(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を適用した中空桁の製造方法を実施するための一実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0019】
(橋梁の上部構造)
まず、
図1〜
図3を用いて、本実施形態に係る中空桁の製造方法により製造する中空桁及びその中空桁を備えた橋梁の上部構造について簡単に説明する。本実施形態に係る中空桁1は、図中に例示する橋梁の上部構造を構成する主桁であり、工場等で打設されたプレストレス、プレキャスト製の鉄筋コンクリートからなる断面ロの字状の桁である。
【0020】
図示する橋梁の上部構造は、支承S1を介して橋脚や橋台などの橋梁の下部構造A上に、長手(軸)方向を桁軸方向(図のX方向)として桁幅方向(図のY方向)に所定の間隔を空けて設置された複数の中空桁1と、これら複数の中空桁1上に形成される平板状の床版2と、この床版2の桁幅方向Yの端部(縁部)に沿って形成される高欄3など、から構成されている。また、これらの複数の中空桁1は、図示は省略するが、桁軸方向Xの端部において、間詰めの場所打ちコンクリート硬化後に、横締めPC鋼材によりポストテンション方式でプレストレスが付与され互いに連結されている。なお、図示する床版2及び高欄3は、現場打ちの鉄筋コンクリート製のものを例示している。また、図中のZ方向は、上下方向を示している。
【0021】
(中空桁)
中空桁1は、
図2に示すように、下部構造Aの上に単数又は複数の支承S1を介して載置された複数の横桁4、4’に架け渡される。そして、桁軸方向Xに沿って縦に隣接する中空桁1と中空桁1、及び横桁4、4’とが場所打ちコンクリートで一体化される場所打ち連結部6が形成されている。また、
図3に示すように、横桁4のフランジ4f上に水勾配を付けるための高さ調整モルタル5が打設され、この高さ調整モルタル5の上に、複数の中空桁1が、桁軸方向Xを長手方向として所定間隔を置いて複数並列されている。
【0022】
この中空桁1は、
図4及び
図5に示すように、軽量化のため桁軸方向Xに延長された断面ロの字状の中空部11が形成され、桁軸方向XにPC鋼材12によりプレストレスが導入されたプレテンション方式のPCa縦桁である。この中空桁1は、プレテンション方式で製作されるため、現地でのプレストレス導入の手間を省くことが可能となる。なお、中空桁1は、図示は省略するが、桁軸方向Xに主筋が配設され、主筋の直交方向にスターラップが配設される。
【0023】
図6は、中空桁1のコンクリート打設前の状態を示す断面図である。中空桁1は、鉄等の鋼材からなる型枠F、F’の内側に、断面ロの字状の中空に形成させる中空枠110が設けられ、コンクリートが打設される。
【0024】
(中空枠)
中空枠110は、発泡スチロールで構成され、桁幅方向Yの中心線で左右対称に形成された部材であり、後述する架台13に載置される。この中空枠110は、桁幅方向Yの略中心に形成される下端から桁幅方向Yに向けてそれぞれ上方に傾斜して形成される、換言すれば、断面視でV字状に形成される下面部111と、下面部111の桁幅方向Yの両端からそれぞれ略鉛直上方に形成される2つの側面部112と、2つの側面部112の上端から略水平に形成される上面部113と、を有する。また、図示は省略しているが、この中空枠110は、その長手方向が桁軸方向Xに向けて水平に延長して形成されている。なお、本発明に係る中空枠は、発泡スチロールで構成される他、段ボール製、木製等で構成されてもよい。
【0025】
下面部111は、PC鋼材12の上に設置される鉄等の鋼材からなる架台13を用いて下方から支持され、側面部112には、モルタルで構成されるスペーサー15が設けられ、上面部113には、鉄等の鋼材からなる板材14を介して後述する上方治具21が設けられる。また、上面部113は、コンクリート打設後に中空桁1のウェブと上フランジの接続部がひび割れるのを防止するため、桁幅方向Yの両端が面取りされて形成される。
【0026】
(架台)
次に、本実施形態に係る中空桁の製造方法に用いる架台について説明する。架台13は、
図4に示すように、桁軸方向Xに間隔を空けて複数に設けられ、コンクリート打設後もコンクリート内に残置されるものである。この架台13は、
図6に示すように、型枠F、F’内に設置され、PC鋼材12に載置される。
【0027】
架台13は、
図7に示すように、円柱状に形成された鉄等の鋼材を複数用いて構成される。この架台13は、桁幅方向Yの略中心から桁幅方向Yに向けてそれぞれ上方に傾斜して形成される、換言すれば、桁軸方向Xから見た場合に略M字状に形成される一対の支持部材130と、支持部材130の桁幅方向Yの両端にそれぞれ鉛直上方に向けて延長して設けられる側方固定部材131と、一対の支持部材130を互いに接続する接続部材135と、を有する。この架台13は、接続部材135を介して一対の支持部材130が互いに接続されるため、架台13が桁軸方向Xに転倒するのを防止することが可能となる。
【0028】
また、架台13は、側方固定部材131と、接続部材135とがそれぞれ支持部材130に溶接されて固定されているため、コンクリート打設時に荷重を受けた場合でも、架台13は、コンクリートの荷重に耐えることが可能となる。
【0029】
支持部材130は、
図6に示すように、中空枠110の下面部111の断面形状と略同一に形成される受け部132と、受け部132の桁幅方向Yの両端から下方に向けて延長される鉛直部133と、受け部132と鉛直部133とを連結する連結部134と、を有する。この支持部材130は、受け部132が中空枠110の下面部111の断面形状と略同一に形成されるため、中空枠110の下面部111が受けるコンクリート打設時の荷重に対する反力を分散させることが可能となる。
【0030】
連結部134は、受け部132の傾斜部分のスパン中央付近と、鉛直部133とを連結させている。これにより、支持部材130は、コンクリート打設時に上方から荷重を受けたとき、下方に撓むのを防止することが可能となる。
【0031】
側方固定部材131は、中空枠110の側面部112を挟持するように形成される。また、側方固定部材131の上下方向Zの長さは、架台13がコンクリート打設後もコンクリートの内部に残置されることから、
図6に示すように、架台13をPC鋼材12の上に設置したときに型枠Fの天端高を超えない範囲で形成される。なお、本実施形態に係る側方固定部材131は、支持部材130の桁幅方向Yの両端に設けられるものであるが、これに限定されず、本発明に係る側方固定部材は、支持部材の鉛直部が受け部よりも上方に延長して形成されるものであってもよい。また、本発明に係る側方固定部材は、接続部材の桁幅方向の両端からそれぞれ鉛直上方に形成されて複数配置されるものであってもよい。
【0032】
このような架台13は、中空枠110の側面部112を挟持する側方固定部材131を有することにより、コンクリート打設時に中空枠110が桁幅方向Yへの移動を拘束することができ、桁軸方向Xを中心軸として回転するのを防止することが可能となる。
【0033】
なお、本発明に係る架台は、前述したような鉄等の鋼材からなる形態に限らず、中空桁を中空に形成するための中空枠を載置するものとして、モルタルスペーサーが用いられてもよい。
【0034】
(スペーサー)
スペーサー15は、設計図書で定められた所定のコンクリートかぶりを確保するために用いられるものであり、
図4に示すように、中空桁1の内部に、桁軸方向Xに向けて間隔を空けて複数設けられる。このスペーサー15は、
図6に示すように、断面視で略三角形状をしたモルタル部151と、モルタル部151に挿通された略円柱状の鉄等の鋼材からなる突出部152と、を有する。
【0035】
スペーサー15は、突出部152が中空枠110の側面部112に挿通されて固定されるとともに、モルタル部151の先端と型枠Fとが接触して設けられる。これにより、中空桁1は、所定のコンクリートのかぶりを確保することが可能となる。また、スペーサー15は、コンクリート打設時に中空枠110が桁軸方向Xを中心軸として回転するのを抑制することが可能となる。
【0036】
(上方治具)
次に、本実施形態に係る中空桁の製造方法に用いる上方治具について説明する。上方治具21は、
図6に示すように、型枠Fの上端に固定されるが、型枠F内にコンクリートを打設した後、そのコンクリートが硬化する前に、型枠Fから取り外されてコンクリートの内部から撤去されるものである。
【0037】
この上方治具21は、中空枠110の上面部113を上方から固定する2つの浮上防止治具22と、中空枠110の側面部112を挟持する2つの側面支持治具23と、浮上防止治具22と側面支持治具23との取り付け位置を固定する横材24と、浮上防止治具22と側面支持治具23との上端側をそれぞれ連結する円柱状の鉄等の鋼材からなる補強材26と、を有する。
【0038】
浮上防止治具22は、
図8に示すように、上方から見た場合に断面略円形状で形成される棒状の鋼材からなり、上下方向Zにそれぞれ間隔を空けて設けられる複数の貫通孔221と、この略円形断面よりも大きく略平面状に拡がって形成される下端部222と、を有する。
【0039】
この浮上防止治具22は、下端部222を有することにより、中空枠110の上面部113が受けるコンクリート打設時に生じる浮力に対する反力を分散させることができ、中空枠110に集中荷重が作用するのを防止することが可能となる。また、この下端部222は、
図6に示すように、中空枠110の上面部113の断面形状と略同一に形成され、桁幅方向Yの外側が面取りされて形成される。これにより、浮上防止治具22は、コンクリート打設時にコンクリートの浮力や側圧を受けた場合、下端部222の面取りされた箇所が中空枠110の上面部113の面取りされた箇所に接触した状態を維持できるため、中空枠110を上方から固定するのみならず、桁軸方向Xを中心軸として回転するのを防止する効果を有することが可能となる。
【0040】
側面支持治具23は、
図8に示すように、略円柱状の鉄等の鋼材からなり、上下方向Zにそれぞれ間隔を空けて上下方向に複数の貫通孔231を有する。
【0041】
横材24は、
図6に示すように、横材24の桁幅方向Yの両端が型枠Fの上端に固定される。横材24は、
図8に示すように、角パイプ等の鋼材からなり、その上下面は、浮上防止治具22と側面支持治具23とが挿通可能に形成される。また、横材24の両側面には、貫通孔241が上下方向Zに2段に設けられるとともに、桁幅方向Yに各段4か所ずつ設けられる。
【0042】
このような上方治具21は、中空枠110の上面部113を上方から固定する浮上防止治具22を有するので、コンクリート打設時に中空枠110が浮上するのを防止できる。また、上方治具21は、中空枠110の側面部112を挟持する側面支持治具23を有することにより、コンクリート打設時に中空枠110が桁幅方向Yへの移動を拘束することができるとともに、中空枠110が桁軸方向Xを中心軸として回転するのを防止することが可能となる。
【0043】
また、上方治具21は、浮上防止治具22と側面支持治具23とが挿通可能に形成されることにより、浮上防止治具22及び側面支持治具23の取り付け高さを任意に調整することが可能となる。そのうえで、貫通孔221及び231と横材24の貫通孔241とをそれぞれ位置合わせし、各貫通孔241にビスやボルト等の留め具25をそれぞれ挿通させることにより、浮上防止治具22と側面支持治具23とを横材24に固定することが可能となる。即ち、この上方治具21は、この側面支持治具23の取り付け高さを適宜設定することができ、側面支持治具23と中空枠110の側面部112との接触長を任意に設定することが可能となる。
【0044】
また、この上方治具21は、浮上防止治具22及び側面支持治具23のそれぞれの上端側に補強材26を介して互いが連結されることにより、コンクリート打設時に中空枠110がコンクリートの浮力や側圧を受けた場合、浮上防止治具22と側面支持治具23とが桁幅方向Yに変形するのを防止できる。その結果、この上方治具21は、中空枠110が浮上するのを防止する効果をより高めるとともに、桁軸方向Xを中心軸として回転するのを防止する効果をより高めることが可能となる。
【0045】
(板材)
板材14は、
図6に示すように、所定の厚みを有する鉄等の鋼材で構成され、中空枠110の上面部113に載置される。また、板材14は、その断面形状が中空枠110の上面部113の断面形状と略同一で形成され、中空枠110の上面部113と上方治具21とに介装される。これにより、板材14は、コンクリート打設時に中空枠110が受けた浮力に対する反力を中空枠110に分散させることができ、中空枠110に集中荷重が作用するのを防止することが可能となる。
【0046】
この板材14は、
図4に示すように、桁軸方向Xに間隔を空けて複数設けられ、コンクリート打設後もコンクリート内に残置される。なお、この板材14は、桁軸方向Xに複数設けられた架台13の間の上面部113に設けられる。換言すれば、架台13と板材14とが、桁軸方向Xにおいて交互に配置される。これにより、コンクリート打設時に中空枠110が浮力や側圧を受けた場合、架台13と板材14を介して固定された上方治具21とで、桁軸方向Xにおいて中空枠110を満遍なく固定することが可能となる。なお、本発明に係る板材は、架台に対して桁軸方向Xにおいて交互に配置される場合に限らず、架台の上方に配置されてもよい。かかる場合には、コンクリート打設時に中空枠が浮力や側圧を受けたとき、架台と板材を介して固定された上方治具とで、架台及び板材の配置された箇所において中空枠をより強固に固定することが可能となり、結果として、中空枠を全体として強固に固定することが可能となる。
【0047】
(横桁)
横桁4は、所定の異形鉄筋及びPC鋼材が配置されたコンクリートからなる工場等で予め製作されて現地へ搬入されるプレキャストプレストレストコンクリート製のPCa横桁であり、下部構造A上に桁幅方向Yを長手方向として載置される。
【0048】
横桁4は、
図2に示すように、桁軸方向Xの端部となる下部構造A上に支承S1を介して載置され、一側面側にのみ中空桁1の桁軸方向Xの端部を載置するフランジ4fが形成された鉛直断面がL字状のPCa横桁である。また、横桁4’は、
図2に示すように、橋梁の中間地点となる下部構造A上に支承S1を介して載置され、中空桁1の長手方向の端部を載置するフランジ4fが両側に形成された鉛直断面が逆T字状のPCa横桁である。
【0049】
(その他)
支承S1は、一般的な支承であれば種々の支承を採用することができ、特に限定されるものではないが、本実施形態に係る橋梁の上部構造では、中空桁1に作用する水平力を低減するため、鋼材プレート間にゴム弾性体が介装された免振(免震)支承であるゴム支承を例示している。
【0050】
このような中空桁1によれば、対面交通規制の期間及び工期を短縮することができるだけでなく、高価な支承数を大幅に低減して、コストを縮減することができる。
【0051】
<中空桁の製造方法>
次に、
図9〜
図17を用いて、本発明の実施形態に係る中空桁の製造方法について説明する。
【0052】
(1)PC鋼材設置工程
本発明の実施形態に係る中空桁の製造方法では、先ず、工場内に設けられた型枠F’の上方に、PC鋼材12を複数(本実施形態では、20本)設けるPC鋼材設置工程を行う。PC鋼材設置工程では、型枠F’の上方にPC鋼材12を配置し、PC鋼材12を緊張する(図示省略)。その上で、PC鋼材12の周囲に主筋及びスターラップを配設する(図示省略)。
【0053】
(2)架台設置工程
次に、本発明の実施形態に係る中空桁の製造方法では、
図9に示すように、PC鋼材設置工程で設置したPC鋼材12の上に架台13の連結部134を設置する架台設置工程を行う。架台設置工程では、架台13を桁幅方向Yや上下方向Zに動かないよう、主筋やスターラップに結束線等により固定する。また、図示は省略するが、架台設置工程では、架台13を、PC鋼材12の上に桁軸方向Xに向けて略等間隔で複数に設置する。
【0054】
(3)中空枠設置工程
次に、本発明の実施形態に係る中空桁の製造方法では、
図10に示すように、架台設置工程で設置した架台13の上に桁軸方向Xに向けて水平に延長された中空枠110を設置する中空枠設置工程を行う。この中空枠設置工程では、中空枠110の下面部111を架台13の受け部132に載置するとともに、架台13の側方固定部材131で中空枠110の側面部112を挟持する。
【0055】
(4)板材設置工程
次に、本発明の実施形態に係る中空桁の製造方法では、
図11に示すように、中空枠設置工程で設置した中空枠110の上に、板材14を設置する板材設置工程を行う。この板材設置工程では、中空枠110の上面部113の断面形状と略同一に形成される板材14を中空枠110の上面部113に載置する。また、この板材設置工程では、図示は省略するが、架台設置工程で設置した架台13と板材14とが桁軸方向Xにおいて交互に配置されるよう、板材14を中空枠110の上面部113に桁軸方向Xに向けて略等間隔で複数に設置する。
【0056】
(5)スペーサー設置工程
次に、本発明の実施形態に係る中空桁の製造方法では、
図12に示すように、中空枠設置工程で設置した中空枠110に、スペーサー15を設置するスペーサー設置工程を行う。このスペーサー設置工程では、スペーサー15の突出部152を中空枠110の側面部112に挿通させて固定する。また、スペーサー設置工程では、図示は省略するが、スペーサー15を、中空枠110の側面部112に桁軸方向Xに向けて間隔を空けて複数に設置する。
【0057】
(6)型枠設置工程
次に、本発明の実施形態に係る中空桁の製造方法では、
図13に示すように、PC鋼材設置工程で設置したPC鋼材12及び中空枠設置工程で設置した中空枠110の周囲に型枠Fを設置する型枠設置工程を行う。この型枠設置工程では、型枠Fをスペーサー15のモルタル部151の先端と接触するように設置する。これにより、コンクリート打設後に、中空桁1が中空枠110を所定の位置に配置することが可能となる。また、型枠設置工程では、コンクリート打設時に型枠Fが桁幅方向Yに開かないように、型枠Fと型枠F’とをボルト(図示省略)により強固に固定する。
【0058】
(7)中空枠固定工程
次に、本発明の実施形態に係る中空桁の製造方法では、
図14に示すように、中空枠設置工程で設置した中空枠110を、上方治具21を用いて型枠設置工程で設置した型枠F内に固定する中空枠固定工程を行う。
【0059】
この中空枠固定工程では、浮上防止治具22と側面支持治具23とを挿通させた横材24を、型枠Fの上端に載置する。そして、中空枠110の上面部113に板材14を介して浮上防止治具22の下端部222を当接した上で、位置合わせした貫通孔221と貫通孔241とに留め具25を挿通し、浮上防止治具22を中空枠110に固定する。
【0060】
また、中空枠固定工程では、側面支持治具23を中空枠110の側面部112に挟持した上で、側面支持治具23の取り付け高さを調整し、位置合わせをした側面支持治具23の貫通孔231と横材24の貫通孔241とに留め具25を挿通し、側面支持治具23を中空枠110に固定する。
【0061】
そして、中空枠固定工程では、型枠Fの上端に載置した横材24の桁幅方向Yの両端を、型枠Fにボルト(図示せず)で固定することで、中空枠110を型枠F内に固定する。また、中空枠固定工程では、図示は省略するが、浮上防止治具22と側面支持治具23とを、中空枠110に桁軸方向Xに向けて略等間隔で複数に設置し、中空枠110を型枠F内に順次固定する。
【0062】
(8)コンクリート打設工程
次に、本発明の実施形態に係る中空桁の製造方法では、
図15に示すように、前述した型枠Fの内側に桁軸方向Xに向けて順次コンクリートを打設するコンクリート打設工程を行う。また、コンクリート打設時に中空枠110にかかる浮力と側圧とをなるべく均等にするために、中空枠110の桁幅方向Yの両側からコンクリートを交互に打設する。
【0063】
(9)治具撤去工程
次に、本発明の実施形態に係る中空桁の製造方法では、
図16に示すように、コンクリート打設工程で打設したコンクリートが硬化する前に、浮上防止治具22と側面支持治具23とをコンクリートの内部から撤去する治具撤去工程を行う。なお、この治具撤去工程では、浮上防止治具22と側面支持治具23とを撤去したことによって、打設したコンクリートの内部に撤去孔22’及び23’が形成される。この撤去孔22’及び23’をコンクリートの内部に残存させることで、中空桁1の品質に多大な悪影響をもたらすことから、次の撤去穴除去工程で撤去孔22’及び23’をコンクリートの内部から除去する。
【0064】
(10)撤去穴除去工程
次に、本発明の実施形態に係る中空桁の製造方法では、
図17に示すように、上方治具撤去工程でコンクリートの内部に形成された撤去孔22’及び23’を除去する撤去孔除去工程を行う。撤去孔除去工程では、打設したコンクリートが硬化する前に、撤去孔22’及び23’に振動機Vを挿入し、振動締固めを行う。これにより、撤去孔22’及び23’をコンクリートから完全に除去することが可能となる。その後、コンクリートの天端処理や養生を行うが、これらは従来方法と略同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0065】
(11)型枠撤去工程
次に、本発明の実施形態に係る中空桁の製造方法では、前述した型枠Fの内部に打設したコンクリートが硬化した後に型枠F、F’を撤去する型枠撤去工程を行う。型枠撤去工程では、型枠F、F’を撤去するとともに、中空枠110を撤去する。このとき、中空枠110の内部に挿通させたスペーサー15の突出部152も合わせて撤去する。型枠F、型枠F’の撤去後に、PC鋼材12を切断し、PC鋼材12の緊張を開放することでPC鋼材12にプレストレスを付与することにより、本実施形態に係る中空桁の製造方法が完了する。
【0066】
上述したようなコンクリート打設工程では、型枠Fの内側に桁軸方向Xに向けて順次コンクリートを打設するため、中空枠110が受ける浮力と側圧とが中空枠110の桁軸方向Xで異なることとなり、中空枠110が浮上しようとし、中空枠110の桁軸方向Xにおいて傾斜しようとする。
【0067】
また、コンクリート打設工程では、コンクリート打設時に中空枠110にかかる浮力と側圧とをなるべく均等にするために、型枠Fの内側に中空枠110の桁幅方向Yの両側からコンクリートを交互に打設する。しかし、型枠F内にコンクリートを順次打設していく以上、中空枠110にかかる浮力と側圧とを完全に均等にすることはできず、中空枠110が受ける浮力と側圧とが中空枠110の桁幅方向Yの中心線として左右で異なることとなる。このような浮力と側圧とが中空枠110の下端側に作用することにより、中空枠110が、中空枠110の桁軸方向Xを中心軸として回転しようとする。
【0068】
加えて、中空枠110の下面部111が断面視で略V字状に形成されているため、浮力が桁幅方向Yに分散されるとともに、側圧が下面部にも作用することとなり、断面視で平坦に形成されるよりも、中空枠110の桁軸方向Xを中心軸として回転しようとする作用が大きくなる。
【0069】
このように、コンクリート打設工程では、型枠Fの内側にコンクリートを打設することで、中空枠110には、浮力及び側圧が作用するため、中空枠110の桁軸方向Xにおいて傾斜しようとするとともに、中空枠110の桁軸方向Xを中心軸として回転しようとする。
【0070】
しかし、本発明の実施形態に係る中空桁の製造方法によれば、中空枠110には、その桁軸方向Xにおいて傾斜しようとする作用が働くものの、中空枠110の上面部113を上方から固定する浮上防止治具22を用いるため、中空枠110が浮上するのを防止することが可能となる。
【0071】
その上、本発明の実施形態に係る中空桁の製造方法によれば、中空枠110の上面部113を上方から固定する浮上防止治具22を、桁軸方向Xに向けて間隔を空けて複数に設置するため、桁軸方向Xに向けて順次コンクリートを打設した場合であっても、中空枠110の桁軸方向Xの如何なる箇所において、中空枠110が浮上するのを防止することができ、中空枠110の桁軸方向Xにおいて傾斜するのを防止することが可能となる。
【0072】
また、本発明の実施形態に係る中空桁の製造方法によれば、中空枠110には、上述したような桁軸方向Xを中心軸として回転しようとする作用が働くものの、中空枠110の側面部112を挟持する側面支持治具23を用いるため、中空枠110が桁幅方向Yへの移動するのを拘束することができ、桁軸方向Xを中心軸として回転するのを防止することが可能となる。
【0073】
その上、本発明の実施形態に係る中空桁の製造方法によれば、中空枠110の側面部112を挟持する側面支持治具23を、桁軸方向Xに向けて間隔を空けて複数に設置するため、中空枠110の桁軸方向Xの如何なる箇所においても、中空枠110が桁軸方向Xを中心軸として回転するのを防止することが可能となる。その結果、中空桁1は、中空枠110を所定の位置に配置することが可能となる。
【0074】
加えて、本発明の実施形態に係る中空桁の製造方法によれば、中空枠110の側面部112を挟持する側方固定部材131を有する架台13を用いるため、中空枠110が桁幅方向Yへ移動するのを一層拘束することができ、桁軸方向Xを中心軸として回転するのを防止する機能をより効果的に発揮できる。
【0075】
その上、本発明の実施形態に係る中空桁の製造方法によれば、中空枠110の側面部112を挟持する側方固定部材131を有する架台13を、桁軸方向Xに向けて間隔を空けて複数に設置するため、中空枠110の桁軸方向Xの如何なる箇所においても、中空枠110が桁軸方向Xを中心軸として回転するのを防止することが可能となる。その結果、中空桁1は、中空枠110を所定の位置に配置することが可能となる。
【0076】
特に、本発明の実施形態に係る中空桁の製造方法によれば、板材設置工程では、架台設置工程で設置した架台13と板材14とが桁軸方向Xに対して交互に配置されるように板材14を設置する。これにより、架台13の側方固定部材131と、板材14を介して固定された上方治具21の側面支持治具23とが、桁軸方向Xにおいて中空枠110の側面部112を満遍なく挟持することが可能となる。この結果、中空枠110が桁幅方向Yへ移動するのを効果的に拘束でき、桁軸方向Xを中心軸として回転するのを防止する機能をより効果的に発揮することが可能となる。
【0077】
また、本発明の実施形態に係る中空桁の製造方法によれば、打設したコンクリートが硬化する前にこの撤去孔22’及び23’に振動機Vを挿入し、振動締固めを行うことにより、撤去孔22’及び23’をコンクリートから完全に除去することが可能となる。
【0078】
以上、本発明の実施形態に係る橋梁の架設方法について詳細に説明したが、前述した又は図示した実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたって具体化した一実施形態を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。