特許第6574154号(P6574154)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6574154
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】排気処理装置
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/08 20060101AFI20190902BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20190902BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20190902BHJP
【FI】
   F01N3/08 B
   F01N3/28 301H
   F01N3/28 301C
   B01D53/94 222
   B01D53/94ZAB
   B01D53/94 400
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-181831(P2016-181831)
(22)【出願日】2016年9月16日
(65)【公開番号】特開2018-44527(P2018-44527A)
(43)【公開日】2018年3月22日
【審査請求日】2018年11月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】濱田 達也
(72)【発明者】
【氏名】松下 智彦
【審査官】 村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−14387(JP,A)
【文献】 特開2004−197746(JP,A)
【文献】 特表2016−508580(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0336052(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/00−11/00
B01D 53/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンに接続される排気管と、
前記排気管内に設けられ、排気ガス中の窒素酸化物を浄化するための排気浄化触媒と、
前記排気管における前記排気浄化触媒の上流の部分に設けられ、前記エンジンの動作中に閉弁状態から開弁状態に切り替えられることによって尿素水を前記排気管内に噴射する、第1噴射弁および第2噴射弁と、
前記尿素水を貯留するタンクと、
一方端が前記タンクに接続され、他方端が途中の分岐点から2つに分岐して前記第1噴射弁および前記第2噴射弁の各々に接続される配管と、
前記配管のうちの前記分岐点から前記第1噴射弁までの第1経路と、前記分岐点から前記第2噴射弁までの第2経路とのうちの少なくとも一方の経路に設けられ、前記経路の通路断面積の調整が可能な流量調整弁と、
前記第1噴射弁および前記第2噴射弁の各々と前記タンクとの間で前記配管を経由して前記尿素水を流通させるためのポンプと、
前記エンジンの停止後に、前記第1噴射弁および前記第2噴射弁をいずれも前記開弁状態にし、前記第1経路内および前記第2経路内の前記尿素水を前記タンクに吸い戻すように前記ポンプを制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記ポンプの作動を開始してから前記第1経路内の前記尿素水が前記分岐点まで吸い戻されるまでの第1期間と、前記ポンプの作動を開始してから前記第2経路内の前記尿素水が前記分岐点まで吸い戻されるまでの第2期間とが同じになるように前記流量調整弁を用いて前記通路断面積を調整する、排気処理装置。
【請求項2】
前記排気処理装置は、
前記第1経路上に設けられ、前記第1経路内の第1圧力を検出するための第1圧力センサと、
前記第2経路上に設けられ、前記第2経路内の第2圧力を検出するための第2圧力センサとをさらに備え、
前記流量調整弁は、前記第1圧力センサと前記第1噴射弁との間、および、前記第2圧力センサと前記第2噴射弁との間のうちの少なくとも一方に設けられ、
前記制御装置は、前記第1圧力と前記第2圧力との差または比が予め定められた値になるように前記流量調整弁を用いて前記通路断面積を調整する、請求項1に記載の排気処理装置。
【請求項3】
前記排気処理装置は、
前記第1経路上に設けられ、前記第1経路内の前記尿素水の第1流量を検出するための第1流量センサと、
前記第2経路上に設けられ、前記第2経路内の前記尿素水の第2流量を検出するための第2流量センサとをさらに備え、
前記流量調整弁は、前記第1流量センサと前記第1噴射弁との間、および、前記第2流量センサと前記第2噴射弁との間のうちの少なくとも一方に設けられ、
前記制御装置は、前記第1流量と前記第2流量との差または比が予め定められた値になるように前記流量調整弁を用いて前記通路断面積を調整する、請求項1に記載の排気処理装置。
【請求項4】
前記予め定められた値は、前記第1経路内の前記尿素水の容量と前記第2経路内の前記尿素水の容量とに基づいて設定される、請求項2または3に記載の排気処理装置。
【請求項5】
前記排気管は、前記エンジンに並列的に接続される、第1排気管および第2排気管とを含み、
前記第1噴射弁は、前記第1排気管に設けられ、
前記第2噴射弁は、前記第2排気管に設けられる、請求項1〜4のいずれかに記載の排気処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンが排出する排気ガスを浄化する排気処理装置のエンジン停止時の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ディーゼルエンジン等のエンジンが排出する排気ガスのうちの窒素酸化物(NOx)を低減するために排気管内のSCR(Selective Catalyst Reduction)触媒の上流に設けられる噴射弁を用いて尿素水を噴射して、排気ガス中の窒素酸化物を還元する技術が公知である。このような尿素水は、−11℃を下回ると凍結する場合がある。尿素水が凍結すると配管が詰まり、次回のエンジン始動時に尿素水の噴射に支障をきたすことになる。また、尿素水は、高温で劣化する特性があるため、高負荷運転後のエンジン停止時に尿素水が高温の状態で維持されると、劣化が促進する場合がある。
【0003】
このような問題に対して、たとえば、特開2010−255608号公報(特許文献1)には、エンジンの停止後に尿素水を噴射弁に供給するためのポンプを逆転動作させて、配管内に残留する尿素水をタンクに戻す技術が開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−255608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、尿素水を噴射する噴射弁は、複数個設けられる場合がある。たとえば、エンジンがV型のエンジンである場合には、2本の排気管が並列的にエンジンに接続される。そのため、2本の排気管の各々に尿素水を噴射するために噴射弁を2個設ける必要がある。噴射弁が複数個設けられる場合には、配管、ポンプあるいはタンクを個別に設けるとコストや重量等が増加することになる。そのため、配管を途中で分岐させて各噴射弁に接続するなどして、配管の一部、ポンプおよびタンクを共通の構成にすることが考えられる。
【0006】
しかしながら、配管の分岐点から各噴射弁までの経路においては、単純に配管長さが異なる場合や、配管長さが仮に同じでも、レイアウトの差異あるいは噴射弁の噴孔の大きさのばらつき等により圧力損失が異なる場合がある。そのため、ポンプの逆転動作により尿素水をタンクに吸い戻すときに、各噴射弁から分岐点までの尿素水の吸い戻しを同時に完了することは困難となる。また、配管の分岐点から各噴射弁までの経路のうちの一方の経路内の尿素水の吸い戻しが先に完了すると、その後は他方の経路内に残留する尿素水よりも流体粘性の低い一方の経路内のエアが吸い出されることとなり、他方の経路内の尿素水を吸い戻すことができない場合がある。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであって、その目的は、尿素水を噴射する噴射弁が複数個設けられる場合に、エンジンの停止時に各噴射弁に接続される配管内に残留する尿素水を確実にタンクに戻す排気処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明のある局面に係る排気処理装置は、エンジンに接続される排気管と、排気管内に設けられ、排気ガス中の窒素酸化物を浄化するための排気浄化触媒と、排気管における排気浄化触媒の上流の部分に設けられ、エンジンの動作中に閉弁状態から開弁状態に切り替えられることによって尿素水を排気管内に噴射する、第1噴射弁および第2噴射弁と、尿素水を貯留するタンクと、一方端がタンクに接続され、他方端が途中の分岐点から2つに分岐して第1噴射弁および第2噴射弁の各々に接続される配管と、配管のうちの分岐点から第1噴射弁までの第1経路と、分岐点から第2噴射弁までの第2経路とのうちの少なくとも一方の経路に設けられ、経路の通路断面積の調整が可能な流量調整弁と、第1噴射弁および第2噴射弁の各々とタンクとの間で配管を経由して尿素水を流通させるためのポンプと、エンジンの停止後に、第1噴射弁および第2噴射弁をいずれも開弁状態にし、第1経路内および第2経路内の尿素水をタンクに吸い戻すようにポンプを制御する制御装置とを備える。制御装置は、ポンプの作動を開始してから第1経路内の尿素水が分岐点まで吸い戻されるまでの第1期間と、ポンプの作動を開始してから第2経路内の尿素水が分岐点まで吸い戻されるまでの第2期間とが同じになるように流量調整弁を用いて通路断面積を調整する。
【0009】
このようにすると、エンジンの停止後に、第1期間と第2期間とが同じになるように通路断面積が調整されるので、第1噴射弁から分岐点までの尿素水と第2噴射弁から分岐点までの尿素水とを並行してタンクに吸い戻すことができる。そのため、配管内の尿素水の凍結や劣化等を抑制することができる。
【0010】
好ましくは、排気処理装置は、第1経路上に設けられ、第1経路内の第1圧力を検出するための第1圧力センサと、第2経路上に設けられ、第2経路内の第2圧力を検出するための第2圧力センサとをさらに備える。流量調整弁は、第1圧力センサと第1噴射弁との間、および、第2圧力センサと第2噴射弁との間のうちの少なくとも一方に設けられる。制御装置は、第1圧力と第2圧力との差または比が予め定められた値になるように流量調整弁を用いて通路断面積を調整する。
【0011】
このようにすると、エンジンの停止後に、ポンプを用いて第1経路内および第2経路内の尿素水をタンクに吸い戻す場合に、第1期間と第2期間とが同じになるように通路断面積を調整することができる。
【0012】
さらに好ましくは、排気処理装置は、第1経路上に設けられ、第1経路内の尿素水の第1流量を検出するための第1流量センサと、第2経路上に設けられ、第2経路内の尿素水の第2流量を検出するための第2流量センサとをさらに備える。流量調整弁は、第1流量センサと第1噴射弁との間、および、第2流量センサと第2噴射弁との間のうちの少なくとも一方に設けられる。制御装置は、第1流量と第2流量との差または比が予め定められた値になるように流量調整弁を用いて通路断面積を調整する。
【0013】
このようにすると、エンジンの停止後に、ポンプを用いて第1経路内および第2経路内の尿素水をタンクに吸い戻す場合に、第1期間と第2期間とが同じになるように通路断面積を調整することができる。
【0014】
さらに好ましくは、予め定められた値は、第1経路内の尿素水の容量と第2経路内の尿素水の容量とに基づいて設定される。
【0015】
このようにすると、エンジンの停止後に、ポンプを用いて第1経路内および第2経路内の尿素水をタンクに吸い戻す場合に、第1期間と第2期間とが同じになるように通路断面積を調整することができる。
【0016】
さらに好ましくは、排気管は、エンジンに並列的に接続される、第1排気管および第2排気管とを含む。第1噴射弁は、第1排気管に設けられる。第2噴射弁は、第2排気管に設けられる。
【0017】
このようにすると、エンジンの停止後に、第1排気管に設けられる第1噴射弁と、第2排気管に設けられる第2噴射弁と、第1噴射弁および第2噴射弁の各々とタンクとの間の配管とに残留する尿素水をタンクに吸い戻すことができる。
【発明の効果】
【0018】
この発明によると、尿素水を噴射する噴射弁が複数個設けられる場合に、エンジンの停止時に各噴射弁に接続される配管内に残留する尿素水を確実にタンクに戻す排気処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】エンジンおよび排気処理装置の構成を示す図である。
図2】配管長さと圧力損失との関係を説明するための図である。
図3】制御装置によって実行される制御処理の内容を示すフローチャートである。
図4】流量調整弁を用いた配管内の圧力の変化の一例を示すタイミングチャートである。
図5】本実施の形態における尿素水ポンプと流量調整弁との動作および差圧ΔPの変化の一例を示すタイミングチャートである。
図6】変形例における制御装置によって実行される制御処理の内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号が付されている。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰返されない。
【0021】
図1は、本実施の形態におけるエンジン10および排気系に設けられる排気処理装置2の構成を示す図である。
【0022】
エンジン10は、燃焼室内で燃料と空気の混合気を燃焼して作動する内燃機関である。本実施の形態において、エンジン10は、V型6気筒のディーゼルエンジンを一例として説明する。エンジン10の左右のバンクには3気筒ずつ設けられる。エンジン10の左右のバンクの気筒に接続される排気ポートには、第1エキゾーストマニホールド12および第2エキゾーストマニホールド14がそれぞれ接続される。第1エキゾーストマニホールド12には、第1排気管16の一方端が接続される。第2エキゾーストマニホールド14には、第2排気管18の一方端が接続される。
【0023】
そのため、エンジン10の作動時に生じる排気ガスは、排気ポートから第1エキゾーストマニホールド12を経由して第1排気管16を流通する経路と、排気ポートから第2エキゾーストマニホールド14を経由して第2排気管18を流通する経路とに分岐する。エンジン10の動作は、制御装置100により制御される。
【0024】
第1排気管16および第2排気管18には、排気処理装置2が設けられる。排気処理装置2は、第1触媒20と、第2触媒22と、第1噴射弁24と、第2噴射弁26と、第1SCR(Selective Catalytic Reduction)触媒28と、第2SCR触媒30と、尿素水タンク40と、尿素水ポンプ42、接続配管50と、第1圧力センサ54と、第2圧力センサ56と、流量調整弁58とを含む。
【0025】
第1触媒20と、第1噴射弁24と、第1SCR触媒28とは、第1排気管16に設けられる。第2触媒22と、第2噴射弁26と、第2SCR触媒30とは、第2排気管18に設けられる。
【0026】
第1触媒20および第2触媒22は、たとえば、DOC(Diesel Oxidation Catalyst)等の酸化触媒である。第1触媒20および第2触媒22の下流には、排気ガス中の粒子状物質を捕集するDPF(Diesel Particulate filter)がそれぞれ設けられてもよい。
【0027】
第1SCR触媒28は、第1噴射弁24から噴射(添加)される尿素水を用いてNOx等の窒素酸化物を還元することによってエンジン10から第1排気管16を流通する排気ガスを浄化する。第2SCR触媒30は、第2噴射弁から噴射(添加)される尿素水を用いて窒素酸化物を還元することによってエンジン10から第2排気管18を流通する排気ガスを浄化する。
【0028】
尿素水タンク40は、第1噴射弁24および第2噴射弁26の各々に供給するための尿素水を貯留する。尿素水タンク40と第1噴射弁24および第2噴射弁26の各々とは、接続配管50によって接続される。接続配管50の一方端は、尿素水タンク40に接続される。接続配管50の他方端は、途中で2つに分岐して第1噴射弁24および第2噴射弁26の各々に接続される。
【0029】
具体的には、接続配管50は、第1配管44と、第2配管46と、第3配管48とを含む。尿素水タンク40には、第3配管48の一方端が接続される。第3配管48の他方端には、第1配管44の一方端と第2配管46の一方端とが接続される。以下、第1配管44の一方端と第2配管46の一方端と第3配管48の他方端との接続箇所を分岐点52と記載する。第1配管44の他方端には第1噴射弁24が接続される。第2配管46の他方端には第2噴射弁26が接続される。
【0030】
尿素水タンク40には、尿素水タンク40内の尿素水を第1噴射弁24および第2噴射弁26に供給するための尿素水ポンプ42が設けられる。尿素水ポンプ42は、たとえば、モータ等を用いて動作する電動ポンプである。尿素水ポンプ42を動作させることによって尿素水タンク40と第1噴射弁24および第2噴射弁26の各々との間で尿素水を流通させることができる。尿素水ポンプ42は、制御装置100からの制御信号に応じて尿素水タンク40から第3配管48側に向けて尿素水を圧送する動作(以下、このような動作を正転動作と記載する)と、第3配管48側から尿素水タンク40に向けて尿素水を吸い戻す動作(以下、このような動作を逆転動作と記載する)とのうちのいずれかの動作を行なう。
【0031】
第1噴射弁24は、第1排気管16の第1触媒20と第1SCR触媒28との間の位置に設けられる。第1噴射弁24は、制御装置100からの制御信号に応じて内部の弁体が駆動することによって開弁状態と閉弁状態とのうちのいずれか一方の状態から他方の状態に切り替えられる。第1噴射弁24が開弁状態になると第1排気管16内と第1配管44とが連通状態になる。このとき、尿素水ポンプ42によって尿素水タンク40から尿素水が圧送される場合には、尿素水が尿素水タンク40から第3配管48および第1配管44を経由して流通し、第1噴射弁24から第1排気管16内に噴射される。第1噴射弁24が閉弁状態になると第1排気管16内と第1配管44とが遮断状態になるため、第1噴射弁24からの尿素水の噴射が停止される。
【0032】
第2噴射弁26は、第2排気管18の第2触媒22と第2SCR触媒30との間の位置に設けられる。第2噴射弁26は、制御装置100からの制御信号に応じて内部の弁体が駆動することによって開弁状態と閉弁状態とのうちのいずれか一方の状態から他方の状態に切り替えられる。第2噴射弁26が開弁状態になると第2排気管18内と第2配管46とが連通状態になる。このとき、尿素水ポンプ42によって尿素水タンク40から尿素水が圧送される場合には、尿素水が尿素水タンク40から第3配管48および第2配管46を経由して流通し、第2噴射弁26から第2排気管18内に噴射される。第2噴射弁26が閉弁状態になると第2排気管18内と第2配管46とが遮断状態になるため、第2噴射弁26からの尿素水の噴射が停止される。
【0033】
なお、本実施の形態において、第1噴射弁24および第2噴射弁26は、いずれも弁体の非駆動時(非通電時)において閉弁状態であるものとする。
【0034】
流量調整弁58は、第1配管44および第2配管46のうち少なくとも圧力損失が小さい方に設けられる。本実施の形態においては、第1配管44における圧力損失が第2配管46における圧力損失よりも小さいものとする。そのため、本実施の形態において、流量調整弁58は、第1配管44に設けられる。流量調整弁58は、第1圧力センサ54と第1噴射弁24との間に設けられる。流量調整弁58は、制御装置100からの制御信号に応じて弁体を駆動することによって通路断面積を調整可能な開閉弁である。流量調整弁58は、たとえば、ソレノイド等を用いて弁体を駆動するソレノイドバルブであってもよい。
【0035】
第1圧力センサ54は、流量調整弁58と分岐点52との間に設けられる。第1圧力センサ54は、第1配管44内の圧力(以下、第1圧力と記載する)P1を検出する。第1圧力センサ54は、検出した第1圧力P1を示す信号を制御装置100に出力する。
【0036】
第2圧力センサ56は、第2配管46に設けられる。第2圧力センサ56は、第2配管46内の圧力(以下、第2圧力と記載する)P2を検出する。第2圧力センサ56は、検出した第2圧力P2を示す信号を制御装置100に出力する。
【0037】
IGスイッチ102は、ユーザがエンジン10を始動または停止するための操作部材である。
【0038】
制御装置100は、いずれも図示しないが、CPU(Central Processing Unit)と、メモリと、入出力バッファ等とを含んで構成される。制御装置100は、各センサおよび機器からの信号、ならびにメモリに格納されたマップおよびプログラムに基づいて、エンジン10および排気処理装置2が所望の作動状態となるように各種機器を制御する。なお、各種制御については、ソフトウェアによる処理に限られず、専用のハードウェア(電子回路)により処理することも可能である。
【0039】
制御装置100には、第1圧力センサ54と、第2圧力センサ56とが接続される。制御装置100は、第1圧力センサ54、第2圧力センサ56およびIGスイッチ102から送信される信号の受信結果に基づいて、エンジン10、尿素水ポンプ42、第1噴射弁24、第2噴射弁26および流量調整弁58を制御する。
【0040】
制御装置100は、たとえば、エンジン10の作動中にユーザによりIGスイッチ102が操作された場合にはエンジン10の停止処理を開始してエンジン10を停止状態にする。また、制御装置100は、たとえば、エンジン10の停止中にユーザによりIGスイッチ102が操作された場合には、エンジン10の起動処理を開始してエンジン10を作動状態にする。
【0041】
以上のような構成を有する排気処理装置2においては、エンジン10の運転中には、接続配管50内の尿素水の圧力が所定圧力以上になるように尿素水ポンプ42を正転動作させる。そして、所定のタイミング(たとえば、排気ガスの温度が第1SCR触媒28および第2SCR触媒30において窒素酸化物を還元可能な温度範囲内になるタイミング)で第1噴射弁24および第2噴射弁26が開弁状態になる。これにより、第1噴射弁24から第1排気管16内に尿素水が噴射されることによって第1SCR触媒28において窒素酸化物が還元される。また、第2噴射弁26から第2排気管18内に尿素水が噴射されることによって第2SCR触媒30において窒素酸化物が還元される。
【0042】
一方、この尿素水は、約−11℃を下回ると凍結する場合がある。そのため、エンジン10の停止中に低温環境下において尿素水が凍結すると接続配管50内が凍結した尿素水で詰まった状態になり、次回のエンジン始動時に尿素水の噴射に支障をきたすことになる。また、尿素水は、高温で劣化する特性があるため、高負荷運転後のエンジン停止時に尿素水が高温の状態で維持されると、劣化が促進する場合がある。
【0043】
そのため、エンジン10が停止する場合には、尿素水ポンプ42を逆転動作させて接続配管50内の尿素水を吸い戻すことが考えられる。
【0044】
しかしながら、図1に示したように、配管を途中で分岐させて複数の噴射弁の各々に接続するなどして、複数の噴射弁に対して、配管の一部、ポンプおよびタンクを共通の構成とする場合には、尿素水ポンプ42を逆転動作させても接続配管50内の尿素水を吸い戻すことができない場合がある。これは、分岐点52から各噴射弁までの経路において配管長さやレイアウトに差異があることに起因する。
【0045】
分岐点52から各噴射弁までの経路においては、単純に配管長さが異なる場合や、配管長さが仮に同じでも、レイアウトの差異あるいは噴射弁の噴孔の大きさのばらつき等により圧力損失が異なる場合がある。
【0046】
図2は、配管のレイアウトと配管長さと圧力損失との関係を示す図である。図2の縦軸は圧力損失の大きさを示す。図2の横軸は配管長さを示す。図2の実線は、配管経路Aのレイアウト(曲げの数等によって規定される)の場合の配管長さと圧力損失との関係を示す。図2の一点鎖線は、配管経路Bのレイアウト(たとえば、配管経路Aよりも曲げの数が多い)の場合の配管長さと圧力損失との関係を示す。
【0047】
図2に示すように、たとえば、同じ配管経路A(すなわち、曲げの数が同じ)でも配管長さが異なる場合には、配管長さが長いほど圧力損失が大きくなる。一方、同じ配管長さでもレイアウト(曲げの数)が異なると、圧力損失が異なる。そのため、第1配管44(配管経路Aでかつ配管長さLa)と第2配管46(配管経路Bでかつ配管長さLb)とのように配管長さもレイアウトも異なる場合には、圧力損失の差(Pb−Pa)が大きく異なることになる。
【0048】
そのため、尿素水ポンプ42の逆転動作により尿素水タンク40に尿素水を吸い戻すときに、各噴射弁から分岐点52までの尿素水の吸い戻しを同時に完了することは困難となる。また、分岐点52から各噴射弁までの経路のうちの一方の経路内の尿素水の吸い戻しが先に完了すると、その後は他方の経路内に残留する尿素水よりも流体粘性の低い一方の経路内のエアが吸い出されることとなり、他方の経路内の尿素水を吸い戻すことができないこととなる。
【0049】
そこで、本実施の形態においては、制御装置100は、エンジン10の停止後に、第1噴射弁24および第2噴射弁26をいずれも開弁状態にし、分岐点52と第1噴射弁24との間の第1配管44内および分岐点52と第2噴射弁26との間の第2配管46内の尿素水を尿素水タンク40に吸い戻すように尿素水ポンプ42を制御する。さらに、制御装置100は、尿素水ポンプ42の作動を開始してから第1配管44内の尿素水が分岐点52まで吸い戻されるまでの第1期間と、尿素水ポンプ42の作動を開始してから第2配管46内の尿素水が分岐点52まで吸い戻されるまでの第2期間とが同じになるように流量調整弁58を用いて第1配管44の流量調整弁58が設けられる位置における通路断面積を調整する。
【0050】
このようにすると、エンジン10の停止後に、第1期間と第2期間とが同じになるように流量調整弁58の通路断面積が調整されるので、第1配管44内の尿素水と第2配管46内の尿素水とを並行して尿素水タンク40に吸い戻すことができる。
【0051】
本実施の形態において、制御装置100は、第1圧力P1と第2圧力P2との差が予め定められた値になるように流量調整弁58を用いて通路断面積を調整する。また、予め定められた値は、第1配管44内の尿素水の容量と第2配管46内の尿素水の容量とに基づいて設定される。
【0052】
本実施の形態においては、第1配管44内の尿素水の量と第2配管46内の尿素水の量とが同量である場合を想定する。この場合、第1圧力と第2圧力とは同じ圧力にすることによって、吸い戻し時における第1配管44から第3配管48への流量と、第2配管46から第3配管48への流量とを同じ量にすることができる。そのため、予め定められた値は、たとえば、ゼロである。すなわち、本実施の形態において、制御装置100は、第1圧力P1から第2圧力P2を減算した差圧ΔPがゼロになるように流量調整弁58を調整する。
【0053】
図3を参照して、本実施の形態に係る排気処理装置2の制御装置100で実行される制御処理について説明する。
【0054】
ステップ(以下、ステップをSと記載する)100にて、制御装置100は、IGオフされたか否かを判定する。制御装置100は、たとえば、エンジン10の運転中にIGスイッチ102が操作されることによってエンジン10が停止した場合にIGオフされたと判定する。IGオフされたと判定される場合(S100にてYES)、処理はS102に移される。
【0055】
S102にて、制御装置100は、尿素水ポンプ42を逆転動作させる。S104にて、制御装置100は、第1噴射弁24および第2噴射弁26を開弁状態にする。
【0056】
S106にて、制御装置100は、第1圧力センサ54および第2圧力センサ56を用いて第1圧力P1と第2圧力P2とを取得する。S108にて、制御装置100は、第1圧力P1から第2圧力P2を減算することによって差圧ΔPを算出する。
【0057】
S110にて、制御装置100は、差圧ΔPがゼロであるか否かを判定する。差圧ΔPがゼロでないと判定される場合(S110にてNO)、処理はS112に移される。
【0058】
S112にて、制御装置100は、調整制御を実行する。具体的には、制御装置100は、流量調整弁58の開度を予め定められた値だけ小さくする。なお、流量調整弁58の開度の初期値は、全開に対応した値(100%)である。
【0059】
尿素水ポンプ42の逆転動作中に流量調整弁58の開度を小さくすることによって第1配管44における圧力損失を増加させることができる。そのため、第1配管44内の第1圧力P1の大きさを負方向に増加させることができる。これにより、差圧ΔPをゼロに近づけることができる。
【0060】
たとえば、図4の実線に示す第1圧力P1を流量調整弁58の開度の調整によって図4の一点鎖線に示す第2圧力P2と同じになるようにすると、差圧ΔPをゼロにすることができる。
【0061】
S114にて、制御装置100は、差圧ΔPを算出する。S116にて、制御装置100は、算出された差圧ΔPがゼロであるか否かを判定する。算出された差圧ΔPがゼロであると判定される場合(S116にてYES)、処理はS118に移される。S118にて、制御装置100は、調整制御を終了して、処理をS120に移す。
【0062】
S120にて、制御装置100は、終了条件が成立したか否かを判定する。終了条件は、たとえば、尿素水ポンプ42の逆転動作を開始した時点(すなわち、エンジン10が停止した時点)から予め定められた時間(たとえば、数十秒程度の時間)が経過したという条件であってもよいし、尿素水タンク40内の尿素水の量がしきい値以上増加したという条件であってもよい。終了条件が成立する場合(S120にてYES)、処理はS122に移される。
【0063】
S122にて、制御装置100は、尿素水ポンプ42の逆転動作を停止する。S124にて、制御装置100は、第1噴射弁24および第2噴射弁26をいずれも閉弁状態にする。このとき、制御装置100は、流量調整弁58の開度を初期値に戻してもよい。
【0064】
なお、IGオフされていないと判定される場合(S100にてNO)、処理はS100に戻される。また、S110にて、差圧ΔPがゼロであると判定される場合(S110にてYES)、処理はS120に移される。さらに、S116にて、差圧ΔPがゼロでないと判定される場合(S116にてNO)、処理はS112に移される。さらに、終了条件が成立していないと判定される場合(S120にてNO)、処理はS120に戻されて、終了条件が成立するまで待機する。
【0065】
以上のような構造およびフローチャートに基づく本実施の形態に係る排気処理装置2の動作について図5を用いて説明する。図5は、本実施の形態における尿素水ポンプ42と流量調整弁58との動作と、差圧ΔPの変化とを示すタイミングチャートである。
【0066】
たとえば、尿素水ポンプ42が停止状態であって、第1噴射弁24および第2噴射弁26がいずれも閉弁状態であって、かつ、流量調整弁58の開度が全開(100%)である場合を想定する。
【0067】
時間T(0)にて、運転者のIG操作によってエンジン10が停止されると(S100にてYES)、尿素水ポンプ42の逆転動作が開始する(S102)。尿素水ポンプ42の逆転動作が開始されるとともに、第1噴射弁24および第2噴射弁26が開弁状態になる(S104)。
【0068】
第1圧力センサ54および第2圧力センサ56を用いて第1圧力P1および第2圧力P2が取得され(S106)、第1圧力P1から第2圧力P2が減算されて差圧ΔPが算出される(S108)。算出された差圧ΔPがゼロでない場合には(S110にてNO)、調整制御が実行される(S112)。調整制御の実行により、流量調整弁58の開度が減少される。そして、再度差圧ΔPが算出され(S114)、算出された差圧ΔPがゼロになるまで(S116にてNO)、調整制御の実行と、差圧ΔPの算出とが繰り返される。
【0069】
時間T(1)にて、算出された差圧ΔPがゼロになると(S116にてYES)、調整制御が終了され(S118)、終了条件が成立するか否かが判定される(S120)。その後、差圧ΔPがゼロとなる状態が維持されたまま、尿素水ポンプ42の逆転動作が継続されるため、第1噴射弁24と分岐点52との間の尿素水と第2噴射弁26と分岐点52との間の尿素水とが並行して尿素水タンク40に吸い戻される。第1噴射弁24と分岐点52との間の尿素水と第2噴射弁26と分岐点52との間の尿素水との吸い戻しが完了した後には、第3配管48内の尿素水が尿素水タンク40内に吸い戻される。
【0070】
時間T(2)にて、接続配管50内の尿素水が尿素水タンク40に全て吸い戻された後に終了条件が成立すると判定されると(S120にてYES)、尿素水ポンプ42の動作が停止されるとともに(S122)、第1噴射弁24および第2噴射弁26の各々が閉弁状態にされる(S124)。
【0071】
以上のようにして、本実施の形態に係る排気処理装置によると、エンジン10の停止後に、差圧ΔPがゼロになるように流量調整弁58を用いて通路断面積を調整することにより、第1配管44と第2配管46との間で圧力損失を同じにすることができる。これにより、第1配管44から第3配管48への流量と第2配管46から第3配管48への流量とを同じにすることができる。第1配管44内の尿素水の量と第2配管46内の尿素水の量とは同じ量であるため、第1配管44内の尿素水が第1噴射弁24から分岐点52まで吸い戻される第1期間と第2配管46内の尿素水が第2噴射弁26から分岐点52まで吸い戻される第2期間とを同じにすることができる。これにより、第1噴射弁24から分岐点52までの尿素水と第2噴射弁26から分岐点52までの尿素水とを並行して尿素水タンク40に吸い戻すことができる。そのため、配管内の尿素水の凍結や劣化等を抑制することができる。したがって、尿素水を噴射する噴射弁が複数個設けられる場合に、エンジンの停止時に各噴射弁に接続される配管内に残留する尿素水を確実にタンクに戻す排気処理装置を提供することができる。
【0072】
以下、変形例について説明する。
上述の実施の形態では、第1配管44内の尿素水の容量と第2配管46内の尿素水の容量とが同じである場合を前提として、差圧ΔPがゼロになるように流量調整弁58を制御するものとして説明したが、一定のマージンを考慮して、たとえば、差圧ΔPの大きさがしきい値(ゼロよりも大きい値)以下になるように流量調整弁58を制御してもよい。
【0073】
さらに、上述の実施の形態では、第1配管44内の尿素水の容量と第2配管46内の尿素水の容量とが同じである場合を前提として、差圧ΔPがゼロになるように流量調整弁58を制御するものとして説明したが、第1配管44内の尿素水の容量と第2配管46内の尿素水の容量とは異なっていてもよい。
【0074】
この場合、制御装置100は、第1圧力P1と第2圧力P2との差が予め定められた値になるように流量調整弁58を制御する。予め定められた値は、第1配管44内の尿素水の容量と第2配管46内の尿素水の容量とに基づいて上述の第1期間と第2期間とが同じ期間になるように設定される。たとえば、第2配管46内の尿素水の容量が第1配管44の尿素水の容量よりも大きい場合には、第2配管46から第3配管48への流量が第1配管44から第3配管48への流量よりも大きくなるように第1圧力P1が第2圧力P2より低くなるように予め定められた値が設定される。
【0075】
さらに、上述の実施の形態では、第1圧力P1と第2圧力P2との差が予め定められた値になるように流量調整弁58を制御するものとして説明したが、たとえば、第1圧力P1と第2圧力P2との比が予め定められた値になるように流量調整弁58を制御してもよい。
【0076】
この場合の予め定められた値は、第1配管44内の尿素水の容量と第2配管46内の尿素水の容量との容量比に基づいて設定される。
【0077】
なお、容量比は、たとえば、第1配管44の通路断面積と第2配管46の通路断面積とが同じである場合には、第1配管44の長さと第2配管46の長さとの比に基づいて算出されてもよい。あるいは、容量比は、第1配管44の長さと第2配管46の長さとが同じである場合には、第1配管44の通路断面積と第2配管46の通路断面積との比に基づいて算出されてもよい。なお、第1配管44および第2配管46において流量調整弁が設けられる位置を除き、通路断面積は一定であるものとする。
【0078】
予め定められた値は、たとえば、以下のようにして予め設定される。すなわち、容量比から第1配管44内を流通する第1流量と第2配管46内を流通する第2流量との流量比が設定される。流量は、通路断面積と流速とに基づいて定まる。そのため、第1配管44と第2配管46との間で通路断面積が同じである場合には、流量比から流速比が設定される。流速は、配管内の圧力に基づいて定まる。そのため、流速比から圧力比が予め定められた比として設定される。なお、第1配管44と第2配管46との間で通路断面積が異なる場合には、流量比と通路断面積の比とから流速比が設定される。
【0079】
圧力比を制御するための流量調整弁58を用いた調整制御は、たとえば、図6に基づくフローチャートにしたがった制御処理によって実行される。なお、図6に示すフローチャートにおいて、図3と同様の処理については同じステップ番号を付与している。そのため、その詳細な説明については繰り返さない。
【0080】
S200にて、制御装置100は、第1圧力P1と第2圧力P2との圧力比を算出する。S202にて、制御装置100は、算出された圧力比が予め定められた比と一致するか否かを判定する。制御装置100は、たとえば、算出された圧力比と予め定められた比との差分がしきい値以下である場合に、算出された圧力比が予め定められた比とが一致すると判定する。算出された圧力比が予め定められた比と一致しないと判定される場合(S202にてNO)、処理はS112に移される。
【0081】
S112の処理の後に処理はS204に移される。S204にて、制御装置100は、第1圧力P1と第2圧力P2との圧力比を算出する。S206にて、制御装置100は、算出された圧力比が予め定められた比と一致するか否かを判定する。判定方法については上述したとおりであるため、その詳細な説明は繰り返さない。算出された圧力比が予め定められた比と一致すると判定されると(S206にてYES)、処理はS118に移される。
【0082】
なお、S202にて、算出された圧力比が予め定められた比と一致すると判定される場合(S202にてYES)、処理はS120に移される。また、S206にて、算出された圧力比が予め定められた比と一致しないと判定される場合(S206にてNO)、処理はS112に移される。
【0083】
このようにすると、第1圧力P1と第2圧力P2との圧力比を予め定められた比に一致させることができるため、圧力比に応じた流量比が得られることで、第1配管44内の尿素水を第1噴射弁24から分岐点52まで吸い戻す期間と第2配管46内の尿素水を第2噴射弁26から分岐点52まで吸い戻す期間とを同じにすることができる。そのため、第1噴射弁24および第2噴射弁26の各々から並行して尿素水を尿素水タンク40に吸い戻すことができる。その結果、尿素水が接続配管50内に残留することを抑制することができる。これにより、配管内の尿素水の凍結や劣化等を抑制することができる。
【0084】
上述の実施の形態では、IGオフ操作が行なわれたときに、尿素水を吸い戻すものとして説明したが、特にIGオフ操作によるエンジン停止時に限定するものではなく、たとえば、アイドルストップ制御等のIGオフ操作を伴わないエンジン停止時に尿素水を吸い戻すものであってもよい。
【0085】
このようにすると、エンジン10の一時停止時において尿素水が排気管からの熱の影響を受けて劣化することを抑制することができる。
【0086】
上述の実施の形態では、流量調整弁58は、第1配管44と第2配管46のうちの圧力損失の小さい一方に設けられるものとして説明したが、流量調整弁58は、第1配管44および第2配管46の各々に設けられるようにしてもよい。
【0087】
このようにすると、たとえば、第1配管44および第2配管46の温度の偏りや経年変化等によって圧力損失の大小が逆転する場合でも流量調整弁58を用いて第1配管44内の尿素水を第1噴射弁24から分岐点52まで吸い戻す第1期間と第2配管46内の尿素水を第2噴射弁26から分岐点52まで吸い戻す第2期間とを同じ期間にすることができる。
【0088】
上述の実施の形態では、制御装置100は、エンジン停止後の尿素水ポンプ42の逆転動作時に、第1圧力センサ54および第2圧力センサ56の検出結果に基づいて流量調整弁58を調整するものとして説明したが、第1配管44内の尿素水の流量を検出する第1流量センサと、第2配管46内の尿素水の流量を検出する第2流量センサとの検出結果に基づいて流量調整弁58を制御してもよい。制御装置100は、たとえば、第1配管44内の第1流量と、第2配管内の第2流量との流量差または流量比が予め定められた値になるように流量調整弁58を調整する。予め定められた値は、上述したように容量比に基づいて設定される。
【0089】
このようにしても、第1配管44内の尿素水を第1噴射弁24から分岐点52まで吸い戻す期間と第2配管46内の尿素水を第2噴射弁26から分岐点52まで吸い戻す期間とを同じにすることができる。
【0090】
上述の実施の形態では、第1噴射弁24および第2噴射弁26は、エンジン10に接続される異なる排気管にそれぞれ設けられるものとして説明したが、第1噴射弁24および第2噴射弁26は、同一の排気管に設けられるものであってもよい。
【0091】
上述の実施の形態では、エンジン10は、V型エンジンを一例として説明したが、たとえば、水平対向型エンジンであってもよいし、直列型のエンジンであってもよい。
【0092】
なお、上記した変形例は、その全部または一部を組み合わせて実施してもよい。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0093】
2 排気処理装置、10 エンジン、12 第1エキゾーストマニホールド、14 第2エキゾーストマニホールド、16 第1排気管、18 第2排気管、20 第1触媒、22 第2触媒、24 第1噴射弁、26 第2噴射弁、28 第1SCR触媒、30 第2SCR触媒、40 尿素水タンク、42 尿素水ポンプ、44 第1配管、46 第2配管、48 第3配管、50 接続配管、52 分岐点、54 第1圧力センサ、56 第2圧力センサ、58 流量調整弁、 100 制御装置、102 IGスイッチ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6