(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記低温液化ガス分配ユニットはそれぞれの排出口から排出される低温液化ガスの流量を個別に検出する流量検出手段を備え、検出した低温液化ガスの流量に基づき前記開閉弁若しくは前記開閉弁とは別に個別に設けられる流量調整手段により低温液化ガスの排出流量を個別に調整可能であることを特徴とする請求項1に記載の浮体式低温液化ガス充填設備。
前記低温液化ガスは液化天然ガス(LNG)であり、前記液化ガス供給設備は液化天然ガス船または浮体式液化天然ガス貯蔵再ガス化設備(FSRU)であり、前記充填手段は加圧蒸発器又はポンプであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の浮体式低温液化ガス充填設備。
前記低温液化ガス分配ユニットは前記ホースの一端に接続される低温液化ガスの流入口と、低温液化ガスを複数の前記コンテナに同時に排出する複数の排出口と、それぞれの排出口の開閉を選択的に行う開閉弁と、それぞれの排出口から排出される低温液化ガスの流量を個別に検出する流量検出手段とを備え、
前記充填段階は同時に充填する前記コンテナの数に合わせて必要な排出口の開閉弁を選択的に開口する選択段階と、
前記流量検出手段により検出された低温液化ガスの流量に基づき前記開閉弁若しくは前記開閉弁とは別に個別に設けられる流量調整手段により低温液化ガスの排出流量を個別に調整する調整段階と、を含むことを特徴とする請求項5に記載の低温液化ガス配送方法。
前記低温液化ガスは液化天然ガス(LNG)であり、前記液化ガス供給設備は液化天然ガス船または浮体式液化天然ガス貯蔵再ガス化設備(FSRU)であり、前記充填手段は加圧蒸発器又はポンプであることを特徴とする請求項5または6に記載の低温液化ガス配送方法。
【背景技術】
【0002】
自国で石油やガスを産出する国は、自国の消費量を超える産出量があれば、必要量を消費した後の余剰分の石油やガスを輸出に回すことができるが、石油やガスの産出量が消費量に満たなければ他国から輸入することになる。この場合、燃料として購入する石油やガスとしては環境負荷の少ない液化石油ガス(LPG)や液化天然ガス(LNG)などの液化ガスが望ましく、特に液化天然ガスは石油製品に比べてCO
2排出量が少なく、価格も安いことから今後の流通が期待されている。
【0003】
低温により液化した低温液化ガスは専用の大型輸送船(LNG船)で海上輸送される。輸送された低温液化ガスは、通常受け入れ側の一次基地となる貯蔵設備に移され、この貯蔵設備から二次基地となる貯蔵設備に陸上移送するか、ガス化設備でガス化した後パイプラインを使って直接需要者のもとに届けられる。
また、受け入れ側の一次基地となる貯蔵設備やガス化設備が設けられない場合、輸送された低温液化ガスは大型輸送船から浮体式液化天然ガス貯蔵再ガス化設備(FSRU)に移され、一次基地の代わりに貯蔵したり、ガス化して地上のパイプラインに供給されたりする流通方法も実用化されている。
【0004】
しかし、LNG船やFSRUが接岸できるような大型かつ十分な深度を持つ港湾設備を備えた港は限られており、低温液化ガスの受け入れ態勢が整っている地域は限定される。特に島が点在する地域や発展途上の地域ではこうした大型の専用インフラを、ガスを利用したい全ての地域に整備するのは現実的ではない。
【0005】
特許文献1には、浮体構造物上に、低温液化ガスの貯蔵設備と、貯蔵設備内の低温液化ガスを貯蔵設備外へ取り出して被供給側へ送るようにするポンプと、低温液化ガスを気化したガスとして送り出せるようにする気化器を有する供給設備とを備え、低温液化ガスを液体のまま、あるいは気化ガスとして被供給側へ供給できるようにしてある浮体式輸送設備を備えた離島への低温液化ガス配送装置が開示されている。
【0006】
特許文献1によれば、浮体式輸送設備は低温液化ガスを液体のまま、あるいは気化ガスとして供給できることから、受け入れ側の設備に必ずしもガス化設備を含む必要がなくなるなど、選択肢が増えるというメリットはあるが、特許文献1の技術では、低温液化ガスを受け入れる港湾に、こうした受け入れ設備があることが前提となっている。
【0007】
しかし小規模であるとしても、受け入れ設備の建設費用は高額であり、低温液化ガスを配送する港湾毎に容易に建設できるものではない。また燃料として低温液化ガスを必要とする地域と、低温液化ガスを配送する港湾とが離れている場合には、これに加えて長いパイプラインの建設が必要となり、実現は難しい。
そこで低温液化ガスの受け入れ地点となる港に受け入れ設備がない場合でも、低温液化ガスを容易に、かつ効率的に配送する設備や方法の実現が望まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記従来の浮体式低温液化ガス充填設備及びこれを用いた低温液化ガス配送方法における問題点に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、地上の複数の輸送トラック上に配置されたコンテナに直接にまた同時に低温液化ガスを充填することを可能とし、低温液化ガスの受け入れ設備の無い場所にでも、容易にまた効率的に低温液化ガスを配送することを可能とする浮体式低温液化ガス充填設備及びこれを用いた低温液化ガス配送方法を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するためになされた本発明による浮体式低温液化ガス充填設備は、海上から陸上に低温液化ガスを配送する浮体式低温液化ガス充填設備であって、低温液化ガスを一時的に充填して貯蔵するバージタンクと、液化ガス供給設備から前記バージタンクに低温液化ガスを移送し、前記バージタンクから地上の輸送トラック上に配置されたコンテナに低温液化ガスを移送するためのホースと、前記ホースの一端に着脱可能に取り付けられる低温液化ガス分配ユニットと、低温液化ガス移送中に前記ホースを所定の高さに保持するクレーンと、低温液化ガスを前記コンテナに充填する充填手段と、を有し、前記低温液化ガス分配ユニットは前記ホースの一端に接続される低温液化ガスの流入口と、低温液化ガスを複数の前記コンテナに同時に排出する複数の排出口と、それぞれの排出口の開閉を選択的に行う開閉弁と、一端が前記排出口に接続され、他端が前記コンテナの注入口に接続される複数の注入ホースと
、前記クレーンによって吊り上げるためのフックと、を備え、
前記低温液化ガス分配ユニットは同時に複数のコンテナに充填する場合に前記充填手段に接続された前記ホースの一端に取り付けられ、前記クレーンによって所定の高さに吊り上げられて使用され、前記低温液化ガス分配ユニットはロート状又は円盤状の形状であり、前記複数の排出口は流出特性が均等となるよう等間隔に配置され、前記開閉弁の弁開度は、それぞれの排出口からの低温液化ガスの排出流量が等しくなるように調整され、前記注入ホースはコンテナへの接続側の端部にコンテナとの接続を検出するセンサ又はコンテナとの接続が行われると作動するスイッチを備え、前記注入ホースが接続される排出口の開閉弁は、前記注入ホースのコンテナへの接続が行われないと開動作が行われないように構成されることを特徴とする。
【0011】
前記低温液化ガス分配ユニットはそれぞれの排出口から排出される低温液化ガスの流量を個別に検出する流量検出手段を備え、検出した低温液化ガスの流量に基づき前記開閉弁若しくは前記開閉弁とは別に個別に設けられる流量調整手段により低温液化ガスの排出流量を個別に調整可能であることが好ましい。
【0012】
低温液化ガスは前記充填手段により前記バージタンクから前記ホース、前記低温液化ガス分配ユニットを介して一又は複数の前記コンテナに直接移送されることが好ましい。
【0013】
前記低温液化ガスは液化天然ガス(LNG)であり、前記液化ガス供給設備は液化天然ガス船または浮体式液化天然ガス貯蔵再ガス化設備(FSRU)であり、前記充填手段は加圧蒸発器又はポンプであることが好ましい。
【0014】
上記目的を達成するためになされた本発明による低温液化ガス配送方法は上記浮体式低温液化ガス充填設備を使用した低温液化ガス配送方法であって、液化ガス供給設備に浮体式低温液化ガス充填設備を係留した後、液化ガス供給設備から浮体式低温液化ガス充填設備のバージタンクにホースを介して低温液化ガスを移送する受け入れ段階と、浮体式低温液化ガス充填設備を低温液化ガスの引き渡し場所まで移動させる輸送段階と、充填手段により前記バージタンクから前記ホースを介して地上の輸送トラック上に配置されたコンテナに直接低温液化ガスを充填する充填段階と、を有し、同時に複数のコンテナに低温液化ガスを充填する場合、前記充填段階の前に前記ホースの排出側の一端に複数の排出口を備える低温液化ガス分配ユニットを接続する接続段階をさらに有することを特徴とする。
【0015】
前記低温液化ガス分配ユニットは前記ホースの一端に接続される低温液化ガスの流入口と、低温液化ガスを複数の前記コンテナに同時に排出する複数の排出口と、それぞれの排出口の開閉を選択的に行う開閉弁と、それぞれの排出口から排出される低温液化ガスの流量を個別に検出する流量検出手段とを備え、前記充填段階は同時に充填する前記コンテナの数に合わせて必要な排出口の開閉弁を選択的に開口する選択段階と、前記流量検出手段により検出された低温液化ガスの流量に基づき前記開閉弁若しくは前記開閉弁とは別に個別に設けられる流量調整手段により低温液化ガスの排出流量を個別に調整する調整段階と、を含むことが好ましい。
【0016】
前記低温液化ガスは液化天然ガス(LNG)であり、前記液化ガス供給設備は液化天然ガス船または浮体式液化天然ガス貯蔵再ガス化設備(FSRU)であり、前記充填手段は加圧蒸発器又はポンプであることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明による浮体式低温液化ガス充填設備及びこれを用いた低温液化ガス配送方法によれば、浮体式低温液化ガス充填設備から直接に輸送トラック上に配置されたコンテナに充填されるため、低温液化ガスを受け入れる港には輸送トラックを停車するエリアさえあれば低温液化ガスの移送ができるため、高額な受け入れ設備を建設する必要がなく、こうした設備を持たない多くの地域にも容易に低温液化ガスの配送が可能である。
【0018】
また、本発明による本浮体式低温液化ガス充填設備及びこれを用いた低温液化ガス配送方法によれば、低温液化ガスは、低温液化ガス分配ユニットにより浮体式低温液化ガス充填設備から複数本の注入ホースに選択的に分流されるために、受け入れ側の輸送トラックの台数に合わせて分流し、同時充填が可能となる。これにより効率的に低温液化ガスの充填作業を行うことが可能となる。複数台のコンテナに同時充填する際、低温液化ガス分配ユニットのそれぞれの排出口から排出される低温液化ガスの流量を個別に検出する流量検出手段と流量調節手段を備えることにより、充填時間のばらつきを抑え、最も効率よく充填作業を行うことが可能となる。
【0019】
さらに、本発明による浮体式低温液化ガス充填設備は、受け入れと払い出しに使用するホースとこれを支持するクレーンを備えるため、液化天然ガス船または浮体式液化天然ガス貯蔵再ガス化設備などの液化ガス供給設備側には、液化天然ガス移送のためのホースやクレーンを装備する必要がない。同様に受け入れ側にもホースやクレーンを装備する必要がない。従い、港にトラックが停車する余地さえあれば、1つの浮体式低温液化ガス充填設備により、複数地点でのトラック上コンテナへ低温液化ガス充填も可能となる。また、例えば陸上にトラック充填設備を備えた一次基地が建設される等により、当該地でのコンテナへの低温液化ガス充填が将来不要となった場合でも、別の地域や島へ曳航或いは自走し、そうした一次基地の無い場所でも、低温液化ガスの配給事業を実施することが出来る。
【0020】
低温液化ガスが充填されたコンテナはトラック、鉄道、貨物船等で運搬可能である為、パイプラインや専用設備、1次基地・2次基地などを必要とせずに、直接広範囲に点在するより小規模な需要家に届けることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明に係る浮体式低温液化ガス充填設備及びこれを用いた低温液化ガス配送方法を実施するための形態の具体例を、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態による浮体式低温液化ガス充填設備と、これを用いた低温液化ガス配送方法を概略的に示す図である。
図1を参照すると、本発明の実施形態による浮体式低温液化ガス充填設備10は、海上に浮かぶ浮体本体11と、浮体本体11上に備えられたバージタンク12、ホース13、クレーン14、充填手段15、及び低温液化ガス分配ユニット20を有する。
【0023】
本発明の実施形態による浮体式低温液化ガス充填設備10は、液化ガス供給設備から低温液化ガスをバージタンク12に移送して一時的に貯蔵した後、配送先の港に移動し、充填手段15により、バージタンク12から、地上に待機する輸送トラック上に配置されたコンテナに、直接低温液化ガスを移送することで、受け入れ設備の無い配送先でも容易に低温液化ガスを配送することを可能とする設備である。
また実施形態による浮体式低温液化ガス充填設備10によれば、移送先のコンテナが複数ある場合でも、低温液化ガス分配ユニット20を使用して、同時に複数のコンテナに低温液化ガスを充填するため、短時間で効率的に低温液化ガスを配送することが可能である。
【0024】
図1(a)は、液化ガス供給設備から地上のコンテナまで低温液化ガスを配送する一連の配送フローの内で、海上にて液化ガス供給設備1から、浮体式低温液化ガス充填設備10のバージタンク12に、低温液化ガスを移送する段階を示し、
図1(b)は、低温液化ガスを一時貯蔵する浮体式低温液化ガス充填設備10を、配送先まで移動する段階を示し、
図1(c)は、バージタンク12に貯蔵した低温液化ガスを、地上に待機する輸送トラック上に配置されたコンテナに充填する段階を示す。
【0025】
図1(a)を参照すると、浮体式低温液化ガス充填設備10は、海上に待機する液化ガス供給設備1に横付けして係留され、液化ガス供給設備1の低温液化ガス貯蔵タンクと、浮体式低温液化ガス充填設備10のバージタンク12とが、ホース13により接続される。
実施形態では、低温液化ガスは液化天然ガス(LNG)であり、液化ガス供給設備1は液化天然ガス船または浮体式液化天然ガス貯蔵再ガス化設備(FSRU)である。海上では波があるため、浮体式低温液化ガス充填設備10が液化ガス供給設備1に横付けして係留する際、直接衝突しないように、ゴムなどの緩衝部を備える緩衝体18を挟んで横付けする。浮体式低温液化ガス充填設備10の側面に緩衝部を備える場合は、別の緩衝要素としての緩衝体18を用意しなくてもよい。
図1(a)に示す緩衝体18はエアーフェンダーであり、円筒状の本体周辺に複数のタイヤ状のゴムを備えた形状に示すが、係留の際に直接衝突しないようにするものであれば、形状や材質はどのようなものでも構わない。
【0026】
実施形態では、液化ガス供給設備1は海中から突き出している係留策や海中桟橋、港湾桟橋等の係留手段に係留された状態で待機し、浮体式低温液化ガス充填設備10が液化ガス供給設備1と1箇所または複数箇所の配送先との間を行き来して低温液化ガスを配送する。そのため緩衝体18は常設設備として浮体式低温液化ガス充填設備10を係留する場所に設置する。こうすることで、液化ガス供給設備1への浮体式低温液化ガス充填設備10の係留を速やかに行うことができる。液化ガス供給設備1への浮体式低温液化ガス充填設備10の係留は、係船策19を使って液化ガス供給設備1と浮体式低温液化ガス充填設備10とが位置ずれしないように着実に行う。
【0027】
液化天然ガスは常圧で液相を保つには−162℃以下にする必要があり、ホース13はフレキシブルホースを使用する。液化ガス供給設備1は非常に大型で、貯蔵タンクから低温液化ガスを排出する排出口は海面から高い位置にあり、バージタンク12の高さとの高低差が大きいため、ホース13の接続には浮体式低温液化ガス充填設備10に備えるクレーン14を使用する。このように浮体式低温液化ガス充填設備10側にクレーン14を備えることにより、液化ガス供給設備1には移送ホースを接続するための特別なクレーン14を設置する必要がなく、様々な液化ガス供給設備1からの受け入れが可能となる。クレーン14は、ホース13又はホース13先端に接続する低温液化ガス分配ユニット20を吊り下げるためのものであるので、吊り下げる重量は限られており、重量物を吊り下げる大型のものは必要ないが、ホース13を高く持ち上げる必要があることから、高所に届く高背のものが望ましく、伸縮式のクレーンでもよい。
【0028】
ホース13が海面に接触すると海水からの入熱により液化天然ガスの温度を上げてしまう恐れがあるため、クレーン14はホース13が海面に垂れ下がらないように所定の高さに吊り下げて保持する。
さらに実施形態では、浮体式低温液化ガス充填設備10はホース13を垂れ下がりにくくするように、所定の高さでホース13を下から支持するホース支持体16を備える。
【0029】
バージタンク12は、主に受け入れ設備の無い小さな港などへの低温液化ガスの配送を行うために、容量としては必要以上に大きくしないことが望ましい。実施形態では例えば輸送トラック上のコンテナ4台分相当として直径3m、長さ20m程度の大きさを有する。しかし大きさはこれに限らず、低温液化ガスの配送を必要とする地域の地形や設備状況、受け入れる輸送トラックの台数や交通事情などを考慮して決定すればよく、上記より大きくても小さくても構わない。
【0030】
図1(b)を参照すると、低温液化ガスを貯蔵した浮体式低温液化ガス充填設備10は、受け入れ先の港に向けて海上移動する。
図1(b)では浮体本体11はバージ船であり、自身がエンジン等の航行のための動力を備えていないため、タグボート30に牽引ロープ31を介して連結され曳航されるように示すが、浮体本体11にエンジンを搭載して自力で航行するようにしてもよい。
【0031】
図1(c)を参照すると、浮体式低温液化ガス充填設備10は輸送先の港に接岸すると、バージタンク12と地上に待機する輸送トラック40の上に配置されたコンテナ41とがホース13で接続され、充填手段15によりバージタンク12内の低温液化ガスがコンテナ41内に充填される。
【0032】
充填手段15は加圧蒸発器又はポンプであり、加圧蒸発器の場合は、バージタンク12内の低温液化ガスの一部を気化させてからバージタンク12内に戻し、バージタンク12内の圧力を上昇させることにより低温液化ガスを送り出す。ポンプの場合は直接低温液化ガスを増圧するので、バージタンク12からコンテナ41への流路の間に入れる必要があり、ホース13はポンプとコンテナ41との間を繋ぐように接続される。
低温液化ガスを送出できれば、充填手段15は加圧蒸発器でもポンプでも構わないが、海上では波で揺れることもあり、安定して低温液化ガスを加圧できる加圧蒸発器の方が好ましい。
【0033】
受け入れ側のコンテナ41が1台のみの場合、ホース13はコンテナ41側の端部をそのままコンテナ41の注入口に直結するが、受け入れ側のコンテナ41が複数の場合、ホース13の端部には低温液化ガス分配ユニット20が接続される。低温液化ガス分配ユニット20は、上流側となるホース13につながる低温液化ガスの流入口は1つであるが、複数の排出口から排出されるように低温液化ガス分配ユニット20内で低温液化ガスの流路は複数に分岐する。
【0034】
また低温液化ガス分配ユニット20には、それぞれの排出口の出口の開閉を選択的に行う開閉弁を備え、開閉弁の先にはそれぞれの排出口と各コンテナ41とを接続する注入ホース22が接続される。そこで複数の排出口の内、同時充填を行うコンテナ41に接続された排出口の開閉弁を選択して開状態にすることにより、複数台のコンテナ41への充填を同時に行うことが可能となる。
【0035】
一般的な大きさの低温液化ガス用のコンテナ41への低温液化ガスの充填は1台当たり1時間前後を要する。例えば4台のコンテナ41に低温液化ガスを充填する場合、従来技術では一度に1台しか充填できないため4時間以上を要する。しかし低温液化ガス分配ユニット20を使用することによって、4台のコンテナ41でも同時充填で略1時間で充填を終了することが可能となる。
【0036】
バージタンク12からコンテナ41への低温液化ガスの充填の際も、両者を接続するホース13はクレーン14により吊り下げられ、所定の高さに保持される。低温液化ガス分配ユニット20を接続する場合は、
図1(c)に示すように低温液化ガス分配ユニット20をクレーン14で吊り下げることで、地上に注入ホース22が這回されることがなくなり、通行の邪魔にならないので作業性の低下を防ぐことができる。
【0037】
実施形態では、浮体式低温液化ガス充填設備10はホース13を垂れ下がりにくくするように、所定の高さでホース13を下から支持するホース支持体17を備える。
図1(c)では浮体本体11の一方の縁にホース支持体16、ホース支持体16と反対側の縁にホース支持体17を有するように記載しているが、ホース13の接続方向をいずれか一方に固定する場合、ホース支持体(16、17)はいずれか一つに統一してもよく、この場合、統一したホース支持体はホース13を支持する支持高さが可変となるように構成するのが好ましい。
【0038】
図2は、本発明の実施形態による浮体式低温液化ガス充填設備による地上のコンテナに低温液化ガスを移送する方法を平面的に示す概略的図である。
図2は、地上に停車中の4台の輸送トラック40に同時に低温液化ガスを充填する状態を示す。輸送トラック40は台車となるトレーラの上にコンテナ41を設置し、これを牽引車42で牽引するトレーラ式のものを例示している。
【0039】
低温液化ガス分配ユニット20は、低温液化ガス分配器21と注入ホース22とを含む。低温液化ガス分配器21はホース13に接続される低温液化ガスの流入口は1つであるのに対し、排出口は4つであり、これにより略ホームベース型の筐体を有する。
低温液化ガス分配器21はクレーン14により4台の輸送トラック40の後方で所定の高さに吊るされ、4つの排出口に接続された4本の注入ホース22がそれぞれのコンテナ41に連結される。
【0040】
実施形態において、例えば合計7台分のコンテナ41に低温液化ガスを充填する場合、1回目は
図2に示すように4台のコンテナ41を接続し、同時充填を行う。2回目の充填では3台のコンテナ41を接続するが、
図3を参照して後述するように、低温液化ガス分配ユニット20は排出口毎に開閉弁を備えるため、コンテナ41を接続しない残りの1つの排出口の開閉弁のみを閉じておくことで、選択的に3台のコンテナ41への同時充填が可能である。
【0041】
コンテナ41に低温液化ガスを充填した輸送トラック40は、そのまま次の目的地まで直接陸送することもできるし、最寄りの駅でコンテナ41を貨車に移し替えて鉄道輸送にて輸送することや、最寄りの貨物港でコンテナ貨物船により海上輸送することもでき、受け入れ地の交通状況に合わせて様々な輸送形態を展開することが可能である。
【0042】
図3は、本発明の実施形態による低温液化ガス分配ユニットの構造を概略的に示す図である。
低温液化ガス分配ユニット20は、ホース13の一端に着脱可能に取り付けられるものであるため、低温液化ガス分配器21の低温液化ガスの流入口にはホース13との接続用の端部を備える。
図3ではホース13の端部に備えるフランジに合わせ、流入口にもボルトナットで固定できるようにフランジを備える構成を示すが、着脱可能であればこの構成に限ることはなく、例えば、ねじによる接続の場合は、ホース13端部が備える雌ねじに合わせた雄ねじを備えるというように、ホース13の端部形状に合わせた接続用の端部を備える。
【0043】
また低温液化ガス分配器21は複数に分岐する流路を備えた流路構造を有する。
図3に示す低温液化ガス分配器21は分岐数が4の場合であり、4つの排出口を有する。4つの排出口にはそれぞれ開閉弁23を備えており、どの開閉弁23を開くかにより低温液化ガスを排出する排出口を選択することができる。
【0044】
開閉弁23は手動でも電動でもよいが、電動の場合は浮体式低温液化ガス充填設備10が備える蓄電池等の給電手段から、ホース13に沿わせて配線する給電線を介して開閉弁23に電源を供給する。また電動の場合は無線又は有線で開閉弁23の開閉制御を行うように構成する。
【0045】
一実施形態では、それぞれの開閉弁23の近傍又はそれぞれの開閉弁23との対応が分かる位置に、開閉弁23の開閉状態が目視で確認できるよう表示ランプを設ける。ランプの点灯か消灯かの区別により、或は表示するランプの色を変えることにより開状態か閉状態かを表示する。これによりコンテナ41に接続しない排出口の開閉弁23が誤って開いていても、容易に確認ができ、充填開始前に閉状態に修正することができる。
【0046】
それぞれの開閉弁23の下流側にはさらに流量検出手段24を備える。流路の形状や開閉弁23の選択の仕方によって、それぞれの排出口からの低温液化ガスの排出流量が異なることが生じ得る。流出量が異なると同時充填してもコンテナ41間で充填時間が異なるため作業効率の低下につながりかねない。そこで一実施形態では、流量検出手段24によりそれぞれの排出口からの低温液化ガスの排出流量を検出し、その結果に基づきそれぞれの排出口からの低温液化ガスの排出流量が等しくなるように個別に開閉弁23の弁開度を調整する。
低温液化ガスの排出流量の調整は、開閉弁23とは異なる流量調整手段を設けてもよく、その場合は流量検出手段24により検出した排出流量に基づき流量調整手段により低温液化ガスの排出流量を調整する。
【0047】
注入ホース22はホース13と同様、フレキシブルホースである。注入ホース22はホース13のように頻繁に着脱を行う必要はないが、劣化した時の交換などもあるので、端部をボルトナットで固定できるようフランジ形状にするなどして低温液化ガス分配器21に着脱可能に取り付ける。
【0048】
低温液化ガス分配器21の上面にはフック25を備え、低温液化ガスの充填を行う際、
図1(c)や
図2のようにクレーン14によりフック25を吊り上げ、作業性の良い高さに保持することで充填作業を行い易い配置とすることができる。また、充填完了後にホース13を離脱する際、ホース内にLNGが残留しないよう、高低差を調整して完全にLNGがバージタンク12に移送されるようにする機能も有する。
【0049】
図3では4つの排出口を有する低温液化ガス分配ユニット20を例示したが、排出口の数は4つに限らない。4つより多くてもよいし少なくてもよい。また
図3では排出口を横1列に配置した構造を例示したが、実施形態により複数の排出口を流出特性が均等となるように同心円状に等間隔に配置してもよい。このとき排出口の方向を流入口から斜め方向に設置する場合は、低温液化ガス分配器21はロート状の形状とし、排出口の方向を流入口から放射方向に配置する場合は、低温液化ガス分配器21は円盤状の形状とする。
【0050】
図4は、本発明の実施形態による低温液化ガス配送方法を説明するためのフローチャートである。
図4を参照すると、浮体式低温液化ガス充填設備10への低温液化ガスの受け入れ段階として、液化ガス供給設備1から浮体式低温液化ガス充填設備10のバージタンク12にホース13を介して低温液化ガスを移送する(段階S400〜段階S420)。
【0051】
まず段階S400にて、液化ガス供給設備1に緩衝体18を挟んで浮体式低温液化ガス充填設備10を係留する。実施形態では緩衝体18は液化ガス供給設備1に浮体式低温液化ガス充填設備10の係留位置に合わせて常設する。このため浮体式低温液化ガス充填設備10への低温液化ガスの受け入れ毎に緩衝体18を準備する必要がない。浮体式低温液化ガス充填設備10の係留は液化ガス供給設備1との間を係船策19で前後複数箇所を繋ぐことで着実に行うことができる。
【0052】
次いで段階S405にて、液化ガス供給設備1と浮体式低温液化ガス充填設備10のホース13を接続する。このとき浮体式低温液化ガス充填設備10の備えるクレーン14を使ってホース13を持ち上げて接続するとともに低温液化ガス移送中もホース13を所定の高さに保持することにより、低温液化ガス払い出し用のクレーン14やホース13を持たない大型の船舶からでも直接に低温液化ガスを受け入れることが可能となる。
【0053】
段階S410にて液化ガス供給設備1から浮体式低温液化ガス充填設備10のバージタンク12へ低温液化ガスの移送を開始する。段階S415にて必要量の低温液化ガスの移送を行い低温液化ガスの移送を完了すると、段階S420にて液化ガス供給設備1から浮体式低温液化ガス充填設備10のホース13を切り離す。切り離したホース13はクレーン14を使って浮体式低温液化ガス充填設備10に回収し、最後に係船策19を外して低温液化ガスの受け入れ段階を終了する。
【0054】
次に輸送段階として浮体式低温液化ガス充填設備10を低温液化ガスの引き渡し場所である港まで移動させる(段階S425、段階S430)。
段階S425で浮体式低温液化ガス充填設備10を配送先である港湾内の輸送トラック40の待機位置に向かって移動する。実施形態では浮体式低温液化ガス充填設備10は、自力航行のための動力手段を持たず、タグボート30により曳航されて移動する。そのため牽引ロープ31を掛ける牽引ロープフックを前後に備える。これにより複数の浮体式低温液化ガス充填設備10を牽引ロープ31で縦1列に繋ぎ、先頭をタグボート30で牽引することで、一度に纏めて複数の浮体式低温液化ガス充填設備10を移動させることが可能となる。
【0055】
また他の実施形態では、浮体式低温液化ガス充填設備10は、自力航行のための動力手段を備え、配送先にはタグボート30を使用することなく自力で移動する。
タグボート30により曳航されて移動する場合も、自力で移送する場合も配送先の港に到着すると浮体式低温液化ガス充填設備10は港湾内の輸送トラック40の待機位置に接岸する(段階S430)。
【0056】
この後充填手段15によりバージタンク12からホース13を介して地上の輸送トラック40上に配置されたコンテナ41に直接低温液化ガスを充填する充填段階(段階S435〜段階S470)に移行する。
始めに段階S435にて複数のコンテナ41に同時に充填するか否かを判断し、同時に充填するコンテナ41が複数の場合、段階S440にてホース13の一端に低温液化ガス分配ユニット20を接続する。
【0057】
次いで段階S445にて、低温液化ガスを同時充填するコンテナ41の数に合わせ、低温液化ガス分配ユニット20の複数の注入ホース22の内、必要数を港湾内トラック上のコンテナ41に接続する。低温液化ガス分配ユニット20は複数の排出口を有するが、排出口毎に開閉弁23で開閉を切り替えられるので、同時充填するコンテナ41の数が、低温液化ガス分配ユニット20の排出口の数より少なくても、使用しない排出口の開閉弁23を閉じておくことができ、接続したコンテナ41の数だけの同時充填が可能となる。
段階S455にて、充填を行うコンテナ41に合わせ、低温液化ガス分配ユニット20の開閉弁23を開口する。
【0058】
一実施形態では注入ホース22のコンテナ41への接続側の端部に、コンテナ41との接続を検出するセンサ又はコンテナ41との接続が行われると作動する押し込みスイッチなどのスイッチを設け、コンテナ41への接続が行われないと当該注入ホース22が接続される排出口の開閉弁23の開動作が行われないように構成する。これによりコンテナ41に接続していない注入ホース22に誤って低温液化ガスを排出するのを防止することが可能である。
【0059】
以上の充填の準備が終了すると、段階S460にて浮体式低温液化ガス充填設備10の充填手段15を作動させ、コンテナ41に低温液化ガスを充填する。
輸送トラック40の駐車スペースが狭く同時充填可能なコンテナ41の数が限られる場合や、低温液化ガスの需要量が多く、低温液化ガス分配ユニット20による1回の同時充填でもまだ需要量に満たない場合など、複数回の充填が必要な場合は1回目の充填が終了した時点で一度開閉弁23を閉じ、輸送トラック40を入れ替えて新たなコンテナ41に接続した後、段階S435〜段階S460の充填作業を繰り返す。
【0060】
さらに、流量検出手段24を使用して低温液化ガスの低温液化ガスの排出流量を調整する場合は、段階S460で低温液化ガスの充填を開始した段階で、流量検出手段24によりそれぞれの排出口を流れる低温液化ガスの排出流量を検出し、その結果に基づき開閉弁23若しくは開閉弁23とは別に個別に設けられる流量調整手段により低温液化ガスの排出流量を個別に調整する。これは浮体式低温液化ガス充填設備10に開閉弁23または流量調整手段を遠隔に制御する制御装置を設け、流量検出手段24からの出力を有線又は無線で制御装置に入力し、制御装置からそれぞれの開閉弁23または流量調整手段に入力値に基づく制御信号を有線又は無線で出力することで実現される。
【0061】
段階S435に戻って充填するコンテナ41が単数の場合、低温液化ガスの分配は必要なくなるため、段階S450にてホース13には低温液化ガス分配ユニット20を接続せずに直接コンテナ41に接続した後、段階S460に移行して浮体式低温液化ガス充填設備10の充填手段15を作動させ、コンテナ41に低温液化ガスを充填する。
【0062】
一度バージタンク12に充填した低温液化ガスを、複数の目的地に連続して配送する場合などに、先の配送地でホース13の先端に低温液化ガス分配ユニット20を接続して充填を行うと、次の配送地では予めホース13の先端に低温液化ガス分配ユニット20が接続された状態から作業が始まることが起こり得る。このような状況で単体のコンテナ41に充填する場合は、低温液化ガス分配ユニット20を外してホース13を直接コンテナ41に接続してもよいし、低温液化ガス分配ユニット20を接続したままで1本の注入ホース22を選択的に接続し、接続した注入ホース22につながる開閉弁23を開いて低温液化ガスの充填を行ってもよい。
【0063】
また、低温液化ガスの配送の状況により、複数のコンテナ41に同時充填して配送することが多い場合、ホース13は、液化ガス供給設備1からの低温液化ガスの受け入れとコンテナ41への充填とで共用とせず、受け入れ専用のホース13−1と、低温液化ガス分配ユニット20を接続したままの充填専用のホース13−2との別構成としてもよい。この場合、
図4の段階S435、段階S440、段階S450の作業は不要となる。
【0064】
段階S465で充填が必要なコンテナ41への低温液化ガスの充填が終了すると、段階S470でコンテナ41に接続するホース13又は注入ホース22の接続を解除して、浮体式低温液化ガス充填設備10に収納する。その後は次の配送先に向かって充填を続けるか、次の配送に備えて液化ガス供給設備1に戻り、上述した低温液化ガスの受け入れ段階からの作業を繰り返す。
【0065】
尚、空のコンテナ41に低温液化ガスを充填すると、通常コンテナ41内の温度が低温液化ガスの温度まで冷えていないため、コンテナ41内部のメタンガスなどの残留ガスに加え、低温液化ガスの一部がガス化し、充填の初期段階で一時的にコンテナ41内の圧力が上昇する。低温液化ガスの充填が進み、コンテナ41内部の温度が低下してくると、それに伴いコンテナ41内の圧力も低下してくる。
【0066】
低温液化ガスの充填に伴い、コンテナ41内のガスを供給側であるバージタンク12に戻すことでコンテナ41内の圧力上昇の影響を抑える充填方法も取り得るが、この方法ではガス化しやすい成分を回収するために、最終的に充填した低温液化ガスの成分構成が変わってしまうことが起こり得る。
【0067】
一方、コンテナ41内のガスを冷却し、低温液化ガスに溶かし込めればコンテナ41内の圧力上昇を抑制することも可能となる。この方法によればガス成分をバージタンク12に回収することが無いので、充填する低温液化ガスの成分構成が変化することもない。また、ガス専用の戻りホースを設備する必要がなくなる。
【0068】
以上、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲から逸脱しない範囲内で多様に変更することが可能である。
【課題】地上の複数の輸送トラック上に配置されたコンテナに直接にまた同時に低温液化ガスを充填し、低温液化ガスの受け入れ設備の無い場所にでも、低温液化ガスを配送することを可能とする浮体式低温液化ガス充填設備及びこれを用いた低温液化ガス配送方法を提供する。
【解決手段】本発明による浮体式低温液化ガス充填設備10は、海上から陸上に低温液化ガスを配送する浮体式低温液化ガス充填設備であって、バージタンク12と、バージタンクから地上の輸送トラック40上のコンテナ41に低温液化ガスを移送するためのホース13と、ホースの一端に着脱可能に取り付けられる低温液化ガス分配ユニット20と、低温液化ガス移送中にホースを所定の高さに保持するクレーン14と、低温液化ガスをコンテナに充填する充填手段15と、を有し、分配ユニットは低温液化ガスの流入口と、複数の排出口と、それぞれの排出口の開閉を選択的に行う開閉弁とを備える。