(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6574166
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】飲料製造装置用の圧送システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
A47J 31/46 20060101AFI20190902BHJP
A47J 31/54 20060101ALI20190902BHJP
【FI】
A47J31/46 115
A47J31/54
【請求項の数】15
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-514383(P2016-514383)
(86)(22)【出願日】2014年5月21日
(65)【公表番号】特表2016-522039(P2016-522039A)
(43)【公表日】2016年7月28日
(86)【国際出願番号】EP2014060380
(87)【国際公開番号】WO2014187837
(87)【国際公開日】20141127
【審査請求日】2017年5月18日
(31)【優先権主張番号】13169148.7
(32)【優先日】2013年5月24日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590002013
【氏名又は名称】ソシエテ・デ・プロデュイ・ネスレ・エス・アー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100140453
【弁理士】
【氏名又は名称】戸津 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100168734
【弁理士】
【氏名又は名称】石塚 淳一
(72)【発明者】
【氏名】エイト ボウジアド, ユセフ
(72)【発明者】
【氏名】ヤーリッシュ, クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ヨアキム, アルフレッド
(72)【発明者】
【氏名】モゼール, レンゾ
【審査官】
岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−082046(JP,A)
【文献】
特開2007−195832(JP,A)
【文献】
特開2005−218577(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0200726(US,A1)
【文献】
特開2012−152263(JP,A)
【文献】
特開平11−178717(JP,A)
【文献】
特表2006−506165(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0274738(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 31/46
A47J 31/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体(3)を貯蔵および加熱するための貯槽(2)と、
前記貯槽(2)から前記液体(3)を圧送するための少なくとも1つの主ポンプ(4)と、
前記貯槽(2)を加圧して、前記主ポンプによって生成される絶対吸引圧力を増大させるための加圧手段(5)と
を備える、飲料製造装置用の圧送システム(1)。
【請求項2】
前記加圧手段(5)が、絶対圧約0.5〜1.0barまで前記貯槽(2)を加圧するように構成されている、請求項1に記載の圧送システム(1)。
【請求項3】
前記加圧手段(5)が空気ポンプ(51)である、請求項1または2に記載の圧送システム(1)。
【請求項4】
前記加圧手段(5)が、前記貯槽(2)内の液位および液体温度を制御するためのユニット(53)である、請求項1または2に記載の圧送システム(1)。
【請求項5】
前記加圧手段(5)がピストン(52)である、請求項1または2に記載の圧送システム(1)。
【請求項6】
前記加圧手段(5)が液体ポンプ(54)である、請求項1または2に記載の圧送システム(1)。
【請求項7】
移動式飲料製造装置用の圧送システム(1)であって、前記貯槽(2)が魔法瓶である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の圧送システム(1)。
【請求項8】
マルチ飲料製造装置用の圧送システム(1)であって、前記貯槽(2)から複数の抽出ユニット(6)に前記液体(3)を圧送するための複数の主ポンプ(4)を備える、請求項1〜6のいずれか一項に記載の圧送システム(1)。
【請求項9】
複数の前記主ポンプ(4)の各々が、それぞれの圧力で複数の前記抽出ユニット(6)の1つに前記液体(3)を圧送するように構成されている、請求項8に記載の圧送システム(1)。
【請求項10】
前記貯槽(2)が、約1〜3barの圧力をサポートする低圧ボイラである、請求項8または9に記載の圧送システム(1)。
【請求項11】
前記液体ポンプ(54)が、液体供給源(9)から前記液体を受け入れるように構成されている、請求項6に従属するときの請求項8〜10のいずれか一項に記載の圧送システム(1)。
【請求項12】
前記貯槽(2)が、最大約90℃またはそれ以上の温度まで前記液体(3)を加熱するように構成されている、請求項1〜11のいずれか一項に記載の圧送システム(1)。
【請求項13】
前記少なくとも1つの主ポンプ(4)が、90℃またはそれ以上に加熱された前記液体(3)を、最大流量約100〜300ml/minで、それぞれ最大出力圧力約14〜3barで圧送するように構成されている、請求項12に記載の圧送システム(1)。
【請求項14】
貯槽(2)内で液体(3)を加熱するステップと、
加圧手段(5)を用いて前記貯槽(2)を加圧するステップと、
少なくとも1つの主ポンプ(4)を用いて、前記貯槽(2)から前記液体(3)を圧送するステップと
を含み、
前記加圧手段(5)が、前記主ポンプ(4)によって生成される絶対吸引圧力の増大を支援する、飲料製造装置に使用するための圧送方法。
【請求項15】
前記液体(3)が90℃またはそれ以上に加熱され、前記貯槽(2)が絶対圧約0.7〜1.0barまで加圧される、請求項14に記載の圧送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料製造装置用の圧送システムおよび圧送方法に関する。特に、本発明は、予熱液体を、加圧貯槽から、たとえば、飲料製造装置の浸出または抽出ユニットに圧送するためのシステムおよび方法を提示する。
【背景技術】
【0002】
現行の技術水準から、飲料製造装置に使用される様々な圧送システム、特に、貯槽から浸出または抽出ユニットに液体を圧送するための圧送システムが既知である。
【0003】
図1は、既知の飲料製造装置に使用されるような、液体圧送システム11を示す。圧送システム11は、液体13を内部に収容している貯槽12を含み、液体は、主ポンプ14によって、流量計17およびヒータ20を通じて、抽出ユニット16に圧送される。ヒータ20は、主ポンプ14の下流に設けられている。
【0004】
図2は、既知のマルチ飲料製造装置に使用されるような、さらなる圧送システム11を示す。圧送システム11は、液体供給源19と、ヒータ121を含む高圧ボイラ12を通じて複数の抽出ユニット16に液体13を圧送するための主ポンプ14とを備える。ここでも、ヒータ121は、主ポンプ14の下流に設けられている。
【0005】
上述した現行の技術水準に照らして、それぞれ予熱貯槽および予熱液体を使用すること、すなわち、ヒータを主ポンプの上流に位置付けることが望ましい。予熱液体が主ポンプによって効率的に圧送され得るとすると、飲料製造は、たとえば、はるかにより高速に実行することができる。
【0006】
しかしながら、高温液体が予熱貯槽から圧送されるとき、ポンプによって生成される吸引圧力が、ポンプ入口においてキャビテーションの現象をもたらす可能性がある。キャビテーションの現象は、圧送される液体が、低下した圧力で蒸発することに起因して発生し、必然的に、圧送性能の低減をもたらす。
【0007】
図3は、キャビテーションの現象の背後にある物理的原理を示す。特に、水の状態図が示されており、水の固相、液相および気相の間の相転移条件が、それぞれ実線として示されている。液相から気相への相転移(すなわち、蒸発)は、温度上昇または圧力低減のいずれかを通じて発生し得る。たとえば、室温(約20℃)において、キャビテーションを誘発するのに必要な液体−蒸気相変化のための絶対圧(蒸気圧)は、絶対圧約23mbarである。既知の飲料製造装置に使用される主ポンプは一般的に、絶対圧約500mbarの吸引圧力を生成する。これは、吸引側における絶対圧(1bar−0.5bar=0.5bar)が、上述した23mbarの値よりも高く、それによって、水が室温において圧送されるときには問題は発生しないことを意味する。
【0008】
しかしながら、より高い水温、たとえば、90℃において、キャビテーションを誘発するのに必要である圧力はより高く、約700mbarである。ポンプ吸引圧力(ここでも1bar−0.5bar=0.5bar)は、ここでは0.7barの必要な値よりも低く、したがって、ポンプ入口においてキャビテーションが発生する可能性があり、圧送性能を著しく低減する可能性がある。
【0009】
図4はそのような圧送性能の低減を示す。任意のポンプの圧送性能は、出力流量対出力圧力として表現することができる。温度が上昇することによって、圧送性能は著しく降下する。たとえば、94℃の水温においては、低い出力圧力においてさえ流量が深刻に降下する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、現行の技術水準を改善することである。それによって、本発明の目的は、上述した欠点を克服することである。特に、本発明は、圧送性能を著しく低減することが一切ないように、高温液体を予熱貯槽から圧送することが可能である、飲料製造装置用の圧送システムを提供することを目的とする。さらに、本発明は、ポンプ入口(ポンプ吸引側)におけるキャビテーションの現象を抑制することが可能である圧送システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の上述した目的は、添付の独立請求項によって解決される。本発明の主な着想は、加圧貯槽を介して吸引圧力を増大させることである。従属請求項が、本発明のさらなる利点を展開する。
【0012】
本発明は、飲料製造装置用の圧送システムであって、液体を貯蔵および加熱するための貯槽と、貯槽から、好ましくは飲料製造装置の少なくとも1つの抽出ユニットに液体を圧送するための少なくとも1つの主ポンプと、貯槽を加圧するための少なくとも1つの加圧手段とを備える、飲料製造装置用の圧送システムに関する。
【0013】
貯槽を加圧することによって、すなわち、加圧貯槽を提供することによって、ポンプによって生成される絶対吸引圧力が増大する。貯槽を加圧することによって、貯槽内の液体もまた加圧される。圧力増大に起因して、ポンプ入口においてキャビテーションの現象を回避することができるか、または、少なくとも低減することができる。これによって、高い液体温度における圧送性能が回復されることになる。言い換えれば、予熱液体の主ポンプの圧送性能は、室温における同じ液体の主ポンプの圧送性能とおおよそ同程度良好である。
【0014】
それゆえ、本発明の装置は、飲料の製造を促進する。さらに、主ポンプの下流にヒータは必要ない。これは、よりコンパクトかつより軽量に構築され得る移動式飲料製造装置に特に有利である。
【0015】
加圧手段は、貯槽を絶対圧約0.5〜1.0bar、好ましくは0.7〜1.0barまで加圧するように構成されることが好ましい。
【0016】
これらの好ましい圧力値によって、実際のポンプ入口の前で蒸気圧よりも高い絶対圧が達成され、それによって、キャビテーションの現象が非常に効果的に抑制される。好ましい値は、貯槽とポンプとの間の液体回路、たとえば、弁、流量計、管などにおけるすべての圧力損失を考慮に入れる。
【0017】
本発明の一態様において、加圧手段は空気ポンプである。
【0018】
空気ポンプは、貯槽内に組み込まれるか、または、貯槽の上流に位置付けられることが好ましい。空気ポンプは安価で実装しやすい。
【0019】
本発明の別の態様において、加圧手段は、貯槽内の液位および液体温度を制御するためのユニットである。
【0020】
貯槽内の液体が加熱されると、蒸気圧が増大する。貯槽内の液位を制御することによって、蒸気圧を使用して貯槽内の絶対圧を設定することができる。多くの飲料製造装置は、そのようにプログラムすることができる制御ユニットをすでに有している。それゆえ、この解決策は特に容易である。
【0021】
本発明の別の態様において、加圧手段はピストンである。
【0022】
ピストンは、貯槽内またはその上に位置付けられる機械ピストンであることが好ましい。ピストンは、絶対圧を増大させるために、貯槽を押圧するように構成されている。ピストンは、電気的または機械的に作動することができる。
【0023】
本発明の別の態様において、加圧手段は液体ポンプであり、低圧送水ポンプであることが好ましい。
【0024】
液体ポンプは、液体流路内に容易に組み込むことができ、たとえば、給水源と貯槽との間に位置付けることができる。液体ポンプは、貯槽内の液体の一定の圧力を維持することができる。
【0025】
圧送システムは、貯槽が魔法瓶であることが好ましい移動式飲料製造装置用に設計することができる。
【0026】
魔法瓶が貯槽として使用されるとき、液体は貯槽内に充填される前に加熱することができ、魔法瓶内でその温度を維持する。本発明の圧送システムによれば、主ポンプの下流にヒータは必要ない。魔法瓶と組み合わせると、高温飲料を製造するための小型の移動式飲料製造装置を設計することができる。
【0027】
圧送システムは、貯槽から複数の抽出ユニットに液体を圧送するための複数の主ポンプを備えることが好ましいマルチ飲料製造装置用に設計することもできる。
【0028】
各種ポンプは、様々な異なる飲料のうちの1つを製造するために、独立して操作することができることが好ましい。各抽出ユニットは、それ自体の主ポンプをさらに有することができる。それによって、各抽出ヘッドに同様の抽出圧力を加える現行の技術水準から既知であるような、コストのかかる単一の主ポンプを使用する代わりに、複数のより小型でより安価な主ポンプを設置することができる。
【0029】
複数の主ポンプの各々が、それぞれの圧力で複数の抽出ユニットの1つに液体を圧送するように構成されることが好ましい。
【0030】
各抽出ヘッドには主ポンプのうちの1つによって液体を供給することができ、液体は専用の圧力で各抽出ヘッドに供給されることが好ましい。したがって、絵飲料製造装置はより多用途である。さらに、複数の異なる飲料が製造されるためには、複数の異なる液体圧力が最適または必要であるため、マルチ飲料製造装置によって提供される飲料の品質を向上することができる。
【0031】
貯槽は、約1〜3barの圧力をサポートする低圧ボイラであることが好ましい。
【0032】
圧送システムの主ポンプはボイラから液体を圧送すること、すなわち、高い圧送性能で加熱液体を圧送することが可能であるため、貯槽の上流に主ポンプは必要とされない。貯槽を加圧するためには、低圧液体ポンプのみが貯槽の上流に位置付けられることが好ましい。結果として、現行の技術水準によって使用されるような高圧ボイラを低圧ボイラに置き換えることができ、それによって、圧送システムの設計はより単純、より小型かつより安価になる。
【0033】
液体ポンプは液体供給源から液体を受け入れるように構成されることが好ましい。
【0034】
貯槽は、液体を最大約90℃またはそれ以上の温度まで加熱するように構成されることが好ましい。
【0035】
温度が高いことによって、貯槽から圧送される液体は飲料製造にすでに適しているため、飲料を製造するのに必要とされる時間を大幅に短縮することが可能である。加圧貯槽に起因して、圧送性能を犠牲にすることなく、液体を予熱するための高い温度が可能である。それゆえ、エスプレッソのような、高いポンプ出力圧力(すなわち、高い圧送性能)を必要とする飲料でさえも、非常に迅速に高品質で製造することができる。
【0036】
少なくとも1つの主ポンプは、90℃またはそれ以上に加熱された液体を、最大流量約100〜300ml/minで、それぞれ最大出力圧力約14〜3barで圧送するように構成されている。
【0037】
これは、少なくとも1つの主ポンプが、90度の液体、たとえば水を、最大出力圧力14bar、最大流量100ml/minで、また、最大出力圧力3bar、最大流量300ml/minで圧送することが可能であることを意味する。これらの値によって規定される範囲内で、最大流量は、出力圧力が低減するにつれてほぼ線形に増大する。そのようなポンプを用いると、予熱貯槽に起因して、様々な種類の飲料(低い出力圧力のみを必要とするが、高い流量を必要とする飲料もあれば、高い出力圧力を必要とするが、低い流量のみを必要とする飲料もある)を迅速に製造することができる。
【0038】
本発明はさらに、飲料製造装置に使用するための圧送方法であって、貯槽内で液体を加熱するステップと、加圧手段を用いて貯槽を加圧するステップと、少なくとも1つの主ポンプを用いて、貯槽から、好ましくは飲料製造装置の少なくとも1つの抽出ユニットに液体を圧送するステップとを含む、飲料製造装置に使用するための圧送方法に関する。
【0039】
液体は90℃またはそれ以上に加熱され、貯槽は絶対圧約0.5〜1.0barまで加圧されることが好ましい。
【0040】
圧送方法は、上述した圧送システムと同じ利点を達成し、すなわち、加熱された液体を高いポンプ性能で圧送することができる。その結果として、飲料をより迅速に、品質を改善して製造することができる。
【0041】
ここで、添付の図面に関連して本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】飲料製造装置の現行の技術水準の圧送システムを示す図である。
【
図2】マルチ飲料製造装置の現行の技術水準の圧送システムを示す図である。
【
図4】現行の技術水準の種々の液体温度のポンプ性能の比較を示す図である。
【
図9】種々の液体温度および種々の貯槽温度におけるポンプ性能を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図5は、本発明の圧送システム1を示す。圧送システム1は、液体3を貯蔵および加熱するように構成されている貯槽2を含む。それゆえ、貯槽2は、予熱液体を供給するように設計されている予熱貯槽である。液体3は、たとえば、水、ミルク、スープ、水ベースの液体、チョコレートベースの液体、コーヒーベースの液体、ミルクベースの液体などであってもよい。特に、液体3は、温かいまたは高温の飲料を準備するのに適している任意の液体であってもよい。
【0044】
図5に示す圧送システム1は、移動式飲料製造装置に特に有用である。貯槽2は、液体を高温のままにするための魔法瓶であることが好ましい。しかしながら、貯槽2はまた、タンクまたはボイラであってもよい。貯槽2はまた、液体3を加熱するための能動的な加熱手段、たとえば、加熱コイル、電熱線または加熱ブロックをも備えることができる。貯槽2は、少なくとも貯槽2内の液体温度を制御するのに適している制御ユニット(図示せず)をさらに備えるか、またはそれに接続することができる。
【0045】
貯槽2は、液体流路を介して、たとえば、管8によって、主ポンプ4に接続されている。主ポンプ4は、貯槽2から液体3を圧送するように構成されている。主ポンプ4は、貯槽2から飲料製造装置の浸出または抽出ユニット6に液体3を圧送するように構成されることが好ましい。主ポンプ4は、液圧ポンプ、歯車ポンプ、蠕動ポンプ、または、液体3を圧送するのに適した任意の他のポンプであってもよい。主ポンプ4は、主ポンプ4を通じた流量を測定および制御するように構成されている流量計7を通じて貯槽2に接続されることが好ましい。流量計7は、制御ユニットに測定値をフィードバックすることができ、または、それ自体が主ポンプ4に入る液体流を調整することができる。
【0046】
圧送システム1は、貯槽2および/または貯槽2内の液体3を加圧するための加圧手段5をさらに設けられている。
図5に示すように、加圧手段5は、空気ポンプ51であってもよい。空気ポンプ51は、貯槽2内に組み込まれるか、または、貯槽2の上流に設けられるかのいずれかである。空気ポンプ51は、作動されると、貯槽2内の圧力を増大または低減するように構成されている。空気ポンプ51は、制御ユニットによって制御することができる。
【0047】
加圧手段は、貯槽2内の絶対圧約0.5〜1bar、より好ましくは0.7〜1barを達成するように構成されることが好ましい。この予圧値は、貯槽2と主ポンプ4との間の液体回路、たとえば、弁、流量計、管8などにおける圧力損失のすべての原因を考慮に入れて、主ポンプ入口の前の圧力を、液体3のキャビテーションを効果的に抑制する値まで増大させるように選択される。
【0048】
加圧手段5によって、圧力下で加熱された液体が貯槽2内に提供される。これは、貯槽2内の絶対圧が増大されることを意味する。それによって、主ポンプ4の入口における絶対吸引圧力も増大され、それによって、キャビテーションの現象が抑制される。それによって、主ポンプ4の圧送性能を、70℃もしくはそれ以上、または、90℃もしくはそれ以上の液体温度においてさえ、大幅に増大することができる。
【0049】
図5に示す空気ポンプ51は、貯槽2内の絶対圧を増大させるための1つの好ましい方法である。
図6は、貯槽2内の圧力を増大させるための代替的な好ましい方法を示す。特に、
図6においては、貯槽2を押圧するように設計されている機械ピストン52が、加圧手段5として使用される。機械ピストン52は、たとえば、モータによって駆動することができ、上述した制御ユニットによって制御することができる。機械ピストンはまた、機械的に駆動されてもよく、たとえば、ユーザによって手動で操作されるように設計されてもよい。
【0050】
図7は、貯槽2内の圧力を増大させるための別の好ましい方法を示す。ここで、加圧手段5は、上述した制御ユニットによって実現することができるユニット53によって実現されるが、また別個のユニットであってもよい。ユニット53は、貯槽2内の液位を制御するように構成されることが好ましい。ユニット53はまた、貯槽2内の液体温度を制御するようにも構成されることが好ましい。このとき、液体3を加熱することによって発生する蒸気圧を利用して、貯槽2内の圧力を増大させることができる。液位を制御するために、ユニット53は、何らかの液体供給源に接続されることが好ましく、貯槽2内の液体3の量を増大または低減することが可能であることが好ましい。
【0051】
図8は、マルチ飲料製造装置に特に有利である、本発明の別の圧送システム1を示す。マルチ飲料製造装置は、たとえば、茶、コーヒー、エスプレッソおよび/またはチョコレート飲料などを製造することが可能である装置であってもよい。それゆえ、マルチ飲料製造装置は、複数の浸出または抽出ユニット6を備えることが好ましい。
図8は、たとえば、それぞれ異なる飲料を準備するのに使用することができる4つの浸出または抽出ユニット61〜64を示す。
【0052】
本発明の圧送システム1は、この事例においては、複数の主ポンプ4を備え、それらの主ポンプ4の各々が、飲料製造装置の浸出または抽出ユニット61〜64のうちの1つに専用にされる。主ポンプ4は各々、予熱貯槽2から管8を介して、好ましくは複数の流量計7を通じて、それぞれの飲料抽出ユニット61〜64に液体3を圧送するように構成されている。主ポンプ4は、上記の説明に従って設計することができる。
【0053】
貯槽2はボイラであることが好ましい。それゆえ、ステーション2は、加熱手段21を備えることが好ましい。加熱手段21は、たとえば、電熱線、加熱コイルまたは加熱ブロックであってもよい。貯槽2は、液体入口および液体出口を有し、好ましくは液体3が貯槽2を通じて圧送されている間に液体3を加熱するように構成されている。貯槽2は、低圧ボイラ、すなわち、最大約1〜3barの圧力をサポートするボイラとして設計されることが好ましい。現行の技術水準は一般的に、最大約10〜15barの圧力をサポートする高圧ボイラを使用する。しかしながら、高圧ボイラははるかにより複雑であり、製造するのに費用がかかる。
【0054】
ここでも、圧送システム1は加圧手段5を含む。加圧手段5は、低圧ポンプ54であることが好ましい。加圧手段5は、液体3を貯槽2内に供給するのに使用される液体供給源9に接続されることが好ましい。
【0055】
図8の圧送システム1は、現行の技術水準において使用されているような、費用のかかる単一の主ポンプ14を回避する。一般的に、単一の主ポンプ14は、各抽出ユニット161〜164に同様の抽出圧力を加える(
図2参照)。
図8による本発明の圧送システム1において、各主ポンプ4は独立して操作することができることが好ましい。
【0056】
さらに、各飲料抽出ユニット61〜64は、独立して、かつ異なる動作パラメータで動作することができることが好ましい。異なる飲料原料から製造されることになる異なる飲料は、異なる動作パラメータ、たとえば、供給される液体の異なる圧力を必要とする。たとえば、エスプレッソはより高い液体圧力を必要とし、一方で茶は、より低い液体圧力を必要とする。それゆえ、各抽出ユニット61〜64は、飲料抽出ユニット61〜64によって製造されるそれぞれの飲料に従って選択される専用の主ポンプ4を有することが好ましい。言い換えれば、エスプレッソを準備するための飲料抽出ユニット61は、高圧主ポンプ4に接続される。茶を準備するための飲料抽出ユニット62は、安価な低圧主ポンプ4に接続される。それゆえ、本発明のポンプシステム1は、現行の技術水準よりも高い多用途性をもたらす。
【0057】
図9は、本発明の圧送システム1および方法を用いて、加圧貯槽2によってたとえ上昇した液体温度であってもいかに高い圧送性能を達成することが可能であるかを示す。
図9は特に、本発明の主ポンプ4の性能グラフ(すなわち、流量対出力圧力)を示す。室温における主ポンプ4および非加圧貯槽2によって達成される理想的な性能曲線は、貯槽2内の圧力が0.7barまたはそれ以上に増大されるときに、95℃の液体温度においておおよそ同等であることが見てとれる。
【0058】
貯槽圧力が増大することによってキャビテーションが抑制されることに起因して、主ポンプ4の圧送性能も増大する。したがって、ポンプ性能を一切損なうことなく、貯槽2から飲料製造装置の抽出ユニット6に予熱液体を圧送することが可能になる。主ポンプ4の後ろ(下流)に設けられるヒータ、ボイラまたは任意の他の加熱手段を省くことができる。キャビテーションの抑制はポンプの音にも影響することがさらに留意される。主ポンプ4は、増大した性能で(または少なくとも、室温よりも大幅に悪くはない性能で)圧送することが可能であるだけでなく、その上より静かに動作することも可能である。
【0059】
要約すると、本発明は、予熱貯槽2と、予熱液体3を圧送するための主ポンプ4と、貯槽2内の液体3を加圧するための加圧手段5とを有する圧送システム1を説明する。本発明は、キャビテーション現象のほぼ完全な抑制を達成し、したがって、上昇した液体温度における圧送性能の増大を達成する。