(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
周波数1.0Hzで測定した前記ポリウレタン加熱接着層の−20℃の貯蔵弾性率と110℃の貯蔵弾性率の比(−20℃の貯蔵弾性率/110℃の貯蔵弾性率)が100以下である、請求項1に記載のフィルム。
前記熱可塑性ポリウレタンがポリカーボネート系ポリウレタンであり、前記最外層と前記ポリウレタン加熱接着層との間に前記ポリウレタン加熱接着層上に配置された金属光輝層をさらに含む、請求項1又は2のいずれかに記載のフィルム。
ポリイソシアネートが前記熱可塑性ポリウレタン全体に対して20質量%〜40質量%の量で前記熱可塑性ポリウレタンに組み込まれている、請求項1〜3のいずれか一項に記載のフィルム。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の代表的な実施態様を例示する目的でより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施態様に限定されない。
【0013】
本開示において「フィルム」には可とう性を有する「シート」と呼ばれる積層体も包含される。
【0014】
本開示において三次元曲面被覆成形法(Three-dimensional Overlay Method、本開示において単に「TOM」ともいう。)とは、フィルム及び3次元形状を有する物品を準備するステップと、加熱装置を内部に有する真空チャンバ内に前記フィルム及び前記物品を配置するステップであって、前記フィルムが前記真空チャンバの内部空間を2つに分離し、分離された内部空間の一方に前記物品が配置される、ステップと、前記フィルムを前記加熱装置によって加熱するステップと、前記物品が配置された内部空間とその反対側の内部空間を共に減圧雰囲気にするステップと、前記物品が配置された内部空間を減圧雰囲気にし、前記反対側の内部空間を加圧雰囲気又は常圧雰囲気としながら前記物品と前記フィルムとを接触させて、前記物品を前記フィルムによって被覆するステップとを含む成形方法をいう。
【0015】
本開示において「(メタ)アクリル」とはアクリル又はメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」とはアクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0016】
本開示において、「貯蔵弾性率」とは、動的粘弾性測定装置を用いて、所定温度にて周波数1.0Hzのせん断モードで粘弾性測定を行ったときのせん断貯蔵弾性率G’であり、「損失係数(tanδ)」とは、せん断損失弾性率G”/せん断貯蔵弾性率G’の比である。
【0017】
本開示の一実施態様の3次元形状を有する物品を加熱延伸により被覆することが可能なフィルム(以下、本開示において単に「加熱延伸フィルム(heat-expanding film)」ともいう。)は、最表面に配置される最外層と、ポリエステル系ポリウレタン及びポリカーボネート系ポリウレタンからなる群より選択される熱可塑性ポリウレタンを含み、加熱延伸時に物品に加熱接着されるポリウレタン加熱接着層とを含む。ポリウレタン加熱接着層の破断強度は135℃で約1MPa以上であり、150℃、周波数1.0Hzにおける貯蔵弾性率は約5×10
3Pa〜約5×10
5Paであり、損失係数tanδは約0.1以上である。
【0018】
図1に、本開示の一実施態様による加熱延伸フィルム10の断面図を示す。加熱延伸フィルム10は、最外層11、及びポリウレタン加熱接着層12を含む。加熱延伸フィルム10は、任意の要素として意匠層、金属光輝層、基材層、接合層などの追加層をさらに含んでもよい。
【0019】
図2に示す本開示の別の実施態様の加熱延伸フィルム10は、最外層11とポリウレタン加熱接着層12の間に配置された意匠層13をさらに有する。本開示において、意匠層を有する加熱延伸フィルムをその機能面から「3次元形状を有する物品を加熱延伸により被覆することが可能な加飾フィルム」又は「加熱延伸加飾フィルム(heat-expanding decorative film)」ともいう。以下、本開示において「加熱延伸フィルム」に関する記載は「加熱延伸加飾フィルム」にも適用される。
【0020】
図3に示す本開示の別の実施態様の加熱延伸フィルム10は、最外層11とポリウレタン加熱接着層12の間でポリウレタン加熱接着層12の上に配置された金属光輝層14をさらに有する。
【0021】
加熱延伸フィルムの最外層及びポリウレタン加熱接着層がそれぞれフィルムの最表面に位置することを条件として、加熱延伸フィルムの層の数、種類、配置などは、上記に限られない。
【0022】
最外層として、様々な樹脂、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)及び(メタ)アクリル共重合体を含むアクリル樹脂、ポリウレタン、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、メチルメタクリレート−フッ化ビニリデン共重合体(PMMA/PVDF)などのフッ素樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル、エチレン/アクリル酸共重合体(EAA)及びそのアイオノマー、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体などの共重合体が使用できる。耐候性に優れていることから、アクリル樹脂、ポリウレタン、フッ素樹脂及びポリ塩化ビニルが好ましく、耐擦傷性に優れており、廃棄物として焼却したり埋め立てたりする際の環境負荷が小さいことから、アクリル樹脂及びポリウレタンがより好ましい。最外層は多層構造を有してもよい。例えば、最外層は、上記樹脂から形成されたフィルムの積層体であってもよく、上記樹脂の多層コーティングであってもよい。
【0023】
最外層は、加熱延伸フィルムを構成する他の層、例えばポリウレタン加熱接着層、任意の構成要素である意匠層、金属光輝層、基材層、接合層などの上に樹脂組成物をコーティングして形成することができる。あるいは、別のライナー上に樹脂組成物をコーティングして最外層フィルムを形成し、接合層を介して他の層の上にそのフィルムをラミネートすることもできる。ポリウレタン加熱接着層、意匠層、金属光輝層、基材層などが、ライナー上に形成された最外層フィルムに対して接着性を有する場合は、接合層を介さず直接これらの層に最外層フィルムをラミネートすることもできる。例えば、最外層フィルムは、硬化性アクリル樹脂組成物、反応性ポリウレタン組成物などの樹脂材料を、ナイフコート、バーコート、ブレードコート、ドクターコート、ロールコート、キャストコートなどによってライナーなどにコーティングし、必要に応じて加熱硬化することによって、形成することができる。
【0024】
最外層として、押出、延伸などによってあらかじめフィルム状に形成されたものを使用してもよい。このようなフィルムは接合層を介して、意匠層、金属光輝層、基材層などにラミネートすることができる。あるいは、意匠層、金属光輝層、基材層などが、このようなフィルムに対して接着性を有する場合は、接合層を介さず直接これらの層にフィルムをラミネートすることもできる。平坦性の高いフィルムを使用することで、より表面平坦性の高い外観を構造物に与えることができる。また、最外層を他の層と多層押し出しすることによって形成することもできる。アクリルフィルムとして、ポリメチルメタアクリレート(PMMA)、ポリアクリル酸ブチル、(メタ)アクリル共重合体、エチレン/アクリル共重合体、エチレン酢酸ビニル/アクリル共重合体などを含む樹脂をフィルム状にして用いることができる。アクリルフィルムは透明性に優れ、熱や光に強く、屋外で使用しても退色や光沢変化が生じにくい。また、可塑剤を使用せずとも耐汚染性に優れ、しかも成形加工性に優れ深絞り加工できるという特性を有する。特にPMMAを主成分とするものが好ましい。
【0025】
最外層の厚さは様々であってよいが、一般に、約1μm以上、約5μm以上、又は約10μm以上、約200μm以下、約100μm以下、又は約80μm以下である。複雑な形状の物品に対して加熱延伸フィルムを適用する場合、最外層は薄い方が形状追従性の観点から有利であり、例えば、約100μm以下、又は約80μm以下であることが望ましい。一方、構造体に高い耐光性及び/又は耐候性を付与する場合、最外層は厚い方が有利であり、例えば約5μm以上、又は約10μm以上であることが望ましい。
【0026】
最外層は、必要に応じて、ベンゾトリアゾール、Tinuvin1130(BASF社製)などの紫外線吸収剤、Tinuvin292(BASF社製)などのヒンダードアミン光安定化剤(HALS)などを含んでもよい。紫外線吸収剤、ヒンダードアミン光安定化剤などを用いることによって、意匠層などに含まれる着色材の、特に紫外線などの光に対する感受性が比較的高い有機顔料の、変色、退色、劣化などを有効に防止することができる。最外層はハードコート材、光沢付与剤などを含んでもよく、追加のハードコート層を有してもよい。最外層は、目的とする外観を提供するために、透明であってもよく、半透明又は不透明であってもよい。最外層が透明であることが有利である。
【0027】
ポリウレタン加熱接着層は、加熱延伸フィルムを加熱延伸時に被着体である物品に接着させるように機能する。ポリウレタン加熱接着層は、ポリエステル系ポリウレタン及びポリカーボネート系ポリウレタンからなる群より選択される熱可塑性ポリウレタンを含む。
【0028】
熱可塑性ポリウレタン(TPU)は、一般に高分子ポリオール、ジイソシアネートなどのポリイソシアネートと、鎖伸長剤とを、必要に応じてジブチルスズジラウレートなどの触媒を用いて重付加反応させることにより得られる、分子内にウレタン結合を有するポリマーであり、加熱により軟化し流動性を示す。鎖伸長剤とポリイソシアネートとが反応してハードセグメントを形成し、一方で高分子ポリオールはポリイソシアネートと反応してソフトセグメントを形成する。
【0029】
高分子ポリオールとして、水酸基を2つ以上有し数平均分子量が400以上であるポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、及びそれらの組み合わせが挙げられる。ポリエステルポリオールはポリエステル系ポリウレタンを形成し、ポリカーボネートポリオールはポリカーボネート系ポリウレタンを形成する。本開示において、エステル結合及びカーボネート結合の両方を分子内に有するポリオールはポリカーボネートポリオールに分類される。ポリエステルポリオール及びポリカーボネートポリオールの両方を含むポリオールが形成するポリウレタンは、ポリカーボネート系ポリウレタンに分類される。ポリウレタンに過度に架橋構造が導入されると熱可塑性を損なう場合があることから、ポリエステルポリオールはポリエステルジオールであることが好ましく、ポリカーボネートポリオールはポリカーボネートジオールであることが好ましい。
【0030】
ポリエステルポリオールは、例えば、水酸基を2つ以上有し数平均分子量が400未満である短鎖ポリオールと、多塩基酸又はそのアルキルエステル、酸無水物若しくは酸ハロゲン化物との縮合反応又はエステル交換反応により得ることができる。短鎖ポリオールに加えて、アミノ基を2つ以上有し数平均分子量が400未満の短鎖ポリアミンが縮合反応又はエステル交換反応に関与してもよい。
【0031】
短鎖ポリオールとして、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,6−ジメチル−1−オクテン−3,8−ジオール、C
7−C
22アルカンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA、水素化ビスフェノールA、1,4−ジヒドロキシ−2−ブテン、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、キシレングリコール、ビスヒドロキシエチレンテレフタレート、ジエチレングリコール、トリオキシエチレングリコール、テトラオキシエチレングリコール、ペンタオキシエチレングリコール、ヘキサオキシエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリオキシプロピレングリコール、テトラオキシプロピレングリコール、ペンタオキシプロピレングリコール、ヘキサオキシプロピレングリコールなどの2価アルコール;グリセリン、2−メチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジヒドロキシ−3−ヒドロキシメチルペンタン、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−3−ブタノールなどの3価アルコール;ペンタエリスリトール、ジグリセリンなどの4価アルコール;キシリトールなどの5価アルコール;ソルビトール、マンニトール、アリトール、イジトール、ダルシトール、アルトリトール、イノシトール、ジペンタエリスリトールなどの6価アルコールなどが挙げられる。これらの短鎖ポリオールに、エチレンオキシド、プロピレンオキシドなどのアルキレンオキシドが付加したポリオキシアルキレンポリオールも短鎖ポリオールに包含される。短鎖ポリオールは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。ポリウレタンに過度に架橋構造が導入されると熱可塑性を損なう場合があることから、短鎖ポリオールとして2価アルコールを用いることが望ましい。
【0032】
多塩基酸として、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、メチルコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、1,1−ジメチル−1,3−ジカルボキシプロパン、3−メチル−3−エチルグルタル酸、アゼライン酸、セバシン酸などの飽和脂肪族ジカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などの不飽和脂肪族ジカルボン酸;オルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トルエンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸;ヘキサヒドロフタル酸などの脂環式ジカルボン酸;ダイマー酸、水添ダイマー酸、ヘット酸などのその他の多価カルボン酸が挙げられる。多塩基酸のアルキルエステル、酸無水物及び酸ハロゲン化物として、例えば、上記多塩基酸のメチルエステル、エチルエステルなど;無水シュウ酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水2−C
12−C
18アルキルコハク酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水トリメリット酸など;シュウ酸ジクロリド、アジピン酸ジクロリド、セバシン酸ジクロリドなどが挙げられる。多塩基酸は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。ポリウレタンに過度に架橋構造が導入されると熱可塑性を損なう場合があることから、多塩基酸としてジカルボン酸、又はそのアルキルエステル、酸無水物若しくは酸ハロゲン化物を用いることが望ましい。
【0033】
短鎖ポリアミンとして、例えば、エチレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,3−ブタンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、2,5(2,6)−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ヒドラジン、o−、m−又はp−トリレンジアミンなどの短鎖ジアミン;ジエチレントリアミンなどの短鎖トリアミン;トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンなどのアミノ基を4個以上有する短鎖ポリアミンなどが挙げられる。短鎖ポリアミンは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。ポリウレタンに過度に架橋構造が導入されると熱可塑性を損なう場合があることから、短鎖ポリアミンとして短鎖ジアミンを用いることが望ましい。
【0034】
ポリエステルポリオールとして、水酸基含有植物油脂肪酸などのヒドロキシカルボン酸を縮合反応させて得られる植物油系ポリエステルポリオール;ε−カプロラクトン、γ−バレロラクトンなどのラクトン類、L−ラクチド、D−ラクチドなどのラクチド類などを開環重合して得られるポリカプロラクトンポリオール、ポリバレロラクトンポリオールなどを使用することもできる。
【0035】
ポリカーボネートポリオールとして、例えば、短鎖ポリオールを開始剤とするエチレンカーボネートの開環重合物;1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどの上記の短鎖2価アルコールとホスゲン又はジフェニルカーボネートとを反応させて得られるポリカーボネート、上記の短鎖2価アルコールと上記開環重合物とを共重合した非晶性ポリカーボネートポリオールなどが挙げられる。
【0036】
ポリイソシアネートとして、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネートなど、及びこれらのポリイソシアネートの多量体(ダイマー、トリマーなど)、ビウレット変性体、アロファネート変性体、ポリオール変性体、オキサジアジントリオン変性体、カルボジイミド変性体などが挙げられる。ポリイソシアネートは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。ポリウレタンに過度に架橋構造が導入されると熱可塑性を損なう場合があることから、ポリイソシアネートとしてジイソシアネートを用いることが望ましい。
【0037】
脂肪族ポリイソシアネートとして、例えば、エチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、オクタメチレンジイソシアネート、ノナメチレンジイソシアネート、2,2’−ジメチルペンタンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ブテンジイソシアネート、1,3−ブタジエン−1,4−ジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,6,11−ウンデカメチレントリイソシアネート、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、1,8−ジイソシアネート−4−イソシアナトメチルオクタン、2,5,7−トリメチル−1,8−ジイソシアネート−5−イソシアナトメチルオクタン、ビス(イソシアナトエチル)カーボネート、ビス(イソシアナトエチル)エーテル、1,4−ブチレングリコールジプロピルエーテル−ω,ω’−ジイソシアネート、リジンイソシアナトメチルエステル、リジントリイソシアネート、2−イソシアナトエチル−2,6−ジイソシアネートヘキサノエート、2−イソシアナトプロピル−2,6−ジイソシアネートヘキサノエート、ビス(4−イソシアネート−n−ブチリデン)ペンタエリスリトール、2,6−ジイソシアネートメチルカプロエートなどが挙げられる。
【0038】
脂環式ポリイソシアネートとして、例えば、イソホロンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、trans,trans−、trans,cis−、及びcis,cis−ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート及びこれらの混合物(水添MDI)、1,3−又は1,4−シクロヘキサンジイソシアネート及びこれらの混合物、1,3−又は1,4−ビス(イソシアナトエチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、2,2’−ジメチルジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、2,5−ジイソシアナトメチルビシクロ[2.2.1]−ヘプタン、2,6−ジイソシアナトメチルビシクロ[2.2.1]−ヘプタン(NBDI)、2−イソシアナトメチル2−(3−イソシアナトプロピル)−5−イソシアナトメチルビシクロ−[2.2.1]−ヘプタン、2−イソシアナトメチル−2−(3−イソシアナトプロピル)−6−イソシアナトメチルビシクロ−[2.2.1]−ヘプタン、2−イソシアナトメチル3−(3−イソシアナトプロピル)−5−(2−イソシアナトエチル)−ビシクロ−[2.2.1]−ヘプタン、2−イソシアナトメチル3−(3−イソシアナトプロピル)−6−(2−イソシアナトエチル)−ビシクロ−[2.2.1]−ヘプタン、2−イソシアナトメチル2−(3−イソシアナトプロピル)−5−(2−イソシアナトエチル)−ビシクロ−[2.2.1]−ヘプタン、2−イソシアナトメチル2−(3−イソシアナトプロピル)−6−(2−イソシアナトエチル)−ビシクロ−[2.2.1]−ヘプタンなどが挙げられる。
【0039】
芳香族ポリイソシアネートとして、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート及び2,6−トリレンジイソシアネート、並びにこれらトリレンジイソシアネートの異性体混合物(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート及び2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、並びにこれらジフェニルメタンジイソシアネートの異性体混合物(MDI)、トルイジンジイソシアネート(TODI)、パラフェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート(NDI)などが挙げられる。
【0040】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとして、例えば、1,3−若しくは1,4−キシリレンジイソシアネート又はその混合物(XDI)、1,3−若しくは1,4−テトラメチルキシリレンジイソシアネート又はその混合物(TMXDI)などが挙げられる。
【0041】
鎖伸長剤として、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,6−ジメチル−1−オクテン−3,8−ジオール、C
7−C
22アルカンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA、水素化ビスフェノールA、1,4−ジヒドロキシ−2−ブテン、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、キシレングリコール、ビスヒドロキシエチレンテレフタレート、ジエチレングリコール、トリオキシエチレングリコール、テトラオキシエチレングリコール、ペンタオキシエチレングリコール、ヘキサオキシエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリオキシプロピレングリコール、テトラオキシプロピレングリコール、ペンタオキシプロピレングリコール、ヘキサオキシプロピレングリコールなどの2価アルコール;グリセリン、2−メチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジヒドロキシ−3−ヒドロキシメチルペンタン、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−3−ブタノールなどの3価アルコール;ペンタエリスリトール、ジグリセリンなどの4価アルコール;キシリトールなどの5価アルコール;ソルビトール、マンニトール、アリトール、イジトール、ダルシトール、アルトリトール、イノシトール、ジペンタエリスリトールなどの6価アルコールなどが挙げられる。これらの鎖伸長剤に、エチレンオキシド、プロピレンオキシドなどのアルキレンオキシドが付加したポリオキシアルキレンポリオールも鎖伸長剤に包含される。鎖伸長剤は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。ポリウレタンに過度に架橋構造が導入されると熱可塑性を損なう場合があることから、鎖伸長剤として2価アルコールを用いることが望ましい。
【0042】
熱可塑性ポリウレタンの重量平均分子量は、一般に約30,000以上、約50,000以上、又は約80,000以上、約300,000以下、約200,000以下、又は約150,000以下である。熱可塑性ポリウレタンの重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)法において、溶媒をテトラヒドロフラン(THF)又はN−メチルピロリドン(NMP)とし、標準ポリスチレン(溶媒がTHFの場合)又は標準ポリメチルメタクリレート(溶媒がNMPの場合)を用いて決定することができる。
【0043】
いくつかの実施態様では、熱可塑性ポリウレタンの主原料であるポリイソシアネートが、熱可塑性ポリウレタン全体に対して約20質量%以上、約22質量%以上、又は約25質量%以上、約40質量%以下、約38質量%以下、又は約35質量%以下の量で熱可塑性ポリウレタンに組み込まれる。
【0044】
ポリウレタン加熱接着層として、成形、押出、延伸などによって熱可塑性ポリウレタンをフィルム状に形成されたものを使用してもよい。このようなフィルムは接合層を介して、意匠層、金属光輝層、基材層などにラミネートすることができる。あるいは、意匠層、金属光輝層、基材層などが、このようなフィルムに対して接着性を有する場合は、接合層を介さず直接これらの層をフィルムにラミネートすることもできる。熱可塑性ポリウレタン又はその成分(ポリオール、ポリイソシアネート、及び必要に応じて触媒)を含む溶剤希釈組成物をライナー上にコーティングし、溶媒を除去及び必要に応じて硬化してポリウレタン加熱接着層フィルムを形成し、接合層を介して、意匠層、金属光輝層、基材層などの上に、そのフィルムをラミネートすることもできる。意匠層、金属光輝層、基材層などが、ポリウレタン加熱接着層フィルムに対して接着性を有する場合は、接合層を介さず直接これらの層をポリウレタン加熱接着層フィルムにコーティング又はラミネートすることもできる。ポリウレタン加熱接着層を他の層と多層押し出しすることによって形成することもできる。
【0045】
ポリウレタン加熱接着層の破断強度は135℃で約1MPa以上である。いくつかの実施態様では、ポリウレタン加熱接着層の破断強度は135℃で約2MPa以上、約3MPa以上、又は約5MPa以上、約50MPa以下、約30MPa以下、又は約20MPa以下である。ポリウレタン加熱接着層の破断強度は、JIS K 7311(1995)に準拠して、幅10.0mm、ゲージ長さ20.0mmのダンベル試験片を用い、温度135℃、引張速度300mm/分で引っ張って試験片が破断した時の測定値である。ポリウレタン加熱接着層の破断強度が135℃で約1MPa以上であることにより、IM又はTOMにおいて、高温での圧力変化操作中に加熱延伸フィルムが破断することを防止できる。
【0046】
ポリウレタン加熱接着層の貯蔵弾性率は、150℃、周波数1.0Hzにおいて、約5×10
3Pa以上、約5×10
5Pa以下である。いくつかの実施態様では、ポリウレタン加熱接着層の貯蔵弾性率は、150℃、周波数1.0Hzにおいて、約1×10
4Pa以上、又は約2×10
4Pa以上、約2×10
5Pa以下、又は約1×10
5Pa以下である。ポリウレタン加熱接着層の150℃での貯蔵弾性率が上記範囲であることにより、IM又はTOMにおいて接着温度に加熱したときに、加熱延伸フィルムはその形状を完全に失わずに物品への接着に十分な程度まで軟化することができる。
【0047】
ポリウレタン加熱接着層の損失係数tanδは、150℃、周波数1.0Hzにおいて、約1.0以上である。いくつかの実施態様において、ポリウレタン加熱接着層の損失係数tanδは、150℃、周波数1.0Hzにおいて、約1.05以上、又は約1.1以上、約5.0以下、又は約3.0以下である。ポリウレタン加熱接着層の損失係数tanδが150℃、周波数1.0Hzにおいて、約1.0以上であることにより、IM又はTOMにおいて接着温度に加熱したときに、加熱延伸フィルムは、物品表面の凹凸に追従する、又はそのような凹凸を埋めるのに十分な程度まで流動性を有することができる。
【0048】
いくつかの実施態様では、ポリウレタン加熱接着層の伸びは135℃で約200%以上、約300%以上、又は約500%以上、約2000%以下、約1500%以下、又は約1000%以下である。ポリウレタン加熱接着層の伸びEは、JIS K 7311(1995)に準拠して、幅10.0mm、ゲージ長さ20.0mmのダンベル試験片を用い、温度135℃、引張速度300mm/分で引っ張って破断した時のゲージ長をL
1(mm)、初期ゲージ長をL
0(mm)(=20.0mm)としたときに、式:E(%)=[(L
1−L
0)/L
0]×100から得られる値である。ポリウレタン加熱接着層の伸びが135℃で約200%以上であることにより、IM又はTOMにおいて、高い曲率の物品表面に対しても加熱延伸フィルムを良好に追従させることができる。
【0049】
いくつかの実施態様において、周波数1.0Hzで測定したポリウレタン加熱接着層の−20℃の貯蔵弾性率と110℃の貯蔵弾性率の比(−20℃の貯蔵弾性率/110℃の貯蔵弾性率)は約100以下、約80以下、又は約50以下であり、約1以上、約2以上、又は約3以上である。周波数1.0Hzで測定したポリウレタン加熱接着層の−20℃の貯蔵弾性率と110℃の貯蔵弾性率の比が100以下であることにより、ポリウレタン加熱接着層に接触する他の層、特に金属光輝層と、ポリウレタン加熱接着層との間の経時での界面剥離を防止することができる。
【0050】
ポリウレタン加熱接着層の厚さは様々であってよいが、一般に、約15μm以上、約30μm以上、又は約50μm以上、約1000μm以下、約800μm以下、又は約500μm以下である。
【0051】
任意の要素である意匠層として、塗装色、金属色などを呈するカラー層、木目、石目、幾何学模様、皮革模様などの模様、ロゴ、絵柄などを構造体に付与するパターン層、表面に凹凸形状が設けられたレリーフ(浮き彫り模様)層など、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0052】
カラー層として、酸化チタン、カーボンブラック、黄鉛、黄色酸化鉄、ベンガラ、赤色酸化鉄などの無機顔料、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーンなどのフタロシアニン系顔料、アゾレーキ系顔料、インジゴ系顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、キノフタロン系顔料、ジオキサジン系顔料、キナクリドンレッドなどのキナクリドン系顔料などの有機顔料、アルミニウムフレーク、蒸着アルミニウムフレーク、金属酸化物被覆アルミニウムフレーク、着色アルミニウムフレークなどのアルミ光輝材、酸化チタン、酸化鉄などの金属酸化物で被覆されたフレーク状のマイカ及び合成マイカなどのパール光輝材などの顔料が、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂などのバインダー樹脂に分散されたものを使用することができる。
【0053】
パターン層として、グラビアダイレクト印刷、グラビアオフセット印刷、インクジェット印刷、レーザー印刷、スクリーン印刷などの印刷、グラビアコート、ロールコート、ダイコート、バーコート、ナイフコートなどのコーティング、打ち抜き、エッチングなどにより形成された模様、ロゴ、絵柄などを有するフィルム、シート、金属箔などを使用することができる。
【0054】
レリーフ層として、従来公知の方法、例えばエンボス加工、スクラッチ加工、レーザー加工、ドライエッチング加工、又は熱プレス加工などによる凹凸形状を表面に有する熱可塑性樹脂フィルムを使用することができる。凹凸形状を有する離型フィルム上に硬化性アクリル樹脂などの熱硬化性又は放射線硬化性樹脂を塗布し、加熱又は放射線照射により硬化して、離型フィルムを取り除くことによりレリーフ層を形成することもできる。レリーフ層に用いられる熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂及び放射線硬化性樹脂として、特に限定されないが、フッ素系樹脂、PET、PENなどのポリエステル系樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、熱可塑性エラストマー、ポリカーボネート、ポリアミド、ABS樹脂、アクリロニトリル−スチレン樹脂、ポリスチレン、塩化ビニル、ポリウレタンなどを使用することができる。
【0055】
意匠層の厚さは様々であってよく、一般に、約0.5μm以上、約5μm以上、又は約20μm以上、約300μm以下、約200μm以下、又は約100μm以下とすることができる。
【0056】
加熱延伸フィルムは、加熱延伸フィルムを構成する層の上に真空蒸着、スパッタ、イオンプレーティング、めっきなどによって形成されたアルミニウム、ニッケル、金、白金、クロム、鉄、銅、スズ、インジウム、銀、チタニウム、鉛、亜鉛、ゲルマニウムなどの金属、これらの合金又は化合物を含む金属光輝層をさらに含んでもよい。このような金属光輝層は高い光沢を有するためクロムメッキ代替フィルムなどに好適に使用される。金属光輝層の厚さは、例えば約5nm以上、約10nm以上、又は約20nm以上、約10μm以下、約5μm以下、又は約2μm以下とすることができる。
【0057】
一実施態様では、金属光輝層がポリウレタン加熱接着層の上に配置されており、ポリウレタン加熱接着層に含まれる熱可塑性ポリウレタンがポリカーボネート系ポリウレタンである。この実施態様では、金属光輝層とポリウレタン加熱接着層との間の層間接着性が特に優れている。
【0058】
任意の要素である基材層として、様々な樹脂、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)を含むアクリル樹脂、ポリウレタン(PU)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリカーボネート(PC)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体などの共重合体が使用できる。強度、耐衝撃性などの観点から、基材層としてポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体及びポリカーボネートが有利に使用できる。基材層は意匠層などの支持層となり、また、成形時の均一な伸びを与え、外部からの穿刺、衝撃などから構造体をより有効に保護する保護層としても機能することができる。基材層の厚さは様々であってよいが、加熱延伸フィルムの成形性に悪影響を及ぼさずに上記機能を加熱延伸フィルムに付与するという観点から、一般に、約10μm以上、約20μm以上、又は約50μm以上であり、約500μm以下、約200μm以下、又は約100μm以下とすることができる。
【0059】
一実施態様では、ポリウレタン加熱接着層が基材層としても機能し、加熱延伸フィルムは追加の基材層を含まない。この実施態様のポリウレタン加熱接着層の厚さは、例えば約10μm以上、約50μm以上、約80μm以上、又は約100μm以上、約1000μm以下、約800μm以下、又は約500μm以下である。この実施態様では、加熱延伸フィルムの層構成を簡略化して低コストでIM又はTOMに好適な加熱延伸フィルムを提供することができる。
【0060】
上記の層を接合するために接合層を用いてもよい。接合層として、一般に使用されるアクリル系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ゴム系などの、溶剤型、エマルジョン型、感圧型、感熱型、熱硬化型又は紫外線硬化型の接着剤を使用することができ、熱硬化型ポリウレタン接着剤が有利に使用できる。接合層の厚さは、一般に、約0.05μm以上、約0.5μm以上、又は約5μm以上、約100μm以下、約50μm以下、又は約20μm以下とすることができる。
【0061】
一実施態様の加熱延伸フィルムは、意匠層として加熱転写可能な意匠転写層を含む。意匠転写層は、一般に加熱接着可能な表面層を含む。意匠転写層は、表面層とは別個の意匠層を含んでもよく、表面層が、上記意匠層について説明したような、顔料、印刷インクなどを含み意匠性を有する層であってもよい。
【0062】
表面層は、一般に、加熱により軟化し流動性を示す熱可塑性樹脂を含む。熱可塑性樹脂は1種でもよく、2種以上の混合物又はブレンドであってもよい。熱可塑性樹脂のガラス転移温度及び貯蔵弾性率は、意匠転写層の転写温度、意匠転写層が組み込まれる最終製品の用途などに応じて適宜選択することができる。熱可塑性樹脂が2種以上の混合物又はブレンドである場合、ガラス転移温度及び貯蔵弾性率は混合物又はブレンドについて測定された値を指す。表面層の熱可塑性樹脂は、表面層が接触する材料の種類に応じて、同じであっても異なっていてもよい。表面層が接触する材料として、例えば、アクリル樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂などの高分子樹脂、並びにこれらの混合物、ブレンド及び組み合わせ、スズ、イリジウムなどの金属、並びにこれらの金属の酸化物及び合金などが挙げられる。
【0063】
熱可塑性樹脂のガラス転移温度は、一般に約−60℃以上、好ましくは約−30℃以上、より好ましくは約0℃以上、さらに好ましくは約20℃以上であり、一方で、約150℃以下、約125℃以下、又は約100℃以下とすることができる。熱可塑性樹脂のガラス転移温度を約−60℃以上とすることにより、優れた密着性を意匠転写層に付与することができる。熱可塑性樹脂のガラス転移温度を約150℃以下とすることにより、意匠転写層の転写性をより高めることができる。本開示において熱可塑性樹脂のガラス転移温度とは、動的粘弾性測定装置を用い、−60℃から200℃まで昇温速度5℃/分にて昇温し、周波数1.0Hzのせん断モードで12秒毎にせん断貯蔵弾性率G’及びせん断損失弾性率G”を測定して得られた損失係数tanδ(=せん断損失弾性率G”/せん断貯蔵弾性率G’)のピーク温度と定義される。
【0064】
熱可塑性樹脂の50℃での貯蔵弾性率は、一般に約1.0×10
5Pa以上、好ましくは約2.0×10
6Pa以上、さらに好ましくは約5.0×10
6Pa以上であり、一方で、約1.0×10
10Pa以下、又は約5.0×10
9Pa以下とすることができる。熱可塑性樹脂の50℃での貯蔵弾性率を約2.0×10
6Pa以上とすることにより、意匠転写層のブロッキング性を高めることができる。熱可塑性樹脂の50℃での貯蔵弾性率を約1.0×10
10Pa以下とすることにより、良好なハンドリング性を有する意匠転写層を得ることができる。
【0065】
一実施態様では、表面層が、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン、ポリエステル、(メタ)アクリル樹脂、及びフェノキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも一つの熱可塑性樹脂を含む。本開示において「フェノキシ樹脂」とは、ビスフェノール類及びエピクロルヒドリンを用いて合成される、熱可塑性を有するポリヒドロキシポリエーテルを意味し、分子内(例えば末端)に微量のエピクロルヒドリン由来のエポキシ基を有するものも包含される。例えば、フェノキシ樹脂のエポキシ当量は通常のエポキシ樹脂よりも高く、例えば5,000以上、7,000以上又は10,000以上である。
【0066】
一実施態様では、表面層がフェノキシ樹脂を含む。フェノキシ樹脂を含む表面層は、スズ、インジウムなどの金属を含む金属光輝層に対する接着性が特に優れている。
【0067】
一実施態様では、表面層が、フェノキシ樹脂及びポリウレタンを含む。フェノキシ樹脂及びポリウレタンを含む表面層では、ポリウレタンによりフェノキシ樹脂が可塑化するため、転写に必要な温度を低下させることができる。このような低い転写温度で意匠転写層を転写可能にすることで、転写時に意匠転写層に与えるダメージを低減することができる。
【0068】
表面層に含まれるポリウレタンのガラス転移温度を約60℃以下、約40℃以下、又は約20℃以下とすることができる。ガラス転移温度が約60℃以下のポリウレタンは、フェノキシ樹脂に混合又はブレンドしたときに、フェノキシ樹脂をより効果的に可塑化することができる。表面層の耐熱性の観点から、ポリウレタンのガラス転移温度は約−80℃以上とすることができる。ポリウレタンのガラス転移温度は、熱可塑性樹脂のガラス転移温度と同じ方法で決定することができる。
【0069】
一実施態様では、ポリウレタンはポリエステル系ポリウレタンである。この実施態様ではポリウレタンのフェノキシ樹脂に対する相溶性が特に優れており、長期間意匠転写層を保管した場合であっても、ポリウレタンとフェノキシ樹脂の相分離が生じにくい。
【0070】
一実施態様では、フェノキシ樹脂とポリウレタンの質量比が99:1〜30:70、99:1〜40:60、99:1〜50:50、90:10〜30:70、90:10〜40:60、90:10〜50:50、80:20〜30:70、80:20〜40:60、又は80:20〜50:50である。上記質量比とすることにより、互いに接触する意匠転写層間の、又は意匠転写層とそれに接触する他の物品との間のブロッキングを防止又は軽減することができる。
【0071】
表面層の厚さは、一般に約0.2μm以上、約0.5μm以上、又は約0.8μm以上、約100μm以下、約50μm以下、又は約10μm以下とすることができる。
【0072】
一実施態様の加熱延伸フィルムは、意匠層として、加熱接着可能な第1表面層と、加熱接着可能な第2表面層とを含む意匠転写層を含む。意匠転写層の第1表面層及び第2表面層のいずれか一方が最外層側に配置され、意匠転写層の第1表面層及び第2表面層の他方がポリウレタン加熱接着層側に配置されている。
【0073】
図4にこのような加熱延伸フィルム(加熱延伸加飾フィルム)10の断面図を示す。加熱延伸フィルム10は、意匠層として、加熱接着可能な第1表面層131と、加熱接着可能な第2表面層132とを含む、加熱転写可能な意匠転写層130を含む。第1表面層131は最外層11側に配置され、第2表面層132はポリウレタン加熱接着層12側に配置される。この実施態様では、第1表面層131若しくは第2表面層132、又は第1表面層131及び第2表面層132の両方が、上記意匠層について説明したような、顔料、印刷インクなどを含み意匠性を有する層である。
【0074】
意匠転写層の加熱接着可能な第1表面層及び第2表面層は、意匠転写層の表面層について既に説明したような熱可塑性樹脂を含む。
【0075】
一実施態様では、第1表面層及び第2表面層の少なくとも一つが、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン、ポリエステル、(メタ)アクリル樹脂、及びフェノキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも一つの熱可塑性樹脂を含む。
【0076】
一実施態様では、第1表面層及び第2表面層の少なくとも一つがフェノキシ樹脂を含む。フェノキシ樹脂を含む表面層は、スズ、インジウムなどの金属を含む金属光輝層に対する接着性が特に優れている。
【0077】
一実施態様では、第1表面層及び第2表面層の少なくとも一つが、フェノキシ樹脂及びポリウレタンを含む。フェノキシ樹脂及びポリウレタンを含む表面層では、ポリウレタンによりフェノキシ樹脂が可塑化するため、転写に必要な温度を低下させることができる。このような低い転写温度で意匠転写層を転写可能にすることで、転写時に意匠転写層に与えるダメージを低減することができる。
【0078】
表面層に含まれるポリウレタンのガラス転移温度を約60℃以下、約40℃以下、又は約20℃以下とすることができる。ガラス転移温度が約60℃以下のポリウレタンは、フェノキシ樹脂に混合又はブレンドしたときに、フェノキシ樹脂をより効果的に可塑化することができる。表面層の耐熱性の観点から、ポリウレタンのガラス転移温度は約−80℃以上とすることができる。
【0079】
一実施態様では、ポリウレタンはポリエステル系ポリウレタンである。この実施態様ではポリウレタンのフェノキシ樹脂に対する相溶性が特に優れており、長期間意匠転写層を保管した場合であっても、ポリウレタンとフェノキシ樹脂の相分離が生じにくい。
【0080】
一実施態様では、フェノキシ樹脂とポリウレタンの質量比が99:1〜30:70、99:1〜40:60、99:1〜50:50、90:10〜30:70、90:10〜40:60、90:10〜50:50、80:20〜30:70、80:20〜40:60、又は80:20〜50:50である。上記質量比とすることにより、互いに接触する意匠転写層間の、又は意匠転写層とそれに接触する他の物品との間のブロッキングを防止又は軽減することができる。
【0081】
第1表面層及び第2表面層の厚さは、一般に、それぞれ約0.2μm以上、約0.5μm以上、又は約0.8μm以上、約100μm以下、約50μm以下、又は約10μm以下とすることができる。
【0082】
別の実施態様では、意匠転写層は加熱接着可能な第1表面層と、加熱接着可能な第2表面層との間に意匠層をさらに含む。意匠層として、既に説明したとおりのものを使用することができる。
【0083】
意匠転写層は、印刷、コーティング、積層など従来知られた方法を用いて製造することができる。一実施態様の意匠転写層の製造方法は、剥離層を用意する工程と、剥離層の上に第1表面層をインクジェット印刷、グラビアダイレクト印刷、グラビアオフセット印刷、スクリーン印刷などの印刷法により印刷し、あるいはナイフコート、バーコート、ブレードコート、ドクターコート、ロールコート、キャストコート、グラビアコートなどのコーティング手段によってコーティングし、必要に応じて加熱硬化することによって形成する工程と、第1表面層の上又は第1表面層上に形成された他の層の上に、第1表面層と同様の印刷法又はコーティング手段により、第2表面層を形成する工程とを含む。意匠転写層の製造方法は、第2表面層を形成する前に、第1表面層の上又は第1表面層上に形成された他の層の上に意匠層を形成する工程をさらに含んでもよい。意匠層は第1表面層及び第2表面層と同様の印刷法又はコーティング手段を用いて形成することができる。第1表面層及び第2表面層の少なくとも一方が、顔料、印刷インクなどを含む意匠性を有する層であってもよい。このようにして、剥離層に担持された意匠転写層を得ることができる。
【0084】
意匠転写層の厚さは様々であってよく、一般に、約0.4μm以上、約1.0μm以上、又は約1.6μm以上、約200μm以下、約100μm以下、又は約20μm以下とすることができる。
【0085】
意匠転写層は例えば以下の手順で加熱延伸フィルムに導入することができる。一実施態様によれば、加熱接着可能な第1表面層と、加熱接着可能な第2表面層とを含む意匠転写層を用意する工程と、第1表面層と、最外層、金属光輝層、基材層、ポリウレタン加熱接着層などの加熱延伸フィルムを構成する層とを加熱接着させる工程と、第2表面層と、最外層、金属光輝層、基材層、ポリウレタン加熱接着層などの加熱延伸フィルムを構成する別の層とを加熱接着させる工程とを含む、加熱延伸フィルムの製造方法が提供される。
【0086】
加熱接着の温度は、一般に約40℃以上、約50℃以上、又は約60℃以上、約200℃以下、約160℃以下、又は約140℃以下とすることができる。加熱接着時に加圧してもよく、しなくてもよい。一実施態様の意匠転写層は、加熱接着時に加圧が不要である。この実施態様の意匠転写層は、加圧工程及び装置を必要としないため、ロール・ツー・ロール方式などのインライン生産に好適である。例えば、比較的薄い意匠転写層は、一般に常圧で容易に加熱接着することができる。常温加熱接着な意匠転写層の厚さは、例えば、約0.4μm以上、約1.0μm以上、又は約1.6μm以上、約20μm以下、約10μm以下、又は約5μm以下とすることができる。
【0087】
最外層、ポリウレタン加熱接着層、基材層、及び/又は接合層は、意匠層について説明したものと同じ無機顔料、有機顔料、アルミ光輝材、パール光輝材などの着色材を含んでもよい。カラー層などの意匠層を有する加熱延伸フィルムは、その面積伸び率が大きくなると、すなわちより大きく延伸されると、意匠層の呈する色調に変化が生じて被着体である物品を隠蔽する性能が低下する場合があるが、意匠層と物品の間に位置するポリウレタン加熱接着層を酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラックなどの顔料で着色することにより、高延伸時でも高い隠蔽性を実現することができる。
【0088】
スズ蒸着膜、インジウム蒸着膜などの金属光輝層を含む加熱延伸フィルム、例えばクロムメッキ代替フィルムなどとして使用される加熱延伸フィルムにおいては、ポリウレタン加熱接着層に上記顔料を含ませることによって被着体である物品を隠蔽する性能を高めることができる。スズ蒸着膜などは蒸着膜表面にピンホールなどの蒸着欠陥を有する場合があるが、ポリウレタン加熱接着層を着色することでこのような欠陥を目立たなくすることができる。
【0089】
ポリウレタン加熱接着層に含まれる顔料の量は、ポリウレタン加熱接着層の約0.1質量%以上、約0.2質量%以上、又は約0.5質量%以上、約50質量%以下、約20質量%以下、又は約10質量%以下とすることが有利である。
【0090】
加熱延伸フィルムの厚さは、一般に、約10μm以上、約25μm以上、又は約50μm以上、約2000μm以下、約1000μm以下、又は約500μm以下である。加熱延伸フィルムの厚さを上記範囲とすることにより、複雑な形状を有する物品に対しても加熱延伸フィルムを十分に追従させて、優れた外観を有する構造体を提供することができる。
【0091】
加熱延伸フィルムの耐引っかき性はJIS K5600−5−4に準拠した鉛筆硬度によって評価することができる。ある実施態様の加熱延伸フィルムは、ポリウレタン加熱接着層をガラス板の表面に向けて加熱延伸フィルムをガラス板の上に固定し、600mm/分の速度で最外層を引っかいたときの鉛筆硬度が2B以上である。鉛筆硬度は6B以上、5B以上、4B以上、又は3B以上とすることができる。
【0092】
加熱延伸フィルムの製造方法については特に限定されない。各層についてはすでに説明したとおり製造することができる。加熱延伸フィルムは、例えば、表面を剥離処理したPETフィルムなどのライナー、又は加熱延伸フィルムを構成する他の層の上に各層を形成し、これらを積層することにより製造することができる。あるいは、一枚のライナーの上に、コーティング工程と必要に応じて乾燥又は硬化工程を繰り返して、各層を順次積層することもできる。各層の材料を多層押し出しして加熱延伸フィルムを形成することもできる。
【0093】
本開示の一実施態様によれば、物品と、物品の表面に適用された加熱延伸フィルムとを含む構造体が提供される。
図5に、一例としてこのような構造体の概略断面図を示す。構造体1は、加熱延伸フィルム10によって覆われた物品20を含む。IM又はTOMにより加熱延伸フィルム10を物品20に適用することによって、加熱延伸フィルム及び物品が一体化された構造体を形成することができる。別の実施態様では、物品となる熱可塑性材料を加熱延伸フィルム10の上に押し出すことによって、加熱延伸フィルム及び押し出された熱可塑性材料が一体化された構造体を形成することができる。IM、TOM、及び押出は、従来公知の方法によって行うことができる。
【0094】
物品は様々な材料で作られていてよく、様々な平面及び3次元形状を有する材料を使用することができる。本開示の加熱延伸フィルムは、特に、ポリカーボネート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、又はそれらの混合物若しくはブレンドを含む物品に対して優れた接着力を発揮し、好適に使用することができる。
【0095】
以下、
図6を参照しながら、TOMを用いて加熱延伸フィルムを物品に適用する方法について例示的に説明する。
【0096】
図6(A)に示すように、例示的な真空加熱圧着装置30は、上下に第1真空室31及び第2の真空室32をそれぞれ有しており、上下の真空室の間に被着体である物品20に貼り付ける加熱延伸フィルム10をセットする治具が備えられている。また、下側の第1真空室31には、上下に昇降可能な昇降台35(不図示)の上に仕切り板34及び台座33が設置されており、3次元形状物などの物品20はこの台座33の上にセットされる。このような真空加熱圧着装置としては、市販のもの、例えば両面真空成型機(布施真空株式会社製)などを使用することができる。
【0097】
図6(A)に示すように、まず、真空加熱圧着装置30の第1真空室31及び第2真空室32を大気圧に解放した状態で、上下の真空室の間に、加熱延伸フィルム10をセットする。第1真空室31において台座33の上に物品20をセットする。
【0098】
次に、
図6(B)に示すように、第1真空室31及び第2真空室32を閉鎖し、それぞれ減圧し、各室の内部を真空(大気圧を1atmとした場合例えば約0atm)にする。その後又は真空にするのと同時にフィルムを加熱する。次いで、
図6(C)に示すように、昇降台35を上昇させて物品20を第2真空室32まで押し上げる。加熱は、例えば第2真空室32の天井部に組み込まれたランプヒータで行うことができる。加熱温度は一般に約50℃以上、約180℃以下とすることができ、好ましくは約130℃以上、約160℃以下である。減圧雰囲気の真空度は、大気圧を1atmとして約0.10atm以下、約0.05atm以下、約0.01以下atmとすることができる。
【0099】
加熱された加熱延伸フィルム10は物品20の表面に押しつけられて延伸される。その後又は延伸と同時に、
図6(D)に示すように、第2真空室32内を適当な圧力(例えば3atm〜1atm)に加圧する。圧力差により加熱延伸フィルム10は物品20の露出表面に密着し、露出表面の3次元形状に追従して延伸し、物品表面に密着した被覆を形成する。
図6(B)の状態で減圧及び加熱を行った後、そのまま第2真空室32内を加圧して、加熱延伸フィルム10で物品20の露出表面を被覆することもできる。
【0100】
この後、上下の第1真空室31及び第2真空室32を再び大気圧に開放して、加熱延伸フィルム10で被覆された物品20を外に取り出す。
図6(E)に示すように、物品20の表面に密着した加熱延伸フィルム10のエッジをトリミングして、TOM工程は完了する。このようにして、加熱延伸フィルム10が物品20の端部においてその裏面21まで回り込んで露出面をきれいに被覆する、良好な巻き込み被覆がなされた構造体1を得ることができる。
【0101】
成形後の加熱延伸フィルムの最大面積伸び率は、一般に、約50%以上、約100%以上、又は約200%以上、約1000%以下、約500%以下、又は約300%以下である。面積伸び率は、面積伸び率(%)=(B−A)/A(A:加熱延伸フィルムのある部分の成形前の面積、B:加熱延伸フィルムのAに対応する部分の成形後の面積)で定義される。例えば、加熱延伸フィルムのある部分の面積が成形前に100cm
2であって、その部分が成形後に物品の表面で250cm
2となった場合は150%である。最大面積伸び率は、成形品表面全ての加熱延伸フィルムのなかで最も高い面積伸び率の箇所の値を言う。3次元形状を有する物品に平らなフィルムをTOMにより貼り付けると、例えば最初にフィルムが物品に当たる部分はほとんど延伸されず面積伸び率はほぼ0%であり、最後に貼り付けられる端部では大きく延伸されて面積伸び率が200%以上になるといったように、場所によって面積伸び率が大きく異なる。フィルムが最も大きく延伸された部分で物品に対する未追従やフィルムの破れといった不具合が起きるか否かが成形の合否を決めることから、成形品全体の平均面積伸び率ではなく、最も大きく延伸された部分の面積伸び率、すなわち最大面積伸び率が成形品の合否の実質的な指標となる。最大面積伸び率は、例えば成形前の加熱延伸フィルムの表面全体に1mm四方のマス目を印刷しておき、成形後にその面積変化を測定する、あるいは成形前後の加熱延伸フィルムの厚さを測定することにより確認できる。
【0102】
本開示の加熱延伸フィルムは、自動車部品、家電製品、車輌(鉄道など)、建材などの装飾を目的として、TOM、IM、押出法などの様々な成形技術において利用することができるが、特にTOMにおいて好適に使用することができる。
【実施例】
【0103】
以下の実施例において、本開示の具体的な実施態様を例示するが、本発明はこれに限定されるものではない。部及びパーセントは全て、特に明記しない限り質量による。
【0104】
本実施例で使用した試薬、原料などを以下の表1に示す。
【0105】
【表1】
【0106】
ポリウレタン加熱接着層として使用したポリウレタンフィルムを以下の手順で調製した。
【0107】
<ポリウレタン1(PUR1)−ポリカーボネート系ポリウレタンの調製>
53.0部の3−メチル−1,5−ペンタンジオール、及び47.0部のエチレンカーボネートに、触媒として酢酸鉛三水和物0.00072部を加えたのち、160℃で16時間反応させ、数平均分子量1000のポリカーボネートジオールを調製した。64.0部の上記ポリカーボネートジオール、8.0部の1,4−ブタンジオール、28.0部の1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、0.01部のジブチルスズジラウレートを混合し、180℃で3時間反応させた後、加圧成形機にて厚さ100μmのフィルムを作製した。得られたポリウレタンのGPC法により測定した分子量は、数平均分子量28,000、重量平均分子量89,000であった。
【0108】
<ポリウレタン2(PUR2)−ポリカーボネート系ポリウレタンの調製>
21.6部のアジピン酸、及び29.6部の1,4−ブタンジオールに、触媒として40ppmのチタニウムテトラブチレートを加えたのち、240℃でエステル化反応を行い、数平均分子量500のポリエステルポリオールを調製した。56.0部の上記ポリエステルポリオール、15.0部のクラレポリオールPMHC−1050、2.0部の1,6−ヘキサンジオール、27.0部の1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、0.01部のジブチルスズジラウレートを混合し、180℃で3時間反応させた後、加圧成形機にて厚さ50μm及び100μmのフィルムを作製した。得られたポリウレタンのGPC法により測定した分子量は、数平均分子量46,000、重量平均分子量120,000であった。
【0109】
<ポリウレタン3(PUR3)−ポリエステル系ポリウレタンの調製>
63.0部のポリライト(商標)OD−X−240、6.0部の1,4−ブタンジオール、31.0部の4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、0.01部のジブチルスズジラウレートを混合し、180℃で3時間反応させた後、加圧成形機にて厚さ200μmのフィルムを作製した。得られたポリウレタンのGPC法により測定した分子量は、数平均分子量50,000、重量平均分子量100,000であった。
【0110】
<ポリウレタン4(PUR4)−ポリエステル系ポリウレタンの調製>
49.0部のアジピン酸、14.5部のイソフタル酸、及び36.5部の1,4−ブタンジオールに、触媒として40ppmのチタニウムテトラブチレートを加えたのち、240℃でエステル化反応を行い、数平均分子量1200のポリエステルポリオールを調製した。63.0部の上記ポリエステルポリオール、5.0部の1,4−ブタンジオール、32.0部のジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、0.01部のジブチルスズジラウレートを混合し、180℃で3時間反応させた後、加圧成形機にて厚さ150μmのフィルムを作製した。得られたポリウレタンのGPC法により測定した分子量は、数平均分子量51,000、重量平均分子量120,000であった。
【0111】
<ポリウレタン5(PUR5)−ポリエーテル系ポリウレタンの調製>
72.0部のポリテトラメチレンエーテルグリコールPTMG 650、28.0部の4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、及び0.01部のジブチルスズジラウレートを混合し、180℃で3時間反応させた後、加圧成形機にて厚さ200μmのフィルムを作製した。得られたポリウレタンのGPC法により測定した分子量は、数平均分子量31,000、重量平均分子量65,000であった。
【0112】
<ポリウレタン6(PUR6)−ポリエステル系ポリウレタンの調製>
57.0部のポリライト(商標)OD−X−240、7.5部の1,4−ブタンジオール、35.5部の4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、0.01部のジブチルスズジラウレートを混合し、180℃で3時間反応させた後、加圧成形機にて厚さ150μmのフィルムを作製した。得られたポリウレタンのGPC法により測定した分子量は、数平均分子量47,000、重量平均分子量96,000であった。
【0113】
<ポリウレタン7(PUR7)−ポリエーテル系ポリウレタンの調製>
85.0部のポリテトラメチレンエーテルグリコールPTMG 1500、15.0部のジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、0.01部のジブチルスズジラウレートを混合し、180℃で3時間反応させた後、加圧成形機にて厚さ150μmのフィルムを作製した。得られたポリウレタンのGPC法により測定した分子量は、数平均分子量48,000、重量平均分子量140,000であった。
【0114】
作製したポリウレタンフィルム及び加熱延伸フィルムの特性を以下の試験方法を用いて評価した。
【0115】
<ポリウレタンフィルムの分子量>
ポリウレタンフィルムの分子量は、以下の条件でゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)法により決定する。
装置:Agilent 1200 series LC system
PLゲル ガードカラム(50mm×7.5mm、内径10μm)
PLゲル MIXED−B×2(300mm×7.5mm、内径10μm)
溶媒:テトラヒドロフラン(THF)又はN−メチルピロリドン(NMP)
流量:1.0mL/分
検出器:RI
カラム温度:40℃(THF)、60℃(NMP)
濃度:0.1%
サンプル量:100μL
標準:ポリスチレン(THF)、ポリメチルメタクリレート(NMP)
【0116】
<ポリウレタンフィルムの25℃及び135℃における引張強度>
ポリウレタンフィルムの引張強度及び伸びは、以下の条件を用いてJIS K 7311(1995)に準拠して決定する。
(1)試験温度25℃
試料:JIS K 7311(1995)に記載のダンベル試験片、幅5.0mm、ゲージ長20.0mm
引張速度:300mm/分
(2)試験温度135℃
試料:JIS K 7311(1995)に記載のダンベル試験片、幅10.0mm、ゲージ長20.0mm
引張速度:300mm/分
【0117】
測定値から以下の特性値を算出する。
(1)50%伸び時引張強度(T
50)
T
50(MPa)=F
50/A
F
50(N):50%伸び時の測定値、A:断面積(m
2)
(2)破断強度(T
B)
T
B(MPa)=F
B/A
F
B(N):破断時の測定値、A:断面積(m
2)
(3)伸びE
E(%)=[(L
1−L
0)/L
0]×100
L
1:破断時のゲージ長(mm)、L
0:初期ゲージ長さ(mm)(=20.0mm)
【0118】
<ポリウレタンフィルムの粘弾性特性>
粘弾性特性は、動的粘弾性測定装置ARES(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製、日本国東京都品川区)を使用して測定する。フィルムを直径7.9mmに打ち抜いて試料を作製し、所定温度にて周波数1.0Hzのせん断モードで測定し、せん断貯蔵弾性率G’及び損失係数tanδ(=せん断損失弾性率G”/せん断貯蔵弾性率G’)を得る。
【0119】
<初期密着性評価(クロスカット試験)>
初期密着性評価は、JIS K5400:1990(廃版)の碁盤目テープ試験に準拠して行う。具体的には、TOMを用いて、成形温度135℃で面積伸び率が100%となるように加熱延伸フィルムをPC/ABS板(CK43黒色、テクノポリマー株式会社製、日本国東京都港区)に接着した後、カッターを使用して1mm間隔でフィルム上に碁盤目状にスリットを入れて、100個の区画を形成する。碁盤目状にスリットが入ったフィルム上にセロテープ(登録商標)(ニチバン株式会社製CT405AP−18、日本国東京都文京区)を十分に圧着し、90度方向に引っ張る。フィルム上に残存する碁盤目状の区画の数をカウントして密着性評価の値とする。残存する区画が100個(100/100)を最良とし、90個以上(90/100以上)を良好とする。
【0120】
<ヒートサイクル劣化試験>
TOMを用いて、成形温度135℃で面積伸び率が100%となるように加熱延伸フィルムをPC/ABS板(CK43黒色、テクノポリマー株式会社製、日本国東京都港区)に接着する。TOMにより成形した後、以下のヒートサイクルにかけて外観を観察する。
(1)25℃から105℃に1時間で加熱し、105℃で6時間保持する。
(2)−30℃に2時間で冷却し、−30℃で2時間保持する。
(3)50℃/95%RHに2時間で加熱及び加湿し、50℃/95%RHで6時間保持する。
(4)−30℃(乾燥)に2時間で冷却し、−30℃で2時間保持する。
(5)25℃に1時間で加熱する。
(6)(1)〜(5)を5回繰り返す。
【0121】
<接着力>
TOMを用いて、成形温度135℃で面積伸び率が100%となるように加熱延伸フィルムをPC/ABS板(CK43黒色、テクノポリマー株式会社製、日本国東京都港区)に接着する。得られた積層体を25mm幅×50mm長さでカットし試験片を作製する。テンシロン(登録商標)万能試験機RTC−1325A(ロードセル50N、UR−50N−D)(株式会社オリエンテック製、日本国東京都豊島区)を用い、クリップ間距離を約50mm、引張速度を300mm/分として温度23℃で試験片を180度方向に引っ張って加熱延伸フィルムをPC/ABS板から剥がしたときの測定値の平均を接着力とする。
【0122】
<加熱延伸フィルム作製>
アクリル樹脂最外層、接合層、金属蒸着膜、及びポリウレタン加熱接着層をこの順で含むフィルムを作製した。
【0123】
<アクリル樹脂最外層>
メチルメタクリレート(MMA)/2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)=97質量%/3質量%のアクリル共重合体を、一般的な溶液重合により調製して、固形分35質量%の酢酸エチル/酢酸ブチル溶液の形態で得た。この溶液にイソシアヌレート架橋剤デュラネート(商標)TPA−100を、共重合体に対して固形分で2.7質量%となる量で添加した。得られた溶液を厚さ75μmのポリエステルフィルムに塗布し、100℃で10分乾燥し、その後150℃で10分乾燥した。このようにして、厚さ50μmのアクリル樹脂最外層をポリエステルフィルム上に得た。
【0124】
<ポリウレタン加熱接着層上の金属蒸着膜>
スズをポリウレタン加熱接着層上に蒸着した。ポリウレタン加熱接着層は予め厚さ50μmのポリエステルフィルムに積層して、蒸着処理中このフィルムに担持させた。蒸着条件は以下のとおりである。
装置:真空蒸着装置EX−400(株式会社アルバック製、日本国神奈川県茅ヶ崎市)
ターゲット金属蒸発のエネルギー源:電子線
スズ蒸着膜の厚さ:430オングストローム
スズ蒸着膜の成膜速度:5オングストローム/秒
【0125】
<アクリル樹脂最外層とポリウレタン加熱接着層の積層>
100質量部のポリエステルポリオールSEIKABOND(商標)E−295NT及び2.9質量部のイソシアネート硬化剤C−55を混合して、上記のとおり調製したアクリル樹脂最外層の上に塗布し、100℃のオーブンで3分間加熱し、アクリル樹脂最外層の上に厚さ15μmの接合層を形成した。
【0126】
接合層と金属蒸着膜が面するように、アクリル表面樹脂層とポリウレタン加熱接着層を配置して、50℃、ニップ圧2.0kgfでこれらの層を積層してフィルムを形成した。
【0127】
得られたフィルムの評価結果を以下の表2に示す。
【0128】
【表2】
【0129】
<例5>
加熱転写可能な意匠転写層を含む加熱延伸加飾フィルムを以下の手順で作製した。
【0130】
157.5部のポリライト(商標)OD−X−2640、0.9部の1,4−ブタンジオール、1.2部の1,6−ヘキサンジオール、及び430.1部の酢酸エチルを混合し、均一な溶液を調製した。得られた溶液に25.0部の4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、及び0.01部のジブチルスズジラウレートを添加し、80℃で24時間反応させた。得られたポリウレタン(PUR8)のGPC法により測定した分子量は、数平均分子量84,000、重量平均分子量200,000であり、ガラス転移温度Tgは−10℃であった。
【0131】
PUR8と、フェノキシ樹脂YP50Sの35質量%メチルエチルケトン溶液を固形分比率が35:65になるように混合し、さらにメチルエチルケトンで希釈して固形分が7.5%となるように調整した。得られた溶液をポリエステルフィルムG2に#12のメイヤーバーを使用して塗布し、60℃で3分間乾燥して加熱接着可能な第1表面層を形成した。厚み計で測定した加熱接着可能な第1表面層の厚さは約2μmであった。
【0132】
第1表面層の上にグラビア印刷を用いて所定のパターンでグラビアインクVTP−NT CDブラック(A)を印刷して意匠層を形成した。厚み計で測定した意匠層の厚さは約2μmであった。
【0133】
第1表面層と同じ溶液を意匠層の上に#12のメイヤーバーを使用して塗布し、60℃で3分間乾燥して加熱接着可能な第2表面層を形成した。厚み計で測定した加熱接着可能な第2表面層の厚さは約2μmであった。
【0134】
このようにして、ポリエステルフィルム(剥離層)と、ポリエステルフィルムに剥離可能に取り付けられた意匠転写層とを含む意匠転写シートを作製した。意匠転写層は、ポリエステルフィルム側から第1表面層と、意匠層と、第2表面層とをこの順で含んでいた。
【0135】
真空蒸着機を用いて金属スズを厚さ100μmのPUR2フィルムの片面に厚さ430オングストロームとなるまで蒸着した。このようにして、スズ蒸着膜を有するポリウレタン加熱接着層とスズ蒸着膜を有しないポリウレタン加熱接着層の両方を用意した。蒸着条件は以下のとおりである。
装置:真空蒸着装置EX−400(株式会社アルバック製、日本国神奈川県茅ヶ崎市)
ターゲット金属蒸発のエネルギー源:電子線
スズ蒸着膜の成膜速度:5オングストローム/秒
【0136】
意匠転写層の第2表面層とスズ蒸着膜を有さないポリウレタン加熱接着層、又はスズ蒸着膜を有するポリウレタン加熱接着層のスズ蒸着膜とを対向させて、温度130℃、圧力2kgfの条件下、ロール式ラミネーターで貼り合わせて積層体を形成した。得られた積層体からポリエステルフィルムを剥がし、露出した第1表面層と、アクリルフィルムテクノロイ(商標)S014Gとを対向させて、温度130℃、圧力2kgfの条件下、ロール式ラミネーターで貼り合わせて評価用サンプルを2種作製した。
【0137】
評価用サンプルを用いて初期密着性を評価した。初期密着性評価用に作製したサンプルの外観は良好であった。初期密着性は、スズ蒸着膜を有さないポリウレタンフィルム及びスズ蒸着膜を有するポリウレタンフィルムのいずれに対しても100/100であった。密着性評価において、テープとアクリルフィルムの間で剥離が生じ、層間剥離は確認されなかった。
【0138】
上記と同じ初期密着性評価用サンプルを作製し、得られたサンプルを110℃のオーブンに500時間入れ、取り出して室温で1日放置してから、同様に外観及び密着性を評価した。加熱促進試験後のサンプルの外観は良好であり、密着性試験を行ったところ、スズ蒸着膜を有さないポリウレタンフィルム及びスズ蒸着膜を有するポリウレタンフィルムのいずれに対しても100/100であった。密着性評価において、テープとアクリルフィルムの間で剥離が生じ、層間剥離は確認されなかった。
本発明の実施態様の一部を以下の項目1〜8に記載する。
項目1
3次元形状を有する物品を加熱延伸により被覆することが可能なフィルムであって、
前記フィルムは、
最表面に配置される最外層と、
ポリエステル系ポリウレタン及びポリカーボネート系ポリウレタンからなる群より選択される熱可塑性ポリウレタンを含み、前記加熱延伸時に前記物品に加熱接着されるポリウレタン加熱接着層と
を含み、
前記ポリウレタン加熱接着層の破断強度が135℃で1MPa以上であり、150℃、周波数1.0Hzにおける貯蔵弾性率が5×103Pa〜5×105Paであり、損失係数tanδが0.1以上である、フィルム。
項目2
周波数1.0Hzで測定した前記ポリウレタン加熱接着層の−20℃の貯蔵弾性率と110℃の貯蔵弾性率の比(−20℃の貯蔵弾性率/110℃の貯蔵弾性率)が100以下である、項目1に記載のフィルム。
項目3
前記熱可塑性ポリウレタンがポリカーボネート系ポリウレタンであり、前記最外層と前記ポリウレタン加熱接着層との間に前記ポリウレタン加熱接着層上に配置された金属光輝層をさらに含む、項目1又は2のいずれかに記載のフィルム。
項目4
ポリイソシアネートが前記熱可塑性ポリウレタン全体に対して20質量%〜40質量%の量で前記熱可塑性ポリウレタンに組み込まれている、項目1〜3のいずれか一項に記載のフィルム。
項目5
前記ポリウレタン加熱接着層が着色されている、項目1〜4のいずれか一項に記載のフィルム。
項目6
3次元形状を有する物品を加熱延伸により被覆することが可能な加飾フィルムであって、
前記フィルムは、
最表面に配置される最外層と、
ポリエステル系ポリウレタン及びポリカーボネート系ポリウレタンからなる群より選択される熱可塑性ポリウレタンを含み、前記加熱延伸時に前記物品に加熱接着されるポリウレタン加熱接着層と、
前記最外層と前記ポリウレタン加熱接着層の間に配置される意匠層と
を含み、
前記ポリウレタン加熱接着層の破断強度が135℃で1MPa以上であり、150℃、周波数1.0Hzにおける貯蔵弾性率が5×103Pa〜5×105Paであり、損失係数tanδが0.1以上である、加飾フィルム。
項目7
前記意匠層として加熱転写可能な意匠転写層を含む、項目6に記載の加飾フィルム。
項目8
項目1〜5のいずれか一項に記載のフィルム又は項目6若しくは7のいずれかに記載の加飾フィルムを物品に被覆し一体化させた物品。