(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6574093
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】無線基地局装置、ベースバンドユニット及び基地局システム
(51)【国際特許分類】
H04B 1/74 20060101AFI20190902BHJP
H04W 24/04 20090101ALI20190902BHJP
H04W 88/08 20090101ALI20190902BHJP
【FI】
H04B1/74
H04W24/04
H04W88/08
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-41737(P2015-41737)
(22)【出願日】2015年3月3日
(65)【公開番号】特開2016-163232(P2016-163232A)
(43)【公開日】2016年9月5日
【審査請求日】2017年8月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【弁理士】
【氏名又は名称】永川 行光
(74)【代理人】
【識別番号】100131886
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 隆志
(74)【代理人】
【識別番号】100170667
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 浩次
(74)【代理人】
【識別番号】100166660
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 晴人
(72)【発明者】
【氏名】縣 亮
(72)【発明者】
【氏名】田中 啓仁
【審査官】
鴨川 学
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−135052(JP,A)
【文献】
特開平08−237230(JP,A)
【文献】
特開平06−268669(JP,A)
【文献】
特開平07−321711(JP,A)
【文献】
特開平08−032533(JP,A)
【文献】
特開平10−079757(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/74
H04W 24/04
H04W 88/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冗長化された複数の通信回線のいずれかを介してベースバンドユニットと通信する無線基地局装置であって、
第1の通信回線における前記ベースバンドユニットと前記無線基地局装置との間の伝搬遅延量と、前記第1の通信回線に対する予備系として使用可能な第2の通信回線における前記ベースバンドユニットと前記無線基地局装置との間の伝搬遅延量との差に相当する、前記第1の通信回線と前記第2の通信回線との伝搬遅延差を、前記ベースバンドユニットと前記無線基地局装置との間にデータ通信のためのリンクを確立する際に測定する測定手段と、
前記第1の通信回線における前記伝搬遅延量と前記第2の通信回線における前記伝搬遅延量とが等しくなるよう、前記測定手段によって測定された前記伝搬遅延差に基づいて、前記第1の通信回線または前記第2の通信回線に対して付加すべき遅延量を、前記リンクを確立する際に設定する設定手段と、
前記ベースバンドユニットと前記無線基地局装置との間に前記リンクが確立されている状態で、前記設定手段によって設定された前記遅延量を前記第1の通信回線または前記第2の通信回線に対して付加する付加手段と、
を備えることを特徴とする無線基地局装置。
【請求項2】
前記ベースバンドユニットとの通信に使用する通信回線の切り替えを制御する切替制御手段であって、前記第1の通信回線と前記第2の通信回線との切り替えを制御する、前記切替制御手段、
を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の無線基地局装置。
【請求項3】
前記付加手段は、前記第1の通信回線及び前記第2の通信回線のうちで前記伝搬遅延量が少ない通信回線に対して、前記伝搬遅延差に対応する遅延量を付加する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の無線基地局装置。
【請求項4】
前記付加手段は、前記第1の通信回線または前記第2の通信回線において伝送される信号を、前記付加すべき遅延量に相当する時間、バッファリングする、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の無線基地局装置。
【請求項5】
前記測定手段は、前記第1の通信回線及び前記第2の通信回線のそれぞれについて、前記ベースバンドユニットとの間で送受信する試験信号を用いて前記伝搬遅延量を測定し、当該測定の結果に基づいて、前記伝搬遅延差を算出する、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の無線基地局装置。
【請求項6】
前記第1の通信回線及び前記第2の通信回線は、光回線で構成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の無線基地局装置。
【請求項7】
前記第1の通信回線及び前記第2の通信回線では、CPRI規格またはOBSAI規格に従った信号が伝送されることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の無線基地局装置。
【請求項8】
冗長化された複数の通信回線のいずれかを介して無線基地局装置と通信するベースバンドユニットであって、
第1の通信回線における前記ベースバンドユニットと前記無線基地局装置との間の伝搬遅延量と、前記第1の通信回線に対する予備系として使用可能な第2の通信回線における前記ベースバンドユニットと前記無線基地局装置との間の伝搬遅延量との差に相当する、前記第1の通信回線と前記第2の通信回線との伝搬遅延差を、前記ベースバンドユニットと前記無線基地局装置との間にデータ通信のためのリンクを確立する際に測定する測定手段と、
前記第1の通信回線における前記伝搬遅延量と前記第2の通信回線における前記伝搬遅延量とが等しくなるよう、前記測定手段によって測定された前記伝搬遅延差に基づいて、前記第1の通信回線または前記第2の通信回線に対して付加すべき遅延量を、前記リンクを確立する際に設定する設定手段と、
前記ベースバンドユニットと前記無線基地局装置との間に前記リンクが確立されている状態で、前記設定手段によって設定された前記遅延量を前記第1の通信回線または前記第2の通信回線に対して付加する付加手段と、
を備えることを特徴とするベースバンドユニット。
【請求項9】
請求項1から7のいずれか1項に記載の無線基地局装置と、
前記第1の通信回線及び前記第2の通信回線を介して前記無線基地局装置と接続された前記ベースバンドユニットと、
を備えることを特徴とする基地局システム。
【請求項10】
請求項8に記載のベースバンドユニットと、
前記第1の通信回線及び前記第2の通信回線を介して前記ベースバンドユニットと接続された前記無線基地局装置と、
を備えることを特徴とする基地局システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冗長化された複数の通信回線のいずれかを介して通信する無線基地局装置及びベースバンドユニットと、当該無線基地局装置及びベースバンドユニットを備える基地局システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
無線アクセスネットワークに設置される基地局は、一般に、ベースバンド処理等を行うベースバンドユニット(BBU)と、無線周波数(RF)の処理等を行うRFユニットとで構成される。当該RFユニットは、一般的にリモートラジオヘッド(RRH)と称される。近年、LTE(Long Term Evolution)等の無線アクセスネットワークでは、BBUとは異なる場所に多数のRRHを基地局(無線基地局装置)として設置して、1つのBBUが多数のRRHを集中制御する基地局システムが普及してきている。このようなネットワーク構成は、C−RAN(Centralized Radio Access Network)として知られており、基地局間での高度な協調動作が可能にする。
【0003】
BBUと各RRHは、例えば、CPRI(Common Public Radio Interface、共通公衆無線インタフェース)回線を介して接続される。BBUとRRHとを、冗長化された複数のCPRI回線を介して接続することによって、現用系のCPRI回線に障害が発生した場合に、使用する回線を予備系のCPRI回線に切り替えること(冗長系切り替え)が可能になる。
【0004】
特許公報1には、RRH側の無線装置(RE装置)とBBU側の無線管理装置(REC装置)との間を現用系及び予備系の回線で接続し、現用系から予備系への冗長系切り替え時の再接続処理を高速化するための技術が提案されている。具体的には、RE装置及びREC装置のそれぞれに、対向装置のプロトコル終端装置の機能を模擬するプロトコル擬似シミュレータを設ける。更に、RE装置及びREC装置のそれぞれは、現用系から予備系に回線を切り替える際に、自装置内でプロトコル終端装置とプロトコル擬似シミュレータとのリンク確立処理を行い、リンク確立完了後に、自装置のプロトコル終端装置と対向装置のプロトコル終端装置との通信を開始する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−135052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の冗長系切り替えでは、基地局システムを構成するRRH及びBBUのそれぞれに、プロトコル疑似シミュレータを実装する必要があり、各装置の構成が複雑化する。また、現用系の回線及び予備系の回線における、RRHとBBUとの間の伝搬遅延時間に差がある場合、基地局システムのサービスエリア内のユーザ端末との間で確立している通信リンクが、冗長系切り替えに伴って切断される可能性がある。
【0007】
例えば、CPRI規格では、伝搬遅延時間の変動が65ns以下であることが要求されている。しかし、現用系及び予備系の回線を構成する光ファイバの長さに約13m以上の差がある場合、冗長系切り替えに伴って、65nsを上回る伝搬遅延時間の変動が生じることになる。この場合、RRHとBBUとの間で通信リンクを再確立する必要があり、その間、ユーザ端末との間の通信リンクが切断される。
【0008】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものである。本発明は、冗長化された複数の通信回線のいずれかを介して通信するBBU及びRRH(無線基地局装置)において、ユーザ端末との間で確立中の通信リンクを維持しながら、使用する通信回線の切り替えを行うための技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る無線基地局装置は、冗長化された複数の通信回線のいずれかを介してベースバンドユニットと通信する無線基地局装置であって、第1の通信回線における前記ベースバンドユニットと前記無線基地局装置との間の伝搬遅延量と、前記第1の通信回線に対する予備系として使用可能な第2の通信回線における前記ベースバンドユニットと前記無線基地局装置との間の伝搬遅延量との差に相当する、前記第1の通信回線と前記第2の通信回線との伝搬遅延差を、前記ベースバンドユニットと前記無線基地局装置との間にデータ通信のためのリンク
を確立
する際に測定する測定手段と、前記第1の通信回線における前記伝搬遅延量と前記第2の通信回線における前記伝搬遅延量とが等しくなるよう、前記測定手段によって測定された前記伝搬遅延差に基づいて、前記第1の通信回線または前記第2の通信回線に対して付加すべき遅延量を、前記リンク
を確立
する際に設定する設定手段と、前記ベースバンドユニットと前記無線基地局装置との間に前記リンクが確立されている状態で、前記設定手段によって設定された前記遅延量を前記第1の通信回線または前記第2の通信回線に対して付加する付加手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の一態様に係るベースバンドユニットは、冗長化された複数の通信回線のいずれかを介して無線基地局装置と通信するベースバンドユニットであって、第1の通信回線における前記ベースバンドユニットと前記無線基地局装置との間の伝搬遅延量と、前記第1の通信回線に対する予備系として使用可能な第2の通信回線における前記ベースバンドユニットと前記無線基地局装置との間の伝搬遅延量との差に相当する、前記第1の通信回線と前記第2の通信回線との伝搬遅延差を、前記ベースバンドユニットと前記無線基地局装置との間にデータ通信のためのリンク
を確立
する際に測定する測定手段と、前記第1の通信回線における前記伝搬遅延量と前記第2の通信回線における前記伝搬遅延量とが等しくなるよう、前記測定手段によって測定された前記伝搬遅延差に基づいて、前記第1の通信回線または前記第2の通信回線に対して付加すべき遅延量を、前記リンク
を確立
する際に設定する設定手段と、前記ベースバンドユニットと前記無線基地局装置との間に前記リンクが確立されている状態で、前記設定手段によって設定された前記遅延量を前記第1の通信回線または前記第2の通信回線に対して付加する付加手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、冗長化された複数の通信回線のいずれかを介して通信するBBU及びRRH(無線基地局装置)において、ユーザ端末との間で確立中の通信リンクを維持しながら、使用する通信回線の切り替えを行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】BBUとRRHとの間の現用回線及び予備回線の伝搬遅延差の例を示す図。
【
図3】基地局システムにおけるBBU及びRRHの構成例を示すブロック図。
【
図4】BBUにおいて実行される処理の手順を示すフローチャート。
【
図5】RRHにおいて実行される処理の手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の例示的な実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の各図においては、実施形態の説明に必要ではない構成要素については図から省略する。また、以下の実施形態は例示であり、本発明を実施形態の内容に限定するものではない。
【0014】
<基地局システムの構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る基地局システム100の構成例を示すブロック図である。本実施形態では、基地局システム100は、コアネットワークに接続された収容局(CO:Central Office)250と、無線通信における無線周波数(RF)の処理等を実行する複数のRFユニット(RRH)300a,300bとを備える。収容局250内には、無線通信におけるベースバンド処理等を実行するベースバンドユニット(BBU)200が設けられる。RRH300a,300bはそれぞれ、無線基地局装置として機能し、無線通信のためのサービスエリア350a,350bを形成する。RRH300a,300bには、セルラ通信用の1つ以上のアンテナが接続されている。RRH300a,300bは、接続された1つ以上のアンテナを介して、自らが形成するサービスエリア内に存在する携帯電話、スマートフォン等のユーザ端末との間で無線通信が可能である。なお、基地局システム100が任意の数のアンテナを備えうる。
【0015】
本実施形態では、
図1に示すように、BBUを複数のRRHに対して個別に設けるのではなく、BBUを収容局250に集約することで、複数のRRHに対してBBUを共通化している。BBU200には、任意の数のRRHを、通信回線を介して接続可能である。基地局システム100では、一例として、2つのRRH300a,300bが、通信回線150a,150bをそれぞれ介してBBU200に接続されている。なお、RRH300a,300bは同様の構成を備えるものとし、以下では、RRH300と記載した場合、RRH300a,300bのそれぞれを示すものとする。また、通信回線150と記載した場合、通信回線150a,150bのそれぞれを示すものとする。
【0016】
通信回線150は、BBU200とRRH300とを結ぶフロントホール回線であり、本実施形態では、CPRI規格に準拠した光回線(CPRI回線)として構成される。BBU200とRRH300とは、通信回線150を介して通信可能であり、デジタル化されたベースバンド信号を相互に伝送する。
【0017】
図2は、BBU200とRRH300との間の現用回線150−1及び予備回線150−2の伝搬遅延差の例を示す図である。基地局システム100では、BBU200とRRH300とは、冗長化された複数の通信回線150(
図2では、現用回線150−1及び予備回線150−2)によって接続されており、冗長化された複数の通信回線150のいずれかを介して通信する。なお、
図2に示す複数の通信回線150は、BBU200からRRH300への下り方向の信号伝送、及びRRH300からBBU200への上り方向の信号伝送のいずれかに用いられる回線であるものとする。
【0018】
BBU200とRRH300とは、例えば使用中の現用回線150−1に障害が発生した場合、使用する回線を予備回線150−2に切り替えること(冗長系切り替え)が可能である。このように、本実施形態では、現用回線150−1は、第1の通信回線の一例であり、予備回線150−2は、第1の通信回線に対する予備系として使用可能な第2の通信回線の一例である。
【0019】
図2に示すように、現用回線150−1におけるBBU200とRRH300との間の伝搬遅延時間(以下、「伝搬遅延量」と称する。)をT1、予備回線150−2におけるBBU200とRRH300との間の伝搬遅延量をT2とする。また、伝搬遅延量T1と伝搬遅延量T2との差に相当する伝搬遅延差(の絶対値)をΔT(=|T1−T2|)とする。ここで、現用回線150−1における伝搬遅延量T1と予備回線150−2における伝搬遅延量T2とに差がある場合(ΔT>0)、上述のように、冗長系切り替えに伴ってBBU200とRRH300との間で通信リンクの再確立を行う必要が生じうる。その結果、BBU200及びRRH300とサービスエリア350内のユーザ端末との間で確立している通信リンクが切断されうる。
【0020】
そこで、本実施形態では、BBU200またはRRH300は、伝搬遅延量T1と伝搬遅延量T2との差が解消(少なくとも低減)されるように、現用回線150−1または予備回線150−2に、伝搬遅延差ΔTに基づく遅延量を付加する。具体的には、BBU200またはRRH300は、現用回線150−1における伝搬遅延量T1と予備回線150−2における伝搬遅延量T2との差に相当する、現用回線150−1と予備回線150−2との伝搬遅延差ΔTを測定する。更に、BBU200またはRRH300は、現用回線150−1における伝搬遅延量T1と予備回線150−2における伝搬遅延量T2とが等しくなるよう、測定した伝搬遅延差ΔTに基づいて現用回線150−1または予備回線150−2に対して遅延量を付加する。
【0021】
これにより、伝搬遅延量T1と伝搬遅延量T2との差が解消(少なくとも低減)され、BBU200とRRH300との間で通信リンクを維持した状態で、冗長系切り替え(現用回線150−1から予備回線150−2への切り替え)を行うことが可能になる。即ち、BBU200及びRRH300とサービスエリア350内のユーザ端末との間で確立している通信リンクを維持しながら、現用回線150−1と予備回線150−2との間で、使用する通信回線の切り替えを行うことが可能になる。
【0022】
なお、以下ではBBU200からRRH300への下り方向の信号伝送に対応する構成及び動作について詳細に説明しているが、RRH300からBBU200への上り方向の信号伝送についても同様に実現できる。
【0023】
<BBU及びRRHの構成>
図3は、本実施形態に係る基地局システム100における、下り方向の信号伝送(ユーザデータの伝送)に対応するBBU200及びRRH300の構成例を示すブロック図である。なお、以下で説明するBBU200及び300の機能は、ハードウェアによって実現されてもよいし、(制御部201,301に含まれる)プロセッサ(図示せず)によって実行されるソフトウェアモジュールによって実現されてもよい。あるいは、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせによって実現されてもよい。
【0024】
BBU200は、冗長系切り替えが可能な現用回線150−1及び予備回線150−2のいずれかを介して、ユーザ端末に送信すべきユーザデータに対応するベースバンド信号を、CPRIフレームでRRH300に送信する。RRH300は、現用回線150−1または予備回線150−2を介してBBU200から受信したCPRIフレームに含まれるベースバンド信号をRF信号に変換し、当該RF信号をアンテナ307から無線信号としてユーザ端末に送信する。
【0025】
(BBU200)
BBU200は、制御部201、CPRIフレーム処理部202、セレクタ203、及び遅延量測定部204を備える。制御部201は、BBU200全体の動作を制御する。CPRIフレーム処理部202は、ユーザ端末に送信すべきユーザデータをベースバンド信号に変換し、当該ベースバンド信号を含むCPRIフレームを生成し、現用回線150−1または予備回線150−2を介してRRH300に送信する。
【0026】
セレクタ203は、現用回線150−1及び予備回線150−2のうちで使用する通信回線に、CPRIフレーム処理部202または遅延量測定部204を選択的に接続可能である。制御部201は、セレクタ203を制御することによって、RRH300との通信に使用する通信回線の切り替え(即ち、現用回線150−1と予備回線150−2との切り替え)を制御する。例えば、CPRIフレーム処理部202と(RRH300側の)CPRIフレーム処理部302との間で現用回線150−1を介して通信リンクが確立されている間に、現用回線150−1に障害が発生した場合、制御部201は、上述の冗長系切り替えを行う。具体的には、制御部201は、CPRIフレーム処理部202が接続される通信回線を現用回線150−1から予備回線150−2に切り替えるよう、セレクタ203を制御する。
【0027】
遅延量測定部204は、RRH300で伝搬遅延差ΔTの測定が行われる際に、例えば、RRH300側の遅延量測定部304から送信される試験信号に対する応答信号を返す。これにより、遅延量測定部304による伝搬遅延量T1,T2の測定、及び伝搬遅延差ΔTの測定を可能にする。
【0028】
(RRH300)
RRH300は、制御部301、CPRIフレーム処理部302、セレクタ303、遅延量測定部304、バッファ305−1,2、及び無線送受信機306を備える。制御部301は、RRH300全体の動作を制御する。CPRIフレーム処理部302は、現用回線150−1または予備回線150−2を介してBBU200から受信したCPRIフレームからベースバンド信号を取り出して、無線送受信機306に出力する。無線送受信機306は、CPRIフレーム処理部302から出力されるベースバンド信号をRF信号に変換し、アンテナ307を介して無線信号としてユーザ端末に送信する。
【0029】
セレクタ303は、現用回線150−1及び予備回線150−2のうちで使用する通信回線に、CPRIフレーム処理部302または遅延量測定部304を選択的に接続可能である。制御部301は、セレクタ303を制御することによって、BBU200との通信に使用する通信回線の切り替え(即ち、現用回線150−1と予備回線150−2との切り替え)を制御する。例えば、CPRIフレーム処理部302と(BBU200側の)CPRIフレーム処理部202との間で現用回線150−1を介して通信リンクが確立されている間に、現用回線150−1に障害が発生した場合、制御部301は、上述の冗長系切り替えを行う。具体的には、制御部301は、CPRIフレーム処理部302が接続される通信回線を現用回線150−1から予備回線150−2に切り替えるよう、セレクタ303を制御する。
【0030】
遅延量測定部304は、伝搬遅延量T1,T2の測定、及び伝搬遅延差ΔTの測定を行う。バッファ305−1は、制御部301によって設定される遅延量を、現用回線150−1に付加するために用いられる。バッファ305−1は、現用回線150−1において伝送される信号を、現用回線150−1に付加すべき遅延量に相当する時間、バッファリングすることで、そのような遅延量を現用回線150−1に付加する。一方、バッファ305−2は、制御部301によって設定される遅延量を、予備回線150−2に付加するために用いられる。バッファ305−2は、予備回線150−2において伝送される信号を、予備回線150−2に付加すべき遅延量に相当する時間、バッファリングすることで、そのような遅延量を予備回線150−2に付加する。制御部301は、バッファ305−1,2による信号のバッファ量を制御することで、現用回線150−1及び予備回線150−2に付加する遅延量を制御できる。
【0031】
なお、本実施形態では、BBU200とRRH300との間の現用回線150−1及び予備回線150−2では、CPRI規格に従った信号が送受信される。ただし、現用回線150−1及び予備回線150−2では、CPRI規格に限らず、他の規格(例えば、OBSAI(Open base Station Standard Initiative、オープン基地局アーキテクチャイニシアティブ)規格)に従った信号が送受信されてもよい。
【0032】
<BBU200の動作>
図4は、本実施形態に係る、伝搬遅延差ΔTの測定及びバッファ量の設定時に、BBU200によって実行される処理の手順を示すフローチャートである。
図4に示す一連の処理は、BBU200とRRH300との間でデータ通信のためのリンク(通信リンク)を確立する際に実行される。
【0033】
まずS101で、制御部201は、遅延量測定部204を現用回線150−1に接続するよう、セレクタ203を設定する。遅延量測定部204は、RRH300側の遅延量測定部304から送信される、伝搬遅延量T1を測定するための試験信号を、現用回線150−1を介して受信すると、当該試験信号に対する応答信号を、現用回線150−1を介して送信する。その後S102で、制御部201は、遅延量測定部304から送信される測定完了通知が遅延量測定部204によって受信されたか否かを判定し、受信された場合には処理をS103に進める。
【0034】
S103で、制御部201は、遅延量測定部204を予備回線150−2に接続するよう、セレクタ203を設定する。遅延量測定部204は、RRH300側の遅延量測定部304から送信される、伝搬遅延量T2を測定するための試験信号を、予備回線150−2を介して受信すると、当該試験信号に対する応答信号を、現用回線150−2を介して送信する。その後S104で、制御部201は、遅延量測定部304から送信される測定完了通知が遅延量測定部204によって受信されたか否かを判定し、受信された場合には処理をS105に進める。
【0035】
S105で、制御部201は、RRH300側の遅延量測定部304から送信される、バッファ305−1,2のバッファ量の設定が完了したことを示す設定完了通知が、遅延量測定部204によって受信されたか否かを判定し、受信された場合には処理をS106に進める。S106で、制御部201は、CPRIフレーム処理部202を現用回線150−1に接続するよう、セレクタ203を設定する。なお、後述するように、RRH300では、設定完了通知の送信後にCPRIフレーム処理部302が現用回線150−1に接続される。これにより、現用回線150−1を介して、BBU200(CPRIフレーム処理部202)とRRH300(CPRIフレーム処理部302)との間に通信リンクが確立され、
図4に示す一連の処理が終了する。
【0036】
<RRH300の動作>
図5は、本実施形態に係る、伝搬遅延差ΔTの測定及びバッファ量の設定時に、RRH300によって実行される処理の手順を示すフローチャートである。
図5に示す一連の処理は、BBU200とRRH300との間でデータ通信のためのリンク(通信リンク)を確立する際に実行される。
【0037】
まずS201で、制御部301は、バッファ305−1,2のバッファ量をゼロに設定することで、バッファ305−1,2を初期化する。次に、制御部301は、S202で、遅延量測定部304を現用回線150−1に接続するよう、セレクタ303を設定し、S203で、現用回線150−1の伝搬遅延量T1を測定するよう、遅延量測定部304を制御する。遅延量測定部304は、例えば、現用回線150−1を介して、伝搬遅延量T1を測定するための試験信号を送信し、BBU200側の遅延量測定部204から送信される、当該試験信号に対する応答信号を受信する(即ち、試験信号を送受信する)。更に、遅延量測定部304は、試験信号の送信タイミングから応答信号の受信タイミングまでの時間に基づいて、伝搬遅延量T1を測定する。伝搬遅延量T1の測定が完了すると、S204で、制御部301は、測定完了通知をBBU200へ送信するよう、遅延量測定部304を制御する。
【0038】
次に、制御部301は、S205で、遅延量測定部304を予備回線150−2に接続するよう、セレクタ303を設定し、S206で、予備回線150−2の伝搬遅延量T2を測定するよう、遅延量測定部304を制御する。伝搬遅延量T2は、伝搬遅延量T1と同様に測定可能である。伝搬遅延量T2の測定が完了すると、S207で、制御部301は、測定完了通知をBBU200へ送信するよう、遅延量測定部304を制御し、処理をS208に進める。
【0039】
S208で、制御部301は、伝搬遅延量T1及び伝搬遅延量T2の測定結果に基づいて、伝搬遅延差ΔTを算出することで、伝搬遅延差ΔTの測定結果を得る。このようにして、制御部301は、BBU200とRRH300との間にデータ通信のためのリンク(通信リンク)が確立される前に、伝搬遅延差ΔTを測定する。
【0040】
その後、S209〜S211で、制御部301は、測定した伝搬遅延差ΔTに基づいて、現用回線150−1または予備回線150−2に対して付加すべき遅延量を設定する。具体的には、S209で、制御部301は、伝搬遅延量T1が伝搬遅延量T2よりも大きいか(T1>T2)否かを判定し、伝搬遅延量T1が伝搬遅延量T2よりも大きい場合にはS210へ、それ以外の場合にはS211へ、処理を進める。S210では、制御部301は、予備回線150−2用のバッファ305−2のバッファ量を伝搬遅延差ΔTに基づいて設定する。一方、S211では、制御部301は、現用回線150−1用のバッファ305−1のバッファ量を伝搬遅延差ΔTに基づいて設定する。その結果、バッファ305−1またはバッファ305−2は、現用回線150−1及び予備回線150−2のうちで伝搬遅延量が少ない通信回線に対して、伝搬遅延差ΔTに対応する遅延量を付加することになる。
【0041】
S210またはS211におけるバッファ量の設定が完了すると、S212で、制御部301は、設定完了通知をBBU200へ送信するよう、遅延量測定部304を制御し、処理をS213に進める。最後に、S213で、制御部301は、CPRIフレーム処理部302を現用回線150−1に接続するよう、セレクタ303を設定する。なお、上述のように、BBU200では、設定完了通知の受信に応じてCPRIフレーム処理部202が現用回線150−1に接続される。これにより、現用回線150−1を介して、BBU200(CPRIフレーム処理部202)とRRH300(CPRIフレーム処理部302)との間に通信リンクが確立される。
【0042】
このようにして、BBU200とRRH300との間に通信リンクが確立されている状態において、伝搬遅延差ΔTに基づく遅延量が現用回線150−1または予備回線150−2に付加される。これにより、使用される通信回線が現用回線150−1から予備回線150−2(更には予備回線150−2から現用回線150−1)に切り替わったとしても、BBU200とRRH300との間の伝搬遅延量が変動することがなくなる。したがって、本実施形態によれば、BBU200及びRRH300とサービスエリア350内のユーザ端末との間で確立している通信リンクを維持しながら、現用回線150−1と予備回線150−2との間で、使用する通信回線の切り替えを行うことが可能になる。
【0043】
なお、上述の実施形態は種々の変更が可能である。例えば、RRH300側の遅延量測定部304ではなく、BBU200側の遅延量測定部204において、伝搬遅延量T1,T2及び伝搬遅延差ΔTの測定が行われてもよい。また、その測定結果に基づいて、バッファ305−1,2のバッファ量の設定が、BBU200側の制御部201によって行われてもよい。このような場合、制御部201は、測定した伝搬遅延差ΔTまたは設定したバッファ量を、現用回線150−1または予備回線150−2を介してRRH300側に通知してもよい。
【0044】
このような通知は、
図6に示されるようなCPRIフレームを用いて行うことが可能である。
図6に示すように、1つのCPRIフレームは、Yバイトの制御情報と、(15×Y)バイトのデータ領域とで構成される。なお、256個のCPRIフレームによってCPRIハイパーフレームが構成され、更に、150個のCPRIハイパーフレームによってCPRI 10msフレームが構成される。測定した伝搬遅延差ΔTまたは設定したバッファ量の通知は、CPRIフレームの制御情報を用いて行うことが可能である。
【符号の説明】
【0045】
100:基地局システム
200:ベースバンドユニット(BBU)
300(300a,300b):無線周波数ユニット(RRH)
150−1,2:現用回線,予備回線
305−1,2:バッファ
201,301:制御部
202,302:CPRIフレーム処理部
203,303:セレクタ
204,304:遅延量測定部
306:無線送受信部
307:アンテナ