】
上述した実施の形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)飛行体1は、複数のロータ100を備える。飛行体1は、1以上のロータ100を含む底面領域130と、1以上のロータ100を含む背後領域140との間にペイロードを搭載可能な搭載空間10を有する。搭載空間10を挟む底面領域130と背後領域140とのなす角は90度よりも大きく180度未満である。そのため、水平飛行時および垂直飛行時の両方の場面で4つのロータ100の発生させる推進力を有効に利用できる。
【0044】
(2)底面領域130には左前ロータ101および右前ロータ102が含まれ、背後領域140には左後ロータ103および右後ロータ104が含まれる。すなわち底面領域130と背後領域140のそれぞれに、2つのロータ100を備える。そのため2つのロータ100の出力を調整して飛行体1の動きを制御できる。
【0045】
(3)底面領域130において左前ロータ101および右前ロータ102は略同一平面に配置される。左前ロータ101および右前ロータ102は当該飛行体の中心線に対して左右対称な位置に配置される。左前ロータ101および右前ロータ102は、搭載空間10から遠ざかるように上反角を有す。そのため、図10に示したように水平の左右方向に加速する際に飛行体1の傾きを小さくでき、また飛行体1に傾きが生じることを許容するならば迅速な加速が可能である。
【0046】
(4)背後領域140において左後ロータ103および右後ロータ104は略同一平面に配置される。左後ロータ103および右後ロータ104は当該飛行体の中心線に対して左右対称な位置に配置される。左後ロータ103および右後ロータ104は、搭載空間10から遠ざかるように上反角を有する。そのため、一定の姿勢角までは姿勢角によらず即座に水平方向へ加速できる。
【0047】
(5)左後ロータ103および右後ロータ104は、操舵可能な翼である可動翼201を搭載空間10とは逆側に備える。そのため左後ロータ103および右後ロータ104が発生させる推進力を任意の方向に向けることができ、特に図8(a)に示すように水平飛行時に水平方向への推進力を多く確保できる。
【0048】
(6)飛行体1は、化石燃料を動力とする内燃機関301、バッテリ309A、および内燃機関301の出力を用いてバッテリ309Aを充電可能なAC/DCコンバータ303およびDC/DCコンバータ304を備える。左前ロータ101、右前ロータ102、左後ロータ103、および右後ロータ104は、内燃機関301の出力およびバッテリ309Aの出力により動作可能である。そのため補給が容易で出力が大きい内燃機関301を主として利用し、突発的なエネルギー需要にはバッテリ309Aの出力を充てることができる。また内燃機関301が高効率で運転できる回転数で動作した場合に、ロータ100や可動翼201では消費しきれない余剰エネルギーをバッテリ309Aに蓄積して有効に活用できる。さらに、化石燃料とバッテリ309Aとを組み合わせることで、一度のフライトに必要なエネルギーを低コストに調達できる。
【0049】
(変形例1)
搭載空間10にはユーザが搭乗しなくてもよい。その場合はたとえば、搭載空間10にはカメラや計測器などの各種センサを搭載する。なお必要に応じてその他の運搬物を搭載してもよい。
【0050】
(変形例2)
飛行体1の寸法は特に制限がない。たとえば搭載空間10に人間が搭乗できるようにロータ100の直径を2メートル以上にしてもよいし、無人の小型飛行体として使用するためにロータ100の直径を100ミリ以下にしてもよい。
【0051】
(変形例3)
駆動装置群2には、内燃機関301および発電機302が含まれなくてもよいし、バッテリ309Aおよびバッテリ管理部309が含まれなくてもよい。たとえば飛行体1は、内燃機関301および発電機302が含まれず動力としてバッテリ309Aのみを有する構成でもよい。
【0052】
(変形例4)
飛行体1は、可動翼201、第1固定翼202、および第2固定翼203の少なくとも1つを備えなくてもよい。また飛行体1の姿勢を安定させるために固定翼をさらに備えてもよい。
【0053】
(変形例5)
左前ロータ101および右前ロータ102は、同一平面内に存在してもよい。すなわち左前ロータ101および右前ロータ102の上反角がゼロ度でもよいし、負の値でもよい。左前ロータ101および右前ロータ102の上反角が負の値の場合は、左前ロータ101と右前ロータ102のなす角は搭載空間10側で180度を超える。
【0054】
(変形例6)
左後ロータ103および右後ロータ104は、同一平面内に存在してもよい。すなわち左後ロータ103および右後ロータ104の上反角に相当する角度がゼロ度でもよいし、負の値でもよい。左後ロータ103および右後ロータ104の上反角に相当する角度が負の値の場合は、左後ロータ103および右後ロータ104のなす角は搭載空間10側で180度を超える。
【0055】
(変形例7)
それぞれのロータ100同士は、外周が接していなくてもよい。また特定のロータ100のみ外周が接していてもよい。たとえば左前ロータ101と右前ロータ102とは外周が接し、左後ロータ103と右後ロータ104とは外周が接するが、左前ロータ101と左後ロータ103とは外周が接せず、右前ロータ102と右後ロータ104とは外周が接しなくてもよい。
【0056】
(変形例8)
上述した実施の形態では、それぞれのロータ100は同方向に回転する回転翼を2つ備えた。しかしそれぞれのロータ100に備えられる回転翼の回転方向は異なっていてもよい。この場合のロータ100は、「二重反転ロータ」と呼ぶことができる。なお上述した実施の形態では左前ロータ101と右前ロータ102の回転方向は逆であったが、本変形例では両者の回転方向は同一でよい。
【0057】
(変形例9)
上述した実施の形態では、底面領域130および背後領域140にそれぞれ2つのロータ100が配置された。しかしそれぞれの領域に配置されるロータ100の数は1でもよい。この場合は、底面領域130および背後領域140に配されるロータ100は、ロータ100の中心線と、図6に示した飛行体1の中心線Cとが一致するように配置される。すなわち本変形例ではロータ100の数が少なく構成がシンプルになる利点を有する。また上述した実施の形態と同様に、水平飛行時および垂直飛行時の両方の場面でロータ100の発生させる推進力を有効に利用できる。ただし上述した実施の形態とは異なり、上反角を設けることができないので左右方向への加速についての利点は有さない。
【0058】
上述した実施の形態の構成から、底面領域130に含まれるロータ100の数のみを変更して1にしてもよいし、背後領域140に含まれるロータ100の数のみを変更して1にしてもよい。
【0059】
(変形例10)
上述した実施の形態では、底面領域130および背後領域140にそれぞれ2つのロータ100が配置された。しかしそれぞれの領域に配置されるロータ100の数は3以上でもよい。この場合には、上述した実施の形態のように上反角、および上反角に相当する角度を有するようにそれぞれのロータ100を配置することが望ましい。また底面領域130に含まれるロータの数と背後領域140に含まれるロータ100の数が一致しなくてもよい。以下では底面領域130に含まれるロータ100の相互位置関係を説明するが、背後領域140に含まれるロータ100の相互位置関係も同様である。
【0060】
図11は、底面領域130に含まれるロータ100が3以上の場合のは一例を示す図である。図11(a)は底面領域130に3つのロータ100が含まれる場合を示し、図11(b)および図11(c)は底面領域130に4つのロータ100が含まれる場合を示す。図11(a)に示すように、底面領域130に3つのロータ100が含まれる場合は、左右方向の中心に配されるロータ100は上反角をゼロ度とし、その左右に配される2つのロータ100の上反角を同一にすることが望ましい。
【0061】
底面領域130に4つのロータ100が含まれる場合は、図11(b)に示すように上反角がゼロ度のロータ100を含めてもよいし、図11(c)に示すように全てのロータ100の上反角をゼロ度以外に設定してもよい。図11(b)に示す例では、左右方向の中央に配される2つのロータ100は上反角がゼロ度であり、右端および左端に配されるロータ100は同一の上反角が設定される。図11(c)に示す例では、底面領域130に含まれる全てのロータ100が、同一の上反角に設定される。
【0062】
上述した実施の形態および変形例は、それぞれ組み合わせてもよい。上記では、種々の変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0063】
1…飛行体
10…搭載空間
100…ロータ
101…左前ロータ
102…右前ロータ
103…左後ロータ
104…右後ロータ
130…底面領域
140…背後領域
201…可動翼
202…第1固定翼
203…第2固定翼
251…上部カウル
252…下部カウル
301…内燃機関
302…発電機
309A…バッテリ
【要約】
【課題】水平飛行時および垂直飛行時の両方の場面でロータの発生させる推進力を有効に利用できる。
【解決手段】飛行体は、複数のロータを備える飛行体であって、1以上のロータを含む底面領域と、1以上のロータを含む背後領域との間にペイロードを搭載可能な搭載空間を有し、搭載空間を挟む底面領域と背後領域とのなす角は90度よりも大きく180度未満である。
【選択図】図1
図1
図2
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図9
図10
図11