特許第6574076号(P6574076)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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6574076サーチュイン遺伝子発現増加剤及び細胞周期正常化剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6574076
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】サーチュイン遺伝子発現増加剤及び細胞周期正常化剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/185 20060101AFI20190902BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20190902BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20190902BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20190902BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20190902BHJP
   A61K 8/9789 20170101ALI20190902BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20190902BHJP
   A61Q 19/02 20060101ALI20190902BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALN20190902BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALN20190902BHJP
   A61K 127/00 20060101ALN20190902BHJP
【FI】
   A61K36/185
   A61P43/00 111
   A61P43/00 105
   A61P17/00
   A61P29/00
   A61P25/00
   A61K8/9789
   A61Q19/00
   A61Q19/02
   !C12Q1/686 ZZNA
   !C12Q1/02
   A61K127:00
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2019-24776(P2019-24776)
(22)【出願日】2019年2月14日
【審査請求日】2019年3月18日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 株式会社シャルレモリモト 〒647−0081 和歌山県新宮市新宮7683番地110、販売日 平成30年9月21日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500101243
【氏名又は名称】株式会社ファーマフーズ
(73)【特許権者】
【識別番号】000131555
【氏名又は名称】株式会社シャルレ
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】庄屋 雄二
(72)【発明者】
【氏名】石田 有希子
(72)【発明者】
【氏名】中村 唱乃
(72)【発明者】
【氏名】坂下 真耶
(72)【発明者】
【氏名】山津 敦史
(72)【発明者】
【氏名】金 武祚
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 洋子
(72)【発明者】
【氏名】山本 由紀
【審査官】 鶴見 秀紀
(56)【参考文献】
【文献】 日本農芸化学会大会講演要旨集,2017年,Vol.2017,p.2B09p02
【文献】 日本農芸化学会大会講演要旨集,2018年,Vol.2018,p.3B03a11
【文献】 科学研究費助成事業 研究成果報告書,2015年,pp.1-6
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/00−36/9068
A61K 8/00−8/99
A61P 17/00
A61P 25/00
A61P 29/00
A61P 43/00
A61Q 19/00
A61Q 19/02
C12Q 1/02
C12Q 1/686
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロロフィルを実質的に含まないモリンガ葉のエタノール抽出物を含むこと、およびSIRT-1(サーチュイン-1)遺伝子発現の増加が皮膚細胞で起こることを特徴とするSIRT-1(サーチュイン-1)遺伝子発現増加剤。
【請求項2】
クロロフィルを実質的に含まないモリンガ葉のエタノール抽出物を含むこと、および細胞周期の正常化が皮膚細胞で起こることを特徴とする細胞周期正常化剤。
【請求項3】
モリンガ葉をエタノールで抽出する工程、および
モリンガ葉のエタノール抽出物をダイヤイオンHP20で精製する工程を含む、請求項1又は2に記載の剤の精製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モリンガ葉のエタノール抽出物を含有するSIRT-1(サーチュイン-1)遺伝子発現増加剤及び細胞周期正常化剤に関する。
【背景技術】
【0002】
サーチュイン(Sirtuin、SIRT)は、細胞内では細胞質、ミトコンドリア等に存在し、生体内で重要な役割を果たす脱アセチル化酵素群の総称である。ヒトでは7種類が知られており(SIRT-1〜SIRT-7)、このうち、SIRT-1は、炎症抑制作用、神経保護作用等の様々な機能を有することが明らかになっている。そのため、このようなサーチュインの機能を向上させる物質の捜索やそのような機能を有する天然物や食品等に関する研究が活発に行われており、例えば、赤ワイン等に含まれるレスベラトロールには、サーチュインを活性化させる働きがあることが知られている(非特許文献1)。
【0003】
モリンガは、インド、東南アジア、アフリカ、中南米等の地域で自生している植物であり、古代インドに発祥し、アジア各地に伝わるアーユルヴェーダ医学などでも利用される。例えば、特許文献1には、モリンガ抽出物を含む皮膚外用剤が記載されている。
しかしながら、モリンガ葉のエタノール抽出物から、クロロフィルを実質的に除去することにより、SIRT-1遺伝子の発現効果を向上出来ること及び細胞周期を正常化出来ることについては、全く知られていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Small molecule activators of sirtuins extend Saccharomyces cerevisiae lifespan. Nature, 425: 191-196, 2003.
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許5719228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、SIRT-1遺伝子発現増加効果剤及び/又は細胞周期正常化剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、クロロフィルを実質的に含まないモリンガ葉のエタノール抽出物を含む剤が上記課題を解決出来ることを見出した。
すなわち、本発明は、上記課題を解決するために、以下の各発明を包含する。
[1] クロロフィルを実質的に含まないモリンガ葉のエタノール抽出物を含むことを特徴とするSIRT-1(サーチュイン-1)遺伝子発現増加剤。
[2] クロロフィルを実質的に含まないモリンガ葉のエタノール抽出物を含むことを特徴とする細胞周期正常化剤。
[3] モリンガ葉をダイヤイオンHP20で精製する工程を含む、前記[1]又は[2]のいずれかに記載の剤の精製方法。
[4] モリンガ葉のエタノール抽出物を含み、クロロフィルを実質的に含まないことを特徴とするSIRT-1(サーチュイン-1)遺伝子発現増加剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明の剤は、クロロフィルを実質的に含まないモリンガ葉のエタノール抽出物を含むことにより、SIRT-1遺伝子発現増加効果及び/又は細胞周期正常化効果を奏する。
また、本発明の剤又は本発明の剤を含む化粧品を動物へ投与することによって、肌のたるみ、しわ、しみ等の予防若しくは改善、衰えた表皮及び/又は真皮のターンオーバー促進、肌の保湿又は美白効果等を得ることも出来る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、モリンガ葉のエタノール抽出物添加群の、非添加群に対するSIRT-1遺伝子の発現量に関する試験結果及び、モリンガ葉のエタノール抽出物添加群について、抽出溶媒の相違及び吸着剤での精製の有無による影響の比較結果を示す。
図2図2は、モリンガ葉のエタノール抽出物添加群と、非添加群のヒト繊維芽細胞を顕微鏡観察することによって、細胞周期の状態を確認した結果を示す。
図3図3は、モリンガ葉のエタノール抽出物添加群の細胞増殖活性に関する試験結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔モリンガ葉のエタノール抽出物〕
本発明において、モリンガは、ケシ目ワサビノキ科に属する植物のうち、モリンガ・オレイフェラ(Moringa oleifera)を用いることが好ましく、これは、モリンガ・プテリゴスペルマ(Moringa pterygosperma)とも呼ばれる。あるいは、モリンガ・ドロウハルディ(Moringa drouhardii)等の、ワサビノキ科に属する他の植物を用いてもよい。
モリンガ葉のエタノール抽出物は、モリンガ葉又はモリンガ葉に何らかの処理、例えば、モリンガ葉を粉砕、破砕、摩砕、乾燥、殺菌処理したものをエタノールで抽出したものが挙げられるが、これらに限定されない。
また、抽出に用いるエタノールは、実質的に不純物を含まないものである。好ましい抽出温度は、15〜30度である。また、好ましい抽出時間は、0.5〜1.5時間である。
【0011】
〔クロロフィルの実質的な除去〕
クロロフィルは、通常、上記モリンガ葉又はモリンガ葉のエタノール抽出物中に一定の含有割合で含まれる。
しかしながら、本発明においては、剤に含まれるモリンガ葉のエタノール抽出物がクロロフィルを実質的に含まない、あるいは、剤に含まれるモリンガ葉のエタノール抽出物からクロロフィルが実質的に除去されていることを必須の特徴とする。
ここで、本発明において、「クロロフィルを実質的に含まない」又は「クロロフィルが実質的に除去されている」とは、本発明の剤に含まれるモリンガ葉のエタノール抽出物におけるクロロフィル量が、100%エタノール抽出物と比較して、好ましくは、0.00001〜10質量%以下、より好ましくは、検出限界以下含まれることであり、なお、さらに好ましくは、本発明の剤におけるクロロフィル量が、100%エタノール抽出物と比較して、0.00001〜10質量%以下、最も好ましくは、検出限界以下含まれることであるが、これらに限定されない。
なお、クロロフィルの除去は、モリンガ葉のエタノール抽出物を精製することにより行われることが好ましい。このような精製の方法としては、ダイヤイオンHP20を用いる方法を好適に用いることが出来る。HP20は、モリンガ葉のエタノール抽出物100gに対し、10g〜500g用いることが好ましく、さらに好ましくは、50g〜200g、最も好ましくは、75〜150g用いることが出来るが、これらに限定されない。なお、モリンガ葉のエタノール抽出物とHP20は、モリンガ葉のエタノール抽出物に対するHP20が好ましくは、1:0.1〜5、さらに好ましくは1:0.5〜2、最も好ましくは1:0.75〜1.5で用いることが出来るが、これらに限定されない。
【0012】
〔モリンガ葉のエタノール抽出物を含む剤〕
また、本発明で使用されるモリンガ葉のエタノール抽出物を含む剤の状態は、例えば、液体状、固体状(粉末状、顆粒状、細粒状等)、ゲル状その他の状態のいずれであってもよい。また、本発明で使用されるモリンガ葉のエタノール抽出物を含有する剤におけるモリンガ葉のエタノール抽出物の含有割合は、剤全体に対して、0.0001%〜100%である。本発明で使用されるモリンガ葉のエタノール抽出物の濃度は、例えば、1μg/mL〜1g/mL程度である。
【0013】
本発明で使用される剤は、経口又は非経口のいずれかの経路で動物に投与することができる。経口剤としては、例えば、固形剤(顆粒剤、散剤、錠剤、丸剤、又はカプセル剤等)、液剤(水剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤、若しくはエリキシル剤等)が挙げられる。また、非経口剤としては、注射剤(例えば、皮下注射剤、静脈内注射剤、筋肉内注射剤、若しくは腹腔内注射剤)、点滴剤、外用剤、好ましくは、経皮吸収製剤、貼付剤、塗布剤、若しくは軟膏剤等が挙げられる。
【0014】
また、本発明で使用される剤は、当該分野で通常行われている手法により、薬学上許容される担体を用いて製剤化することができる。薬学上許容される担体としては、賦形剤、結合剤、希釈剤、添加剤、香料、緩衝剤、増粘剤、着色剤、安定剤、乳化剤、分散剤、懸濁化剤、又は防腐剤等が挙げられ、例えば、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、砂糖、ラクトース、ペクチン、デキストリン、澱粉、ゼラチン、トラガント、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、低融点ワックス、又はカカオバター等を担体として使用できる。製剤化方法については、本技術分野において、従来充分に確立されているので、本発明において、それらに従ってよい。
【0015】
上記の固形剤(顆粒剤、散剤、錠剤、丸剤又はカプセル剤等)は、好ましくは、モリンガ葉のエタノール抽出物を例えば賦形剤(ラクトース、マンニトール、グルコース、微結晶セルロース、若しくはデンプン等)、結合剤(ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、若しくはメタケイ酸アルミン酸マグネシウム等)、崩壊剤(繊維素グリコール酸カルシウム等)、滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム等)、安定剤、又は溶解補助剤(グルタミン酸、若しくはアスパラギン酸等)等の添加剤と混合し、常法に従って製剤化することができる。また、コーティング剤(糖、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、若しくはヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート等)で被覆していてもよいし、また2以上の層で被覆していてもよい。
【0016】
また、上記の液剤(水剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤、若しくはエリキシル剤等)は、例えば、モリンガ葉のエタノール抽出物を一般的に用いられる希釈剤(精製水、エタノール、ブチレングリコール、若しくはそれらの混液等)に溶解、懸濁又は乳化して製剤化することができる。さらにこの液剤は、湿潤剤、懸濁化剤、乳化剤、甘味剤、風味剤、芳香剤、保存剤、又は緩衝剤等を含有していてもよい。
【0017】
なお、本発明の剤が、経皮吸収製剤又は貼付剤として用いられる場合、薬学上許容される担体として、モリンガ葉のエタノール抽出物等の成分を、その内部又は表面に支持、保持、又は担持することができるものも好ましい。このような担体は特に限定されず、例えば、繊維状物質、織布、不織布、フィルム状物質等を好ましく用いることが出来る。また、2種以上の担体を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0018】
あるいは、本発明の剤が、外用剤として用いられる場合、液剤、クリーム剤、軟膏剤、ゲル剤、又はエアゾール剤の形態等でも使用できるが、外用の用途に適する剤型であればこれらに限定されない。また、皮膚外用剤には、必要に応じて、水、低級アルコール、溶解補助剤、界面活性剤、乳化安定化剤、ゲル化剤、粘着剤、又はその他所望する剤型を得るために通常使用される基剤成分を配合でき、使用目的に応じて血管拡張剤、副腎皮質ホルモン、保湿剤、殺菌剤、清涼化剤、ビタミン類、香料、又は色素等を本発明の効果を損なわない範囲で適宜に配合することも可能である。
【0019】
本発明の剤は、化粧品又はその素材の分野で使用されてもよく、化粧品の分野において一般的に使用されるその他の添加剤を含んでいてもよい。そのような添加物として、例えば、増粘安定剤、酵素、調味料、強化剤、製造用剤、着色料、甘味料、苦味料、酸味料、ガムベース、光沢剤、酸化防止剤、保存料、乳化剤、乳化安定剤、乳化助剤、殺菌料、漂白剤、発色剤、香料、防かび剤、抽出溶剤、被膜剤、pH調整剤、pH緩衝剤、膨張剤、栄養強化剤、保存剤、賦形剤、安定剤、矯味剤、溶解補助剤、緩衝剤、懸濁化剤、着香剤、粘稠剤、収斂剤、紫外線吸収剤、紫外線防御剤、紫外線散乱剤、紫外線遮蔽剤、ナノ化物質、防腐剤、界面活性剤、金属封鎖剤、油剤、保護剤、保湿剤、洗浄剤、消炎剤、抗菌剤、美白剤、抗たるみ剤、皮膜剤、剥離剤、結合剤、エモリエント剤、可塑剤、ビタミン剤、感触改良剤、泡安定剤、安定化剤、加脂肪剤、滑剤、可溶化剤、還元剤、酸化剤、顔料、基剤、希釈剤、起泡剤、吸着剤、緊張剤、経皮吸収促進剤、結合剤、血行促進剤、ゲル化剤、抗酸化剤、抗脂漏剤、コンディショニング剤、細胞賦活剤、柔軟剤、浸透剤、スクラブ剤、成形改良剤、成形剤、洗浄剤、造膜剤、帯電防止剤、中和剤、鎮静剤、パール化剤、肌荒れ防止剤、撥水剤、発泡剤、発毛促進剤、付着剤、分散剤、噴霧剤、変性剤、抱水剤、保香剤、保留剤、溶解剤、溶剤、又は養毛剤等が挙げられる。このような添加剤は、本技術分野において、従来充分に確立されているので、本発明において、それらに従ってよい。なお、本発明の剤は、ホエイタンパクを実質的に含まないことが好ましいが、これを含んでいてもよい。
【0020】
本発明は、SIRT-1遺伝子発現増加効果及び/又は細胞周期正常化効果を奏する化粧品又はその素材を提供することもできる。当該化粧品又はその素材は、上記本発明の剤を含むものであってもよく、特に限定されないが、例えば、乳液、化粧水、保湿パック、美容液、ファンデーション、コンシーラー、ベース、クレンジング、アイカラー、アイブロウ、チークカラー、フェイスカラー、口紅、ルージュ、グロス、リップライナー、マニキュア、クリーム、マスカラ、ローション、洗顔剤等が挙げられる。
【0021】
本発明の剤を投与される動物は、特に限定されるものではないが、例えば、ヒト、又はヒト以外の動物等であってもよい。ヒト以外の動物としては、特に限定されないが、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、リャマ、アルパカ、ラクダ、ウサギ、ミンク、キツネ、チンチラ、ガチョウ、ニワトリ、アヒル、又はハムスター等が挙げられる。このうち、ヒトへの投与が特に好ましい。
【0022】
本発明の剤が投与される動物の部位又は本発明の剤が効果を奏する動物の部位は、特に限定されるものではないが、例えば、髪の毛、爪、肌、目、血管、リンパ管、筋肉、脂肪、関節、頭皮、脳、鼻、生殖器、口から肛門までの消化器、又はその他内臓等が挙げられるが、より好ましくは、髪の毛、爪又は肌である。肌としては、好ましくは、顔、手、足、腹部、臀部、背中の肌であることが好ましいが、このうち、特に、顔、手の肌が好ましい。
【0023】
本発明の剤は、好ましくは、本発明の剤又は本発明の剤を含む化粧品を肌へ塗布又は肌へ貼付けすることにより、肌のたるみ、しわ、しみの予防若しくは改善効果、表皮及び/又は真皮のターンオーバー促進効果又は肌の保湿若しくは美白効果等を奏することが出来るが、これらの効果に限定されない。
【0024】
〔効果の確認〕
本発明の剤のSIRT-1遺伝子発現増加効果は、例えば、SIRT-1遺伝子の発現に関与するmRNAの量に関して、モリンガ葉のエタノール抽出物を添加した群が、非添加群と比較して、高いことにより確認することができる。
【0025】
また、本発明の剤の細胞周期正常化効果は、例えば、G2期(間期(分裂準備期))及びM期(分裂期)の細胞数が、非添加群と比較して、多いことにより、細胞周期が正常に機能していることを確認することが出来る。
さらに、本発明の剤による効果を受けた線維芽細胞の増殖率は、本発明の剤による効果を受けていない線維芽細胞の増殖率を上回ることが好ましく、モリンガ葉のエタノール抽出物の濃度等にもよるが、具体的には、101%〜300%等であってもよいが、好ましくは150〜250%程度である。
【0026】
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例に何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0027】
[製造例1]モリンガ葉のエタノール抽出物の調製及び合成吸着剤によるクロロフィルの除去
モリンガの葉を乾燥させた後、粉砕して、100〜200メッシュの篩を通過する大きさのモリンガ葉の粉砕物を得た。当該モリンガ葉の粉砕物(9kg)の重量に対して30倍容量の100%エタノールを加え、室温(25度)の条件下で1時間抽出した。吸引濾過を行い、残渣を除去した溶液を、エバポレーターを用いて5倍濃縮し、モリンガ葉のエタノール粗抽出物(クロロフィル未除去)を得た(50kg)。
当該得られたエタノール粗抽出物を、ダイヤイオンHP20(三菱ケミカル社、45kg)を用いて1時間、室温(25度)で吸着させることにより精製し、クロロフィルを実質的に除去した(49.5kg)。その後吸引濾過を行い、吸着剤を除去した溶液を、エバポレーターを用いて濃縮し、モリンガ葉のエタノール抽出物を得た(162g)。クロロフィル含有量は精製前の粗抽出物に対して10%以下であった。
【0028】
[比較例1〜4]
クロロフィルを除去しないことを除いては、上記製造例1と同じ方法により、モリンガ葉のエタノール粗抽出物(729g)を得た(比較例1)。
さらに、クロロフィルを除去しないこと及び抽出溶媒として100%エタノールの代わりに50%エタノール(エタノール:水=1:1)を用いたことを除いては、上記製造例1と同じ方法により、モリンガ葉のエタノール粗抽出物(1890g)を得た。クロロフィル含有量は100%エタノール粗抽出物に対して10%以下であった(比較例2)。
さらに、ダイヤイオンHP20を用いる代わりに、低分子選択的吸着活性炭(商品名:白鷺C、社名:大阪ガスケミカル社)を用いたことを除いては、上記製造例1と同じ方法により、モリンガ葉のエタノール抽出物(45g)を得た。クロロフィル含有量は100%エタノール粗抽出物に対して10%以下であった(比較例3)。
さらに、ダイヤイオンHP20を用いる代わりに、高分子選択的吸着活性炭(商品名:カルボラフィン、社名:大阪ガスケミカル社)を用いたことを除いては、上記製造例1と同じ方法により、モリンガ葉のエタノール抽出物(45g)を得た。クロロフィル含有量は100%エタノール粗抽出物に対して10%以下であった(比較例4)。
【0029】
[試験例1]ヒト皮膚由来繊維芽細胞におけるSIRT-1遺伝子発現確認試験
ヒト皮膚由来繊維芽細胞株Hs68(JCRB No.IFO50350)を、10%FBS、1%Penicillin−Streptomycin solutionを含むDMEM(high glucose)培養液を用いて、37℃、5%CO−95%airの下でサブコンフルエントになるまで培養した後、細胞剥離液(Accutase(登録商標))で処理して細胞を集めた。集めた細胞を、上記DMEM培養液に懸濁して細胞懸濁液(6×10個/mL)を調製した。この細胞懸濁液を24穴プレートに500μLずつ播種し、37℃、5%CO−95%airの下で前培養した。
24時間後、無血清培地(1%Penicillin−Streptomycin solutionを含むDMEM(high glucose))で2回洗浄後、無血清培地を500μLずつ添加し、培養した。
さらに、上記24時間培養後の培地を、各サンプル(製造例1及び比較例1〜4で得られたモリンガ葉のエタノール抽出物又はモリンガ葉のエタノール抽出物)それぞれ500μg/mL又はいずれのサンプルも溶解していない無血清培地(Control、以下「モリンガ非添加群」とも呼ぶ)(500μL)に交換し、更に20時間培養した。
上記20時間培養後、各サンプルの培養液全量を除き、速やかに細胞を0.4mLのISOGEN−II(ニッポンジーン)に溶解し、製造会社が推奨するプロトコルに従ってtotal RNAを精製した。これを鋳型とし、SYBR Premix EX Taq(TaKaRa)及びLightCycler 480(Roche)を用いて、それぞれ製造会社が推奨するプロトコルに従ってreal−time PCRを行った。この際使用したプライマー配列を下記の表1に示した。なお、β−アクチンは、内在性コントロールとして用いた。
【0030】
SIRT-1遺伝子発現増強作用の結果は図1の通りであった。図1から明らかなように、100%エタノールでモリンガ葉を抽出したのちに上記したダイヤイオンHP20で精製した製造例1のサンプルは、比較例1〜4のサンプルと比べ、明らかにSIRT-1遺伝子発現が増強されていた。
【0031】
【表1】
【0032】
[試験例2]細胞周期及び細胞増殖活性試験
ヒト皮膚由来繊維芽細胞株Hs68(JCRB No.IFO50350)を、10%FBS、1%Penicillin−Streptomycin solutionを含むDMEM(high glucose)培養液を用いて、37℃、5%CO−95%airの下でサブコンフルエントになるまで培養した後、トリプシン処理により細胞を集めた。集めた細胞を、上記DMEM培養液に懸濁して細胞懸濁液(1×10個/mL)を調製した。この細胞懸濁液を24穴プレートに500μLずつ及び96穴プレートに100μLずつ播種し、37℃、5%CO−95%airの下で前培養した。24時間後、0.1mMピオシアニン及びサンプルを溶解した上記DMEM培養液に交換し、更に48時間培養した。
なお、本試験例で用いたピオシアニンは、細胞内において、活性酸素を発生するラジカル発生剤としての働きをするものであり、本試験例及び以降の試験例において、細胞老化モデルを構築する役割を担う。
【0033】
上記24穴プレートで培養した細胞に対し、Cell-Clock cell Cycle Assay Kit(Biocolor, Ltd.)を用いて細胞周期解析を行った。なお、Cell-Clock cell Cycle Assay Kitは、レドックス色素を用いて,培養中の細胞の細胞周期をモニタリングできる公知の市販キットであり、細胞周期(G1、S、G2及びM期)の進行に伴い発色が変化するため、顕微鏡観察及び画像解析による細胞周期のモニタリングが可能である。
【0034】
細胞周期を測定した結果は図2の通りであった。図2において、G2期(間期(分裂準備期))及びM期(分裂期)の細胞を染色及びその後の画像解析により視覚的に示した。黒色(濃色)の面積が多いほど、G2期及びM期の細胞が多く、細胞周期が正常に機能していることを示す。
図2から明らかなように、本発明のモリンガのエタノール抽出物とピオシアニンを添加したもの(図2の左下図及び右下図)は、ピオシアニンのみ添加したもの(図2の右上図)に比べ、明らかに、黒色(濃色)の面積が多いため、G2期及びM期の細胞が多く、細胞周期が正常に機能していることがわかる。
【0035】
さらに、上記96穴プレートで培養した細胞に対し、DMEM培地に対し、Cell Counting Kit-8(同仁化学研究所)を5%の濃度になるように調製し、培養液全量を除き、速やかに置換した。4時間インキュベート後、マイクロプレートリーダーで450nmの吸光度を測定した。
【0036】
細胞増殖活性について測定した結果は、図3の通りであった。図3から明らかなように、本発明のモリンガのエタノール抽出物とピオシアニンを添加したものは、ピオシアニンのみ添加したものに比べ、モリンガ含有量に依存する形で、約20〜30%ほど、細胞が多く増殖していることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、SIRT-1遺伝子発現増加剤及び細胞周期正常化剤に関する。本発明の剤は、化粧品又はその素材の分野において有用である。
【要約】
【課題】SIRT-1遺伝子発現増加剤及び細胞周期正常化剤を提供すること。
【解決手段】クロロフィルを実質的に含まないモリンガ葉のエタノール抽出物を含むことを特徴とするSIRT-1遺伝子発現増加剤及び細胞周期正常化剤。
【選択図】図1
図1
図2
図3
【配列表】
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