(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記電気的に調節可能なレンズシステムが、電気的に調整可能な高分子レンズ又はエレクトロウェッティングレンズを用いて収差の補償を提供するステップを有する、請求項11に記載の方法。
【背景技術】
【0002】
斯かる光ベースの皮膚トリートメント装置は、例えばしわトリートメント又は毛切断のような美容的処置のために利用されている。光ベースのしわトリートメントにおいては、該装置は、処置されるべき皮膚の真皮において焦点を生成する。レーザのパワー及びパルス継続時間、並びに焦点の寸法は、皮膚組織の再成長を促し、それによりしわを少なくするように、レーザ誘起光学破壊(LIOB)現象が皮膚に影響を及ぼすように選択される。斯かる装置の例は、国際特許出願公開WO2008/001284において開示されている。
【0003】
光ベースの毛切断においては、入射光ビームが毛の内部に合焦させられ、LIOB現象が毛が切断されるようにする。例えば、国際特許出願公開WO2005/011510は、所定のパルス時間の間にレーザビームを生成するためのレーザ光源と、レーザビームを焦点へと合焦させるための光学系と、目標位置に該焦点を位置決めするためのレーザビーム操作器と、を有する、毛を短くするための斯かる装置を記載している。該焦点の寸法、及び生成されるレーザビームのパワーは、該焦点において、レーザビームが、毛組織についての特徴的な閾値を超えるパワー密度を持つようなものとされ、該閾値の上では、所定のパルス時間の間、毛組織においてレーザ誘起光学破壊(LIOB)現象が生じる。
【0004】
一般に、レーザ誘起光学破壊(LIOB)は、焦点におけるレーザビームのパワー密度(W/cm
2)が、特定の媒体に特徴的な閾値を超えたときに、パルス状の該レーザビームの波長に対して透明又は半透明な該媒体において生じる。該閾値の下では、当該媒体は、該レーザビームの波長に対して、比較的低い線形吸収特性を持つ。該閾値の上では、該媒体は、該レーザビームの波長に対して、大きな非線形吸収特性を持ち、このことは該媒体のイオン化及びプラズマの形成の結果である。当該LIOB現象は、キャビテーションや衝撃波の生成といった幾つかの力学的な影響に帰着し、LIOB現象の位置の周囲において該媒体を損傷させてしまう。
【0005】
LIOB現象は、皮膚から伸びる毛を破壊し短くするために利用され得ることが分かっている。毛組織は、約500nmと2000nmとの間の波長に対し、透明又は半透明である。当該範囲内の波長の各値に対して、焦点におけるレーザビームのパワー密度(W/cm
2)が、毛組織について特徴的な閾値を超えたときに、焦点の位置において毛組織においてLIOB現象が生じる。該閾値は、水性媒体及び組織について特徴的な閾値に近く、レーザビームのパルス時間に依存する。とりわけ、望ましいパワー密度の閾値は、パルス時間が増大すると減少する。
【0006】
有意な損傷即ち毛の初期破壊を引き起こすのに十分に効果的なLIOB現象の結果としての力学的効果を達成するためには、例えば10nsといったオーダーのパルス時間が十分であると考えられる。このパルス時間の値のためには、焦点におけるレーザビームのパワー密度の閾値は、2×10
10W/cm
2のオーダーとなる。上述したパルス時間、及び例えばかなり大きな開口数を持つレンズによって得られるかなり小さな焦点サイズに対して、当該閾値は、数十mJの総パルスエネルギーだけで得られることができる。同様のオーダーのパラメータ値は、国際特許出願公開WO2008/001284により詳細に記載されているように、皮膚組織におけるLIOB効果を生成するために用いられることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
生じ得る問題は、光が出射する光学系の部分(光出射ウィンドウ)が、LIOBの副産物(衝撃波、プラズマ、高パワー密度)により損傷させられ得ることである。損傷させられた光出射部分は、所望の位置における十分にしっかりとした焦点をもたらす該装置の能力に対して悪影響を及ぼし、処置工程の効果を低減させ、及び/又は皮膚の炎症といった負の副作用の出現を増大させ得る。
【0008】
それ故、光出射ウィンドウに対する損傷なく、皮膚への光の結合が確実にされる、LIOB生成装置に対するニーズがある。
【0009】
プロフェッショナル用途のLIOBベースの皮膚処置装置は、皮膚の内部の異なる又は複数の深さにおいて病変を生成し、及び/又はとりわけ深いしわ、入れ墨又はその他の皮膚特徴の処置のために高い処置効果を得ることが必要とされる。また、皮膚は人間の皮膚領域に亘って等しい厚さのものではない。斯かる装置の深さの範囲は、例えば好適には100μm乃至1000μmの範囲内である。更に該装置は、過度に複雑なシステム変更なしで、斯かる可変の深さの焦点特徴を提供することが可能であるべきである。理想的には、処置深さは、技術的な専門家の介入なしで調節可能であるべきである。該装置が、幾つかの適用領域に合致するよう、種々の異なる処置深さにおいて高速な処置を可能とすることも望ましい。
【0010】
斯くして、種々の深さにおいて処置することが可能であるべきというユーザの要件は主に、処置の効果の最適化に関連する。
【0011】
達成可能な最大の処置深さは一般に、一方では利用可能なレーザパワーの量及び真皮の物理的な深さにより、他方では装置の光出射ウィンドウに対する近さにより制限される。該ウィンドウ(即ちレーザ経路における最終的な光学素子)に近過ぎる処置は、該ウィンドウにおける光学破壊を導き、装置の永続的な故障を引き起こし得る。
【0012】
高い開口数と大きな自由動作距離とを併せ持つ単一のレンズは、一般的に比較的嵩張るものである。一例としては、例えば典型的に水中での自由動作距離3.3及び2.2mmを持つ、典型的に知られた浸水対物レンズの重さは、走査の間の迅速な加速を可能とするには大き過ぎる。更に、これら対物レンズの開口部は大きく、ビームを偏向させるのに必要とされる走査光学系を比較的嵩張るものとしてしまう。斯かる汎用の対物レンズに関する更なる問題は、皮膚内に焦点を持つ使用に最適化されておらず、これらの種類の用途には低減させられた性能に導く点である。調節可能な焦点深さを持つ系において生じる更なる問題は、ビームが皮膚内の複数の深さで合焦させられる場合に、焦点におけるビーム品質が(球面)収差に起因して劣化することである。これらの収差は、種々の対物レンズの変化する目標深さ並びに対象の領域毎の及び対象毎の皮膚湿潤度の違いによりもたらされる。収差に起因する焦点におけるビームの品質の低下は、LIOBの出現を防止し得、それにより処置の低い効率をもたらし得る。
【0013】
それ故、皮膚への光の結合が、皮膚内の種々の焦点深さについて改善される又は確実にさえされる、LIOB生成装置に対するニーズが存在する。
【0014】
本発明の目的は、上述したニーズの1つ以上を少なくとも部分的に満たすことにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
該目的は、独立請求項により定義される装置により達成される。従属請求項は、有利な実施例を定義する。有利な実施例は、従属請求項において定義される。
【0016】
本発明の第1の態様による例は、
毛又は皮膚組織のレーザ誘起光学破壊により皮膚を処置するためのパルス入射光ビームを提供するための光源と、
前記毛又は皮膚組織における焦点に前記入射光ビームを合焦させるためのフォーカスシステムと、
を有し、前記フォーカスシステムは、
前フォーカスレンズであって、前記前フォーカスレンズへの入射光ビームは収束ビームであり、前記前フォーカスレンズは、前記入射光ビームの収束を増大させるためのものである、前フォーカスレンズと、
凸状の光入射面及び凸状の皮膚接触面を持ち、前記パルス入射光ビームの波長において1.4乃至1.6の屈折率を持つ、フォーカスレンズと、
前記前フォーカスレンズと前記フォーカスレンズとの間の間隔を調節することにより、前記フォーカスシステムから前記焦点までの距離を制御するための、フォーカスコントローラと、
を有する装置を提供する。
【0017】
該装置は、人間又は動物の皮膚又は毛においてLIOBを生成するためのものであり得る。該装置は、斯かる人間又は動物の皮膚の処置、特に美容的処置のためのものであり得る。該装置は特に、当該目的のために適合され得るものであり、従って光ベースの皮膚処置装置であり得る。
【0018】
該装置は、制御可能な深さを与え、低いコスト及びシステムに対する単純な適用可能性を伴って実装されることができる、フォーカスシステムを提供する。このことは、望ましい自由動作距離を実装し得る他の方法に対する改善をもたらす。例えば、blue-rayプレイヤ、CDプレイヤ、DVDプレイヤ及び光学通信波長における用途に典型的に設計された商用の非球面及び球面の光学系が利用され得る。しかしながら、斯かる標準的な球面光学系は一般に、取り扱いの容易さのために嵩張るものである。これらの光学系はまた、光学的特性及び物質特性が好適ではないため、皮膚へと合焦させてLIOBを生成するためには、低い性能を与える。
【0019】
該装置はまた、小さな重量、大きな自由動作距離、及び適切な皮膚結合幾何の改善された組み合わせを実現する。
【0020】
前フォーカスレンズは、非球面レンズを有しても良い。商用の非球面レンズは例えば、カスタムの球面光学系と組み合わせて用いられても良い。小型の非球面光学系のための製造手法の開発は、依然としてカスタムの球面光学系の開発に遅れをとっている。殆どの非球面の小型光学系は、低いTgのガラス材料の圧縮成型を用いて製造され、複雑な金型設計を含む。代替の方法は、プラスチックの光学系の成型及び液体ゾルゲル溶融石英の成型を含む。
【0021】
これら後者2つの手法は複雑な高温成型設計ステップを含まないが、依然として工程に幾つかの反復を必要とする。
【0022】
完全にカスタマイズされた球面及び非球面の光学系の組み合わせを含む設計は、NA>0.8のような開口数(NA)についての高い値を実現し得る。例えば、皮膚のような媒体と接触したときに実用的である、1.2にのぼるNAが用いられ得る。
【0023】
前記前フォーカスレンズは、
凸状の光入射面と、
平面状の光出射面、又は、前記光入射面の平均曲率半径よりも大きな平均曲率半径を持つ凸状の光出射面と、
を有して良い。
【0024】
前記フォーカスレンズは、可能な限り皮膚の屈折率と合致させ、レンズの出射面における反射を低減させるため、1.4と1.6との間の屈折率を持っても良い。好適には、該レンズは、色分散を低減させるため、50と85との間のアッベ数を持つ。前記レンズは、好適にはBK7ガラスのようなBKガラスからつくられるか、又は溶融石英からつくられても良い。これらのタイプのレンズは、皮膚の屈折率よりも高い又は皮膚の屈折率に近い屈折率を持ちつつ、皮膚におけるLIOB効果を生成するために用いられる高い光強度に抵抗することが可能である点で、好適である。
【0025】
前記フォーカスレンズの外側面、即ち光出射面は、好適には反射防止コーティングを有する。該コーティングは、高い強度で用いられるレーザ光の反射を低減させる。このことは、皮膚又はレンズ表面自体からの反射光による、フォーカスシステム自体の損傷を防止する。斯かる反射は特に、皮膚におけるLIOB生成のために用いられる高い光強度について有意となり得る。
【0026】
一構成においては、該装置は更に、フォーカスシステムにおける収差の補償を提供するため、フォーカスシステムの前の光路に配置された調節可能なレンズシステムを有する。このことは、LIOB効率が、種々の焦点深さで維持されることを可能とする。該調節は好適には、例えば焦点距離が電気的に変化させられ得る電気的に調整可能なレンズを用いて、電気的に実現される。
【0027】
第1の例においては、前記調節可能なレンズシステムは、電気的に調整可能な高分子材料ベースのレンズのような、電気的に調整可能なレンズを有する。前記調節可能なレンズシステムはこのとき更に、電気的に調整可能なレンズの出射部において発散レンズを有しても良い。該発散レンズは、該電気的に調整可能なレンズの初期形状に対する補償を提供する。
【0028】
第2の例においては、該調整可能なレンズシステムは、エレクトロウェッティング(electrowetting)レンズ又は流体フォーカスレンズを有する。
【0029】
該装置は好適には、走査システムを有し、前記調整可能なレンズシステムは、前記走査システムの入射部に備えられる。
【0030】
本発明は、
毛又は皮膚組織のレーザ誘起光学破壊を生成するためのパルス入射光ビームを提供するステップと、
前フォーカスレンズを用いて、前記入射光ビームの収束を増大させ、
皮膚と接触し、凸状の光入射面及び光出射面を持ち、前記パルス入射光ビームの波長において1.4乃至1.6の範囲内の屈折率を持つフォーカスレンズを用いて、前記前フォーカスレンズから出射する光を合焦させ、
前記前フォーカスレンズと前記フォーカスレンズとの間の間隔を調節することにより、フォーカスシステムから焦点までの距離を制御する
ことにより、前記毛又は皮膚組織における焦点へと前記入射光ビームを合焦させるステップと、
を有する方法を提供する。
【0031】
本発明の第2の態様による例は、
毛又は皮膚組織のレーザ誘起光学破壊を生成するためのパルス入射光ビームを提供するための光源と、
前記毛又は皮膚組織における焦点に前記入射光ビームを合焦させるための調節可能なフォーカスシステムと、
前記焦点を走査するための走査システムと、
前記調節可能なフォーカスシステムにおける収差の補償を提供するための、前記調節可能なフォーカスシステムの前の光路に配置された、電気的に調節可能なレンズシステムであって、前記調節可能なレンズシステムは、前記走査システムに対する入射部に配置された、電気的に調節可能なレンズシステムと、
を有する装置を提供する。
【0032】
前記調節可能なフォーカスシステムは、本発明の第1の態様について定義されたようなフォーカスシステムであっても良い。
【0033】
第1の例においては、前記調節可能なフォーカスシステムは、電気的に調整可能な高分子レンズを有する。前記調節可能なレンズシステムはこのとき、前記電気的に調整可能な高分子レンズの出射部において発散レンズを更に有する。当該発散レンズは、該高分子レンズの初期形状の補償を提供する。
【0034】
第2の例においては、前記調節可能なレンズシステムは、エレクトロウェッティングレンズを有する。
【0035】
前記調節可能なフォーカスシステムは好適には、
前記入射光ビームの収束を増大させるための前フォーカスレンズと
凸状の光入射面及び光出射面を持つフォーカスレンズと、
を有し、前記装置は更に、前記前フォーカスレンズと前記フォーカスレンズとの間の間隔を調節することにより、前記フォーカスシステムから焦点までの距離を制御するための、フォーカスコントローラを有する。
【0036】
斯くして、前記フォーカスシステムはこのとき、以上に説明された第1の態様に基づくものであっても良い。第1の態様について定義されたいずれの特徴も、第2の態様のために用いられても良い。従って、第1の態様におけるように、前フォーカスレンズは非球面レンズを有しても良い。該レンズは、凸状の光入射面と、平面状の光出射面、又は、前記光入射面の平均曲率半径よりも大きな平均曲率半径を持つ凸状の光出射面と、を有しても良い。
【0037】
前記フォーカスレンズは、BK7ガラス又は溶融石英から形成されても良く、前記皮膚に接触するための前記皮膚接触レンズの外側表面は好適には、反射防止コーティングを有する。
【0038】
該第2の態様はまた、
毛又は皮膚組織のレーザ誘起光学破壊により皮膚を処置するためのパルス入射光ビームを提供するステップと、
調節可能なフォーカスシステムを用いて、前記毛又は皮膚組織における焦点に前記入射光ビームを合焦させるステップと、
走査システムを用いて、前記皮膚に亘って前記焦点を走査するステップと、
前記走査システムに対する入射部において、前記調節可能なフォーカスシステムの前において、電気的に調節可能なレンズを用いて、前記調節可能なフォーカスシステムにおける収差の補償を提供するステップと、
を有する、光ベースの皮膚処置方法を提供する。
【0039】
本発明による方法又は装置の使用は好適には、非治療的方法又は使用であり、特に、皮膚活性化(rejuvenation)、しわの低減、皮膚上の毛の除去等といった、皮膚の外観を変化させるための、美容的方法である。
【0040】
本発明の例は、添付する模式的な図面を参照しながら、以下に詳細に説明される。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明は、皮膚の光ベースの処置のための装置に関する。該装置は、光源と、該装置の外部に位置する焦点に該光源の光入射ビームを合焦させるための光学系と、を有する。該合焦させられた光は斯くして、皮膚又は毛のレーザ誘起光学破壊(LIOB)により、動物又は人間の皮膚組織を処置するため用いられ得る。
【0043】
第1の態様においては、フォーカスシステムは、入射光ビームの収束を増大させるための前フォーカスレンズと、凸状の光入射面及び光出射面を持つフォーカスレンズと、を持つ。焦点位置は、前フォーカスレンズとフォーカスシステムとの間の間隔を調節することにより制御される。
【0044】
第2の態様においては、ここでもまた、毛又は皮膚組織における焦点へと入射光ビームを合焦させるための調節可能なフォーカスシステムがあり、更に、調節可能なフォーカスシステムにおける収差の補償を提供するため、該調節可能なフォーカスシステムの前に、調節可能なレンズシステムがある。
【0045】
いずれの態様及びその他の態様についても、好適には該フォーカスレンズは、皮膚接触レンズとしての使用のために適合され、それ自体が皮膚接触レンズである。装置が使用されるときには、レンズと皮膚との間の光学的な接触を改善するための、屈折率整合流体のような媒体が、レンズと皮膚との間に適用されても良く、レンズ材料又は表面材料が、該流体又は皮膚自体の屈折率と好適に合致するよう構成されても良い。代替としては、フォーカスレンズは、光が皮膚に合焦させられる際に通る光学的なウィンドウと組み合わせて利用されても良い。該光学的なウィンドウは、該装置の一部であっても良いし、該フォーカスシステムの一部であってさえも良い。斯かる例は、米国特許出願公開US2015/0051593に記載されている。該光学的なウィンドウはこのとき、フォーカスレンズが該ウィンドウの近くに配置され得るか、又は該ウィンドウに接触さえし得るように、皮膚に対して適用されても良い。他の代替の設定においては、該装置とは別個の光学的なウィンドウが、側面の一方において、皮膚に適用される。当該別個の光学的なウィンドウは、比較的小さな厚さの光学的に透明なシート(単層又は多層)であっても良く、皮膚の曲線に少なくとも部分的に合致するような成形しやすいもの/湾曲可能なもの/柔軟なものである。一例は、国際特許出願公開WO2013/128380に開示されている。フォーカスレンズはこのとき、光学的透明シート接触レンズであっても良い。フォーカスレンズとは別個のウィンドウは、例えば国際特許出願公開WO2013/128380に記載されるような、皮膚とフォーカスレンズとの間の最適な光学的接触(例えば屈折率の好適な整合)を最適化するため、これら2つが異なる材料からつくられることを可能とする。
【0046】
本発明を詳細に説明する前に、本発明が関連する装置のタイプの一例の概略が示される。しかしながら、本発明が動作する他の装置もまた想到可能である。
【0047】
図1は、表面5を持つ皮膚3の処置のためのLIOBシステム1を示す。本例においては、該表面はむき出しの皮膚であるが、ここで以上に説明されたように屈折率整合のための透明なシートにより被覆されていても良い。
【0048】
システム1は、少なくとも所定のパルス時間の間、レーザ光ビーム11を生成するための光源9を有し、該システムは、レーザビーム11を焦点15に合焦させ、焦点15を、光源9からの光に対して少なくとも部分的に透明な皮膚3内の目標位置へと位置決めするための光学系13を有する。換言すれば、該光源は好適には、皮膚組織によって大きくは吸収されない又は完全に吸収されない光を提供するものである。
【0049】
図1に模式的に示される光学系13の例は、ビーム反射システム17、ビーム成形システム19、ビーム走査システム21、及びフォーカスシステム23を有し、これらのシステムは、光源の光を操作するのに適した、1つ以上のミラー、プリズム、ビームスプリッタ、偏光板、光ファイバ、レンズ、開口、シャッタ等を有しても良い。例えば、該走査システムは、走査プリズムを有する。本例におけるビーム反射システム17は、ダイクロイックビームスプリッタである。ビーム反射及びビーム成形は、拡張又は収縮をもたらし、光ビームに対する付加的な収束又は発散を導入する。
【0050】
該フォーカスシステムは、焦点深さ選択、ビーム成形、及びフォーカス及び光出射面/ウィンドウを持ち、本例においては、該面/ウィンドウは、皮膚に接触するのに適したものである。
図1には明確に示されていないが、該装置が使用されているときに、皮膚が塗布された透明なシートによってカバーされているかいないかにかかわらず、フォーカスシステムが皮膚表面に対する光出射面の接触を維持することを可能とするよう、フォーカスシステムを操作するための、輪郭追従サスペンションシステムがあっても良い。
【0051】
光学系13及び/又はレーザビーム11のビーム経路の少なくとも一部は、例えば不透明な管及び/又は1本以上の光ファイバを有する、光遮蔽包囲部のなかに囲まれても良い。光ビームがLIOBベースの装置において高いエネルギーのものとなり得るため、このことは例えばユーザの(目の)安全のために為されても良い。
【0052】
光源9は好適には、所定の波長(皮膚組織によって感知できないほどしか吸収されない又は好適には完全に吸収されない波長)の、所定のパルス継続時間及び反復速度又は周波数を持つ、所定の数のレーザパルスを発するよう構成された、レーザ光源である。システム1は、焦点15の目標位置が皮膚の表面の下となり得るよう構成可能である。焦点15の寸法、及び生成されるレーザビームのパワーは、焦点15において、レーザビーム11が、皮膚組織についての特徴的な閾値を超えるパワー密度を持つようなものであり、該閾値の上では、所定のパルス時間の間、レーザ誘起光学破壊事象が生じる。
【0053】
レーザ光源9とダイクロイックビームスプリッタ17との間には、関節アームの形をとる光ガイドシステムがあっても良い(
図1には示されていない)。該アームは、管と該管の内側の光をガイドするためのミラーと、を持っていても良い。光反射システム17、及び後続する構成要素はこのとき、ユーザによる保持のための適切なグリップを備えたハンドヘルド部品の一部を形成する。関節アームは、該装置の使用の間の、斯かるハンド部品の容易な3次元の移動を可能とする。関節アームのミラーの整合の誤差のため、ビームは、該関節アームに入る前に拡大させられ得、次いでビーム操作及び収差補正の前に収縮させられ得る。他の適切なガイド構造が利用されても良い。該ハンド部品は、光ガイド構造から着脱可能とさせられ、容易な交換を可能としても良い。
【0054】
皮膚3は、異なる光学的特性を持つ複数の層を有する。表皮は、最も外側の層から成り、防水保護障壁を形成する。表皮の最も外側の層は、角質層であり、粗さの微視的なばらつきのため、装置1と皮膚3との間の光の結合を妨げる。この理由のため、好適には、皮膚の屈折率及び/又はフォーカスシステムの出射レンズの屈折率に合致するための屈折率を持つ結合流体が、フォーカスシステムと皮膚との間に備えられる。
【0055】
表皮の下には、真皮が位置している。真皮は、本発明による装置を用いた皮膚処置の目標であるコラーゲン繊維を有する。
【0056】
皮膚処置の目的は、真皮において光ビーム11の焦点15を生成し、微視的な病変を生成して、該病変によりトリガされる皮膚における通常の修復機構によるものと考えられている新たなコラーゲン形成に帰着させることである。
【0057】
光源9は、任意のコントローラ25を用いて制御可能であり、該コントローラは、例えばレーザ強度、パルス幅若しくは継続時間及び反復速度、又は、光源において手近に可能である場合には波長調整を設定するためのユーザインタフェースを備えても良い。また、光学系13の1つ以上の部分は、該装置の光出射面に関して測定される焦点深さのような目標位置及び/又は焦点の1つ以上の特性を制御するための、任意の光源コントローラ25と一体化されていても良い、任意のコントローラ(図示されていない)を用いて制御可能であっても良い。
【0058】
レーザビーム合焦パラメータは、例えばフォーカスシステムの開口数の調節によって、ビーム成形及び/又はフォーカスシステムの適切な設定により決定されても良い。フォーカスシステムの開口数NAについての適切な値は、0.05<NA<nmの範囲から選択されても良く、ここでnmは動作の間のレーザ波長についての媒体の屈折率である。本発明に用いられ得る種々のビームエネルギーについての適切なNA値の例は、国際特許出願公開WO2008001284に開示されている。また、本発明による使用に適切なレーザ光源についての波長範囲及びエネルギー設定も、国際特許出願公開WO2008001284に開示されている。それ故、これらの及びその他の(詳細な)選択肢並びに本発明の装置において又は該装置を用いて実装され得る動作の方法について、当業者は国際特許出願公開WO2008001284を参照されたい。斯かる選択肢及び使用の方法は、国際特許出願公開WO2008001284の記載されたセンサフィードバックシステム及び方法なしで実装されることができることに留意されたい。
【0059】
適切な光源のひとつは、約1064nmの波長の、約5乃至10nsのパルス継続時間を持つレーザパルスを発する、QスイッチNd:YAGレーザを有するが、例えばNd:Cr:Yag3−レベルレーザ及び/又はダイオードレーザのような他のレーザが用いられても良い。
【0060】
図1の装置の例においては、ビーム反射システム17は、レーザ光は反射するが、本例においては好適にはレーザ光源の二倍周波数の緑色光のような可視波長の光は通過させる、ダイクロイックビームスプリッタを有する。斯くして、皮膚3から受けた可視波長の光は、光学系により捕捉され、手動又は自動でシステムを制御するために用いられることができるフィードバック信号11'として供給される。LIOBは、特定の状況下では皮膚において光の周波数倍増を生成し得ることが知られており、このことは実際の処置の深さ及び/又は処置の程度を測定又は推定するために用いられ得る。
【0061】
以上に概説された特定の走査及びビームの動き設計は、単なる一例であることに留意されたい。以上に概説されたように、本発明は、皮膚におけるLIOBの生成のための他の多くの異なるシステム構成においても利用され得る、フォーカスシステムの設計に関し、例えば本発明のレンズ構成を持つ低反復速度レーザが、少なくとも走査システム21が存在しないように、いずれの走査をも用いずに、スタンドアロン型の装置として用いられても良い。この場合には、皮膚の広い領域を処置するため、消費者又は操作者は、手動で該装置を動かしても良い。
【0062】
フォーカスシステム23により提供される皮膚表面の下の合焦深さは、調節可能である。
【0063】
図2は、斯かる調節を実装する一方法を示す。フォーカスシステム23は、それぞれが異なる焦点深さを持つ光出射面/ウィンドウ26を持つフォーカスレンズのセットを有し、走査システム21を回転させるスキャナモータ27により光路がレンズの1つに提供される。出射面/ウィンドウ26は、輪郭追従サスペンションシステム28により保持される。該出射面/ウィンドウは斯くして、円形の経路のまわりに配置され、切り欠きシステムが、走査システム21に対する位置決めを提供する。4つの出射面/ウィンドウ26があっても良く、従ってそれぞれが別個にばね付勢されて輪郭追従を提供する4つのレンズセットがあっても良い。
【0064】
走査システム21は、皮膚の領域上の焦点を走査するために用いられる。
【0065】
電気機械的システムが、該走査システムを操作してビーム位置を動かし、また同期してフォーカスシステム23(即ち対物レンズ)を動かす。斯くして、該フォーカスシステムは物理的に走査されるが、走査システム21の上流の全ての構成要素が静的なままである。
【0066】
図1のシステムにおいて用いられ得るレーザの一例は、1000Hzの最大反復周波数を持ち、典型的な処置方式は、200μmの病変ピッチを用い、200mm/sの典型的な最大走査速度に帰着する。これら走査速度を手で適用した場合には制御を失うため、当該走査速度はいずれの手動走査のみの選択肢を排除する。
【0067】
更に、いずれの開始−停止型の走査システムは、短距離の加速で当該走査速度に到達することは困難となるため、機械的な振動及びレーザの容量の不十分な使用に導く。より容易に制御される低速な走査速度は、大きな表面積に対する処置時間をかなり増大させる。
【0068】
この問題を克服するため、好適には回転運動に基づいた、連続的な動き走査が用いられても良く、このことはこれらの走査速度を容易に実現しながら、強い振動及びレーザ能力の不十分な使用の問題を生じない。この目的のため、走査システム21において、回転プリズム設定が用いられても良い。
【0069】
第1のとり得るプリズム設計は、菱形を有する。2つの対向する平行な端面が、内部全反射面として機能する(例えば
図1において側面図で示された菱形を持つ)。これら面は、入射光の方向に対して45度をなす。プリズムにおける2つの内部反射が、入射ビームの横方向のシフトをもたらし、それにより、出射ビームは、入射ビームに対し平行であるが横方向にシフトされている。横方向のシフト方向に垂直な、それ故入射ビームの方向に平行な軸のまわりにプリズムを回転させることにより、円形の経路が出射ビームによって掃引される。該回転は、入射ビームの軸のまわりのものである。円形の掃引の半径は、菱形の長さである。菱形のプリズムは、必要に応じて、表面に反射防止コーティングを備えて製造されても良い。
【0070】
第2のとり得るプリズム設計は、ダブ(dove)プリズムである。2つの端面が屈折界面として機能し、底面が内部全反射面として機能する。これら端面は、入射光に対して45度であるが、菱形プリズムの場合のように互いに平行ではなく、互いに90度をなす(それ故
図1に模式的に示されたものとは異なる側面図を呈する)。該プリズムにおける2回の屈折及び1回の内部全反射が、ここでもまた入射ビームの横方向のシフトをもたらし、それにより出射ビームが、入射ビームとは平行であるが横方向にシフトされる。横方向のシフト方向に垂直な、それ故入射ビームの方向に平行な軸のまわりにプリズムを回転させることにより、円形の経路が出射ビームによって掃引される。該回転は、入射ビームの軸のまわりのものである。ビームの平行移動の量は、該ダブプリズムの入射面に対する入射ビームの位置、及び該プリズムのサイズに依存する。該プリズムは、主入射光線のまわりに回転させられる。ここでもまた、反射による損失を低減させるため、角度のついた面に反射防止コーティングが追加されても良い。
【0071】
回転プリズムは、振動を回避するよう機械的にバランスをとられる。プリズムの載置部は、転がり軸受上に懸架され、モータの回転子に直接に接続し、それにより、合焦させられた光の有効な開口数に対する収差補正設定の影響を最小化させる。
【0072】
第1の態様においては、本発明は特にフォーカスシステム23に関し、皮膚とシステムとの間に塗布される透明シートのような結合媒体の使用を伴って又は伴わずに、皮膚に対する最適な結合を提供しつつ、焦点位置が調節されることを可能とするレンズシステムを提供する。該設計は、接触ウィンドウ/出射レンズの損傷及び皮膚の損傷を防止することを目的とし、斯くして改善された安全性及び処置の増大された効果を提供する。これらの目的は、特別に設計された特注の皮膚接触ウィンドウ/レンズと市販されている非球面レンズとの組み合わせに基づいて達成される。
【0073】
図3は、フォーカスシステム23の設計を示す。該システムは、フォーカスレンズ30の組み合わせを有し、該レンズを通って、光が皮膚及び前フォーカスレンズ32に入る前に該装置を出る。
【0074】
レンズ30は、分散を最小化するため、好適には50乃至85の範囲内のアッベ数を持つ、光学的なガラスのような光学的材料から製造される。最も好適には、当該レンズの屈折率は、皮膚の屈折率である1.4に近い。可能な限りの整合は、フォーカスシステムの出射面と皮膚表面との間の反射を低減させ(これらの間に透明なシートが塗布されていてもいなくても)、これにより両方のシステム及び皮膚の表面の反射により引き起こされる損傷を低減させる。好適には、該屈折率は、1.4と1.8との間、1.4と1.6との間、1.4と1.55との間、又は1.4と1.5との間である。該光学的材料は好適には、皮膚におけるLIOB生成のために用いられる高いレーザ光ビーム強度に耐えるよう選択される。プラスチック材料よりも、無機材料が好適である。以上の考慮に入れると、例えばホウケイ酸クラウン(BK)ガラス、及び特にBK7タイプが用いられても良い。これらのガラスは、1.4よりも大きいが1.4に近い、1.5の屈折率を持ち、優れた物質安定性を提供し、低減された反射を伴うLIOB生成のためのアッベ数を提供する。代替としては、1.46の屈折率を持つ溶融石英が用いられても良い。最も好適には、フォーカスレンズは、BK7光学ガラス又は溶融石英から製造される。
【0075】
レンズ30は両凸レンズを有し、例えば本例においては溶融石英の両凸レンズを有する。該レンズは、1064nmの高パワーレーザに適した反射防止コーティング31を少なくとも出射面の側に持つ。該レンズのそれぞれの側における凸面は、同じ曲率及び設計を持つ。
【0076】
レンズ30は、第1の面即ち入射面と、第2の面即ち出射面と、を持つ。該第1の面は球面であり、皮膚における特定の焦点に対する合焦を生成する。第2の面も球面であり、皮膚と直接接触するためのものである。球面の表面は、特に該レンズが接触する皮膚と屈折率が整合させられるため、収差の導入を回避する。該レンズは好適にも高い損傷閾値を持つ。レンズの開口数は、皮膚の屈折率に対応するファクタだけ増大させられる。開口数は焦点の深さに対して不変となる。
【0077】
レンズ30の高い開口数は、対物レンズのサイズの非常にかなりの部分に亘る、走査システムからの焦点を走査することが実用的に実現可能ではないことを意味する。一例として、固定された高い開口数の対物レンズ上のビーム偏向により走査されることができる典型的な領域は、レンズ自体の半径の約10%である。この領域は例えば、数百マイクロメートルに限定される。開口数が高いほど更に困難となり、走査領域が更に数十マイクロメートルに限定され、該サイズは単一の処置領域のサイズ内である。それ故、走査は、全体として対物レンズの動きを包含する。
【0078】
レンズ32は、レーザ強度を維持することが可能な市販されている非球面レンズを有する。レンズ32の目的は、近収束光(
図1参照)を所望の収束角度に変換することである。レンズ32は、レンズ32が空気中にのみある場合に、フォーカスレンズ30と同じ深さに合焦させる、第1の非球面34を持つ。本例においては、レンズ32は、例えば0.7以上の、(空気中での)高い開口数を持つ。
【0079】
フォーカスシステムの第1のレンズ表面34を通過した後の光線は、
図3において示されている。
【0080】
適切な非球面レンズは、レーザダイオード、光ダイオード、及びファイバ結合システムにおける使用について、及び光データ記録の分野において、知られている。例として、適切なレンズは、LightPath Technologies Inc.社により製造される。
【0081】
レンズ32は、凸状の第1の面即ち光入射面34と、平坦な光出射面36、又は光入射面の曲率半径よりも大きなレンズ面を備えた凸状の光入射面36と、を持つ。
【0082】
非球面レンズは、例えば780nmのような設計波長とは僅かに外されて利用されても良く、この場合に製造原料となるECO-550ガラス材料の僅かに小さな屈折率に帰着する。その結果、非球面に入射する光の収束はこの効果に対して補正される必要があり、即ち僅かに収束した入射が必要とされる。
【0083】
レンズ32は、レンズ30と同じ材料から形成されても良いが、他のレンズに比べてレンズ32においては強度が低いため、より低コストで製造が容易な材料からつくられても良い。従って、レンズ30は、BK7光学ガラス若しくは溶融石英又はその他の材料からつくられても良い。
【0084】
前フォーカスレンズ32は例えば、1064nm用の反射防止コーティングを備えた、焦点距離f=4.55mm、NA=0.55の、LightPath352230-1064レンズを有する。
【0085】
レンズ30は例えば、1064nm用の反射防止コーティングを備えた、曲率半径r
1,2=3.2248mmのレンズ表面を持つ、直径3.6mmの、光軸に沿ったレンズ30の中心における厚さが2mmの、溶融石英両凸レンズを有する。
【0086】
2つのレンズ30、32間の間隔は、焦点深さを変化させるよう調節可能である。この調節は手動であっても良いが、好適には電気的であるか又は装置制御可能である。該調節は、処置の間に実行されても良いが、好適には、レーザ光が少なくともレンズ30に入射していないとき、好適にはフォーカスシステムに入射していないときに実行されるように制御される。典型的には、焦点深さ調節は、処置の間にリアルタイムには実行されない。
【0087】
図1に示されるように、コントローラ25とフォーカスシステム23との間に制御経路がある。調節は
図4に示される。
【0088】
例えば皮膚並びに画像センサ及び画像プロセッサから受けた光を用いた、フィードバック制御が利用されても良い。ここで以上に示されたように、斯かる光は、皮膚において生成された可視の二倍周波数のレーザ光であっても良い。画像センサにより捕捉された画像はこのとき、フォーカスシステムと皮膚との間の接触の性質を決定するために利用されても良く、焦点がそれに応じて調節されても良い。該調節は例えば、皮膚の乾燥度を考慮に入れても良い。
【0089】
図4Aは、本例においては例えば約750μmの最大焦点深さに対応する、2つのレンズ間の第1のゼロ間隔を示す。
図4Bは、例えば約200μmの最小焦点深さに対応する、2つのレンズ間の最大間隔を示す。
【0090】
これら2つのレンズの組み合わせは、ユーザの規定に対する幾つかの制限をもたらす。このことは、非球面レンズ32の制限された自由動作距離に関連し、皮膚接触レンズ30の最小の実現可能な厚さに対する制限とも組み合わせられる。その結果、真皮内の最大の実現可能な処置深さは、約750μmであり、好適な1mmよりは僅かに小さい。
【0091】
これら2つのレンズ間の距離における相対的なシフトは、何らかの収差補正手段が、補償のために導入される必要があることを意味する。この収差補正をどのように実装するかの例は、以下に議論される。
【0092】
更に、以上の例における非球面レンズは、設計波長である780nmから僅かに外れて利用され、製造原料となるECO-550ガラス材料の僅かに小さな屈折率に帰着する。その結果、非球面に入射する光の収束はこの効果に対して補正される必要があり、即ち僅かに収束した入射が必要とされる。
【0093】
本発明は、LIOBベースの皮膚処置装置に関する。フォーカスシステムは、改善された皮膚との接触を提供して均一な光学的な結合を提供し、接触ウィンドウ/出射レンズの損傷及び皮膚の損傷を防止する。また、皮膚処置又は所望の場合にはシェービングのための、シームレスな輪郭追従を可能とする。斯くして、皮膚処置は、毛除去シェービンス処理を有しても良い。使用の間、フォーカスシステム23は、処置されるべき又はシェービングされるべき皮膚表面の上を動かされる。該フォーカスシステムは、入射光ビームが該装置を離れることを可能とする出射ウィンドウを形成する。該フォーカスシステムは、このとき光学的な刃を形成する。
【0094】
皮膚処置は、通常の加齢過程の結果として人間の皮膚に生じ得るしわを低減させるための皮膚活性化装置を有しても良い。使用の間、フォーカス要素は、処置されるべき皮膚に押し付けられるか、又は該皮膚の近くに保たれる。フォーカスシステムにより形成される出射ウィンドウは、皮膚と平行に保持され、入射光ビームが、該出射ウィンドウから出て、皮膚表面に対して略垂直な方向で皮膚に入る。国際特許出願公開WO2013/128380に記載されているように、1つ以上の屈折率整合流体を含む透明なシートが、フォーカスレンズ(又は存在する場合には更なる平坦な出射ウィンドウの出射ウィンドウ)と皮膚との間に備えられても良い。このことは、皮膚上での又は透明なシートの上面上でのフォーカスシステムの横方向の動きを改善し得るため、本発明の好適な設定及び使用方法である。該シートは、同様に国際特許出願公開WO2013/128380に詳細に記載されているように、角質層の粗さの毛細管力によって皮膚を該シートに押し付けることにより、改善された屈折率整合及び皮膚の平坦化のために利用されることができる。斯かるシート又はフォイル(foil)の詳細は、示された参照文献に開示されており、本発明の一部であることを意図されるが、簡単さのためここでは繰り返される必要はない。
【0095】
斯くして、本発明によるあらゆる用途において、フォーカスシステムと皮膚表面との間に浸漬流体が備えられても良い。好適には、フォーカスシステム23の皮膚接触レンズ及びLIOBが生じるべき皮膚又は毛の屈折率に近い屈折率を持つ、浸漬流体が用いられる。この目的のため、約1.4乃至約1.5の屈折率を持つ流体が適している。また、幾つかの装置及び用途については、1.33という幾分か低い屈折率を持つ水も、適切な浸漬流体となり得る。透明なシートとともに利用するのに適した流体の例は、国際特許出願公開WO2013/128380に示されている。
【0096】
上述したように、可変のフォーカス能力は、幾分かの収差補正が補償のために導入される必要があることを意味している。
【0097】
当該収差補正は、例えばビーム成形(ビーム成形システム19による)の前又は後のような、該システムにおける種々の点で実装されても良い。更に、ビーム成形システム19は、単にビーム反射システム17と走査システム21との間に収差補正が提供されるよう、フォーカスシステム23により実装されても良い。
【0098】
皮膚内の異なる深さにおいて合焦させるときに予測される球面収差を補正するため、走査システム21の走査プリズムに入射するビームの発散が調節可能とされても良い。
【0099】
最も単純な方法は、ユーザが1つ以上のレンズ位置を操作することによりビームの発散を調節することを可能とすることであり得る。しかしながら、これらレンズの配置は極めて重要であり、システムはレーザ光学の背景知識を持たないユーザによっても操作される必要があるため、選択された焦点深さに依存して、又は例えば観察されたLIOBフラッシュ強度に依存してのように動作中に、レンズの位置又は強度を調節する、何らかの形の自動化された補正を実装することが好適となり得る。
【0100】
本発明の第2の態様は、収差補正に関する。
【0101】
電動のフォーカスは一般に多くの空間を消費し、機械的に複雑であり、一般に動的な変化に追従するには低速過ぎるため、斯かる収差補正には適合型の光学素子が好適である。
【0102】
適切な適合型の光学素子の2つの例は、電気的に調整可能な低分散高分子レンズ及び液体フォーカスレンズである。これらは、電気的に調整可能なレンズの2つの例である。
【0103】
電気的に調整可能な低分散高分子レンズは、ボイスコイルアクチュエータによる柔軟な高分子の弾性変形に基づくものである。斯かるレンズは例えば、Optotune社から市販されている。液体フォーカスレンズは、エレクトロウェッティングの原理に基づき、低屈折率の水相と高屈折率のオイル相との間の接触面の曲率が、レンズの載置台の表面の湿潤特性を変化させることにより変化させられる。斯かるレンズは例えば、Varioptic社又はOptilux社から市販されている。斯かるレンズは、例えば米国特許US7616737又はUS7808717及びその参照文献においても記載されている。
【0104】
低分散高分子レンズは、既製のフォーカスレンズの2.5mmの直径に比べて、例えば10mmの大きな開口直径の点で、利点を持つ。大きなレンズは、整合の困難さを低減させる。高分子レンズの欠点は、温度に対する感受性であり、継続的な高いレーザパワー又はボイスコイルに対する高い電気駆動電流で動作する場合に、誤った焦点深さ及び/又は物理的な損傷に導き得る。流体フォーカスレンズは、非常に少ない電流しか引き込まないという利点を持つ。
【0105】
これらレンズは好適には、1064nmの高パワーレーザ光に適したコーティングを施される。
【0106】
図5は、高分子レンズに基づく可変レンズ設計を示す。
【0107】
図5は、制御ユニット40(ボイスコイル)、高分子レンズ42及び付加的な発散レンズ44を示す。
【0108】
発散レンズは、収束高分子レンズ焦点長さの全体を補償し、2つのレンズを通過した後も光が依然として略収束光となるようにする。付加的な発散レンズ44は、ビームが、収束と僅かに発散との間の適切な範囲内で調節可能となるようにする。
【0109】
高分子レンズは、ボイスコイル及び関連する機構を保持する筐体と、外部の影響から感度の高い凸状の高分子表面を保護するための幾つかのウィンドウと、を有する。
【0110】
調節の目的は、光学系全体により引き起こされる収差を補償することである。フォーカスシステムは実際には、幾つかのレンズ及び皮膚自体を有する。該システムは、以下の幾つかの理由により変化し得る。
(i)ユーザ又は操作者が、皮膚のなかにおける処置深さを変化させるためフォーカスレンズの異なるセットを選択すること。
(ii)例えば動作温度の変化により、入射レーザビームが変化すること。
(iii)異なる水分レベル等による、処置されている皮膚における屈折率プロファイルの変化。
【0111】
該調節は、対物レンズに入射するビームの発散を僅かに変化させ得(ビームの直径は略変化させないままである)、焦点品質に対する上述した効果の影響を低減させるために利用され得る。更に、光学的なシミュレーションが、これらの種類のツールを用いることにより、より高次の収差(特に3次の球面収差)が効果的に低減させられることができることを示している。
【0112】
可変レンズ設計は、フォーカスシステム23の非球面レンズ32の前に配置される。
【0113】
フォーカスシステム23の非球面レンズ32に入射するビームの直径に対する可変の発散の影響を制限するため、収差補正要素が可能な限り走査システム21の近くに配置され、機械的な要素及び走査モータの配置に利用可能な空間の量を効果的に制限する。
【0114】
図6は、収差補正のために用いられるエレクトロウェッティングレンズ50の光線追跡を示す。
【0115】
該レンズは、非常に小さな量の収束をもたらす。当該レンズのためには、初期曲率の追加的な補償は必要とされない。該レンズは、その代わりに、小さな量の発散をもたらすことが必要とされ得る。入射ビームは収束ビームに近く、必要とされる補正は典型的に小さい。
【0116】
図7は、フォーカスシステム23の収差補正のための調節可能なレンズシステム60を含むよう変更された、
図1のシステムを示す。調整可能なレンズシステム60は、フォーカスシステム23の焦点深さ設定の調節と同期してコントローラ25により制御され、収差補正がフォーカスシステム23の設定に合致するようされる。調整可能なレンズシステム60は、走査システム21の入射部に備えられる。
【0117】
走査システムは例えば、種々の深さのための対物レンズ23のセットを有する。調節可能なレンズシステムは、これら対物レンズのそれぞれにより共有され、選択された対物レンズが、皮膚上を走査させられる。斯くして、収差補正要素は、該システムの静的な部分のままである。収差補正は、焦点深さ、即ち選択された対物レンズと、光路における他の全ての構成要素によりもたらされる収差と、を考慮に入れる。その目的は、ビーム径を変化させることなく、球面収差を補償することである。球面収差は例えば、前フォーカスレンズ32によりもたらされる。
【0118】
斯くして、嵩張り重いものとなり得る、滑動電気部品等の必要性のため、及び動きが調整可能なレンズ自体に振動を引き起こし得るため、高速で連続的な動きによる走査を困難とする収差補正システムは、フォーカスシステム23(対物レンズ)によって走査される必要がなくなる。フォーカスシステム23を形成するフォーカスレンズ及び載置部は、数グラムの重さしかない。高分子調整可能レンズは例えば、関連する載置部及び平凸レンズを除いて、数十グラムの重さしかない。
【0119】
斯くして、収差補正は空間的に静的であるが、空間的に依存する(例えばフラッシュ強度又は可聴のフィードバックに基づく)種々のフィードバック手段に依存して、時間とともに変化させられても良い。
【0120】
図1及び7のシステムは、レーザとフォーカスシステムとの間に光学要素の1つの特定のセットを持つ。しかしながら、当該構成は、限定することを意図したものではない。本発明のフォーカスシステム及び収差補正システムは、より多い数の又は少ない数の構成要素を持つ異なるシステム構成で用いられ得る。以上に説明から明らかであるように、本発明は特に、皮膚と接触する最終的なフォーカスシステム及び収差補償システムに関する。
【0121】
収差補正は特に、本発明の第1の態様と関連して説明されたような、電気的に調節可能なフォーカスシステムのために興味深いものである。しかしながら、収差補正はまた、
図2に示されたような機械的に調節可能なフォーカスシステムと組み合わせて用いられても良い。
【0122】
特に、全ての収差が調節の選択可能なセットにおいて制御されなくても良く、微調整が場合毎に又は動的な態様で望ましいものとなり得る。
【0123】
収差補正システムは、焦点深さに大きく影響を与えるのに十分なパワーを持たず、そのため(
図2の)インデクシングシステムが、収差補正システムと組み合わせられても良い。
【0124】
上述の実施例は本発明を限定するものではなく説明するものであって、当業者は添付する請求項の範囲から逸脱することなく多くの代替実施例を設計することが可能であろうことは留意されるべきである。請求項において、括弧に挟まれたいずれの参照記号も、請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。動詞「有する(comprise)」及びその語形変化の使用は、請求項に記載されたもの以外の要素又はステップの存在を除外するものではない。要素に先行する冠詞「1つの(a又はan)」は、複数の斯かる要素の存在を除外するものではない。本発明は、幾つかの別個の要素を有するハードウェアによって、及び適切にプログラムされたコンピュータによって実装されても良い。幾つかの手段を列記した装置請求項において、これら手段の幾つかは同一のハードウェアのアイテムによって実施化されても良い。特定の手段が相互に異なる従属請求項に列挙されているという単なる事実は、これら手段の組み合わせが有利に利用されることができないことを示すものではない。