【実施例】
【0024】
次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく説明する。
(なお、以下に記載の「実施例4〜6」はいずれも「参考例」である。)
【0025】
<実施例1>
先ず白色酸化チタン粉末(TiO
2)をアンモニアガス(還元ガス)により還元して黒色酸窒化チタンの粉末母体を得た。ここで、還元反応時間(白色酸化チタン粉末のアンモニアガスへの接触時間)を120分とした。この黒色酸窒化チタンの粉末母体は、化学式:TiN
XO
Y(但し、X=0.3,Y=0.9)で表される。この粉末母体0.1モルに対しアルコールとしてエタノールを12モル添加し、粉末母体をエタノールに分散させて、ビーズミルにより湿式粉砕することにより、平均一次粒径150nmの粉末母体の分散液を得た。次いでこの粉末母体の分散液に、濃度調整のためのエタノールを6モル添加した後、シリカ膜を形成するためのシリカ源としてオルトけい酸テトラメチルを1×10
-2モル添加した。次にこのオルトけい酸テトラメチルが添加された粉末母体の分散液にアルカリ源(反応開始剤)として水酸化ナトリウムを1×10
-3モル添加して分散液での反応を開始した。更にこの分散液を洗浄し乾燥した後に焼成することにより、黒色酸窒化チタンの粉末母体が厚さ2.56nmのシリカ膜により被覆された体積抵抗率7.50×10
5Ω・cmの黒色酸窒化チタン粉末を得た。但し、上記分散液の洗浄は、この分散液から不純物を除去するために、分散液を遠心分離器にかけた後に、分散液をイオン交換樹脂製のフィルタに通すことにより行った。また上記焼成は、窒素ガス雰囲気中で350℃に5時間保持する処理であった。この黒色酸窒化チタン粉末を実施例1とした。なお、シリカ膜の厚さは、透過型電子顕微鏡(TEM)により撮影した画像から測定した。また、黒色酸窒化チタン粉末の体積抵抗率は、黒色酸窒化チタン粉末を5MPaの圧力で固めた圧粉体の状態で、三菱化学社製の低抵抗率計ロレスタ-GP(型式:UV3101PC)を用いて、四端子四探針法により測定した。
【0026】
<実施例2>
オルトけい酸テトラメチルを2×10
-2モル添加し、アルカリ源(反応開始剤)として水酸化ナトリウムを1×10
-3モル添加したこと以外は、実施例1と同様にして、黒色酸窒化チタンの粉末母体が厚さ3.50nmのシリカ膜により被覆された体積抵抗率9.00×10
6Ω・cmの黒色酸窒化チタン粉末を得た。この黒色酸窒化チタン粉末を実施例2とした。
【0027】
<実施例3>
オルトけい酸テトラメチルを3×10
-2モル添加し、アルカリ源(反応開始剤)として水酸化カリウムを1×10
-3モル添加したこと以外は、実施例1と同様にして、黒色酸窒化チタンの粉末母体が厚さ5.90nmのシリカ膜により被覆された体積抵抗率1.00×10
7Ω・cm以上の黒色酸窒化チタン粉末を得た。この黒色酸窒化チタン粉末を実施例3とした。
【0028】
<実施例4>
オルトけい酸テトラメチルを4×10
-2モル添加し、アルカリ源(反応開始剤)として水酸化カリウムを1×10
-3モル添加したこと以外は、実施例1と同様にして、黒色酸窒化チタンの粉末母体が厚さ7.20nmのシリカ膜により被覆された体積抵抗率1.00×10
7Ω・cm以上の黒色酸窒化チタン粉末を得た。この黒色酸窒化チタン粉末を実施例4とした。
【0029】
<実施例5>
オルトけい酸テトラメチルを5×10
-2モル添加し、アルカリ源(反応開始剤)としてアンモニア水を8×10
-3モル添加したこと以外は、実施例1と同様にして、黒色酸窒化チタンの粉末母体が厚さ10.25nmのシリカ膜により被覆された体積抵抗率1.00×10
7Ω・cm以上の黒色酸窒化チタン粉末を得た。この黒色酸窒化チタン粉末を実施例5とした。
【0030】
<実施例6>
オルトけい酸テトラメチルを10×10
-2モル添加し、アルカリ源(反応開始剤)としてアンモニア水を5×10
-3モル添加したこと以外は、実施例1と同様にして、黒色酸窒化チタンの粉末母体が厚さ12.00nmのシリカ膜により被覆された体積抵抗率1×10
7Ω・cmの黒色酸窒化チタン粉末を得た。この黒色酸窒化チタン粉末を実施例6とした。
【0031】
<実施例7>
オルトけい酸テトラエチルを1.0×10
-2モル添加し、アルカリ源(反応開始剤)としてアンモニア水を5×10
-3モル添加したこと以外は、実施例1と同様にして、黒色酸窒化チタンの粉末母体が厚さ2.50nmのシリカ膜により被覆された体積抵抗率1.00×10
5Ω・cmの黒色酸窒化チタン粉末を得た。この黒色酸窒化チタン粉末を実施例7とした。
【0032】
<比較例1>
オルトけい酸テトラメチルを添加しなかった、即ち粉末母体の表面にシリカ膜を形成しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、体積抵抗率5.50×10
0Ω・cmの黒色酸窒化チタン粉末を得た。この黒色酸窒化チタン粉末を比較例1とした。
【0033】
<比較例2>
オルトけい酸テトラメチルを0.5×10
-2モル添加し、アルカリ源(反応開始剤)として水酸化ナトリウムを1×10
-3モル添加したこと以外は、実施例1と同様にして、黒色酸窒化チタンの粉末母体がシリカ膜により被覆された体積抵抗率0.80×10
5Ω・cmの黒色酸窒化チタン粉末を得た。この黒色酸窒化チタン粉末を比較例2とした。なお、比較例2のシリカ膜の厚さは、電子顕微鏡写真で計測できず、不明であった。
【0034】
<比較例3>
オルトけい酸テトラメチルを0.8×10
-2モル添加したこと以外は、実施例1と同様にして、黒色酸窒化チタンの粉末母体が厚さ2.30nmのシリカ膜により被覆された体積抵抗率1.00×10
5Ω・cmの黒色酸窒化チタン粉末を得た。この黒色酸窒化チタン粉末を比較例3とした。
【0035】
<比較例4>
オルトけい酸テトラメチルを12×10
-2モル添加し、アルカリ源(反応開始剤)として水酸化カリウムを1×10
-3モル添加したこと以外は、実施例1と同様にして、黒色酸窒化チタンの粉末母体が厚さ13.00nmのシリカ膜により被覆された体積抵抗率0.90×10
6Ω・cmの黒色酸窒化チタン粉末を得た。この黒色酸窒化チタン粉末を比較例4とした。
【0036】
<比較例5>
オルトけい酸テトラメチルを15×10
-2モル添加し、アルカリ源(反応開始剤)としてアンモニア水を5×10
-3モル添加したこと以外は、実施例1と同様にして、黒色酸窒化チタンの粉末母体が厚さ14.00nmのシリカ膜により被覆された体積抵抗率1.00×10
7Ω・cm以上の黒色酸窒化チタン粉末を得た。この黒色酸窒化チタン粉末を比較例5とした。
【0037】
<比較例6>
オルトけい酸テトラメチルを20×10
-2モル添加し、アルカリ源(反応開始剤)としてアンモニア水を5×10
-3モル添加したこと以外は、実施例1と同様にして、黒色酸窒化チタンの粉末母体が厚さ16.00nmのシリカ膜により被覆された体積抵抗率1.00×10
7Ω・cm以上の黒色酸窒化チタン粉末を得た。この黒色酸窒化チタン粉末を比較例6とした。
【0038】
<比較例7>
実施例1において白色酸化チタン粉末(TiO
2)をアンモニアガスにより還元して黒色酸窒化チタンの粉末母体を作製するときの反応時間を実施例1の半分とすることにより、白色酸化チタン粉末(TiO
2)の還元率の低い黒色酸窒化チタンの粉末母体を作製したこと以外は、実施例1と同様にして、黒色酸窒化チタンの粉末母体が厚さ3.60nmのシリカ膜により被覆された体積抵抗率4.50×10
6Ω・cmの黒色酸窒化チタン粉末を得た。この黒色酸窒化チタン粉末を比較例7とした。
【0039】
<比較試験1及び評価>
実施例1〜7及び比較例1〜7の黒色酸窒化チタン粉末について、L
*値を測定した。黒色酸窒化チタン粉末の明度指数L
*値は、日本電色工業社製の分光色差計(型式:SE2000)を用いて求めた。
【0040】
一方、実施例1〜7及び比較例1〜7の黒色酸窒化チタン粉末を用いて半導体封止用樹脂
組成物をそれぞれ製造し、これらの樹脂
組成物を用いて半導体をそれぞれ封止した。具体的には、先ずビフェニル型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂)6質量%と、フェノールノボラック樹脂硬化剤(硬化剤)3質量%と、2−メチルイミダゾール(硬化促進剤)0.2質量%と、非晶質シリカ(無機充填剤)90.8質量%とを混合して混合物を調製した。次にこの混合物と上記黒色酸窒化チタン粉末の合計量100質量%に対し黒色酸窒化チタン粉末を2質量%添加して、半導体封止用樹脂
組成物をそれぞれ製造した。更にこれらの半導体封止用樹脂
組成物を用いて半導体をそれぞれ封止した。これらの封止材を実施例1〜7及び比較例1〜7の封止材とし、これらの封止材の電気絶縁性、黒色度及びα線放出量をそれぞれ測定した。上記封止材の電気絶縁性は、樹脂封止型半導体装置により測定した。そして、リーク電流の認められなかったものを良好とし、リーク電流が認められたものを不良とした。また、上記封止材の黒色度は、分光色差計により測定した。そして、L
*値が30以下であったものを良好とし、L
*値が30を超えたものを不足とした。ここで、黒色酸窒化チタン粉末のL
*値の基準値(良好の範囲の上限値)が14であるのに対し、封止材のL
*値の基準値(良好の範囲の上限値)が30と大きいのは、封止材中における黒色酸窒化チタン粉末の含有割合が2質量%と低いからである。更に、上記封止材のα線放出量は、α線測定器(型番:SSB、EG&G ORTEC社製)を用いて測定した。それらの結果を、黒色酸窒化チタン粉末のシリカ膜の厚さ及び体積抵抗率とともに、表1に示す。なお、表1において、比較例6の電気絶縁性が形成不良であるとは、比較例6の黒色酸窒化チタン粉末をエタノールに分散させたときに、この分散液がゲル化してしまい、封止材を製造できず、電気絶縁性を測定できなかったことを示す。このため、比較例6では、封止材の黒色度及びα線放出量も測定できなかった。
【0041】
【表1】
【0042】
表1から明らかなように、黒色酸窒化チタン粉末の粉末母体の表面にシリカ膜を形成せず、かつ圧粉体の状態での体積抵抗率が5.50×10
0Ω・cmと小さかった比較例1では、黒色酸窒化チタン粉末を用いた封止材において、黒色度は良好であったけれども、電気絶縁性が不良であり、またα線の放出量も0.5cph/cm
2と多かった。また黒色酸窒化チタン粉末の圧粉体の状態での体積抵抗率が1.00×10
5Ω・cmと適切であったけれども、シリカ膜の厚さが2.3nmと薄かった比較例3では、黒色酸窒化チタン粉末を用いた封止材において、黒色度は良好であったけれども、電気絶縁性が不良であり、またα線の放出量も0.2cph/cm
2と多かった。更に黒色酸窒化チタン粉末の圧粉体の状態での体積抵抗率がそれぞれが0.90×10
6Ω・cm及び1.00×10
7Ω・cm以上と適切であったけれども、シリカ膜の厚さがそれぞれ13.00nm及び14.00nmと厚かった比較例4及び5では、黒色酸窒化チタン粉末を用いた封止材において、電気絶縁性は良好であり、またα線の放出量も0.1cph/cm
2以下と少なかったけれども、黒色度が不足した。これらに対し、黒色酸窒化チタン粉末のシリカ膜の厚さが2.5nm〜12.00nmと適切であり、かつ圧粉体の状態での体積抵抗率が1.00×10
5Ω・cm以上と適切であった実施例1〜7では、黒色酸窒化チタン粉末を用いた封止材において、電気絶縁性及び黒色度がいずれも良好であり、またα線の放出量も全て0.1cph/cm
2以下と少なかった。
【0043】
一方、黒色酸窒化チタン粉末のシリカ膜の厚さが3.60nmと適切であり、かつ圧粉体の状態での体積抵抗率が4.50×10
6Ω・cmと適切であったけれども、白色酸化チタン粉末をアンモニアガスにより還元して黒色酸窒化チタンの粉末母体を作製するときの反応時間を実施例1の半分にしたため、黒色酸窒化チタン粉末の還元率が不足している比較例7では、黒色酸窒化チタン粉末を用いた封止材において、電気絶縁性が良好であり、またα線の放出量も0.1cph/cm
2以下と少なかったけれども、黒色度が不足した。また、シリカ膜の厚さを電子顕微鏡写真で計測できず、かつ圧粉体の状態での体積抵抗率が0.80×10
5Ω・cmと小さかった比較例2では、黒色酸窒化チタン粉末を用いた封止材において、黒色度は良好であったけれども、電気絶縁性が不良であり、またα線の放出量も1.0cph/cm
2と多かった。なお、比較例2において、シリカ膜の厚さを電子顕微鏡写真で計測できなかったのは、シリカ膜が連続膜の形状を呈していなかったためである。