特許第6574119号(P6574119)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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  • 特許6574119-ノロウイルス不活化評価方法 図000002
  • 特許6574119-ノロウイルス不活化評価方法 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6574119
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】ノロウイルス不活化評価方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/569 20060101AFI20190902BHJP
   C12N 7/04 20060101ALI20190902BHJP
   C07K 16/10 20060101ALI20190902BHJP
【FI】
   G01N33/569 L
   C12N7/04
   C07K16/10
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-171243(P2015-171243)
(22)【出願日】2015年8月31日
(65)【公開番号】特開2017-49065(P2017-49065A)
(43)【公開日】2017年3月9日
【審査請求日】2018年5月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】和泉 慎也
(72)【発明者】
【氏名】奥岡 拓也
(72)【発明者】
【氏名】氏家 広大
【審査官】 海野 佳子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−017066(JP,A)
【文献】 特開2013−040167(JP,A)
【文献】 特表2009−542715(JP,A)
【文献】 特開2013−208072(JP,A)
【文献】 貞升健志ほか,バキュロ発現系により作製したノロウイルス由来蛋白質の加熱による抗原性の変化,日本ウイルス学会学術集会プログラム・抄録集,2007年10月 1日,Vol.55th,P.387
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48−33/98
G01N 33/36
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノロウイルスの不活化評価方法であって、
前記ノロウイルスと構造的かつ抗原的に同等であるノロウイルス様粒子を抗原とし、
前記ノロウイルス様粒子と結合した抗体を定量することにより前記ノロウイルスの不活化を評価し、
前記抗体を定量する際、前記ノロウイルス様粒子の分散液にアルコールを含有するウエットワイパーのシート絞り液を加えた希釈検体を用いることを特徴とするノロウイルス不活化評価方法。
【請求項2】
前記抗体の定量は、ELISAサンドイッチ法によって行うことを特徴とする請求項1に記載のノロウイルス不活化評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノロウイルス不活化評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ウイルスに対する消毒薬の有効性を評価するためには、感染力のあるウイルスの量を定量的に測定する必要があり、一般に簡便で定量性の高い培養細胞を用いる方法が採用されている。感染力を有するウイルスは細胞に感染するが、消毒薬などで不活化されて感染力を失ったウイルスは細胞に感染できない。したがって、その感染したウイルス量を測定することで消毒薬の効果を判定するのである。
【0003】
しかし、ヒトノロウイルスの場合、これまでに培養できる細胞が見つかっておらず、上記の方法では消毒薬の有効性を評価することができない。そのため、ノロウイルスの消毒薬による不活化効果は、ヒトノロウイルスと同じカリシウイルス科に属し、細胞培養が可能なネコカリシウイルスを代用することによって判断する方法が知られている(例えば、非特許文献1、2参照)。
【0004】
また、近年ではヒトノロウイルスと同じノロウイルス属に属するマウスノロウイルスの培養が可能となったことから、マウスノロウイルスを用いた消毒薬による不活化効果の評価方法も採用されている(例えば、非特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】平成19年度国立薬品食品衛生研究所報告書「ウイルス不活化条件に関する調査」
【非特許文献2】岩崎稔ら、新薬と臨床 J.New Rem.& Clin. Vol.54 No.8(2005)、p969−973
【非特許文献3】清水優子ら、環境感染誌、Vol.24 No.6(2009)、p388−394
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の方法はいずれも培養細胞を用いて当該培養細胞に感染したウイルス量を測定するものであり、培養細胞にウイルスを接種した後、当該培養細胞を数日間培養させる必要があった。そのため、ウイルスの不活化評価に時間がかかってしまうことが課題となっていた。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、培養細胞を培養させる手間をかけることなく評価することができるノロウイルス不活化評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、
ノロウイルスの不活化評価方法であって、
前記ノロウイルスと構造的かつ抗原的に同等であるノロウイルス様粒子を抗原とし、
前記ノロウイルス様粒子と結合した抗体を定量することにより前記ノロウイルスの不活化を評価し、
前記抗体を定量する際、前記ノロウイルス様粒子の分散液にアルコールを含有するウエットワイパーのシート絞り液を加えた希釈検体を用いることを特徴とするノロウイルス不活化評価方法。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、
前記抗体の定量は、ELISAサンドイッチ法によって行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、培養細胞を培養させる手間をかけることなく評価することができるノロウイルス不活化評価方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態にかかるノロウイルス不活化評価方法により導出されたノロウイルス様粒子の不活化効果を示す図である。
図2】従来のネコカリシウイルスを用いた不活化評価方法により導出された当該ネコカリシウイルスの不活化効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態であるノロウイルス不活化評価方法を詳細に説明する。但し、発明の範囲は、図示例に限定されない。
【0013】
[検体の調製]
まず、ノロウイルス不活化評価の対象となる検体の調整について説明する。
rNV-VLPs(recombinant Norovirus-Virus Like Particles;ノロウイルス様粒子)分散液と等量の試験検体液を接触させ、例えば、10秒後、30秒後、2分後、及び10分後に所定量のサンプルをマイクロピペットで採取し、それぞれのサンプルにLP希釈液を加えて希釈検体とする。
ここで、rNV-VLPs分散液とは、rNV-VLPsを生理食塩水(0.9w/v%)で希釈し、10分間ミキシングしたものである。
試験検体液とは、アルコールを含有するウエットワイパーのシート絞り液等である。
【0014】
[ノロウイルス不活化評価の原理]
次に、ノロウイルス不活化評価方法の原理について説明する。
本発明の実施形態であるノロウイルス不活化評価方法は、ELISA(Enzyme-Linked ImmunoSorbent Assay)サンドイッチ法を原理としている。
ELISAサンドイッチ法は、一次抗体(捕獲抗体)を固相化したマイクロプレートに検体を添加し、抗原・抗体反応を生じさせ、さらに酵素標識抗体を添加し、抗原・抗体反応を生じさせ、酵素活性を測定することにより、検体中の抗原を検出するものである。
【0015】
[ノロウイルス不活化評価方法]
次に、ノロウイルス不活化評価方法について説明する。
本発明の実施形態であるノロウイルス不活化評価方法では、まず、一次抗体(捕獲抗体)をマイクロプレート(例えば、96ウェルプレート)の各ウェルの表面に吸着(固相化)させる。ここで、一次抗体とは、抗原(ノロウイルス様粒子)を捉えるために使われる抗体である。
【0016】
次いで、一次抗体が固相化されたマイクロプレートの各ウェルに一定順序、一定時間間隔で上記の各希釈検体を所定量滴加し、当該マイクロプレートをプレート用ミキサーで数秒間撹拌する。そして、マイクロプレートの上面をラップ等で覆い、一次抗体に抗原が結合するまで(例えば、40分間)、20〜30℃でマイクロプレートを静置する。
【0017】
次いで、マイクロプレートの各ウェルの反応液を、上記の各希釈検体を滴加したときと同一順序・同一時間間隔で吸引除去する。そして、各ウェルに所定量の洗浄液を滴加し、プレート用ミキサーで数秒間撹拌した後、洗浄液を吸引除去する。そして、各ウェルに、上記の各希釈検体を滴加したときと同一順序・同一時間間隔で酵素標識抗体液を所定量滴加し、プレート用ミキサーで数秒間撹拌する。そして、マイクロプレートの上面をラップ等で覆い、さらに全体をアルミ箔等で覆うか、又は遮光容器に収納して遮光し、所定時間(例えば、20分間)、20〜30℃でマイクロプレートを静置する。
【0018】
次いで、マイクロプレートの各ウェルの反応液を、上記の各希釈検体を滴加したときと同一順序・同一時間間隔で吸引除去する。そして、各ウェルに所定量の洗浄液を滴加し、プレート用ミキサーで数秒間撹拌した後、洗浄液を吸引除去する。そして、各ウェルに、上記の各希釈検体を滴加したときと同一順序・同一時間間隔で基質液を所定量滴加し、プレート用ミキサーで数秒間撹拌する。そして、マイクロプレートの上面をラップ等で覆い、さらに全体をアルミ箔等で覆うか、又は遮光容器に収納して遮光し、所定時間(例えば、40分間)、20〜30℃でマイクロプレートを静置する。
【0019】
次いで、マイクロプレートの各ウェルに、上記の各希釈検体を滴加したときと同一順序・同一時間間隔で反応停止液を所定量滴加する。そして、反応停止液の滴加後所定時間(例えば、30分)以内にオートリーダー(波長450nm)で各ウェルの呈色液の吸光度を測定し、抗原であるノロウイルス様粒子の残存量を定量することによって、ノロウイルスの不活化効果を擬似的に評価する。
【実施例】
【0020】
次に、本発明の実施形態であるノロウイルス不活化評価方法を下記の実施例によって具体的に説明する。
【0021】
<実施条件>
下記の実施条件の下、希釈検体1と希釈検体2の2種類の検体についてノロウイルス不活化評価を行った。
抗原;ノロウイルス抗原キットNV−AD(デンカ生研株式会社製)に付属のノロウイ ルス用粒子
1次抗体;抗NV−GI及びGIIモノクローナル抗体(マウス)
希釈検体1;アルコールを含有するウエットワイパーA(pH6.0、PHMB、塩化 ベンザルコニウム含有)(市販品)のシート絞り液を上記検体の調整法に より調整したもの
希釈検体2;アルコールを含有するウエットワイパーB(pH9.5、PHMB、塩化 ベンザルコニウム含有)(エリエールプロダクト株式会社製;エリエール 除菌できるアルコールタオルウイルス除去用)のシート絞り液を上記検体 の調整法により調整したもの
酵素標識抗体液;ペルオキシダーゼ標識抗NV抗原ポリクローナル抗体(ウサギ)及び (マウス)並びにペルオキシダーゼ標識抗NV−GIIモノクローナル 抗体(マウス)を含む溶液
基質液;3, 3’, 5, 5’−テトラメチルベンジン(TMB)、過酸化水素 (0.009w/v%)を含む溶液
反応停止液;0.3mol/L硫酸
【0022】
図1に示す評価結果のとおり、ウエットワイパーAのシート絞り液についても、ウエットワイパーBのシート絞り液についても、rNV-VLPs(ノロウイルス様粒子)分散液と接触してから10秒経過以降にノロウイルス様粒子の不活化効果が確認された。
また、ウエットワイパーBのシート絞り液については、rNV-VLPs分散液と接触してから10秒経過した段階でほぼ全てのノロウイルス様粒子の不活化効果が確認された。
これに対して、ウエットワイパーAのシート絞り液については、rNV-VLPs分散液と接触してから10秒経過した段階で31%、30秒経過した段階で18%の活性なノロウイルス様粒子が残存し、ほぼ全てのノロウイルス様粒子が不活化するまで10分かかることが確認された。
【0023】
また、図1に示す評価結果は、図2に示すネコカリシウイルスを用いた消毒薬による不活化効果と高い相関性を有することが確認された。つまり、ノロウイルスと構造的かつ抗原的に同等であるノロウイルス様粒子を抗原とし、上記ELISAサンドイッチ法によって当該ノロウイルス様粒子と結合した抗体を定量することで、ノロウイルスの不活化評価方法が確立できることを示している。これにより、培養細胞を培養させる手間をかけることなく評価することができるノロウイルス不活化評価方法を提供することができる。
なお、図2に示す不活化効果は、上述したように、ヒトノロウイルスと同じカリシウイルス科に属し、細胞培養が可能なネコカリシウイルスを代用することによって判断する従来の方法(上記非特許文献2;図1 ネコカリシウイルスに対する薬液の効果参照)によって導出されたものである。
【0024】
以上、本発明を実施形態に基づいて具体的に説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
図1
図2