特許第6574099号(P6574099)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6574099
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】燃料電池流動場のための付加製造
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0202 20160101AFI20190902BHJP
   H01M 8/026 20160101ALI20190902BHJP
【FI】
   H01M8/0202
   H01M8/026
【請求項の数】12
【外国語出願】
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-82313(P2015-82313)
(22)【出願日】2015年4月14日
(65)【公開番号】特開2015-232997(P2015-232997A)
(43)【公開日】2015年12月24日
【審査請求日】2018年1月18日
(31)【優先権主張番号】14/253,508
(32)【優先日】2014年4月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514202000
【氏名又は名称】ハミルトン・サンドストランド・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】ギヨーム・エム・ブルソー
【審査官】 近藤 政克
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−054246(JP,A)
【文献】 特開2003−178776(JP,A)
【文献】 特開2012−256479(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/0202
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の表面において第1の流動場チャネルを画定する第1のプレート本体であって、前記第1の流動場チャネルは、前記第1のプレート本体の前記第1の表面から対向する第2の表面に向かった深さの関数として変化する断面積を有する、第1のプレート本体と、
第1の表面において第2の流動場チャネルを画定する第2のプレート本体であって、前記第2の流動場チャネルは、前記第2のプレート本体の前記第1の表面から対向する第2の表面に向かった深さの関数として変化する断面積を有する、第2のプレート本体と、
を備え、
前記第2のプレート本体の前記第1の表面は、前記第1の流動場チャネルおよび前記第2の流動場チャネルが、連続的な流動場経路を画定するように、前記第1のプレート本体の前記第1の表面に隣接し、
前記第1の流動場チャネルおよび前記第2の流動場チャネルは、それぞれ、前記第1のプレート本体および前記第2のプレート本体上に各チャネル壁を直接付加製造することによって形成された、燃料電池のためのプレート。
【請求項2】
前記第1の流動場チャネルの前記断面積は、前記第1のプレート本体の第1の表面から対向する第2の表面に向かって増加する、請求項1に記載のプレート。
【請求項3】
前記第1の流動場チャネルの前記断面積は、前記第1のプレート本体の第1の表面から前記対向する第2の表面に向かって減少する、請求項1に記載のプレート。
【請求項4】
前記第2の流動場チャネルの前記断面積は、前記第2のプレート本体の第1の表面から前記対向する第2の表面に向かって増加する、請求項に記載のプレート。
【請求項5】
前記第2の流動場チャネルの前記断面積は、前記第2のプレート本体の第1の表面から前記対向する第2の表面に向かって減少する、請求項に記載のプレート。
【請求項6】
前記第1のプレート本体の前記第1の表面および前記第2のプレート本体の前記第1の表面に垂直の前記流動場経路の前記断面積は、I字形である、請求項に記載のプレート。
【請求項7】
前記流動場経路の第1の端部の幅は、第2の端部の幅未満である、請求項に記載のプレート。
【請求項8】
燃料電池のための流動場チャネルを形成する方法であって、
第1のプレート本体の第1の表面に直接チャネル壁を付加的に形成することによって、第1の流動場チャネルを形成するステップであって、前記第1の流動場チャネルは、前記第1のプレート本体の前記第1の表面から対向する第2の表面に向かった深さの関数として変化する断面積を有する、第1の流動場チャネルを形成するステップと、
第2のプレート本体の第1の表面に直接チャネル壁を付加的に形成することによって、第2の流動場チャネルを形成するステップであって、前記第2の流動場チャネルは、前記第2のプレート本体の前記第1の表面から対向する第2の表面に向かった深さの関数として変化する断面積を有する、第2の流動場チャネルを形成するステップと、
を備え、
前記第2のプレート本体の前記第1の表面は、前記第1の流動場チャネルおよび前記第2の流動場チャネルが、連続的な流動場経路を画定するように、前記第1のプレート本体の前記第1の表面に隣接して配置されるように形成されることを特徴とする、方法。
【請求項9】
前記第1および第2の流動場チャネルを形成するステップは、前記チャネル壁を形成するように、連続的層の付加層製造をさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の流動場チャネルを形成するステップは、前記第1のプレート本体の第1の表面から前記対向する第2の表面に向かって増加する前記断面積をさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の流動場チャネルを形成するステップは、前記第1のプレート本体の第1の表面から前記対向する第2の表面に向かって減少する前記断面積をさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項12】
前記第1のプレート本体の前記第1の表面および前記第2のプレート本体の前記第1の表面に垂直の前記流動場経路の前記断面積は、I字形であり、前記流動場経路の第1の端部の幅は、第2の端部の幅未満である、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃料電池のための流動場プレートおよび流動場プレートを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、酸素と水素または炭素系燃料等の別の酸化剤との間の化学反応を通じて、化学エネルギーを電気に変換するデバイスである。多くの種類の燃料電池が存在するが、それらは、典型的には、陽極、陰極、および電荷が燃料電池の両側を移動することを可能にする電解質から成る。電子は、陽極から陰極に引き出され、直流電気を生成する。典型的な燃料電池の各端部は、頑丈で軽量の電子伝導材料(多くの場合、黒鉛、金属、または複合体)から作られるプレートを含有する。これらのプレートは、(陽極側の)燃料および(陰極側の)酸素を燃料電池に供給することができるチャネルを含む。その後、単燃料電池は、積層されて、さらなる容量を生成する。
【0003】
概して、流動場のチャネルは、バイポーラプレートに機械加工されるか、または成形される。その後、別々のプレートが、ガス拡散層に対して押され、膜電極接合体上へのガス拡散をも可能にする。流動場を機械加工する工程は、黒鉛プレートに対して特別な工具および処理を利用する。流動場を機械加工することは、構造的に適応されなければならない応力点をプレート内に生成し得、これは、典型的には、プレートを、所望を上回る厚さおよび/または重量にする必要がある。厚さおよび/または重量の追加は、比較的小さく、軽量の燃料電池を求める典型的な設計に反する。
【0004】
そのような従来の方法およびシステムは、概して、それらの意図される目的に対して満足のいくものであるとみなされてきた。しかしながら、燃料電池およびその方法の向上に対する必要性が当技術分野で依然として存在する。本開示は、この必要性に対する解決策を提供する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
燃料電池のためのプレートは、第1の表面において第1の流動場チャネルを画定する第1のプレート本体を含む。第1の流動場チャネルは、プレート本体の第1の表面から対向する第2の表面に向かった深さの関数として変化する断面積を有する。第1の流動場チャネルの断面積は、第1の表面から対向する第2の表面に向かった深さの関数として、の関数として増加および/または減少することができる。
【0006】
プレートは、第1の表面において第2の流動場チャネルを画定する第2のプレート本体を含むことができる。第1のプレート本体の第1の流動場チャネルと同様に、第2の流動場チャネルは、第2のプレート本体の第1の表面からその対向する第2の表面に向かった深さの関数として、の関数として変化する断面積を有することができる。第1の流動場チャネルおよび第2の流動場チャネルが、連続的な流動場経路を画定するように、第2のプレート本体の第1の表面を、第1のプレート本体の第1の表面に隣接して実装することができる。第2の流動場チャネルの断面積は、第2のプレート本体の第1の表面からその第2の表面まで増加および/または減少することができる。
【0007】
第1の表面に垂直の流動場経路の断面積は、I字形であることができる。流動場経路の第1の端部の幅は、第2の端部の幅未満であることができる。
【0008】
燃料電池のための流動場チャネルを形成する方法は、第1のプレート本体上に直接チャネル壁を付加的に形成することによって、第1のプレート本体上に流動場チャネルを形成するステップを含む。形成するステップは、チャネル壁を形成するように、連続的層の付加層製造をさらに含むことができる。
【0009】
本開示のシステムおよび方法のこれらおよび他の特徴は、図面と併せて、続く発明を実施するための形態から当業者にはより容易に明らかとなる。
【0010】
本開示が属する当業者が、不要な実験をすることなく、本開示のデバイスおよび方法を製作および使用する方法を容易に理解することができるように、発明を実施するための形態は、特定の図面を参照して本明細書で以下に詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1A】先行技術で周知の燃料電池の断面図である。
図1B図1Aの燃料電池の流動場プレートの平面図である。
図2】深さの関数として変化する断面積を示す、本開示に従って構成される燃料電池のためのプレートの例示的な実施形態の断面図である。
図3図2のプレートのさらなる実施形態の断面図である。
図4図2のプレートの別の実施形態の断面図である。
図5】縦位置の関数として断面が変化するチャネルを示す、プレートの別の例示的な実施形態の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
ここで、同様の参照番号が本開示の同様の構造的特徴または態様を特定する、図面が参照される。説明および例示の目的のためであって、限定する目的ではなく、本開示に従う燃料電池のためのプレート本体の例示的な実施形態の部分図が、図2に示され、全体が参照文字100で表される。本開示またはその態様に従うプレート本体の他の実施形態は、後述されるように、図3〜5に提供される。
【0013】
当技術分野で周知の燃料電池の構造は、図1A〜1Bを参照して説明される。図1Aは、単燃料電池10の断面図を示す。燃料電池10は、触媒電極14および16を含む膜電極接合体12を含む。触媒電極14および16は、それぞれ燃料電池10の陽極および陰極として機能し得る。燃料電池10は、ガス拡散層20および22をさらに含む。ガス拡散層20および22は、反応のために触媒電極14、16へガスを拡散させるのに役立つように用いられる。酸素等のガスおよび水素または炭素系燃料等別の酸化剤は、流体流動場プレート30および32に沿って分布される。水素は、酸素と結合して、水を形成し、一方で、同時に電流を発生させる。ガスが均等に分布されることを確実にするために、流体流動場プレート30および32は、それぞれガス拡散層20および22の外側に配置される。所望される電圧を得るために、複数の燃料電池10は、燃料電池スタックとして連続して共に積層されて、所望されるエネルギー生成を達成し得る。
【0014】
図1Bは、流体流動場プレート30の平面図を示す。流体流動場プレート30は、表面にエッチングされるか、成形されるか、または機械加工されるチャネル18を含む。これらのチャネル18は、流体が、流体流動場プレート30の反応表面上に均等に分布されるのに役立つ。チャネル上の流体流動の不均等な分布は、分散を導入し得、化学から電気エネルギーへの変換の損失につながるため、流体流動プレート30を通じたガスの均等な分布が理想的である。さらに、不均等な流動分布は、均等な分布と比較すると、圧力低下を増加させる。典型的には、チャネルは、燃料電池のプレートに機械加工されるか、または成形され、その後、燃料電池スタック内のガス拡散層に対して押される。しかしながら、これらの技術は、所望されない費用を追加し得る特別な工具および燃料電池スタックに所望されない応力を生成し得る処理を必要とする。
【0015】
図2は、本発明に従うプレート本体100を例示する。プレート本体100は、例えば、ガス拡散層は、その第1の表面104において第1の流動場チャネル102を画定する。第1の流動場チャネル102は、プレート本体100の第1の表面104から対向する第2の表面106に向かった深さDの関数として変化する断面積を有する。第1の流動場チャネル102は、付加製造によって製造されると考えられる。このように、第1の流動場チャネル102は、プレート本体100上に直接チャネル壁103を層ごとに形成することによって生成される。この製造方法は、正確な量の材料、例えば、黒鉛をプレート本体100上に直接適用して、比較的薄く、かつ燃料電池に必要な任意のチャネル高さおよび幅を有する第1の流動場チャネル102を生成することを可能にする。付加製造を用いることは、さらに、第1の流動場チャネル102を、特定の用途に対して任意の適切なパターンで生成することを可能にする。
【0016】
引き続き図2を参照して、第1の流動場チャネル102の断面積は、第1の表面104から対向する第2の表面106の方向に増加する。したがって、断面積は、プレート本体100のより深部で広がって、外側に先細りする。第1の流動場チャネル102のこの先細りは、先細りのないチャネルの場合の流速と比べて流量を制御することによって、プレート本体を通じたガス流速を制御することによって、制御された圧力低下を可能にする。先細りは、プレート本体100が生成する制限の大きさおよび電極への所望されるガス流に応じて調整することができる。付加製造の技術を用いることは、燃料電池内の流量も最大にするように、第1の流動場チャネル102の特定のチャネルプロファイルを生成することを可能にする。加えて、第1の流動場チャネル102は、任意に、第1の流動場チャネル102とプレート本体100との間の所望されない接触応力を低減するように、斜角の角108を含むことができる。
【0017】
ある実施形態において、図3に示されるように、チャネルの断面積は、第1の表面304から対向する第2の表面306に向かって減少する。この実施形態において、第1の流動場チャネルの断面積は、プレート本体300のより深部にいくにつれて内側に先細りする。図3において、複数の第1の流動場チャネル302が示される。第1の流動場チャネル302は、内側に先細りするチャネルおよび外側に先細りするチャネルを含むことによってパターン形成される。このパターンは、プレート本体を通じた流量を制御することによって、燃料電池内の圧力低下も制御することができる。
【0018】
加えて、第1の表面204において第2の流動場チャネル202を画定する第2のプレート本体200は、付加製造を用いて製造することができる。第2の流動場チャネル202は、第2のプレート本体の第1の表面204から対向する第2の表面206に向かった深さの関数として変化する断面積を有する。第2のプレート本体200の第1の表面204は、第1の流動場チャネル102および第2の流動場チャネル202が、連続的な流動場経路110を画定するように、第1のプレート本体100の第1の表面104に隣接する。より具体的には、第2のプレート本体200、例えば、第2の流動場チャネル202を有する水輸送プレートは、第1のプレート本体100の第1の表面104および第2のプレート本体200の第1の表面204が隣接するように、第1のプレート本体100と共に押され得る。第1の表面104、204はそれぞれ共に押されるにつれて、、第1および第2の流動場チャネル102、202は、1つの連続的な流動場経路110を生成する。図2および3に示されるように、複数の流動場経路110は、第1および第2のプレート本体100、200に階層化されて、燃料電池10のもの等の流動場プレート30、32と似ることができる。さらに、階層化される流動場経路110を有する第1および第2のプレート本体100、200は、スタックの費用と併せて燃料電池スタックの高さを著しく低減することを可能にする。
【0019】
図4は、連続的な流動場経路410を有する第1および第2のプレート本体400、500のさらなる実施形態を例示する。この実施形態において、流動場経路410の断面は、第1の表面404、504に垂直に見たときに、I字形であり、例えば、Iビーム形構造の少なくとも一部の断面形状に似る。この設計は、燃料電池の接触表面を向上させ、燃料電池における圧力低下を低減させる。チャネル断面の第1の端部420は、対向する第2の端部520より幅が狭くなることができる。図2〜4に例示される設計および/またはパターンのそれぞれは、それぞれのチャネル壁を形成することによって、付加製造を用いて各それぞれのプレート本体に第1および第2の流動場チャネルを形成することにより生成することができる。これは、特別な工具の必要性なく、プレート本体を生成することを可能にする。当業者であれば、応力および燃料電池の処理費用を低減する流動場チャネルを可能にし、かつ流動分布を最大にすることを可能にするように、さらなる設計および/またはパターンが生成され得ることを認識するであろう。
【0020】
図5は、第1のプレート本体600内の第1の流動場チャネル602が、縦方向に断面積が変化する本開示の別の例示的な実施形態を例示する。図5に示されるように、流動場チャネル602の断面積は、長さLの関数として増加および/または減少する。この断面積の変化は、深さDに応じた断面積の変化に追加されるか、または代わりに行われる。
【0021】
当業者であれば、示され、説明された燃料場経路を、1つの燃料電池または燃料電池スタック内に生成することができることを認識する。例えば、図2および3に示された流動場経路は、図4に示された流動場経路と混合することができる。流動場経路を付加的に製造する技術は、特別な工具の必要性なく、特有のパターンの生成を可能にする。加えて、プレート本体の組成を変化させるために、様々な材料が用いられ得る。例えば、付加製造を用いて、異なる材料を階層化して、半分疎水性および半分親水性である流動場経路を生成して、流動場経路内の水分収集を管理し得る。
【0022】
上記で説明され、図面に示された本開示の方法およびシステムは、向上したチャネル形状を含む優れた特性を有する燃料電池のための流動場チャネルを提供する。本開示の装置および方法は、好ましい実施形態を参照して示され、説明されているが、一方で、当業者であれば、本開示の精神および範囲から逸脱することなく、変更および/または修正がなされ得ることを容易に理解する。
【符号の説明】
【0023】
10 単燃料電池
12 膜電極接合体
14、16 触媒電極
18 チャネル
20、22 ガス拡散層
30、32 流体流動場プレート
100 プレート本体
102 第1の流動場プレート
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5