【課題を解決するための手段】
【0017】
かかる課題を解決するために、本願発明に係る捩り振動低減装置は、
同一形状であって互いに向かい合う略円盤リング状の第1及び第2の入力側回転部材と、
前記第1及び第2の入力側回転部材の間に挟まれ略同心状にかつ正逆反対方向に相対回転可能に配置された略円盤リング状の出力側回転部材と、
前記第1及び/もしくは第2の入力側回転部材及び前記出力側回転部材の円周方向に略等間隔に形成され、両者の相対回転方向両端部をばね受け部とするばね収容部と、
前記ばね収容部に収容されるばねと、
を具備して構成され、
前記第1入力側回転部材と第2の入力側回転部材とのリベット固定において1のリベット固定に対してリベット固定用穴が同一半径円周上に隣接して2以上を有し、
いずれかのリベット固定穴を選択することにより前記出力側回転部材の前記第1及び第2の入力回転部材に対する相対回転可能範囲を対称又は非対称にすることを選択可能としたこと
に特徴を有する。
【0018】
以降、上記の第1の入力側回転部材をドライブプレートと称し、第2の入力側回転部材をサイドプレートと称する。また、以降、出力側回転部材をハブクラッチと称する。
【0019】
本は発明に係る捩り振動低減装置は、入力側回転部材であるドライブプレートとサイドプレートが同一形状であり、それらが相対向するように出力側回転部材であるハブクラッチを挟み込みリベット等により固定されるため、出力側回転部材に対する入力側回転部材の回転軸方向の及び垂直方向の質量バランスが均一となり、回転における歪み変形力の発生を最小限に制限することができる。つまり急激な回転トルク発生や予想を超えた急激なトルク変動に対しても回転駆動において軸方向の振動、ブレ、たわみを最小限にすることができる。
【0020】
従来のドライブプレート及びサイドプレート構造である材質、大きさ、厚さ、形状のままで十分耐え得ることができ、トルクコンバータの軽量化、低コスト化そして長期安定性に大いに貢献できる。
【0021】
またドライブプレート及びサイドプレートの部材製造においても、従来のように形状の相違する2部品を製造するのに比較して、一種類の入力側回転部材を2個製造すればよく、大きな製造コストの低減及び部品点数の削減及び管理コストの低減につながる。
【0022】
本は発明に係る捩り振動低減装置は、ドライブプレート及びサイドプレートのリベット固定において、1のリベット固定に対してリベット固定用穴が同一半径円周上に隣接して2以上を有し、いずれかのリベット固定穴を選択することにより、出力側回転部材であるハブクラッチのドライブプレート及びサイドプレートに対する相対回転可能範囲を非対称にすることができる。また同様に対称にすることを選択することもできる。
【0023】
捩り振動低減吸収機能においてハブクラッチは、ドライブプレート及びサイドプレートの入力側回転部材の回転(正回転方向と称する。)に相対して逆回転の動き(相対逆回転と称する。)となる。この際、入力側回転部材の急激な回転駆動に対してはハブクラッチ側の相対した逆回転の動き(回転角度)は必然的に大きくなる。次にハブクラッチの相対逆回転は緩衝バネ(トーションスプリング)の弾性緩衝により反動として今度は正回転方向に回転する。しかしその反動による正回転方向の回転角度は小さくなる。
【0024】
このように上記の捩り振動低減装置の入力側回転部材と出力側回転部材の特有な相対回転の動きによって捩り振動が減衰されるのであるが、この両回転部材の相対回転に許される回転角(回転自由度)は、当然無限ではなく、入力側回転部材と出力側回転部材との形状及びリベット等の固定位置によって制約を受けるため相対回転角度(回転自由度)は一定の制限を受けている。同様に上記のように反動正回転する回転角度においても制約を受けていることになる。つまりハブクラッチの相対的な逆及び正両回転の回転角度は両入力側回転部材の同一半径円周上に設けられた2か所のリベットに挟まれて制約を受ける。
【0025】
しかし本発明に係る捩り振動低減装置によれば、ドライブプレートとサイドプレートを締結する1のリベット固定用穴を同一半径円周上に並列して2個ずつ設けているため、実際のリベット固定において、例えば同一半径円周上に並列した2個のリベット穴のうち逆回転方向側のリベット穴を全て選択した場合は、相対逆回転側の回転角を正回転側の回転角より大きく設定することができる。
【0026】
これにより、入力側回転部材の急激な回転駆動に対してハブクラッチの相対した逆回転の動き(回転角度)は必然的に大きくなるが、その逆回転に対する回転角度(回転自由度)を大きく設定することができ、次にハブクラッチの反動として小さく回転する正回転方向の回転角度(回転自由度)は小さく設定することができる。
【0027】
つまり本発明に係る捩り振動低減装置は、上記のように、1のリベット固定位置に対してリベット固定用穴が隣接して2以上を有し、いずれかのリベット固定穴を選択することにより、ハブクラッチの入力回転部材に対する相対回転可能範囲を非対称にすることができる。ハブクラッチの大きな相対回転方向の自由度を高め且つ小さな回転方向の自由度を縮小化する択一的設計が可能になる。
【0028】
またドライブプレート及びサイドプレートの形状を同一で対向面対称にし、リベット固定用穴を同一半径円周上に並列して2か所ずつ設けることにより、リベット固定位置は任意に選択できるにもかかわらず、左右形状対称であるドライブプレート及びサイドプレートの同一性は損なわれないため、同一部品として共用化できることに変わりはない。
【0029】
同様に、本発明に係る捩り振動低減装置は、ドライブプレート及びサイドプレートの円周面内側のリベット固定を前提としているため、両プレートの円周内側の締結強度は十分に保たれる。つまり両プレートの円周内側における接合固定力の脆弱性及び回転軸方向への両プレートの膨潤及び収縮力に対する危惧は回避することができる。
【0030】
本発明に係る捩り振動低減装置は、
上記の構成において、さらに、前記出力側回転部材は外周に均等角に配置された複数の突起部を有し、前記リベット穴セットは、相隣接する前記複数の突起部の略中央部に
位置するとすることができる。
【0031】
この場合に、リベット穴
セットから左右等距離にあるリベット穴の二つを選択してリベット固定した場合は、ハブクラッチのドライブプレート及びサイドプレートに対する左右の相対回転可能範囲は同角度であり対称とすることができる。
【0032】
また、本発明に係る捩り振動低減装置は、急激な回転トルクを受けた入力側回転部材の急激な回転トルクに対して大きな回転角をもって回転しようとする相対的な逆回転に対しては、リベットまでの角度距離を大きく設定し、逆に反動する正回転方向に対する角度距離を小さく設定することができ、設計的自由度が増すことになるメリットは大きい。
【0033】
ハブクラッチの急激な相対的逆回転によりリベット位置に接触し破損等に至る危険性を回避することができる上、予め想定した安全設計をするができる。また、その回転距離も並列設定するリベット穴の間隔の幅によって任意に設定できる。
【0034】
並列設定されたリベット穴のいずれを使用しても、ドライブプレート及びサイドプレートを互いに固定するリベット数及びリベット固定間隔は、円周上全体として均一とすれば、強固な固定力は維持できる。
【0035】
本発明に係る捩り振動低減装置は、リベット固定穴をひとつに対して複数個設けることにより、回転方向に対して相対回転するハブクラッチの回転余裕を回転方向に対して非対称にすることも対称にすることも可能となるため、選択性を持たせた同一形状の入力側回転部材を共通部材として提供できる。
【0036】
本発明に係る捩り振動低減装置は、入力側回転部材であるドライブプレート及びサイドプレートの形状を同一形状とし両部材を締結固定するリベット穴位置を複数隣接して等間隔に設定し選択使用することにより、出力側回転部材であるハブクラッチの相対回転に対する回転自由度を左右両回転に対して任意に設定確保できることを特徴としている。
【0037】
加えて、本発明に係る捩り振動低減装置は、入力側回転部材の基本的な形態(環状形状、厚さ、重量等)を変えず、入力側回転部材の対称構造により共通化させ、ダンパー一体としての強度・剛性を確保しつつ、長期信頼性・安定性を維持したトルクコンバータの効率的稼働に大いに貢献する。