【実施例】
【0041】
実験
本発明のいくつかの実施形態について、以下の非限定的な実施例を用いて説明する。
【0042】
ポリマー生成物の製造
ポリマー生成物の調製に関する一般的な説明
モノマー溶液の調製は以下の典型的な実施例について説明し、また、他のモノマー溶液は類似の方法で調製する。使用したモノマー及び各試験ポリマー生成物のモノマー比率については表1に示す。
【0043】
モノマー溶液をこの説明に従って調製した後、そのモノマー溶液を窒素流でパージして酸素を除去する。開始剤、すなわち、ポリエチレングリコール−水(質量比1:1)中の2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノンをモノマー溶液に添加し、モノマー溶液をトレー上に置き、UV−光の下で約1cmの層を形成する。UV光は主に350〜400nmの範囲にあり、例えばフィリップス社製Actinic BL TL 40Wの照明管を使用することができる。重合が進行するに従って光強度を増大させ重合を完了させる。最初の10分間の光強度は550μW/cm
2であり、その後30分の光強度は2000μW/cm
2である。得られたゲルを押出機に通し、60℃の温度で10%未満の水分まで乾燥させる。乾燥したポリマーを粉砕し、0.5〜1.0mmの粒度にふるい分けする。
【0044】
モノマー溶液AD7−AC2 Aの調製
温度制御した実験用ガラス反応器内で、50%アクリルアミド溶液248.3g、40%DTPA Na塩溶液0.01g、グルコン酸ナトリウム2.9g、ジプロピレングリコール4.4g、アジピン酸1.9g及びクエン酸7.2gを混合することにより20〜25℃でモノマー溶液を調製する。固体物質が溶解するまで混合物を撹拌する。この溶液に、32.6gの80%ADAM−Clを加える。その溶液のpHをクエン酸で3.0に調整し、アクリル酸2.8gを溶液に加える。pHを2.5〜3.0になるように調整する。開始剤溶液は、ポリエチレングリコール−水(質量比1:1)中の6%2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン溶液5mlである。上記の一般的な説明に記載したように調製を続ける。
【0045】
モノマー溶液M8−AC2.5Aの調製
温度制御した実験用ガラス反応器中で50%アクリルアミド溶液224.4g、40%DTPA Na塩溶液0.01g、グルコン酸ナトリウム2.7g、アジピン酸1.7g、及びクエン酸6.5gを混合することによって20〜25℃の温度で、モノマー溶液の調製を行う。固体物質が溶解するまで混合物を撹拌する。この溶液に62.4gの30%MAPTACを加える。クエン酸でその溶液のpHを3.0に調整し、アクリル酸2.6gをその溶液に添加する。pHを2.5〜3.0に調整する。開始剤溶液は、ポリエチレングリコール−水(質量比1:1)中の12%2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン溶液6.5mlである。上記の一般的な説明に記載したように、調製を続ける。
【0046】
モノマー溶液AD7−IT3の調製
温度制御した実験用ガラス反応器中で50%アクリルアミド溶液244.1g、40%DTPA Na塩溶液0.01g、グルコン酸ナトリウム2.9g、ジプロピレングリコール4.3g、アジピン酸1.8g、及びクエン酸7.0gを混合することによって20〜25℃の温度で、モノマー溶液の調製を行う。固体物質が溶解するまで混合物を撹拌する。この溶液に32.4gの80%ADAM−Clを加える。クエン酸をさらに加えてその溶液のpHを3.0に調整し、その溶液にイタコン酸7.5gを添加する。pHを2.5〜3.0に調整する。開始剤溶液は、ポリエチレングリコール−水(質量比1:1)中の6%2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン溶液5mlである。上記の一般的な説明に記載したように、調製を続ける。
【0047】
モノマー溶液M8−AC2.5Bの調製
温度制御した実験用ガラス反応器中で50%アクリルアミド溶液224.4g、40%DTPA Na塩溶液0.01g、グルコン酸ナトリウム2.7g、及びアジピン酸1.7gを混合することによって20〜25℃の温度で、モノマー溶液の調製を行う。固体物質が溶解するまで混合物を撹拌する。この溶液に62.4gの30%MAPTACを加える。37%塩酸でその溶液のpHを3.0に調整し、その溶液にアクリル酸3.2gを加える。pHを2.5〜3.0に調整する。開始剤溶液は、ポリエチレングリコール−水(質量比1:1)中の12%2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン溶液6.5mlである。上記の一般的な説明に記載したように、調製を続ける。
【0048】
ポリマー生成物の固有粘度を、ウベローデ(Ubbelohde)毛細管粘度計により1M NaCl中25℃で測定した。毛細管粘度測定用のポリマー溶液のpHは、ギ酸により2.7に調整して、予想されるポリイオン錯体化の粘度に対する影響を回避した。分子量の計算は、ポリアクリルアミドについての定数「K」及び「a」を用いて行った。定数「K」の値は0.0191ml/gであり、定数「a」の値は0.71である。試験したポリマー生成物について測定した固有粘度値及び計算した分子量値をともに表1に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
比較用ポリマー生成物
市販のポリマー生成物を比較用のポリマー生成物として使用した。比較用ポリマー生成物のポリマー溶液の分子量は、ポリエチレンオキシドの430〜1,015,000g/molの狭い分子量較正標準で較正されたサイズ排除クロマトグラフィー、SECによって測定した。乾燥(ドライ、dry)カチオン性ポリアクリルアミドの分子量については、試験ポリマー生成物と同様に、固有粘度に基づいて概算した。乾燥ポリビニルホルムアミド/ポリビニルアミンポリマー(VF60−VAM40)の分子量については、ポリエチレンオキサイドで較正したサイズ排除クロマトグラフィーSECによって決定した。VF60−VAM40の分子量値は、その値が較正標準を上回っているため、一評価である。対照ポリマー生成物に用いたモノマー、モノマー割合、固有粘度値及び計算分子量値を表2に示す。
【0051】
【表2】
【0052】
技術的性能についての実施例
試験ポリマー生成物及び比較用対照ポリマー生成物の技術的性能試験をパルプ及びシートについての各種研究方法により行った。使用したパルプ及びシート試験装置及び規格を表3に示す。
【0053】
【表3】
【0054】
性能実施例1:検定ライナー手すき紙(ハンドシート)の乾燥強度
商業用中央ヨーロッパ段ボール古紙(OCC)ストックを原料として使用した。そのストックは、製紙工場でスクリーン分級プロセスによって長繊維(LF−)画分と短繊維(SF−)画分に既に分離されたものである。両方の画分を含む混合パルプ、並びに白水及び透明な濾液について特性解析を行った。その結果を下記の表4に示す。
【0055】
【表4】
【0056】
試験対象の各ポリマー生成物を1000rpmで混合しながら混合ジャー中のストックに添加した。ポリマー生成物を添加した後、混合を1分間続け、シート作製の30秒前に白水(1/3)をパルプ(2/3)に添加し、ストック懸濁液をシート作製に用いる準備が整うまで30秒間1000rpmで混合を続けた。歩留向上剤Fennopol K3400R(ケミラ社(Kemira Oyj)製)を、シート作製の10秒前に投与量約100g/tで添加した。したがって、シート作製の前に、ポリマー生成物には、全部で90秒の反応時間を割り当てた。歩留向上剤の投与量を変えることによって、当該シートの坪量を調整した。対照例についての歩留向上剤の投与量は100g/tであった。
【0057】
試験用シートの作製に当たり、ストックを透明な濾液(CF)で1%コンシステンシーに希釈した。循環水を具備したラピッドケーテン(Rapid Koethen)シート形成機を用いISO 5269−2:2012に準じて坪量が120g/m
2の手すき紙(ハンドシート)を形成した。ストック部分の量(240ml)を一定に保持した。また、各シートは真空乾燥機中で92℃、1000mbarで6分間乾燥させた。
【0058】
使用した循環水については別の容器で調製した。ここでは、製紙工場の白水に対応するようにCaCl
2及びNaClを用いて水道水の導電率及び硬度を調整した。
【0059】
試験を行う前に、準備した試験用シートを、ISO 187に準拠して23℃、相対湿度50%で24時間、事前調整した。
【0060】
各種ポリマー生成物、ポリマー生成物の投与量レベル、及び作製した手すき紙に関し得たSCT強さ結果を表5に示す。
【0061】
【表5】
【0062】
表5から、乾燥(ドライの)両性ポリマー生成物が、溶液の両性ポリマーと比較して、手すき紙のSCT強さをより高めることが分かる。また、分子量2,800,000g/mol及び分子量3,500,000g/molを有する正味カチオン性の(net cationic)両性乾燥ポリマー生成物(それぞれ、AD7−AC2A及びAD7−AC2C)、並びに分子量3,300,000g/molを有する正味中性の(net neutral)両性乾燥ポリマー生成物(M5−AC5)を用いる場合に、最良のSCT強さが得られる。
【0063】
性能実施例2:パイロット抄紙機の研究
中欧から入手した商業中央ヨーロッパの段ボール古紙(OCC)のストックを原料として使用した。アンドリッツ(Andritz)試験所のリファイナーを使用して35分かけて開いた詰め木(open fillings)で梱包ベール(bale)からOCCを離解した。ベールを工場水で離解してコンシステンシーを2.3%に調整し試験用ストック懸濁液とした。
【0064】
ポリマー生成物を離解OCCの濃厚ストックに添加した。新鮮な工場水をプロセス水として使用し、攪拌しながらストックと共に混合タンクに供給し、ストックをヘッドボックスコンシステンシー1%に希釈し、この希薄ストック懸濁液をパイロット抄紙機のヘッドボックスに供給した。歩留向上剤として、1)アクリルアミドのカチオン性コポリマー(分子量は約6,000,000g/mol、電荷量は10モル%)(C−PAM)、投与量は乾燥製品1トン当たり100g)、及び2)コロイド状シリカ(平均粒径は5nm、投与量は乾燥製品1トン当たり200g)を使用した。C−PAMはパイロット抄紙機のヘッドボックスポンプの手前で添加したが、一方、シリカはパイロット抄紙機のヘッドボックスの手前で投与した。結果を表6に示す。
【0065】
【表6】
【0066】
100g/m
2の坪量を有するOCCライナー及び中芯(フルーティング)シートをパイロット抄紙機で製造した。パイロット抄紙機の動作パラメータは以下のとおりとした。
走行速度:2m/min;ウェブ幅:0.32m;孔あきロールの回転速度:120rpm、プレス部:2つのニップ;乾燥部:8つの予備乾燥シリンダ、ベビーシリンダ、5つの乾燥シリンダ
【0067】
製造したライナー及び中芯シートについて、強度特性を試験する前に、規格ISO 187に従って相対湿度50%、23℃で24時間保持し予め状態調整を行った。各種シートの特性を測定するのに用いた機器類及び規格を表3に示す。
【0068】
ポリマー生成物の使用量及び強度特性試験の結果を表7に示す。試験ポリマー生成物間の代表的な比較が行えるようにするために、強度の結果を指数化し同じ灰分含量に補正した。引張強さ及びSCTの測定値は、得られた各測定値を、測定したシートの坪量で除することにより指数化し、次いで機械方向強度及び横方向強度の幾何平均として計算した。各結果を16%の灰分含量に等しくした。既知のデータ点を基にして16%の灰分含量に各結果を内挿した。灰分含量の+1%単位の差は、幾何学的SCT指数の−0.25Nm/gの差に、また、幾何学的引張強さ指数の−0.75Nm/gの差に相当する。
【0069】
【表7】
【0070】
性能実施例2の結果は、カチオン性ポリアクリルアミド及びポリビニルアミン/ポリビニルホルムアミド共重合体を含む対照ポリマー生成物と比較して、2,800, 000g/molの分子量を有する両性で正味カチオン性の乾燥(ドライな)ポリマー生成物がSCT強さ、破裂強さ及び引張強さをより一層高めることを示している。
【0071】
性能実施例3:検定ライナー手すき紙(ハンドシート)のSCT及び破裂強さ
商業用中央ヨーロッパ段ボール古紙(OCC)ストックを原料として使用した。そのストックは、製紙工場でスクリーン分級プロセスによって長繊維(LF−)画分と短繊維(SF−)画分に既に分離されたものである。両方の画分を含む混合パルプ、並びに白水及び透明な濾液について特性解析を行った。その結果を下記の表8に示す。
【0072】
【表8】
【0073】
性能実施例2で用いたと同じC−PAMを用いた。ポリマー生成物及びC−PAMを1000rpmで混合しながら混合ジャー中のストックに添加した。ポリマー生成物及びC−PAMを添加した後、混合を1分間続け、シート作製の30秒前に白水(1/3)をパルプ(2/3)に添加し、ストック懸濁液をシート作製に用いる準備が整うまで30秒間1000rpmで混合を続けた。歩留向上剤Fennopol K3400R(ケミラ社(Kemira Oyj)製)を、シート作製の10秒前に投与量約100g/tで添加した。したがって、シート作製の前に、ポリマー生成物には、全部で90秒の反応時間が割り当てられた。歩留向上剤の投与量を変えることによって、当該シートの坪量を調整した。対照例についての歩留向上剤の投与量は100g/tであった。
【0074】
実験用手すき紙(ハンドシート)及び使用する循環水の調製は、性能実施例1に記載したようして実施した。試験の前に、ISO 187に従って、実験用シートを23℃、相対湿度50%に24時間保持して予め状態調整を行った。
【0075】
各種ポリマー生成物及びポリマー生成物の投与量、並びに、作製した手すき紙について14%灰分含量で得られたSCT強さ指数及び破裂強さ指数の結果を表9に示す。
【0076】
【表9】
【0077】
表9の結果から、両性乾燥ポリマーは、市販のポリビニルホルムアミド/ポリビニルアミン溶液ポリマーと比較して、SCT及び破裂強さ指数を一層増加させることが分かる。
【0078】
性能実施例4
原紙は、商業的製紙工場から入手した無サイズ検定ライナー紙であって、120g/m
2の、100%リサイクル繊維をベースとするライナー等級(グレード)のものであった。
【0079】
市販の表面サイズのデンプンC*film07311(Cargill社製)を使用し、このデンプンを95℃で、15%濃度で30分間調理した。市販の疎水化剤Fennosize S3000(ケミラ社(Kemira Oyj)製)をサイズ処方に、乾燥表面サイズ組成物の1質量%使用した。1.5%濃度に溶解した乾燥ポリマー生成物を表面サイズ組成物に添加した。表面サイズ組成物を調合し、70℃で保存した。最小の混合時間は2分間/実験であった。
【0080】
サイズプレスのパラメータは次のとおりであった。
サイズプレスのメーカー:Werner Mathis AG、CH8155 Niederhasli/Zuerich; サイズプレス機種:HF47693タイプ350; 操作速度:2m/分; 操作圧力:1バール; 操作温度:60℃; サイジング液量:100ml/試験; サイジング回数/シート:1
【0081】
サイジングは機械方向に行い、表面サイズ組成物は12質量%溶液として施与する。
【0082】
サイズを施したシートの乾燥は、ラピッドケーテン社製のシート乾燥機内で97℃で5分間行った。
【0083】
サイジングしたシートの特性について測定した。使用した測定法、試験装置及び規格は表3に示した。指数値は、紙/ボードの坪量で割った強度である。幾何学(GM)値は(MD値)*(CD値)の平方根である。ここで、MD値は機械方向での測定強度値であり、CD値は機械の横断方向での測定強度値である。測定値を表10に示す。
【0084】
【表10】
【0085】
表10に示す結果から、両性の乾燥ポリマー生成物は、両性の溶液ポリマー及び表面サイズデンプンそれ自体と比較して、SCT強さ及び破裂強さ指数値を一層増加させることが分かる。全ての両性ポリマーが、表面サイズデンプン及び比較用ポリマー生成物と比較して、より改善した疎水性をもたらした。また、最も大きい分子量を有する両性乾燥ポリマー生成物が、疎水性に最も顕著に影響を与えた。
【0086】
性能実施例5: 水切れ(ドレネージ、drainage)及びデンプン歩留まりの研究
この実施例では、市販の段ボール箱古紙(OCC)ストックを水切れ(ドレネージ)及びデンプンの歩留まりを研究するのに使用した。定着剤は市販のポリアミン型カチオンポリマーFennofix 50(ケミラ社(Kemira Oyj)製)であり、その使用量は1.4kg/tであった。使用した両性乾燥ポリマー生成物はAD7−AC2Cであった。
【0087】
水切れ性能の試験は、動的濾水度分析装置、DDA(AB Akribi Kemikonsulter、スウェーデン)を用いて行った。DDAの真空及び攪拌機を校正し、設定に必要な調整を行った。真空の適用と真空の真空破壊点との間の時間を測定するため、DDAをコンピュータに接続した。真空の変化は、空気が濃厚化するウェブの中に入ってくるまでの湿潤繊維ウェブの形成時間を表し、濾水時間を示す。濾水時間の限度は30秒に設定して測定した。
【0088】
水切れ測定では、500mlのストック試料を測り取り反応ジャーに入れた。このとき、0.25mmの網目のワイヤ(すき網)及び300mbarの真空を使用した。水切れ試験は、試料ストックを1200rpmで30秒間、攪拌機を用いて混合することにより実施した。その際、同時に、定着剤及びポリマー生成物を所定の順序で添加した。
【0089】
DDA濾液中のデンプン含有量を以下のようにして測定した。
すなわち、ストック試料を濾紙で濾過した。1.5mlの濾液を測定キュベットに採取し、1%塩酸1.3mlを添加した。7.2mlの脱イオン水を加えて、10mlの測定キュベットをいっぱいに満たした。Hach Lange DR 5000分光光度計を用いて波長590nmで吸光度を以下のようにして測定した。すなわち、最初に試薬ブランクについて記録を取り、次に100μlのルゴール(Lugol)のヨウ素溶液を加え、試料を混合し、30秒後に吸光度を測定した。デンプン濃度は吸光度測定値と直線的に相関しており、すなわち、吸光度が大きくなるに従って、デンプン濃度が高くなることを示す。
【0090】
吸光度及びDDA水切れの結果を表11に示す。
【0091】
【表11】
【0092】
表11の結果は、定着剤ポリマーと共に使用した場合には、当該両性乾燥ポリマー生成物がデンプン歩留まり及び水切れに好ましい影響を有することを示している。
【0093】
性能実施例6:クラフトパルプの乾燥強度
クラフトパルプの乾燥強度に対する乾燥両性ポリマー生成物の影響について試験した。試験は次のようにして行った。すなわち、クラフトの濃いストックを透明な濾液で1%のコンシステンシーに希釈した。パルプ、濃厚ストック、透明濾液、及び濃いストックの特性を表12に示す。試験に用いた定着剤ポリマーは市販のポリエチレンイミン型のポリマーRetaminol 2S(ケミラ社(Kemira Oyj)製)であり、シート形成の120秒前にパルプに添加した。試験に使用した乾燥強度向上ポリマー生成物はAD7−AC2Dであり、シート形成の90秒前に投与した。DDJ中で、1000rpmで混合しながら、1%パルプに定着剤及び乾燥強度向上ポリマーの両方を加えた。シートを形成する30秒前に、パルプを白水で1:1の比に希釈した。試験に使用した歩留向上剤は市販のカチオン性ポリアクリルアミドFennopol K 3400P(ケミラ社(Kemira Oyj)製)であり、シート形成の10秒前にパルプに添加した。対照例では、歩留剤の投与量は200g/tであった。
【0094】
【表12】
【0095】
ラピッドケーテンシート形成機を用い坪量が120g/m
2の手すき紙を形成した。また、各シートを真空乾燥機中で92℃、1000mbarで6分間乾燥させた。試験をする前に、ISO187に従って、各シートについて、23℃、相対湿度50%に24時間保持して予め状態調整を行った。
【0096】
作製した手すき紙についてSCT強さ指数及び破裂強さ指数を測定し、得られた結果を表13に示す。各シートの特性を測定するのに用いた機器類及び規格は表3に示している。
【0097】
【表13】
【0098】
表13の結果は、両性の乾燥ポリマー生成物がクラフトパルプのSCT強さ及び破裂強さ指数の値を増加させることを示している。定着剤ポリマーは、両性ポリマー生成物と共に使用することができる。
【0099】
性能実施例7
本実施例は、原紙が市販のシュレンツ(schrenz)紙であり、サイジング組成物が疎水化剤を含まないことを除いて、性能実施例4と同じ手順を用いて実施した。両性で乾燥のポリマー生成物はAD7−IT3であり、一方、比較用対照ポリマー生成物はAC8であってアクリルアミドとアクリル酸との市販の溶液共重合体であった。
【0100】
SCT GM指数及びCMT30指数を5%ピックアップレベルで決定した。SCT GM指数は性能実施例4に記載したようにして決定した。また、CMT30指数を決定する装置規格は表3に示している。測定値を表14に示す。
【0101】
【表14】
【0102】
表14の結果は、両性の乾燥ポリマー生成物が、非疎水化し表面サイジングした紙のSCT強さ及びCMT30強度を、効果的かつコスト効率的に、向上させることを示している。
【0103】
以上、本発明に関し、現時点で最も実際的でかつ好適な実施態様と考えられる内容について説明したが、本発明は上記した実施態様に限定されないものと解釈すべきである。また、本発明は、本願の特許請求の範囲の記載で定める範囲内で、様々な変形例及び均等な技術的解決手段をも包含することを意図している。