(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも一部は仮想ネットワーク上の仮想マシンにより構成される第1のネットワークと接続され、L2 over L3カプセル化方式により第1のカプセル化が行われた第1のカプセル化データを転送する第2のネットワークと、
前記第2のネットワークと接続され、L2 over L2カプセル化方式により第2のカプセル化が行われた第2のカプセル化データを転送する第3のネットワークと、からなり、
前記第2のネットワークに属して前記第3のネットワークと接続し、前記第1のカプセル化に係る処理を行う第1の中継装置と、
前記第3のネットワークに属して前記第2のネットワークと接続し、前記第2のカプセル化に係る処理を行う第2の中継装置と、を有し、
前記第1の中継装置は、前記第2のネットワークにおいて前記第1のカプセル化がされたデータの第1の識別子と、前記第2の中継装置との間で授受される非カプセル化データの第3の識別子と、の間で変換を行い、
前記第2の中継装置は、前記第3のネットワークにおいて前記第2のカプセル化がされたデータの第2の識別子と、前記第1の中継装置との間で授受される前記非カプセル化データの前記第3の識別子と、の間で変換を行う、
ネットワークシステム。
少なくとも一部は仮想ネットワーク上の仮想マシンにより構成される第1のネットワークと接続され、L2 over L3カプセル化方式により第1のカプセル化が行われた第1のカプセル化データを転送する第2のネットワークと、
前記第2のネットワークと接続され、L2 over L2カプセル化方式により第2のカプセル化が行われた第2のカプセル化データを転送する第3のネットワークと、からなり、
前記第2のネットワークと前記第3のネットワークとを接続し、前記第1のカプセル化に係る処理および前記第2のカプセル化に係る処理を行う中継装置を有し、
前記中継装置は、前記第2のネットワークにおいて前記第1のカプセル化がされたデータの第1の識別子と、前記第3のネットワークにおいて前記第2のカプセル化がされたデータの第2の識別子と、の間で変換を行う、
ネットワークシステム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、モバイルネットワークシステムでは、EPC(Evolved Packet Core)などのコアネットワークを構成する装置の故障等により、EPCを別の拠点に移動させるなどの構成変更が必要となる場合がある。この場合、eNodeB(evolved Node B:基地局、以下では「eNB」と記載する場合がある)側でのEPCのIPアドレス等の設定変更を回避する必要がある。
【0005】
従来は、例えば、以下の様な煩雑な手順がとられていた。まず、EPCの移動先拠点に移動元拠点と同様のIPネットワークのセグメントを手動で構築する。そして、IPアドレス等の設定は移動元拠点のままに設定してEPCを移動する。そして、モバイルバックホール(MBH:Mobile BackHaul)におけるIPコア網のルーター間で、移動先拠点の新しいIPセグメントのルーティング情報を交換する。このような煩雑な手順が必要となるのは、EPCやeNBで使用しているIPアドレスをMBHにおいてルーティングで使用しているためである。これに対して、例えば、特許文献1に記載されているようなVXLANなどのカプセル化技術を用いることで、EPCやeNBで使用しているIPアドレスをMBHのルーティング処理から分離させることが可能である。
【0006】
この場合、VXLANの終端のVTEP(VXLAN Tunnel End Point)間の通信において、L2であれば単純なブロードキャストとなるものがL3でのマルチキャストとなってしまう。これは、VXLANがL2 over L3という特性を有するネットワーク(Multipoint NW over point-to-point NW)であることによる。したがって、VTEP間の総当たりの処理となり、マルチキャストグループの必要数はVTEPの数に応じて指数関数的に増加してしまう。ここで、例えばMBH全体をVXLANによりカプセル化する構成を考えた場合、接続するeNBの数が多くなる。その結果、VTEPの数が増加してしまい、マルチキャストの負荷が増大してスケーラビリティに課題が生じ得る。
【0007】
本発明は、このようなことに鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、VXLANを適用した広域ネットワークにおいて、VXLAN領域でのVTEP間のマルチキャストの負荷を低減するネットワークシステムおよび中継装置を提供することにある。
【0008】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、以下のとおりである。
【0010】
本発明の代表的な実施の形態によるネットワークシステムは、少なくとも一部は仮想ネットワーク上の仮想マシンにより構成される第1のネットワークと接続され、L2 over L3カプセル化方式により第1のカプセル化が行われた第1のカプセル化データを転送する第2のネットワークと、前記第2のネットワークと接続され、L2 over L2カプセル化方式により第2のカプセル化が行われた第2のカプセル化データを転送する第3のネットワークと、からなる。また、前記第2のネットワークに属して前記第3のネットワークと接続し、前記第1のカプセル化に係る処理を行う第1の中継装置と、前記第3のネットワークに属して前記第2のネットワークと接続し、前記第2のカプセル化に係る処理を行う第2の中継装置と、を有する。
【0011】
そして、前記第1の中継装置は、前記第2のネットワークにおいて前記第1のカプセル化がされたデータの第1の識別子と、前記第2の中継装置との間で授受される非カプセル化データの第3の識別子と、の間で変換を行う。また、前記第2の中継装置は、前記第3のネットワークにおいて前記第2のカプセル化がされたデータの第2の識別子と、前記第1の中継装置との間で授受される前記非カプセル化データの前記第3の識別子と、の間で変換を行う。
【発明の効果】
【0012】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0013】
すなわち、本発明の代表的な実施の形態によれば、VXLANを適用した広域ネットワークにおいて、VXLAN領域でのVTEP間のマルチキャストの負荷を低減することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一部には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。一方で、ある図において符号を付して説明した部位について、他の図の説明の際に再度の図示はしないが同一の符号を付して言及する場合がある。
【0016】
また、以下においては、本発明の特徴を分かり易くするために、従来の技術と比較して説明する。なお、以下では、LTE(Long Term Evolution)等のモバイルネットワークシステムを例として説明するが、本発明の適用対象はこれに限られない。末端のアクセスネットワークと、中心部のコアネットワーク(バックボーン回線)、およびこれらをつなぐネットワークであるバックホールを有する構成の広域ネットワークに適宜適用することができる。
【0017】
<概要>
図5は、従来のモバイルネットワークシステムの構成例とEPCの移動の例について概要を示した図である。
図5に示されたモバイルネットワークは、末端のアクセスネットワークである複数のeNBネットワーク11(図中では、eNBネットワークA(11a)、B(11b)で示される)と、コアネットワークを構成する複数の物理EPC装置45、およびこれらをつなぐMBH50からなる。物理EPC装置45は、データセンター等の複数のEPC拠点40(図中ではEPC拠点A(40a)、B(40b)で示される)に設置されている。eNBネットワーク11には複数のeNB10が属している。
【0018】
MBH50は、L2ネットワークであるL2エントランス20と、L3ネットワークであるIPコア網30とにより構成されるネットワークである。L2エントランス20は、複数のエッジスイッチ21(図中ではエッジスイッチ21a〜21cで示される)を有する。また、IPコア網30は、複数のエッジルーター31(図中ではエッジルーター31a〜31c)を有する。
【0019】
L2エントランス20のエッジスイッチ21a、21bには、それぞれeNBネットワークA(11a)、B(11b)内のeNB10が収容されている。また、IPコア網30のエッジルーター31a、31bにはEPC拠点A(40a)、B(40b)のデータセンター(DC)ルーター41a、41bがそれぞれ接続されている。また、L2エントランス20とIPコア網30とは、上位のエッジスイッチ21cおよび下位のエッジルーター31cを介して接続されている。このエッジルーター31cは、eNB10のデフォルトゲートウェイとして機能する。
【0020】
L2エントランス20は、例えば、広域イーサネットの実装に用いられる技術の一つであるPBB(Provider Backbone Bridging)により構成することができる。PBBは、IEEE802.1ahで標準化されている。この場合、各エッジスイッチ21は、いわゆるMAC−in−MAC方式によりeNB10のMAC(Media Access Control)フレームをエッジスイッチ21のMACフレームでカプセル化する等のPBB機能を有するPBBエッジスイッチにより構成される。
【0021】
ここで、例えば、EPC拠点A(40a)内のIPネットワークのセグメントA(46a)上に各種の物理EPC装置45によりEPCが構築されており、各eNB10がMBH50を介してEPC拠点A(40a)上のEPCにアクセスしている状態で、何らかの障害等により物理EPC装置45が稼働不可になった場合を考える。このとき、物理EPC装置45により実現されるEPCの機能を別のEPC拠点B(40b)に速やかに移動させる、すなわちEPC拠点B(40b)上に新たに同様の物理EPC装置45を構築する必要がある。
【0022】
この場合、EPCの移動の前後でeNB10側のIPアドレスやデフォルトゲートウェイ(
図5の例ではエッジルーター31c)等のネットワーク設定の変更を回避する必要があることから、以下の様な煩雑な作業が必要となる。すなわち、まず、移動先のEPC拠点B(40b)において移動元のEPC拠点A(40a)と同様の環境(物理EPC装置45およびセグメントA(46a)のネットワーク環境)を手動で構築する。この場合、各物理EPC装置45のIPアドレス等のネットワーク設定は移動元のEPC拠点A(40a)と同じセグメントA(46a)のままとなる。
【0023】
そして、EPC拠点B(40b)内にセグメントA(46a)のデフォルトゲートウェイ(
図5の例ではDCルーター41b)を手動で作成する。さらに、DCルーター41bおよび各エッジルーター31間でEPC拠点B(40b)のセグメントA(46a)のルーティング情報を新たに交換することが必要となる。これにより、各eNB10はEPC拠点B(40b)上のEPC(物理EPC装置45)にアクセスすることが可能となる。
【0024】
このような煩雑な処理が必要となる原因は、MBH50において、EPCやeNB10で使用しているIPアドレスに基づいてルーティングを行っているためである。これに対する解決策として、上述したように、VXLAN等のカプセル化技術を用いることで、EPCやeNB10で使用しているIPアドレスをMBH50でのルーティング処理から分離させることが可能である。
【0025】
さらに、本実施の形態では、物理的なEPCの移動を容易にし、またその影響を隠蔽することを可能とするため、EPCを仮想ネットワーク上に構築した仮想マシンにより構成する(以下ではこれを「vEPC」と記載する場合がある)ものとする。
【0026】
図6は、仮想マシンおよび仮想ネットワークにより構成したEPC環境にVXLANを適用した場合の例について概要を示した図である。図中では、拠点が異なるものも含む複数の物理サーバ47と、これらが接続されるIPネットワークである物理ネットワーク60とからなる環境を示している。この環境において、複数の物理サーバ47を含んで構築されたvEPC仮想ネットワーク44(図中ではVNID=Aで識別されるvEPC仮想ネットワークA(44a)、およびVNID=Bで識別されるvEPC仮想ネットワークB(44b)で示される)上に複数のvEPC43が構築されている。仮想マシンや仮想ネットワークの構築については公知の技術を適宜利用することができる。
【0027】
ここで、各物理サーバ47が接続される物理ネットワーク60においてVXLANを適用する。これにより、図示するように、vEPC仮想ネットワーク44およびvEPC43からなる仮想ネットワーク領域と、各物理サーバ47等に設けられたVTEP42を終端とするVXLAN領域との間でネットワークの管理を分離することができる。
【0028】
すなわち、各VTEP42を含むVXLAN領域内の各VTEP間でL3での到達可能性が確保されていれば、例えば、仮想マシンであるvEPC43の生成や他の物理サーバ47への移動があった場合でも、同じvEPC仮想ネットワーク44内のものであれば、物理ネットワーク60の設定内容には影響が及ばず設定変更等が不要となる。これにより、仮想ネットワーク領域において物理ネットワーク60(例えば、
図5の例ではIPコア網30)のルーティング仕様の影響を受けずに構成の自由度を高めることができる。なお、このようなVXLANの適用による仮想マシンおよび仮想ネットワーク環境の管理技術についても公知の技術を適宜利用することができる。
【0029】
一方で、例えば
図5に示したような環境において、
図6に示したようにEPC環境をvEPC仮想ネットワーク44上に構築したvEPC43により構成し、MBH50全体にVXLANを適用してカプセル化する構成とした場合、VTEP間のマルチキャストの扱いに課題が生じ得る。すなわち、VXLANがL2 over L3という特性を有するネットワークであることから、VXLAN領域内でのVTEP間の通信において、L2であれば単純なブロードキャストとなるものがL3でのマルチキャストとなってしまう。
【0030】
図7は、vEPCの環境にVXLANを適用した場合の課題の例について概要を示した図である。
図7の例では、EPC拠点40(図中ではEPC拠点A(40a)、B(40b)で示される)においてvEPC仮想ネットワーク44およびvEPC43により構成されたEPC環境を有している。このEPC環境において、MBH50全体、すなわちvEPC43からeNB10に至る範囲をVXLANによりカプセル化する構成とした場合、eNB10の数に応じてeNB10側のVTEP51が設けられる。
【0031】
ここで、VTEP(VTEP42およびVTEP51)間のマルチキャストは図示するようなメッシュ状の総当たりとなる。すなわち、VTEPの数をnとした場合、マルチキャストグループの必要数は2
nとなり、VTEPの数が多くなると指数関数的に増加する。したがって、MBH50全体にVXLANを適用した場合、eNB10の数に応じてVTEP51の数も多くなり、マルチキャストグループの必要数が増加する。その結果、負荷が増大してシステムのスケーラビリティに課題が生じ得る。
【0032】
一方、
図7のような構成では、eNB10についてはvEPC43と異なり移動することが想定されないため、VXLANによるカプセル化のメリットはない。しかし、vEPC43と通信するためにはどこかでVXLANのカプセル化を行うことが必要となるという課題も有する。
【0033】
そこで、本実施の形態のネットワークシステムでは、MBH50全体にVXLANを適用するのではなく、vEPC43側の一部にのみVXLANを適用したL3のネットワーク(第1のネットワーク)として、vEPC仮想ネットワーク44内でのvEPC43の移動等に対応可能とする。さらに、eNB10側の部分はPBB等によりカプセル化したL2のネットワーク(第2のネットワーク)としてこれらを組み合わせる。これにより、EPC拠点40間でのvEPC43の移動や生成に対してVXLANによるカプセル化のメリットを受ける。さらに、移動しないeNB10側までVXLANを適用しないことで、VXLANでのマルチキャストの範囲(VTEPの数)を小さくし、マルチキャストの負荷を低減してスケーラビリティを確保する。
【0034】
<全体構成>
図1は、本発明の一実施の形態であるネットワークシステムの構成例とカプセル化によるトンネルイメージの例について概要を示した図である。
図1の左側に示した構成例では、
図5に示した従来の構成と異なり、EPC拠点40(図中ではEPC拠点A(40a)、B(40b)により示される)ではvEPC仮想ネットワーク44(第1のネットワーク)上に構築されたvEPC43(図中ではvEPC43a、43bにより示される)を含む形でEPC環境が構成されている。
【0035】
そして、MBH50のうちvEPC43側にあるIPコア網30からvEPC仮想ネットワーク44に至る領域(第2のネットワーク)にはVXLANが適用され、これに伴いVXLAN領域の両終端にはVTEPが設けられている。すなわち、IPコア網30がL2エントランス20と接続する箇所のエッジルーター31cはVTEPとなる。また、各EPC拠点40においてvEPC仮想ネットワーク44に接続する箇所にはVTEP42(図中ではVTEP42a、42bにより示される)が設けられる。このようにMBH50の上位側(vEPC43側)の一部にのみVXLANを適用し、下位側(eNB10側)のL2エントランス20(第3のネットワーク)をPBBにより構成する。これにより、
図7に示すような従来の構成と異なり、下位側のVTEPをエッジルーター31cに集約して数を大きく減らすことができる。
【0036】
この構成では、
図1の右側に示したトンネルイメージに示すように、例えば、eNBネットワーク11からの通信は、L2エントランス20の領域(第3のネットワーク)ではPBB(L2 over L2カプセル化方式)によりカプセル化(第2のカプセル化)される。そして、eNBネットワーク11はISID(Service Instance ID)により識別される。一方、IPコア網30からvEPC仮想ネットワーク44の領域(第2のネットワーク)ではVXLAN(L2 over L3カプセル化方式)によりカプセル化(第1のカプセル化)される。そして、vEPC仮想ネットワーク44はVNIDにより識別される。本実施の形態では、後述するようにPBBのISIDとVXLANのVNIDとを変換・マッピングすることでシームレスな中継を実現する。
【0037】
この構成では、vEPC仮想ネットワーク44内でのvEPC43の移動があった場合でも、MBH50において何らの設定変更や操作を要することなく、ARP(Address Resolution Protocol)によりネットワーク全体における切り替えが可能となる。また、eNB10から通信対象のvEPC43が存在するEPC拠点40に直接通信することが可能であり、EPC拠点40間で通信を分散させることも可能である。
【0038】
<PBBとVXLANとの変換>
図2は、PBBのISIDとVXLANのVNIDとのマッピングの例について概要を示した図である。図中では、VXLANフレームフォーマット35とPBBフレームフォーマット25、およびこれらにおけるマッピングの内容を示している。
【0039】
図の上側のVXLAN領域では、vEPC仮想ネットワーク44でのL2のユーザフレーム(CDA(Customer Destination Address)、CSA(Customer Source Address)、DATA)に対して、VXLANのヘッダーも付加した上でIPプロトコルによるカプセル化を行ったVXLANフレームフォーマット35が示されている。IPプロトコルのヘッダーにはVXLAN中継で使用するL3の情報が含まれる。一方、図の下側のPBB領域では、eNB10側の通信におけるL2のユーザフレームに対して、イーサネット(登録商標、以下同様)プロトコルによるカプセル化を行ったPBBフレームフォーマット25の例が示されている。イーサネットのヘッダーにはPBB中継で使用するL2の情報が含まれる。VXLANおよびPBBのいずれのカプセル化も、L2のユーザフレームをカプセル化するという点では共通している。
【0040】
そして、いずれの場合も、カプセル化した後のデータにおいて、カプセル化する前のデータを発した仮想マシンや端末がどの仮想ネットワークに属するかを識別することができなければならない。この識別を可能とするのがVXLANではVNID(第1の識別子)であり、PBBではISID(第2の識別子)である。VXLAN領域では、例えば、VXLANによる仮想マシンや仮想ネットワークについての公知の管理技術やソリューションを利用することでvEPC仮想ネットワーク44をVNIDにマッピングすることが可能である。また、PBB領域では、カプセル化する前においてeNB10が属する仮想ネットワーク(VLAN)を識別するCVID(Customer VLAN-ID、12ビット)を用いてISIDを決定し、マッピングすることができる。
【0041】
PBBのISIDおよびVXLANのVNIDはいずれも24ビットの識別子である。したがって、これらの間で変換・マッピングを行うことで、PBB領域とVXLAN領域のシームレスな中継を実現することができる。
【0042】
変換・マッピングは、1台の中継装置で直接行う構成とすることも可能である(図中の「マッピング(1)」)。すなわち、PBB領域からVXLAN領域への通信の場合は、1台の中継装置が、L2エントランス20から受信したPBBのカプセル化データのカプセル化を解除し、ISIDをVNIDに変換した上でVXLANのカプセル化を行ってIPコア網30に送信する。VXLAN領域からPBB領域への通信の場合はその逆の変換となる。
【0043】
図3は、1台の中継装置でマッピングを行う場合の中継装置の構成例について概要を示した図である。この場合、VTEPとなる中継装置は、例えば、ルーターとL2スイッチの機能を備えたL3スイッチ32により構成される。L3スイッチ32は、例えば、PBB領域であるL2エントランス20側の下位ポート321と、VXLAN領域であるIPコア網30側の上位ポート322を有する。また、フレームやパケットを中継する中継処理部323を有する。さらに、PBBとVXLANのデータのカプセル化/非カプセル化および
図2に示したマッピング(1)の処理を行うPBB/VXLANカプセル化処理部324を有する。
【0044】
中継処理部323は、例えば、下位ポート321から受信したPBBのカプセル化データについて、PBB/VXLANカプセル化処理部324によってカプセル化を解除する。PBB/VXLANカプセル化処理部324は、カプセル化を解除したデータに対して、ISID/VNID変換テーブル325を参照してISIDをVNIDに変換する。ISID/VNID変換テーブル325には、ISIDとVNIDの対応関係を保持している。その後、PBB/VXLANカプセル化処理部324によりVXLANのカプセル化が行われる。そして、中継処理部323は、カプセル化データを上位ポート322を介してVXLAN領域に送信する。
【0045】
一方、
図1に示した本実施の形態の構成のように、VXLAN領域でのVTEPとなるエッジルーター31c(第1の中継装置)と、PBB領域でのエッジスイッチ21c(第2の中継装置)とを個別に設けて、これらの双方で変換・マッピングを行う構成とすることも可能である。この場合、エッジスイッチ21cがPBBのデータへのカプセル化および解除を行い、エッジルーター31cがVXLANのデータへのカプセル化および解除を行う。
【0046】
この場合は、例えば
図2に示すように、エッジスイッチ21cとエッジルーター31c(VTEP)との間で授受される非カプセル化データのユーザフレームに中間CVID(第3の識別子)を設定する。そして、エッジスイッチ21cがISIDと中間CVIDをマッピングし、エッジルーター31cがVNIDと中間CVIDをマッピングする。これにより、中間CVIDを介して間接的にISIDとVNIDを変換・マッピングすることができる(図中の「マッピング(2a)、(2b)」)。
【0047】
図4は、2台の中継装置でマッピングを行う場合の中継装置の構成例について概要を示した図である。エッジスイッチ21c(第2の中継装置)は、例えば、PBB領域であるL2エントランス20側の下位ポート211と、エッジルーター31c側の上位ポート212を有する。また、フレームを中継するスイッチング処理部213を有する。さらに、PBBのデータのカプセル化/非カプセル化および
図2に示したマッピング(2a)の処理を行うPBBカプセル化処理部214を有する。
【0048】
また、エッジルーター31c(第1の中継装置)は、例えば、エッジスイッチ21c側の下位ポート311と、VXLAN領域であるIPコア網30側の上位ポート312を有する。また、パケットを中継するルーティング処理部313を有する。さらに、VXLANのデータのカプセル化/非カプセル化および
図2に示したマッピング(2b)の処理を行うVXLANカプセル化処理部314を有する。
【0049】
エッジスイッチ21cのスイッチング処理部213は、例えば、下位ポート211から受信したPBBのカプセル化データについて、PBBカプセル化処理部214によってカプセル化を解除する。PBBカプセル化処理部214は、カプセル化を解除したデータに対して、ISID/中間CVID変換テーブル215を参照してISIDを中間CVIDに変換する。ISID/中間CVID変換テーブル215には、ISIDと中間CVIDの対応関係を保持している。そして、スイッチング処理部213は、非カプセル化データを上位ポート212を介してエッジルーター31cに送信する。
【0050】
エッジルーター31cのルーティング処理部313は、例えば、下位ポート311を介してエッジスイッチ21cから受信した非カプセル化データに対して、VNID/中間CVID変換テーブル315を参照して中間CVIDをVNIDに変換する。VNID/中間CVID変換テーブル315には、VNIDと中間CVIDの対応関係を保持している。その後、VXLANカプセル化処理部314によりVXLANのカプセル化が行われる。そして、ルーティング処理部313は、カプセル化データを上位ポート312を介してVXLAN領域に送信する。
【0051】
なお、ISIDとVNIDがともに24ビットであるのに対し、中間CVIDはVLANのCVIDと同様に12ビットであるため、理論上は中間CVIDの数が足りなくなる可能性がある。しかしながら、実際のネットワークシステム1では、ISIDとVNIDを変換するポイントは複数設けられ(例えば、各都道府県に1つなど)、中間CVIDはネットワークシステム1全体でユニークである必要はなく、変換ポイント内でユニークであればよいことから、実際上はほぼ問題とはならない。
【0052】
以上に説明したように、本発明の一実施の形態であるネットワークシステム1によれば、MBH50全体にVXLANを適用するのではなく、vEPC43側の一部にのみVXLANを適用してL3のネットワークとする。さらに、eNB10側の部分はPBB等によりカプセル化したL2のネットワークとして、これらをISIDとVNIDとの間の変換・マッピングを行うことにより組み合わせる。これにより、vEPC仮想ネットワーク44内でのvEPC43の移動等に対してVXLANによるカプセル化のメリットを受けることができる。さらに、移動しないeNB10側までVXLANを適用しないことで、VXLANでのマルチキャストの範囲(VTEPの数)を小さくし、マルチキャストの負荷を低減してスケーラビリティを確保することができる。
【0053】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。例えば、上記の実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、上記の実施の形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0054】
例えば、ネットワークシステム1の構成は
図1に示したものに限られず、他の構成にも適用することができる。例えば、
図1に示した構成のようにeNB10が直接vEPC43と通信し、デフォルトゲートウェイを有さないという構成に限られない。EPC拠点40のvEPC仮想ネットワーク44に対して、仮想マシンにより仮想ルーターを設けてこれをデフォルトゲートウェイとし、eNB10からの通信を収容する仮想ネットワークを設ける構成とすることもできる。この場合、eNB10からの通信はいったん仮想ルーターが存在するEPC拠点40に中継された後、vEPC仮想ネットワーク44上のvEPC43へルーティングされる。
【0055】
また、L2エントランス20の上位側のエッジスイッチ21cは、例えば、PBBによりカプセル化されたデータのISIDの値に応じて、上記の実施の形態と同様にVTEP32にデータを中継してvEPC43に対して通信を行う場合と、
図5に示した例におけるエッジルーター31cにデータを中継して、VXLANによるカプセル化を行わずに既存の物理EPC装置45に対して通信を行う場合とを振り分ける構成とすることも可能である。すなわち、
図1に示した構成と
図5に示した既存の構成とを混在させたネットワークシステム1とすることも可能である。
【0056】
また、
図1に示した構成のようにIPコア網30から上位側にVXLANを適用してカプセル化を行う構成に限られない。例えば、さらに上位のvEPC仮想ネットワーク44とIPコア網30との間にのみVXLANを適用するとともに、IPコア網30に代えてMBH50のコア網についてもPBBにより構成するようにしてもよい。これにより、VXLANのマルチキャストが行われる範囲(VTEPの数)をさらに小さくすることも可能である。
【0057】
また、上記の実施の形態では、vEPC43やeNB10で使用しているIPアドレスをMBH50でのルーティング処理から分離するために利用するカプセル化技術としてVXLANを用いているが、これに限られない。例えば、EVPN(Ethernet(登録商標) VPN)等の他のカプセル化技術を用いても同様の思想に基づいてネットワークシステム1を構成することが可能である。