特許第6574097号(P6574097)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6574097印刷装置におけるテンションバーの荷重調整機構
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6574097
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】印刷装置におけるテンションバーの荷重調整機構
(51)【国際特許分類】
   B65H 23/16 20060101AFI20190902BHJP
【FI】
   B65H23/16
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-70577(P2015-70577)
(22)【出願日】2015年3月31日
(65)【公開番号】特開2016-190689(P2016-190689A)
(43)【公開日】2016年11月10日
【審査請求日】2017年9月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】307015301
【氏名又は名称】武藤工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067758
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 綾雄
(72)【発明者】
【氏名】並木 剛
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 光幸
(72)【発明者】
【氏名】横濱 亮則
(72)【発明者】
【氏名】高橋 康二
【審査官】 冨江 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第1946264(US,A)
【文献】 特公昭47−1094(JP,B1)
【文献】 特開2015−48219(JP,A)
【文献】 特開平9−278242(JP,A)
【文献】 特開2015−51831(JP,A)
【文献】 特開平9−40291(JP,A)
【文献】 特開平1−187161(JP,A)
【文献】 実開昭58−170334(JP,U)
【文献】 韓国登録実用新案第20−0323741(KR,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H20/00−20/40、23/00−27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷装置本体の左右に設けられた支持体に昇降自在にテンションバーを支持し、該テンションバーを印刷媒体の搬送経路に印刷媒体に圧接するように配置し、印刷媒体に対して、テンション荷重を付加するようにした印刷装置において、前記左右の支持体の中の一方の支持体側に、前記テンションバーの重量を減算する方向に作用する錘を配置し、他方の支持体側に調整部材を配置し、印刷装置本体の左右に設けられた支持体にテンションバーの支軸の左右端側を互いに同期して水平状態のまま昇降するように支持し、前記テンションバーの一方に第1の連結部材を連結し、前記テンションバーの他方に第2の連結部材を連結し、前記第1の連結部材に前記重量減算用の錘を前記テンションバーと昇降方向に連動するように連結し、前記第2の連結部材に前記調整部材を前記テンションバーと昇降方向に連動するように連結し、前記第1の連結部材に連結する重量減算用の錘の重量が前記テンションバーの重量を減算する方向に作用するように前記第1の連結部材を案内する第1のガイドを設け、前記調整部材に複数の錘を選択可能に結合し、前記調整部材側の選択した錘の重量が前記テンションバーの重量を加算する方向に作用するように前記第2の連結部材を案内する第2のガイドを設け、前記調整部材に錘を連結しないとき、前記重量減算用の錘の重量により減算されたテンションバーの重量が、印刷媒体に対する最小テンション荷重として作用するようにし、前記調整部材側に複数の錘の全てを連結したとき、テンションバーの下向きのテンション荷重が最大となるようにしたことを特徴とする印刷装置におけるテンションバーの荷重調整機構。
【請求項2】
前記調整部材に選択的に連結される複数の錘は、板状の部材から成り、各板状の部材は調整部材をスライド自在に挿入するための厚み方向に形成された穴と、厚み方向に対して直角方向に形成された通し穴とを有し、選択した錘の通し穴から係止軸を差し込み、該係止軸を前記複数の重ねて配置された錘の穴にスライド自在に嵌挿された調整部材に係合させることで該調整部材に選択した錘を連結できるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置におけるテンションバーの荷重調整機構。
【請求項3】
前記第1及び第2の連結部材をワイヤロープで構成し、前記第1及び第2のガイドを前記支持体に軸支したワイヤプーリにより構成したことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置におけるテンションバーの荷重調整機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機体側の印刷部に供給される布などのシート状の印刷媒体に対して印刷部の印刷ヘッドからインクを噴射して印刷を行う印刷装置において、印刷媒体にテンションを作用させるテンションバーのテンション荷重調整機構に関する。
【背景技術】
【0002】
画像記録装置において、被記録体にダンサローラの重さによってテンションを付与し、ダンサローラの被記録媒体に対するテンション荷重をダンサローラを支持するアームに取り付けた錘の場所を変えることで調整するテンション荷重調整機構が知られている(特許文献1参照)。
また、 ロール紙の搬送経路の両側に位置する揺動アームの偏芯部にテンションローラを支承し、このテンションローラを揺動アームの付勢力によってロール紙のくり出し部に圧接し該圧接力によって該くり出し部にテンションを付与する機構において、揺動アームに複数の錘を脱着自在に取り付け可能とし、これらの錘の脱着によりテンションローラのロール紙に対するテンション荷重の調整を行うことができるテンション荷重調整機構が知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−12350号公報
【特許文献2】特開2004−314564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
布など伸縮性のある媒体の搬送を行い印刷する場合、印刷媒体にシワが発生し易く、このシワになった状態のまま印刷をすると良好な印刷の妨げになるため印刷媒体を適正な緊張をもって搬送させることが望ましい。印刷媒体に対してテンションバーを使用してその重さによって荷重を付与し印刷媒体に対してテンションを付与する場合、印刷媒体の種類によってはテンションバーの重さよりも軽い荷重を掛けたい場合があり、また同じ装置において印刷媒体を変更して使用する場合、テンションバーよりも重い荷重を必要とする場合もある。特に布の印刷においては、広範囲に荷重の調整を簡単に行うことができるテンションバーの荷重調整機構が望まれている。
本発明は上記問題点を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明は、印刷装置本体の左右に設けられた支持体に昇降自在にテンションバーを支持し、該テンションバーを印刷媒体の搬送経路に印刷媒体に圧接するように配置し、印刷媒体に対して、テンション荷重を付加するようにした印刷装置において、前記左右の支持体の中の一方の支持体側に、前記テンションバーの重量を減算する方向に作用する錘を配置し、他方の支持体側に調整部材を配置し、前記錘と前記テンションバーの一端とを互いに昇降方向に連動するように連結部材で連結し、前記調整部材と前記テンションバーの他端とを互いに昇降方向に連動するように連結部材で連結し、前記調整部材に複数の錘を選択可能に結合し、該調整部材側の選択した錘の重量が、前記テンションバーの重量を減算する方向又は、加算する方向に作用するように、前記連結部材を案内するためのガイドを設けたことを特徴とする。
また本発明は、前記ガイドは、前記調整部材側の選択した錘の重量が前記テンションバーの重量を減算する方向に作用するように前記連結部材を案内するように構成され、前記調整部材に錘を連結しないとき、前記一方の支持体側の錘の重量により減算されたテンションバーの重量が、印刷媒体に対する最大テンション荷重として作用するようにし、前記調整部材側に複数の錘の全てを連結したとき、テンションバーの下向きのテンション荷重が最小となるようにしたことを特徴とする。
また本発明は、前記ガイドは、前記調整部材側の選択した錘の重量が前記テンションバーの重量を加算する方向に作用するように前記連結部材を案内するように構成され、前記調整部材に錘を連結しないとき、前記一方の支持体側の錘の重量により減算されたテンションバーの重量が、印刷媒体に対する最小テンション荷重として作用し、前記調整部材側に複数の錘の全てを連結したとき、テンションバーの下向きのテンション荷重が最大となるようにしたことを特徴とする。
また本発明は、前記調整部材に選択的に連結される複数の錘は、板状の部材から成り、各板状の部材は調整部材をスライド自在に挿入するための厚み方向に形成された穴と、厚み方向に対して直角方向に形成された通し穴とを有し、選択した錘の通し穴から係止軸を差し込み、該係止軸を前記複数の重ねて配置された錘の穴にスライド自在に嵌挿された調整部材に係合させることで該調整部材に選択した錘を連結できるようにしたことを特徴とする。
また本発明は、前記連結部材をワイヤロープで構成し、前記ガイドを前記支持体に軸支したワイヤプーリにより構成したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、広範囲にテンションバーの印刷媒体に対するテンション荷重の調整を簡単に行うことができる。また簡単な調整によりテンションバーよりも軽い荷重を掛ける事ができ、しかも荷重がほとんど必要ない場合でも対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の説明図であり、装置の巻き取り側のテンション荷重調整機構を示している。
図2】本発明の説明図であり、装置の供給側のテンション荷重調整機構を示している。
図3】印刷装置の全体説明図である。
図4】印刷装置の全体外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に本発明の実施の形態を添付した図面を参照して詳細に説明する。
図3は、プリンタ装置2の全体構造を示す説明図であり、図中、左側が装置2の前方、右側が装置2の後方であり、紙面垂直方向がヘッド動作方向となっている。
【0009】
プリンタ装置2は、印刷部4と、印刷媒体搬送駆動部6と、印刷媒体供給側案内部7と、印刷媒体供給搬送経路部8と、印刷媒体供給部10と、印刷媒体排出部12と、印刷媒体排出搬送経路部14と、印刷媒体巻取部16とを備え、印刷媒体供給部10から印刷媒体供給搬送経路部8を経て、印刷部4のガター18(図4参照)上に供給される布などの印刷媒体20に対して、印刷部4のヘッドユニット22(図4参照)の印刷ヘッド24からインクを噴射することで印刷を行うように構成されている。
【0010】
図4は、装置2を前方から見た斜視図である。プリンタ装置2の印刷部4は、装置2の機体2aに支持されたヘッド案内レール26を備え、該ヘッド案内レール26に担体を介してインクジェット型のヘッドユニット22が、該ヘッド案内レール26に沿って移動可能に取り付けられている。ヘッドユニット22のヘッド案内レール26に沿った方向を装置2のY軸方向又は主走査方向とする。
【0011】
ヘッド案内レール26の下方には、印刷媒体20を支え、印刷媒体20を機体2aの後方から前方に案内するプラテンと称する印刷媒体支持部28が存在し、該案内部28の中間部(ヘッドユニット下のインクの吐出範囲)には、印刷媒体20に向けて噴射されたインクの中、印刷媒体20の織目を通過し落下するインクを受けるインク受けであるガター18が設けられている。印刷ヘッド24のインク吐出面は、印刷部4のエリア内の印刷媒体20の印字面に水平に対向配置されている。
【0012】
前記印刷ヘッド24の移動経路の近傍には搬送ローラ30と1個又は複数個の加圧ローラ32が配置され、搬送ローラ30はコントローラによって制御されるX軸駆動装置に連結し、機体2a側に回転可能に支持されている。加圧ローラ32は前記ヘッド案内レール26に搬送ローラ30に対して昇降可能に支持され、スプリング又は自重によって搬送ローラ30に水平に弾接している。
【0013】
上記搬送ローラ30と加圧ローラ32は、印刷媒体搬送駆動部6を構成している。印刷媒体供給部10は、印刷媒体20がロール状に巻かれた印刷媒体ロール20aを保持する供給軸34(図4参照)を備えている。印刷媒体供給搬送経路部8には、印刷媒体20にテンションを付与するための供給側テンションバー荷重調整機構36と、ガイドローラ38,40と、供給側テンションバー機構42と、ガイドローラ44とが配置されている。機体2aには、脚部2b,2bと台板2cが固設され、機体2aはこれらを介して床面上に配置されている。台板2cには送り出し装置48,50が配置されている。
【0014】
送り出し装置48,50には、印刷媒体ロール20aを保持する供給軸34が設けられ、該供給軸34はコントローラにより制御されるモータに連結している。各ガイドローラ38,40,44は機体2a側に回転自在に支持されている。印刷媒体供給側案内部7は、支持部28(図4参照)の後方に、Y軸方向に、印刷媒体20の幅方向全長にわたって、案内レール26と平行に配置された供給側案内ローラ46から構成されている。
【0015】
供給側案内ローラ46は機体2a側に固定され、そのパイプの表面に、印刷媒体20に噛み合う微小な突起が密集配置され、この噛み合い面は、本実施形態では、サンドペーパーを供給側案内ローラ46のパイプの表面にらせん状に巻き付けて形成している。
供給側テンションバー機構42は、Y軸方向に伸びる支軸70に、3つ又は複数の互いに同径のパイプ状の分割ローラ72が遊嵌配置されている。
【0016】
分割ローラ72は変形しない程度の厚みと重量を有しており、それ自体が錘としての役割をしている。分割ローラの重さは印刷媒体20の材質その他により、種々の値を設定することができる。支軸70は、アルミニウムのパイプ等により構成され、両端が機体2a側に固設された支持板に支持されている。印刷媒体巻取部16は、印刷媒体ロール20aから引き出され、印刷ヘッド24にて画像が印刷された印刷媒体20を巻き取って回収するための軸体を備えている。
【0017】
台板2cの左右には巻き取り装置104,104が配置され、該装置104,104に巻き取り軸102,102が設けられ、これら巻き取り軸102,102間に、印刷媒体20を巻き取るための軸体が脱着可能に保持されている。印刷媒体巻取部16の近傍には、印刷媒体20にテンションを付与し、印刷媒体20を巻き取り用の軸体に導く巻き取り側テンションバー荷重調整機構106が配置されている。この巻き取り側テンションバー荷重調整機構106は、装置2の印刷媒体排出搬送経路部14に配置されている。
【0018】
巻き取り側テンションバー荷重調整機構106は、図1に示すように、アルミニウムなどの金属により構成される支軸101と、これに遊嵌する分割ローラ103を備え、これらはテンションバー105を構成している。テンションバー105はY軸方向に、印刷媒体20の幅方向全長にわたって、案内レール26と平行に配置されている。テンションバー105を構成する分割ローラ103は、変形しない程度の厚みと重量を有しており、それ自体が錘としての役割をしている。分割ローラ103の重さは、印刷媒体20の材質その他により、種々の値を設定することができる。
【0019】
支軸101の両端近傍は、機体2aの前方側の左右に設けられた支持体107,109の昇降ガイド部(図示省略)に、昇降自在に保持され、支軸101は、昇降ガイド部に沿って床面に略垂直な昇降方向に、ラックとピニオンからなる同期案内構造(図示省略)により、水平状態のまま平行移動可能に構成されている。
【0020】
左右の支持体107,109には、それぞれ錘収納部(図示省略)が形成され、一方の原点側(錘調整側)の錘収納部には複数の板状の錘111が重ねて配置されている。各錘111の中心には、角穴113が設けられ、これらに、角穴に対応する断面形状の調整軸115がスライド自在に挿入配置されている。各錘111には、角穴113と直交する方向に係止軸119用の通し穴117が設けられ、該各通し穴117に対応して調整軸115に係止軸119を受け入れ、これと係合する係合穴から構成される係合部170が設けられている。他方の支持体107の、反原点側(錘固定側)の錘収納部には、所定数の板状の錘121が重ねて配置され、これらの中心に角穴123が設けら、更に、角穴123と直交する方向に通し穴(128)が設けられている。
【0021】
各錘121の角穴123には、係合穴からなる係合部172を有する結合軸125がスライド自在に嵌挿され、該結合軸125の係合部172に通し穴128に挿入されたピン126が係合し、該ピン126を介して、1番下の錘121が結合軸125に脱着可能に固定されている。支軸101の両端には、それぞれワイヤロープ等の柔軟性のある細長状部材からなる連結部材127,129の各一端が連結し、連結部材129の他端は、支持体109に設けられた回転自在なロープ案内プーリからなるガイド131,131を介して、調整軸115の上端に連結し、テンションバー105の支軸101の一端は、連結部材129を介して、調整軸115を吊持している。
ガイド131,131は、調整軸115側の選択した錘111の重量がテンションバー105の重量を減算する方向に作用するように連結部材129を案内する。
【0022】
連結部材127の他端は、支持体107に設けられた、回転自在なロープ案内プーリからなるガイド133,133を介して、結合軸125の上端に連結し、テンションバー105の支軸101の他端は、連結部材127を介して、結合軸125を吊持している。ガイド133,133は、結合軸125側の錘121の重量がテンションバー105の重量を減算する方向に作用するように連結部材127を案内する。
【0023】
テンションバー105を昇降ガイド部に沿って最上昇位置と最下降位置の間で昇降させると、これと連動して、テンションバー105の両端に吊持された結合軸125と調整軸115が、支持体107,109の錘収納部内で昇降し、これらの軸125,115に連結する錘121,111が、軸125,115と連動して昇降するように、錘収納部内に軸125,115と錘121,111が収納配置されている。調整軸115を収納する原点側錘収納部の側壁には、係止軸119を、選択した錘111の通し穴117に挿入するための溝状の開口部164(図4参照)が形成されている。支持体109の錘収納部には、錘111を受ける台130が配置されている。台130には調整軸115を受け入れる逃げ穴が設けられている。
【0024】
結合軸125に連結する錘121の重量G2は、テンションバー105のテンション荷重を減らす目的で適宜な重量に設定されている。調整軸115に錘111を固定していない状態において、テンションバー105の重量G1は、錘121の重量G2によって減算され、その結果、テンションバー105を介して印刷媒体20にかかる下向きのテンション荷重は、
(G1−G2)=最大荷重
となり、本実施形態では、約4kgfに設定されている。
【0025】
この初期状態からユーザーが、テンション荷重の調整を行う。まず、錘111を台130の上に載せた状態で、テンションバー105を手で昇降ガイド部に沿って、一番上まで持ち上げる。この状態において、調整軸115の各係合部と、これらに対応する各錘111の通し穴117とが一致するように位置決めされている。次に、ユーザーは、複数の錘111の中から、希望するテンション荷重に応じて適宜の錘111を選択し、選択した錘111の通し穴117に係止軸119を差し込み、係止軸119を、調整軸115の対応する係止部170に差し込んで、選択した錘111を調整軸115に連結する。係止軸119は、錘111の通し穴117、調整軸115の係止部170に差し込まれ、さらに安定させるには、錘111の他方まで差し込み、そこで保持されるような構造にしておけば、装置が稼働している時に抜けるなどの問題もなくなる。例えば、係止軸119が通し穴117にバネ部材などにより一部が接触するような構造にしておき、その接触を解除するとスムーズに抜けるようにしておけば、抜き差しが簡単であり安定した係合も可能である。
【0026】
この連結した錘111と、その上の錘111の重量G3がテンション荷重の調整値となり、テンションバー105の印刷媒体20に対して下向きに作用するテンション荷重は、
(G1−G2)−G3=テンション荷重となる。
調整軸115に全ての錘111を連結した場合には、テンション荷重は、最小荷重となり、本実施形態では、約0,1kgfに設定されている。調整軸115と錘111との連結は、係止軸119を、錘111の通し穴117から引き抜くことで解除することができ、ユーザーは任意の錘111を選択して、調整軸115に連結し、テンション荷重の調整を行うことができる。
【0027】
供給側テンション荷重調整機構36は、図2に示すように、アルミニウムなどの金属により構成される支軸135と、これに嵌着された管体137を備え、これらはテンションバー139を構成している。テンションバー139はY軸方向に、印刷媒体20の幅方向全長にわたって、案内レール26と平行に配置されている。管体137は変形しない程度の厚みと重量を有しており、それ自体が錘としての役割をしている。管体137の重さは印刷媒体20の材質その他により、種々の値を設定することができる。
【0028】
支軸135の両端近傍は、機体2aの後方の左右に設けられた支持体141,143の昇降ガイド部(図示省略)に昇降自在に保持され、支軸135は、昇降ガイド部に沿って床面に対して略垂直な昇降方向に、ラックとピニオンからなる同期案内構造(図示省略)により、水平状態のまま平行移動可能に構成されている。
【0029】
左右の支持体141,143には、それぞれ錘収納部(図示省略)が形成され、一方の錘調整側の錘収納部には複数の板状の錘145が重ねて配置されている。各錘145の中心には、角穴81が設けられ、これらに角穴81に対応する断面形状の調整軸147がスライド自在に挿入配置されている。各錘145には、調整軸147と直交する方向に係止軸149用の通し穴151が設けられ、該各通し穴151に対応して調整軸147に係止軸149と係合するための穴からなる係合部176が設けられている。
【0030】
これら調整軸147と錘145の構成は、図1に示す巻き取り側テンションバー荷重調整機構と同一である。反原点側(錘固定側)の錘収納部には、所定数の板状の錘153が重ねて配置され、これらの中心に角穴が設けら、該角穴と直角方向に通し穴が形成されている。各錘153の角穴には、係合部174が形成された結合軸155がスライド自在に嵌挿されている。これらの構成は、図1に示す巻き取り側テンションバー荷重調整機構と同一である。結合軸155の係合部にピン166を介して、1番下の錘153が脱着可能に固定されている。
支軸135の両端には、それぞれワイヤロープ等の柔軟性のある細長状部材からなる連結部材157,159の各一端が連結し、連結部材157の他端は、支持体141に設けられた、回転自在なロープ案内プーリからなるガイド161,161,161を介して調整軸147の上端に連結し、調整軸147を吊持している。
【0031】
連結部材159の他端は、支持体143に設けられた、回転自在なロープ案内プーリからなるガイド163,163を介して、結合軸155の上端に連結し、結合軸155を吊持している。ガイド163,163は、結合軸155側の錘153の重量がテンションバー139の重量を減算する方向に作用するように連結部材159を案内する。またガイド161,161,161は、調整軸147側の錘145の重量がテンションバー139の重量を加算する方向に作用するように連結部材157を案内する。
【0032】
テンションバー139を支持体141,143の昇降ガイド部に沿って最上昇位置と最下降位置の間で昇降させると、これと連動して、連結部材157,159に吊持された結合軸155と調整軸149が、支持体141,143の錘収納部内で昇降し、これらの軸155,147に連結する錘153,145が、軸155,147と連動して昇降するように、左右の錘収納部内に軸155,147と錘153,145が収納配置されている。調整軸147を収納する原点側錘収納部の側壁には、係止軸149を、選択した錘145の通し穴151に挿入するための溝状の開口部(図示省略)が形成されている。支持体141の錘収納部には、錘168を受ける台168が配置されている。台168には調整軸147を受け入れる逃げ穴が設けられている。結合軸155に連結する錘153の重量G2’は、テンションバー139のテンション荷重を減らす目的で適宜な重量に設定されている。
【0033】
調整軸147に錘145を連結していない状態において、テンションバー139の重量G1’は、錘153の重量G2′によって減算され、テンションバー139を介して印刷媒体20にかかるテンション荷重は、
(G1’−G2’)=最小荷重
となり、本実施形態では、約0,1kgfに設定されている。
【0034】
この初期状態から、ユーザーがテンション荷重の調整を行う。まず、錘145を台168の上に載せた状態で、テンションバー139を支持体141,143の昇降ガイド部に沿って一番下の位置に下ろしておく。印刷媒体で張られてテンションバー139が持ち上げられて無い状態であれば、通常はテンションバー139には荷重が掛かっているため重力により一番下の位置に安定して保持されている。この状態において、調整軸147の各係合部176と、これに対応する各錘145の通し穴151とは一致するように位置決めされている。

次に、ユーザーは、係止軸149を複数の錘145の中から希望するテンション荷重に応じて適宜の錘145を選択し、選択した錘145の通し穴151に係止軸149を差し込み、係止軸149を、調整軸147の対応する係止部176に差し込んで、選択した錘145を調整軸147に連結する。
【0035】
この連結した錘145と、その上の錘145の重量G3′がテンション荷重の調整値となり、印刷媒体20に下向きにかかるテンション荷重は、
(G1′−G2′)+G3′=テンション荷重
となる。
【0036】
調整軸147に全ての錘145を連結した場合には、テンション荷重は最大荷重となり、本実施形態では、最大荷重は、約4kgfに設定されている。調整軸147と錘145との連結は、係止軸149を、錘145の通し穴151から引き抜くことで解除することができ、ユーザーは任意の錘145を選択して、調整軸147に連結し、テンション荷重の調整を行うことができる。
【0037】
プリンタ装置の前後(巻き取り側、供給側)に設けられた荷重調整機構106、36はほぼ同じ荷重を掛ける事が良く、搬送ローラ30、加圧ローラ32にて挟持して搬送を行っているため、すべりが起こらない範囲で前後でバランスを取るのが良い。
また、錘111,121,145,153は平面での回転がおこらないように、調整軸115,147、結合軸125,155以外にも上下に貫通する穴を設け、そこに回転防止のための軸を通しておくと回転を防止でき、錘の上下動もスムーズになる。本件の構造では、テンションバー105,139の重さを相殺する錘を設け、その錘により荷重を限りなく0に近づけ、または荷重を0にし、そこからもう片方に設けた錘の数を選んで調整することにより、0から必要な重さまでを係止軸のピンを差し込む錘の位置を変更するだけで、ピンを刺した錘とその上の錘の荷重を連結部材129,157に伝えることができるようにしている。
【0038】
本件実施例では、供給側と巻き取り側で機構を逆にしているが(荷重を減らす、荷重を増やす)、これは巻き取り側には分割ローラ103が設けられており、その分テンションバー105の荷重が供給側より重くなっているため、その重さを相殺する錘を片方に設けると、その分、錘の数が余分に必要になってしまうためであり、構造的には供給側、巻き取り側、どちらにも同じ機構を設けても良く、製品の構造により適宜選択すればよい。
巻き取り側の支持体107,109のガイド部に昇降自在に支持された支軸101及び供給側の支持体141,143のガイド部に昇降自在に支持された支軸は両端側で上下動する時に平行移動可能なように同期がとれるようになっており、本件では、ラックピニオン構造を用いることでテンションバー105,139が傾かないようにして、用紙媒体20に荷重が均等に掛かるようにしている。
【0039】
プリンタの巻取装置104,104の一方には、コントローラにより制御される駆動モータが内蔵され、該駆動モータの出力軸は巻き取り用の軸体102に連結している。プリンタ装置2の機体2aの両側には、収納ボックス112,114が設けられ、該一方のボックス112には、印刷媒体に噴射する液体インク、印刷ヘッド24のメンテナンスを行うメンテナンス機構等(キャッピング機構やクリーニング機構など)が設置され、上部にはプリンタ装置2を操作するための操作パネル116が設置されている。一方のボックス114には、ヘッドなどを移動させてきた時にメンテナンスができるようなスペースが用意されている。
【0040】
次に本実施形態の動作について説明する。
まず作業者は、印刷媒体ロール20aを、供給軸34にセットするとともに印刷媒体ロール20aから引き出した印刷媒体20を、テンションバー139、ガイドローラ38,40に順次掛け、更にテンションバー機構42の各分割ローラ72の下面を経て、ガイドローラ44,供給側案内ローラ46に図3に示すように順次掛け、搬送ローラ30と加圧ローラ32間に導く。
【0041】
引き出した印刷媒体20を更に支持部28上に配置し、更に排出側案内ローラ78に掛け、巻き取り側テンションバー荷重調整機構106の各分割ローラの下面に導いた後に、印刷媒体巻き取り部16の軸体に巻き付ける。そして、レバー操作により、加圧ローラ32を下降し、搬送ローラ30に圧接して、案内部28上の印刷媒体20を、搬送ローラ30と加圧ローラ32とで挟持する。機体供給側のテンションバー荷重調整機構36は印刷媒体供給搬送経路部8の印刷媒体20にテンションを付与し、機体巻き取り側のテンションバー荷重調整機構106は印刷媒体排出搬送経路部14の印刷媒体20にテンションを付与する。印刷媒体20を最終的に印刷できる状態にするには、印刷媒体20を取り付けた後に、送り出し装置、巻き取り装置、搬送ローラ30を駆動させ、テンションバー105,139を持ち上げた状態にして荷重を掛けて印刷媒体20を緊張した状態にする。
【0042】
作業者は、外部コンピュータ装置とプリンタ装置2とをインターフェースを介して接続し、外部コンピュータ装置およびプリンタ装置2の電源をそれぞれ投入する。これにより、外部コンピュータ装置は、所定のプログラムを実行することにより作業者からの指令の入力を待つ待機状態となる。プリンタ装置2は、電源投入後、初期動作を行い、指示を待つ状態になっており、印刷媒体20がセットされている場合には、パネル116より指示するとヘッド24に設けたセンサにより印刷媒体20を緊張状態にして、印刷できる状態にする。
【0043】
次に作業者は、外部コンピュータ装置を操作して、プリンタ装置2に画像の印刷を開始させる。これによりプリンタ装置2に内蔵されるコントローラは、外部コンピュータ装置から出力される画像データに基づいて印刷ヘッド24と印刷媒体20との相対的な位置関係を変化させながら、印刷ヘッド24の作動を制御して、ガター18上の印刷媒体20に向けてインクの液滴を吐出する。
【0044】
この印刷媒体20に対する画像の印刷過程においては、印刷媒体20は機体2aの後側から前側に向かって搬送される。コントローラは、X軸モータの作動を制御することにより印刷媒体20を機体2aの後側から前側に向かって断続的に搬送する。またコントローラは、巻き取り装置104の巻き取りモータの作動を制御して画像が印刷された印刷媒体20を巻き取る。このとき、巻き取り側テンションバー荷重調整機構106のバーの高さが、所定の範囲内(負荷がかかる状態を維持する範囲)となるように、バーの高さを検出するセンサの信号に基づき、巻き取りモータが制御される。
【0045】
また、コントローラは、テンションバー139の高さを検出するセンサの信号に基づき、送り出しモータの作動を制御して、供給側テンションバー荷重調整機構36のテンションバー139の高さが所定の範囲内(負荷がかかる状態を維持する範囲)に位置するように、印刷媒体ロール20aの回転を制御し、印刷媒体ロール20aから印刷媒体20をくり出す。
なお、図1,2中、矢印は荷重の方向を示している。
【符号の説明】
【0046】
2 プリンタ装置
2a 機体
2b 脚部
2c 台板
4 印刷部
6 印刷媒体搬送駆動部
7 印刷媒体供給側案内部
8 印刷媒体供給搬送経路部
10 印刷媒体供給部
12 印刷媒体排出部
14 印刷媒体排出搬送経路部
16 印刷媒体巻取部
18 ガター
20 印刷媒体
20a 印刷媒体ロール
22 ヘッドユニット
24 ヘッド
26 ヘッド案内レール
28 支持部
30 搬送ローラ
32 加圧ローラ
34 供給軸
36 テンションバー荷重調整機構
38 ガイドローラ
40 ガイドローラ
42 テンションバー機構
44 ガイドローラ
46 供給側案内ローラ
48 送り出し装置
50 送り出し装置
72 分割ローラ
78 排出側案内ローラ
81 角穴
101 支軸
103 分割ローラ
104 巻取装置
105 テンションバー
106 テンションバー荷重調整機構
107 支持体
109 支持体
111 錘
112 収納ボックス
113 角穴
114 収納ボックス
115 調整軸
116 操作パネル
117 通し穴
119 係止軸
121 錘
123 角穴
125 結合軸
126 ピン
127 連結部材
128 通し穴
129 連結部材
130 台
131 ガイド
133 ガイド
135 支軸
137 管体
139 テンションバー
141 支持体
143 支持体
145 錘
147 調整軸
149 係止軸
151 通し穴
153 錘
155 結合軸
157 連結部材
159 連結部材
161 ガイド
163 ガイド
164 開口部
166 ピン
168 台
170 係合部
172 係合部
174 係合部
176 係合部
図1
図2
図3
図4