(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
受け枠の下面側と地下構造物の上端開口面との隙間に露出するアンカーボルトの部分と第1ナットを、受け枠の内側であるマンホール空間への開口を設けてボルトナットカバーで覆い、これらを前記隙間に充填する充填材から隔離してあることを特徴とした請求項1又は請求項2に記載の地下構造物の開口部構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のように、受け枠4の外周から外側へ張り出したフランジ部分を取付けボルトで固定する構造は、経年後、受け枠の高さを調整する必要が生じた時に、受け枠周囲のコンクリートなどをおおよその見当で除去しなければならず、施工に無駄が生じる。
【0005】
すなわち、従来の開口部構造の受け枠では、地下構造物本体との固定部が受け枠の外周側に設けたフランジにあるので、道路補修などに伴い受け枠の嵩上げが必要な場合に、ボルトによる受け枠と本体との固定を解除するには、受け枠の外周領域に充填してあるモルタルを除去する必要があり、この手間は大きい。また、受け枠と本体の上端開口面とはボルトを切断することにより分離されるので、ボルトを再利用することができない。あるいは、モルタルの除去を省略して受け枠をむりやり重機で引き抜いたりすると、本体の上端開口面を破壊したり、受け枠周囲を大きく破壊したりするので、こちらでも修復に手間を要する。
【0006】
一方、特許文献1に記載されている受け枠(
図1)(人孔蓋受け枠13)は、内周壁13aと外周壁13b及び底部13cとで内側及び上方に開口する通気溝15を備えた、いわゆる箱型枠であり、通気溝15を構成する底部13cに設けた取付け孔7からボルト14を本体の上端開口面へねじ込むことにより、受け枠を本体へ固定しているが、受け枠固定後にその受け枠を必要あって上方へ移動させたり(嵩上げ)、引き抜いたりする技術的思想はどこにも記載されていない。このボルトによる取付け構造は、受け枠の高さ調整(嵩上げ)を意図するものではない。
【0007】
特許文献3の蓋支持枠5の構造も、支持フランジ25に設けた貫通孔29からアンカーボルト28を本体の上端開口面へねじ込んで固定しているが、特許文献2の場合と同様であり、特許文献3のアンカーボルトによる取付け構造は、受け枠の高さ調整(嵩上げ)を意図するものではない。
【0008】
以上から、この発明は、地下構造物の開口部において、受け枠の嵩上げや撤去が簡単であると共に、撤去に際して受け枠の周囲を破壊することのない開口部構造の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、地下構造物の空間を地上に連絡するために地表に設ける開口部構造であって、受け枠とこれに装着される蓋および基部が地下構造物
の上端部に固定され
、かつ、前記地下構造物の上
端面から上方に
突出するように固定されたアンカーボルトを備え、受け枠に前記アンカーボルトを貫通させ、貫通箇所の受け枠下面側であってかつ前記上端開口面の上側でアンカーボルトに装着させた第1ナットと、前記受け枠上面側であって前記アンカーボルトに装着させた第2ナットによって、受け枠を地下構造物に固定してあり、第1ナットは受け枠を支持し、第2ナットは受け枠を第1ナット側へ締め付けて受け枠の上下位置を固定してあり、第1ナット、第2ナットは工具を用いて受け枠の内側であるマンホール空間から操作可能とされていることを特徴とした地下構造物の開口部構造である。
請求項2に係る発明は、地下構造物の空間を地上に連絡するために地表に設ける開口部構造であって、受け枠とこれに装着される蓋および基部が地下構造物
の上端部に固定され
、かつ、前記地下構造物の上
端面から上方に
突出するように固定されたアンカーボルトを備え、受け枠の底壁を、底壁に設けた挿通孔に前記アンカーボルトを貫通させ、アンカーボルトに装着した少なくとも第1、第2のナットによって固定してあり、第1ナットは前記底壁の下面側にあってかつ前記上端開口面の上側で受け枠を支持し、第2ナットは前記底壁の上面側にあって、前記底壁を第1ナット側へ締め付けるものであり、第1ナット、第2ナットは工具を用いて受け枠の内側であるマンホール空間から操作可能とされており、第1ナットと第2ナットで前記底壁を挟み付けて受け枠の上下位置を固定してあることを特徴とした地下構造物の開口部構造である。
請求項3に係る発明は、受け枠の下面側と地下構造物の上端開口面との隙間に露出するアンカーボルトの部分と第1ナットを、受け枠の内側であるマンホール空間への開口を設けてボルトナットカバーで覆い、これらを前記隙間に充填する充填材から隔離してあることを特徴とした請求項1又は請求項2に記載の地下構造物の開口部構造である。
請求項4に係る発明は、ボルトナットカバーが上下方向への伸縮弾力性を備えていることを特徴とした請求項3に記載の地下構造物の開口部構造である。
また、別発明として、以下のものでもよい。
地下構造物の空間を地上に連絡するために地表に設ける開口部構造であって、受け枠とこれに装着される蓋および基部が地下構造物に固定されたアンカーボルトを備える。
受け枠に前記アンカーボルトを貫通させ、このアンカーボルトが貫通する箇所の受け枠下面側に第1ナットをアンカーボルトに装着させて配置し、この箇所の受け枠上面側に第2ナットをやはり前記アンカーボルトに装着させて配置し、第1ナットで受け枠を支持し、第2ナットで受け枠を第1ナット側へ締め付けて受け枠の上下位置を固定する。
そして、第1ナット、第2ナットは受け枠の内側であるマンホール空間から工具を用いて操作可能とする。
【0010】
前記アンカーボルトが貫通し前記の第1ナットと第2ナットが配置される箇所は、受け枠の底壁とすることがある。
この場合に、受け枠の底壁と地下構造物の上端開口面との隙間にボルトナットカバーを配置して、この隙間に露出するアンカーボルトや第1ナットを覆い、この隙間に充填する無収縮モルタルなどの充填材から前記アンカーボルトやナットを隔離することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
マンホール空間から受け枠の内側に位置するナットを操作することができるので、嵩上げや切り下げの場合であっても、受け枠周囲のコンクリートなどに埋まった固定箇所を探す必要がなく、また、受け枠周囲のコンクリートなどを破壊する必要がない。
第1ナット、第2ナットを操作することで、受け枠の上下位置を簡単に調整できる。
その際に、前記のナットやアンカーボルトは受け枠の内側空間(マンホール空間に連通した空間)にあって外部環境から保護されているので操作が不能なほど損傷を受けることがない。
結果として、カッターや引抜き機を用いて受け枠を無理に引き剥がすような工事は必要なく、嵩上げ作業の後も同じアンカーボルトやナットを利用でき、施工が安価になる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[実施例1]
図1は、実施例1であり、下水道のマンホール1(地下構造物の開口部構造)である。
このマンホール1は、地中の下水管(地下空間)と地上空間を垂直に結ぶ筒状の本体2と本体2の上端開口面3(地下構造物の上端開口面)に設置された受け枠4および受け枠4に装着される蓋5とを有している。
符号6はマンホール空間を示し受け枠4の内側空間である。
【0014】
本体2は通常コンクリート製で上端開口面3に複数本のアンカーボルト7が上方に向けて固定されている(この実施例では3本)。
受け枠4は、ダクタイル鋳鉄の鋳物製であり、この実施例において、全体として環状である(
図2)。受け枠4は、本体2の上端開口面3に前記のアンカーボルト7を利用して取り付けられている。受け枠4と蓋5及び前記のアンカーボルト7は、地下空間を地上へ連絡するために地表に設ける開口部構造を構成する。
【0015】
受け枠4は、環状であり(
図2)、
図3に見るように、上壁8と底壁9及びこれらの外径側をつなぐ支持壁10を有した断面が基本的にコ字形の箱形であり、上壁8の内周縁から下方へ内周壁11が形成され(
図3)ている。内周壁11の下縁と底壁9との間に開口部12が形成されている。
【0016】
環状の受け枠4におけるコ字形断面の内側は内側空間13であり、受け枠4は箱型の枠構造である。前記内側空間13はマンホール空間6の一部であり、前記開口部12は環状をした受け枠4の中心側であるマンホール空間6に開口する。
受け枠4は、底壁9の外径が本体2の上端開口面3の外径とほぼ等しいか小さく、底壁9が本体2への取付け部となっている。底壁9には、前記アンカーボルト7が挿通する底壁挿通孔14が形成されている。底壁9は受け枠4の低壁でもある。
また、内周壁11の内周面には段差面によって、蓋載置面15が設けられている。
【0017】
図4において、符号71はボルトナットカバーであり、受け枠4の底壁9と本体2の上端開口面3との間の隙間19に配置され、前記隙間19に露出するアンカーボルト7と第1ナット16を、隙間19に充填される無収縮モルタルなどの充填材20から隔離する。
ボルトナットカバー71は、
図5〜
図11に例示するように、種々のものが考えられる。いずれにしても、充填材20から前記アンカーボルト7や第1ナット16を隔離できるものであれば良い。
図5は、合成樹脂の成形品であり、基本的に貫通部72と開口部73を一体に有している。全体に剛性を有するがある程度の弾性を有する素材(塩化ビニールなど)で構成されている。
貫通部72は円柱形で上下の壁にアンカーボルト7の挿通孔74を有している。開口部73は受け枠4のマンホール空間6へ向かって末広がりに拡大された開口75を有する。前記上下の挿通孔74は、前記開口75の縁に向けてすり割り76が形成されている。
開口部73の開口縁は受け枠4の底壁9の内周縁とほぼ同じ位置へ配置できるようにする(
図4)。
【0018】
このボルトナットカバー71は、本体2へ受け枠4を取り付けた後、前記のすり割り76を拡大するようにしてアンカーボルト7と第1ナット16に装着する。開口75の箇所を除いて、この箇所のアンカーボルト7と第1ナット16が覆われる。
受け枠4を取付け後においても、開口75からアンカーボルト7や第1ナット16の状態を目視できる。また、開口部73は、貫通部72から末広がりに拡大されているので、第1ナット16に係合させたスパナなどの工具を回動できる範囲が広く、嵩上げなどの操作を行い易い。
上方の挿通孔74は設ける必要のない場合もある。
【0019】
図6は、前記
図5のボルトナットカバー71の開口75に内部を封鎖するための封止キャップ75aを設けたものである。封止キャップ75aは簡単に着脱できる状態で開口75の装着されており、ボルトナットカバー71をアンカーボルト7の露出部へ装着するときは取り外し、装着後に戻しておく。
なお、受け枠4を取り付けた後、隙間19へ充填材20を充填するときは、受け枠4の内周に養生材11a(
図4)が当てつけられてボルトナットカバー71の開口75は閉鎖されるが、この実施例のように封止キャップ75aが存在すると充填材20の流れ込みがより確実に防止される。養生材11aを取り除いた後も封止キャップ75aは残るが、透明なキャップであれば内部の状況をそのまま観察できるので除去する必要はない。むしろ、キャップは装着したままにして、マンホール空間6からの硫化水素などによりアンカーボルト7や第1ナット16が腐食されてしまうのを防止することもできる。
嵩上げ操作のために、第1ナット16を操作するなどの必要が生じた際は、封止キャップ75aを取り外す。
キャップ75aに変えて透明な封止フィルム75b(
図11)で開口75を封鎖してもよい。封止フィルム75bは開口75の縁に着脱が容易な接着剤で貼着される。
【0020】
図7は、前記のボルトナットカバー71を上下方向に伸縮する蛇腹構造としたものである。受け枠4の底壁9と本体2の上端開口面3との隙間19の寸法が種々である場合に上下寸法を調整できる。また、圧縮した状態で保管、搬送ができ、場所をとらない。
図8は、ボルトナットカバー71を合成樹脂の硬質スポンジやコンクリートなどで形成したものである。リング構造であって、挿通孔74と開口75とが連通して一体に形成されている。
このボルトナットカバー71は、受け枠4を本体2へ取り付ける前に、本体2の上端開口面3上に載置しておく必要があるが、受け枠4を装着すると受け枠4の底壁9と前記上端開口面3との隙間19はボルトナットカバー71で閉鎖され、開口75だけが受け枠4のマンホール空間6に開放されている。
したがって、受け枠4を取り付けた後もマンホール空間6からアンカーボルト7と第1ナット16の状態を目視できる。
【0021】
図9は、前記リング状ボルトナットカバー71をそれぞれのアンカーボルト7の箇所を中心にブロック状に切り出したものに相当する。
受け枠4をアンカーボルト7へ取り付けた後に、受け枠4の底壁9と本体2上端開口面3との隙間19に差し込んで装着する。
無収縮モルタルなどの充填材20は、アンカーボルト7の箇所に配置されたブロック状のボルトナットカバー71間の隙間19に充填されるがアンカーボルト7や第1ナット16は隔離される。そして、開口75はマンホール空間6に開いているので、受け枠4を取り付けた後もマンホール空間6からアンカーボルト7や第1ナット16の状態を観察したり、操作したりできる。
このようなブロック状のボルトナットカバー71は、素材を選択することにより、削ったり、切り出したりして隙間19の高さなどに対応した加工が可能なものとすることができる。
【0022】
図10は、一部を断面(ハッチング)で示しているように、中空部75cを有する筒状の中空タイプのボルトナットカバー71である。弾力性のある合成樹脂で作られ、中空部75cを有することで全体としての変形性と弾性を付与している。
このようなリング形態では、前記のような開口75がないので、使用時には、あらかじめアンカーボルト7に挿通しておき、上から装着される受け枠4で押し潰すようにして装着される。すなわり、このボルトナットカバー71は高さが隙間19よりも大きく、隙間19間に圧縮された状態で装着される。これにより、ボルトナットカバー71の上下面は密封され、隙間19に露出しているアンカーボルト7と第1ナット16は充填材20から隔離される。
第1ナット16の点検が必要なときにはボルトナットカバー71を刃物で切り取ったり、加熱したりして除去する。これにより、マンホール空間6側から第1ナット16の箇所を目視できるようになり、また、工具を差し込むことができるようになる。
符号75dはエアの注入口であり、前記の中空部75cに連通している。注入口75dはなくても良いが、設けておくと、エアを抜くことで隙間19箇所の第1ナット16やアンカーボルト7を目視し易くなる。また、使用前の格納スペースを小さくできる。
【0023】
図11は、前記中空タイプのボルトナットカバー71をU字形にしたものであり、内部にやはりU字形に屈曲させた中空部75cが複数本配置されている。中空部75cの両端はU字形の端面に開口しており、全体は、中空部75cの周囲が肉厚なチューブ状となっている。
この実施例はU字形であることにより、受け枠4を本体2へ取り付けた後に、隙間19に装着して、この箇所に露出しているアンカーボルト7や第1ナット16の周囲を囲うことができる。
そして、U字形に屈曲した中空部75cを備えることで弾力性に富み、隙間19の高さに応じて高さ調整を容易に行なえる。
なお、
図11のように、開口75側が封止フィルム75bにより閉鎖できるようになっている。封止フィルム75bは、着脱が可能で透明なものが好ましい。
【0024】
受け枠4は、底壁9をアンカーボルト7へ第1ナット16と第2ナット17及び第3ナット18で、次のように取り付けられている。
(1)アンカーボルト7へ第1ナット16を装着し、その上下位置を概略で定め、ついで受け枠4をアンカーボルト7へ前記の底壁挿通孔14を介して挿し込み、第1ナット16に底壁9を支持させる。
(2)第1ナット16の上下位置を調整して受け枠4の上下位置を正確に定める。
【0025】
(3)前記底壁挿通孔14を貫通したアンカーボルト7に第2ナット17、第3ナット18を装着して受け枠4の底壁9を、第1ナット16(下面側)と第2ナット17(上面側)とで挟み付けて固定し、受け枠4の位置を固定する。
(4)受け枠4の底壁下面と本体2の上端開口面3との間に生じた隙間19にボルトナットカバー71を介在させ、アンカーボルト7と第1ナット16の周囲を覆う。このときボルトナットカバー71の開口75を受け枠4の中心側であるマンホール空間6に臨ませる。
【0026】
(5)受け枠4の内周側に養生材11aをあてがってマンホール空間6への開口箇所を閉鎖する。
(6)受け枠4の底壁9と本体2の上端開口面3との隙間19に無収縮モルタル(充填材20)を充填する。
(7)受け枠4の外周側領域にモルタル又はアスファルト等の補強材21(
図1)を施工し、受け枠4の取付けを完了する。
【0027】
この取付け作業において、内側空間13に位置している第2ナット17や第3ナット18の操作はマンホール空間6から操作具を前記の開口部12から内側空間13に挿し込んで行なう。また、第1ナット16の操作は受け枠4の底壁下面と本体2の上端開口面3との間の隙間19から操作具を差し込んでマンホール空間6から行なえる。
例えば、嵩上げは、受け枠4を取り付けた後の作業なので、受け枠4の底壁9と本体2の上端開口面3間に充填材20が充填された状態であるが、アンカーボルト7と第1ナット16はボルトナットカバー71により充填材20から隔離されており、ボルトナットカバー71の開口75からアンカーボルト7や第1ナット16の状態を目視しながら操作することができるので、作業を行ない易い。
【0028】
なお、ボルトナットカバー71を用いていない場合でも、ボルトナットの位置は底壁9の上面側に露出しているアンカーボルト7の位置から容易に推測することができ、その箇所のモルタルだけを取り除けば、隙間19の箇所であっても目視のもとで作業を行なえる。該当する箇所のモルタルを除くことは比較的軽い作業で行なえる。
前記開口部12や隙間19は内側空間13に位置する第1ナット16、第2ナット17に対する操作窓である。
【0029】
[作用効果]
マンホール空間6から、受け枠4を固定している第1ナット16や第2ナットの状態を目視できるので、弛みなどが発見されれば、直ちに補修することができる。
また、作業はすべて、マンホール空間6から内側空間13へ工具を挿し込むことで行なえ、受け枠4の外周コンクリートを破壊する必要がない。
【0030】
点検を目視のもとに行なえるので、ナットの弛みなどを早期に発見でき、ナットの弛みが原因で受け枠4の取付けにガタが生じ、交通による振動のためにやがて受け枠周辺の補強部分が破壊されてしまうなど事態を防止することができる。
開口部構造を完成した後、経年により嵩上げが必要となる場合においても受け枠4の上下位置調節をマンホール空間6側から開口部12(操作窓)を通した操作で行なうことができる。この場合、まず、第3ナット18、第2ナット17を外し、ついで、充填材20を除去し、第1ナット16をマンホール空間6側から操作する。
【0031】
第1ナット16を回転させて受け枠4を押し上げることができる荷重はM10のボルト1本でほぼ500kgであるから、複数の各アンカーボルト7の箇所において前記第1ナット16を徐々にかつ均等に押し上げれば、受け枠4の外周箇所にモルタルなどの補強材21が存在しても、これを大きく破壊することなく受け枠4を抜き出すように上昇させることができる。上昇の程度は1mm単位で行なえる。
したがって、受け枠4の嵩上げ工事に受け枠4を強引に引き抜くための工具や機械を必要とせず、また、騒音を少なくできる。また、破壊が少ないことからすばやい修復が可能である。
【0032】
[実施例2]
この実施例の受け枠4はマンホール1における本体2の上端開口面3にアンカーボルト7とナットを用いて固定してある(
図12)。
実施例2の受け枠4は環状であるが、内環部分22と外環部分23とからなる(
図13)。
内環部分22の断面構造は実施例1の場合と同様であるが、アンカーボルト7を内環部分22の上壁8まで到達させて取り付ける構造となっている。実施例1と同じ構造部分には同じ符号を用いて詳細な説明を省略する。
【0033】
内環部分22の上壁8には、底壁9に設けた底壁挿通孔14と対応した位置に上壁挿通孔24とナット収容部25を形成してある。ナット収容部25は上壁8と一体に鋳造され、
図4に見るように断面が底部を有する筒形であってナットを収容できる直径と深さを備える。そして、筒形の底部に上壁挿通孔24が形成されている。
【0034】
外環部分23は内環部分22の前記支持壁10から外方へ水平に張り出して、この実施例では、一体に形成された部分であり(
図12)、外環部分上壁26と外環部分底壁27及びこれらの外径側をつなぐ外壁28とで断面コ字形に形成されている。この断面コ字形の内側は外環部分内側空間29であり、外環部分23もまた箱型の枠構造となっている。なお、外環部分上壁26には多数の排気孔30が形成されている。
そして、前記実施例1の場合とは異なって、内環部分22の支持壁10に内環部分22の内側空間13と外環部分23の外環部分内側空間29を連通させる複数の連通口31を有している。
【0035】
実施例2の受け枠4は、本体2へ次のように取り付けられる。
取り付けには、
図8のように、アンカーボルト7に対して下方から前記第1〜第3(符号16〜18)のナットと第4〜第6(符号32〜34)のナットが用いられる。
第1ナット16は、第1支持ナット、
第2ナット17は、底壁上面ナット、
第3ナット18は、底壁用弛み止めナット、
第4ナット32は、第2支持ナット、
第5ナット33は、上壁上面ナット、
第6ナット34は、上壁用弛み止めナット、
といえる。
【0036】
(1)本体2のアンカーボルト7に第1ナット16をあらかじめ装着しておく。
(2)内環部分22の底壁9の底壁挿通孔14に前記アンカーボルト7を挿通して受け枠4を前記第1ナット16に仮置きする。このとき、第1ナット16の上下位置を調節して、アンカーボルト7の上端が受け枠4の内環部分22の内側空間13に位置するようにする。
この作業には、受け枠4の下面側に枕木を介するなどして、受け枠4の浮き上がった位置を維持する等の安全手段を用いる。
【0037】
(3)それぞれのアンカーボルト7の上端から第2ナット17、第3ナット18及び第4ナット32を装着する。なお、第4ナット32は受け枠4を受け止める第2支持ナットなので、アンカーボルト7のあらかじめ定めた位置に配置しておく。すなわち、受け枠4が受け止められたとき、受け枠4の上面が路面あるいは地表位置となるような、概略ではあるがあらかじめ定めた位置に配置しておく。
【0038】
(4)受け枠4を下降させ、アンカーボルト7の上端を内環部分22の上壁8のナット収容部25の底部に設けた上壁挿通孔24に挿し通し、受け枠4を前記第4ナット32に仮に支持させる。
(5)マンホール空間6側から工具を内環部分22の内側空間13に差し入れ、前記の第4ナット32を操作し、概略で定められていた受け枠4の上下位置、すなわち、上壁8を路面高さに正確に合わせる。このとき、底壁9に対して第1ナット16は下方へ、第2、第3ナット17,18は上方へ、それぞれ十分に離れた位置としておき、第5、第6ナット33,34は未装着としておく。
【0039】
(6)第4ナット32を操作して受け枠4の上下位置が定まったら、第5、第6ナット33,34を装着して、第4ナット32との間でナット収容部25の底壁を挟み付けて受け枠4の上下位置を決定する。第4ナット32はこの機能によって、受け枠4の上下位置を定める支持ナット(第2支持ナット)である。
【0040】
(7)ついで、第1ナット16を上昇させて底壁9の下面に当接させ、さらに第2ナット17、第3ナット18を下降させて底壁9の上面に当接させて、受け枠4を内環部分22の底壁9の箇所でも支持する。すなわち、第1ナット16は内環部分22の底壁9を支持する支持ナット(第1支持ナット)である。
第6ナット34は第5ナット33の上方から装着して第5ナット33の弛みを防止し、第3ナット18は第2ナット17の上方から装着して第2ナット17の弛みを防止する。
【0041】
(8)本体2に受け枠4を取り付けたら、本体2の上端開口面3と受け枠4との隙間19に無収縮モルタルやパテのような充填材20を押し込んでマンホール空間6と本体2の外部とを遮断する。このとき、実施例1のように、ボルトナットカバー71を使用することが好ましい。
そして、受け枠4のない周側開口箇所を閉鎖する養生をした後、受け枠4の外周側領域において地表から本体2の上端開口面3の深さ程度まで、モルタル又はアスファルト等の補強材21を施工し(
図1)、受け枠4の取付けを完了する。
なお、この実施例2では、外環部分23の外環部分底壁27は
図6に見るように、断面において外側が高く、内側が低い傾斜面とされている。
【0042】
実施例2において、受け枠4を上方へ高さ調整をするときは、第5ナット33、第6ナット34を取り外し、第2ナット17、第3ナット18を上方へ移動させた後、第4ナット32(第2支持ナット)を上方に移動し、さらに、第1ナット16を上方へ移動して内環部分22の底壁9の下面に当接させる。そして、前記の各ナットを締めなおせばよい。
【0043】
受け枠4を下方へ位置調整(切り下げ)する必要がある場合は、第5、第6のナット33,34を取り外し、第1ナット16を下方へ移動させた後、第4ナット33を下方へ操作する。
いずれの場合も、受け枠4は内環部分22の上壁8と内環部分22の底壁9の上下2箇所で固定されることになり、受け枠4を強固に固定することができる。
なお、この実施例では、前記ボルトナットカバー71が使用されておらず、第1ナット16を操作することが困難なときは、第2、第3のナット17,18を弛め、第4ナット(第2支持ナット)を操作するだけでも受け枠4の嵩上げを行なえる。
【0044】
また、路面舗装の改修に伴って受け枠4の位置を上昇させるときも同様に、第5、第6ナット33,34を取り外した後、マンホール空間6から、前記の各ナットを弛め、ついで、第4ナット32を操作して受け枠4の支持位置を上昇させる。
【0045】
実施例2では外環部分上壁26に多数の排気孔30が形成され、この排気孔30は支持壁10の連通口31と内環部分22の開口部12(操作窓)を介してマンホール空間6に通じているので、地下構造物の空間に生じる突発的な内圧上昇があっても、すばやく地上空間へ逃すことができる。
【0046】
なお、図示した実施例2の構造において、底壁9を有しない、したがって、
図12の断面において内環部分22が支持壁10と内周壁11及び内環部分22の上壁8とで構成される下に開放したコ字形断面部分と、支持壁10と外環部分23の外壁28及び外環部分上壁26とで構成される下に開放したコ字形断面部分とが一体に構成された構造とすることもある。
【0047】
この場合、
図12,
図14において第1ナット16、第2ナット17及び第3ナット18は不要となり、受け枠4の上下位置は第4ナット32と第5ナット33で定められることになる。すなわち第4ナット32は前記底壁9を有する場合の第1ナット16に相当し、第5ナット33は第2ナット17に相当する。そして、第4ナット32は受け枠4にアンカーボルト7が貫通する箇所(前記底壁9に相当する)の受け枠下面側においてアンカーボルト7に装着され、同様に第5ナット33は、アンカーボルト7が貫通する箇所の受け枠上面側においてアンカーボルト7に装着されている。
すなわち、第4ナット32は受け枠4を支持し、第5ナット33は受け枠4を第4ナット側へ締め付けて受け枠4の上下位置を固定してある。
【0048】
そして、第4ナット32、第5ナット33は工具を用いて受け枠4の内側であるマンホール空間6から操作可能とされている。
また、内環部分22と外環部分23を有する受け枠4(
図13)は、これらを一体構成とするばかりでなく、内環部分22と外環部分23を分離し、外環部分23に内環部分22をはめ込んで一体化(ボルト止めなど)する構造とすることがある。
【0049】
[実施例3]
図15は実施例3を示し、実施例1、2とは受け枠4の支持構造が異なっている。実施例1,2と同様の部材には同じ符号を用いて詳細な説明を省略する。
実施例3では、内環部分22の内側空間13に取付け壁35を設け、この部分でアンカーボルト7と複数のナット16〜18により受け枠4を本体2に取り付けている。
取付け壁35は、内環部分22の底壁9の上面から立ち上がる立上がり壁36とその上端からマンホール空間6の中央に向かって延びる水平壁37を備え、水平壁37に内環部分22の底壁9に設けた底壁挿通孔14と対応した取付け壁挿通孔38を備えている。
取付け壁35は内環部分22の底壁挿通孔14の位置に対応して複数個がそれぞれに独立した状態で配置されることもあれば、内環部分22の環状に沿って環状に形成されることもある。
【0050】
複数のナットは下方から第1ナット16(第2支持ナット相当)、第2ナット17(上壁上面ナット相当)及び第3ナット18(上壁用弛み止めナット相当)である。すなわち、取付け壁35の水平壁37は受け枠4の底壁9の一部、または、受け枠4のアンカーボルト7が貫通する箇所といえる。
また、この実施例では第1ナット16と水平壁37の下面および第2ナット17と水平壁37の上面との間に球面ナット39を用いている。
実施例3では、実施例2における第4ナット32〜第6ナット34を備えていない。
なお、実施例3のマンホール1では、外環部分23の外環部分底壁27は内環部分22の底壁9と連続した水平な壁とされており、外環部分内側空間29は断面が矩形となるような環状の空間である。
【0051】
実施例3の受け枠4は次のように取り付けられる。
(1)内環部分22の底壁9の底壁挿通孔14にアンカーボルト7を挿通させる。
その先端が取付け壁35の水平壁37に達しない段階で第1ナット16をアンカーボルト7にその上端から装着する。
(2)受け枠4を下降させて前記第1ナット16に支持させ、アンカーボルト7の上端が取付け壁35の上方へ突出した状態とする。
(3)第1ナット16をマンホール内側(マンホール空間6)から操作して、受け枠4の高さを調節する。
【0052】
(4)アンカーボルト7の上端から、第2ナット17、第3ナット18を、これらの間に球面ナット39を用いて装着し、前記第1ナット16との間で取付け壁35の水平壁37を締め付ける。さらに、第2ナット17を装着することにより、受け枠4を本体2に取り付ける。
(5)受け枠4が第1ナット16に支持されることにより、前記取付け壁35の水平壁下面と底壁9との間に生じる隙間19に充填材20を充填する。
(6)受け枠4の外周側領域に無収縮モルタル又はアスファルト等の補強材21(
図1)を施工し、受け枠4の取付けを完了する。
受け枠4の底壁9と本体2の上端開口面3との隙間19に実施例1で示したボルトナットカバー71を装着することが好ましい。
【0053】
実施例3の場合も実施例1、2と同様、受け枠4を本体2へ固定するための第1ナット16や第2ナット17、第3ナット18が、受け枠4の内部すなわち内環部分22の内側空間13に位置している。このため、受け枠4の取付けや上下位置の調節(嵩上げなど)をマンホール1のマンホール空間6側から開口部12を(操作窓)通して使用される工具により行なうことができる。
【0054】
また、嵩上げなどの上下位置調節の場合もマンホール空間6側からの操作で行なうことができるので、実施例1の場合と同様に受け枠4の外周箇所(モルタルなどが充填されている)を破壊することなく嵩上げをすることができる。
そして、実施例3では、アンカーボルト7が内環部分22の上壁8まで達しないので、実施例2のようにナット収容部25などを設ける必要がなく、内環部分22の上壁8を簡単な構造とすることができる。
また、外環部分23の外環部分内側空間29は内部に邪魔な突出物のない空間とできるので、排気に抵抗がなく、突発的な内圧上昇をよりすばやく逃すことができる。
【0055】
以上、実施例について説明した。
本願の発明では、受け枠4をアンカーボルト7が貫通する箇所において、その下面に接する第1ナット16で受け枠4を支持し、その上面に接する第2ナット17でその支持位置を固定する構造であって、受け枠4の内側であるマンホール空間6から受け枠4を本体2(地下構造物)へ固定できること、したがって、マンホール空間6からの操作で受け枠4を嵩上げしたり、切り下げたりできることが重要であり、具体的な構造は発明の技術的思想を変更しない範囲で種々に変形が可能である。
受け枠4の形態を実施例では円形としているが、楕円形、四角形、三角形等であってもよい。
また、受け枠の4の材質は鋳鉄の他に鋼製、合成樹脂製とすることもできる。