特許第6574130号(P6574130)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6574130シリコン基板上に成長される発光デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6574130
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】シリコン基板上に成長される発光デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/22 20100101AFI20190902BHJP
【FI】
   H01L33/22
【請求項の数】11
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-501026(P2015-501026)
(86)(22)【出願日】2013年3月18日
(65)【公表番号】特表2015-514312(P2015-514312A)
(43)【公表日】2015年5月18日
(86)【国際出願番号】IB2013052137
(87)【国際公開番号】WO2013140320
(87)【国際公開日】20130926
【審査請求日】2016年3月15日
【審判番号】不服2018-11001(P2018-11001/J1)
【審判請求日】2018年8月10日
(31)【優先権主張番号】61/612,536
(32)【優先日】2012年3月19日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517152128
【氏名又は名称】ルミレッズ ホールディング ベーフェー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】シング ラジウィンダー
(72)【発明者】
【氏名】エプラー ジョン エドワード
【合議体】
【審判長】 西村 直史
【審判官】 山村 浩
【審判官】 野村 伸雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−218396(JP,A)
【文献】 特開平10−215034(JP,A)
【文献】 特表2011−525708(JP,A)
【文献】 特開2012−44132(JP,A)
【文献】 特開2004−128445(JP,A)
【文献】 特開2003−347601(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/094391(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/046292(WO,A2)
【文献】 国際公開第2010/112980(WO,A1)
【文献】 特開2005−244201(JP,A)
【文献】 特表2011−501408(JP,A)
【文献】 特開2012−44132(JP,A)
【文献】 特開2010−263043(JP,A)
【文献】 特開2013−161902(JP,A)
【文献】 特開2006−93602(JP,A)
【文献】 特開2008−187204(JP,A)
【文献】 特開2007−266571(JP,A)
【文献】 特開2011−82233(JP,A)
【文献】 特開2007−329464(JP,A)
【文献】 特開2007−103898(JP,A)
【文献】 特開2012−31047(JP,A)
【文献】 特開2000−277441(JP,A)
【文献】 特開2003−234501(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L33/00-33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体構造体であり、
n型領域とp型領域との間に配置されたIII族窒化物発光層と、
前記n型領域上に配置されたAlGaN層と、該AlGaN層上に配置されたAlN層とを含む複数のアルミニウム含有層と、
を有する半導体構造体と、
前記半導体構造体の第1の表面で前記n型領域上に配置された金属nコンタクト、及び前記半導体構造体の前記第1の表面で前記p型領域上に配置された金属pコンタクトと、
前記第1の表面とは反対側の前記半導体構造体の第2の表面で、前記AlN層と直接接触して堆積された光学的に透明な層であり、当該光学的に透明な層の表面が粗面化、テクスチャ化又はパターン化されている、光学的に透明な層と、
前記AlGaN層と前記n型領域との間に配置された多孔性半導体層と、
を有するデバイス。
【請求項2】
前記光学的に透明な層は、1.9と2.2との間の屈折率を有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記光学的に透明な層は、シリコンの窒化物、シリコンの酸窒化物、又はシリコンの窒化物とシリコンの酸窒化物との混合物から形成されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記光学的に透明な層は薄膜である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記光学的に透明な層上に配置された波長変換材料、を更に有する請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
前記光学的に透明な層は非導電性である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
方法であって、
シリコン基板上にAlNシード層を成長させ、
前記AlNシード層上にAlGaNバッファ層を成長させ、
前記AlGaNバッファ層の上にn型層を成長させ、
前記n型層上にIII族窒化物発光層を成長させ、
前記III族窒化物発光層上にp型層を成長させ、
前記シリコン基板を除去し、
前記シリコン基板を除去した後に、前記AlNシード層に直接接触させて光学的に透明な層を形成し、且つ
前記光学的に透明な層をテクスチャ化する、
ことを有し、
当該方法は更に、
前記AlGaNバッファ層上に前記n型層を成長させる前に、前記AlGaNバッファ層上に更なるIII族窒化物層を成長させ、
前記更なるIII族窒化物層を多孔性にし、且つ
前記多孔性のIII族窒化物層を形成した後に、前記n型層上に前記III族窒化物発光層を成長させる、
ことを有する、
方法。
【請求項8】
前記光学的に透明な層を形成することは、化学気相成長を用いて、光学的に透明な材料の薄膜を堆積させることを有する、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記AlNシード層は、100nm未満の厚さであり、GaNの成長温度よりも低い温度で堆積される、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記AlGaNバッファ層は、800℃よりも高い温度で成長される単結晶層である、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記光学的に透明な層上に波長変換層を形成する、ことを更に有する請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン基板上に成長されるIII族窒化物発光ダイオード等の半導体発光デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED)、共振空洞発光ダイオード(RCLED)、面発光レーザ等の垂直共振器レーザダイオード(VCSEL)及び端面発光レーザを含む半導体発光デバイスは、現在利用可能な最も効率的な光源に含まれる。可視スペクトルにわたって動作することが可能な高輝度発光デバイスの製造において現在関心のある材料系は、III-V族半導体、特にガリウム、アルミニウム、ホウ素、インジウム及び窒素の二元、三元及び四元合金(III族窒化物材料とも称される)を含む。典型的に、III族窒化物発光デバイスは、サファイア、炭化ケイ素、シリコン、III族窒化物又は他の好適な基板上に、有機金属化学気相成長(MOCVD)、分子ビームエピタキシ(MBE)又は他のエピタキシャル技術により異なる組成及びドーパント濃度の半導体層の積層体をエピタキシャル成長させることにより製造される。上記積層体は、しばしば、上記基板上に形成された例えばSiによりドーピングされた1以上のn型層、該n型層(又は複数の層)上に形成された活性領域における1以上の発光層、及び該活性領域上に形成された例えばMgによりドーピングされた1以上のp型層を含む。上記n型及びp型領域上には電気接触子(コンタクト)が形成される。
【0003】
図1は、米国特許第7,256,483号に詳細に記載されたフリップチップLEDを示す。該LEDは、サファイア成長基板(図示されていない)上に成長されたn型層16、活性層18及びp型層20を含んでいる。p型層20及び活性層18の各一部はLED形成過程の間にエッチング除去され、金属50(金属化層+ボンディング金属)がp接触子金属24と同一の側においてn型層16に接触している。当該LEDにわたる熱勾配を低減し、該LEDとパッケージ基板との間の付着に機械的強度を加え、且つ、汚染物質が当該LED材料に接触するのを防止するために、アンダーフィル材料52を当該LEDの下の空隙に付与することができる。n金属50及びp金属24は、パッケージ基板12上のパッド22A及び22Bにそれぞれ結合される。パッケージ基板12上の接触パッド22A及び22Bは、半田付け可能な電極26A及び26Bにビア28A及び28B及び/又は金属配線を用いて接続される。前記成長基板は除去されて、n型層16の表面を露出させる。この表面は光取り出しを増加させるために、例えばKOH溶液を用いた光電気化学エッチングにより粗面化される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、改善された光取り出しを示す、シリコン基板上に成長される発光デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施態様は半導体構造体を含み、該半導体構造体はn型領域とp型領域との間に配置されたIII族窒化物発光層と、アルミニウム含有層とを含む。該アルミニウム含有層は、前記半導体構造体の上面を形成する。該アルミニウム含有層上には透明材料が配置される。該透明材料の表面はテクスチャ化される。
【0006】
本発明の実施態様による方法は、シリコンを含む基板上に半導体構造体を成長させるステップを有する。該半導体構造体は、前記基板に直接接触するアルミニウム含有層と、n型領域とp型領域との間に配置されたIII族窒化物発光層とを有する。該方法は、更に前記基板を除去するステップを含む。前記基板を除去した後、前記アルミニウム含有層に直接接触する透明材料が形成される。該透明材料はテクスチャ化される。
【0007】
本発明の実施態様は、n型領域とp型領域との間に配置されたIII族窒化物発光層を含む半導体構造体を含む。該半導体構造体は、更にアルミニウム含有層を含む。多孔性III族窒化物領域が、前記アルミニウム含有層と前記III族窒化物発光層との間に配置される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、粗面化された上面を備えるフリップチップLEDを示す。
図2図2は、シリコン基板上に成長されたIII族窒化物構造体を示す。
図3図3は、フリップチップ構成で支持体に付着された図2の構造体を示す。
図4図4は、図3の半導体構造体上に配設された粗面化された透明材料を含むデバイスの上面の一部を示す。
図5図5は、準備層とデバイス構造体との間に配設された多孔層を含む半導体構造体の一部を示す。
図6図6は、導波遮断領域及び散乱構造体を含むデバイスを示す。
図7図7は、多孔性III族窒化物層における微細孔の成長を示す。
図8図8は、多孔性III族窒化物層を形成するための装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の例は、青色又は紫外光を放出するIII族窒化物LEDを参照するが、レーザダイオード等のLED以外の半導体発光デバイス、並びに他のIII-V材料、III族隣化物及びIII族砒化物材料等の他の材料系から形成される半導体発光デバイスも、本発明の実施態様に用いることができる。
【0010】
III族窒化物デバイスは、しばしば、サファイア又はSiC基板上に成長される。これらの基板は、前述したように、エッチング、レーザ・リフトオフ又は何らかの他の適切な技術により除去することができる。これらの基板を除去することにより露出されたIII族窒化物材料は、通常、GaNであり、該GaNは例えば光電気化学エッチングにより容易に粗面化することができる。
【0011】
シリコンは、その低価格、広い利用可能性並びに良い特徴を持つ電気的及び熱的特性により、III族窒化物デバイスの成長にとって魅力的な基板である。シリコンは、III族窒化物材料とシリコンとの間の格子不整合及び熱的不整合から生じる亀裂を含む材料品質問題により、III族窒化物デバイスの成長のための基板としては広く使用されてはいない。加えて、GaとSiとの間の化学的相互作用は、第1成長層が本質的にGaを含まないことを必要とする。第1成長層としては、AlNが典型的に使用される。AlN第1成長層は該AlN第1成長層上に成長されるGaN層に圧縮歪を誘起する。SiとGaNとの間の熱膨張の不整合は、当該ウェファの高い成長温度からの冷却の間に該GaNに引張歪を誘起する。高温において圧縮状態で成長させることにより、上記冷却により発生される引張歪は順応される。
【0012】
図2は、シリコン基板30上に成長されるIII族窒化物構造体を示す。ここで説明する実施態様において、シリコン基板30は、シリコンウェファ、又は成長面(即ち、上面)がシリコンであるシリコン・オン・インシュレータ基板等の複合基板とすることができる。格子及び熱的不整合に関連する問題を低減又は除去するために、シリコン基板30上には先ず1以上の準備層32が成長される。図2には、2つの準備層が、即ちAlN種(シード)層34及びAlGaN緩衝(バッファ)層36が図示されている。AlN種層34は、例えば100nm厚未満のAlN層とすることができ、しばしば900℃より高いGaNの成長温度より低い温度で堆積される。AlGaN緩衝層36は、例えば800℃より高い高温で成長される、例えば実質的に単結晶の層であり得る。AlGaN緩衝層36は、III族窒化物デバイス構造体38中に、特にn型領域40中に圧縮応力を発生させることができ、このことは該III族窒化物デバイス構造体38における亀裂を低減させることができる。幾つかの実施態様において、AlGaN緩衝層36は省略され、III族窒化物デバイス構造体38はAlN種層34上に直に成長される。n型領域40、発光領域42及びp型領域44を含むIII族窒化物デバイス構造体38が、準備層32上に成長される。該III族窒化物デバイス構造体38は後に詳述される。
【0013】
アルミニウム含有準備層32は、前述したように、格子及び熱的不整合に関連する問題を低減又は除去することができる。しかしながら、アルミニウム含有準備層32は幾つかの理由により面倒である。第1に、図1を参照して説明したように、幾つかのデバイスにおいては、成長基板は除去され、該成長基板を除去することにより露出された半導体構造体は光取り出しを改善するために粗面化されるか又はパターン化される。しばしば従来のサファイア又はSiC成長基板を除去することにより露出されるIII族窒化物表面であるGaNとは異なり、上述したAlN種層34は、湿式エッチング及び光電気化学エッチング等の通常の技術により粗面化することが困難である。AlNは、半導体構造体を損傷させ、これによりウェファ歩留まりを低下させ得る攻撃的な処理であるドライエッチングにより粗面化又は除去されねばならない。第2に、アルミニウム含有準備層32の低屈折率(AlNは〜2.2の屈折率を有する)は、大部分が高屈折率のGaN(〜2.4の屈折率)デバイス構造体38内で発生される光が、アルミニウム含有準備層32とデバイス構造体38との間の界面に沿う内部導波へと失われるようにさせてしまい得る。
【0014】
本発明の実施態様は、Si基板上に成長されるIII族窒化物デバイスにおけるアルミニウム含有準備層に関連する上記問題を低減又は除去することができる。
【0015】
図6は、本発明の実施態様によるデバイスを示す。図6に図示されたデバイスにおいて、当該半導体構造体はIII族窒化物層の成長方向に対して反転(フリップ)され、n及びp接触子(コンタクト)46及び48は従来技術おいて知られているように当該半導体構造体上にフリップチップ態様で形成される。シリコン基板を除去した後に光取り出しのためにアルミニウム含有準備層を粗面化することの困難さの問題に対処するために、図6に示されたデバイスは、シリコン基板30が除去された後に準備層32上に形成される散乱構造体72を含んでいる。散乱構造体72は、例えば、後述するように粗面化された酸化ケイ素(酸化シリコン)又は窒化ケイ素(窒化シリコン)とすることができる。アルミニウム含有準備層32とデバイス構造体38との間の界面に沿う導波の問題に対処するために、図6のデバイスは準備層32とデバイス構造体38との間に導波遮断散乱構造体70を含んでいる。該散乱構造体70は、例えば、後述するように多孔性III族窒化物層、又は粗面化された、パターン化された若しくはテクスチャ化されたIII族窒化物層であり得る。
【0016】
図6に図示したデバイスは以下のように形成することができる。図2を参照して前述したように、シリコン基板30上に先ず準備層32が成長される。準備層32が形成された後、幾つかの実施態様では、オプションとしての散乱構造体70が形成される。
【0017】
散乱構造体70は、粗面化された、パターン化された又はテクスチャ化されたIII族窒化物層とすることができる。幾つかの実施態様においては、AlN種層34及びAlGaN緩衝層36が成長され、次いで、当該ウェファは反応器から取り出され、例えばエッチング又は機械的技術により処理されて、該AlGaN緩衝層36上に粗面化、テクスチャ化又はパターン化された非平坦な表面を形成する。次いで、該ウェファは成長チェンバに戻され、後述するように、AlGaN緩衝層36の上記非平坦面上にデバイス構造体38が成長される。AlGaN緩衝層36が省略されるデバイスでは、AlN種層34の表面を、デバイス構造体38の成長前に非平坦にすることができる。上記の粗面化、テクスチャ化又はパターン化された表面は、前記界面における散乱の量を増加させることができ、このことは、該界面における導波へと失われる光の量を減少させ得る。
【0018】
散乱構造体70は、図5に示されるように、準備層32とデバイス構造体38との間に形成される多孔性半導体材料60の領域とすることができる。多孔領域60は前記界面における散乱の量を増加させることができ、このことは、該界面において導波へと失われる光の量を低減させ得る。
【0019】
多孔領域60は、従来技術において知られているように、任意の好適な技術により形成することもできる。例えば、多孔領域60は下記のように形成することができる。即ち、前述したように1以上のアルミニウム含有準備層32がSi成長基板上に成長される。該準備層32上に、多孔質にされるIII族窒化物層62(頻繁にはGaNであるが、AlGaN及びInGaNを含む(これらに限定されるものでない)何れかの好適なIII族窒化物材料)が成長される。III族窒化物層62を多孔質にさせるための装置が図8に示されている。III族窒化物層62、準備層32及びシリコン基板30を含む半導体構造体80の上面の或る領域に熱蒸着により銀81が堆積される。当該ウェファ80はテフロン(登録商標)面82上に載置される。銀領域81はワッシャ84により接触され、当該半導体構造体80はテフロン(登録商標)面82にボルト86により固定される。陽極エッチング処理において陽極及び陰極として働くプラチナワイヤ88が電源90に接続される。陽極ワイヤ88はワッシャ84に接続される。ウェファ80及びプラチナワイヤ88は、2M NaOH又はKOH溶液92に浸漬される。上記ワイヤ及びウェファを介して、例えば10〜20mA/cmの密度で直流が供給される。オプションとしての紫外線照明94が250Wの水銀ランプにより供給される。適切な多孔率は10〜60分の処理を要し、その後、上記ランプ及び電流源はオフされる。他の例として、プラチナを上記ウェファの表面上に直接被着させることができるか、又はKOH、フッ化物酸又はCH3OH:HF:H2O2等の異なる溶液が光電気化学的に推進される処理に使用される。多孔性の密度及び大きさは、上記溶液の濃度を変化させることにより制御することができる。小さな微細孔の層は低いモル濃度の溶液(0.5%KOH)により生成することができる。表面下の大きな微細孔の層は、高いモル濃度の溶液(2%KOH)により生成することができる。
【0020】
図7は、微細孔76の成長を図示している。エッチングは、微細孔76の端部における電解液−半導体界面の先端において殆ど排他的に生じ、これら微細孔は図7に矢印により示されるように当該微細孔の底部から下方に成長する。エッチングの間に溶液を変えることにより、多層の多孔性を生成することができる。
【0021】
図7に示される多孔領域60には、III族窒化物材料中に空気微孔76が形成される。斯かる微孔(空隙)は寸法が数十〜数百nmの程度の幅78を有し得るもので、例えば幾つかの実施態様では寸法が10nmより大きく、幾つかの実施態様では寸法が500nmより小さくなる。最寄りの隣接する微孔は、数十〜数百nm程度離れた間隔80を有し得、例えば幾つかの実施態様では10nm以上離れ、幾つかの実施態様では500nm未満離れている。多孔領域60は、図5に示されるように、幾つかの実施態様では0.02μm厚より大きな厚さ82を有することができ、幾つかの実施態様では3μm厚未満の厚さを有することができる。多孔領域60の全体積に対する微孔の体積として百分率(パーセント)で定義される空隙率は、幾つかの実施態様では20%より大きく、幾つかの実施態様では80%未満、及び幾つかの実施態様では50%より大きくなり得る。上記微孔は、幾つかの実施態様では、多孔領域60の表面から準備層32に向かって延びる実質的に平行なトンネルであり得る。散乱は、III族窒化物材料と上記微孔内の周囲気体との間の屈折率の差により生じる。
【0022】
多孔領域60へと形成されるIII族窒化物層62の厚さは、例えば、幾つかの実施態様では0.5μmより大きく、幾つかの実施態様では5μm未満であり、幾つかの実施態様では2μm未満であり、幾つかの実施態様では0.5μmと1.5μmとの間であり、幾つかの実施態様では1μmであり得る。該III族窒化物層は、しばしば、n型GaNであるが、幾つかの実施態様において該層はドーピングされていない又はp型の材料であり得る。幾つかの実施態様では該III族窒化物層62の厚さ全体を多孔性とすることができ、又は幾つかの実施態様では該III族窒化物層62の全体の厚さ未満を多孔性とし、かくして、該III族窒化物層62の非多孔性領域が多孔領域60と準備層32との間に配置されるようにする。幾つかの実施態様において、多孔領域60は準備層32内へと延びる。多孔領域60を形成した後、当該構造体は成長反応器に戻され、以下に説明するようにデバイス構造体38が成長される。
【0023】
III族窒化物デバイス構造体38は、上述した構造体の何れか(即ち、粗面化若しくはテクスチャ化されていない準備層32、粗面化若しくはテクスチャ化された準備層32、又は多孔領域60)上に成長される。該デバイス構造体38は、各々が典型的には少なくとも1つのGaN層を含むn型及びp型領域40及び44の間に挟まれた発光若しくは活性層42(しばしば、少なくとも1つのInGaN発光層を含む)を含む。n型領域40を最初に成長されることができ、異なる組成及びドーパント濃度の複数の層(例えば、n型又は意図的にドーピングされないものであり得る層、及び光を効率的に放出するために発光領域にとり望ましい特定の光学特性、物性若しくは電気特性のために設計されたn型又は更にp型のデバイス層も含む)を含むことができる。該n型領域40上に発光又は活性領域42が形成される。好適な発光領域42の例は、単一の厚い若しくは薄い発光層、又は障壁層により分離された複数の薄い若しくは厚い発光層を含む多重量子井戸発光領域を含む。次いで、該発光領域42上にp型領域44を成長させることができる。n型領域40と同様に、p型領域44も異なる組成、厚さ及びドーパント濃度の複数の層(意図的にドーピングされていない層、又はn型層を含む)を含むことができる。領域32及び38を含む、基板30上に成長された全ての層の総厚は、幾つかの実施態様では10μm未満とすることができ、幾つかの実施態様では6μm未満とすることができる。
【0024】
デバイス構造体38の成長の後、基板30並びに該基板上に成長された半導体構造体32及び38を含むウェファは更に処理することができる。例えば、フリップチップLEDを形成するために、p型領域44上に反射性金属p接触子が形成される。次いで、デバイス構造体38は、標準的なフォトリソグラフィック処理によりパターン化されると共に、各LEDのために、p型領域44の全体の厚さの一部及び発光領域42の全体の厚さの一部を除去してn型領域40の表面(該表面上に金属n接触子が形成される)を露出させるメサを形成するためにエッチングされる。該メサ並びにp及びn接触子は任意の好適な方法によっても形成することができる。上記メサ並びにp及びn接触子を形成することは、当業者により良く知られている。
【0025】
次いで、上記ウェファは、支持体に個別に付着される個々のデバイスへと個片化されることができ、あるいは、個片化の前にウェファスケールで支持体に付着される。上記支持体は当該半導体構造体を機械的に支持する構造体である。好適な支持体の例は、シリコンウェファ等の、当該半導体構造体への電気的接続部を形成するための導電性ビアを備えた絶縁性若しくは半絶縁性ウェファ、例えばメッキにより当該半導体構造体上に形成される厚い金属ボンディングパッド、又はセラミック、金属若しくは何らかの他の好適なマウントを含む。当該半導体構造体を支持体に取り付けた後、個片化の前又は後に、前記成長基板は当該III族窒化物構造体から取り除くことができる。
【0026】
図3は、支持体に取り付けられたフリップチップデバイスを、成長基板が取り除かれた状態で示す。デバイス構造体38は、金属n接触子46及び金属p接触子48を介して支持体50に付着される。これらn及びp接触子はギャップ47により電気的に隔離され、該ギャップは空気、周囲気体、又はシリコンの酸化物、シリコーン若しくはエポキシ等の固体絶縁材料により充填することができる。シリコン成長基板30を除去することにより露出された、成長された半導体材料の表面は、AlN種層34の表面である。接触子46及び48の一方又は両方は反射性であるので、光の大部分は、図3の構造体から上面及び側面を介して出射する。
【0027】
上述した様に成長基板を除去した後に露出されるAlN種層を粗面化、テクスチャ化又は除去することにより生じる損傷を回避するために、幾つかの実施態様においては、成長基板を除去したことにより露出される当該半導体構造体の表面上に粗面化される材料の層が形成される。図4は、本発明の実施態様によるデバイスの一部を示す。前述したように、成長基板が除去される場合に、AlN種層34の表面が露出される。図4に示す構造においては、AlN種層34の屈折率に近い又は合致した屈折率を持つ光学的に透明な材料の層56が、該AlN種層34の表面上に形成される。該層56の上面54は、当該半導体構造体からの光取り出しを向上させるために粗面化される。
【0028】
透明材料56は、前記発光領域により放出される光に対して、透明材料56による吸収及び散乱が僅かとなるような透明であるように選択される。透明材料56の屈折率は、幾つかの実施態様では少なくとも1.9、幾つかの実施態様では少なくとも2.0、及び幾つかの実施態様では少なくとも2.1であり、かくして、透明材料56の屈折率がAlN種層34(2.2の屈折率)及びデバイス構造体38における何れのGaN層(2.4の屈折率)の屈折率にも近くなるようにする。好適な透明材料56の例は、非III族窒化物材料、シリコンの酸化物、シリコンの窒化物、シリコンの酸窒化物、SiO、Si、SiO及びこれらの混合物を含む。透明材料56は、幾つかの実施態様では多層構造体とすることができる。透明材料56は、例えば、化学気相成長又は任意の他の適切な技術により形成することもできる。
【0029】
透明材料56の表面54は、例えば乾式又は湿式エッチング、及び自己マスキング、パターン化マスキング、リソグラフィック・パターニング、ミクロスフィア・パターニング若しくは何らかの他の好適なマスキング技術を用いた乾式又は湿式エッチングを含む任意の適切な技術又は技術の組み合わせによりパターン化、粗面化又はテクスチャ化することもできる。例えば、Si層56は、従来技術において既知のようにCHFプラズマエッチングにより後続されるiライン・フォトレジスト・パターニング等の既知のフォトリソグラフィ技術を用いてランダムな又は規則的な凹凸でパターン化することができる。幾つかの実施態様において、パターン化、テクスチャ化又は粗面化は、透明材料56の全厚を経て種層34の表面まで延びる。
【0030】
幾つかの実施態様において、透明層56の粗面化された表面54上には1以上の追加のオプション的構造体を形成することができる。例えば、1以上の波長変換材料、光学系、ダイクロイックフィルタ等のフィルタ、又は他の構造体を透明層56上に、該透明層56に接触させて又は該透明層56から離隔させて配置することができる。
【0031】
以上、本発明を詳細に説明したが、当業者であれば、本開示が与えられた場合、本発明に対する変更を、ここで説明した本発明思想の範囲から逸脱することなく実行することができることが分かるであろう。例えば、異なる実施態様の異なる構成要素は、新たな実施態様を形成するために組み合わせることができる。従って、本発明の範囲は図示及び記載された特定の実施態様に限定されることを意図するものではない。
(1) n型領域とp型領域との間に配置されたIII族窒化物発光層と、
アルミニウム含有層と、
を有する半導体構造体であって、前記アルミニウム含有層が該半導体構造体の上面を有する当該半導体構造体と、
前記アルミニウム含有層上に配置され、且つ、表面がテクスチャ化された透明材料とを有する、
デバイス。
(2) 前記アルミニウム含有層がAlNである、(1)に記載のデバイス。
(3) 前記n型領域が前記アルミニウム含有層と前記III族窒化物発光層との間に配置される、(1)に記載のデバイス。
(4) 前記透明材料が少なくとも2.0の屈折率を有する、(1)に記載のデバイス。
(5) 前記透明材料がシリコンの酸化物を有する、(1)に記載のデバイス。
(6) 前記透明材料がシリコンの窒化物を有する、(1)に記載のデバイス。
(7) 前記透明材料の前記表面が粗面化、テクスチャ化又はパターン化されている、(1)に記載のデバイス。
(8) 前記アルミニウム含有層と前記発光層との間に配置された界面が非平坦である、(1)に記載のデバイス。
(9) 前記非平坦な界面が、AlGaN層と前記n型領域の一部であるGaN層との間の界面である、(8)に記載のデバイス。
(10) 前記アルミニウム含有層と前記III族窒化物発光層との間に配置された多孔性半導体層を更に有する、(1)に記載のデバイス。
(11) シリコンを有する基板上に半導体構造体を成長させるステップであって、前記半導体構造体が、
前記基板に直接接触するアルミニウム含有層と、
n型領域とp型領域との間に配置されたIII族窒化物発光層と、
を有するステップと、
前記基板を除去するステップと、
前記基板を除去した後に、前記アルミニウム含有層に直接接触する透明材料を形成するステップと、
前記透明材料をテクスチャ化するステップと、
を有する、方法。
(12) 前記基板がシリコン層を有する、(11)に記載の方法。
(13) 前記アルミニウム含有層がAlNである、(11)に記載の方法。
(14) 前記透明材料が少なくとも2.0の屈折率を有する、(11)に記載の方法。
(15) 前記透明材料が化学気相成長により形成される、(11)に記載の方法。
(16) 前記透明材料が非III族窒化物材料である、(11)に記載の方法。
(17) 前記アルミニウム含有層を成長させた後に、前記半導体構造体上に非平坦な表面を形成するステップ、及び
前記非平坦な表面を形成した後に、前記n型領域と前記p型領域との間に配置される前記III族窒化物発光層を成長させるステップ、
を更に有する、(11)に記載の方法。
(18) 前記アルミニウム含有層を成長させた後に、多孔性GaN層を形成するステップと、
前記多孔性GaN層を形成した後に、前記n型領域と前記p型領域との間に配置される前記III族窒化物発光層を成長させるステップと、
を更に有する、(11)に記載の方法。
(19) n型領域とp型領域との間に配置されたIII族窒化物発光層と、
アルミニウム含有層と、
前記アルミニウム含有層と前記III族窒化物発光層との間に配置された多孔性III族窒化物領域と、
を有する半導体構造体を有する、デバイス。
(20) 前記多孔性III族窒化物領域がGaNであり、前記半導体構造体がシリコン基板上に成長されている、(19)に記載のデバイス。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8