(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
改変受容体結合ドメインが、配列番号:4の残基859〜1291または残基1028〜1291に対応する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の使用のための薬学的組成物。
前記分子が、第2部分に連結された、改変受容体結合ドメインである第1部分を含むキメラ分子である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の使用のための薬学的組成物。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1A】どのようにしてBoNTがニューロンを標的化するかの図式モデルを示す。BoNT作用の概略図:BoNTは、それらの特異的受容体に結合することによってニューロンを認識し(段階1)、受容体媒介性エンドサイトーシスによりニューロンに侵入し(段階2)、次にBoNTの軽鎖がエンドソーム膜を横切ってサイトゾル中に移行し(段階3)、そこでこれらの軽鎖がプロテアーゼとして作用して、標的宿主タンパク質を切断する(段階4)。Arnon, S. et al, JAMA, 285:1059, 2001からの出展である
33。
【
図1B】BoNTの全体なタンパク質構造を示す。BoNTは、ジスルフィド結合によって接続された軽鎖および重鎖から構成されている。重鎖は、2つのドメイン:移行ドメイン (H
N) および受容体結合ドメイン (HC) にさらに分割され得る。これらの機能的ドメインは明確に定義されており、異なるBoNTの間で交換可能である
1。このことから、改変BoNT/B-H
Cを用いてBoNT/A-H
Cを置き換えて、キメラ毒素を作製できることが示唆される。
【
図1C】同定された受容体のリストを示す。同定された毒素受容体のリスト。
【
図1D】BoNT/Bのその受容体Sytおよびガングリオシドへの結合の構造モデルを示す。BoNT/Bの、細胞表面上のそのタンパク質受容体、齧歯類Syt (I/II)、およびその脂質共受容体、ガングリオシドへの結合を示す構造モデル。Chai et al, Nature, 444:1096, 2006からの出展である
31。
【
図2A】
図2A〜
図2Gは、(1) ヒトSyt IIがBoNT/B、D-C、およびGの有効な受容体ではないこと;(2) BoNT/Bの受容体結合ドメインにおける残基変化が、Syt IIに対する結合親和性および毒素の効力を有意に変化させ得ること;(3) Syt IIとの結合に寄与すると仮定されている、BoNT/Bの受容体結合ドメイン内の重要な残基を示す、公表済みの文献から編集された以前のデータを示す。
図2A) 齧歯類Syt IとSyt IIとの比較により、齧歯類運動ニューロンにおいて、Syt IIは主要な毒素受容体であるのに対して、syt Iは重要性の低い毒素受容体であることが示される。
【
図2B】
図2B) ヒトSyt IIは、マウス/ラットSyt IIと、毒素結合部位内の単一残基(マウスSyt IIにおける残基54、ヒトSyt IIにおける51)だけが異なる。
【
図2C】
図2C) グルタチオンS-トランスフェラーゼ (GST) タグ化組換えマウスSyt II 1〜87 (m-Syt II)、およびヒトSyt IIを模倣するマウスSyt II 1〜87変異体(F54L、本明細書ではh-Syt IIと称される)をグルタチオン-セファロースビーズ上に固定化し、これを用いて、ガングリオシド (Gangl) の存在と共にまたはその存在なしで、BoNT/B、BoNT/D-C、またはBoNT/Gをプルダウンした。プルダウンアッセイにおいて、3つの毒素はすべてm-Syt II 1〜87に結合するが、h-Syt IIには結合しない。
【
図2D】
図2D) 培養したラット海馬ニューロンは、Syt Iのみを発現しSyt IIを発現しない
8。したがって、Syt Iのノックダウン (KD) は、内因性毒素受容体のないニューロンをもたらす。次に、全長m-Syt IIおよびh-Syt IIをSyt I KD海馬ニューロンにおいて発現させ、これらのニューロンをBoNT/B (20 nM) に曝露した(5分間の曝露、24時間のインキュベーション)。毒素基質シナプトブレビン (Syb) の切断の程度によって明らかなように、h-Syt IIは、BoNT/B、BoNT/D-C、およびBoNT/GのSyt I KDニューロンへの侵入を媒介する上で、m-Syt IIよりも有意に効率が低いことが見出された。
【
図2E】
図2E) ラットSyt I 1〜83およびヒトSyt I 1〜80を用いて、パネルCに記載されるようにBoNT/B、BoNT/D-C、またはBoNT/Gをプルダウンした。ヒトSyt Iは、3つの毒素すべてについて、ラットSyt Iと同様の毒素結合レベルを媒介した。
図2A〜Eは、最近の出版物:Peng et al, J. Cell Science, 2012, 125:3233からの出展である
13。
【
図2F】
図2F) BoNT/B(BoNT/B1としても定義される)およびBoNT/B2として公知であるそのサブタイプの1つのラットSyt IIに対する結合親和性を、BoNT/B1およびB2の受容体結合ドメインを用いて(右パネル)組換えSyt II上の
125I標識BoNT/B1の結合を競合させることにより(左パネル)、競合アッセイにおいて決定する。IC50(結合親和性を反映する)は、BoNT/B1については0.48 nMであり、BoNT/B2については2 nMであり、約4倍の差があった。この親和性の差は、受容体結合ドメインのC末端(残基1028〜1291)に起因する。BoNT/B1とBoNT/B2の間でこの領域を交換すると(右パネル)、それらの結合親和性が実質的に切り替わるという理由からである(右パネル)。
【
図2G】
図2G) BoNT/B1とBoNT/B2との間で異なる残基のリスト。これらの残基は、齧歯類Syt IIに対するこれら2つの毒素間の結合親和性の差の理由であると考えられる。したがって、これらは、BoNT/BとヒトSyt IIとの結合親和性に影響を及ぼし得る重要な残基である可能性がある。パネルF〜Gは、Ihara et al, 2003, BBA, 1625:19からの出展である
29。
【
図2H】(H) 表中に示されるようなBoNT/AおよびBoNT/Bの受容体結合ドメイン内の単一残基変異は、これらの毒素の効力および毒性を有意に変化させ得る。このパネルは、Rummel et al, 2004, Mol. Microbiology, 51:631からの出展である
30。
【
図2I】(I) Syt II(赤色)に結合しているBoNT/B(灰色)の共結晶構造により、BoNT/Bにおいて結合ポケットを形成する重要な残基(右の表に記載)が明らかになる。このパネルは、Jin et al, 2006, Nature, 444:1092
32およびChai et al, 2006, Nature, 444:1096
31からの出展である。
【
図3A-1】
図3A〜
図3Bは、BoNT/B-H
Cの標的化突然変異誘発、ならびにm-Syt IIおよびh-Syt IIに対する結合に及ぼすそれらの効果を示す。
図3A) WT BoNT/B-H
Cおよび表示のBoNT/B-H
C変異体を、大腸菌 (E. Coli) において組換えタンパク質として発現させた。細菌溶解物を収集し、固定化m-Syt II(1〜87)またはh-Syt II(1〜87)と共にインキュベートした。結合したペレットを、HA抗体を用いてBoNT/B-H
Cを検出する免疫ブロットアッセイによって解析した。「インプット」は細菌溶解物を表す。h-Syt IIに対する強力な結合を示す変異体を矢印で示す。
【
図4】
図4A〜
図4Bは、選択されたBoNT/B-H
C変異体の、Syt IおよびSyt IIに対するそれらの結合に関するさらなる特徴づけを示す。
図4A) BoNT/B-H
C WTおよび表示の変異体を大腸菌で発現させた。収集された細菌溶解物を、ガングリオシドの存在と共にまたはその存在なしで、固定化GSTタグ化ヒトSyt I(1〜80)と共にインキュベートした。結合した材料を、BoNT/B-H
Cを検出する免疫ブロットアッセイによって解析した。E1191Mは、ヒトSyt Iに対するBoNT/B-H
Cの結合を有意に増強したのに対して、V1118Mは、Syt Iに対する結合をWT BoNT/B-H
Cよりも低下させた。
図4B) WT BoNT/B-H
CおよびE1191M変異体をHis6タグ化組換えタンパク質として精製し、脂質共受容体ガングリオシド (Gangl) の存在と共にまたはその存在なしで、固定化GSTタグ化m-Syt II(1〜87)またはh-Syt II(1〜87)と共にインキュベートした。BoNT/B-H
Cは、ガングリオシドなしではh-Syt IIに結合することができず、ガングリオシドの存在下で弱い結合を示すに過ぎない。精製E1191M変異体は、ガングリオシドなしでh-Syt IIと結合し、その結合はガングリオシドの存在下でさらに増強される。
【
図5】
図5A〜
図5Bは、選択された単一残基置換を組み合わせることにより、ヒトSyt I/IIへの結合がさらに増強され得ることを示す。
図5A) 表示のような2つの変異部位を組み合わせた選択された二重変異体を、
図3Aに記載されるようなプルダウンアッセイにおいて、m-Syt IIおよびh-Syt IIに結合するそれらの能力について試験した。2つの部位、E1191MまたはE1191QとS1199LまたはS1199YまたはS1199Fの組み合わせは(矢印で示す)、h-Syt IIへの頑強な結合を示した。
図5B) 選択された二重変異体のヒトSyt Iに対する結合を、プルダウンアッセイにおいて解析した。すべての二重変異体が、WT BoNT/B-H
Cと比較して、ヒトSyt Iに対する有意に増強した結合を示した。
【
図6A】
図6A〜
図6Dは、代表的な二重変異体、E1191M/S1199Yのさらなる特徴づけを示す。
図6A) BoNT/B-H
C WT、E1191M変異体、およびE1191M/S1199Y変異体を大腸菌で発現させ、His6タグ化組換えタンパク質として精製した。等量のこれらタンパク質 (100 nM) を、ガングリオシド (Gangl) の存在と共にまたはその存在なしで、表示のように固定化GSTタグ化m-Syt II(1〜87)またはh-Syt II(1〜87)と共にインキュベートした。結合した材料を免疫ブロット解析に供した。「インプット」は、以下の順:WT、E1191M、E1191M/S1199Yの精製組換えタンパク質を表す。WT BoNT/B-H
Cは、ガングリオシドなしではh-Syt IIに結合することができず、ガングリオシドの存在下で弱い結合を示すに過ぎない(レーン4、5)。E1191M変異体は、ガングリオシドなしでh-Syt IIと結合し、その結合はガングリオシドの存在下でさらに増強される(レーン6、7)。E1191M/S1199Yは、E1191Mと比較して、h-Syt IIへの結合を有意に増強した(レーン8、9)。h-syt II(レーン8、9)およびm-Syt II(レーン10、11)の両方に対するE1191M/S1199Yの結合は、WT BoNT/B-HCのm-Syt IIへの結合(レーン13、14)と同様のレベルである。
【
図6B】
図6B) 等量のBoNT/B-H
C WT、E1191M変異体、およびE1191M/S1199Y変異体を、GSTタグ化h-Syt Iと共にインキュベートした。結合した材料を免疫ブロット解析に供した。E1191MおよびE1191M/S1199Yはいずれも、WT BoNT/B-H
Cと比較して、h-Syt Iへの結合を有意に増強した。
【
図6C】
図6C) 表示のように、精製WT BoNT/B-HCの滴定物 (nM) をm-Syt IIと共にインキュベートし、精製E1191M/S1199Yの滴定物をh-Syt IIと共にインキュベートした。結合した材料を免疫ブロット解析に供した。E1191M/S1199Yのh-Syt IIへの結合は、WT BoNT/B-H
Cのm-Syt IIへの結合と同様のレベルである。
【
図6D】
図6D) パネルCで得られた免疫ブロット結果の定量に基づいて、E1191M/S1199Yとh-Syt IIとの間の結合親和性を推定した。Kdは、E1191M/S1199Yのh-Syt IIへの結合については19 +/- 3 nMであると推定されるのに対して、WT BoNT/Bのm-Syt IIへの結合に関するKdは68 +/- 12 nMである。したがって、E1191M/S1199Yのh-Syt IIに対する結合は、WT BoNT/Bのm-Syt IIへの結合よりも約3.5倍高い。
【
図7】BoNT/B-H
C E1191M/S1199Yが、ニューロンの表面上に発現されたh-Syt IIに結合し得ることを示す。培養したラット海馬ニューロンは、Syt Iのみを発現しSyt IIを発現しない。したがって、レンチウイルス感染によるSyt Iのノックダウン (KD) は、いかなる内因性Sytももたないニューロンをもたらし、これはWT BoNT/B-H
CおよびE1191M/S1199Y BoNT/B-H
Cの結合を消失させた(左から2番目の枠)。次に、レンチウイルス感染により、M-Syt II、m-Syt II (F54L)、およびh-Syt IIをこれらのニューロンにおいて発現させた。WT BoNT/B-H
Cはm-Syt IIに結合することができるが、m-Syt II (F54L) にもh-Syt IIにも結合するとができない。E1191M/S1199Y変異体は、ニューロン表面上のm-Syt IIおよびh-Syt IIの両方に結合することができる。シナプスのマーカーとして、シナプシンもまた標識した。
【
図8】BoNT/B-Hc(株1;BoNT/B1 Okra株)のアミノ酸配列である。BoNT/B、株1、GenBank:AB232927.1の残基857〜1291、(SEQ ID NO: 1)。
【
図9】大腸菌における発現のために最適化された、BoNT/B-Hc(株B1、Okra株)(GenBank:AB232927.1に基づく、BoNT/B、株1の残基857〜1291)をコードする核酸配列である。この核酸配列をSEQ ID NO: 2に示す。
【
図10-1】ボツリヌス菌血清型Aのアミノ酸配列 (1296 a.a.) (SEQ ID NO: 3) を示す。
【
図11-1】ボツリヌス菌血清型Bのアミノ酸配列 (1291 a.a.) (SEQ ID NO: 4) を示す。
【
図12-1】ボツリヌス菌血清型C1のアミノ酸配列 (1291 a.a.) (SEQ ID NO: 5) を示す。
【
図13-1】ボツリヌス菌血清型Dのアミノ酸配列 (1276 a.a.) (SEQ ID NO: 6) を示す。
【
図14-1】ボツリヌス菌血清型Eのアミノ酸配列 (1252 a.a.) (SEQ ID NO: 7) を示す。
【
図15-1】ボツリヌス菌血清型Fのアミノ酸配列 (1274 a.a.) (SEQ ID NO: 8) を示す。
【
図16-1】ボツリヌス菌血清型Gのアミノ酸配列 (1297 a.a.) (SEQ ID NO: 9) を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
発明の詳細な説明
本発明の局面は、改変受容体結合ドメインの取り込みによってそのヒト受容体への結合が改善されたボツリヌス菌神経毒素 (BoNT) ポリペプチドの作製に関する。これらの知見により、本明細書において同定された改変受容体結合ドメインを使用することによって、現在使用されているWT BoNTよりもヒトニューロンを標的化するための有効性および特異性が改善された新世代の治療用BoNTを作製することができる。
【0027】
定義
本明細書で用いられる場合、「結合親和性」という用語は、特定の受容体系に対してある分子の結合活性がどれくらい強いかを意味する。一般に、高い結合親和性は、結合ドメインとその受容体系との間のより大きい分子間力によって生じるのに対して、低い結合親和性は、リガンドとその受容体との間のより小さな分子間力を伴う。高い結合親和性は、結合ドメインのその受容体結合部位での滞留時間が、低い結合親和性の場合よりも長い。したがって、高い結合親和性を有する分子は、受容体系の結合部位を最大限に占有し、生理反応を引き起こすために、より低濃度の該分子が必要であることを意味する。逆に、低い結合親和性は、受容体系の受容体結合部位が最大限に占有され、最大の生理反応が得られるには、比較的高濃度の分子が必要であることを意味する。よって、結合親和性が高いために結合活性が増大した本発明のボツリヌス神経毒素は、より低用量の毒素の投与を可能とし、それによって非標的化領域への毒素の分散に伴う望ましくない副作用を軽減または予防する。
【0028】
本用語が本明細書で用いられる場合、本発明のボツリヌス菌神経毒素分子の特異的受容体に対する結合親和性を説明するために用いられる場合の「有意に増強した結合」とは、該分子の非置換型と比較して実質的に(例えば、野生型分子の結合親和性の10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%)増大している、特異的受容体に対する結合親和性の増大を指す。1つの態様において、増強した結合は、非置換神経毒素(例えば、天然BoNT H
C分子を有する神経毒素)のKdよりも1桁分またはそれ以上高い。本明細書に記載される点変異によって生成されたBoNT/B-H
C結合断片の結合親和性を説明するために用いられる場合の「有意に増強した結合」という用語は、該分子の非置換型の結合と比較して実質的に(例えば、結合親和性の10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%)増大している、特異的受容体に対する改変結合ドメイン(全BoNTタンパク質の単離された断片として発現された)の結合親和性の増大を指す。1つの態様において、増強した結合は、非置換断片のKdよりも有意に高い(例えば、1.5×、2.0×、2.5×、3.0×など)。
【0029】
本明細書で用いられる場合、「ボツリヌス神経毒素」という用語は、ボツリヌス菌毒素がニューロンに侵入し、神経伝達物質放出を阻害する際の全体的な細胞機構を行うことができる任意のポリペプチドを意味し、ボツリヌス毒素の低親和性または高親和性受容体複合体への結合、毒素の内部移行、毒素軽鎖の細胞質内への移行、およびボツリヌス菌毒素基質の酵素的修飾を包含する。
【0030】
本用語が本明細書で用いられる場合の「改変受容体結合ドメイン」または「改変H
C」は、これを含むボツリヌス菌神経毒素分子の、標的細胞の表面上に位置するボツリヌス菌神経毒素の受容体に対する結合を促進する。このような分子は典型的に、遺伝子組換え技術によって作製される。改変H
Cは、標的細胞の表面上に位置するボツリヌス菌神経毒素の受容体に対する結合親和性を有する。本明細書で用いられる場合、「結合活性」という用語は、1つの分子が、非限定的に、共有結合、イオン結合、金属結合、水素結合、疎水性相互作用、ファンデルワールス相互作用など、またはそれらの任意の組み合わせを含む少なくとも1つの分子間力または分子内力を介して、別の分子と直接的または間接的に接触することを意味する。「結合した」および「結合する」は、結合に関する用語と見なされる。
【0031】
本明細書で用いられる場合、「ボツリヌス菌毒素プロテアーゼドメイン」という用語は、中毒過程の酵素標的修飾段階を実行することができるボツリヌス菌毒素ドメインを意味する。したがって、ボツリヌス菌毒素プロテアーゼドメインは、ボツリヌス菌毒素基質を特異的に標的化し、例えば、SNAP-25基質、VAMP基質、およびシンタキシン基質のようなSNAREタンパク質などのボツリヌス菌毒素基質のタンパク質分解的切断を包含する。
【0032】
ボツリヌス菌毒素プロテアーゼドメインの非限定的な例を、表1および2に提供する。
【0033】
本明細書で用いられる場合、「ボツリヌス菌毒素移行ドメイン」または「H
N」という用語は、ボツリヌス菌毒素軽鎖移行を媒介する中毒過程の移行段階を実行することができるボツリヌス菌毒素ドメインを意味する。したがって、H
Nは、ボツリヌス菌毒素軽鎖の膜を横切る移動を促進し、ボツリヌス菌毒素軽鎖の細胞の細胞内小胞から細胞質中への膜を介した移動を包含する。H
Nの非限定的な例には、BoNT/A H
N、BoNT/B H
N、BoNT/C1 H
N、BoNT/D H
N、BoNT/E H
N、BoNT/F H
N、およびBoNT/G H
Nが含まれ、これらのアミノ酸配列を表1および
図10〜16に提供する。
【0034】
本明細書で用いられる場合、「ボツリヌス菌受容体結合ドメイン」という用語は、「H
Cドメイン」と同義であり、例えば、標的細胞の形質膜表面上に位置するボツリヌス菌毒素特異的受容体系に対するボツリヌス菌毒素の結合を含む、中毒過程の細胞結合段階を実行することができる、任意の天然ボツリヌス菌受容体結合ドメインを意味する。結合活性の置き換えは、例えば、ボツリヌス菌H
Cドメイン全体を、改変(増強)されたH
Cドメインと置き換えることによって達成することができると想定される。
【0035】
本明細書で用いられる場合、「ボツリヌス菌毒素標的細胞」という用語は、天然ボツリヌス菌毒素が中毒を起こすことができる天然細胞である細胞を意味し、これには、非限定的に、運動ニューロン;感覚ニューロン;自律神経ニューロン;例えば、交感神経ニューロンおよび副交感神経ニューロンなど;非ペプチド作動性ニューロン、例えば、コリン作動性ニューロン、アドレナリン作動性ニューロン、ノルアドレナリン作動性ニューロン、セロトニン作動性ニューロン、GABA作動性ニューロンなど;ならびにペプチド作動性ニューロン、例えば、サブスタンスPニューロン、カルシトニン遺伝子関連ペプチドニューロン、血管作用性小腸ペプチドニューロン、ニューロペプチドYニューロン、コレシストキニンニューロンなどが含まれる。
【0036】
「単離された」とは、その天然状態において見出される場合に通常それに伴う成分を様々な程度で含まない材料を意味する。「単離する」とは、元の供給源または環境から、例えば隣接するDNAからまたはDNAの天然供給源からのある程度の分離を意味する。
【0037】
「精製された」という用語は、調製物の他の成分(例えば、他のポリペプチド)に関して「実質的に純粋」であるポリペプチドなどの物質を指すために用いられる。これは、他の成分に関して少なくとも約50%、60%、70%、または75%、好ましくは少なくとも約85%、より好ましくは少なくとも約90%、および最も好ましくは少なくとも約95%純粋であるポリペプチドを指し得る。言い換えると、あるポリペプチドに関して「実質的に純粋」または「本質的に精製された」という用語は、1つまたは複数の他の成分(例えば、他のポリペプチドまたは細胞成分)を約20%よりも少なく、より好ましくは約15%、10%、8%、7%よりも少なく、最も好ましくは約5%、4%、3%、2%、1%よりも少なく、または1%未満含む調製物を指す。
【0038】
本明細書で用いられる「保存的」または「保存的置換変異」という用語は、あるアミノ酸が、類似の特性を有する別のアミノ酸に取って代わり、その結果、ペプチド化学の当業者が、そのポリペプチドの二次構造、化学的性質、および/またはヒドロパシー性質が実質的に変化しないことを予測する変異を指す。以下のアミノ酸群が、歴史的に保存的変化として互いに置換されている:(1) ala、pro、gly、glu、asp、gln、asn、ser、thr;(2) cys、ser、tyr、thr;(3) val、ile、leu、met、ala、phe;(4) lys、arg、his;および (5) phe、tyr、trp、his。一般に許容されている他の保存的置換を、以下のリストに記載する:
【0039】
特定のアミノ酸を考慮しない「置換変異」という用語は、その位置に通常見出される野生型残基以外の任意のアミノ酸を含み得る。このような置換は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロシイン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、およびプロリンなどの非極性(疎水性)アミノ酸との置き換えであってよい。置換は、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、およびグルタミンなどの極性(親水性)アミノ酸との置き換えであってよい。置換は、荷電アミノ酸、例えば、アスパラギン酸およびグルタミン酸などの負荷電アミノ酸、ならびにリジン、アルギニン、およびヒスチジンなどの正荷電アミノ酸との置き換えであってよい。
【0040】
本明細書に記載される置換変異は、典型的には異なる天然アミノ酸残基との置き換えであるが、場合によっては非天然アミノ酸残基が置換されてもよい。非天然アミノ酸とは、本用語が本明細書で用いられる場合、天然に存在するかまたは化学合成された非タンパク新生(すなわち、非タンパク質コード)アミノ酸である。この例には、β-アミノ酸(β3およびβ2)、ホモ-アミノ酸、プロリンおよびピルビン酸誘導体、3-置換アラニン誘導体、グリシン誘導体、環-置換フェニルアラニンおよびチロシン誘導体、線状コアアミノ酸、ジアミノ酸、D-アミノ酸、およびN-メチルアミノ酸が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの態様において、アミノ酸は置換または非置換であってよい。置換アミノ酸または置換基は、ハロゲン化芳香族アミノ酸もしくは脂肪族アミノ酸、疎水性側鎖上のハロゲン化脂肪族修飾もしくは芳香族修飾、または脂肪族修飾もしくは芳香族修飾であってよい。
【0041】
「治療的有効量」という用語は、ある病態を有する典型的な対象に投与した場合に、その病態の1つまたは複数の症状の治療的に有意な軽減をもたらすのに十分である量を指す。症状の治療的に有意な軽減は、対照または未治療対象と比較して、例えば約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約100%、またはそれ以上である。
【0042】
「治療する」または「治療」という用語は、目的が症状を取り除くまたは和らげることである治療的処置を指す。有益なまたは望ましい臨床結果には、症状の排除、症状の緩和、病態の程度の縮小、病態の安定した(すなわち、悪化しない)状態、病態の進行の遅延または緩徐化が含まれるが、これらに限定されない。
【0043】
本明細書で用いられる場合、「対象」とはヒトまたは動物を指す。通常、動物とは、霊長類、齧歯類、家畜、または狩猟動物などの脊椎動物である。霊長類には、チンパンジー、カニクイザル、クモザル、およびマカク、例えばアカゲザルが含まれる。齧歯類には、マウス、ラット、ウッドチャック、フェレット、ウサギ、およびハムスターが含まれる。家畜および狩猟動物には、ウシ、ウマ、ブタ、シカ、バイソン、水牛、ネコ科種、例えば家猫、イヌ科種、例えば、イヌ、キツネ、オオカミ、鳥類種、例えば、ニワトリ、エミュー、ダチョウ、ならびに魚類、例えば、マス、ナマズ、およびサケが含まれる。患者または対象には、前述の任意のサブセット、例えば、ヒト、霊長類、または齧歯類などの1つまたは複数の群または種を除く上記のすべてが含まれる。本明細書に記載される局面のある種の態様において、対象は哺乳動物、例えば霊長類、例えばヒトである。「患者」および「対象」という用語は、本明細書において互換的に用いられる。対象は、雄性であってもまたは雌性であってもよい。対象は、十分に発達した対象(例えば、成体)であっても、または発達過程にある対象(例えば、子供、幼若体、または胎仔)であってもよい。
【0044】
好ましくは、対象は哺乳動物である。哺乳動物は、ヒト、非ヒト霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマ、またはウシであってよいが、これらの例に限定されない。ヒト以外の哺乳動物は、望ましくないニューロン活動と関連した障害の動物モデルを表す対象として有利に使用することができる。加えて、本明細書に記載される方法および組成物は、家畜および/またはペットを治療するために用いることもできる。
【0045】
態様
BoNT/Bが、ヒトSyt IIと結合できないためにヒトにおける特異性が低くかつ作用が弱いという観察は、BoNT/Aよりも比較的高い用量が必要である理由を説明できる。より高いBoNT/B用量は、抗体応答を誘発するおよび重篤な副作用が起こる機会の増加に対応する。したがって、BoNT/Bのヒト受容体Syt IIへの結合を改善して、ヒトニューロンを標的化するためのその有効性および特異性を増大させることによって、治療適用で用いられる毒素用量の減量が可能になるはずである。
【0046】
本発明の局面は、BoNT/B-H
Cのタンパク質配列を改変することで、受容体結合ドメインを含む断片のヒトSyt II受容体への結合が変化するという知見から生じている。結合を増強し、それによって高親和性でヒトSyt IIと結合するドメインを作製する特定の改変が同定された。改変BoNT/B-H
Cは、全長BoNTタンパク質の状況において、これらの結合特性を保持する。結合が増強された改変受容体結合ドメインを、他のBoNTドメインを含む分子に取り込み、それによって、受容体結合が同様に増強された全長BoNTが作製される。したがって、ヒトSyt IIに対する親和性結合が高い新型のBoNTが作製される。結合が有意に増強されたBoNTは、現在利用可能なBoNT分子よりも低用量であるにもかかわらず、同様の治療において使用することができ、したがってより安全な治療方法を提供する。
【0047】
全長BoNTポリペプチドおよび本明細書に記載されるBoNTポリペプチド断片またはドメインを含むBoNTポリペプチド、ならびにそれらをコードする核酸分子は、本発明に明確に包含される。これらのポリペプチドおよび核酸分子は、当技術分野で公知の組換えDNA手順によって作製することができる。このようなポリペプチドは典型的に、「組換えポリペプチド」または「組換え核酸」と称される。
【0048】
BoNTは、
図1Bに示される全体構造を有する。BoNTは、それぞれが特異的かつ独立した機能を有する3つのドメイン:プロテアーゼドメイン(軽鎖とも称される)、移行ドメイン (H
N)、および受容体結合ドメイン (H
C) からなる。様々な株のボツリヌス菌神経毒素のドメインが、大きく互換的であることが示されている(米国特許第8,052,979号において、BoNT/Cの軽鎖およびH
NとBoNT/DのH
Cから構成されるBoNT/CDなどの天然キメラ毒素によって実証される
34)。このタンパク質は、一本鎖型または二本鎖型であってよい。二本鎖型は、プロテアーゼドメインと移行ドメインの間に位置するプロテアーゼ切断部位の天然のプロテアーゼプロセシングによって生じる。このタンパク質は、ジスルフィド結合の存在によって、プロテアーゼプロセシング後に二本鎖型で維持される。
【0049】
本発明の1つの局面は、プロテアーゼドメインと、移行ドメインと、本明細書に記載されるボツリヌス菌血清型Bの改変受容体結合ドメインと、プロテアーゼ切断部位とを含むボツリヌス神経毒素 (BoNT) に関する。典型的に、これらは、プロテアーゼドメイン、プロテアーゼ切断部位、移行ドメイン、および改変受容体結合ドメインという、線状のアミノからカルボキシルの単一ポリペプチド順で配置される。しかしながら、様々なドメインの異なる配置も適切に機能すると予測される。1つの態様において、改変受容体結合ドメインは、ヒトSyt I受容体および/またはヒトSyt II受容体に対する有意に増強した結合をもたらす1つまたは複数の置換変異を含む。
【0050】
ボツリヌス菌 (
Clostridium botulinum) の株は、抗原性の異なる7つの型のボツリヌス毒素 (BoNT) を産生し、それらはヒト(BoNT/A、/B、/E、および/F)、動物(BoNT/C1および/D)におけるボツリヌス中毒の大発生を調査することによって同定されたか、または土壌から単離された (BoNT/G)。7つのBoNT血清型のすべてが類似の構造および薬理学的特性を有するが、それぞれはまた異質な細菌学的特徴を示す。ボツリヌス菌株の遺伝的多様性は、Hill et al. (Journal of Bacteriology, Vol. 189, No. 3, p. 818-832 (2007)) に詳細に記載されており
35、その内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【0051】
様々なボツリヌス菌株由来の毒素は、同じ機能的ドメイン編成および全体的な構造構成を共有している。ボツリヌス菌毒素はそれぞれ、およそ150 kDaの一本鎖ポリペプチドとして翻訳され、これは次いで、天然プロテアーゼ、例えば内因性ボツリヌス菌毒素プロテアーゼまたはその環境において生成された天然プロテアーゼなどによるジスルフィドループ内でのタンパク分解切断によって切断される。この翻訳後プロセシングにより、単一のジスルフィド結合および非共有結合相互作用によって1つに保たれたおよそ50 kDaの軽鎖 (LC) およびおよそ100 kDaの重鎖 (HC) を含む二本鎖分子が生じる。各成熟二本鎖分子は、機能的に異なる3つのドメイン:1) 神経伝達物質放出装置のコア成分を特異的に標的化する亜鉛依存性エンドペプチダーゼ活性を含むメタロプロテアーゼ領域を含む、LC内に位置するタンパク質分解ドメイン;2) 標的細胞の細胞内小胞から細胞質中へのLCの放出を促進する、HCのアミノ末端側半分 (H
N) 内に含まれる移行ドメイン;および 3) 標的細胞の表面に位置する受容体複合体への毒素の結合活性および結合特異性を決定する、HCのカルボキシル末端側半分内に見出される結合ドメインを含む。毒素内の特異的ドメインの位置を表1に提供する。
【0052】
(表1)様々な種に由来するボツリヌス菌毒素ドメイン
【0053】
毒素の完全なアミノ酸配列を
図10〜16に提供する。
【0054】
毒性には、これらの3つの機能的ドメインの結合活性、移行活性、およびプロテアーゼ活性がすべて必要である。ボツリヌス菌毒素がニューロンに侵入し、神経伝達物質放出を阻害する際の全体的な細胞中毒機構は、血清型またはサブタイプにかかわらず類似している。理論によって縛られることは望まないが、中毒機構は、少なくとも4つの段階:1) 受容体結合、2) 複合体内部移行、3) 軽鎖移行、および4) プロテアーゼ標的修飾を含む。この過程は、ボツリヌス菌毒素のH
Cドメインが、標的細胞の形質膜表面上に位置する毒素特異的受容体に結合した時に始まる。受容体複合体の結合特異性は、一部には、ガングリオシドとタンパク質受容体の特異的組み合わせによって達成されると考えられている。ひとたび結合すると、毒素/受容体複合体はエンドサイトーシスによって内部に取り入れられ、内部に取り入れられた小胞は特異的細胞内経路へと選別される。移行段階は、小胞区画の酸性化によって誘発される。ひとたび移行すると、毒素の軽鎖エンドペプチダーゼが細胞内小胞からサイトゾル中に放出され、そこで、神経伝達物質放出装置のコア成分として知られている3つのタンパク質(小胞結合膜タンパク質 (VAMP)/シナプトブレビン、25 kDaのシナプトソーム結合タンパク質 (SNAP-25)、およびシンタキシン)のうちの1つを特異的に標的化する。これらのコア成分は、神経終末におけるシナプス小胞のドッキングおよび融合に必要であり、可溶性N-エチルマレイミド感受性因子付着タンパク質受容体 (SNARE) ファミリーのメンバーを構成する。BoNT/AおよびBoNT/Eは、SNAP-25をカルボキシ末端領域で切断し、それぞれ9または26アミノ酸セグメントを放出し、BoNT/C1もまたSNAP-25をカルボキシ末端の近傍で切断する。ボツリヌス血清型BoNT/B、BoNT/D、BoNT/F、およびBoNT/G、ならびに破傷風毒素は、VAMPの保存された中心部分に作用し、VAMPのアミノ末端部分をサイトゾル中に放出する。BoNT/C1は、シンタキシンをサイトゾル側形質膜表面の近傍の単一部位で切断する。シナプスSNAREの選択的タンパク質分解は、インビボでボツリヌス菌毒素によって起こる神経伝達物質放出の遮断の原因である。ボツリヌス菌毒素のSNAREタンパク質標的は、種々の非ニューロン型のエキソサイトーシスに共通している;これらの細胞では、ニューロンの場合と同様に、軽鎖ペプチダーゼ活性がエキソサイトーシスを阻害する。例えば、Yann Humeau et al., How Botulinum and Tetanus Neurotoxins Block Neurotransmitter Release, 82(5) Biochimie. 427-446 (2000);Kathryn Turton et al., Botulinum and Tetanus Neurotoxins: Structure, Function and Therapeutic Utility, 27(11) Trends Biochem. Sci. 552-558. (2002);Giovanna Lalli et al., The Journey of Tetanus and Botulinum Neurotoxins in Neurons, 11(9) Trends Microbiol. 431-437, (2003)を参照されたい。
【0055】
本発明のボツリヌス神経毒素は、改変受容体結合ドメインを含む。改変受容体結合ドメインは、1つまたは複数のボツリヌス菌毒素株が典型的に結合し、使用する1つまたは複数のヒト受容体に対する有意に増強した結合を示す。特定の改変受容体結合ドメインの例を本明細書において提供する。本明細書に記載される単離された改変受容体結合ドメインポリペプチドもまた本発明によって包含され、それをコードする単離された核酸分子も同様に本発明によって包含される。
【0056】
本発明のボツリヌス神経毒素はまた、当技術分野で軽鎖変種とも称されるプロテアーゼドメインを含む。軽鎖変種は、天然軽鎖変種、例えばボツリヌス菌毒素軽鎖アイソフォームおよびボツリヌス菌毒素軽鎖サブタイプなど;または非天然ボツリヌス菌毒素軽鎖変種、例えば保存的置換ボツリヌス菌毒素軽鎖変種などであってよい。
【0057】
本発明のボツリヌス神経毒素はまた、毒素移行ドメイン (H
N) を含む。
【0058】
本明細書に記載される様々なドメイン(例えば、H
N、H
c、またはプロテアーゼドメイン)には、非限定的に、天然変種、例えばアイソフォームおよびサブタイプなど;非天然変種、例えば保存的置換変異などが含まれる。非天然変種とは、参照配列(例えば、表1または
図10〜16による)の対応する領域からの少なくとも1つのアミノ酸変化を有するドメインを指し、その参照配列の対応する領域に対するパーセント同一性で記載され得る。
【0059】
各血清型のボツリヌス菌毒素には、アミノ酸配列がいくらか異なり、およびまたこれらのタンパク質をコードする核酸もいくらか異なる天然ボツリヌス菌ドメイン変種が存在し得ることが、当業者によって認識されている。本発明のBoNTの作製における使用のために想定される天然ボツリヌス菌毒素ドメイン(例えば、軽鎖、H
N、またはH
C)変種は、その天然ボツリヌス菌ドメイン変種の基礎となる参照ボツリヌス菌毒素ドメインと実質的に同じ様式で機能することができ、本発明の任意の局面において参照ボツリヌス菌毒素ドメインに取って代わることができる。
【0060】
天然ボツリヌス菌毒素ドメイン変種の非限定的な例は、ボツリヌス菌毒素ドメインアイソフォーム、例えば、BoNT/Aドメインアイソフォーム、BoNT/Bドメインアイソフォーム、BoNT/C1ドメインアイソフォーム、BoNT/Dドメインアイソフォーム、BoNT/Eドメインアイソフォーム、BoNT/Fドメインアイソフォーム、およびBoNT/Gドメインアイソフォームなどである。ボツリヌス菌毒素ドメインアイソフォームは、そのボツリヌス菌毒素ドメインアイソフォームの基礎となる参照ボツリヌス菌毒素ドメインと実質的に同じ様式で機能することができ、本発明の任意の局面において参照ボツリヌス菌毒素ドメインに取って代わることができる。
【0061】
天然ボツリヌス菌毒素ドメイン変種の別の非限定的な例は、ボツリヌス菌毒素ドメインサブタイプ、例えば、サブタイプBoNT/A1、BoNT/A2、BoNT/A3、BoNT/A4、BoNT/A5に由来するドメイン;サブタイプBoNT/B1、BoNT/B2、BoNT/B3、BoNT/B4、BoNT/B5、BoNT/B6、BoNT/B7に由来するドメイン;サブタイプBoNT/C1-1、BoNT/C1-2、BoNT/D-Cに由来するドメイン;サブタイプBoNT/E1、BoNT/E2、BoNT/E3、BoNT/E4、BoNT/E5、BoNT/E6、BoNT/E7、BoNT/E8に由来するドメイン;およびサブタイプBoNT/F1、BoNT/F2、BoNT/F3、BoNT/F4、BoNT/F5、BoNT/F6、BoNT/F7に由来するドメインなどである。ボツリヌス菌毒素ドメインサブタイプは、そのボツリヌス菌毒素ドメインサブタイプの基礎となる参照ボツリヌス菌毒素ドメインと実質的に同じ様式で機能することができ、本発明の任意の局面において参照ボツリヌス菌毒素ドメインに取って代わることができる。
【0062】
本明細書で用いられる場合、「非天然変種」(例えば、ボツリヌス菌毒素軽鎖変種、H
C、およびH
N)という用語は、人為的操作の助けを借りて生成されたボツリヌス菌ドメインを意味し、これには非限定的に、ランダム突然変異誘発または合理的設計を用いて遺伝子操作により生成されたドメイン、および化学合成によって生成されたドメインが含まれる。非天然ボツリヌス菌ドメイン変種の非限定的な例には、例えば保存的ボツリヌス菌ドメイン変種が含まれる。本明細書で用いられる場合、「保存的ボツリヌス菌ドメイン変種」という用語は、少なくとも1つのアミノ酸が、参照ボツリヌス菌ドメイン配列(例えば、表1および
図10〜16)由来の元のアミノ酸の性質と類似した少なくとも1つの性質を有する別のアミノ酸またはアミノ酸類似体によって置換されているボツリヌス菌ドメインを意味する。変種は、参照ドメイン配列と比較して、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、またはそれ以上の保存的アミノ酸置換を有し得る。性質の例には、非限定的に、類似のサイズ、トポグラフィー、電荷、疎水性、親水性、親油性、共有結合能、水素結合能、物理化学的性質など、またはそれらの任意の組み合わせが含まれる。保存的ボツリヌス菌ドメイン変種は、その保存的ボツリヌス菌毒素ドメイン変種の基礎となる参照ボツリヌス菌毒素ドメインと実質的に同じ様式で機能することができ、本発明の任意の局面において参照ボツリヌス菌ドメインに取って代わることができる。
【0063】
非天然ボツリヌス菌毒素ドメイン変種では、その天然ボツリヌス菌毒素ドメインの基礎となる参照ボツリヌス菌毒素ドメインから1つまたは複数のアミノ酸(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、またはそれ以上)を置換することができる。非天然ボツリヌス菌毒素ドメイン変種はまた、その天然ボツリヌス菌ドメイン変種の基礎となる参照ボツリヌス菌毒素ドメインと95%またはそれ以上(例えば、96%、97%、98%、または99%)のアミノ酸同一性を有し得る。
【0064】
様々な非天然ボツリヌス菌神経毒素またはその特異的ドメインが、国際特許出願公開W095/32738、W096/33273、WO98/07864、およびWO99/17806に記載されており、これらはそれぞれ参照により本明細書に組み入れられる。
【0065】
本明細書に記載されるボツリヌス菌神経毒素またはその特異的ドメインは、典型的には天然アミノ酸残基を含むが、場合によっては非天然アミノ酸残基が存在してもよい。したがって、特定のアミノ酸またはペプチドの構造を模倣する非アミノ酸化学構造を含み得る、いわゆる「ペプチド模倣体」および「ペプチド類似体」を、本発明の状況において用いることもできる。このような模倣体または類似体は、一般的に、サイズ、電荷、または疎水性などの類似の物理的特性、およびそれらの天然ペプチド対応物中に見出される適切な空間的方向性を示すと特徴づけられる。ペプチド模倣体化合物の具体例は、当技術分野で周知であるように、1つまたは複数のアミノ酸間のアミド結合が、例えば炭素‐炭素結合またはその他の非アミド結合によって置き換えられた化合物である(例えば、Sawyer, in Peptide Based Drug Design, pp. 378-422, ACS, Washington D.C. 1995を参照されたい)。
【0066】
本発明の1つの局面において、本発明のボツリヌス神経毒素 (BoNT) は、ボツリヌス菌血清型Bの改変受容体結合ドメイン (BoNT/B-H
C)を含む。改変BoNT/B-H
Cは、ヒトSyt I受容体および/またはヒトSyt II受容体に対する有意に増強した結合をもたらす1つまたは複数の置換変異を含む。1つの態様において、BoNT/B-H
cはBoNT/B1(GenBankアクセッション番号:AB232927.1)に由来する。本発明において参照鋳型として用いられるBoNT/B1-H
C Okra株のアミノ酸配列を
図8に示す。本明細書に記載されるB1中の特定の位置に対応するアミノ酸の置換による、他の株に由来するB-H
cの作製もまた想定される。本発明には、本明細書に記載される単離され精製された改変受容体結合ドメインポリペプチドもまた包含される。本発明はまた、本明細書に記載される改変受容体結合ドメインを含むポリペプチドを包含する。本発明はまた、そのようなポリペプチドをコードする核酸分子を包含する。1つの態様において。改変受容体結合ドメインはBoNT/B-H
C(例えば、BoNT/B1由来)である。
【0067】
BoNT/B-H
Cタンパク質配列の改変は、SytI/IIと結合することが知られている領域内の各アミノ酸残基の標的化突然変異誘発(部位特異的突然変異誘発)またはランダム突然変異誘発のいずれかによって行うことができる。これらのSyt結合領域は、マウスまたはラットSyt受容体に関する以前の研究によって明確に定義されているが
1、29、3631、32、BoNT/B-H
cとヒトSyt受容体との相互作用に関しては明白には決定されていない。異なるサブタイプのBoNT/Bを鋳型として用いて、B1-H
Cについて本明細書に記載される変異に対応する変異を作製することにより、同じまたは類似の変異を作出することができる。変異させるために選択された残基の対応する位置は、B1サブタイプとの配列アラインメントによって容易に同定することができる。結果として生じるポリペプチド産物は本発明によって包含され、該産物を含むポリペプチドならびに該ポリペプチドおよび産物をコードする核酸分子もまた本発明によって包含される。
【0068】
改変受容体結合ドメインを生成するためのアミノ酸配列改変は、単一残基の異なるアミノ酸への変異(単一部位置換)、同時の複数残基の変異(複数部位置換)、1つまたは複数の残基の欠失(欠失)、および1つまたは複数の残基の挿入(挿入)、ならびにそれらの組み合わせであってよい。タンパク質を変異させるための方法は、当技術分野で周知である(例えば、BoNT/B-H
C配列をコードするDNAに対する標的化単一部位置換および複数部位置換)。
【0069】
1つの態様では、BoNT/B受容体結合ドメインに関する以前の文献
29および報告されたBoNT/B-Syt II構造(PDB ID:2NM1)
31、32に基づいて、BoNT/B-H
C中の、齧歯類Syt IIと接触するかまたはその周囲領域のいずれかの1つまたは複数の残基を改変する。これらには、非限定的に、BoNT/B-B1のY1181、P1197、A1196、F1204、F1194、P1117、W1178、Y1183、V1118、S1116、K1113、K1192、S1199、S1201、E1191、E1245、Y1256位に対応する位置が含まれる。1つの態様では、これらの残基のうちの1つまたは複数を疎水性アミノ酸(例えば、V、I、L、M、F、W、C)に改変する。1つの態様では、これらの残基のうちの1つまたは複数を、疎水性の低いアミノ酸(例えば、A、Y、H、T、S、P、Q、N、およびG)に改変する。様々な改変の組み合わせもまた想定され、これには非限定的に、列挙された2つまたはそれ以上の位置の、任意の種々の本明細書に列挙された様々なアミノ酸への改変が含まれる。
【0070】
1つの態様において、BoNT/B-H
Cは、WT BoNT/B-H
Cと比較してヒトSyt IIへの結合を増強する1つまたは複数の置換変異(例えば、B1のE1191、S1199、S1201、V1118、P1117、Y1183、A1196、およびY1181位に対応する位置における)を有する。1つの態様において、変異は、B1のE1191M/I/T/L/Q(E1191M、E1191I、E1191T、E1191L、またはE1191Q)、V1118M、S1199Y/L/F(S1199Y、S1199L、またはS1199F)、S1201V、P1117S/M/Y(P1117S、P1117M、またはP1117Y)、Y1183M、Y1181M、A1196Y、またはそれらの組み合わせに対応する1つまたは複数の変異を含む(
図3A、B)。適切には、変異は、1118、1191、および1199位、またはそれらの組み合わせにおける上記変異より選択される。詳細には、V1118M、E1191M/Q/I、およびS1199Yの1つまたは複数より選択される変異が有益であり得る。より詳細には、h-Syt IIとの結合に関して最も強い増強を示すという理由で、B1のE1191MまたはE1191Q位に対応する変異が想定される。B1のE1191MまたはE1191Qに対応する変異はまた、WT BoNT/B-H
Cと比較して、BoNT/B-H
CのヒトSyt Iへの結合を有意に増強する(
図4A)。1つの態様において、BoNT/B-H
Cは2つの置換変異を有する。
【0071】
同定されたこれらの重要な残基における変異を組み合わせることにより、複数の部位置換を作製することもできる。このような複数部位置換変異体は、ヒトSyt Iおよびh-Syt IIに対するさらに増強した結合を有する(
図5)。非限定的な例として、B1のE1191MまたはE1191QとS1199L、S1199Y、またはS1199Fに対応するような、2つの単一部位置換を組み合わせた変異は、ヒトSyt Iおよびh-Syt IIの両方に対する有意に増強した結合を示した(
図5)。1199位での変異単独によって達成される結合活性の増強が比較的軽微であったことを考えると、結合強度のこの増強は驚くべきことであった。
【0072】
1つの態様では、ヒトSyt IIへの結合が増強されたBoNT/B-H
C変異体をもたらすという理由で、BoNT/B-B1のE1191、S1199、S1201、V1118、P1117、A1196、Y1181、およびY1183位に対応する残基の置換が想定される。B1のE1191、S1199、S1201、V1118、P1117、Y1181、Y1183、およびA1196に対応する置換を含むがこれらに限定されない位置における付加的な組み合わせ置換によって、ヒトSytIIへの結合が増強されたBoNT/B-H
C変異体が得られる。
【0073】
したがって、本発明は、WT BoNT/B-H
Cの配列に対して改変されたアミノ酸配列を有するBoNT/B-H
Cを含むポリペプチドを包含し、この改変BoNT/B-H
Cは、WT BoNT/B-H
Cと比較して、ヒトSyt IおよびSyt IIに対する有意に増強した結合を有する。本発明はさらに、このようなポリペプチドをコードする核酸分子を包含する。好ましい態様において、改変BoNT/B-H
C変異体は、B1のV1118、E1191、S1199、S1201、P1117、Y1181、Y1183、およびA1196に対応するアミノ酸残基の1つまたは組み合わせにおけるアミノ酸置換を含む。1つの態様において、これらの改変は、B1のS1199L、S1199Y、またはS1199Fと組み合わせたE1191MまたはE1191Qに対応する変異を含む。
【0074】
本発明はまた、ヒトにおける治療適用のための、上記のB-H
cにおける同じアミノ酸置換を含む変異体全長BoNT/Bを包含する。好ましい態様において、全長BoNT/B変異体は、B1のE1191、V1118、S1199、S1201、P1117、Y1181、Y1183、およびA1196位に対応するアミノ酸残基の1つまたは組み合わせにおけるアミノ酸置換を含む。1つの態様において、改変は、E1191MまたはE1191QとS1199L、S1199Y、またはS1199Fの組み合わせを含む。変異は、鋳型としてBoNT/Bサブタイプのいずれか1つを用いて、BoNT/B-H
Cについて上記されたのと同じ様式で作製することができる。これらの変異体BoNT/B毒素は、ヒトSyt IIおよびヒトSyt Iの両方に対して有意に増強した結合を有し、したがってヒトニューロンを標的化するための、WT BoNT/Bよりも高い有効性および特異性を達成する。
【0075】
毒素の拡散および中和抗体の産生はBoNT/Bに限定されず、BoNT/Aについても認められ、BoNT/Aのその受容体SV2への結合親和性もまた改善が必要であることが示される。BoNT/BのSyt I/IIへの結合はBoNT/AのSV2への結合よりもはるかに高い親和性を有するため
14、20、26、27、ヒトSyt IIと結合する能力を有する改変BoNT/B受容体結合ドメイン (BoNT/B-H
C) を用いてBoNT/A-H
Cを置き換えて、ヒトニューロンに対してWT BoNT/Aよりも高い有効性および特異性を有する改変キメラBoNT/Aを作製することもできる
28 29 30。
【0076】
上記の改変BoNT/B-H
Cを使用して、他のすべてのBoNTのH
Cを置き換えることができることもさらに想定される。各BoNTのH
C領域は明確に定義されており、それらの置き換えは、当技術分野で十分に確立されている、BoNT/B-H
Cと他のBoNTのH
N-LCをコードするDNAの標準的なPCR融合によって行うことができる。加えて、これらの置き換えはまた、各BoNTにおいてタンパク質受容体およびガングリオシドに対する結合部位を含む領域であるBoNT/B-H
CのC末端部分(H
CCと命名される)を用いて行うこともできる。結果として生じるキメラ毒素は、ヒトSyt I/IIへの結合を介してヒトニューロンを標的化する能力を有する。非限定的な例として、改変BoNT/B-H
Cを用いて、BoNT/AのH
Cを置き換えることができる。結果として生じるポリペプチドは、本発明によって包含される。キメラ毒素は、WT BoNT/Aよりも、ヒトニューロンを標的化する高い有効性および特異性を有する。このようなキメラBoNT/A毒素は、ヒトにおける治療適用のために用いることができ、WT BoNT/Aを超える有意な改善を提供する。
【0077】
本発明の別の局面は、本明細書に記載されるポリペプチド(例えば、本明細書に記載される、改変受容体結合ドメインまたは該改変受容体結合ドメインを含むボツリヌス神経毒素)をコードするヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子に関する。1つの態様において、核酸分子は、
図9に示される核酸配列を含む。このような核酸分子は、組換えDNA技法によって生成することができる。
【0078】
本発明の別の局面は、本明細書に記載される核酸分子を含む核酸ベクターに関する。1つの態様において、ベクターは発現ベクターである。このような発現ベクターは、本明細書において発現構築物と称され、細胞または無細胞抽出物中で核酸分子を発現させるのに有用な発現ベクターに機能的に連結された、本明細書に開示される核酸分子を含む。本発明のボツリヌス菌神経毒素をコードする核酸分子を発現させるには、多種多様なベクターを使用することができ、これには非限定的に、ウイルス発現ベクター;原核生物発現ベクター;真核生物発現ベクター、例えば、酵母発現ベクター、昆虫発現ベクター、および哺乳動物発現ベクターなど;ならびに無細胞抽出物発現ベクターが含まれる。これらの方法の局面を実行するのに有用な発現ベクターには、構成的、組織特異的、細胞特異的、または誘導性のプロモーターエレメント、エンハンサーエレメント、またはその両方の制御下でボツリヌス菌神経毒素を発現する発現ベクターが含まれ得ることがさらに理解される。発現ベクターの非限定的な例は、そのような発現ベクターから発現構築物を作製し使用するための十分に確立された試薬および条件と共に、非限定的に、BD Biosciences-Clontech、Palo Alto, Calif.;BD Biosciences Pharmingen、San Diego, Calif.;Invitrogen,Inc、Carlsbad, Calif.;EMD Biosciences-Novagen、Madison, Wis.;QIAGEN, Inc.、Valencia, Calif.;およびStratagene、La Jolla, Calif.を含む商業的販売業者から容易に入手可能である。適切な発現ベクターの選択、作製、および使用は、本明細書における教示から、当業者の技術の範囲内に十分に入る日常的手順である。
【0079】
本発明の別の局面は、本明細書に記載される核酸分子または発現構築物を含む細胞に関する。細胞は、核酸の増殖もしくは核酸の発現またはその両方のためのものであってよい。このような細胞には、好気性菌、微好気性菌、好二酸化炭素性菌、通性菌、嫌気性菌、グラム陰性菌、およびグラム陽性菌細胞の株、例えば、大腸菌 (Escherichia coli)、枯草菌 (Bacillus subtilis)、バチルス・リケニフォルミス (Bacillus licheniformis)、バクテロイデス・フラギリス (Bacteroides fragilis)、ウェルシュ菌 (Clostridia perfringens)、クロストリジウム・ディフィシル (Clostridia difficile)、カウロバクター・クレセンタス (Caulobacter crescentus)、ラクトコッカス・ラクティス (Lactococcus lactis)、メチロバクテリウム・エキストルクエンス (Methylobacterium extorquens)、ナイセリア・メニンギラルス (Neisseria meningirulls)、髄膜炎菌 (Neisseria meningitidis)、蛍光菌 (Pseudomonas fluorescens)、およびネズミチフス菌 (Salmonella typhimurium) に由来するものなどを非限定的に含む原核細胞;ならびに、酵母株、例えば、ピキア・パストリス (Pichia pastoris)、ピキア・メタノリカ (Pichia methanolica)、ピキア・アングスタ (Pichia angusta)、シゾサッカロミセス・ポンベ (Schizosaccharomyces pombe)、サッカロミセス・セレビシエ (Saccharomyces cerevisiae)、およびヤロウイア・リポリティカ (Yarrowia lipolytica) に由来するものなどを非限定的に含む真核細胞;昆虫細胞および昆虫に由来する細胞株、例えば、ヨトウガ (Spodoptera frugiperda)、イラクサギンウワバ (Trichoplusia ni)、キイロショウジョウバエ (Drosophila melanogaster)、およびタバコスズメガ (Manduca sexta)に由来するものなど;ならびに哺乳動物細胞および哺乳動物に由来する細胞株、例えば、マウス、ラット、ハムスター、ブタ、ウシ、ウマ、霊長類、およびヒトなどに由来するものなどが非限定的に含まれる。細胞株は、American Type Culture Collection、European Collection of Cell Cultures、およびGerman Collection of Microorganisms and Cell Culturesから入手することができる。適切な細胞株を選択する、作製する、および使用するための具体的プロトコールの非限定的な例は、例えば、INSECT CELL CULTURE ENGINEERING (Mattheus F. A. Goosen et al. eds., Marcel Dekker, 1993);INSECT CELL CULTURES: FUNDAMENTAL AND APPLIED ASPECTS (J. M. Vlak et al. eds., Kluwer Academic Publishers, 1996);Maureen A. Harrison & Ian F. Rae, GENERAL TECHNIQUES OF CELL CULTURE (Cambridge University Press, 1997);CELL AND TISSUE CULTURE: LABORATORY PROCEDURES (Alan Doyle et al eds., John Wiley and Sons, 1998);R. Ian Freshney, CULTURE OF ANIMAL CELLS: A MANUAL OF BASIC TECHNIQUE (Wiley-Liss, 4.sup.th ed. 2000);ANIMAL CELL CULTURE: A PRACTICAL APPROACH (John R. W. Masters ed., Oxford University Press, 3.sup.rd ed. 2000);MOLECULAR CLONING A LABORATORY MANUAL、前記、(2001);BASIC CELL CULTURE: A PRACTICAL APPROACH (John M. Davis, Oxford Press, 2.sup.nd ed. 2002);およびCURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY、前記、(2004)に記載されている。これらのプロトコールは、本明細書における教示から、当業者の技術の範囲内の日常的手順である。
【0080】
本明細書に記載される改変BoNT/B-H
Cをヒトにおけるニューロンを標的化するための送達ツールとして使用することができることもまた想定される。例えば、改変BoNT/B-H
Cを他の治療薬に共有結合または非共有結合的に連結することができ、これは、ヒトSytI/IIへの結合によりヒトにおけるニューロンに治療薬を送達するための標的化媒体として働く。したがって、本発明の別の局面は、第2部分に連結された、ヒトSyt I受容体および/またはヒトSyt II受容体に対する有意に増強した結合をもたらす1つまたは複数の置換変異を含むボツリヌス菌血清型Bの改変受容体結合ドメインである第1部分を含む、キメラポリペプチド分子に関する。この分子の第2部分は、治療薬(例えば、ポリペプチドまたは薬物)などの生物活性分子であってよい。この分子の第1部分と第2部分の連結は、共有結合(例えば、融合タンパク質の形態)または非共有結合であってよい。このような連結の方法は当技術分野で公知であり、当業者によって容易に適用され得る。
【0081】
本発明の別の局面は、本明細書に記載されるボツリヌス菌神経毒素またはキメラ分子を含む薬学的組成物に関する。1つの態様において、本明細書に記載されるポリペプチドは、薬学的に許容される担体を含む組成物(本明細書において薬学的組成物と称される)中の活性成分である。「薬学的に許容される担体」とは、標的化送達組成物を混合する、および/または対象に送達するための薬学的に許容される任意の手段を意味する。本明細書で用いられる「薬学的に許容される担体」という用語は、ある器官または身体の一部から別の器官または身体の一部に本薬剤を運搬または輸送することに関与する、液体または固体の増量剤、希釈剤、賦形剤、溶媒、または封入材料などの、薬学的に許容される材料、組成物、または媒体を意味する。各担体は、組成物の他の成分と適合するという意味において「許容可能」でなければならず、対象、例えばヒトへの投与に適合している。このような組成物は、本明細書に記載される投与経路などのいくつかの経路のうちの1つまたは複数による投与のために特異的に製剤化することができる。補助活性成分もまた、組成物中に組み入れることができる。本明細書に記載される薬剤、製剤、または薬学的組成物を対象に投与する場合、好ましくは治療的有効量が投与される。本明細書で用いられる場合、「治療的有効量」という用語は、病態の改善または治癒をもたらす量を指す。1つの態様において、薬学的組成物は、注射による投与のために製剤化される。1つの態様において、薬学的組成物は、ミクロスフェア中に封入されたボツリヌス神経毒素を含む。1つの態様において、薬学的組成物は、徐放のために製剤化されたボツリヌス神経毒素を含む。
【0082】
1つの態様において、本発明のボツリヌス神経毒素、ポリペプチド、またはキメラ分子は、制御放出処方の形態である。このような組成物および投与方法は、米国特許出願公開第2007/0020295号に提供されており、この内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【0083】
ボツリヌス神経毒素は、公知の手順に従って、発酵槽においてボツリヌス菌 (Clostridium botulinum) の培養物を樹立して増殖させ、次にその発酵混合物を収集し精製することによって得ることができる。すべてのボツリヌス毒素血清型は、初めに不活性な一本鎖タンパク質として合成され、これが神経活性となるためには、プロテアーゼによって切断されるかまたはニックが入れられなければならない。ボツリヌス毒素血清型AおよびGを産生する細菌株は内因性プロテアーゼを有し、したがって血清型AおよびGは細菌培養物から主にその活性型で回収することができる。これに対して、ボツリヌス毒素血清型C
1、D、およびEは非タンパク質分解株によって合成され、したがって培養物から回収された時には典型的には活性化されていない。血清型BおよびFはタンパク質分解株および非タンパク質分解株の両方によって産生され、したがって活性型または不活性型のいずれでも回収することができる。例えばボツリヌス毒素血清型Bを産生するタンパク質分解株は、産生された毒素の一部を切断し得るに過ぎない。ニックの入っていない分子に対するニックの入った分子の正確な比率は、インキュベーションの長さおよび培養の温度に依存する。したがって、例えばボツリヌス毒素B型毒素の調製物の一定の割合は不活性となる可能性がある。1つの態様において、本発明の神経毒素は活性状態にある。1つの態様において、神経毒素は不活性状態にある。1つの態様では、活性神経毒素と不活性神経毒素の組み合わせが想定される。
【0084】
本発明には、本明細書に記載される薬学的組成物を含むキットもまた包含される。キットは、組成物の治療的投与のための送達ツールもしくは装置、および/または治療的投与のための説明書をさらに含み得る。
【0085】
本発明の別の局面は、薬学的組成物が予め充填された、本明細書に記載される薬学的組成物の投与のための送達ツールまたは装置(例えば、単回使用用)に関する。このような装置は、組成物を送達するためのシリンジまたはマイクロニードル装置であってよい。シリンジは、組成物の有効量が予め充填された単回使用シリンジであってよい。マイクロニードル装置は、その内容が全体として本明細書に組み入れられる、米国特許出願公開第2010/0196445号に記載されているような、本明細書に記載される組成物でコーティングされた1つまたは複数のマイクロニードルを含み得る。
【0086】
治療方法
本発明はまた、典型的に神経毒素で治療が行われる病態(例えば、骨格筋病態、平滑筋病態、腺病態、神経筋障害、自律神経障害、疼痛、または審美的/美容的病態)を治療するための方法を含む。このような病態は、熟練した実践者が判定して、望ましくないニューロン活動と関連している。本方法は、望ましくないニューロン活動を軽減するために、本明細書に記載される薬学的組成物(例えば、ボツリヌス神経毒素 (BoNT) またはキメラ分子を含む)の治療的有効量を哺乳動物の適切な位置に投与し、それによって病態を治療する段階を含む。投与は、組成物の有効量を、望ましくない活動を示しているニューロンに接触させる経路によるものである。
【0087】
本明細書で考察される方法による治療に関して想定される特定の病態には、非限定的に、痙攣性発声障害、痙性斜頸、喉頭ジストニア、口下顎発声障害、舌ジストニア、頸部ジストニア、局所性手ジストニア、眼瞼痙攣、斜視、片側顔面痙攣、眼瞼障害、脳性麻痺、局所性痙縮および他の発声障害、痙攣性大腸炎、神経因性膀胱、アニスムス、四肢痙縮、チック、振戦、歯ぎしり、裂肛、アカラシア、嚥下障害および他の筋緊張障害および筋肉群の不随意運動を特徴とする他の障害、流涙、多汗症、唾液分泌過剰、消化管分泌過剰、および他の分泌障害、筋痙攣による疼痛、頭痛が含まれる。加えて、本発明は、皮膚科学的または審美的/美容的病態の治療、例えば、眉間のシワの軽減、肌のシワの軽減に用いることもできる。本発明はまた、スポーツ傷害の治療に用いることもできる。
【0088】
Borodicの米国特許第5,053,005号は、A型ボツリヌスを用いて、若年の脊柱弯曲症、すなわち脊柱側弯症を治療する方法を開示している。Borodicの開示は、全体として参照により本明細書に組み入れられる。1つの態様では、Borodicによって開示された方法と実質的に同様の方法を用いて、改変神経毒素を哺乳動物、好ましくはヒトに投与して、脊柱弯曲症を治療することができる。適切な態様では、ロイシンベースのモチーフと融合されたE型ボツリヌスを含む改変神経毒素が投与される。さらにより好ましくは、脊柱弯曲症を治療するために、その軽鎖のカルボキシル末端にロイシンベースのモチーフが融合されたA〜E型ボツリヌスを含む改変神経毒素が哺乳動物、好ましくはヒトに投与される。
【0089】
加えて、A型ボツリヌスを用いて一般的に行われている周知の技法を用いて、改変神経毒素を投与して、その他の神経筋障害を治療することができる。例えば、本発明を用いて、疼痛、例えば、頭痛、筋痙攣による疼痛、および様々な形態の炎症性疼痛を治療することができる。例えば、Aoki 米国特許第5,721,215号およびAoki 米国特許第6,113,915号は、疼痛を治療するために、A型ボツリヌス毒素を用いる方法を開示している。これら2つの特許の開示は、全体として参照により本明細書に組み入れられる。
【0090】
自律神経系障害もまた、改変神経毒素で治療することができる。例えば、腺機能不全は自律神経系障害である。腺機能不全には、発汗過剰および唾液分泌過剰が含まれる。呼吸器機能不全は、自律神経系障害の別の例である。呼吸器機能不全には、慢性閉塞性肺疾患および喘息が含まれる。Sanders et al.は、自律神経系を治療するための方法を開示している;例えば、天然に存在するボツリヌス毒素を用いて、発汗過剰、唾液分泌過剰、喘息などの自律神経系障害を治療する方法である。Sander et al.の開示は、全体として参照により本明細書に組み入れられる。1つの態様では、改変神経毒素を用いるが、Sanders et al.の方法と実質的に同様の方法を使用して、上記のものなどの自律神経系障害を治療することができる。例えば、鼻腔における粘液分泌を制御する自律神経系のコリン作動性ニューロンを退化させるのに十分な量で、改変神経毒素を哺乳動物の鼻腔に局所適用することができる。
【0091】
改変神経毒素によって治療され得る疼痛には、筋緊張もしくは痙攣による疼痛、または筋痙攣を伴わない疼痛が含まれる。例えば、Binderは米国特許第5,714,468号において、血管障害、筋緊張、神経痛、および神経障害による頭痛を、天然ボツリヌス毒素、例えばA型ボツリヌスで治療することができることを開示している。Binder の開示は、全体として参照により本明細書に組み入れられる。1つの態様では、改変神経毒素を用いるが、Binderの方法と実質的に同様の方法を使用して、頭痛、特に、血管障害、筋緊張、神経痛、および神経障害による頭痛を治療することができる。筋痙攣による疼痛もまた、改変神経毒素の投与によって治療することができる。例えば、好ましくはE型ボツリヌス軽鎖のカルボキシル末端においてロイシンベースのモチーフと融合されたE型ボツリヌスを疼痛/痙攣部位に筋肉内投与して、疼痛を緩和することができる。
【0092】
さらに、改変神経毒素を哺乳動物に投与して、痙攣などの筋肉障害を伴わない疼痛を治療することもできる。1つの広範な態様において、非痙攣関連疼痛を治療するための本発明の方法は、改変神経毒素の中枢投与または末梢投与を含む。
【0093】
例えば、Foster et al.は米国特許第5,989,545号において、標的化部分と複合化されたボツリヌス毒素を中枢(髄腔内)投与して、疼痛を緩和することができることを開示している。Foster et al.の開示は、全体として参照により本明細書に組み入れられる。1つの態様では、本明細書に記載される組成物を用いるが、Foster et al.の方法と実質的に同様の方法を使用して、疼痛を治療することができる。治療される疼痛は、急性疼痛または慢性疼痛であってよい。
【0094】
筋痙攣を伴わない急性または慢性疼痛もまた、哺乳動物の実際のまたは感知された疼痛部位に改変神経毒素を局所末梢投与することによって、緩和することができる。1つの態様では、改変神経毒素が、疼痛部位またはその近傍、例えば傷口またはその近傍に皮下投与される。いくつかの態様では、改変神経毒素が、疼痛部位またはその近傍、例えば哺乳動物の挫傷部位またはその近傍に筋肉内投与される。いくつかの態様では、関節炎病態による疼痛を治療または緩和するために、改変神経毒素が哺乳動物の関節に直接注射される。また、末梢疼痛部位への改変神経毒素の頻回反復注射または注入も本発明の範囲内にある。
【0095】
このような方法のための投与経路は当技術分野で公知であり、熟練した実践者によって、本明細書に記載される方法に容易に適合化される(例えば、Harrison's Principles of Internal Medicine (1998)、Anthony Fauciら編、第14版、McGraw Hill出版を参照されたい)。非限定的な例として、神経筋障害の治療は、筋肉または筋肉群に分子の有効量を局所投与する段階を含み得、自律神経障害の治療は、腺に分子の有効量を局所投与する段階を含み得、および疼痛の治療は、疼痛部位に分子の有効量を投与する段階を含み得る。加えて、疼痛の治療は、脊髄に改変神経毒素の有効量を投与する段階を含み得る。
【0096】
本明細書および以下の実施例に記載される態様は、単に説明を目的としたものであり、当業者に明白な様々な修正または変更は、本発明の範囲内に含まれる。
【0097】
本明細書において別段の規定のない限り、本出願に関連して用いられる科学用語および専門用語は、当業者によって共通に理解される意味を有する。さらに、文脈により別段に必要とされない限り、単数用語は複数を含み、かつ複数用語は単数を含む。
【0098】
本発明は、本明細書に記載される特定の方法論、プロトコール、および試薬などに限定されず、したがって変動し得ることが理解されるべきである。本明細書で用いられる用語は、単に特定の態様を説明することを目的としたものであり、本発明の範囲を限定することを意図するものではなく、これは特許請求の範囲によってのみ規定される。
【0099】
実行した実施例以外において、または別段の指示のない場合、本明細書において用いられる成分の量または反応条件を表す数字はすべて、あらゆる場合において「約」という用語で修飾されると理解されるべきである。割合と関連した、本発明を説明するために用いられる場合の「約」という用語は、±1%を意味する。
【0100】
1つの観点において、本発明は、本発明にとって必須である本明細書中に記載される組成物、方法、およびそのそれぞれの構成要素に関するが、必須であるか否かにかかわらず、指定されていない要素の包含も受け入れる(「含む」)。いくつかの態様において、組成物、方法、またはそのそれぞれの構成要素の説明に含まれる他の要素は、本発明の基本的かつ新規の特徴に実質的に影響を及ぼさないものに限定される(「本質的に〜からなる」)。このことは、記載される方法内の段階ならびに組成物およびその中の構成要素にも同様にあてはまる。他の態様において、本明細書に記載される発明、組成物、方法、およびそのそれぞれの構成要素は、その構成要素、組成物、または方法にとって必須の要素であると見なされないいかなる要素も排除することが意図される(「からなる」)。
【0101】
特定された特許、特許出願、および出版物はすべて、例えば、本発明に関連して使用することができる、そのような出版物中に記載された方法論を説明および開示する目的で、参照により本明細書に明確に組み入れられる。これらの出版物は、本出願の出願日よりも前にそれらが開示されたというだけの理由で提供される。この点に関するいかなるものも、本発明者らが、先行発明またはその他の任意の理由でそのような開示を先行する資格がないことを認めるものと解釈されるべきでない。日付に関するすべての記載またはこれらの文書の内容に関する表現は、本出願人に利用可能な情報に基づいており、日付の正確さまたはこれらの文書の内容に関していかなる承認も構成しない。
【0102】
本発明は、番号付けされた以下の項目のいずれか一項目に定義される通りであり得る。
1. a) プロテアーゼドメインと;
b) プロテアーゼ切断部位と;
c) 移行ドメインと;
d) 血清型B、株1におけるV1118M;Y1183M;E1191M;E1191I;E1191Q;E1191T;S1199Y;S1199F;S1199L;S1201V;およびそれらの組み合わせからなる群より選択される置換変異に対応する1つまたは複数の置換変異を含む、ボツリヌス菌 (
Clostridium botulinum) 血清型Bの改変受容体結合ドメイン (B-H
c) と
を含む、ボツリヌス神経毒素 (BoNT) ポリペプチド。
2. 改変(B-H
c)が2つの置換変異を含む、項目1に記載のBoNTポリペプチド。
3. 2つの置換変異が、E1191MおよびS1199L、E1191MおよびS1199Y、E1191MおよびS1199F、E1191QおよびS1199L、E1191QおよびS1199Y、またはE1191QおよびS1199Fに対応する、項目2に記載のBoNTポリペプチド。
4. 2つの置換変異がE1191MおよびS1199Lに対応する、項目2〜3のいずれか一項目に記載のBoNTポリペプチド。
5. 2つの置換変異がE1191MおよびS1199Yに対応する、項目2〜3のいずれか一項目に記載のBoNTポリペプチド。
6. 2つの置換変異がE1191MおよびS1199Fに対応する、項目2〜3のいずれか一項目に記載のBoNTポリペプチド。
7. 2つの置換変異がE1191QおよびS1199Lに対応する、項目2〜3のいずれか一項目に記載のBoNTポリペプチド。
8. 2つの置換変異がE1191QおよびS1199Yに対応する、項目2〜3のいずれか一項目に記載のBoNTポリペプチド。
9. 2つの置換変異がE1191QおよびS1199Fに対応する、項目2〜3のいずれか一項目に記載のBoNTポリペプチド。
10. a) プロテアーゼドメインと;
b) プロテアーゼ切断部位と;
c) 移行ドメインと;
d) 血清型B、株1のS1199またはS1201に対応する位置における置換変異を含む、ボツリヌス菌血清型Bの改変受容体結合ドメイン (B-H
c) と
を含む、ボツリヌス神経毒素 (BoNT) ポリペプチド。
11. 置換変異が、該置換変異を欠く同一分子と比較して、ヒトSytIIに対する改変B-H
cの増強した結合および/またはヒトSyt Iに対する改変B-H
cの低下した結合をもたらす、項目10に記載のBoNTポリペプチド。
12. 置換変異が、該置換変異を欠く同一分子と比較して、ヒトSytIIに対する改変B-H
cの増強した結合および/またはヒトSyt Iに対する改変B-H
cの増大した結合をもたらす、項目10に記載のBoNTポリペプチド。
13. 置換変異が、Sに取って代わるA、R、N、D、C、Q、E、G、H、I、L、K、M、F、P、T、W、Y、およびVからなる群より選択される、項目11〜12のいずれか一項目に記載のBoNtポリペプチド。
14. 置換変異が、Sに取って代わる非天然アミノ酸である、項目11〜13のいずれか一項目に記載のBoNtポリペプチド。
15. 改変B-H
cが株1のものである、項目1〜14のいずれか一項目に記載のBoNTポリペプチド。
16. プロテアーゼドメイン、移行ドメイン、およびプロテアーゼ切断部位が、A、B、C、D、E、F、G、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される血清型に由来する、項目1〜15のいずれか一項目に記載のBoNTポリペプチド。
17. プロテアーゼドメイン、移行ドメイン、およびプロテアーゼ切断部位が、血清型B、株1に由来する、項目16に記載のBoNTポリペプチド。
18. プロテアーゼドメイン、移行ドメイン、およびプロテアーゼ切断部位が、血清型A、株1に由来する、項目16に記載のBoNTポリペプチド。
19. 血清型B、株1におけるV1118M;Y1183M;E1191M;E1191I;E1191Q;E1191T;S1199Y;S1199F;S1199L;S1201V;およびそれらの組み合わせからなる群より選択される置換変異に対応する1つまたは複数の置換変異を含むボツリヌス菌血清型Bの改変受容体結合ドメイン (B-H
c) を含む、ポリペプチド。
20. 改変(B-H
c)が2つの置換変異を含む、項目19に記載のポリペプチド。
21. 2つの置換変異が、E1191MおよびS1199L、E1191MおよびS1199Y、E1191MおよびS1199F、E1191QおよびS1199L、E1191QおよびS1199Y、またはE1191QおよびS1199Fに対応する、項目20に記載のポリペプチド。
22. 2つの置換変異がE1191MおよびS1199Lに対応する、項目20〜21のいずれか一項目に記載のポリペプチド。
23. 2つの置換変異がE1191MおよびS1199Yに対応する、項目20〜21のいずれか一項目に記載のポリペプチド。
24. 2つの置換変異がE1191MおよびS1199Fに対応する、項目20〜21のいずれか一項目に記載のポリペプチド。
25. 2つの置換変異がE1191QおよびS1199Lに対応する、項目20〜21のいずれか一項目に記載のポリペプチド。
26. 2つの置換変異がE1191QおよびS1199Yに対応する、項目20〜21のいずれか一項目に記載のポリペプチド。
27. 2つの置換変異がE1191QおよびS1199Fに対応する、項目20〜21のいずれか一項目に記載のポリペプチド。
28. 血清型B、株1のS1199またはS1201に対応する位置における置換変異を含むボツリヌス菌血清型Bの改変受容体結合ドメイン (B-H
c) を含む、ポリペプチド。
29. 置換変異が、該置換変異を欠く同一分子と比較して、ヒトSytIIに対する改変B-H
cの増強した結合および/またはヒトSyt Iに対する改変B-H
cの低下した結合をもたらす、項目28に記載のポリペプチド。
30. 置換変異が、該置換変異を欠く同一分子と比較して、ヒトSytIIに対する改変B-H
cの増強した結合および/またはヒトSyt Iに対する改変B-H
cの増大した結合をもたらす、項目28に記載のポリペプチド。
31. 置換変異が、Sに取って代わるA、R、N、D、C、Q、E、G、H、I、L、K、M、F、P、T、W、Y、およびVからなる群より選択される、項目29〜30のいずれか一項目に記載のポリペプチド。
32. 置換変異が、Sに取って代わる非天然アミノ酸である、項目29〜31のいずれか一項目に記載のポリペプチド。
33. 改変B-H
cが株1のものである、項目19〜32のいずれか一項目に記載のポリペプチド。
34. 第2部分に連結された、ボツリヌス菌血清型Bの改変受容体結合ドメイン (B-H
c) である第1部分を含む、キメラ分子であって、該改変B-H
cが、血清型B、株1におけるV1118M;Y1183M;E1191M;E1191I;E1191Q;E1191T;S1199Y;S1199F;S1199L;S1201V;およびそれらの組み合わせからなる群より選択される置換変異に対応する1つまたは複数の置換変異を含む、キメラ分子。
35. 改変B-H
cが2つの置換変異を含む、項目33に記載のキメラ分子。
36. 2つの置換変異が、E1191MおよびS1199L、E1191MおよびS1199Y、E1191MおよびS1199F、E1191QおよびS1199L、E1191QおよびS1199Y、またはE1191QおよびS1199Fに対応する、項目35に記載のキメラ分子。
37. 2つの置換変異がE1191MおよびS1199Lに対応する、項目35〜36のいずれか一項目に記載のキメラ分子。
38. 2つの置換変異がE1191MおよびS1199Yに対応する、項目35〜36のいずれか一項目に記載のキメラ分子。
39. 2つの置換変異がE1191MおよびS1199Fに対応する、項目35〜36のいずれか一項目に記載のキメラ分子。
40. 2つの置換変異がE1191QおよびS1199Lに対応する、項目35〜36のいずれか一項目に記載のキメラ分子。
41. 2つの置換変異がE1191QおよびS1199Yに対応する、項目35〜36のいずれか一項目に記載のキメラ分子。
42. 2つの置換変異がE1191QおよびS1199Fに対応する、項目35〜36のいずれか一項目に記載のキメラ分子。
43. 改変B-H
cが、血清型B、株1のS1199またはS1201に対応する位置における置換変異を含むボツリヌス菌血清型Bの改変受容体結合ドメイン (B-H
c) を含む、項目34に記載のキメラ分子。
44. 置換変異が、該置換変異を欠く同一分子と比較して、ヒトSytIIに対する改変B-H
cの増強した結合および/またはヒトSyt Iに対する改変B-H
cの低下した結合をもたらす、項目43に記載のキメラ分子。
45. 置換変異が、該置換変異を欠く同一分子と比較して、ヒトSytIIに対する改変B-H
cの増強した結合および/またはヒトSyt Iに対する改変B-H
cの増大した結合をもたらす、項目43に記載のキメラ分子。
46. 置換変異が、Sに取って代わるA、R、N、D、C、Q、E、G、H、I、L、K、M、F、P、T、W、Y、およびVからなる群より選択される、項目44〜45のいずれか一項目に記載のキメラ分子。
47. 置換変異が、Sに取って代わる非天然アミノ酸である、項目44〜46のいずれか一項目に記載のキメラ分子。
48. 改変B-H
cが株1のものである、項目43〜47のいずれか一項目に記載のキメラ分子。
49. 第1部分と第2部分が共有結合で連結されている、項目32〜48のいずれか一項目に記載のキメラ分子。
50. 第1部分と第2部分が非共有結合で連結されている、項目32〜48のいずれか一項目に記載のキメラ分子。
51. 第2部分が、小分子、核酸、短いポリペプチド、およびタンパク質からなる群より選択される、項目32〜50のいずれか一項目に記載のキメラ分子。
52. 第2部分が生物活性分子である、項目51に記載のキメラ分子。
53. 第2部分が治療用のポリペプチドまたは非ポリペプチド薬物である、項目51または52に記載のキメラ分子。
54. 項目1〜53のいずれか一項目に記載のポリペプチドまたはキメラ分子をコードするヌクレオチド配列を含む、核酸。
55. 項目54に記載の核酸を含む、核酸ベクター。
56. 項目55に記載の核酸ベクターまたは項目54に記載の核酸を含む、細胞。
57. 項目1〜53のいずれか一項目に記載のポリペプチドまたはキメラ分子を発現する、細胞。
58. 項目1〜18のいずれか一項目に記載のボツリヌス神経毒素 (BoNT) ポリペプチド、または項目34〜53のいずれか一項目に記載のキメラ分子、または項目55に記載の核酸ベクター、または項目54に記載の核酸を含む、薬学的組成物。
59. 薬学的に許容される賦形剤をさらに含む、項目58に記載の薬学的組成物。
60. 項目58または59に記載の薬学的組成物と、該薬学的組成物の治療的投与のための説明書とを含む、キット。
61. ボツリヌス神経毒素 (BoNT) ポリペプチドを生成するための方法であって、該BoNTポリペプチドが産生される条件下で、項目57に記載の宿主細胞を培養する段階を含む方法。
62. 培養物からBoNTポリペプチドを回収する段階をさらに含む、項目61に記載の方法。
63. 望ましくないニューロン活動と関連した病態を治療するための方法であって、項目1〜18のいずれか一項目に記載のBoNTポリペプチドの治療的有効量を、対象に投与し、それによって、望ましくないニューロン活動を示している1つまたは複数のニューロンと接触させ、それによって該病態を治療する段階を含む方法。
64. 病態が、痙攣性発声障害、痙性斜頸、喉頭ジストニア、口下顎発声障害、舌ジストニア、頸部ジストニア、局所性手ジストニア、眼瞼痙攣、斜視、片側顔面痙攣、眼瞼障害、脳性麻痺、局所性痙縮および他の発声障害、痙攣性大腸炎、神経因性膀胱、アニスムス、四肢痙縮、チック、振戦、歯ぎしり、裂肛、アカラシア、嚥下障害および他の筋緊張障害および筋肉群の不随意運動を特徴とする他の障害、流涙、多汗症、唾液分泌過剰、消化管分泌過剰、分泌障害、筋痙攣による疼痛、頭痛、ならびに皮膚科学的または審美的/美容的病態からなる群より選択される、項目63に記載の方法。
65. 医薬における使用のための、項目1〜18のいずれか一項目に記載のボツリヌス神経毒素 (BoNT) ポリペプチド、項目58もしくは59に記載の薬学的組成物、または項目34〜53のいずれか一項目に記載のキメラ分子、または項目19〜33のいずれか一項目に記載のポリペプチド。
66. 望ましくないニューロン活動と関連した病態の治療における使用のための、項目1〜18のいずれか一項目に記載のボツリヌス神経毒素 (BoNT) ポリペプチド、項目58もしくは59に記載の薬学的組成物、または項目34〜53のいずれか一項目に記載のキメラ分子、または項目19〜33のいずれか一項目に記載のポリペプチド。
【0103】
本発明は、さらなる限定として解釈されるべきではない以下の実施例によってさらに説明される。
【実施例】
【0104】
以下の実験は、BoNT/B受容体結合ドメインを改変することにより、ヒトSyt IIに対するBoNT/Bの結合親和性を変化させることが可能であるかどうかを判定するために行われた。この仮説は、以前の一連の研究に基づいている:(1) 1998年に、天然BoNT/Bサブタイプ毒素、BoNT/B2が、BoNT/B(BoNT/B1としても定義される)よりも約4倍低い、Syt IIに対する結合親和性を示すことが示された
28(
図2F)。2003年に、この親和性の違いは、それらの受容体結合ドメイン内のわずかなアミノ酸の違いによるものであることが実証され
29(
図2F、G)、BoNT/Bの受容体結合ドメイン内の残基を変更することで、Syt IIに対する結合親和性を変化させることができることが初めて実証された。これらの研究はまた、Syt IIに対する結合親和性に影響を及ぼす重要な残基を同定した(
図2G)。(2) 2004年に、BoNT/AおよびBoNT/Bの受容体結合ドメイン内の単一残基変異が、これらの毒素の毒性および効力を劇的に変化させ得ることが報告され(
図2H)、受容体結合親和性の変化が、毒素の毒性および効力の変化に転換され得ることが実証された
30。(3) ラットSyt IIに結合しているBoNT/Bの共結晶構造が解明され
31、32、Syt IIの結合部位を形成する重要な残基が解析された
31、32。これらの以前の研究はすべて、ヒトSyt IIではなく齧歯類Syt IIを使用した。
【0105】
齧歯類Syt II結合を用いたこれらすべての以前の研究から、BoNT/B受容体結合ドメインを、ヒトSyt IIに対するその結合親和性を変化させるために操作するための標的残基を同定した。
【0106】
BoNT/Bの受容体結合ドメインは、明確に定義されている
1。以前の研究により、BoNT/Bの受容体結合ドメイン内の残基を変更することで、ラットまたはマウスSyt IIへのBoNT/Bの結合親和性を調節できることが確証された
29、30。2006年に、2つの研究により、ラットSyt IIに結合しているBoNT/Bの共結晶構造もまた解明された
31、32。ヒトSyt IIにおける残基変化は、いずれも疎水性残基であるFからLへの比較的保存的な変化である。しかしながら、齧歯類Syt IIに対するBoNT/Bの結合親和性の違いは、ヒトSyt IIに対するものよりも有意に高い。さらに、どのようにして、BoNT/BとヒトSyt IIとの結合相互作用が、結合部位の中央におけるこのフェニルアラニン残基の欠如を補償するように改変され得るかは明らかではない。例えば疎水性環の積み重ねまたは詰め込みを含む、WT BoNT/B-H
CとラットまたはマウスSyt IIとの間に、またはWT BoNT/BH-H
Cと、フェニルアラニンがその配列に置換されている改変ヒトSyt IIとの間に、正の結合相互作用が予測され得る(および公表された結晶構造において可視化され得る)が;改変BoNT/B-HCとWTヒトSyt IIタンパク質との間には、このような相互作用が再現できない可能性がある。このことから、BoNT/B中のわずかなまたはさらには1個の残基の変更が、BoNT/B-Syt II複合体の全体的構造に大きな変化をもたらすことなく、ヒトSyt IIへの結合を回復/改善することができない可能性が示唆される。
【0107】
54位の保存されたフェニルアラニンは、BoNT/Bと複数の疎水性接触を形成する。ロイシン(ヒトにおける)もまた疎水性であるため、BoNT/B結合の破壊は、フェニルアラニンとロイシンとのサイズ/形状の違いに起因する可能性が高い。したがって、本発明の鍵は、フェニルアラニンからロイシンへの変化を受け入れかつ補償し得る、BoNT/B-H
C領域における可能な変化を同定することであった。このアプローチは2要素からなる:齧歯類Syt IIにおけるフェニルアラニン54と直接接触する残基に着目すること:または54位のフェニルアラニンとの正の結合相互作用の欠如を補償し得る、BoNT.B-Hcの周囲領域内の残基に着目することである。BoNT/BとヒトSyt IIとの対応する結合領域内に潜在的に存在するこれらの残基は、BoNT/B‐ラットSyt II共結晶構造を参照して(
図2I)、おそらくはY1181、P1197、A1196、F1204、F1194、P1117、W1178、Y1183、V1118、S1116、K1113、K1192、S1199、S1201、E1191、E1245、およびY1256を含むと判断された。残基1117、1191、および1199はまた、以前の研究において、BoNT/B2の齧歯類Syt IIへの結合に影響を及ぼす残基のリスト内にあることが示されている(
図2G)
29。残基置換による正確な影響は予測が不可能であるため、「試行錯誤」アプローチを使用した。最初に単一残基置換を行い、その後選択された組み合わせを行った。具体的には、重要な疎水性接触の維持を保証するために、リストに挙げられた重要な残基のそれぞれを、異なるサイズを有する疎水性残基で系統的に置換した‐スクリーニングを疎水性残基に限定した。これらの疎水性置換残基には、V、I、L、M、F、W、C、ならびに疎水性の低いA、Y、H、T、S、P、Q、N、およびGを含む他のアミノ酸が含まれる。
【0108】
本発明の成功の鍵は、変異体をスクリーニングするための実行可能でかつ経済的な方法を開発することであった。基本的なアプローチは、
図2Cに記載されるようなプルダウンアッセイにおいて、固定化マウスSyt II (F54L) に対する可溶性組換えBoNT/B-H
Cの結合を検出することであった。しかしながら、プルダウンアッセイのためにすべての変異体を精製することは実行不可能であった。したがって、精製の必要性なしに、Syt IIを用いて少量の細菌溶解物から直接BoNT/B-H
Cをプルダウンすることが可能であるかどうかを試験した。理論的根拠は、BoNT/B-Syt IIの結合親和性が、このアプローチにとって十分に高いことであった(Kd約0.23 nM)
20。実際に、固定化ラットSyt IIは、6 mlのみの細菌溶解物から直接、十分なWT BoNT/B-H
Cを「アフィニティー精製」し得ることが判明した(
図3A)。新たに開発されたこの方法は、かなり多くのBoNT/B-H
C変異体をスクリーニングするための取り組みを大きく単純化した。この方法を用いて、マウスSyt II 1〜87 (m-Syt II)、およびヒトSyt II配列を模倣する変異マウスSyt II(F54L、h-Syt II)の両方に対する結合について、BoNT/B-H
C変異体のスクリーニングを試験した。結合した材料を、抗HA抗体を用いてBoNT/B-H
Cを検出する免疫ブロット解析に供した(
図3A)。
【0109】
変異体の大部分は2つのカテゴリーに分類されることがわかった:(1) m-Syt IIにもh-Syt IIにも結合することができない、例えばF1204LおよびV1118Wなど(
図3B);(2) m-Syt IIとはなお結合するが、h-Syt IIとは結合することができない、例えばF1204WおよびE1191Wなど(
図3B)。これらの結合の結果は、
図3Aに示したいくつかの例を除いて、ここでは主に省略する。
【0110】
スクリーニングした変異体の中で、V1118M、S1199Y/L/F、Y1183M、S1201V、E1191M/I/Q/Tを含む、m-Syt IIおよびh-Syt IIの両方と結合したいくつかのもの(
図3B)が同定された。したがって、これらの残基は、ヒトSyt IIにおけるL残基を受け入れるか、またはヒトSyt IIにおけるこの位置のフェニルアラニン残基の欠如を補償するのに重要な位置であると決定された。ヒトSyt Iは運動ニューロンにおいてヒトSyt IIよりも有意に低いレベルで発現されるが、それにもかかわらず、患者におけるBoNT/Bの有効性によって実証されるように、これは重要でかつ能力のある毒素受容体である。ヒトニューロンへの可能な限り高い結合を達成するために、いくつかの局面では、改変BoNT/B変異体は、望ましくはヒトSyt Iへの結合に悪影響を及ぼすべきではない。理想的には、それらはSytIに対する結合を増大させることさえできる。したがって、同じ小規模プルダウンアッセイを用いて(
図4A)、選択されたBoNT/B変異体の固定化ヒトSyt Iに対する結合をさらに調べた。Syt IのBoNT/Bへの結合は、Syt IIと比較してより低い親和性を有するため、これは脂質共受容体ガングリオシドの存在を必要とする
10、20。この必要性は、プルダウンアッセイにおいて精製脳ガングリオシドを細菌溶解物に添加することによって対処した。
図4Aに示されるように、毒素結合部位を含むヒトSyt I断片(1〜80)を、GSTタグ化タンパク質として精製し、ビーズ上に固定化して、ガングリオシド (Gangl) の存在と共にまたはその存在なしで、WT BoNT/B-HCおよび変異体BoNT/B-HCをプルダウンした。予測される通り、WT BoNT/B-HCは、ガングリオシドの存在下においてのみSyt Iと結合する。変異体E1191MおよびE1191Qは、Syt Iに対する結合を有意に増大させることが見出された:これらの変異体は、ガングリオシドなしでヒトSyt Iに結合することさえできる(
図4A)。その他の変異体は、WT BoNT/B-H
Cと比較して、Syt Iに対する結合を低下させるか(例えば、V118M)、または同様の結合レベルを維持した(例えば、S1201V)。このことから、E1191MおよびE1191Qは、ヒトSyt IIへの結合を可能にし、かつヒトSyt Iに対する結合を増強する変異体であることが示される。
【0111】
変異体V1118Mはまた、ヒトSyt IIに結合するがヒトSyt Iには結合しないという理由で興味深い。したがってこれは、ヒトにおいて、WT BoNT/Bよりも、Syt IIを発現するニューロンにより特異的であり、よってヒトにおいてSyt-I発現細胞への非特異的侵入を減少させる治療用毒素を作製するために使用される可能性を有する。
【0112】
E1191Mを例として使用して、ヒトSyt IIとのその相互作用をさらに検証したが、精製組換えタンパク質を用いて、等量のWT BoNT/B-H
CとE1191M変異体のm-Syt IIおよびh-Syt IIに対する結合の比較を可能にした(
図4B)。E1191Mは、ガングリオシドなしでm-SytIIおよびh-Syt IIの両方に結合し、ガングリオシドを添加するとその結合がさらに高まることが見出された(
図4B)。これらの結果から、E1191Mが、ガングリオシドの非存在下においてヒトSyt IIに結合する能力を獲得し、脂質共受容体ガングリオシドの存在下においてヒトSyt IIと高親和性複合体を形成し得ることが確認される。
【0113】
E1191M/Qを骨格として使用して、それを他の残基置換と組み合わせることで、ヒトSyt I/IIに対する結合がさらに増強され得るかどうかを解析するための実験を行った。S1199L/Yまたは/FとE1191M/またはQとの組み合わせにより、ヒトSyt IIへの有意により高い結合を示す二重変異体が作製された(
図5A)。例えば、E1191M/S1199Yは、m-Syt IIおよびh-Syt IIの両方に対する同様の結合レベルを達成した(
図5A、レーン5および6)。これは、m-Syt IIへの結合よりもh-Syt IIへのより少ない結合を媒介したE1191M単独と比較して(
図4B)、有意な増強であった。さらに、選択された二重変異体はすべて、ヒトSyt Iに対して、WT BoNT/B-H
Cよりも有意に高い結合を示した(
図5B)。
【0114】
E1191M/S1199Yを例として使用して、等量の精製組換えタンパク質を用いて、WT、E1191M、およびE1191M/S1199Yのh-Syt IIに対する結合をさらに比較した。
図6Aに示されるように、WT BoNT/B-H
Cは、進行中のアッセイ条件下において、ガングリオシドの非存在下でh-Syt IIに結合することができなかった。E1191Mは、ガングリオシドなしでh-Syt IIに対するわずかな結合を示し、E1191M/S1199Yのh-Syt IIに対する結合は、特にガングリオシドなしで、E1191M単独と比較して有意に増強された(レーン6と8を比較)。さらに、E1191MおよびE1191M/S1199Yはいずれも、WT BoNT/B-H
Cと比較して、ヒト‐Syt Iに対する結合を有意に増強した(
図6B)。
【0115】
WT BoNT/B-H
Cのm-Syt IIへの結合は、高い親和性を有することが知られている
20、21。したがって、E1191M/S1199Yのh-Syt IIへの結合と、「至適基準」:WT BoNT/B-HCのm-Syt IIへ結合を比較した。
図6Cに示されるように、BoNT/B-H
C濃度の滴定により、E1191M/S1199Yがすべての濃度においてWTのm-Syt IIへの結合と同様の結合レベルを有することが明らかになった。Kdは、このアッセイ条件下で、E1191M/S1199Yとh-Syt IIの間では約19 nMであり、WT BoNT/B-H
Cのm-Syt IIへの結合については約68 nMであると推定された(
図6D)。これらのアッセイ条件においてh-Syt IIと結合できなかったWT BoNT/B-H
Cと比較して(
図6A)、これはh-syt IIとの結合に関する非常に大きな改善である。結論として、E1191MとS1199Yの組み合わせにより、E1191M変異体を上回る相加的改善に勝る結合親和性の相乗的改善が提供され、ヒトSyt IおよびSyt IIの両方に対して高親和性結合を有する新たなBoNT/B-H
C変異体が得られた。対照的に、いくつかの他の有益な個々の変異の組み合わせは、さらに改善された二重変異体BoNT/B-H
Cドメインをもたらさなかった。
【0116】
最後に、E1191M/S1199Y変異体が、ニューロン表面上のh-Syt IIに対する結合を回復し得るかどうかを調べた。培養したラット海馬ニューロンは、Syt Iのみを発現しSyt IIを発現しない。これらのニューロンにおいてSyt Iをノックダウンし (KD)、次いでレンチウイルス形質導入によって、外因性のm-Syt II、m-Syt II (F54L)、およびh-Syt IIと置き換えた。次に、これらのニューロンに対するWT BoNT/B-H
CおよびE1191M/S1199Yの結合を試験した(
図7)。WT BoNT/B-H
Cはm-Syt IIにのみ結合したのに対して、E1191M/S1199Yはニューロン表面上のm-Syt II (F54L) およびh-Syt IIの両方に結合し、E1191M/S1199Y変異体がニューロンにおいてh-Syt IIを機能的受容体として使用できることが実証された。
【0117】
材料および方法
抗体および材料:マウスモノクローナル抗HA抗体は、Covanceから購入した (16B12)。ウシ混合脳ガングリオシドはMatreya LLC (Pleasant Gap, PA) から購入し、以前に記載された通りにTris緩衝生理食塩水(TBS:20 mM Tris、150 mM NaCl)中に再構成した
9。BoNT/B (Okra) は、表示の株からE. Johnsonの研究室 (Madison , WI) で精製された。
【0118】
cDNAおよび構築物:BoNT/B-H
C(GenBankアクセッション番号:AB232927.1に基づく、残基856〜1291)は、Geneart Inc.によって合成され、そのコドンは大腸菌における発現のために最適化してあった。BoNT/B-H
CをコードするDNAを、そのN末端にHis6タグおよびHAタグ (YPYDVPDYA) の両方を融合して、pET28aベクターにサブクローニングした。BoNT/B-H
Cにおける変異は、Quickchange部位特異的突然変異誘発キット(Agilent Technologies、CA)を製造業者の手引き書に従って用いて、PCRにより作製した。以下のDNAは、表示のグループによって供与された:ラットSyt I(T.C. Sudhof、Palo Alto, CA)、マウスSyt II(M. Fukuda、Ibaraki, Japan)、ヒトSyt I(R.B. Sutton、Lubbock, TX)。GSTタグ化Syt I/II断片およびSyt II変異は、以前に記載されている
10、13、14。構築物はすべて、配列決定によって検証した。
【0119】
タンパク質の発現および精製:WTおよび変異体のBoNT/B-H
Cは、大腸菌においてHis6タグ化組換えタンパク質として発現させた。Syt I/II断片および変異体は、大腸菌においてGSTタグ化組換えタンパク質として発現させた。GST融合タンパク質およびHis
6融合タンパク質はいずれも、0.25 mM IPTGを用いて20℃で一晩誘導して、以前に記載された通りに精製した
9。
【0120】
GSTプルダウンアッセイ:2つの型のプルダウンアッセイを行った。第1系列は、GSTタグ化マウスSyt II (m-Syt II)、およびヒトSyt II配列を模倣する変異体マウスSyt II (F54L)(実施例1〜6ではh-Syt IIと表す)に対する変異体BoNT/B-H
Cの結合をスクリーニングするために使用した。簡潔に説明すると、BoNT/B-H
Cを発現する大腸菌6 mlを遠心沈殿させ、800μl TBS中に再懸濁し、超音波処理し、次いで2% Triton X-100と共に4℃で1時間インキュベートした。次に、4℃の微量遠心機において、試料を最大速度で15分間かけて遠心沈殿させた。上清を収集し、グルタチオン-セファロースビーズ(GE bioscience、Piscataway, NJ)上に固定化された10μgのSytタンパク質と共に4℃で1時間インキュベートすることにより、プルダウンアッセイに使用した。試料を洗浄緩衝液(TBS+0.5% Triton)で3回洗浄し、抗HA抗体を用いてBoNT/B-H
Cを検出する免疫ブロットアッセイによって解析した。h-Syt IIに対する結合が増強された変異体については、以前に記載された通りに、これらの変異体BoNT/B-H
CをHis6タグ化タンパク質として精製することによって、さらなるプルダウンアッセイを行った
9。次に、100μl TBS緩衝液+0.5% Triton X-100中で、固定化Syt断片をガングリオシド (60μg/ml) と共にまたはこれを伴わずに用いて、プルダウンアッセイを4℃で1時間行った。ビーズを、TBS緩衝液+0.5% Triton X-100を用いて3回洗浄した。結合した材料の10パーセントを、SDS-PAGEおよびその後の免疫ブロット解析に供した。
【0121】
免疫染色:培養ニューロンを、4%パラホルムアルデヒドで固定し、0.25% Triton X-100で透過処理し、BoNT/B-H
C(HA抗体を使用)およびシナプシンを検出する免疫染色解析に供した、共焦点顕微鏡(Leica TCS SP5;40×油浸対物)を用いて、画像を収集した。
【0122】
参考文献