(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るアクリル系塗料について、表1〜5等を参照しながら、より詳細に説明する。
本発明に係るアクリル系塗料は、ブチルアクリレート及びスチレンを含有する不飽和モノマー成分を共重合して得られるアクリル系樹脂(a)と、可塑剤(b)とを少なくとも含有し、前記アクリル系樹脂(a)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定される標準ポリスチレン換算の重量平均分子量が10000〜40000であり、前記不飽和モノマー成分全体100質量部中、スチレンの割合が30〜70質量部であることを特徴とする。また、上記アクリル系塗料の成分として、任意に所定量の顔料(c),添加剤または溶剤を含んでいてもよい。以下各成分(a)〜(c)について説明する。
【0018】
《アクリル系樹脂(a)》
本発明で用いられるアクリル系樹脂(a)は、特定の不飽和モノマーを共重合することにより得られるものであり、少なくともブチルアクリレート(BA)およびスチレン(ST)を含有する。ブチルアクリレートおよびスチレンに由来する構造単位を有するアクリル系樹脂(a)及び可塑剤(b)を配合した本発明に係るアクリル系塗料は、耐気泡フクレ性およびインターバル付着性に優れた塗膜を形成できる。また、本発明では、前記不飽和モノマーとしてブチルアクリレートまたはスチレンと重合可能な後述するその他の不飽和モノマーを所定量含んでもよい。
【0019】
[不飽和モノマー]
(ブチルアクリレート)
アクリル系樹脂(a)を調製する際に用いられるブチルアクリレートの量は、使用する不飽和モノマー成分全体を100質量部とした場合に、通常5〜50質量部であり、好ましくは10〜45質量部でありである。ブチルアクリレートとしては、n−ブチルアクリレート、iso−ブチルアクリレートおよびtert−ブチルアクリレートからなる群から選択された1種または2種以上を使用することができる。本発明ではアクリル系樹脂(a)を製造する際に、これらブチルアクリレートをスチレンと併用しているために、アクリル系塗料により形成される塗膜の耐気泡フクレ性,インターバル付着性がバランスよく優れる傾向がある。なお、不飽和モノマーとしてブチルアクリレートを含有しない場合には、ブチルアクリレートを含有した場合と比べて、アクリル系塗料により形成される塗膜の耐気泡フクレ性が劣る。
【0020】
(スチレン)
アクリル系樹脂(a)を調製する際に用いられるスチレンの量は、使用する不飽和モノマー成分全体を100質量部とした場合に、30〜70質量部であり、10〜45質量部であることが、得られる塗膜が耐気泡フクレ性、インターバル付着性の両方の特性により優れる傾向となる点より好ましい。前記不飽和モノマー成分全体がスチレンを上記範囲の量で含有しない場合や特に全く含有しない場合(0質量部)には、上記量で含有する場合と比べてアクリル系塗料により形成される塗膜(アクリル系塗膜ともいう。以下同様。)のインターバル付着性が劣る。
【0021】
また、前記不飽和モノマーとして用いるスチレンとブチルアクリレートとのモル比は通常特に限定されないが、スチレン1モルに対してブチルアクリレートが0.2〜1.5モル含有されていることが好ましく、0.4〜1.0モル含有していることがより好ましい。
【0022】
(その他の不飽和モノマー)
本発明では、アクリル系樹脂(a)を調製する際に、必要により、上記ブチルアクリレートとスチレン以外に「その他の不飽和モノマー」を用いることができ、その場合、用いられる「その他の不飽和モノマー」の量は、使用する不飽和モノマー成分全体を100質量部とした場合に15〜55質量部が好ましく、20〜55質量部が塗膜硬度の調整、塗膜への耐候性の付与などの点から、より好ましい。
【0023】
その他の不飽和モノマーの例としては、上記必須成分のブチルアクリレート、スチレンと共重合可能な他の不飽和モノマーが挙げられ、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、iso−プロピル(メタ)アクリレート、n−、iso−、tert−ブチルメタクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等のアクリル酸(メタクリル酸)アルキルエステル、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、2−ジシクロペンテノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート等の脂環,芳香環,複素環又はビニル基含有アクリル酸(メタクリル酸)エステル、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基を含有するアクリル酸(メタクリル酸)エステル、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、γ―ブチロラクトンまたはε―カプロラクトン等との付加物、グリセロール(メタ)アクリレート等の複数の水酸基を含有するアクリル酸(メタクリル酸)エステル、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、m−メトキシフェニル(メタ)アクリレート、p−メトキシフェニル(メタ)アクリレート、o−メトキシフェニルエチル(メタ)アクリレート、m−メトキシフェニルエチル(メタ)アクリレート、p−メトキシフェニルエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−ジシクロペンテノキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシ含有アクリル酸(メタクリル酸)エステル、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレート、ジブチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等の第三級アミノ基含有ビニル系モノマー、(メタ)アクリルアミド、ブチルアミノエチルメタクリレート等の第一級または第二級アミノ基含有ビニル系モノマー、
(メタ)アクリロニトリルなど;
ビニルピロリドン、ビニルピリジン等の複素環族系塩基性モノマー、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニル系モノマー;
メタクリル酸、アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の一塩基酸または二塩基酸モノマー;
マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル等の二塩基酸モノマーのモノエステル;
からなる群から選択された1種または2種以上を適宜選択して用いることができる。
【0024】
上述したその他の不飽和モノマーのうち好ましいその他の不飽和モノマーとしては、該モノマーが重合された状態で重合体の側鎖に2−ヒドロキシエチル基等の水酸基を導入し得る水酸基含有不飽和モノマー;重合体側鎖にカルボキシル基やエステル結合を導入し得るメタクリル酸等のカルボン酸系不飽和モノマー;などが挙げられる(但し、ブチルアクリレートを除く。)。水酸基を有する不飽和モノマーを用いると、アクリル系樹脂(a)を配合したアクリル系塗料は、下塗り膜との付着性に優れる(上塗り)塗膜を形成できる傾向にある。水酸基を含有するモノマーは、不飽和モノマー成分全体を100質量部とした場合に10質量部以上であることが下塗り塗膜との付着性の点で好ましい。
【0025】
このように付着性が向上するのは、上記モノマー由来部分の側鎖にある水酸基と下塗り膜の成分(例;エポキシ系樹脂)の水酸基が脱水縮合して結合するためと考えられる。そのため、共重合した状態で側鎖に水酸基などの結合可能な官能基や、該結合可能な官能基を形成し得る基(これらをまとめて結合性基ともいう。)を有する上記以外の不飽和モノマーを用いてもよい。また、後述するようにエポキシ系樹脂以外の水酸基等を有する公知の樹脂成分を有する下塗り膜を用いてもよい。
【0026】
また、上述したその他の不飽和モノマーとして、アクリル系塗料から形成される塗膜において被塗物に対する付着性、顔料分散性に優れる傾向にあることから、2−ヒドロキシエチルメタクリレートおよびメタクリル酸を含むこと、特にこれら2者の併用が好ましい。
【0027】
2−ヒドロキシエチルメタクリレートおよびメタクリル酸を含む場合には、不飽和モノマー成分全体を100質量部とした場合の2−ヒドロキシエチルメタクリレートの含有量は、10質量部以上が好ましく、またその上限値は、30質量部以下が塗料の防食性(耐水性など)の点から望ましい。また、不飽和モノマー全体100質量部とした場合のメタクリル酸の含有量は、0.5質量部以上が好ましく、またその上限値は、15質量部以下が望ましい。
【0028】
また、上述したその他の不飽和モノマーとして、アクリル系塗料から形成される塗膜の硬度と可撓性のバランスに優れる傾向にあることから、ブチルメタクリレートを含むことが好ましい。また、不飽和モノマー成分全体100質量部とした場合のブチルメタクリレートの含有量は、通常3〜50質量部、さらには5〜40質量部が好ましい。
【0029】
上述したように、水酸基を有する不飽和モノマーを上記所定量含有するアクリル系樹脂であれば、これを含むアクリル系塗料により形成された塗膜と下塗り膜との結合性が向上し、さらに、2−ヒドロキシエチルメタクリレートおよびメタクリル酸を上記所定量含むことで、基材の変形に追髄する塗膜硬度と可撓性が得られ、前記塗膜が変形しても剥がれ・割れが生じにくくなる。
【0030】
[不揮発分]
アクリル系樹脂(a)の含有量(不揮発分)は、アクリル系塗料中の不揮発分100質量部に対して30〜60質量部であることが塗膜強度、塗膜硬度のバランスの点で好ましい。アクリル系樹脂(a)の含有量(不揮発分)が30質量部未満の場合には樹脂分が少ない為に塗膜は脆くなる傾向にある。また、アクリル系樹脂(a)の含有量(不揮発分)が60質量部を超えた場合、逆に樹脂分が多すぎるために塗膜硬度が低下する傾向にある。
【0031】
<アクリル系樹脂(a)の製造>
前記アクリル系樹脂(a)は、従来公知の方法で合成してもよく、例えば、ブチルアクレート、スチレンと必要により用いられる他のモノマーとを後述するような有機溶剤の存在下で、必要により重合開始剤等を加えて、通常常圧で、60〜180℃の加熱下で5〜15時間程度反応させる溶液重合により合成することができる。工業的にアクリル系樹脂の生産を行う場合は、攪拌装置、温度計、窒素ガス導入管および還流冷却管等を備えた所定容量の反応容器を使用することが好ましい。
【0032】
(重合反応の停止)
重合が進行し過ぎるとアクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)が上述した所望の範囲(10000〜40000)の上限を超えるおそれがあるため、重合反応停止剤等により重合反応を停止させることが望ましい。また、ラジカル重合開始剤を使用した場合には、上記重合禁止剤の添加とともにラジカル重合開始剤を失活させるために、ラジカル重合開始剤の半減期が数分となる高温度で1〜2時間、反応溶液を保温することで反応を停止させる必要がある。
【0033】
(アクリル系樹脂の分子量調整)
アクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)の調節は、重合反応時間、反応温度、重合開始剤の使用量等の条件により調節することができる。溶液重合開始からの経過時間ごとにサンプルを採取してゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)に供し、重合時間(または他の条件(例えば、重合温度のみ変更した場合は重合温度))と製造されるアクリル系樹脂の分子量の関係を調べておくことが望ましい。
【0034】
(重合開始剤)
重合開始剤の割合は、重合する不飽和モノマーの混合液全体を100質量部とした場合に、0.001〜10質量部を用いることが好ましい。前記重合開始剤としては、従来公知のものを広く使用でき、特に限定されないが、アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系開始剤や、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシオクタノエート、ジイソブチルパーオキサイド、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシピバレート、デカノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート等の過酸化物系開始剤を使用することができる。これらは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0035】
<アクリル系樹脂(a)の特性値>
本発明で使用されるアクリル系樹脂(a)の重量平均分子量(Mw:GPCによるポリスチレン換算値)、数平均分子量(Mn:GPCによるポリスチレン換算値)、分子量分布(Mw/Mn)、ガラス転移温度(Tg)、粘度等の特性の望ましい範囲について説明する。
【0036】
(重量平均分子量(Mw))
アクリル系樹脂(a)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定される標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、アクリル系塗料から形成される塗膜の耐気泡フクレ性、インターバル付着性の両方が良好となるなどの点から、10000〜40000であり、10000〜35000であることが好ましく、20000〜30000であることがより好ましい。分子量が10000未満では、該アルキル系樹脂(a)を配合して得られる塗膜は脆くなり下塗り塗料とのインターバル付着性が低下する傾向がある。分子量(Mw)が40000を超えると、塗膜中に気泡が残存しやすくなり、耐気泡フクレ性が低下する傾向にある。
【0037】
(粘度)
また、アクリル系樹脂(a)を用いて塗液を調製した際に、該塗液の塗工性の観点から、例えば50%キシレン溶液における粘度(25℃、mPa・s)は、通常300〜15000、好ましくは500〜12000であることが望ましい。
【0038】
(酸価/水酸基価)
アクリル系樹脂(a)の酸価は、アクリル系樹脂の主として側鎖に含まれるカルボキシル基数に依存して変動することから、アクリル系樹脂の側鎖にカルボキシル基(COOH基)がどの程度存在するかを示す指標となる。また、アクリル系樹脂(a)の水酸基価は、アクリル系樹脂の側鎖に含まれる水酸基(OH基)数に依存して変動することから、アクリル系樹脂の側鎖に水酸基がどの程度存在するかを示す指標となる。
【0039】
ここで、被塗物としての基材が、前記アクリル系樹脂のOH基及び/又はCOOH基と結合可能な基を有する樹脂を含む下塗り膜を有するような場合、以下の結合態様が考えられる。例えば、アクリル系樹脂の側鎖の官能基と、被塗物側(下塗り膜または被塗物としての基材中)の官能基との結合の態様としては、COOHとOHとのエステル交換反応、OH基とOH基の脱水縮合反応、等が挙げられ被塗物との付着性に影響すると考えられる。この観点から、アクリル系樹脂(a)の酸価は0.5〜10が好ましい。
【0040】
(分子量分布)
アクリル系樹脂の分子量分布(Mw/Mn)は、通常1.0〜4.0、好ましくは1.0〜3.0、特に好ましくは1.0〜2.5であることが塗膜の引張破断強度,伸び、衝撃強さ、表面光沢、耐ストレスクラッキング性、収縮率等の点から望ましい。
【0041】
(ガラス転移温度(Tg))
アクリル系樹脂(a)のガラス転移温度(Tg、計算値)は、塗膜硬度、塗膜物性の観点から、好ましくは10℃〜80℃であり、より好ましくは20℃〜60℃であり、さらに好ましくは40℃〜45℃ある。アクリル系樹脂(a)のガラス転移温度(Tg)は、10〜80℃が好ましく、20〜60℃であることが得られる塗膜は耐汚染性に優れ、またべたつき、クラックなどが生じにくい等の点でより好ましい。Tgが上記範囲を下回って低すぎると、塗膜温度が上昇した場合、塗膜の粘着性が大きくなる傾向にある。即ち、塗膜の耐汚染性が悪く、また塗膜上を歩行した場合べたつき感を感じる傾向にある。Tgが高すぎると、塗膜にクラックが発生しやすくなる傾向にある。このようなガラス転移温度は、DSC(示差走査熱量測定)で測定することができる。
【0042】
ガラス転移温度Tgは、Foxの式により近似的に予め算出してよい。Fox T.G.,Bull.Am.Physics Soc.1,3,第123頁(1956)に従って、次の式が当てはめられる:
【0043】
【数1】
[式中、Xnは、モノマーnの質量分率(質量%/100)を表し、かつ、Tgnは、モノマーnのホモポリマーのガラス転移温度(ケルビン)を示す]。更なる役立つ示唆は、当業者であれば、Polymer Handbook 2nd Edition,J.Wiley & Sons,New York(1975)から、常用の単独重合体のTg値が記載されていることを読み取ることができる。このハンドブックによれば、例えば、ポリ(メチルメタクリレート)は、ガラス転移温度378Kを有し、ポリ(ブチルメタクリレート)は、ガラス転移温度297Kを有し、ポリ(イソボルニルメタクリレート)は、ガラス転移温度383Kを有し、ポリ(イソボルニルアクリレート)は、ガラス転移温度367Kを有し、かつ、ポリ(シクロヘキシルメタクリレート)は、356Kを有する。
【0044】
《可塑剤(b)》
可塑剤(b)の種類は特に限定されるものではないが、塩素化パラフィン、フタル酸エステル、アジピン酸エステル、トリメリット酸エステル、リン酸エステル、クエン酸エステル、セバシン酸エステル、アゼライン酸エステル、マイレイン酸エステル、安息香酸エステル、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等からなる群から選択された1種または2種以上を使用することができる。
【0045】
可塑剤(b)として使用できる市販品としては、塩素化パラフィンである「トヨパラックス(登録商標)150」(東ソー(株)社製)、フタル酸エステルである「DOP」(シージーエスター(株) 社製)、アジピン酸エステルである「モノサイザー(登録商標)W−242」(DIC(株) 社製)、トリトメット酸エステルである「モノサイザー(登録商標)W−705」(DIC(株)社製)、リン酸エステルである「TCP」(大八化学工業(株) 社製)ポリエステルである「BAA−15」(大八化学工業(株) 社製)等が挙げられる。この中でも、「トヨパラックス(登録商標)150」、「DOP」、「TCP」が好ましい。これら可塑剤は、塗料用途によく使用されるものであり、入手もしやすい。
【0046】
可塑剤(b)の含有量は、塗膜の耐脆性、非粘着性等のバランスの点から、アクリル系塗料中の不揮発分100質量部に対して、0.5〜10質量部が好ましく、1〜5質量部がより好ましい。可塑剤(b)の含有量が0.5質量部未満であると塗膜が脆くなる傾向にある。可塑剤(b)の含有量が10質量部を超えると、塗膜の粘着性が大きくなる傾向にある。
【0047】
《顔料(c)》
顔料(c)の種類は特に限定されるものではないが、着色顔料、体質顔料、防錆顔料、機能性顔料等を使用することができる。着色顔料の例には、カーボンブラック、酸化チタン、酸化鉄、フタロシアニン、アゾ系化合物、縮合多環系化合物が含まれる。体質顔料の例には、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、マイカ、シリカが含まれる。防錆顔料の例には、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、リン酸マグネシウム、カルシウム交換シリカが含まれる。機能性顔料の例には、導電顔料、蛍光顔料、アルミ顔料、ステンレス顔料が含まれる。
【0048】
[顔料容積濃度(PVC)]
アクリル系塗料(揮発分も含む)中の顔料容積濃度(PVC)は塗膜の強靭性、光沢等にバランスよく優れるなどの点から、24〜40%であることが好ましい。PVCが低すぎると(PVCが24%未満であると)塗膜の強靭性が低下する傾向にある。PVCが高すぎる(PVCが40%を超える)と、光沢が低下する傾向にある。
【0049】
なお、本明細書中のPVC(顔料容積濃度)は、以下の式で求められる。
顔料容積濃度(%)=塗料組成物の固形分中の顔料の容積/塗料組成物中の固形分の容積×100。なお、塗料組成物中の固形分や顔料の含有量やそれらの容積は、各原材料の固形分と密度から算出できる。
【0050】
<添加剤>
アクリル系塗料の任意の成分として、上記成分以外にも添加剤としてのタレ止め・沈降防止剤や消泡剤を含有させることができる。
【0051】
タレ止め・沈降防止剤としては、有機粘土系Al、Ca、Znのステアレート塩、レシチン塩、アルキルスルホン酸塩などの塩類、ポリエチレンワックス、アマイドワックス、水添ヒマシ油ワックス系、ポリアマイドワックス系および両者の混合物、合成微粉シリカ、酸化ポリエチレン系ワックス等が挙げられ、好ましくは、ポリアマイドワックス、合成微粉シリカ、酸化ポリエチレン系ワックス、有機粘度系が用いられる。このようなタレ止め・沈降防止剤としては、楠本化成(株)製の「ディスパロン(登録商標)A630−20X」等の商品名で上市されているものが挙げられる。タレ止め・沈降防止剤は、このアクリル系塗料中に、例えば、0.1〜10重量%の量で配合される。
【0052】
消泡剤としては、アクリル系、ビニルエーテル系、シリコーン系、ブタジエン系、オレフィン系、フッ素系が用いられる。このような消泡剤としては、楠本化成(株)製の「ディスパロン(登録商標)OX−720」等の商品名で上市されているものが挙げられる。消泡剤は、このアクリル系塗料中に、例えば、0.01〜5重量%の量で配合される。
【0053】
<溶剤>
前記有機溶剤としては、特に限定しないが、例えば、トルエン、キシレン、「スワゾール(登録商標)1000」(丸善石油化学(株)製)、「ソルベッソ(登録商標)100」,「ソルベッソ(登録商標)150」(エクソン モービル コーポレーション社製),「LAWS(登録商標)」 (シェル社製)等の芳香族炭化水素系溶剤、エチレングリコールモノブチルエーテル(2-ブトキシエタノール,商品名「ブチルセロソルブソルベント」(ブチセロ)(ダウ・ケミカル社製)、イソプロピルアルコール、n − ブタノール等のアルコール系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル等のエステル系溶剤、n−ヘキサン、n−オクタン、2,2,2−トリメチルペンタン、イソオクタン、n−ノナン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、石油系溶剤でテレピン油の代用溶剤として作られた塗料用シンナーであるミネラルスピリットなどが挙げられる。これらは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0054】
本発明に係るアクリル系塗料には、前記反応で得られたアクリル系樹脂(a)を含むワニス(樹脂+溶剤)をそのまま、または該ワニスから、樹脂(a)の製造の際に共重合用モノマーに配合した重合開始剤等を除去して用いてもよい。
【0055】
《塗膜の形成》
本発明に係る塗膜は、被塗物としての基材(例:鋼板)または(基材上の)下塗り膜に対して上記のアクリル系塗料を用いて形成されていることを特徴とする。典型的には、基材鋼板に対して下塗り膜を形成した上で、該下塗り膜に対して本発明に係る塗膜、すなわち上塗り塗膜が形成される。
【0056】
[基材]
上記被塗物としては特に限定されず、鋼板、アルミ板などの材質からなる客船、貨物船、タンカーなどの船体(船舶)の外表面(特に、特に船舶の外舷部、水線部、デッキ、上構造部等の部位を言い、耐気泡フクレ性や下塗り塗膜との付着性などが求められ、通常海水等と常時接触することがあまりない部位(船舶では通常船底、バラストタンク、カーゴオイルタンク、清水タンク、カーゴホールド以外の部位がこの被塗物基材の塗装対象部位となる。);船舶以外の鋼構造物としては、塔(例:鉄塔;ゴミ焼却炉、発電所、工場などの煙突;)、橋梁、石油掘削プラントその他の各種プラント、海中展望台の海洋構造物;等が挙げられる。これら船舶、海洋構造物等の材質は、上記鋼材の他、スレート、コンクリート、FRP、木等でもよい。上記本発明のアクリル系塗料を基材表面に塗装するに先立ち、必要により、塗装予定の基材表面に既に発生・付着している錆、油脂、水分、塵埃などの基材表面の付着物を清掃・除去し、被塗物の材質に応じてシーラー、バインダー、プライマー等を予め塗布してもよい。
【0057】
[下塗り]
本発明に係るアクリル系塗料からなる塗膜を基材表面に形成するに先立って、下塗り膜、好ましくは、上記アクリル系樹脂のOH基及び/又はCOOH基と結合可能な基を有する樹脂を含む下塗塗料からなる膜(下塗り膜)を予め上記基材の表面に塗設してもよい。
【0058】
下塗塗料としては、例えばエポキシ系ジンクリッチプライマー、エポキシ系防錆用プライマー等が挙げられる。下塗塗料には、通常、樹脂分のエポキシ系防食樹脂、エポキシ樹脂用アミン系硬化剤が含まれ、その他に、必要により、体質顔料、タレ止め剤などが含まれていてもよい。エポキシ系ジンクプライマー等の有機ジンク系一次防錆塗料を用いると、膜厚が均一で防食性に優れた塗膜が得られ、かつ、この一次防錆塗膜表面に塗布すべき塗料の量を節減することができる。
【0059】
上記のようなジンク系ショッププライマーの塗装方法は、特に限定されず従来公知の方法を採用でき、例えば、ロールコーター、フローコーター、エアレススプレー、エアースプレー、刷毛塗り、コテ塗り、ローラー塗り、浸漬、引き上げ、流し塗り、盛り付けなど常法によればよい。乾燥方法は、特に制限されず、例えば、常温乾燥、加熱乾燥等が挙げられる。
【0060】
ジンク系ショッププライマー(ジンク系一次防錆プライマー)の塗装は、通常、基材鋼材の表面にショットブラスト処理を施してスケールを除去した後に行なわれる。これらプライマーが塗設されてなる下塗塗膜(層)の厚さは、特に限定されない。例えば、20〜100g/m
2の量で、その乾燥膜厚が、20〜40μm/回程度となるように塗布(塗装)される。なお、この下塗り膜は公知のシランカップリング剤が含まれていてもよい。
【0061】
上記エポキシ系防食樹脂としては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾール型エポキシ樹脂、ダイマー酸変性エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、エポキシ化油系エポキシ樹脂などを用いることができる。中でも、ビスフェノールAタイプ、Fタイプなどのビスフェノール型エポキシ樹脂は、得られる防食塗膜の基材への付着力および耐食性に優れるため好ましい。これらのエポキシ樹脂は、1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0062】
このようなエポキシ樹脂は、下塗り膜の耐食性向上観点から、溶剤等を含む下塗り塗料中に、通常10〜60重量%、好ましくは20〜50重量%の量で、また下塗り塗料の固形分100重量%に対して、通常10〜70重量%、好ましくは10〜60重量%の量で含まれていることが望ましい。なお、エポキシ樹脂は上市されているものを用いることができる。例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂として「エピコート(登録商標)828、エピコート(登録商標)834、エピコート(登録商標)1001、エピコート(登録商標)1004、エピコート(登録商標)807、エピコート(登録商標)4004P、エピコート(登録商標)4007P」(三菱化学(株)製)などが挙げられる。
【0063】
上記下塗塗料に含有されるエポキシ樹脂用アミン系硬化剤としては、例えば、フェノール類とホルマリンとアミン化合物とのマンニッヒ縮合反応で形成されたマンニッヒ変性アミン類、および/または脂肪族ポリアミン類を用いることができるが、塗料の取り扱いが容易となる、塗料の可使時間が好適な範囲となるなどの点で、主としてダイマー酸とポリアミンの縮合により生成し、分子中に反応性の第1および第2アミノ基を有するポリアミドアミンを用いることが好ましい。エポキシ樹脂用アミン系硬化剤は、理論的にはエポキシ樹脂中のエポキシ基数と、アミン系硬化剤中のアミノ基数とが等しくなる量(当量)用いればよいが、エポキシ基1当量に対してアミノ基が0.35〜0.9当量、好ましくは0.4〜0.8当量となるよう用いればよい。また、エポキシ樹脂100質量部に対してアミン系硬化剤を例えば10〜300質量部、好ましくは20〜200質量部の範囲の割合で用いることができる。このようなエポキシ樹脂用アミン系硬化剤は上市されているものを用いることができる。例えば、「ラッカマイド(登録商標)TD966」(DIC(株)製)、「サンマイド(登録商標) 307D−60」(エアープロダクツジャパン(株)製)などが挙げられる。
【0064】
また、上述したエポキシ系樹脂以外の水酸基を有する公知の樹脂成分を有する下塗り膜を用いてもよい。該樹脂成分として、例えば、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、シリコーン樹脂等が挙げられる。
【0065】
[上塗り]
本発明に係るアクリル系塗料は、基材(例:鋼板)表面、好ましくは、上記のように予め下塗り膜が形成された基材(例:鋼板)表面に塗設されるが、基材に直接塗布するよりも下塗り塗膜に対して塗布して積層塗膜を形成する方が好ましい。ここで、アクリル系樹脂のOH基及び/又はCOOH基と結合可能な基を有する樹脂を含む下塗塗膜の表面に、前述のアクリル系塗料を用いて形成した塗膜を有する積層塗膜が好ましい。
【0066】
本発明に係る上記アクリル系塗料の基材表面への塗装方法としては、必要に応じて各種有機溶剤にて適宜希釈して、スプレー塗装、ハケ塗り、ローラー塗りなど従来公知の方法が利用できる。通常、20〜100g/m
2の量で乾燥膜厚30〜200μm程度、20〜40μm/回塗布の条件で塗装される。有機溶剤は、相溶性や乾燥性のよいものであれば制限なく、前述した有機溶剤を使用することができる。
【0067】
<塗膜(上塗り膜)の特性>
本発明に係るアクリル系塗料よりなる塗膜(アクリル系塗膜)の厚さは特に制限ないが、通常は20μm〜300μm、好ましくは20μm〜150μmである。塗膜の硬度については、F〜2Hであることが好ましい。この塗膜の硬度と塗膜の可撓性はブチルアクリレートの含有割合等に関係する。
【0068】
《アクリル系塗料の用途》
本発明に係るアクリル系塗料は、日射等により塗膜が高温多湿環境に晒され、気泡によるフクレやインターバル付着性の課題が生じうる被塗物用の塗料として好適に使用することができる。代表的な用途としては、船舶用塗料(特に前記部位用)、橋梁用塗料等が挙げられる。この他にも、各種建造物の外壁用塗料、設置物(看板等)用塗料として用いることができる。本発明には、上記アクリル系塗料を用いて形成された塗膜、さらには該塗膜を含む船舶,橋梁等の構造が含まれる。
【実施例】
【0069】
[製造例1]
加熱装置、攪拌装置、窒素導入管及び温度計を有する反応装置内に、有機溶剤としてキシレン(Xy)を57質量部と、n−ブタノール(BuOH)24質量部を仕込んだ。窒素気流下で、前記溶剤を115℃(反応温度)まで昇温させた後、モノマー成分の混合液(スチレン:51.22質量部、n−ブチルアクリレート(BA):17.00質量部、n−ブチルメタクリレート(BMA):16.98質量部、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル(2−HEMA):13.00質量部、およびメタクリル酸(MAA):1.80質量部(表2参照))と、開始剤として、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.48質量部およびt−ブチルパーオキシベンゾエート0.04質量部との混合液を該混合液の温度を維持しながら3時間かけて滴下した。
【0070】
滴下後、同温度(115℃)で1時間保温した後、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.4質量部、t−ブチルパーオキシベンゾエート0.4質量部を加えた。
さらに、1時間30分保温してアクリル系樹脂(A1)を調製した。
【0071】
得られたアクリル系樹脂(A1)について、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定したところ、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量は44000であった(GPC測定装置:TOSOH製、HLC−8220型)。また、不揮発分(NV)は55.0(質量%、測定法は後述する)であり、KOH滴定法による測定したアクリル系樹脂(A1)の酸価(AV)は6.4(mgKOH/g)であった。
【0072】
(不揮発分の測定)
製造したアクリル系樹脂(A1)を108℃の熱風乾燥機中3時間乾燥した後の加熱残分(「固形分」と同義)を計測し、不揮発分を表すNV値(%)を式:(上記加熱残分の重量/加熱前のアクリル系樹脂の重量)×100(%)で算出した。
【0073】
(酸価(AV)の測定)
酸価(AV)とは、試料1gに含まれているカルボキシル基を中和するのに要する水酸化カリウムのmg数をいう。
【0074】
コニカルビーカーに試料を1〜5g正確に秤量し、トルエン/エタノール=7/3混合溶液を30〜50ml加えて該試料を溶かし、指示薬としてフェノールフタレイン−エタノール溶液を2滴加え、N/10水酸化カリウム−エタノール溶液で滴定した。液の赤みが30秒間消えなくなったときを滴定の終点とする。
アクリル系樹脂の酸価は、次式によって計算した。
酸価(AV)=(B×f×5.61)/S
(上記式において、B:N/10水酸化カリウム−エタノール溶液の使用量(ml)、f:N/10水酸化カリウム−エタノール溶液のファクター、S:試料(g)を示す)。
【0075】
[製造例2〜9、11〜19]
製造例1において、モノマー成分の混合液を表2A〜Dに示す組成に変更し、滴下時の開始剤(t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートおよびt−ブチルパーオキシベンゾエート)の量を、表2A〜Dに示す量に変更したこと以外は、製造例1と同様にアクリル系樹脂(A2〜A9、A11〜A19)の製造等を行った。
【0076】
得られたアクリル系樹脂(A2〜A9、A11〜A19)のGPCによる標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)、不揮発分(NV、単位:%)、酸価(AV、単位:mgKOH/g)は、表2A〜2Dに記載のとおりであった。
【0077】
[製造例10]
製造例1において、
モノマー成分の混合液を表2Bに示す組成に変更し有機溶剤としてキシレンを55質量部と、酢酸ブチルを15質量部に変更し、反応温度を120℃に変更し、滴下時の開始剤(t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートおよびt−ブチルパーオキシベンゾエート)の量を、表2Bに示す量に変更したこと以外は製造例1等と同様にアクリル系樹脂を製造した。得られたアクリル系樹脂(A10)のGPCによる標準ポリスチレン換算の重量平均分子量、不揮発分(NV)、酸価(AV)(mgKOH/g)は、表2Bに記載のとおりであった。
【0078】
[比較例1]
ポリ容器に対して、アクリル系樹脂(a)として製造例1のアクリル系樹脂(A2)46.7質量部を添加した。
【0079】
次に、可塑剤(b)として、「トヨパラクス(登録商標)150」(トーソー(株)社製)1質量部を上記同様に添加(以下「添加」という)した。
さらに、顔料(c)として、「GPS−55」(丸尾カルシウム(株))0.2質量部、「沈降性硫酸バリウム100」(堺化学工業(株))17.6質量部、「三菱(登録商標)カーボンブラックMA−100」(三菱化学社製)1質量部、「NEOLIGHT SP-100」(竹原化学工業(株)社製)8質量部を添加した。
【0080】
また、溶剤として、「スワゾール(登録商標)1000」10質量部(丸善石油化学(株)社製)、ブチルセロソルブ(ダウ・ケミカル日本(株))2質量部、キシロール(大伸化学(株))7.8質量部、n−ブタノール(ダウ・ケミカル日本(株))3.2質量部を添加した。
【0081】
最後にガラスビーズGB605M(ポッターズ・バロティーニ(株))を添加し、ペイントシェーカー品番なし(浅田鉄工(株))を用いてこれらの配合成分を混合した。次いで、このガラスビーズを取り除き、添加剤として、「ディスパロン(登録商標)A630−20X」(楠本化成(株)社製)2質量部、「ディスパロン(登録商標)OX−720」(楠本化成(株)社製)0.5質量部を添加して、ディスパー「HOMODISPER MODEL 2.5」(プライミクス(株))で混合し、アクリル系塗料(C1)を製造した。なお、このアクリル系塗料(C1)の顔料容積濃度(PVC)を算出したところ25.6%であった。
比較例1で製造した塗料を用いて以下のように塗膜を形成し、さらに該塗膜について耐気泡フクレ性試験、及びインターバル付着性試験を行った。
【0082】
(塗装鋼板の作成)
環境温度23℃の下、サンドブラスト鋼板(温度23℃、150mm×70mm×2.3mm、Sa2.5以上)上に、下塗り膜としてエアースプレー塗装機(W−77、アネスト岩田(株)製)を用い、エポキシ樹脂系塗料(バンノー500グレー)をウェット膜厚約200μmで塗装した。
【0083】
環境温度23℃、湿度55%の環境条件下で1日乾燥後、エアレススプレー塗装機(Xフォース(出願商標)、Graco社製)を用い、アクリル系塗料をウェット膜厚約400μmで塗装した。1日乾燥後、エアレススプレー塗装機を用い、アクリル系塗料をウェット膜厚約400μmで塗装し、耐気泡フクレ性試験用の塗装鋼板を作成した。
【0084】
[耐気泡フクレ性試験]
上記塗装鋼板を7日間乾燥し、恒温恒湿機に入れ、温度70℃×湿度70%×4時間→温度23℃×湿度70%×4時間を7サイクル行った。
【0085】
(評価方法)
目視でフクレの程度を6点満点で評価した。なお、この評価は、サンドブラスト鋼板の塗膜形成面を平面視した状態で、ASTM D714−87(ASTM;American Society for. Testing and Material:アメリカ材料試験協会,"Standard Test Method for Evaluating Degree of Blistering of Paints")に従い、下記表1の判断基準に基づいて評価した。比較例1の耐気泡フクレ性についての評価結果を表4A〜4Dに示す。
【0086】
【表1】
【0087】
[インターバル付着性試験]
(塗装鋼板作成方法)
サンドブラスト鋼板上に、エアースプレー塗装機(W−77、アネスト岩田(株)製)を用い、下塗り塗料として、エポキシ樹脂系塗料「バンノー1500グレー」(中国塗料(株)社製)をウェット膜厚約200μmで塗装した。1日、23℃,湿度55%の条件下で乾燥後、上記下塗り塗装された塗装板を、3、7、15、30日間、屋外暴露を行った。屋外暴露した塗装板を軽く水洗し、アプリケーターを用いてアクリル系塗料をウェット膜厚約150μmで塗装し、屋外暴露日数の異なるインターバル付着性試験用の塗装鋼板(i)を作成した。
【0088】
(1)初期付着性
上記インターバル付着性試験用の塗装鋼板(i)を7日間湿度55%,23℃で乾燥し、碁盤目テープ剥離試験(2mm×2mm、25マス)を行った。碁盤目テープ剥離試験は、該塗装鋼板の塗膜表面(試験面)にカッターガイドを使用して素地である鋼板に達するまでの深さで、縦6本×横6本の切り傷をつけて25マスの碁盤目を作成した。なお、切り傷の間隔は2mmとした。次に、前記塗膜の碁盤目の部分にセロテープ(登録商標)を強く圧着させ、該セロテープ(登録商標)の端を塗布面に対して90°の角度で一気に引き剥がし、上記25マス中、残存・付着しているマスの割合である、残存面積率(%)で評価した。残存面積率(%)が80%以上を良好(合格)の塗膜とした。
【0089】
(2)2次付着性
上記塗装鋼板(i)を湿度55%,温度23℃で7日間乾燥した後、3%食塩水中(温度23℃)に30日間浸漬した。浸漬液から塗装鋼板を取出し、湿度55%,23℃で1日乾燥した後、得られた2次付着性試験用の該塗装鋼板(ii)について上記碁盤目テープ剥離試験を行った(結果を表4A〜4Dに示す)。
【0090】
[実施例1〜15]
比較例1と同様に表3A,3Bに示す組成表に基づき、塗料E1〜E15(実施例1〜15)、塗料C1〜C11(比較例1〜11)をそれぞれ製造し、耐気泡フクレ性試験およびインターバル付着性試験に供した。
【0091】
[比較例2〜11]
比較例1と同様に表3A,3Bに示す組成表に基づき、塗料C2〜C11(比較例2〜11)をそれぞれ製造し、耐気泡フクレ性試験およびインターバル付着性試験に供した。
【0092】
(考察・効果)
(分子量)
アクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)が12000〜27000の場合、これを含むアクリル系塗料による塗膜の十分なインターバル付着性が得られる(実施例5〜2)。アクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)が32000の場合、耐気泡フクレ性がやや低下するが問題ない適正範囲となる(実施例1)。
【0093】
アクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)が10000未満(8000程度)の場合、塗膜のインターバル付着性のみが上記実施例と比べて顕著に低下する(比較例2)。
アクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)が40000超(44000程度)の場合は、耐気泡フクレ性のみが顕著に低下する(比較例1)。
【0094】
これらの結果から、アクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)が10000〜32000であることで少なくとも十分な耐気泡フクレ性およびインターバル付着性が得られる。また、アクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)が40000程度まで十分な耐気泡フクレ性およびインターバル付着性が得られると考えられる。
【0095】
(スチレン)
実施例2と比べて、アクリル系樹脂のスチレンの含有量を約0.6倍(32.00質量部)に低減させ、BMAの量を約2.3倍(36.20質量部)に増加させた場合(実施例9)、実施例2と同等の耐気泡フクレ性およびインターバル付着性が得られた。
【0096】
また、実施例2に対して、アクリル系樹脂のスチレンの含有量を1.2倍(62.00質量部)に増加させ、BMAの含有量を約0.37倍(6.20質量部)に低下させた場合(実施例10)も、実施例2と同等の耐気泡フクレ性およびインターバル付着性が得られた。
【0097】
一方、スチレンを全く含有しない場合(比較例6)では、耐気泡フクレ性およびインターバル付着性の両方が顕著に劣る結果となった。
これらの結果から、不飽和モノマー成分全体を100質量部とした場合におけるアクリル系樹脂中のスチレンの含有量が32〜62質量部であることで少なくとも十分な耐気泡フクレ性およびインターバル付着性が得られる適正範囲であるといえる。また、アクリル系樹脂の含有量が30質量部以上〜70質量部以下の程度まで十分な耐気泡フクレ性およびインターバル付着性が得られると考えられる。
【0098】
一方、実施例2のアクリル系樹脂と比べて、スチレンを含有せず、アクリル酸エチルおよびメチルメタアクリレートを所定量含む場合(比較例8)、これに加えてさらにアクリル酸を所定量含む場合(比較例9)では、耐気泡フクレ性は実施例2に匹敵するが、インターバル付着性が顕著に劣る結果となった(比較例8、9)
【0099】
(ブチルアクリレート)
実施例2のアクリル系塗料のアクリル樹脂と比べて、2−HEMAを含有せずブチルアクリレート(BA)の含有量を1.76倍(30質量部)に増加させた場合、耐気泡フクレ性のみがやや低下する(実施例6)。
【0100】
一方、実施例2のアクリル系塗料のアクリル樹脂と比べて、BAの含有量を約2.65倍(45質量部)に増加させ、BMAを約0.48倍に低減(8.2質量部)させても、耐気泡フクレ性およびインターバル付着性に変化が見られない(実施例7)。
【0101】
一方、実施例2のアクリル系塗料のアクリル樹脂と比べて、BAの含有量を約0.6倍(10.0質量部)に低減させ、n−ブチルメタクリレート(BMA)を約1.4倍(23.98質量部)に増加しても、耐気泡フクレ性およびインターバル付着性に変化が見られない(実施例8)。
【0102】
BAを含有しない場合(比較例3,4)、またはBAおよび2−HEMAを含有しない場合(比較例5)の場合は、耐気泡フクレ性のみがかなり劣る結果となった(比較例3〜5)。この結果から、BAが耐気泡フクレ性を得るために必須成分であり、不飽和モノマー成分全体を100質量部とした場合におけるアクリル系樹脂中のBAの含有量が少なくとも10〜45質量部であることで十分な耐気泡フクレ性およびインターバル付着性が得られるといえる。
【0103】
(可塑剤)
実施例2のアクリル系塗料が可塑剤を含有しない場合(比較例10,11)には、耐気泡フクレ性のみが顕著に劣る結果となった。この結果から、可塑剤が耐気泡フクレ性を得るために必須成分であることが分かった。可塑剤については種類や量を変更しても影響は少ないと考えられる(実施例1〜15)。
【0104】
(PVC範囲)
実施例2のアクリル系塗料と比べて、顔料容積濃度(PVC)(質量%)を低下させると、インターバル付着性に影響ないが、耐気泡フクレ性がやや低下する結果となった(実施例11〜15)。
【0105】
以上、実施例等を参照しながら本発明を説明してきたが、本発明は係る実施例により限定されるものではなく、例えば、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨を逸脱しない範囲で設計変更は許容される。
【0106】
【表2A】
【0107】
【表2B】
【0108】
【表2C】
【0109】
【表2D】
【0110】
【表3A】
【0111】
【表3B】
【0112】
【表4A】
【0113】
【表4B】
【0114】
【表4C】
【0115】
【表4D】
【0116】
【表5】