(54)【発明の名称】球形又は類球形層状構造のリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物正極材料、製造方法、正極、リチウムイオン電池、エネルギー貯蔵発電所又は携帯式記憶設備、及び、使用
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記正極材料の粉末のX線回折スペクトル(XRD)中において、回折角2θが64.9°となる付近に存在する(110)回折ピークの半ピーク幅FWHM(110)は0.07〜0.15であり、平均結晶粒径は900Å以上2000Å以下である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の球形又は類球形層状構造のリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物正極材料。
リチウム源とニッケルコバルトマンガン前躯体とをモル比Li:(Ni+Co+Mn)=(1.0〜1.2):1.0で混合させ、600〜1000℃下で4〜30時間焼結し、冷却し、気流粉砕及び分級し、球形又は類球形層状構造のリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物正極材料を得るステップを少なくとも含む、
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の球形又は類球形層状構造のリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物正極材料の製造方法。
リチウム源をポリエチレングリコール又はアクリルアミド水性コロイド中に分散させ、コロイドを作成し、その後ニッケルコバルトマンガン前躯体をモル比Li:(Ni+Co+Mn)=(1.0〜1.2):1.0の割合でコロイド中に加え、混合物を得て、混合物を乾燥させ、その後600〜1000℃下で4〜30時間焼結し、冷却し、粉砕及び分級し、球形又は類球形層状構造のリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物正極材料を得るステップを少なくとも含む、
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の球形又は類球形層状構造のリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物正極材料の製造方法。
使用された前記ニッケルコバルトマンガン前躯体はニッケルコバルトマンガンの水酸化物、ニッケルコバルトマンガンのカルボキシ基酸化物、ニッケルコバルトマンガンの酸化物中の一種又は数種の混合物である、
ことを特徴とする請求項6〜9のいずれか1項に記載の正極材料の製造方法。
携帯デジタル製品(3C)、電動自動車(XEV)又はエネルギー貯蔵(ESS)を製造するための、請求項1〜5のいずれか1項に記載の正極材料又は請求項14に記載のリチウムイオン電池の使用。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解决しようとする技術的課題とは、上記特許を含む既存の技術が、リチウムイオン電池が高電圧、高温条件下で良好的なサイクル性能、安定性と安全性を備えるために、どの様な構造で層状構造のリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物正極材料を形成するべきかを明確に示していないことである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、球形又は類球形層状構造のリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物正極材料を提供することを目的とする。該材料は、構造が完全であり、加工性能が良好であり、サイクルを行う過程において有効的に二次凝集粒子破裂の状況を生じることを避けられ、リチウムイオン電池に応用されると、有効的に電池の高温安定性、高電圧サイクル性能及び安全性能を改善できる。該正極材料の化学一般式は、
Li
aNi
xCo
yMn
zO2であり、ここで、1.0≦a≦1.2、0.30≦x≦0.90、0.05≦y≦0.40、0.05≦z≦0.50、x+y+z=1である。
【0008】
好ましくは、走査電子顕微鏡(SEM)下で、該正極材料は形状が球形又は類球形を現す一次単結晶粒子及び少量二次凝集粒子を含む。その内、一次単結晶粒子の粒径は0.5〜10μmであり、且つ粒径が5μm以下の粒子の累積パーセンテージは概して60%を超える。
【0009】
好ましくは、前記正極材料は、粉末のX線回折スペクトル(XRD)で単一α−NaFeO
2型層状構造のみであることを特徴とする。
【0010】
好ましくは、その内、回折角2θが64.9°となる付近に存在する(110)回折ピークの半ピーク幅FWHM(110)は概して0.07〜0.15であり、平均結晶粒径は一般900Åより大きいか又は等しい、2000Åより小さいか又は等しいである。
【0011】
好ましくは、前記球形又は類球形層状構造のリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物正極材料は、BET法により測定される比表面積が0.3〜0.9m
2/gであることを特徴とする。
【0012】
好ましくは、前記球形又は類球形層状構造のリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物正極材料は、メジアン粒径が2.0〜8.0μmであり、好ましくはメジアン粒径が3.0〜7.0μmであることを特徴とする。
【0013】
本発明はまた、球形又は類球形層状構造のリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物正極材料の製造方法を提供することを目的としており、少なくとも以下のステップを含む:リチウム源とニッケルコバルトマンガン前躯体(好ましくはD50:1〜12μm)をモル比Li:(Ni+Co+Mn)=(1.0〜1.2):1.0で混合させ、600〜1000℃で4〜30時間焼結し、室温まで冷却し、粉砕及び分級し、球形又は類球形層状構造のリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物正極材料を得る。
【0014】
本発明はまた、球形又は類球形層状構造のリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物正極材料の製造方法を提供することを目的としており、少なくとも以下のステップを含む:リチウム源をポリエチレングリコール又はアクリルアミド水性コロイド中に分散させ、コロイドを作成し、そしてニッケルコバルトマンガン前躯体をモル比Li:(Ni+
Co+Mn)=(1.0〜1.2):1.0の割合でコロイド中に加え、混合物を得て、混合物を乾燥させ、その後600〜1000℃で4〜30時間焼結し、冷却し、粉砕及び分級し、球形又は類球形層状構造のリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物正極材料を得る。
【0015】
前記正極材料の製造方法は、前記ニッケルコバルトマンガン前躯体のメジアン(中値)粒径D50は1〜12μmであり、好ましくは3〜10μmであり、更に好ましくは4〜8μmであることを特徴とする。
【0016】
前記正極材料の製造方法において、使用されたリチウム源は、炭酸リチウム、水酸化リチウム一水和物、硝酸リチウム、醋酸リチウム中の一種又は数種の混合物である。
【0017】
前記正極材料の製造方法は、正極材料の製造において、使用されたニッケルコバルトマンガン前躯体が、ニッケルコバルトマンガンの水酸化物、ニッケルコバルトマンガンのカルボキシ基酸化物、ニッケルコバルトマンガンの酸化物中の一種又は数種の混合物であることを特徴とする。
【0018】
前記正極材料の製造方法は、前記乾燥温度は150〜350℃であり、乾燥時間は2〜15時間であり、好ましくは乾燥時間は2〜8時間である。
【0019】
本発明はまた、前記のいずれか1つに記載の製造方法により得られるリチウムイオン電池の正極材料を提供する。
【0020】
本発明はまた、前記のいずれか1つに記載の正極材料を正極活性物質として含むリチウムイオン電池の正極を提供する。好ましくは、前記リチウムイオン電池の正極はまた導電剤を含み、好ましくは前記導電剤は導電カーボンブラックである。
【0021】
本発明はまた、前記のいずれか1つに記載の正極、陰極、隔膜と電解液から製造されるリチウムイオン電池を提供することを特徴とする。
【0022】
本発明はまた、前記リチウムイオン電池から製造されるエネルギー貯蔵発電所又は携帯式記憶設備を提供することを特徴とする。
【0023】
本発明はまた、携帯デジタル製品(3C)、電動自動車(xEV)又はエネルギー貯蔵(ESS)の製造分野における前記正極材料又は前記リチウムイオン電池の応用を提供する。
【0024】
本発明のリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物正極材料は、コバルトニッケルマンガン前躯体とリチウム源とを混合させ、そして焼結、粉砕を通じて製造され、粉末X線回折スペクトル(XRD)で単一α−NaFeO
2型層状構造のみであり、回折角2θが64.9°となる付近に存在する(110)回折ピークの半ピーク幅FWHM(110)は0.07〜0.15であり、結晶粒径は通常900Åより大きく、2000Åより小さい。走査電子顕微鏡(SEM)下で、主に形状が球形又は類球形を現す一次単結晶粒子及び少量の二次凝集粒子から構成され、その内、一次単結晶粒子の粒径は0.5〜10μmであり、且つ粒径が5μm以下である粒子の累計パーセンテージは通常60%を超える。
【0025】
本発明者らは、結晶性と電池性能との関連性に対して深い研究を行った。回折角2θが64.9°となる付近に存在する(110)回折ピークの半ピーク幅が0.07〜0.15の範囲内に入った時、材料の構造安定性が良好であり、従って、特に高温、高電圧及び安全性の面において比較的に良好である、良好な電気的性能を示す。
【0026】
二次凝集粒子をメインとするニッケルコバルトマンガン三元正極材料と比べると、本発明で製造した一次単結晶粒子をメインとする球形又は類球形層状構造のリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物正極材料は、二次凝集粒子は多くとも35%を超えず、サイクル過程において有効的に二次凝集粒子破裂の状況を生じることを避けられ、リチウムイオン電池に応用されると、電池はより優れた高温安定性、高電圧サイクル性能以及び良好な安全性能を備え、携帯デジタル製品(3C)、電動自動車(xEV)、エネルギー貯蔵(ESS)等の製品と分野において適用される。
【0027】
本発明の製造方法は簡単であり、製造過程を制御及び操作し易く、生産コストが低い。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、具体的な実施例を通じて、添付図を参照し本発明に対して更に詳しい記述を行う。
【0030】
本発明の球形又は類球形層状構造のリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物正極材料の製造方法について、以下のステップを含む2種の方法の一により製造して得る。
【0031】
方法一:リチウム源とニッケルコバルトマンガン前躯体(D50:1〜12μm)をモル比Li:(Ni+
Co+Mn)=(1.0〜1.2):1.0で混合させ、600〜1000℃(該焼結温度に達する過程中において昇温速度を好ましくは10〜30℃/minに設置する)で4〜30時間焼結し、冷却し、粉砕及び分級し、球形又は類球形層状構造のリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物正極材料を得る。
【0032】
方法二:リチウム源をポリエチレングリコール又はアクリルアミド水性コロイド中に分散させ、コロイドを作成し、そしてニッケルコバルトマンガン前躯体をモル比Li:(Ni+
Co+Mn)=(1.0〜1.2):1.0の割合でコロイド中へ加え、混合物を得て、混合物を150〜350℃で2〜15時間乾燥させ、そして600〜1000℃(該焼結温度に達する過程中において昇温速度を好ましくは10〜30℃/minに設置する)で4〜30時間焼結し、冷却し、粉砕及び分級し、球形又は類球形層状構造のリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物正極材料を得る。
【0033】
本発明において使用した乾燥設備:宜興市前錦炉業設備有限会社のKSF1100−V型ボックス炉。
【0034】
粉砕設備:連雲港春龍実験機器有限会社のSHQM型双星ボールミル、気流粉砕:宜興聚能粉砕設備会社のMX−50気流粉砕機、本発明の下記の実施例1〜8の圧力は0.2〜1.0MPaである。
【0035】
分析機器:英国マービンのMSU2000型レーザー粒度分析機、英国マービンのFPIA3000型流動粒子の粒度と形状図像分析機、英国マービンのG3型乾式法粒度と粒形分析機、北京彼奥電子技術有限会社が生産販売するSSA−3500全自動比表面分析機、ドイツのツァイスのSupra55 sapphire電界放出走査電子顕微鏡、オランダPANalyticalのX’Pert PRU X線回折機、米国Thermo Electron社のiCAP−6300誘導結合プラズマ発射スペクトル機、浙江杭可のLIP−3AHB06高恒温化成システム;武漢藍電のCT2001C測定設備、東莞市科瑞機電のKP−BAK−03E−02高效真空乾燥箱。
【0036】
本発明の二次リチウムイオン電池は、電極、非水電解質、隔膜と容器より構成された。具体的に言えば、電極は正極と陰極を含み、正極は正極集電体と正極集電体上に塗布された正極活性物質及び通常の接着剤、通常の導電助剤等を含む材料より作成され、正極活性物質は本発明の一次球形又は類球形リチウムニッケルコバルトマンガ酸材料であり、陰極は集電体と集電体上に塗布された通常の陰極活性物質及び通常の接着剤、通常の導電助剤等を含む材料より作成される。隔膜は、本業界で通常使用するPP/PEフィルムであり、正極と負極を隔離するために用いる。容器は正極、負極、隔膜、電解質の包容体である。
【0037】
下記の実施例中において、本発明で製造する球形又は類球形層状構造のリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物正極材料を用いて二次リチウムイオンボタン式電池を作成する具体的な操作方法は以下である。
【0038】
正極の製造:本発明の球形又は類球形層状構造のリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物正極材料と導電カーボンブラック(S.P)、接着剤ポリフッ化ビニリデン(PVDF)を重量比90:5:5でN−メチルピロリドン(NMP)(リチウムニッケルコバルトマンガン正極材料とNMPの重量比は2.1:1)中に加え十分に混合を行い、攪拌して均一なスラリーを形成し、アルミ箔集電体上に塗布させ、乾燥加圧して極片を作成する。加圧作成した正極片を打抜き、秤量し、焼成し、そして真空グローブボックス内において電池の組み立てを行い、まずボタン電池の殻底を置き、殻底上に発泡ニッケル(2.5mm)、負極金属リチウム片(天津産、99.9%)を置き、相対湿度1.5%以下の環境で0.5g電解液を注入し、電解液は質量比EC:DEC:DMC=1:1:1の混合溶剤を使用し、電解質は1M六フッ化リン酸リチウムであり、隔膜、正極片を置き、そしてボタン電池のカバーを付け、封を行う。ボタン電池の型番はCR2430である。
【0039】
下記の実施例において、本発明で製造した球形又は類球形層状構造のリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物正極材料を用いて二次リチウムイオン電池全電を作成する方法は以下である。
【0040】
正極の製造:本発明の球形又は類球形層状構造のリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物正極材料と導電カーボンブラック(S.P)、接着剤ポリフッ化ビニリデン(PVDF)を重量比94:3:3N−メチルピロリドン(NMP)(リチウムニッケルコバルトマンガン正極材料とNMPの重量比は2.1:1)中に加えて十分な混合を行い、攪拌で均一なスラリーを形成させ、アルミ箔集電体上に塗布し、乾燥加圧して極片を作成する。
【0041】
負極の製造:負極人工黒鉛と導電カーボンブラック(S.P)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、接着剤(SBR)を重量比95:1:1:3でたっぷりな純水中に加え混合させ、攪拌で均一なスラリーを形成させ、銅箔集電体上に塗布し、乾燥加圧して極片を作成する。
【0042】
隔膜はPP/PE複合フィルム材料である。加圧製造後の陽、陰極片にスポット溶接で極耳を付け、隔膜に插入後、巻き付け機で巻き付け後ソフトロール治具内に装入し、上部と側部を封し、そしてオーブンに入れ焼成し、その後相対湿度1.5%以下の環境で9g電解液を注入し、電解液には質量比EC:DEC:DMC=1:1:1の混合溶剤を使用し、電解質は1M六フッ化リン酸リチウムであり、注液、化成48時間後、真空密封を行う。電池チップの型番は454261である。
【0043】
本発明で製造した二次リチウムイオン実験電池の充放電測定はGB/T18287−2000の測定方法によって、武漢藍電の電池測定機で測定した。
【0044】
(実施例1)
1.04molの水酸化リチウム一水和物を、質量濃度2%のポリエチレングリコール水性コロイド800ml中に分散させ、転速100rpm、時間30minでコロイドを作成させ、再びモル比Ni:Co:Mn=4:3:3のニッケルコバルトマンガン前躯体の水酸化物(D50:1μm)をモル比Li:(Ni+Co+Mn)=1.04:1の割合でコロイド中に加え、転速3000rpm、時間50minで、混合物を得て、混合物を直接ボックス炉中に入れ、150℃で15時間乾燥した後、再び混合物をマッフル炉中に置き、空気雰囲気下で、30℃/minの昇温速度で650℃まで昇温させ、26時間焼結し、室温まで冷却し、気圧1.0MPaで気流粉砕させ、300メッシュの金属ふるいで分級し、球形又は類球形層状構造のリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物正極材料A1を得る。
【0045】
該正極材料A1粉末に対してX線回折図測定を行い、
図1−1で示すように、測定結果は、回折角2θが64.91の(110)回折ピークにおいて半ピーク幅FWHM(110)は0.08であり、結晶粒径は989Åであり、且つ単一α−NaFeO
2型層状構造であった。
【0046】
該正極材料A1粉末に対して流動粒子の粒度と形状図像分析測定を行い、
図1−2で示すように、粒子は球形又は類球形を呈し、球形度平均値は0.933であり、且つ粒径は5μm以下の粒子の累積パーセンテージは84.4%である。
【0047】
該正極材料A1粉末に対して走査電子顕微鏡測定を行い、
図1−3に示すように、主な形状が球形又は類球形を呈する一次単結晶粒子及び少量二次凝集粒子より構成され、その内、一次単結晶粒子の粒径は0.6〜3.6μmである。
【0048】
該正極材料A1粉末に対して粒径及び比表面積測定を行い、D50は2.2μmであり、BETは0.86m
2/gである。
【0049】
正極材料A1の焼結プロセス中に対応する条件(昇温速度、焼結温度、焼結時間、気流粉砕圧力と生成物)を表1中に纏め、表1に示す。正極材料A1の指標データ(X線回折の(110)結晶面回折角度、半ピーク幅、結晶粒径、球形度平均値、5μm以下の粒径の累積パーセンテージ、SEM下での単結晶粒径、D50及びBET)を表2に纏め、表2に示す。該粉末A1を用いて正極材料の活性物質として作成した電池の性能の測定結果を表3に示す。
【0050】
(実施例2)
1.0molの水酸化リチウム一水和物を、質量濃度5%のアクリルアミド水性コロイド750ml中に分散させ、転速80rpm、時間50minでコロイドを作成させ、そしてモル比Ni:Co:Mn=6:2:2のニッケルコバルトマンガン前躯体の水酸化物(D50:3μm)をモル比Li:(Ni+Co+Mn)=1.0:1の割合でコロイド中に加え、転速2800rpm、時間45minで、混合物を得て、混合物を直接ボックス炉中に入れ、230℃で8時間乾燥した後、再び混合物をマッフル炉中に置き、酸素雰囲気下で、20℃/minの昇温速度で600℃まで昇温させ、30時間焼結し、室温まで冷却し、気圧0.5MPaで気流粉砕させ、300メッシュの金属ふるいで分級し、球形又は類球形層状構造のリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物正極材料A2を得る。
【0051】
該正極材料A2粉末に対してX線回折図測定を行い、
図2−1で示すように、測定結果は、回折角2θが64.9の(110)回折ピークにおいて半ピーク幅FWHM(110)は0.07であり、結晶粒径は900Åであり、且つ単一α−NaFeO
2型層状構造であった。
【0052】
該正極材料A2粉末に対して流動粒子の粒度と形状の図像分析測定を行い、
図2−2で示すように、粒子は球形又は類球形を呈し、球形度平均値は0.935であり、且つ粒径が5μm以下の粒子の累積パーセンテージは76.2%である。
【0053】
該正極材料A2粉末に対して走査電子顕微鏡測定を行い、主な形状が球形又は類球形を呈する一次単結晶粒子及び少量二次凝集粒子より構成され、その内、一次単結晶粒子の粒径は0.7〜4.8μmである。
【0054】
該正極材料A2粉末に対して粒径及び比表面積測定を行い、D50は3.0μmであり、BETは0.82m
2/gである。
【0055】
正極材料A2の焼結プロセス中に対応する条件(昇温速度、焼結温度、焼結時間、気流粉砕圧力と生成物)を表1に纏め、表1に示す。正極材料A2の指標データ(X線回折の(110)結晶面回折角度、半ピーク幅、結晶粒径、球形度平均値、5μm以下粒径の累積パーセンテージ、SEM下での単結晶粒子径、D50及びBET)を表2に纏め、表2に示す。該粉末A2を用いて正極材料の活性物質として作成した電池の性能の測定結果を表3に示す。
【0056】
(実施例3)
炭酸リチウムとモル比Ni:Co:Mn=5:2:3のニッケルコバルトマンガン前躯体の水酸化物(D50:7.5μm)を、モル比Li:(Ni+Co+Mn)=1.2:1で、転速200rpmで60minボールミリングして均一に混合させ取り出し、そして混合物をマッフル炉中に置き、空気雰囲気下で、13℃/minの昇温速度で1000℃まで昇温させ、4時間焼結後、室温まで冷却し、気圧0.8MPaで気流粉砕させ、300メッシュの金属ふるいで分級し、球形又は類球形層状構造のリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物正極材料A3を得る。
【0057】
該正極材料A3粉末に対してX線回折図測定を行い、測定結果は、回折角2θが64.89の(110)回折ピークにおいて半ピーク幅FWHM(110)は0.15であり、結晶粒径は2000Åであり、且つ単一α−NaFeO
2型層状構造であった。
【0058】
該正極材料A3粉末に対して流動粒子の粒度と形状図像分析測定を行い、粒子は球形又は類球形を呈し、球形度平均値は0.949であり、且つ粒径が5μm以下の粒子の累積パーセンテージは85.8%である。
【0059】
該正極材料A3粉末に対して走査電子顕微鏡測定を行い、
図3で示したように、主に形状が球形又は類球形の一次単結晶粒子及び少量二次凝集粒子より構成され、その内、一次単結晶粒子の粒径は0.8〜7.8μmである。
【0060】
該正極材料A3粉末に対して粒径及び比表面積測定を行い、D50は6.4μmであり、BETは0.58m
2/gである。
【0061】
正極材料A3の焼結プロセス中に対応する条件(昇温速度、焼結温度、焼結時間、気流粉砕圧力と生成物)を表1中に纏め、表1に示す。正極材料A3の指標データ(X線回折の(110)結晶面回折角度、半ピーク幅、結晶粒径、球形度平均値、5μm以下の粒径の累積パーセンテージ、SEM下での単結晶粒子径、D50及びBET)を表2に纏め、表2に示す。該粉末A3を用いて正極材料の活性物質として作成した電池の性能の測定結果を表3に示す。
【0062】
(実施例4)
硝酸リチウムとモル比Ni:Co:Mn=1:1:1のニッケルコバルトマンガン前躯体の水酸化物(D50:10.0μm)を、モル比Li:(Ni+Co+Mn)=1.16:1で、転速1000rpmで10minボールミリングして均一に混合させ取り出し、そして混合物をマッフル炉中に置き、空気雰囲気下で、10℃/minの昇温速度で920℃まで昇温させ、12時間焼結後、室温まで冷却し、気圧0.2MPaで気流粉砕させ、300メッシュの金属ふるいで分級し、球形又は類球形層状構造のリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物正極材料A4を得る。
【0063】
該正極材料A4粉末に対してX線回折図測定を行い、
図4−1で示すように、測定結果は、回折角2θが64.86の(110)回折ピークにおいて半ピーク幅FWHM(110)は0.13であり、結晶粒径は1653Åであり、且つ単一α−NaFeO
2型層状構造であった。該正極材料A4粉末に対して乾式法粒度と粒形分析測定を行い、
図4−2及び4−3で示すように、粒子は球形又は類球形を呈し、球形度平均値は0.939であり、且つ粒径が5μm以下の粒子の累積パーセンテージは84.19%である。
【0064】
該正極材料A4粉末に対して走査電子顕微鏡測定を行い、主に形状が球形又は類球形の一次単結晶粒子及び少量の二次凝集粒子より構成され、その内、一次単結晶粒子の粒径は0.6〜6.8μmである。
【0065】
該正極材料A4粉末に対して粒径及び比表面積測定を行い、D50は5.2μmであり、BETは0.54m
2/gである。
【0066】
正極材料A4の焼結プロセス中に対応する条件(昇温速度、焼結温度、焼結時間、気流粉砕圧力と生成物)を表1中に纏め、表1に示す。正極材料A4の指標データ(X線回折の(110)結晶面回折角度、半ピーク幅、結晶粒径、球形度平均値、5μm以下の粒径の累積パーセンテージ、SEM下での単結晶粒子径、D50及びBET)を表2に纏め、表2に示す。該粉末A4を用いて正極材料の活性物質として作成した電池の性能の測定結果を表3に示す。
【0067】
(実施例5)
1.05molの水酸化リチウム一水和物を、質量濃度3%のポリエチレングリコールと質量濃度2%のアクリルアミドの混合水性コロイド600ml中に分散させ、転速は65rpm、時間90minでコロイドを作成させ、そしてモル比Ni:Co:Mn=1:1:1のニッケルコバルトマンガン前躯体の酸化物(D50:5.0μm)をモル比Li:(Ni+Co+Mn)=1.05:1の割合でコロイド中に加え、転速2600rpm、時間40min、混合物を得て、混合物を直接ボックス炉中に入れ、350℃で2時間乾燥した後、再び混合物をマッフル炉中に置き、空気雰囲気下で、25℃/minの昇温速度で700℃まで昇温させ、22時間焼結し、室温まで冷却し、気圧0.3MPaで気流粉砕させ、300メッシュの金属ふるいで分級し、球形又は類球形層状構造のリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物正極材料A5を得る。
【0068】
該正極材料A5粉末に対してX線回折図測定を行い、測定結果は、回折角2θが64.88の(110)回折ピークにおいて半ピーク幅FWHM(110)は0.09であり、結晶粒径は1058Åであり、且つ単一α−NaFeO
2型層状構造であった。
【0069】
該正極材料A5粉末に対して流動粒子の粒度と形状図像分析測定を行い、
図5に示したように、粒子は球形又は類球形を呈し、球形度平均値は0.931であり、且つ粒径が5μm以下の粒子の累積パーセンテージは72.1%である。
【0070】
該正極材料A5粉末に対して走査電子顕微鏡測定を行い、主に形が球形又は類球形の一次単結晶粒子及び少量の二次凝集粒子より構成され、その内、一次単結晶粒子の粒径は0.5〜4.4μmである。
【0071】
該正極材料A5粉末に対して粒径及び比表面積測定を行い、D50は4.5μmであり、BETは0.69m
2/gである。
【0072】
正極材料A5の焼結プロセス中に対応する条件(昇温速度、焼結温度、焼結時間、気流粉砕圧力と生成物)を表1中に纏め、表1に示す。正極材料A5の指標データ(X線回折の(110)結晶面回折角度、半ピーク幅、結晶粒径、球形度平均値、5μm以下の粒径の累積パーセンテージ、SEM下での単結晶粒子径、D50及びBET)を表2に纏め、表2に示す。該粉末A5を用いて正極材料の活性物質として作成した電池の性能の測定結果を表3に示す。
【0073】
(実施例6)
炭酸リチウムとモル比Ni:Co:Mn=5:2:3のニッケルコバルトマンガン前躯体のカルボキシル基を含む酸化物(貴州振華会社から販売られる酢酸コバルト、酢酸ニッケルと酢酸マンガンの複合物)(D50:4.0μm)を、モル比Li:(Ni+Co+Mn)=1.18:1で、転速900rpmで13minボールミリングして均一に混合させ取り出し、そして混合物をマッフル炉中に置き、空気雰囲気下で、15℃/minの昇温速度で960℃まで昇温させ、8時間焼結後、室温まで冷却し、気圧0.7MPaで、気流粉砕させ、300メッシュの金属ふるいで分級し、球形又は類球形層状構造のリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物正極材料A6を得る。
【0074】
該正極材料A6粉末に対してX線回折図測定を行い、測定結果は、回折角2θが64.97の(110)回折ピークにおいて半ピーク幅FWHM(110)は0.14であり、結晶粒径は1772Åであり、且つ単一α−NaFeO
2型層状構造であった。
【0075】
該正極材料A6粉末に対して流動粒子の粒度と形状図像分析測定を行い、粒子は球形又は類球形を呈し、球形度平均値は0.918であり、且つ粒径が5μm以下の粒子の累積パーセンテージは74.5%である。
【0076】
該正極材料A6粉末に対して走査電子顕微鏡測定を行い、
図6で示したように、主に形が球形又は類球形の一次単結晶粒子及び少量の二次凝集粒子より構成され、その内、一次単結晶粒子の粒径は0.9〜6.7μmである。
【0077】
該正極材料A6粉末に対して粒径及び比表面積測定を行い、D50は3.8μmであり、BETは0.62m
2/gである。
【0078】
正極材料A6の焼結プロセス中に対応する条件(昇温速度、焼結温度、焼結時間、気流粉砕圧力と生成物)を表1中に纏め、表1に示す。正極材料A6の指標データ(X線回折の(110)結晶面回折角度、半ピーク幅、結晶粒径、球形度平均値、5μm以下の粒径の累積パーセンテージ、SEM下での単結晶粒子径、D50及びBET)を表2に纏め、表2に示す。該粉末A6を用いて正極材料の活性物質として作成した電池の性能の測定結果を表3に示す。
【0079】
(実施例7)
1.10molの水酸化リチウム一水和物を、質量濃度4%のポリエチレングリコールの水性コロイド650ml中に分散させ、転速は70rpm、時間70minでコロイドを作成させ、そしてモル比Ni:Co:Mn=8:1:1のニッケルコバルトマンガン前躯体の酸化物(D50:8.0μm)をモル比Li:(Ni+Co+Mn)=1.10:1の割合でコロイド中に加え、転速2000rpm、時間30min、混合物を得て、混合物を直接ボックス炉中に入れ、300℃で5時間乾燥した後、再び混合物をマッフル炉中に置き、空気雰囲気下で、23℃/minの昇温速度で850℃まで昇温させ、18時間焼結し、室温まで冷却し、気圧0.4MPaで気流粉砕させ、300メッシュの金属ふるいで分級し、球形又は類球形層状構造のリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物正極材料A7を得る。
【0080】
該正極材料A7粉末に対してX線回折図測定を行い、測定結果は、回折角2θが64.98付近の(110)回折ピークにおいて半ピーク幅FWHM(110)は0.11であり、結晶粒径は1231Åであり、且つ単一α−NaFeO
2型層状構造であった。
【0081】
該正極材料A7粉末に対して流動粒子の粒度と形状図像分析測定を行い、粒子は球形又は類球形を呈し、球形度平均値は0.913であり、且つ粒径が5μm以下の粒子の累積パーセンテージは88.7%である。
【0082】
該正極材料A7粉末に対して走査電子顕微鏡測定を行い、主に形が球形又は類球形の一次単結晶粒子及び少量の二次凝集粒子より構成され、その内、一次単結晶粒子の粒径は0.7〜6.3μmである。
【0083】
該正極材料A7粉末に対して粒径及び比表面積測定を行い、D50は7.6μmであり、BETは0.46m
2/gである。
【0084】
正極材料A7の焼結プロセス中に対応する条件(昇温速度、焼結温度、焼結時間、気流粉砕圧力と生成物)を表1中に纏め、表1に示す。正極材料A7の指標データ(X線回折の(110)結晶面回折角度、半ピーク幅、結晶粒径、球形度平均値、5μm以下の粒径の累積パーセンテージ、SEM下での単結晶粒子径、D50及びBET)を表2に纏め、表2に示す。該粉末A7を用いて正極材料の活性物質として作成した電池の性能の測定結果を表3に示す。
【0085】
(実施例8)
醋酸リチウムとモル比Ni:Co:Mn=4:3:3のニッケルコバルトマンガン前躯体の水酸化物(D50:12μm)を、モル比Li:(Ni+Co+Mn)=1.15:1で、転速850rpmで15minボールミリングして均一に混合させ取り出し、そして混合物をマッフル炉中に置き、空気雰囲気下で、18℃/minの昇温速度で750℃まで昇温させ、20時間焼結後、室温まで冷却し、気圧0.6MPaで気流粉砕させ、300メッシュの金属ふるいで分級し、球形又は類球形層状構造のリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物正極材料A8を得る。
【0086】
該正極材料A8粉末に対してX線回折図測定を行い、
図7に示すように、測定結果は、回折角2θが64.92付近の(110)回折ピークにおいて半ピーク幅FWHM(110)は0.10であり、結晶粒径は1487Åであり、且つ単一α−NaFeO
2型層状構造であった。
【0087】
該正極材料A8粉末に対して乾式法粒度と粒形分析測定を行い、粒子は球形又は類球形を呈し、球形度平均値は0.905であり、且つ粒径が5μm以下の粒子の累積パーセンテージは90.2%である。
【0088】
該正極材料A8粉末に対して走査電子顕微鏡測定を行い、主に形が球形又は類球形の一次単結晶粒子及び少量の二次凝集粒子より構成され、その内、一次単結晶粒子の粒径は0.5〜9.2μmである。
【0089】
該正極材料A8粉末に対して粒径及び比表面積測定を行い、D50は8.0μmであり、BETは0.30m
2/gである。
【0090】
正極材料A8の焼結プロセス中に対応する条件(昇温速度、焼結温度、焼結時間、気流粉砕圧力と生成物)を表1中に纏め、表1に示す。正極材料A8の指標データ(X線回折の(110)結晶面回折角度、半ピーク幅、結晶粒径、球形度平均値、5μm以下の粒径の累積パーセンテージ、SEM下での単結晶粒子径、D50及びBET)を表2に纏め、表2に示す。該粉末A8を用いて正極材料の活性物質として作成した電池の性能の測定結果を表3に示す。
【0091】
(対比例)
市販の貴州振華新材料有限会社のコバルトニッケルマンガン三元ZH5000S。
【0092】
製造方法:炭酸リチウムとモル比Ni:Co:Mn=5:2:3のニッケルコバルトマンガン前躯体の酸化物(D50:6.5μm)を、モル比Li:(Ni+
Co+Mn)=1.06:1で、転速750rpmで20minボールミリングして均一に混合させ取り出し、そして混合物をマッフル炉中に置き、空気雰囲気下で、35℃/minの昇温速度で930℃まで昇温し10時間焼結、室温まで自然冷却し、転速は1500rpmで30minボールミリングして取り出し、300メッシュの金属ふるいでレベル分けし、ニッケルコバルトマンガン三元ZH5000Sを得る。
【0093】
該正極材料粉末に対してX線回折図測定を行い、
図8−1に示すように、測定結果は、回折角2θが64.95付近の(110)回折ピークにおいて半ピーク幅FWHM(110)は0.18であり、結晶粒径は608Åであり、且つ単一α−NaFeO
2型層状構造であった。
【0094】
該正極材料粉末に対して走査電子顕微鏡測定を行い、
図8−2に示すように、主に二次凝集粒子及び5%以下の一次粒子から構成される。該正極材料粉末に対して粒径及び比表面積測定を行い、測定結果はD50は6.6μmであり、BETは0.72m
2/gである。
【0095】
正極材料ZH5000Sの焼結プロセス中に対応する条件(昇温速度、焼結温度、焼結時間、気流粉砕圧力と生成物)を表1中に纏め、表1に示す。正極材料ZH5000Sの指標データ(X線回折の(110)結晶面回折角度、半ピーク幅、結晶粒径、球形度平均値、5μm以下粒径の累積パーセンテージ、SEM下での単結晶粒子径、D50及びBET)を表2に纏め、表2に示す。該粉末ZH5000Sを用いて正極材料の活性物質として作成した電池の性能測定結果を表3に示す。
【0099】
上記の実施例1〜8及び対比例の実験から、本発明の方法で製造して得た球形又は類球形層状構造リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物正極材料において、走査電子顕微鏡下で、形状は主に球形又は類球形の一次単結晶粒子を呈し、時々二次凝集粒子が出現するが、二次凝集粒子は多くとも35%を超えず、その内、一次単結晶粒子の粒径は0.5〜10μmであり、且つ粒径が5μm以下の粒子の累積パーセンテージ60%を超え、具体的には72.1%〜90.2%である。粉末X線回折スペクトル(XRD)において、回折角2θが64.9°付近の(110)回折ピークの半ピーク幅FWHM(110)は0.07〜0.15であり、好ましくは0.09〜0.14である。平均結晶粒径は900Å以上2000Å以下であり、好ましくは1487〜1653Åである。また、本発明の正極材料球形度平均値は0.905〜0.949である。しかし、対比例で製造した正極材料の形状は二次凝集粒子を中心としており、粉末X線回折スペクトル(XRD)において、回折角2θが64.9°付近の(110)回折ピークの半ピーク幅FWHM(110)は0.18であり、材料の構造安定性は比較的に低く、特に高温、高電圧下で、作成した電池はサイクル回数の増加に伴い、サイクル容量の維持率は顕著に下がることが分かった。
【0100】
(付記)
(付記1)
球形又は類球形層状構造のリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物正極材料において、
前記正極材料の化学一般式は、Li
aNi
xCo
yMn
zM
bO
2であり、ここで、1.0≦a≦1.2、0.30≦x≦0.90、0.05≦y≦0.40、0.05≦z≦0.50、x+y+z=1である、
ことを特徴とする球形又は類球形層状構造のリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物正極材料。
【0101】
(付記2)
前記正極材料の粉末は走査電子顕微鏡(SEM)下で、形が球形又は類球形を現す一次単結晶粒子及び少量の二次凝集粒子を含み、一次単結晶粒子の粒径は0.5〜10μmであり、且つ粒径が5μm以下の粒子の累積パーセンテージは60%を超える、
ことを特徴とする付記1に記載の球形又は類球形層状構造のリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物正極材料。
【0102】
(付記3)
前記正極材料の粉末のX線回折スペクトル(XRD)で単一α−NaFeO
2型層状構造であることを示す、
ことを特徴とする付記1又は2に記載の球形又は類球形層状構造のリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物正極材料。
【0103】
(付記4)
前記正極材料の粉末のX線回折スペクトル(XRD)中において、回折角2θが64.9°となる付近に存在する(110)回折ピークの半ピーク幅FWHM(110)は0.07〜0.15であり、平均結晶粒径は900Å以上2000Å以下である、
ことを特徴とする付記1〜3のいずれか1つに記載の球形又は類球形層状構造のリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物正極材料。
【0104】
(付記5)
BET法により測定される比表面積は0.3〜0.9m
2/gである、
ことを特徴とする付記1〜4のいずれか1つに記載の球形又は類球形層状構造のリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物正極材料。
【0105】
(付記6)
メジアン(中値)粒径は2.0〜8.0μmであり、好ましくはメジアン粒径は3.0〜7.0μmである、
ことを特徴とする付記1〜5のいずれか1つに記載の球形又は類球形層状構造のリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物正極材料。
【0106】
(付記7)
リチウム源とニッケルコバルトマンガン前躯体とをモル比Li:(Ni+Co+Mn)=(1.0〜1.2):1.0で混合させ、600〜1000℃下で4〜30時間焼結し、冷却し、粉砕及び分級し、球形又は類球形層状構造のリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物正極材料を得るステップを少なくとも含む、
ことを特徴とする付記1〜6のいずれか1つに記載の球形又は類球形層状構造のリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物正極材料の製造方法。
【0107】
(付記8)
リチウム源をポリエチレングリコール又はアクリルアミド水性コロイド中に分散させ、コロイドを作成し、その後ニッケルコバルトマンガン前躯体をモル比Li:(Ni+CO+Mn)=(1.0〜1.2):1.0の割合でコロイド中に加え、混合物を得て、混合物を乾燥させ、その後600〜1000℃下で4〜30時間焼結し、冷却し、粉砕及び分級し、球形又は類球形層状構造のリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物正極材料を得るステップを少なくとも含む、
ことを特徴とする付記1〜6のいずれか1つに記載の球形又は類球形層状構造のリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物正極材料の製造方法。
【0108】
(付記9)
前記ニッケルコバルトマンガン前躯体のメジアン粒径D50は1〜12μmであり、好ましくは3〜10μmであり、更に好ましくは4〜8μmである、
ことを特徴とする付記7又は8に記載の正極材料の製造方法。
【0109】
(付記10)
使用された前記リチウム源は炭酸リチウム、水酸化リチウム一水和物、硝酸リチウム、醋酸リチウム中の一種又は数種の混合物である、
ことを特徴とする付記7〜9のいずれか1つに記載の正極材料の製造方法。
【0110】
(付記11)
使用された前記ニッケルコバルトマンガン前躯体はニッケルコバルトマンガンの水酸化物、ニッケルコバルトマンガンのカルボキシ基酸化物、ニッケルコバルトマンガンの酸化物中の一種又は数種の混合物である、
ことを特徴とする付記7〜10のいずれか1つに記載の正極材料の製造方法。
【0111】
(付記12)
乾燥温度は150〜350℃であり、乾燥時間は2〜15時間であり、好ましくは前記乾燥時間は2〜8時間である、
ことを特徴とする付記8〜11のいずれか1つに記載の正極材料の製造方法。
【0112】
(付記13)
付記7〜12のいずれか1つに記載の製造方法によって得られる、
ことを特徴とするリチウムイオン電池の正極材料。
【0113】
(付記14)
付記1〜6のいずれか1つに記載の正極材料を正極活性物質として含む、
ことを特徴とするリチウムイオン電池の正極。
【0114】
(付記15)
導電剤をさらに含み、好ましくは前記導電剤は導電カーボンブラックである、
ことを特徴とする付記14に記載のリチウムイオン電池の正極。
【0115】
(付記16)
付記14又は15に記載の正極、陰極、隔膜及び電解液を採用して製造して得る、
ことを特徴とするリチウムイオン電池。
【0116】
(付記17)
付記16に記載のリチウムイオン電池を採用して製造して得る、
ことを特徴とするエネルギー貯蔵発電所又は携帯式記憶設備。
【0117】
(付記18)
付記1〜6のいずれか1つに記載の正極材料、付記13に記載の正極材料又は付記16に記載のリチウムイオン電池の携帯デジタル製品(3C)、電動自動車(XEV)又はエネルギー貯蔵(ESS)の製造分野においての応用。