(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6574364
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】水耕栽培装置
(51)【国際特許分類】
A01G 31/02 20060101AFI20190902BHJP
A01G 31/00 20180101ALI20190902BHJP
【FI】
A01G31/02
A01G31/00 611Z
A01G31/00 601Z
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-190698(P2015-190698)
(22)【出願日】2015年9月29日
(65)【公開番号】特開2017-63646(P2017-63646A)
(43)【公開日】2017年4月6日
【審査請求日】2018年8月30日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 展示日 2015年9月10日 展示会名、開催場所 『「福祉」と「農業」』セミナー“第2弾” 東京都千代田区飯田橋3−13−1 大和ハウス工業株式会社 東京本社ビル 公開者 大和ハウス工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105843
【弁理士】
【氏名又は名称】神保 泰三
(72)【発明者】
【氏名】宮垣 慶子
(72)【発明者】
【氏名】武田 匠二
【審査官】
田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−153718(JP,A)
【文献】
特開2012−147765(JP,A)
【文献】
国際公開第2015/001763(WO,A1)
【文献】
特開2014−187893(JP,A)
【文献】
米国特許第05337515(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 9/00− 9/02
A01G 31/00−31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
栽培する植物が配置される植物配置部材と、上記植物配置部材を着脱可能に支持し、上記植物の根に水を供給する水槽と、上記水槽が着脱可能に装着される支持筐体部と、上記植物配置部材の底側に取り付けられた水流生成装置と、上記支持筐体部に設けられた一方側電気コネクタと、上記植物配置部材に設けられており、上記一方側電気コネクタに着脱可能に装着でき、装着状態で上記水流生成装置に駆動電力を供給する他方側電気コネクタと、を備えることを特徴とする水耕栽培装置。
【請求項2】
請求項1に記載の水耕栽培装置において、上記水槽には、水槽底側から水槽上面側に貫通する筒状部が形成されており、上記他方側電気コネクタが上記筒状部を通って上記一方側電気コネクタに装着されるようにしたことを特徴とする水耕栽培装置。
【請求項3】
請求項2に記載の水耕栽培装置において、上記筒状部が上記水槽の中央位置に形成されていることを特徴とする水耕栽培装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の水耕栽培装置において、上記他方側電気コネクタに接続されて駆動電力を上記水流生成装置に供給する電気線が、上記植物配置部材の底側に配置されていることを特徴とする水耕栽培装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の水耕栽培装置において、複数の水耕栽培装置を積層した状態で上下の水耕栽培装置間に空気路が形成されることを特徴とする水耕栽培装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、養分を含有する水(養液)によって植物を栽培することができる水耕栽培装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1、特許文献2および特許文献3には、水槽内の水に空気を溶け込ませるとともに水流を造るエアポンプを備えた家庭用の水耕栽培装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−153718号公報
【特許文献2】特開2012−147765号公報
【特許文献3】特開2006−271355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1および特許文献2の水耕栽培装置では、栽培する植物が配置される植物配置部材には、ポンプ等の装置が取り付けられていないため、これを水槽から取り外すことに何ら支障はないものの、特許文献1に開示された構造では、水槽自体がエア供給装置を備えるため、栽培装置が大型で複雑になる欠点があり、また、特許文献2に開示された構造では、植物配置部材を外して水槽の水を交換する際に、外した植物配置部材を何処かに置くとともに、別途、泡発生器も水槽から外す必要があるため、使い勝手の悪いものであった。また、特許文献3に開示された構造では、植物が配置される植物配置部材を水槽から外すときに、エアストーンも同時に水槽から外れるという利点があるものの、別途設けられるエアポンプやチューブが露呈する構造であるため、意匠性がよくないという欠点がある。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑み、水槽の水交換が容易で意匠性も向上できる水耕栽培装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の水耕栽培装置は、上記の課題を解決するために、栽培する植物が配置される植物配置部材と、上記植物配置部材を着脱可能に支持し、上記植物の根に水を供給する水槽と、上記水槽が着脱可能に装着される支持筐体部と、上記植物配置部材の底側に取り付けられた水流生成装置と、上記支持筐体部に設けられた一方側電気コネクタと、上記植物配置部材に設けられており、上記一方側電気コネクタに着脱可能に装着でき、装着状態で上記水流生成装置に駆動電力を供給する他方側電気コネクタと、を備えることを特徴とする。
【0007】
上記の構造であれば、上記植物配置部材を外して水槽内の水(養液)を交換する際に、上記植物配置部材に設けられている上記水流生成装置も同時に水槽から取り出されるため、使い勝手がよく、また、上記水流生成装置を手で掴むことも不要であるため、感電のおそれも生じない。また、上記植物配置部材を水槽に支持させた使用状態においては、上記水流生成装置が上記植物配置部材の底側に在るので見えず、水耕栽培装置の意匠性が向上する。
【0008】
上記水槽には、水槽底側から水槽上面側に貫通する筒状部が形成されており、上記他方側電気コネクタが上記筒状部を通って上記一方側電気コネクタに装着されるようにしてもよい。これによれば、上記植物配置部材を水槽に支持させた使用状態において、上記他方側電気コネクタが上記水槽内に在って見えなくなるので、水耕栽培装置の意匠性がさらに向上する。
【0009】
上記筒状部が上記水槽の中央位置に形成されていてもよい。これによれば、上記中央位置の上記筒状部を中心に上記植物配置部材を水平面内で回転させて位置変えができる構成とすることが可能になる。
【0010】
上記他方側電気コネクタに接続されて駆動電力を上記水流生成装置に供給する電気線が、上記植物配置部材の底側に配置されていてもよい。これによれば、水耕栽培装置の使用状態において上記電気線が見えず、水耕栽培装置の意匠性がさらに向上する。
【0011】
複数の水耕栽培装置を積層した状態で上下の水耕栽培装置間に水平に空気路が形成されてもよい。これによれば、複数の水耕栽培装置を積層できることで、意匠性をさらに高めることができる。また、上下の水耕栽培装置間に空気路が形成されると、この空気路が放熱路として機能し、水耕栽培装置に発熱を伴う照明装置を設けたような場合でも、その放熱を適切に行うことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明であれば、水槽内の水の交換が容易で意匠性も向上できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態にかかる水耕栽培装置を斜視により示した説明図である。
【
図2】
図1の水耕栽培装置の水槽等を示した斜視図である。
【
図3】
図1の水耕栽培装置の支持筐体部を示した斜視図である。
【
図4】
図1の水耕栽培装置において植物配置部材を外す途中の状態を示した説明図である。
【
図5】
図1の水耕栽培装置の植物配置部材の底面側を示した斜視図である。
【
図6】
図1の水耕栽培装置のカバー部の着脱を示した斜視図である。
【
図7】
図1の水耕栽培装置の積層例を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1に示すように、この実施形態の水耕栽培装置1は、装置本体2と、この装置本体2の外側を覆う略六面体形状のカバー部3とを備えている。上記装置本体2は、略円筒形状を有し表裏両側に円形の開口を有している。また、上記カバー部3の表裏両側にも、上記装置本体2の円形の開口と略同位置で略同じ大きさの円形の開口3aが形成されている。なお、上記装置本体2の表側は、電源スイッチ23cが設けられる側とする。
【0015】
上記装置本体2は、植物配置部材21と、水槽22と、支持筐体部23と、水流生成装置24と、一方側電気コネクタ25(
図3参照)と、他方側電気コネクタ26と、電気線27とを備える。
【0016】
上記植物配置部材21は、定植板となるものであり、葉野菜等の栽培する植物Pを支持する支持体4が装着される貫通孔21aを複数有する。上記貫通孔21aは、例えば、円形に形成されている。また、上記支持体4は、例えば、柔軟性を有するスポンジ等を素材とし、立方体形状に形成されており、上記貫通孔21aに変形して挿入されることで支持される。
【0017】
上記水槽22は、上記植物配置部材21を着脱可能に支持し、支持状態で上記貫通孔21aから下方に垂下した植物Pの根に水(養液)を供給する。また、
図2に示すように、この水槽22の上部側は、正面視で半円形状を有し平面視で四角形を有しており、下部側は方形枡形状を有している。上記の半円形状の円弧は、円筒形状を有する上記装置本体2の内面の円弧の曲率半径よりも小さくされており、上記半円形状の部分の横側と上記内面との間に手の指が入る程度の隙間が形成されるようになっている。また、上記水槽22の上面開口縁の横側部分には、切欠き22aが形成されており、上記植物配置部材21が被せられた状態で、当該植物配置部材21と上記の上面開口縁の横側部分との間に指先を引っ掛けることができる間隙が形成される。
【0018】
さらに、上記水槽22には、水槽底側から水槽上面側に貫通する筒状部22bが当該水槽22の上記枡形状をなす下部側の中央位置に形成されている。上記筒状部22bは、上記水槽22の上面開口縁を越えない高さで形成されている。
【0019】
図3にも示すように、上記支持筐体部23の下部側には、方形状の凹部23aが形成されており、この凹部23aに上記水槽22の上記方形枡形状をなす下部側が着脱可能に収容されるようになっている。さらに、上記凹部23aの中央位置には、上記一方側電気コネクタ25が設けられている。この一方側電気コネクタ25には、上記支持筐体部23に内蔵された図示しない電源装置から電力が供給される。また、上記電源装置は電気コード5によって家屋のアウトレットから電力供給を受けることができる。
【0020】
図4および
図5にも示すように、上記水流生成装置24は、上記植物配置部材21の底側で2本の支柱部24aによって支持されている。この水流生成装置24は、例えば、水中ポンプからなり、上記水槽22内の水を吸引部から吸引する動作および吸引した水を排出部から排出する動作を実行することにより、上記水槽22内に水流を形成する。なお、水流生成装置24のオンオフは、上記支持筐体部23の上部側に設けられた電源スイッチ23cを操作することで行うことができる。また、上記水流生成装置24は、水中ポンプで水流を生成することに限らず、水車やスクリュウ等で水流を生成してもよい。
【0021】
上記他方側電気コネクタ26は、上記植物配置部材21の底側に突出して設けられている。この他方側電気コネクタ26は、上記筒状部22b内に入る大きさ(直径)を有している。また、上記他方側電気コネクタ26の基部側には円形のフランジ部(このフランジ部に防水リング等を設けておくことができる)が形成されており、このフランジ部が上記植物配置部材21に、例えば螺子留めされることで、上記他方側電気コネクタ26が上記植物配置部材21に固定される。上記他方側電気コネクタ26を上記筒状部22bに挿入しながら、上記植物配置部材21を上記水槽22の上面開口に被せると、上記他方側電気コネクタ26の先端部(電気接続部)が上記一方側電気コネクタ25に装着される。また、上記植物配置部材21を上に持ち上げると、上記他方側電気コネクタ26の先端部が上記一方側電気コネクタ25から離脱することになる。
【0022】
上記電気線27は、上記他方側電気コネクタ26と上記水流生成装置24との間に設けられており、上記他方側電気コネクタ26が上記一方側電気コネクタ25から受け取った駆動電力を上記水流生成装置24に供給する。上記電気線27は、防水性を有するものであり、上記植物配置部材21の底側に設けられている。
【0023】
上記水槽22内の水を交換する際には、上記水槽22の上面開口縁と上記植物配置部材21との間の間隙に手の指を差し込んで、上記植物配置部材21を持ち上げて取り外す。このとき、上記他方側電気コネクタ26が上記一方側電気コネクタ25から離脱するとともに、上記植物配置部材21に設けられている上記水流生成装置24が同時に水槽から取り出される。したがって、別途、手で上記水流生成装置24を水槽から取り出す必要がなく、使い勝手がよくなる。また、上記水流生成装置24を手で掴むことが不要であるため、感電のおそれも生じない。
【0024】
上記の取り外した植物配置部材21を適当な場所に仮置きし、次に、上記水槽22を持ち上げて、上記支持筐体部23から取り外す。そして、上記水槽22内の水を交換し、水槽22を上記支持筐体部23の凹部23aに嵌め込む。そして、水槽22の上面開口に上記植物配置部材21を被せる。このとき、上記水槽22に形成された筒状部22bを通して上記他方側電気コネクタ26を挿入し、この他方側電気コネクタ26を上記一方側電気コネクタ25に接続させる。このように、上記植物配置部材21を水槽22上に支持させた使用状態においては、上記水流生成装置24が上記植物配置部材21の底側に在るので見えないことになり、水耕栽培装置1の意匠性が向上する。
【0025】
上記電気線27が上記植物配置部材21の底側に設けられていると、使用状態において上記電気線27は見えず、水耕栽培装置1の意匠性がさらに向上する。
【0026】
また、上記水槽22内に形成された筒状部22bを通して上記他方側電気コネクタ26が上記一方側電気コネクタ25に装着される構成であると、上記植物配置部材21を水槽22に支持させた使用状態において、上記他方側電気コネクタ26が上記水槽22内に在って見えなくなるので、水耕栽培装置1の意匠性がさらに向上する。
【0027】
また、上記筒状部22bが上記水槽22の中央位置に形成されていると、上記中央位置の上記筒状部22bを中心に上記植物配置部材21を水平面内で例えば180度回転させて位置変えができる構成とすることが可能になる。
【0028】
なお、水槽22の外側に他方側電気コネクタ26を配置させる構成も採用できる。例えば、水槽22の周囲壁の一部(角部等)に凹状部を形成し、この凹状部に他方側電気コネクタ26を通し、上記凹状部の下方側において支持筐体部23に設けた一方側電気コネクタ25に上記他方側電気コネクタ26が接続されるようにしてもよい。この場合、上記凹状部が形成される上記水槽22の周囲壁の上縁に電気線27を通す切欠き部を形成しておくのがよい。
【0029】
また、上記水耕栽培装置1は、
図6に示すように、上記装置本体2の外側を覆う略六面体形状のカバー部3を取り外し可能に備えている。例えば、上記カバー部3の側面板3bが上下方向に開閉可能に設けられており、この側面板3bを上に開いた状態で上記装置本体2の出し入れができる。
【0030】
また、上記水耕栽培装置1は、上記略六面体形状のカバー部3を備えることで、
図7に示すように、複数の水耕栽培装置1を積層できるようになっている。上記カバー部3の上下面には横方向に、左右側面には縦方向に複数の溝部3cが形成されている。水耕栽培装置1の上下面において、溝部3cと非溝部との位相が互いに180度ずらされていると、下側の水耕栽培装置1の上面の凹凸と、上側の水耕栽培装置1の下面の凹凸とが丁度嵌まり合う関係になる。一方、上下面に形成される溝部3cと非溝部との位相を同じにすると、溝部3c同士が対向し、下側の水耕栽培装置1の上面と上側の水耕栽培装置1の下面との間に水平に空気路が形成される。なお、上記位相を180度ずらした凹凸が嵌まり合う構成においても、この嵌まり合う凹凸の高さを相違させることで、水平に空気路を形成することが可能である。また、上記空気路は水平に限らない。
【0031】
このように、複数の水耕栽培装置1を積層することができると、意匠性をさらに高めることができる。
【0032】
また、水耕栽培装置1の少なくとも上面に上記溝部3cが形成されていると、水耕栽培装置1を積層したときに、下側の水耕栽培装置1の上面側に上記溝部3cによる水平な空間を形成することが可能であり、この空間によって熱を横方向に逃がすことができる。したがって、上記装置本体2の上部側に発熱を伴う照明装置を設けたような場合でも、その放熱を適切に行うことができる。なお、上記カバー部3に上記空気路に通じるスリットが形成されていると、熱を持った空気が上記スリットから直接に上記空気路を通って効率的に放熱される。また、上記溝部3cを水耕栽培装置1の奥行き方向に形成することもできる。また、装置本体2の外表面にスリットを形成しておき、このスリットからカバー部3側へ放熱が行われるようにしてもよい。
【0033】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 :水耕栽培装置
2 :装置本体
3 :カバー部
3a :開口
3b :側面板
3c :溝部
4 :支持体
5 :電気コード
21 :植物配置部材
21a :貫通孔
22 :水槽
22a :切欠き
22b :筒状部
23 :支持筐体部
23a :凹部
23c :電源スイッチ
24 :水流生成装置
24a :支柱部
25 :一方側電気コネクタ
26 :他方側電気コネクタ
27 :電気線
P :植物