特許第6574246号(P6574246)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 西田 憲正の特許一覧

<>
  • 特許6574246-ユニットバス 図000002
  • 特許6574246-ユニットバス 図000003
  • 特許6574246-ユニットバス 図000004
  • 特許6574246-ユニットバス 図000005
  • 特許6574246-ユニットバス 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6574246
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】ユニットバス
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/20 20060101AFI20190902BHJP
   A47K 4/00 20060101ALI20190902BHJP
   A47K 3/02 20060101ALI20190902BHJP
【FI】
   E03C1/20 E
   A47K4/00
   A47K3/02
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-514143(P2017-514143)
(86)(22)【出願日】2016年4月19日
(86)【国際出願番号】JP2016062442
(87)【国際公開番号】WO2016171148
(87)【国際公開日】20161027
【審査請求日】2017年11月30日
(31)【優先権主張番号】特願2015-89821(P2015-89821)
(32)【優先日】2015年4月24日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】515057458
【氏名又は名称】西田 憲正
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】特許業務法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西 田 憲 正
【審査官】 七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−018379(JP,A)
【文献】 特開2013−083050(JP,A)
【文献】 特開平09−235763(JP,A)
【文献】 特開平09−316954(JP,A)
【文献】 特開2000−054449(JP,A)
【文献】 特開2005−113590(JP,A)
【文献】 実開昭63−045692(JP,U)
【文献】 特開2008−110078(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/12−1/33
A47K 3/02−4/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽と防水パンとが横並び状となって一体に形成され、使用者がバスルームの出入り口から出入りが可能なようにバスルーム内に組み込まれるユニットバスであって、
前記防水パンにおける前記出入り口側の床面部分と前記浴槽側の床面部分とが低く、これらの間の床面部分が高くなるように傾斜状に形成され、前記出入り口側の床面部分及び前記浴槽側の床面部分に排水口がそれぞれ形成され、前記出入り口側の床面部分の排水口及び前記浴槽側の床面部分の排水口がバスルームのコンクリートスラブ床の下方に配管された排水管に連結され、
前記防水パンの床面における前記出入り口側の端部に、防水パンの水を堰き止め可能な高さの堰き止め部が形成される一方、前記出入り口の外側のコンクリートスラブ床上に内装仕上げ床が敷設されることにより前記堰き止め部の高さが小さくなっており、
前記堰き止め部に対応した出入り口部分には前記堰き止め部と略同等の高さを有する下地材が設けられ、
前記下地材と前記堰き止め部とにかけて踏板が架け渡されることを特徴とするユニットバス。
【請求項2】
請求項1記載のユニットバスであって、
前記浴槽における防水パン側に位置する槽壁の上端部に、湾曲状に低くなって凹む跨ぎ用凹部が形成されていることを特徴とするユニットバス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴槽及び防水パンが一体となって形成されており、ホテル、マンション等のバスルーム内に組み込まれて用いられるユニットバスに関し、特にバリアフリー機能を備えたユニットバスに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ユニットバスは浴槽及び防水パンが一体となって形成されており、この状態でホテル等のバスルームに組み込まれた後、洗面台や便器等が取り付けられることによりトイレ一体型となって使用される。このようなユニットバスでは、バスルームの外側への水の溢れ出、漏水を防止する必要性から効率の良い排水を行うための配慮が主になされている。
【0003】
例えば、特許文献1では、両端が上下流の排水口に連通する排水路を防水パンにおける浴槽側に設け、この排水路における上流側排水傾斜を下流側排水傾斜よりも緩やかにしている。特許文献2では、凹溝状の溝部を防水パンの床面に多列状に形成して床面を複数に分割することにより水はけを向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−256648号公報
【特許文献2】特開2000−54449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のユニットバスでは、排水への配慮がなされているが、バスルームへの出入りに関しては配慮がなされていないのが実情であり、出入り口に比較的高い段差がある状態となっている。これは建造物のコンクリートスラブ床の上にユニットバスからの水の排水管や排水トラップを設置するため、コンクリートスラブ床とユニットバスの床面との間に空間が必要となり、ユニットバスの出入り口の高さがコンクリートスラブ床の床面よりも必然的に高くなることによる。このような構造では、通常、ユニットバスの出入り口の高さは、コンクリートスラブ床の床面から約170mm以上高くなる。このように出入り口が高い場合には、足腰が弱った高齢者や軽度の歩行障害のある身障者は、バスルームの出入りの際に足がつまずいたりすることが多く、危険性を伴った使用が余儀なくされている。
【0006】
本発明は、このような従来の問題点を考慮してなされたものであって、高齢者や身障者においても安全にバスルームを使用することができるバリアフリー機能を備えたユニットバスを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するためになされた、本発明のユニットバスは、浴槽と防水パンとが横並び状となって一体に形成され、使用者がバスルームの出入り口から出入りが可能なようにバスルーム内に組み込まれるユニットバスであって、前記防水パンにおける前記出入り口側の床面部分と前記浴槽側の床面部分とが低く、これらの間の床面部分が高くなるように傾斜状に形成され、前記出入り口側の床面部分及び前記浴槽側の床面部分に排水口がそれぞれ形成され、前記出入り口側の床面部分の排水口及び前記浴槽側の床面部分の排水口がバスルームのコンクリートスラブ床の下方に配管された排水管に連結され、前記防水パンの床面における前記出入り口側の端部に、防水パンの水を堰き止め可能な高さの堰き止め部が形成される一方、前記出入り口の外側のコンクリートスラブ床上に内装仕上げ床が敷設されることにより前記堰き止め部の高さが小さくなっており、前記堰き止め部に対応した出入り口部分には前記堰き止め部と略同等の高さを有する下地材が設けられ、前記下地材と前記堰き止め部とにかけて踏板が架け渡されることを特徴とする。
【0009】
又、前記浴槽における防水パン側に位置する槽壁の上端部に、湾曲状に低くなって凹む跨ぎ用凹部が形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、防水パンにおける出入り口側の床面部分が他の床面部分よりも低くなっており、この床面部分に排水口が形成され、この排水口がコンクリートスラブ床の下方に配管された排水管に連結されているため、排水管の配管のための空間がコンクリートスラブ床とユニットバスの床面との間に必要なくなる。このため、防水パンの床面の段差が小さくなり、防水パンの床面の障壁がなくなる。従って、バリアフリー機能を備えたものとなり、高齢者や身障者であってもバスルームへの出入りの際につまずくことがなく、安全にバスルームに出入りすることができる。
【0011】
又、本発明によれば、浴槽の槽壁に湾曲状に低くなって凹む跨ぎ用凹部が形成されており、足を大きく上げる必要なく浴槽への出入りが可能であり、浴槽への出入りが容易且つ安全となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態のユニットバスの平面図である。
図2】一実施形態のユニットバスの斜視図である。
図3】一実施形態のユニットバスにおける防水パンを示す断面図である。
図4図3における要部の拡大断面図である。
図5】一実施形態のユニットバスに用いられる浴槽の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1図5は、本発明の一実施形態のユニットバス1を示す。ユニットバス1は浴槽4と防水パン5が一体となって形成された本体部2を備えている。
【0014】
図2に示すように、ユニットバス1の本体部2は横並び状となった浴槽4及び防水パン5によって形成されている。横並び状の浴槽4及び防水パン5は熱可塑性樹脂を金型によって加熱加圧することにより一体に形成されて本体部2となる。一体成形された本体部2を図1に示すように、ホテル等の建造物のバスルーム6内に組み込んだ後、本体部2に洗面台7や便器8を組み付け、所定の配管を行うことによりホテル、マンション等のバスルームとして機能させることができる。バスルーム6は図1に示すようにルーム壁9によって周囲が囲まれているが、ルーム壁9の一部が出入り口3となって開口されており、この出入り口3にドア10が開閉可能に設けられている。使用者はドア10を開けた状態で出入り口3からバスルーム6に出入りする。
【0015】
本体部2の浴槽4は入浴のためのバスタブであり、4周辺が槽壁11によって囲まれている。符号12は4周辺の槽壁11における防水パン5側に位置する槽壁であり、この防水パン側の槽壁12を跨いで乗り越えることにより浴槽4への出入りが行われる。
【0016】
防水パン5は浴槽4よりも低い位置となった状態で浴槽4の横並び位置で連続している。防水パン5の床面13には、複数の排水口14が開口されている。排水口14は浴槽4側の排水溝14a及びバスルーム6の出入り口3(ドア10)側の排水口14bを備えている。それぞれの排水口14(14a、14b)には、グレーチング18が設けられて異物の配管への流入を防止している(図3参照)。又、防水パン5の床面13の上面には、排水溝15が縦横方向に沿って複数条形成されている。複数条の排水溝15は使用時における滑り止め作用を兼用している。浴槽4及び防水パン5を含む本体部2の周囲には、低い高さの囲い壁16が立ち上がるように形成されており、床面13上を流れる水の本体部2からの漏れ出を防止している。図2において、符号19は、便器8の排水を行うため、防水パン5に形成された便器用排水口である。
【0017】
この実施形態において、防水パン5の床面13は、浴槽4側の床面部分13a及び出入り口3(ドア10)側の床面部分13bが他の床面部分13cよりも低くなるように傾斜状に形成されるものである。
【0018】
すなわち図3に示すように、防水パン5の床面13は浴槽4と出入り口3との間に形成されるが、床面13における幅方向の略中央部分の他の床面部分13cが最も高く、他の床面部分は13cから離れるのにしたがって高さが徐々に低くなるように傾斜している。このように傾斜することにより、浴槽4側の床面部分13a及び出入り口3側の床面部分13bに向かって水が良好に流れるようになっている。浴槽4側の排水口14aはこの浴槽4側の床面部分13aに形成され、出入り口3側の排水口14bは出入り口3側の床面部分13bに形成されることにより流れてきた水を排出する。
【0019】
図3において、符号31は排水管である。この実施形態において、排水管31は建造物のコンクリートスラブ床32の下方に配管されており、排水口14a、14bがこの排水管31に連結されて排水が行われる。このように排水管31をコンクリートスラブ床32の下方に配管した構造では、従来のように排水管をコンクリートスラブ床32の上に配置する必要がなく、コンクリートスラブ床32とユニットバス1の床面13との間に排水管配置のための空間を形成する必要がなくなる。このため、ユニットバス1における防水パン5の床面13をコンクリートスラブ床32に極力接近させることができる。
【0020】
これにより、防水パン5の床面13における出入り口3側の床面部分13bの段差を小さくでき、バスルーム6の出入り口3の高さを小さくすることができる。例えば、従来では、出入り口の段差がコンクリートスラブ床32から約170mm必要であったのに対し、この実施形態では、コンクリートスラブ床から26.5mm程度の低い段差とすることができる。そして、バスルーム6外の床を磁器タイル等によって内装仕上げすることにより(図4参照)、段差を小さくし、フラットに近づけることができる。これによりバスルーム6への出入りに対しバリアフリー機能を備えたものとすることができ、高齢者や身障者であってもバスルーム6への出入りの際につまずくことがなく、安全にバスルーム6に出入りすることが可能となる。
【0021】
この実施形態では、図3及び図4に示すように、防水パン5の床面13における出入り口3(ドア10)側の端部に堰き止め部33が形成されている。堰き止め部33は床面13と一体に形成されることにより床面13(すなわち出入り口3側の床面部分13b)の一部を構成するものである。
【0022】
堰き止め部33は、出入り口3側の床面部分13bの端部よりも、さらに出入り口3側に位置するように形成される。堰き止め部33は防水パン5の水を堰き止め可能な高さに形成されるものであり、このため出入り口3側の床面部分13bと略同等の高さ(段差)となっている。このような堰き止め部33を形成することにより、水が出入り口3(ドア10)からバスルーム6の外側に洩れ出ることを防止することができる。
【0023】
この実施形態において、堰き止め部33に対応した出入り口3(ドア10)部分には、木下地材34が設けられる。木下地材34は堰き止め部33と略同等の高さを有した下地材が使用され、木下地材34と堰き止め部33とにかけて踏み板35が掛け渡されることにより、これらの上部が覆われている。踏み板35は例えば、アルミニウム等の耐腐食性金属薄板が使用される。踏み板35は堰き止め部33及び木下地材34を覆った状態で木下地材34に向けてビス38をねじ込むことにより固定される。なお、踏み板35としては、図4に示すように、両端部分に対して中央部分が幾分隆起した形状のものを用いることがバスルーム6への出入りの点から好ましい。
【0024】
以上に加えて、コンクリートスラブ床32における出入り口3(ドア10)の外側には、内装仕上げ材36が敷設される。内装仕上げ材36は磁器タイルかタイルカーペット等が使用される。内装仕上げ材36は接着剤37を介して出入り口3の外側部分のコンクリートスラブ床32上に固定される。タイルカーペットを使用する場合、接着剤37はタイルカーペットに予め塗布された製品を使用することにより簡単に脱着できる。この内装仕上げ材36の高さ(厚さ)の分、堰き止め部33や木下地材34の高さ(段差)が小さくなる。このためバスルーム6の出入り口3の段差を12.7mm(1/2インチ)以下としたり、段差のないフラットとすることが容易となる。これにより、さらに良好なバリアフリー機能を備えたものとすることができ、さらに安全にバスルーム6への出入りが可能となる。なお、内装仕上げ材36が磁器タイルの場合、内装仕上げ材36と踏み板35との間には、シール材39を介在させることが好ましい。
【0025】
この実施形態では、図2及び図5に示すように、浴槽4における防水パン5側の槽壁12に跨ぎ用凹部22が形成されている。跨ぎ用凹部22は防水パン5側の槽壁12の上端部21を湾曲状に低くすることにより形成されるものであり、浴槽4への出入りの際に足を大きく上げることなく防水パン5側の槽壁12を跨ぐことができる。このため浴槽4への出入りが容易且つ安全となる。又、跨ぎ用凹部22を湾曲状とすることにより、浴槽4に対するスムーズな出入りが可能となる。
【符号の説明】
【0026】
1 ユニットバス
2 本体部
3 出入り口
4 浴槽
5 防水パン
10 ドア
13 床面
13b 出入り口側の床面部分
14 排水口
14b 出入り口側の排水口
21 上端部
22 跨ぎ用凹部
31 排水管
32 コンクリートスラブ床
33 堰き止め部
34 木下地材
35 踏み板
36 内装仕上げ材
図1
図2
図3
図4
図5