【実施例】
【0044】
次に本発明について実施例を示してさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0045】
〔実験例1〕
〔1〕検量線の作成
検量線作成に用いたポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、内部標準物質であるポリ酢酸ビニル(PVAc)を表1にまとめる。
【0046】
【表1】
【0047】
PE、PP、PVAcの特性吸収帯は、各重合体のみで測定したIRスペクトルに基づき、表2に記載の通り決定した。なお、表1に記載のPE、PP、PVAcのIRスペクトルを
図1〜3に示す。
【0048】
【表2】
【0049】
〔1−1〕試料の秤量
フード付き電子天秤を用い、50mlのサンプル管瓶に、前記PEおよびPPを、後述の表3に記載の割合かつ合計約30mgとなるように秤量した。また、PVAcを約15mg秤量した。
【0050】
前記秤量に当たっては、秤量後60秒間静置し、値が一定になったのを確認した。
【0051】
各サンプルに、PE、PPおよびPVAcの秤量したmg数を、小数点以下第1位まで測定し、記録し、表3に記載のPE:PP重量比率、PE/PVAc重量比、およびPP/PVAc重量比の算出に使用した。
【0052】
〔1−2〕溶媒の添加
前記1−1において、PE、PPおよびPVAcが秤量された50mlサンプル管瓶に、1,1,2,2−テトラクロロエタン約4.5gを加えた。なお、溶液濃度が1%になるように、PE、PPおよびPVAcの合計重量の100倍量の1,1,2,2−テトラクロロエタンを使用した。
【0053】
〔1−3〕試料の溶解
前記1−2で溶媒が加えられたサンプル管瓶を、200〜220℃の範囲に保ちながら30分間加熱を行い、均一溶液を調製した。
【0054】
〔1−4〕試料の乾燥
前記1−3で溶解させた試料を、乾燥、固形化させるために、ドラフト内で溶媒を均一に蒸発させた。乾燥の仕上げとしてロータリーポンプを用いて真空乾燥を行い、溶媒を蒸発、除去した。
【0055】
〔1−5〕試料の採取
前記1−4で得られたサンプル管瓶中の乾燥された試料を、スパーテルで採取し、メノウ乳鉢で混合し、FT−IR測定試料とした。
【0056】
〔1−6〕FT−IR測定
前記1−5で調製したFT−IR測定試料のIRスペクトルを、それぞれフーリエ変換赤外分光分析装置 Spectrum100(株式会社パーキンエルマージャパン製)を用いて測定した。
【0057】
得られたIRスペクトルの前記特性吸収帯の面積に基づき、PEとPVAcとの面積比およびPPとPVAcとの面積比を算出した。
【0058】
なお、IRスペクトルの測定は、各試料について20点測定を行い、20点について各特性吸収帯のピーク面積を求め、上下5点を除外した10点に基づき、平均を算出し、各特性吸収帯の面積とした。
【0059】
各試料のPE:PP重量比率、PEとPVAcとの面積比、PEとPVAcとの重量比、PPとPVAcとの面積比、PPとPVAcとの重量比を表3に示す。
【0060】
なお、PE:PP重量比率としては、秤量予定の重量比率および実際に秤量した重量に基づき計算した重量比(実測値)の両方を示す。
【0061】
【表3】
【0062】
表3の結果を基に作成した、PEとPVAcとの、重量比(実測値)と、面積比との関係を
図4に示し、PPとPVAcとの、重量比(実測値)と、面積比との関係を
図5に示す。
【0063】
表3および
図4に示した結果から、プラスチック中のPEの重量は、以下のように求めることができる。
【0064】
PE重量(mg)/PVAc重量(mg)=18.24PE面積/PVAc面積
ここで、上記式の相関係数は、0.8657であった。
【0065】
PE重量(mg)=18.24PE面積/PVAc面積×PVAc重量(mg)
また、プラスチック中のPE純度(%)は試料全体の重量をSW(mg)とすると、以下のように求めることができる。
【0066】
PE純度(%)=PE重量(mg)/SW(mg)×100
表3および
図5に示した結果から、プラスチック中のPPの重量は、以下のように求めることができる。
【0067】
PP重量(mg)/PVAc重量(mg)=71.11PP面積/PVAc面積
ここで、上記式の相関係数は、0.9714であった。
【0068】
PP重量(mg)=71.11PP面積/PVAc面積×PVAc重量(mg)
また、プラスチック中のPP純度(%)は試料全体の重量をSW(mg)とすると、以下のように求めることができる。
【0069】
PP純度(%)=PP重量(mg)/SW(mg)×100
〔実験例2〕
実験例1で得た検量線の妥当性を検討するために、以下の実験を行った。
【0070】
減容再生されたポリエチレンを主成分とするPEとPPとの混合リサイクル材および、減容再生されたポリプロピレンを主成分とするPEとPPとの混合リサイクル材について、以下の方法でIRスペクトルおよび
1H−NMRスペクトルを得て、各スペクトルから導かれる結果を対比した。
【0071】
なお、減容再生されたポリエチレンを主成分とするPEとPPとの混合リサイクル材をPE混合リサイクル材とも記し、減容再生されたポリプロピレンを主成分とするPEとPPとの混合リサイクル材をPP混合リサイクル材とも記す。
【0072】
〔2−1〕試料の前処理
各混合リサイクル材を、冷凍粉砕機(型式:JFC−300、吉田製作所製)を用いて細かく粉砕した。
【0073】
フード付き電子天秤を用い、50mlのサンプル管瓶に、粉砕された混合リサイクル材を約30mg、PVAcを約15mgとなるように精秤量した。
【0074】
前記秤量に当たっては、秤量後60秒間静置し、値が一定になったのを確認した。
【0075】
各サンプルに、混合リサイクル材およびPVAcの秤量したmg数を、小数点以下第1位まで測定し、記録し、検量線に基づき、PE重量を算出する際、PP重量を算出する際の試料全体の重量、PVAcの重量として使用した。
【0076】
〔2−2〕溶媒の添加
前記2−1において、混合リサイクル材およびPVAcが秤量された50mlサンプル管瓶に、1,1,2,2−テトラクロロエタン約4.5gを加えた。なお、溶液の濃度が1%になるように1,1,2,2−テトラクロロエタンを加えた。
【0077】
〔2−3〕試料の溶解
前記2−2で溶媒が加えられたサンプル管瓶を、200〜220℃の範囲に保ちながら30分間加熱を行い、均一溶液を調製した。
【0078】
〔2−4〕試料の乾燥
前記2−3で溶解させた試料を、乾燥、固形化させるために、ドラフト内で溶媒を蒸発させた。乾燥の仕上げとしてロータリーポンプを用いて真空乾燥を行い、溶媒を蒸発、除去した。
【0079】
〔2−5〕試料の採取
前記2−4で得られたサンプル管瓶中の乾燥された試料を、スパーテルで採取し、メノウ乳鉢で混合し、FT−IR測定試料とした。
【0080】
〔2−6〕FT−IR測定
前記2−5で調製したFT−IR測定試料のIRスペクトルを、それぞれフーリエ変換赤外分光分析装置 Spectrum100(株式会社パーキンエルマージャパン製)を用いて測定した。
【0081】
得られたIRスペクトルの前記特性吸収帯の面積に基づき、PEとPVAcとの面積比およびPPとPVAcとの面積比を算出した。
【0082】
該面積比およびPVAcの重量、並びに実験例1で得た検量線から、以下のように、PE混合リサイクル材についてはPE純度を算出し、PP混合リサイクル材についてはPP純度を算出した。
【0083】
(PE混合リサイクル材のPE純度)
PE重量(mg)=18.24PE面積/PVAc面積×PVAc重量(mg)
=18.24×0.6261/7.381×14.9
=23.05
PE純度(%)=PE重量(mg)/SW(mg)×100
=23.05/30.3×100
=76.1%
(PP混合リサイクル材のPP純度)
PP重量(mg)=71.11PP面積/PVAc面積×PVAc重量(mg)
=71.11×0.1471/5.981×15.1
=26.41
PP純度(%)=PP重量(mg)/SW(mg)×100
=26.41/30.6×100
=86.3%
〔2−7〕
1H−NMR測定
PE混合リサイクル材および、PP混合リサイクル材について、
1H−NMR測定および
1H−NMR測定に基づく成分組成の評価を実施した。結果を表4に示す。
1H−NMR測定は、以下の条件で行った。
・装置:日本電子株式会社製核磁気共鳴装置「ECA500」(500MHz)
・溶媒:重水素化1,1,2,2−テトラクロロエタン
・試料:不溶解分を除去した試料(PE混合リサイクル材、PP混合リサイクル材)を使用
・試料量:約20mg
・測定核種:
1H
・測定温度:120℃
【0084】
【表4】
【0085】
〔2−8〕FT−IR測定結果と、
1H−NMR測定結果との対比
前記2−6で求めたPE純度およびPP純度、並びに2−7で求めたPE純度およびPP純度を対比した結果を表5に示す。
【0086】
【表5】
【0087】
表5の結果より、本発明の内部標準物質を用いて、赤外分光法によってIRスペクトルを得ることにより、プラスチックの純度を測定する方法と、
1H−NMRによって、プラスチックの純度を測定する方法とでは、その結果の差が小さく、産業上有用であることが分かった。NMR測定と比べてIR測定は簡便な装置で測定を実施することが可能であるため、本発明の方法は簡便であり、有用であることが確認できた。
【0088】
〔実験例3〕
〔3〕検量線の作成
実験例1と同様のポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、内部標準物質であるポリ酢酸ビニル(PVAc)を検量線作成に用いた。
【0089】
PE、PP、PVAcの特性吸収帯についても実験例1と同様にした。
【0090】
〔3−1〕試料の秤量
フード付き電子天秤を用い、50mlのサンプル管瓶に、前記PEおよびPPを、後述の表6に記載の割合かつ合計約30mgとなるように秤量した。また、PVAcを約15mg秤量した。
【0091】
前記秤量に当たっては、秤量後60秒間静置し、値が一定になったのを確認した。
【0092】
各サンプルに、PE、PPおよびPVAcの秤量したmg数を、小数点以下第1位まで測定し、記録し、表6に記載のPE:PP重量比率、PE/PVAc重量比、およびPP/PVAc重量比の算出に使用した。
【0093】
〔3−2〕溶媒の添加
前記3−1において、PE、PPおよびPVAcが秤量された50mlサンプル管瓶に、トルエン約4.5gを加えた。なお、溶液濃度が1%になるように、PE、PPおよびPVAcの合計重量の100倍量のトルエンを使用した。
【0094】
〔3−3〕試料の溶解
前記3−2で溶媒が加えられたサンプル管瓶を、150〜170℃の範囲に保ちながら20分間加熱を行い、均一溶液を調製した。
【0095】
〔3−4〕試料の乾燥
前記3−3で溶解させた試料を、乾燥、固形化させるために、ドラフト内で溶媒を均一に蒸発させた。乾燥の仕上げとしてロータリーポンプを用いて真空乾燥を行い、溶媒を蒸発、除去した。
【0096】
〔3−5〕試料の採取
前記3−4で得られたサンプル管瓶中の乾燥された試料を、スパーテルで採取し、メノウ乳鉢で混合し、FT−IR測定試料とした。
【0097】
〔3−6〕FT−IR測定
前記3−5で調製したFT−IR測定試料のIRスペクトルを、それぞれフーリエ変換赤外分光分析装置Frontier FT IR(株式会社パーキンエルマージャパン製)を用いて測定した。
【0098】
得られたIRスペクトルの前記特性吸収帯の面積に基づき、PEとPVAcとの面積比およびPPとPVAcとの面積比を算出した。
【0099】
なお、IRスペクトルの測定は、各試料について20点測定を行い、20点について各特性吸収帯のピーク面積を求め、全平均を算出し、各特性吸収帯の面積とした。
【0100】
各試料のPE:PP重量比率、PEとPVAcとの面積比、PEとPVAcとの重量比、PPとPVAcとの面積比、PPとPVAcとの重量比を表6に示す。
【0101】
なお、PE:PP重量比率としては、秤量予定の重量比率および実際に秤量した重量に基づき計算した重量比(実測値)の両方を示す。
【0102】
【表6】
【0103】
表6の結果を基に作成した、PEとPVAcとの、重量比(実測値)と、面積比との関係を
図6に示し、PPとPVAcとの、重量比(実測値)と、面積比との関係を
図7に示す。
【0104】
表6および
図6に示した結果から、プラスチック中のPEの重量は、以下のように求めることができる。
【0105】
PE重量(mg)/PVAc重量(mg)=13.32PE面積/PVAc面積
ここで、上記式の相関係数は、0.8985であった。
【0106】
PE重量(mg)=13.32PE面積/PVAc面積×PVAc重量(mg)
また、プラスチック中のPE純度(%)は試料全体の重量をSW(mg)とすると、以下のように求めることができる。
【0107】
PE純度(%)=PE重量(mg)/SW(mg)×100
表6および
図7に示した結果から、プラスチック中のPPの重量は、以下のように求めることができる。
【0108】
PP重量(mg)/PVAc重量(mg)=32.52PP面積/PVAc面積
ここで、上記式の相関係数は、0.9551であった。
【0109】
PP重量(mg)=32.52PP面積/PVAc面積×PVAc重量(mg)
また、プラスチック中のPP純度(%)は試料全体の重量をSW(mg)とすると、以下のように求めることができる。
【0110】
PP純度(%)=PP重量(mg)/SW(mg)×100