(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、小型で高出力の電動機が要望されている。その解決方法として、固定子巻線を、強い力で引っ張りながら巻き付ける方法が考えられている。この方法を用いることにより、固定子巻線を高密度で巻き付けることができ、固定子コアの寸法を大きくすることなく、電動機の出力を高めることができる。
ここで、特許文献1に開示されている電動機において、固定子巻線を、強い力で引っ張りながら巻き付けると、固定子巻線がコーナー部のR面に沿って密着し、固定子巻線の、コーナー部(R面)側の領域に加わる圧縮応力およびコーナー部(R面)と反対側の領域に加わる引張応力が増大する。このため、固定子巻線の、コーナー部側の領域の絶縁被膜に圧縮応力によるシワが発生し、あるいは、固定子巻線の、コーナー部と反対側の領域の絶縁被膜に引張応力によるヒビが発生して絶縁被膜が損傷するおそれがある。
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、端部絶縁部材を用いて巻き付けられる固定子巻線(集中巻き方式で巻き付けられる固定子巻線)の損傷を防止しながら電動機の出力を高めることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一つの発明は、電動機に関する。本発明の電動機は、固定子と、固定子に対して相対的に回転可能に配置された回転子を備えている。本発明の電動機は、固定子と回転子を備える種々の型式の電動機、例えば、永久磁石電動機や誘導電動機として構成することができる。
固定子は、固定子コアと、固定子コアの軸方向両側に配置される端部絶縁部材と、固定子巻線を有している。好適には、端部絶縁部材を固定子コアに位置決めする位置決め手段が設けられる。
固定子コアは、軸方向に直角な方向から見て、周方向に沿って延在するヨーク部と、ヨーク部から径方向に沿って延在するティース部を有している。ティース部は、ヨーク部から径方向に沿って延在するティース基部と、ティース基部の先端側(回転中心側)に設けられ周方向に沿って延在するティース先端部を有している。端部絶縁部材は、軸方向に直角な方向から見て、周方向に沿って延在する外壁部および内壁部と、外壁部と内壁部の間に径方向に沿って延在する連結部を有している。端部絶縁部材の外壁部、内壁部および連結部は、固定子コアのヨーク部、ティース先端部およびティース基部に対向する位置に配置される。固定子巻線は、端部絶縁部材の連結部および固定子コアのティース部(ティース基部)に巻き付けられる。すなわち、固定子巻線は、集中巻き方式で巻き付けられる。
固定子巻線としては、銅線と、銅線の周囲を覆う絶縁被膜により構成され、線径が0.6mm〜1.4mmの範囲内の固定子巻線が用いられる。
そして、端部絶縁部材の連結部の外周面は、周方向に沿った断面で見て、固定子コアの端面の延在方向に沿って延在する底面と、底面の延在方向と交差する方向に延在する第1および第2の側面と、第1および第2の側面それぞれの延在方向と交差する方向に延在する頂面と、第1の側面と頂面の間に形成され、第1の側面および頂面それぞれの延在方向と交差する方向に延在する第1のカット面と、第2の側面と頂面の間に形成され、第2の側面および頂面それぞれの延在方向と交差する方向に延在する第2のカット面を有している。
底面、頂面、第1および第2の側面、第1および第2のカット面は、平面状に形成されている。
第1の側面の延在線と第1のカット面の延在線により形成される角度θ1、第1のカット面の延在線と頂面の延在線により形成される角度θ2、頂面の延在線と第2のカット面の延在線により形成される角度θ3、第2のカット面の延在線と第2の側面の延在線により形成される角度θ4が、130°と140°の範囲内([130°≦θ1、θ2、θ3、θ4≦140°])に設定されている。なお、角度θ1〜θ4は、連結部の中心側(固定子巻線と反対側)に形成される角度である。また、「第1の側面の延在線」という記載は、「第1の側面の表面に沿った線」あるいは「第1の側面の表面に沿った線を延長した線」を意味する。他の面に関しても同様である。また、端部絶縁部材を樹脂で形成する際には、寸法公差のために各面の接続部が曲面状、例えば、半径0.2mm〜0.4mm程度の円弧面状となることがある。
また、頂面の延在線と第1および第2のカット面それぞれの延在線との接続点間の長さH、第1のカット面の延在線と第1の側面および頂面それぞれの延在線との接続点間の長さM、第2のカット面の延在線と第2の側面および頂面それぞれの延在線との接続点間の長さNが、固定子巻線の線径D(mm)の2倍以上([L、M、N≧2×D])に設定されている。
本発明では、固定子巻線を、強い力で引っ張りながら端部絶縁部材の連結部および固定子コアのティース部に巻き付けても、第1および第2のカット面と固定子巻線との間に隙間が発生するため、固定子巻線の内径側(第1のカット面側、第2のカット面側)に加わる圧縮応力および外径側(第1のカット面と反対側、第2のカット面と反対側)に加わる引張応力が増大するのを防止することができ、固定子巻線の損傷を防止することができる。したがって、小型で高出力の電動機を提供することが
できる。
一つの発明の異なる形態では、第1および第2の側面は、底面の延在方向と直角(「略直角」を含む)な方向に延在し、頂面は、第1および第2の側面の延在方向と直角(「略直角」を含む)な方向、すなわち、底面の延在方向と平行(「略平行」を含む)な方向に延在している。
本形態では、端部絶縁部材を容易に形成することができる。
他の発明は、圧縮機に関する。
本発明の圧縮機は、圧縮機構部と、圧縮機構部を駆動する電動機を備えている。そして、電動機として前述した電動機のいずれかが用いられている。
本発明は、前述した各電動機と同様の効果を有している。
【発明の効果】
【0006】
本発明の電動機および圧縮機では、端部絶縁部材を用いて巻き付けられる固定子巻線の損傷を防止しながら、出力を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明の電動機および圧縮機を、図面を参照して説明する。
なお、本明細書では、「軸方向」は、回転子が固定子に対して回転可能に配置されている状態において、回転子の中心を通る線(回転中心線)の方向を示す。また、「周方向」は、回転子が固定子に対して回転可能に配置されている状態において、軸方向(回転中心線の方向)に直角な断面でみて、回転中心線を中心とする円周方向を示す。また、「径方向」は、回転子が固定子に対して回転可能に配置されている状態において、軸方向(回転中心線の方向)に直角な断面でみて、回転中心線を通る方向を示す。
【0009】
本発明の圧縮機の一実施形態が
図1に示されている。
図1に示されている一実施形態の圧縮機10は、密閉容器20、圧縮機構部30、電動機100およびアキュムレータ40を備えている。
圧縮機構部30と電動機100は、密閉容器20内に密閉された状態で配置されている。密閉容器20には、吐出口21、吸入口22が設けられている。また、圧縮機構部30の下方には、電動機100の回転軸180の軸受部や圧縮機構部30の摺動部等に供給する潤滑油を貯留する油溜め33が設けられている。
圧縮機構部30は、シリンダ31と、電動機100の回転軸180により駆動される偏心ロータ32を有している。
本実施形態では、電動機100は、永久磁石電動機として構成されている。電動機100は、固定子110と回転子160を有している。固定子110は、固定子コア120、端部絶縁部材140、150、固定子巻線130により構成されている。固定子110については、後述する。回転子160は、回転子コア170と回転軸180を有している。回転子コア170は、積層した複数の電磁鋼板により構成される。回転子コア170には、永久磁石172が挿入される複数の磁石挿入孔171が、軸方向に沿って形成されている。回転子コア170は、軸方向両側の端面に端板173およびバランスウェイト174が配置された状態で、カシメピン175によって一体化される。
アキュムレータ40は、冷却媒体(例えば、冷却ガス)と潤滑油を分離する。アキュムレータ40で分離された冷却媒体は、吸入管41を介して吸入口22に供給される。また、アキュムレータ40で分離された潤滑油は、油溜め33に供給される。
【0010】
圧縮機構部30は、偏心ロータ32が回転することによって、吸入口22から吸入した冷却媒体をシリンダ31内で圧縮する。圧縮機構部30で圧縮された冷却媒体は、電動機100に設けられた通路を通って吐出口21から吐出される。冷却媒体を通す通路としては、例えば、固定子コア120の外周に軸方向に沿って形成された切欠面と密閉容器20の内周面により形成される溝、固定子コア120あるいは回転子コア170に軸方向に沿って形成された孔、固定子コア120の内周面と回転子コア170の外周面の間に形成されている空隙等が用いられる。
【0011】
次に、電動機100の固定子110の構成を、
図2〜
図4を参照して説明する。
図2は、固定子110の概略構成を示す図である。なお、
図2では、固定子巻線130が図示されていない。
図3は、
図2の部分IIIを、軸方向に直角な方向から図であり、
図4は、
図2の部分IVを、軸方向に直角な方向から見た図である。
固定子110は、固定子コア120、固定子巻線130(
図1参照)、端部絶縁部材140、150により構成されている。
【0012】
固定子コア120は、積層された複数の電磁鋼板により構成されている。固定子コア120は、軸方向両側に端面120A、120Bを有している。
固定子コア120は、軸方向に直角な方向から見て、周方向に沿って延在するヨーク部121と、径方向に沿って延在する複数のティース部122を有している。ティース部122は、ヨーク部121から径方向に沿って内側(回転中心側)に延在するティース基部122aと、ティース基部122aの先端側(回転中心側)に設けられ、周方向に沿って延在するティース先端部122bを有している。ティース先端部122bの回転中心側にはティース先端面122cが形成されている。ティース先端面122cによって、回転子160が挿入される回転子挿入空間120aが形成される。また、周方向に隣接するティース部122によって、固定子巻線130が挿入されるスロット125が形成される。
【0013】
端部絶縁部材140および150は、樹脂により形成され、軸方向一方側に端面140Aおよび150Aを有している。端部絶縁部材140と150は、端部絶縁部材140の端面140Aが固定子コア120の一方側の端面120Aに対向する位置に配置され、端部絶縁部材150の端面150Aが固定子コア120の他方側の端面120Bに対向する位置に配置される点が異なるだけで、構成は同じである。したがって、以下では、端部絶縁部材140の構成について説明する。
端部絶縁部材140は、軸方向に直角な方向から見て、周方向に沿って延在する外壁部141、外壁部141より内側(回転中心側)に設けられ、周方向に沿って延在する内壁部142、外壁部141と内壁部142の間に設けられ、径方向に沿って延在する連結部143を有している。端部絶縁部材140の外壁部141、連結部143および内壁部142は、それぞれ固定子コア120のヨーク部121、ティース基部122aおよびティース先端部122bに対向する位置に配置される。内壁部142の回転中心側には内周面142aが形成されている。内周面142aによって、回転子160が挿入される回転子挿入空間140aが形成される。なお、周方向に隣接する連結部143によって、固定子巻線130が挿入される巻線挿入空間145が形成される。巻線挿入空間145は、固定子コア120のスロット125に対向する位置に配置される。
端部絶縁部材150も、端部絶縁部材140と同様に、外壁部151、内壁部152、連結部153、回転子挿入空間150aおよび巻線挿入空間155を有している。
【0014】
なお、本実施形態では、固定子コア120の端面120Aおよび120Bに、凹部128が形成されている。また、端部絶縁部材140の端面140Aに、固定子コア120の端面120Aに形成されている凹部128に嵌合可能な突部148が形成されているとともに、端部絶縁部材150の端面150Aに、固定子コア120の端面120Bに形成されている凹部128に嵌合可能な突部158が形成されている。
端部絶縁部材140の端面140Aに形成されている突部148と固定子コア120の一方側の端面120Aに形成されている凹部128によって端部絶縁部材140を固定子コア120に位置決めする位置決め手段が構成され、端部絶縁部材150の端面150Aに形成されている突部158と固定子コア120の他方側の端面120Bに形成されている凹部128によって端部絶縁部材150を固定子コア120に位置決めする位置決め手段が構成されている。
【0015】
プレス等によって打ち抜かれた電磁鋼板を積層して固定子コア120を構成すると、凹部128と端面120A、120Bとの境界部が鋭い角形状(エッジ)となる。また、端部絶縁部材140(150)を樹脂により成形する際には、端面140A(150A)に形成される突部148(158)の根元部が曲面(R面)となる。このような状態で端部絶縁部材140(150)を固定子コア120の端面140A(150A)に対向する位置に配置すると、凹部128のエッジと突部148(158)の根元部との当接により固定子コア120の端面120A(120B)と端部絶縁部材140(150)の端面140A(150A)との間に隙間(ガタツキ)が発生し、端部絶縁部材140(150)が破損し、あるいは、端部絶縁部材140(150)が固定子コア120の端面120A(120B)から脱落するおそれがある。
本実施形態では、端部絶縁部材140の端面140Aおよび端部絶縁部材150の端面150Aには、突部148および突部158の周りに窪みが形成されている。これにより、凹部128のエッジと突部148(158)の根元部との当接が防止され、固定子コア120の端面120A(120B)と端部絶縁部材140(150)の端面140A(150A)との間に隙間(ガタツキ)が発生するのが防止される。
【0016】
固定子コア120のスロット125内には、スロット絶縁部材126が挿入される。本実施形態では、固定子巻線130と固定子コア120との絶縁性を高めるために、スロット絶縁部材126は、固定子コア120の端面120A、120Bから軸方向に飛び出るようにスロット125内に挿入される。
そして、固定子コア120の軸方向両側に端部絶縁部材140、150が配置された状態で、固定子巻線130が、固定子コア120のティース部122(ティース基部122a)および端部絶縁部材140の連結部143、端部絶縁部材150の連結部153に巻き付けられる。すなわち、固定子巻線130は、集中巻き方式で巻き付けられる。
また、スロット125内には、隣接するティース部122それぞれに巻き付けられた固定子巻線130を絶縁する相間絶縁部材127が挿入される。
なお、固定子巻線の銅損は、線径(断面積)に反比例する。このため、線径(断面積)が大きい固定子巻線を用いると、固定子巻線の銅損は小さくなる。しかしながら、線径が大きい固定子巻線を用いると、固定子巻線を巻き付ける作業が困難となる。また、線径(断面積)が小さい固定子巻線を用いると、固定子巻線を巻き付ける作業が容易となる。しかしながら、線径が小さい固定子巻線を用いると、固定子巻線の銅損が大きくなる。このため、本実施形態では、固定子巻線の銅損および固定子巻線の巻き付け作業性を考慮して、例えば、線径が0.6mm〜1.4mmの固定子巻線が用いられる。
【0017】
ここで、周方向に沿った断面で見て、端部絶縁部材の連結部の外周面のコーナー部がピン角(90度の角形状)である従来技術について、
図5を参照して説明する。なお、
図5(a)は、従来の端部絶縁部材の連結部243の、周方向に沿った断面図であり、
図5(b)は、
図5(a)の部分Vの拡大図である。
連結部243の外周面は、底面243a、頂面243b、第1の側面243cおよび第2の側面243dにより形成されている。底面243aは、固定子コア220(ティース基部222a)の端面240Aの延在方向と平行に延在し、第1の側面243cおよび第2の側面243dは、底面243aの延在方向と直角な方向に延在し、頂面243bは、第1の側面243bおよび第2の側面243dそれぞれの延在方向と直角な方向、すなわち、底面243aと平行な方向に延在している。
頂面243bと第1の側面243cおよび第2の側面243dとの接続部(コーナー部)244aおよび244bはピン角であるため、固定子巻線230と接続部244aおよび接続部244bとの当接箇所において、固定子巻線230の絶縁被膜が損傷するおそれがある。
【0018】
また、周方向に沿った断面で見て、端部絶縁部材の連結部の外周面の接続部(コーナー部)がR面(円弧面)である他の従来技術について、
図6を参照して説明する。なお、
図6(a)は、他の従来の端部絶縁部材の連結部343の、周方向に沿った断面図であり、
図6(b)は、
図6(a)の部分VIの拡大図である。
連結部343の外周面は、底面343a、頂面343b、第1の側面343c、第2の側面343d、第1のR面343eおよび第2のR面343fにより形成されている。
図6に示されている連結部343では、
図5に示されている、ピン角の接続部(コーナー部)がR面(円弧面)に形成されている。
図6に示されている連結部343では、
図5に示されている連結部243のように、ピン角の接続部(コーナー部)との当接による固定子巻線230の絶縁被膜の損傷を防止することができる。しかしながら、固定子巻線330を、強い力で引っ張りながら連結部343およびティース基部322aに巻き付けると、固定子巻線330が第1のR面343eおよび第2のR面343fに沿って密着し、固定子巻線330の、第1のR面343eおよび第2のR面343f側の領域に加わる圧縮応力(
図6の実線矢印)が増大するとともに、第1のR面343eおよび第2のR面343fと反対側の領域に加わる引張応力(
図6の破線矢印)が増大する。このため、固定子巻線330の、第1のR面343eおよび第2のR面343f側の領域の絶縁被膜に圧縮応力によるシワが発生し、あるいは、固定子巻線330の、第1のR面343eおよび第2のR面343fと反対側の領域の絶縁被膜に引張応力によるヒビが発生して絶縁被膜が損傷するおそれがある。
【0019】
次に、本実施形態の固定子110で用いられている端部絶縁部材140の連結部143を、
図7〜9を参照して説明する。
図7は、連結部143の、周方向に沿った断面図であり、
図8は、
図7の部分VIIIの拡大図である。また、
図9は、連結部143の構成を説明する図である。なお、端部絶縁部材150の連結部153は、端部絶縁部材140の連結部143と同じ構成であるため、説明を省略する。
連結部143の外周面は、底面143a、頂面143b、第1の側面143c、第2の側面143d、第1のカット面143eおよび第2のカット面143fにより形成されている。各面143a〜143fは、平面状に形成される。
底面143aは、端部絶縁部材140の端面140Aの一部を形成する。底面143aは、端部絶縁部材140が固定子コア120の一方側の端面120Aに対向する位置に配置された状態において、端面120Aの延在方向と平行(「略平行」を含む)に延在する。
第1の側面143cおよび第2の側面143dは、底面143aの延在方向と直角(「略直角」を含む)な方向に延在する。
頂面143bは、第1の側面143cおよび第2の側面143dそれぞれの延在方向と直角(「略直角」を含む)な方向、すなわち、底面143aの延在方向と平行(「略平行」を含む)な方向に延在する。
第1のカット面143eは、第1の側面143cと頂面143bの間(接続部144bと接続部144aの間)に、第1の側面143cの延在方向および頂面143bの延在方向と交差する方向に延在する。
第2のカット面143fは、頂面143bと第2の側面143dの間(接続部144cと接続部144dの間)に、頂面143bの延在方向および第2の側面143dの延在方向と交差する方向に延在する。
連結部材143の外周面(頂面143b、第1のカット面143e、第2のカット面143f、第1の側面143c、第2の側面143d)は、固定子巻線130を、強い力で引っ張りながら連結部材143およびティース部122(ティース基部122a)に巻き付けた場合に、固定子巻線130と第1のカット面143eの間に隙間149aが形成されるとともに、固定子巻線130と第2のカット面143fの間に隙間149bが形成されるように構成されている。
【0020】
本実施形態では、固定子巻線130を連結部143およびティース基部122aに巻き付けた場合に、固定子巻線130と第1のカット面143eおよび第2のカット面143fの間に隙間149aおよび149bが形成されるため、固定子巻線130の、第1のカット面143eおよび第2のカット面143f側の領域に加わる圧縮応力や、第1のカット面143eおよび第2のカット143fと反対側の領域に加わる引張応力の増大を抑制することができ、固定子巻線の絶縁被膜の損傷を防止することができる。
【0021】
次に、連結部143の好適な構成を説明する。
なお、端部絶縁部材140を樹脂により一体成形する際には、金型の製作精度等(寸法公差)により、連結部143の各面の接続部(
図7、
図9に示されている接続部144a〜144d)が曲面状、例えば、半径が0.2mm〜0.4mm程度の円弧面状になる場合がある。したがって、本明細書では、「延在線」という用語を、面に沿った線あるいは面に沿った線を延長した線を意味する用語として用いているとともに、角度や長さを、「延在線」を用いて定義している。例えば、「第1の面の延在線と第2の面の延在線との接続部」という記載は、「第1の面と第2の面との接続部」あるいは「第1の面に沿った線を延長した線と第2の面に沿った線を延長した線との接続部」を意味する。
【0022】
連結部143の外周面の各面の延在線により形成される角度について検討する。
図9に示されているように、第1の側面143cの延在線と第1のカット面143eの延在線により形成される角度をθ1、第1のカット面143eの延在線と頂面143bの延在線により形成される角度をθ2、頂面143bの延在線と第2のカット面143fの延在線により形成される角度をθ3、第2のカット面143fの延在線と第2の側面143dの延在線により形成される角度をθ4とする。θ1〜θ4は、連結部143の外周面の各面の延在線により形成される角度のうち、連結部143の中心側(固定子巻線130と反対側)に形成される角度である。
【0023】
同じ線径の固定子巻線130を、同じ力で引っ張りながら連結部143およびティース部122(ティース基部122a)に巻き付けた場合における、角度θ1〜θ4と固定子巻線130の絶縁被膜の厚さ(固定子巻線130の巻き付けにより固定子巻線130に引張応力および圧縮応力が加わった後の絶縁被膜の厚さ)の関係を
図10に示すモデルを用いて求めた。
なお、
図9から、[(θ1―90°)+(θ2−90°)+90°=180°]が成立する。すなわち、[θ1+θ2=270°]が成立する。同様に、[(θ3―90°)+(θ4−90°)+90°=180°]が成立する。すなわち、[θ3+θ4=270°]が成立する。
図10に示すモデルでは、面143B、面143C、面143Bと面143Cの間(接続部144cと接続部144aの間)に形成されるカット面143Eを、面143Bの延在線とカット面143Eの延在線により角度θが形成され、カット面143Eの延在線と面143Cの延在線により角度(270°−θ)が形成され、カット面143Eの長さ(カット面143Eの延在線と面143Bの延在線との接続部144Aと、カット面143Eの延在線と面143Cの延在線との接続部144B間の長さ)mが固定子巻線130の線径Dの3倍に設定されている状態で、角度θを変更して固定子巻線130の絶縁被膜の厚さを測定した。
【0024】
図10に示すモデルを用いて角度θと固定子巻線130の絶縁被膜の厚さの関係を求めたグラフが
図11に示されている。なお、
図11では、横軸に、角度θ(°)が示され、縦軸に、絶縁被膜の厚さ(mm)が示されている。
図11に示されているグラフから、角度θが130°より小さい領域では、角度θが大きくなるにしたがって固定子巻線130の絶縁被膜の厚さが厚くなり、角度θが130°以上の領域では、角度θが異なっても固定子巻線130の絶縁被膜の厚さは大きく変化しないことが理解できる。これは、面143Bと面143Cの間(接続部144Bと接続部144Aの間)にカット面143Eが形成されていることにより、固定子巻線130を巻き付けた際に固定子巻線130とカット面143Eの間に空隙が形成され、巻き付けにより固定子巻線130に加わる圧縮応力および引張応力の増大が抑制されることによる。
すなわち、角度θ1、θ2、θ3、θ4を130°以上に([130°≦θ1、θ2、θ3、θ4]が満足されるように)設定することにより、固定子巻線130の絶縁被膜の厚さが薄くなるのを防止することができ、絶縁被膜の損傷を防止することができる。
また、前述したように、
図9から、[θ1+θ2=270°]および[θ3+θ4=270°]が成立する。
以上のことから、固定子巻線の絶縁被膜の損傷を防止するためには、角度θ1、θ2、θ3、θ4を、130°と140°の範囲内に([130°≦θ1、θ2、θ3、θ4≦140°]が満足されるように)設定するのが好ましい。
【0025】
第1のカット面143eの長さMおよび第2のカット面143fの長さNについて検討する。なお、第1のカット面143eの長さMは、「第1のカット面143eの延在線と第1の側面143cおよび頂面143bそれぞれの延在線との接続部間(接続部144bと接続部144a間)の長さ」として定義され、第2のカット面143fの長さNは、「第2のカット面143fの延在線と頂面143bおよび第2の側面143dそれぞれの延在線との接続部間の距離」として定義される。
【0026】
同じ線径の固定子巻線を、同じ力で引っ張りながら、連結部143およびティース部122(ティース基部122a)に巻き付けた場合における、第1のカット面143eの長さMおよび第2のカット面143fの長さNと必要な絶縁被膜の厚さ(巻き付けにより固定子巻線130に加わる圧縮応力および引張応力による、固定子巻線130の絶縁被膜の損傷を防止するために必要な、固定子巻線130の絶縁被膜の厚さ)の関係を
図12に示すモデルを用いて求めた。なお、
図12に示すモデルでは、面143Cの延在線とカット面143Eの延在線により形成される角度が140°に設定され、カット面143Eの延在線と面143Bの延在線により形成される角度が130°に設定されている状態で、カット面143Eの長さ(カット面143Eの延在線と面143Bの延在線との接続部144Aと、カット面143Eの延在線と面143Cの延在線との接続部144B間の長さ)mを変更して必要な絶縁被膜の厚さを測定した。
図12に示すモデルを用いてカット面143Eの長さmと必要な絶縁被膜の厚さの関係を求めたグラフが
図13に示されている。なお、
図13では、横軸に、固定子巻線130の線径D(mm)の倍率で表したカット面143Eの長さmが示され、縦軸に、固定子巻線130の絶縁被膜の損傷を防止するために必要な、固定子巻線130の絶縁被膜の厚さ(mm)が示されている。
【0027】
図13に示されているグラフから、カット面143Eの長さmが固定子巻線130の線径Dの2倍より小さい領域では、長さmが長くなるにしたがって必要な絶縁被膜の厚さが薄くなることが理解できる。これは、カット面143Eの長さmが短いと、固定子巻線130がカット面143Eに密着するようになり、固定子巻線130の、カット面143E側の領域に加わる圧縮応力およびカット面143Eと反対側の領域に加わる引張応力が増大することによる。一方、カット面143Eの長さmが固定子巻線130の線径Dの2倍以上の領域では、長さmが異なっても必要な絶縁被膜の厚さは大きく変化しないことが理解できる。これは、カット面143Eの長さmが長くなると、固定子巻線130とカット面143Eの間に隙間が形成され、固定子巻線130の、カット面143E側の領域に加わる圧縮応力およびカット面143Eと反対側の領域に加わる引張応力の増大が抑制されることによる。
すなわち、固定子巻線130の損傷を防止しながら固定子巻線130の絶縁被膜の厚さを薄くするためには、第1のカット面143eの長さMおよび第2のカット面143fの長さNを、固定子巻線130の線径Dの2倍以上に([D×2≦M、N]が満足されるように)設定するのが好ましい。
【0028】
頂面143bの長さHについて検討する。なお、頂面143bの長さHは、「頂面143bの延在線と第1のカット面143eおよび第2のカット面143fそれぞれの延在線との接続部間(接続部144aと接続部144c間)の長さ」として定義される。
ティース部122のティース基部122aの周方向に沿った幅をWとすると(
図7参照)、頂面143bの長さHは、[H=W−M×sin(θ2−90°)−N×sin(θ3−90°)]で表される。
【0029】
同じ線径の固定子巻線を、同じ力で引っ張りながら、連結部143およびティース部122(ティース基部122a)に巻き付けた場合における、頂面143bの長さHと必要な絶縁被膜の厚さの関係を
図14に示すモデルを用いて求めた。なお、
図14に示すモデルでは、一方側のカット面143Eの延在線と面143Bの延在線により形成される角度が130°に設定され、面143Bの延在線と他方側のカット面143Fにより形成される角度が130°に設定されている状態で、面143Bの長さ(接続部144Aと接続部144Cの間の長さ)hを変更して必要な絶縁被膜の厚さ(巻き付けにより固定子巻線130に加わる圧縮応力および引張応力による、固定子巻線130の絶縁被膜の損傷を防止するために必要な、固定子巻線130の絶縁被膜の厚さ)を測定した。
図14に示すモデルを用いて面143Bの長さhと必要な絶縁被膜の厚さの関係を求めたグラフが
図15に示されている。なお、
図15では、横軸に、固定子巻線130の線径D(mm)の倍率で表した面143Bの長さhが示され、縦軸に、固定子巻線130の損傷を防止するために必要な、固定子巻線130の絶縁被膜の厚さ(mm)が示されている。
【0030】
図15に示されているグラフから、面143Bの長さhが固定子巻線130の線径Dの2倍より小さい領域では、長さhが長くなるにしたがって必要な絶縁被膜の厚さが薄くなることが理解できる。これは、面143Bの長さhが短いと、接続部144Aと接続部144Cの間における固定子巻線130の曲げ部の曲率が小さくなり(急激に曲げられ)、固定子巻線130の、面143B側の領域に加わる圧縮応力および面143Bと反対側の領域に加わる引張応力が増大することによる。一方、面143Bの長さhが固定子巻線130の線径Dの2倍以上の領域では、長さhが異なっても必要な絶縁被膜の厚さは大きく変化しないことが理解できる。これは、面143Bの長さhが長くなると、接続部144Aと接続部144Cの間における固定子巻線130の曲げ部の曲率が大きくなり(緩やかに曲げられ)、固定子巻線130の、面143B側の領域に加わる圧縮応力および面14BEと反対側の領域に加わる引張応力の増大が抑制されることによる。
すなわち、固定子巻線130の損傷を防止しながら固定子巻線130の絶縁被膜の厚さを薄くするためには、頂面143bの長さHを固定子巻線130の線径Dの2倍以上に([D×2≦H]が満足されるように)設定するのが好ましい。
【0031】
なお、第1のカット面143eの長さMは、第2のカット面143fの長さNおよび頂面143bの長さHが固定子巻線130の線径Dの2倍以上となる範囲内に制限される。また、第2のカット面143fの長さNは、第1のカット面143eの長さMおよび頂面143bの長さHが固定子巻線130の線径Dの2倍以上となる範囲内に制限される。また、頂面143bの長さHは、第1のカット面143eの長さMおよび第2のカット面143fの長さNが固定子巻線130の線径Dの2倍以上となる範囲内に制限される。
【0032】
本発明は、実施形態で説明した構成に限定されず、種々の変更、追加、削除が可能である。
端部絶縁部材の連結部の外周面の形状は、実施形態で説明した構成に限定されない。例えば、第1および第2の側面は、好適には、底面の延在方向と直交する方向に延在するように形成されるが、底面の延在方向と交差する方向に延在するように形成してもよい。頂面の延在方向は、好適には、第1および第2の側面と直交する方向に延在するように形成されるが、第1および第2の側面と交差する方向に形成してもよい。好適には、頂面と第1の側面の間および頂面と第2の側面の間には1つのカット面が形成されるが、複数のカット面を形成することもできる。
本発明の電動機は、永久磁石電動機に限定されず、回転子と固定子を備える種々の型式の電動機として構成することができる。
本発明の電動機は、圧縮機の圧縮機構部以外の種々の機器を駆動する電動機として用いることができる。