【文献】
Drug Discov. Today,2012年,Vol.17, No.15/16,pp.850-860
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
本出願は、例えば、異常な(例えば、病理学的)立体構造を有するp53タンパク質分子に特異的に(優先的に)結合し、異常な立体構造を有するp53分子の立体構造を修復するペプチドの設計、合成、及び機能的特徴付けに関する。異常な立体構造は、例えば、分子中の突然変異または他の要因に起因する分子の誤った折り畳み、または野生型もしくは突然変異p53分子のアミロイド凝集体の形成であり得る。立体構造の修復の結果、異常な立体構造によって喪失または阻害された生物学的または生化学的活性は、再活性化または修復される。例えば、阻害性ペプチドは、p53アミロイド凝集体のさらなる凝集を阻害する(遮断する)、及び/または、例えば、アポトーシスの誘発もしくは開始、細胞増殖の阻害、及び/または腫瘍縮小の誘発等のp53の機能を修復する。いくつかの実施形態では、ペプチドは、細胞へのそれらの送達を強化する細胞透過性ペプチド(CPP)に融合される。
【0010】
本発明者らは、最近、成長する凝集体を特異的に「キャップする」ように設計された短いアミノ酸阻害剤を利用して、アルツハイマー病関連タンパク質Tauの凝集及びHIVウイルス感染の精液由来のエンハンサー(SEVI)を効率的に抑止することができることを示した(Sievers et al.,2011)。したがって、癌の進行に対する大いなる効果を有すると思われるp53生物学の完全に未開拓の態様、すなわち、凝集をもたらすp53の誤った折り畳みを標的とする新たな治療ウィンドウが存在する。本発明者らは、突然変異、過剰発現、または他の細胞因子が、アミロイド凝集体の構成要素として提案される接着性の「立体ジッパー」セグメントを曝露するネイティブp53構造を不安定化し得ることを仮定した(Nelson et al.,Nature,2005、Sawaya et al.,Nature,2007)。本明細書に報告されるように、本発明者らはそのため、p53凝集体のアミロイドスパインの高解像度原子図を得て、それらを鋳型として使用して、その凝集体をキャップし、さらなるp53凝集を阻害し、それにより、癌細胞を治療に対して感作させ、アポトーシスを誘発または開始することができる活性p53のプールを生成することができる構造に基づくペプチド阻害剤を開発した。これらの合理的な構造に基づくp53凝集の阻害剤は、p53凝集状態に起因して、最も攻撃的であり、標準的治療に対して強いことが証明された腫瘍に対して有効な新たな化学療法を提供する(Xu et al.,2011、Levy et al.2011)。
【0011】
本発明は、例えば、そのような阻害性ペプチド;その中で本発明の阻害性ペプチドが細胞透過性ペプチド(CPP)に融合される分子であって、その融合分子が、本明細書において「CPP阻害剤」と称されることがある、分子;本発明の阻害性ペプチドまたはCPP阻害剤と、薬学的に許容される担体と、を含む、薬学的組成物;阻害性ペプチドまたはCPP阻害剤を使用して、異常な立体構造を有するp53分子の構造及び機能を修復し、例えば、(a)(例えば、凝集の開始を遅らせる、及び/またはp53凝集体を含む癌もしくは腫瘍を有する溶液、細胞、または対象において、凝集の量を低下させるために)p53凝集を遮断もしくは阻害する、ならびに/または(b)誤って折り畳まれたp53の折り畳みを修復し、それにより、異常な立体構造によるp53の生物学的もしくは生化学的活性を再活性化する、方法;対象に本発明の有効量のCPP阻害剤を投与すること、または、腫瘍を本発明の有効量のCPP阻害剤と接触させることを含む、凝集したp53(例えば、野生型または突然変異体の凝集したp53)を含む腫瘍を有する対象を治療するための方法;ならびに本明細書に記載の結晶構造の構造表現に基づく阻害性ペプチドまたは小分子を設計し、かつ得るための方法等のコンピュータ関連実施形態に関する。
【0012】
本発明の阻害性ペプチド及びCPP阻害剤の利点には、(1)それらが、突然変異体もしくは野生型の凝集したp53または誤って折り畳まれたp53を含有する癌細胞上でのみ選択的に活性であること、(2)それらが、折り畳まれたまたは活性p53上で効果を示さない(正常な細胞中ではp53濃度の過剰活性化または上昇がない)こと、(3)それらが、配列(例えば、突然変異)特異的ではなく、むしろ立体構造特異的であること;単一の阻害剤が、異なる凝集突然変異体に対して、ならびに野生型p53に対して作用するだろうこと、(4)それらが、相同体、ならびに例えば、タンパク質のp53ファミリーの他のメンバーであるp63及びp73を含む他のタンパク質との野生型p53の共凝集ならびにp53の凝集を遮断することができること(Xu et al,2011)、(5)それらの組成及び小さい大きさのおかげで細胞透過及びタンパク質安定性が困難な障害ではないこと、(6)それらが、予想外に安定していること:それらが、タンパク分解されず、インビボ(例えば、身体内)で機能するのに十分に長い半減期を呈すること、が挙げられる。
【0013】
本発明の1つの態様は、コンセンサス配列
によって表される阻害性ペプチド(例えば、単離されたペプチド)、またはその活性変異体である。1つの実施形態では、阻害性ペプチドは、コンセンサス配列
によって表されるか、またはその活性変異体である。阻害性ペプチドは、コンセンサス配列
で構成されてもよく、またはコンセンサス配列
で構成されてもよい。本発明の実施形態では、阻害性ペプチドは、表1に列挙される阻害性ペプチド配列のうちのいずれかで構成され得るか、またはそれを含み得る。つまり、ペプチドは、
であり得る。活性変異体を含む、先行の配列を有する阻害性ペプチドは、本明細書において「本発明の阻害性ペプチド」と称されることもある。
【0014】
本発明の別の態様は、任意にリンカー配列を介して細胞透過性ペプチド(CPP)と融合される(結合される、会合される、連結される)本発明の阻害性ペプチド(活性変異体を含む)を含むCPP阻害剤である。ペプチドは、様々な方法(例えば、化学的に連結される、またはペプチド結合を介して融合される、または他の従来の化学カップリング方法)のうちのいずれかでCPPと融合され得る。
【0015】
1つの実施形態では、CPPは、コンセンサス配列
によって表されるか、またはその活性変異体である。このコンセンサス配列によって包含される配列を含むCPP阻害剤またはその活性変異体は、本明細書において「本発明のCPP阻害剤」と称されることもある。
【0016】
本発明の別の態様は、本発明の阻害性ペプチドまたはCPPと、薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物である。そのような薬学的組成物は、本明細書において「本発明の薬学的組成物」と称されることもある。
【0017】
本明細書で使用する、単数形の「a」、「an」、及び「the」は、文脈が別途明らかに指示しない限り、複数の指示対象を含む。例えば、先行の事例では、薬学的組成物は、1つ以上の本発明の阻害性ペプチド分子またはCPPを含み得、それは同じであってもよく、または異なってもよい。
【0018】
本発明の別の態様は、p53タンパク質分子と、本発明の阻害性ペプチドまたはCPPとを含む複合体である。それらは、互いに結合され得るか、コンジュゲートされ得るか、他の方法で結びつけられ得る。p53及び阻害性ペプチドまたはCPPは、共有結合されるか、または非共有結合され得る。
【0019】
本発明の別の態様は、異常な立体構造(例えば、その異常な立体構造が、少なくとも部分的に、タンパク質の機能の喪失に関与する)を有するp53タンパク質分子の立体構造を修復するための方法であり、
異常な立体構造を有するp53分子を、有効量の本発明の阻害性ペプチドまたはCPP阻害剤と接触させることを含み、
その接触したp53が、修復された立体構造を有し、
修復された立体構造を有するp53分子が、アポトーシスの誘発、細胞増殖の阻害、及び/または腫瘍縮小の誘発から選択される活性(例えば、修復された活性)を呈する。
【0020】
本方法の1つの実施形態では、接触したp53タンパク質分子は癌を有する対象中にあり、修復された立体構造を有するp53分子は、対象における癌細胞の増殖を阻害するか、及び/または対象における腫瘍縮小を誘発する。
【0021】
本発明の別の態様は、細胞を、有効量の本発明の阻害性ペプチドもしくはCPP阻害剤、または本発明の阻害性ペプチドもしくはCPP阻害剤を含む薬学的組成物と接触させることを含む、異常な立体構造を持つp53に起因する(例えば、それにより引き起こされる)細胞増殖(例えば、癌細胞の増殖)を予防及び/または阻害するための方法である。
【0022】
本発明の別の態様は、対象に、本発明の薬学的組成物を有効量投与し、それによって、対象において癌細胞の増殖を阻害するか、及び/または対象において腫瘍を縮小させることを含む、異常な立体構造を有するp53に関連する(例えば、それにより媒介される)癌を有する対象を治療するための方法である。
【0023】
本発明の別の態様は、対象に、合計で有効量の本発明の薬学的組成物を含む用量(例えば、複数の注射によるもの等の複数の用量)を投与し、それによって、対象における腫瘍の発症を低減または予防することを含む、p53をコードする突然変異遺伝子、それにより癌の発症し易さ(例えば、Li−Fraumeni症候群)を有する対象を治療する方法である。
【0024】
本発明の別の態様は、p53の凝集を阻害する阻害性ペプチドを同定するためのコンピュータ実施方法であり、
標的ポリペプチド由来のp53セグメントTIITLE(SEQ ID NO:20)もしくはLTIITLE(SEQ ID NO:21)のジッパー形成配列または当該ジッパー形成配列の鏡体を含む、鋳型ペプチド配列を同定するステップであって、当該ジッパー形成配列が凝集して立体ジッパーになる、ステップと、
コンピュータ上で、当該鋳型ペプチド配列を用いて好ましい立体及びエネルギー分子間相互作用を形成する少なくとも1つの相補的ペプチド配列を設計するステップであって、当該相互作用が当該立体ジッパーの上端または下端の一方または両方で生じる、設計するステップと、
当該相補的配列、当該相補的配列の鏡体、当該相補的配列のペプチド模倣物、及び当該相補的配列の当該鏡体のペプチド模倣物から成る群から選択される、候補阻害性ペプチド化合物を同定するステップと、を含む。
【0025】
本発明の別の態様は、任意に容器内にパッケージ化された本発明の阻害性ペプチドまたはCPP阻害剤を含むキットである。
【0026】
本発明の別の態様は、本発明の阻害性ペプチドを作製する方法であって、それを化学的に合成するか、またはそれを組換えで生成することを含む、その方法である。
【0027】
本明細書の実施例に記載されるように、p53の線維形成セグメントの原子構造の決定に基づいて、本発明者らは、p53凝集を減退させる一連のペプチド阻害剤を設計した。本発明者らは、p53の成長する凝集体を特異的に「キャップする」ペプチド阻害剤を設計した。
【0028】
ZipperDBアルゴリズム(Goldschmidt et al.2010)を使用して、本発明者らは、結晶化可能アミロイド形成セグメントを同定した。本発明者らは、p53
252−258及びp53
253−258セグメントを化学的に合成し、それらを結晶化して、マイクロ結晶学によってそれらの三次元構造を決定した(
図1)。構造は、「フェイストゥバック(face−to−back)」(p53
252−258に関して)及び「フェイストゥフェイス(face−to−face)」(p53
253−258に関して)方向で疎水性側鎖を介して噛み合う平行整列(parallel in−register)のβ鎖及びβシートを有する典型的な立体ジッパーアーキテクチャを示した(Sawaya et al,Nature,2007)。
【0029】
本発明者らは、それらのRosettaに基づく方法(Sievers et al,Nature,2011)を適用し、p53
252−258構造を鋳型として使用してp53凝集を妨害する阻害剤を設計した。本発明の他の実施形態では、p53
253−258構造を鋳型として使用して、阻害剤を設計する。
【0030】
表1は、本方法で得られる16個の代表的な阻害剤配列の一覧を示す。
【0031】
(表1)ペプチド配列を含むアミロイド生成性p53凝集の設計された阻害剤の一覧。INH−1Rは、設計された最初の配列である。INH−1R及びすべての他の変異体を合成し、細胞透過性ペプチド(CPP)としてポリアルギニンタグと、及び内在性p53タンパク質配列に由来する短いリンカー(配列:RPI)と融合した。阻害設計された配列は、太字で示し、ポリアルギニンタグ及びリンカーは、通常の文字で示す。
表1の阻害剤配列は、表の2列目の上から下へ向かってSEQ ID NO:4〜SEQ ID NO:17、10、及び18である。CPP阻害剤配列は、表の3列目の上から下に向かってSEQ ID NO:22〜SEQ ID NO:35、28、及び36である。
【0032】
本発明のペプチド阻害剤は、本明細書に示されるp53が媒介する機能のうちの1つ以上を呈する凝集していないまたは折り畳まれたp53分子等の他のタンパク質標的(意図しない標的)との結合と比較して、異常な立体構造(例えば、アミロイド原線維もしくは線維として凝集するか、あるいは部分的にもしくは完全に折り畳まれていないかまたは誤って折り畳まれた)を有するp53に特異的(選択的、優先的)に結合する。実際に、本発明のペプチド阻害剤と凝集していないまたは折り畳まれたp53分子との間の結合は検出することができない。
【0033】
他の好適なペプチド変異体には、例えば、Leu−His−Arg−Ile−Tyr−Leu−Glu(SEQ ID NO:37)及びLeu−Tyr−Ile−Arg−Ile−Leu−Arg(SEQ ID NO:38)が挙げられる。
【0034】
この構造分析に基づき、1つのコンセンサス配列は、表1に示される16個の配列を考慮して、
である。別の実施形態では、コンセンサス配列は、
である。残基番号1、6、及びより少ない程度に番号3は、鋳型構造との最も少ない接触を有し、このため、7個の残基のうち最も可変である。
【0035】
上述の配列の活性変異体もまた含まれる。これらは、本明細書に示される阻害性ペプチドの特性(例えば、立体構造依存的であり、配列非依存的に凝集したp53に特異的に結合する能力、p53のp53または他のタンパク質との線維形成を阻害する能力、例えば、溶液もしくは細胞、培養物、または対象における癌細胞を含む細胞の増殖を阻害する能力、アポトーシスを誘発または開始する能力、あるいは、腫瘍を縮小させる能力)を保持する変異体である。本明細書で使用される場合、線維形成は、線維またはアミロイド原線維等の原線維の形成を指す。
【0036】
好適な活性変異体には、ペプチド模倣物化合物を含む(例えば、本明細書に開示される方法に従って、ペプチドの構造及び/または結合活性(例えば、水素結合及び疎水性パッキング相互作用等)を模倣するように設計されたものを含む、天然の模倣されたペプチドの生化学的及び/または生物学的作用(複数可)を模倣することができる非ペプチド構造要素を含有する任意の化合物)。本発明の阻害性ペプチドまたはCPP阻害剤(それらの活性変異体を含む)は、本明細書において「ペプチド化合物」または「化合物」と称されることもある。
【0037】
1つの実施形態では、阻害性ペプチドの活性変異体は、開始阻害性ペプチドのN末端、C末端のいずれか、またはその両方で、1〜3(例えば、1、2、または3)個のアミノ酸分、短縮される。別の実施形態では、活性変異体は、開始阻害性ペプチドのC末端で1、2、3、または4個のアミノ酸分、伸ばされる(延長される)。
【0038】
様々な他の種類の活性変異体が包含される。いくつかの実施形態では、コンセンサス配列において上述されたもの以外のアミノ酸が置換される。これらのアミノ酸は、タンパク質分解に対するペプチド阻害剤の保護、または他の方法でペプチドの安定化を補助することができ、及び/または、他の方法における望ましい薬動力学特性に寄与することができる。いくつかの実施形態では、非天然アミノ酸は、阻害剤をより緊密に標的に結合させ、これは、側鎖が、それとの水素結合及び/または無極性相互作用を最適化するためである。加えて、非天然アミノ酸は、例えば、阻害定数等の値を測定するために使用され得る強い蛍光マーカー等の検出可能なマーカーを導入する機会を提供する。例えば、ペプトイド、βアミノ酸、Nエチル化アミノ酸、及び小分子模倣物等のペプチド模倣物も含まれる。
【0039】
1つの実施形態では、非天然アミノ酸は、配列中でアミノ酸と置換される。100個を超える非天然アミノ酸が、市販されている。これらには、例えば、以下のものが挙げられる。
LEUを置換し得る非天然アミノ酸:
Fmoc−L−シクロヘキシルグリシン 161321−36−4
Fmoc−L−フェニルグリシン 102410−65−1
Fmoc−4−ヒドロキシ−D−フェニルグリシン 178119−93−2
Fmoc−L−α−t−ブチルグリシン 132684−60−7
Fmoc−シクロペンチル−Gly−OH 220497−61−0
Fmoc−L−2−インダニルグリシン 205526−39−2
THRを置換し得る非天然アミノ酸:
Fmoc−Thr(tBu)−OH 71989−35−0
Fmoc−(RS)−2−アミノ−3−
ヒドロキシ−3−メチルブタン酸 105504−72−1
ILEを置換し得る非天然アミノ酸:
Fmoc−アロ−Ile−OH 251316−98−0
Boc−N−Me−アロ−Ile−OH 136092−80−3
Fmoc−Homoleu−OH 180414−94−2
GLUを置換し得る非天然アミノ酸:
Fmoc−γ−カルボキシ−L−グルタミン酸 111662−64−7
Fmoc−L−α−アミノスベリン酸 218457−76−2
ARGを置換し得る非天然アミノ酸:
Fmoc−Nω−ニトロ−L−アルギニン 58111−94−7
Fmoc−L−シトルリン 133174−15−9
TYRを置換し得る非天然アミノ酸:
Fmoc−3−アミノ−L−チロシン 726181−70−0
Fmoc−3−ニトロ−L−チロシン 136590−09−5
Fmoc−3−メトキシ−L−チロシン
Fmoc−3−ヨード−L−チロシン 134486−00−3
Fmoc−3−クロロ−L−チロシン 478183−58−3
Fmoc−3,5−ジブリモ−L−チロシン 201484−26−6
LYSを置換し得る非天然アミノ酸:
Fmoc−Lys(レトロ−Abz−Boc)−OH 159322−59−5
Fmoc−Lys(Mca)−OH 386213−32−7
Fmoc−(Nδ−4−メチルトリチル)−L−オルニチン 343770−23−0
N−α−Fmoc−N−ε−(d−ビオチン)−L−リジン 146987−10−2
【0040】
別の実施形態では、L−アミノ酸のうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、または7個)が、Dアミノ酸で置換される。
【0041】
別の実施形態では、N−メチル化残基のうちの1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、または7個)が、ペプチドに含まれる。代表的なそのようなペプチドには、例えば、以下のものが挙げられる。
【0042】
本発明の阻害性ペプチドは、例えば、L−アミノ酸、D−アミノ酸、非天然アミノ酸、またはそれらの組み合わせを含んでもよい。
【0043】
1つの実施形態では、阻害剤は、阻害剤を設計するための基礎として、本明細書に示されるp53の線維形成セグメントのうちの1つの原子構造を使用して、Jiang et al.eLife 2013(これは、特に本方法に関して、参照により本明細書に組み込まれる)によって記載される方法によって設計された小分子である。Jiangらの方法によって同定され得る好適な小分子は、当業者には明らかだろう。
【0044】
本発明の1つの実施形態では、本発明のペプチドは、そのアミノ酸の1、2、または3個が、上述の非天然アミノ酸等の天然に生じない側鎖を有するアミノ酸で、または、Jiang et al.eLife 2013によって設計された小分子の架橋(例えば、Lys残基のエプシロンアミノ基を介して)によって修飾された側鎖を有するアミノ酸で置換されるように、修飾される。いくつかの代表的な線維結合分子が、以下に示される。これらの活性変異体は、p53の成長する凝集体をキャップするだけでなく、修飾側鎖を介して、立体ジッパーの側面に結合し(に対してクランプし)、それによって、ペプチドの阻害性活性を強化する。
【0045】
Jiang et al.eLife 2013によって設計される線維結合化合物には、以下のものを含む。
【0046】
本発明の阻害性ペプチドの細胞透過性を強化するために、それらは、様々な細胞透過性ペプチド(CPP)のうちのいずれかに融合され得る。CPPは、典型的には、リジンもしくはアルギニン等の正荷電アミノ酸の高い相対存在量を含むか、または極性/荷電アミノ酸及び非極性疎水性アミノ酸の交互のパターンを含む配列を有するアミノ酸組成物を有する。これら2つの種類の構造は、それぞれ、ポリカチオン性または両親媒性と称される。CPPの第3のクラスは、低い正味荷電を有するか、または細胞取り込みに欠かせない疎水性アミノ酸基を有する無極性残基のみを含有する疎水性ペプチドである。本発明の阻害性ペプチドと融合され得るいくつかの典型的なCPPを表2に示す。
【0047】
(表2)
・ 名称 配列
参照−原本または再考
【0048】
別の実施形態では、CPPは、ポリD(
1−16)である。
【0049】
一般的に、CPPの長さは、分子が細胞に進入した後の安定性及び薬動力学特性を改善するために、例えば、約30個未満のアミノ酸のように、やや短いことが望ましい。
【0050】
いくつかの実施形態では、CPPは、本発明のペプチドに直接結合される(融合される)。他の実施形態では、高荷電のCPPは、阻害剤がその活性を保持することを可能にするために、リンカーを用いて阻害剤ペプチドから分離することが望ましい。様々なリンカーのうちのいずれかが使用され得る。リンカーの大きさは、例えば、1〜7個、またはさらに多くのアミノ酸(例えば、1、2、3、4、5、6、もしくは7個のアミノ酸)の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、リンカーは、内在性p53配列に由来する配列を有する。例えば、リンカーは、GGMNRRPI(SEQ ID NO:81)、またはRPIのN末端側の1、2、3、4、または5個の連続するアミノ酸が阻害性ペプチドに融合されるその切頭型バージョンであってもよい。本明細書に示される実験で使用されるRPIリンカーは、そのようなリンカーの1つである。
【0051】
本発明のいくつかの実施形態では、CPP阻害剤は、特異的に特定の癌型を標的とするためにさらに改変される。例えば、
(1)1つの実施形態は、癌特異的プロテアーゼによるタンパク質分解切断後のみ細胞に進入することができる活性化可能なCPPであるACPPを使用する、Roger Tsien及び共同作業者によって説明される手法(Olson et al,PNAS 2010)の修正である。この実施形態では、阻害剤は、目的とする癌によって主に発現されるプロテアーゼに特異的な配列を利用して特定の癌型を標的とする。
(2)別の実施形態は、Hatakeyama及び共同作業者によって提唱される戦略(Hatakeyama et al,PNAS 2011)の修正である。これらの著者は、癌血管系マーカーであるアネキシン1に結合する炭水化物模倣ペプチドIF7(配列IFLLWQR(SEQ ID NO:82))を使用して、標的化癌細胞送達を得た。この実施形態では、好適な腫瘍血管系マーカー結合ペプチドは、本発明のCPP阻害剤に融合される。
(3)別の実施形態では、阻害剤は、ナノ粒子とコンジュゲートされる。様々な好適なナノ粒子のうちのいずれかは、当業者には明らかだろう。これらには、例えば、空のボールトシェル、リポソーム、高分子ナノ粒子、デンドリマー等が挙げられる。
【0052】
本発明の1つの実施形態では、本発明の阻害性ペプチドまたはCPP阻害剤は、本明細書に示される方法等の従来の技法を使用して単離または精製される。「単離される」とは、通常、それに関連付けられる成分、例えば、ペプチドが合成された後に存在する成分から分離されることを意味する。単離されたペプチドは、ペプチド配列を含有するタンパク質の切断生成物であってもよい。「精製された」阻害性ペプチドは、例えば、90%、95%、98%、または99%超純粋であり得る。
【0053】
本発明の実施形態では、阻害性ペプチドまたはCPP阻害剤は、検出可能に標識される。標識されたペプチドは、例えば、阻害性ペプチドの作用機序及び/または細胞部位をより良く理解するために使用することができる。検出を可能にする(例えば、検出可能なシグナルを提供する、または検出され得る)好適な標識は、従来型であり、当業者に周知である。好適な検出可能な標識には、例えば、放射性活性剤、蛍光標識等が挙げられる。そのような標識をタンパク質に付着するための方法またはそれらの存在及び/もしくは量を検出するためのアッセイは、従来型であり、周知である。
【0054】
本発明の阻害性ペプチドまたはCPP阻害剤は、様々な当該技術分野において認識されている方法のうちのいずれかによって合成することができる(例えば、化学的に、または好適な宿主細胞中での組換え発現によって)。本発明の方法で使用するための阻害性ペプチドの十分な量を生成するために、実践者は、例えば、従来の技法を使用して、ペプチドをコードする核酸(例えば、DNA)を生成し、発現ベクター中に挿入することができ、その中で、配列は、プロモーターまたはエンハンサー等の発現制御配列の制御下にあり、次いで、ペプチドの合成を命令することができる。例えば、(a)末端に好適なリンカーを有するDNAを新たに合成し、ベクター中にクローニングすることができる、(b)全DNA配列をベクター中にクローニングすることができる、または(c)重複オリゴヌクレオチドから開始し、それらを従来のPCRで作られる遺伝子合成方法によって結合し、結果として得られるDNAをベクター中に挿入することができる。好適な発現ベクター(例えば、プラスミドベクター、ファージを含むウイルス性ベクター、人工ベクター、酵母ベクター、真核性ベクター等)が、ベクターを作製する、目的とする配列を挿入する、その核酸でコードされたタンパク質を発現する、及び発現されたタンパク質を単離または精製するための方法と同様に、当業者には明らかだろう。
【0055】
本発明の別の態様は、阻害性ペプチドまたはCPP阻害剤のうちの1つ以上と、薬学的に許容される担体と、を含む、薬学的組成物である。薬学的組成物の成分は、例えば、放射性標識もしくは蛍光標識で、またはポジトロン放出分光法(PET)による検出のために好適な標識で、検出可能に標識されてもよい。いくつかの実施形態では、阻害性ペプチドまたはCPP阻害剤は、所望の目的に対する有効量で存在する。
【0056】
「薬学的に許容される」とは、薬学的組成物の調製において有用であることが、一般的に安全で、無毒性であり、生物学的に望ましくないことはなく、それ以外でも望ましくなくないことはないことを意味し、獣医学的ならびにヒトの薬学的使用に許容されることを含む。例えば、化合物の「薬学的に許容される塩」は、本明細書に定義されるように薬学的に許容される塩及び親化合物の所望の薬理作用のある活性を保有する塩を意味する。
【0057】
本発明の他の態様は、任意に、好適なリンカーによって阻害性ペプチドから任意に分離されるCPP配列に結合される、本発明の阻害性ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。本発明の実施形態では、ポリヌクレオチドは、(例えば、トランスフェクションによる)好適な細胞への導入後にコードされたタンパク質の生成を促進するように、調整制御配列(例えば、プロモーターまたはエンハンサー)に作動可能に連結され、細胞は発現ベクターを含み、本発明の阻害性ペプチドを作製する方法は、細胞を培養すること及び結果として生成されたポリペプチドを回収することを含む。
【0058】
本出願の全体を通して使用される、「約」とは、値のプラスまたはマイナス5%を意味する。
【0059】
本発明の別の態様は、本明細書に示される方法のうちのいずれかを行うためのキットである。キットは、好適な量の本発明の阻害性ペプチドまたはCPP阻害剤、ペプチドまたはCPP阻害剤を生成するための試薬、それらの機能もしくは活性を測定するためのアッセイのための試薬等を含むことができる。本発明のキットは、方法を実施する為の使用説明書を含んでもよい。本発明のキットの他の任意の要素には、好適な緩衝液、媒質成分等、本明細書に示される結晶構造のうちの1つの構造表現を提供するコンピュータもしくはコンピュータ可読媒体、容器、またはパッケージ材料が挙げられる。好適な制御を実施するための試薬も含まれ得る。キットの試薬は、例えば、凍結乾燥形態または安定化液体で、その中で試薬が安定する容器内にあってもよい。試薬はまた、単一使用形態、例えば、対象に投与するための単一反応形態であってもよい。
【0060】
本発明の1つの態様は、本明細書に示される方法を使用して、p53の凝集を阻害する阻害性ペプチドを設計するためのコンピュータ実施方法である。例えば、方法は、p53セグメントTIITLE(SEQ ID NO:20)もしくはLTIITLE(SEQ ID NO:21)のジッパー形成配列またはジッパー形成配列の鏡体(ここでジッパー形成配列は凝集して立体ジッパーになる)を含む鋳型ペプチド配列を(例えば、コンピュータを用いて)同定することと、コンピュータ上で、鋳型ペプチド配列を用いて好ましい立体及びエネルギー分子間相互作用を形成する少なくとも1つの相補的ペプチド配列を設計することであって、相互作用が当該立体ジッパーの上端または下端の一方または両方で生じる、設計することと、補的配列、相補的配列の鏡体、相補的配列のペプチド模倣物、及び相補的配列の鏡体のペプチド模倣物から成る群から選択される、候補阻害性ペプチド化合物を(例えば、コンピュータを用いて)同定することと、を含み得る。この種類の方法の詳細は、特に、目的とするアミロイドを形成する標的ポリペプチドの凝集を阻害する阻害性ペプチド化合物を設計する方法に関して、参照により本明細書にその全体が組み込まれる米国特許第12/702,175号で出願された特許において記載される。
【0061】
本発明の実施形態では、この方法によって設計される阻害性化合物(例えば、ペプチド化合物)は、合成され、例えば、本明細書に示される方法のうちの1つを使用して、p53の凝集に結合する、及び/またはそれを阻害する能力に関してスクリーニングされる。
【0062】
本発明の候補の阻害性ペプチドまたはCPP阻害剤の特徴付けは、様々な従来の方法のうちのいずれかによって行うことができる。例えば、ペプチドまたはCPP阻害剤は、p53凝集を低減させるか、もしくは阻害する、またはp53を再活性化する能力に関してアッセイすることができる。次いで、機能性p53は、例えば、細胞中でアポトーシスをもたらすことができる。アッセイは、インビトロまたはインビボで行うことができる。
【0063】
1つの代表的なインビトロアッセイは、
図3に示されるチオフラビンTアッセイである(Naiki,H.,Higuchi,K.,Hosokawa,M.,and Takeda,T.(1989) Fluorometric determination of amyloid fibrils in vitro using the fluorescent dye,thioflavine T.Anal.Biochem.,177,244−249)。アッセイは、LTIITLE(SEQ ID NO:21)等の標的配列ペプチドを使用して実施することができ、または完全長p53(組換えp53等)を使用して実施することができる。両方の場合において、ペプチド(例えば、LTIITLE)(SEQ ID NO:21)またはp53は、チオフラビンT及び濃度の上昇した阻害剤を有する溶液中に配置される。アッセイは、マルチウォールプレート(例えば、384ウェルプレート)で実施される。この色素は、アミロイド特異的であり、アミロイド凝集体に結合した時にのみ蛍光を発する。蛍光は、例えば、プレートリーダーを用いて経時的に測定される。阻害は、凝集の開始の遅延及び/または形成された凝集体のより少ない総量として検出される。
【0064】
以下のアッセイは、細胞中で実施することができる従来の機能的アッセイのである。
【0065】
1.p53凝集の低減
p53凝集は、p53不活性化の指標として癌細胞中で測定される(Xu et al,2011;Lasagna−Reeves et al,2013)。スクリーニングは、例えば、以下の従来の方法のうちの1つを使用して、阻害剤の有無に関係なく存在する凝集体の総量の変化に対して実施される。
・ 市販のアミロイド立体構造特異的抗体、例えば、A11及びOCを使用する細胞の免疫染色
・ チオフラビンT及びCongo Red等のアミロイド特異的色素による細胞の染色
・ OCまたはA11抗体を使用する細胞ライセート上でのドットブロット
・ 高分子量p53凝集体の存在/不在を確認するための、p53特異的抗体を使用する、細胞ライセート上でのウェスタンブロットと連結したネイティブページゲル
・ 異常にまたは正常に折り畳まれたp53の間を識別することができる異なる市販のp53抗体を使用する細胞の免疫染色
【0066】
2.p53機能の再活性化
記載されたように、p53機能は、典型的には、凝集によって阻害される(Xu et al,2011;Lasagna−Reeves et al,2013)。p53不活性化及び再活性化は、以下の従来の手法を用いて、異なる濃度の阻害剤の存在下で試験される。
・ RT−PCRまたはRNAseqによるいくつかのp53標的の転写物を定量化することによって測定されるp53の転写活性の修復
・ タンパク質レベルでいくつかのp53標的をウェスタンブロットを介して検出することによって、測定されるp53の転写活性の修復
・ 軟寒天培養コロニー形成アッセイによる、細胞増殖スクリーニングを抑止する阻害剤の能力
・ BrdU取り込みまたはKi67染色の低減による、細胞増殖スクリーニングを抑止する阻害剤の能力
・ MTTまたはMTSアッセイにより測定される、細胞死を誘発する阻害剤の能力
・ カスパーゼアポトーシスキットまたはFACSと組み合わされたアネキシンV染色により測定される、アポトーシスを誘発する阻害剤の能力
【0067】
細胞は、阻害剤単独で、またはキナーゼに対する他の標的剤等の従来の化学療法ならびに他の化学療法分子もしくは他の分子と組み合わせて処置される。先行する方法のうちのいずれかは、候補の阻害性ペプチドを、例えば、p53に結合する、p53線維形成を阻害する、または、インビトロもしくはインビボで癌細胞を化学療法に対して感作させるそれらの能力に関して試験することをさらに含んでもよい。
【0068】
本発明の1つの態様は、p53アミロイドプロトフィラメントを有効量の本発明のCPP阻害剤の阻害性ペプチドのうちの1つ以上と接触させることを含む、p53凝集を低減させるか、またはそれを阻害するための方法である。そのような方法は、インビトロ(溶液中で)またはインビボ(例えば、培養中の細胞もしくは対象中で)で行われ得る。
【0069】
本発明の別の態様は、異常な立体構造を有するp53タンパク質分子の立体構造を修復するための方法である。本明細書で使用される場合、「異常な立体構造」は、野生型立体構造とは異なり、分子の機能の喪失をもたらす、立体構造を指す。例えば、異常な立体構造を有するp53は、(例えば、癌細胞の)細胞増殖を阻害する、アポトーシスを誘発もしくは開始する、または腫瘍を縮小させる能力を喪失し得る。そのような異常な立体構造は、本明細書において、病理学的立体構造と称されることもある。異常な立体構造は、他のp53分子または他のタンパク質と、p53分子のアミロイド凝集体または線維(原線維)の形態をとることもできる。あるいは、異常な立体構造は、突然変異または他の要因に起因するp53タンパク質の誤った折り畳み(例えば、部分的もしくは完全なアンフォールディング)の形態をとることができる。あらゆる特定の機序に束縛されるものではないが、誤った折り畳みを促進する突然変異は、ネイティブp53構造を不安定化して、疎水性接着セグメントp53
252−258に、溶媒曝露を受けさせることが示唆される。セグメントは、急速に、他のp53分子と相互作用し、タンパク質凝集及び不活性化をもたらす。これらのセグメントが互いに相互作用することを遮断する凝集阻害剤を生成することによって、凝集プロセスが停止され、及び/または、阻害剤はまた、誤って折り畳まれたp53を活性立体構造になるよう介添えし、それにより、細胞死応答を駆動することができる機能的及び可溶性p53のプールを修復する可能性が示唆される。
【0070】
異常な立体構造を有するp53タンパクの立体構造を修復するためのこの方法では、異常な立体構造を有するp53分子を、有効量の本発明の阻害性ペプチドまたはCPP阻害剤と接触させる。接触されたp53分子は、修復された立体構造を有し、例えば、アポトーシスの誘発もしくは開始、細胞増殖の阻害、及び/または腫瘍縮小から選択される修復もしくは再活性化された生物学的または生化学的活性を呈する。
【0071】
本発明の別の態様は、p53タンパク質の異常な立体構造に由来するp53タンパク質の生物学的または生化学的活性(機能)を再活性化または修復するための方法である。本方法は、異常な立体構造を有するp53タンパク質分子を、有効量の本発明の阻害剤ペプチドまたはCPP阻害剤と接触させることを含み、ここで、p53分子の生物学的または生化学的活性は、アポトーシスの誘発もしくは開始、及び/または細胞増殖の阻害、及び/または腫瘍縮小の誘発である。異常な立体構造を有するp53タンパク質の接触の結果として、p53分子の喪失した生物学的または生化学的活性が再活性化または修復される。
【0072】
本発明の別の態様は、p53タンパク質の異常な立体構造に由来するp53タンパク質の生物学的または生化学的活性(機能)の喪失を阻害または予防するための方法である。本方法は、異常な立体構造を有するp53タンパク質分子を、有効量の本発明の阻害剤ペプチドまたはCPP阻害剤と接触させることを含み、ここで、p53分子の生物学的または生化学的活性は、アポトーシスの誘発もしくは開始、及び/または細胞増殖の阻害、及び/または腫瘍縮小の誘発である。異常な立体構造を有するp53タンパク質の接触の結果として、p53分子の活性の喪失が、阻害または予防される。
【0073】
本発明の別の態様は、p53が異常な立体構造(例えば、凝集したまたは誤って折り畳まれた)を有する癌または腫瘍等のp53の機能の喪失によって媒介される疾患または病状を有する対象を治療するための方法である。つまり、癌は、異常な立体構造を有するp53と関連する。本方法は、対象に、有効量の1つ以上の本発明のCPPを投与することを含む。いくつかの実施形態では、CPP阻害剤のうちの1つ以上のカクテルが使用される。いくつかの実施形態では、CPP阻害剤は、対象の化学療法薬またはレジメンへの応答を強化するために、従来の化学療法薬またはレジメンと併せて使用される。典型的なそのような化学療法薬またはレジメンには、例えば、パクリタキセル、タキソール、ゲムシタビン、シスプラチン、カルボプラチン、ラパマイシン、ドキソルビシン、5−フルオロウラシル、トラスツズマブ、イマチニブ、ソラフェニブ、ベムラフェニブ、ダサチニブ、クリゾチニブ、ゲフィチニブ、エルロチニブ、カルフィルゾミブ、PRIMA1−MET、MI−773、ヌトリン、及び17AAGが挙げられる。
【0074】
本発明の化合物または薬学的組成物の「有効量」は、測定可能な量の所望の結果、例えば、p53凝集の阻害を引き出すことができる量、診断的アッセイについて、p53凝集等の関心対象の標的を検出することができる量、または治療方法において、治療される疾患もしくは病状の症状を、測定可能な量で低減もしくは回復させることができる量である。
【0075】
「対象」とは、病状または疾患が本発明の方法によって治療され得る、異常な立体構造を持つp53(例えば、p53が、凝集した、または誤って折り畳まれた)を有する任意の対象(患者)であり得る。本発明の1つの実施形態では、対象は、突然変異体p53に関連する、Soussi et al.,2006に記載の癌のうちの1つ等の癌を有する。典型的な対象には、実験動物、イヌ、ネコ、非ヒト霊長動物、及びヒトを含む哺乳動物等の脊椎動物が挙げられる。
【0076】
本発明の阻害剤は、例えば、経口、経鼻、腹腔内、もしくは非経口的、静脈内、筋肉内、局所、もしくは皮下経路による、または組織への注射による選択された投薬経路に適応する様々な形状の薬学的組成物として製剤化され得る。
【0077】
化合物の投与に好適な経口形状には、ロゼンジ、トローチ、錠剤、カプセル、発泡錠、経口崩壊錠、胃での保持時間を増加するように設計される浮遊錠(floating tablet)、頬パッチ、及び舌下錠が挙げられる。
【0078】
本発明の化合物は、例えば、経口で、不活性希釈剤もしくは吸収可能な食用担体等の薬学的に許容されるビヒクルと組み合わせて、または吸入もしくは吹送によって全身的に投与されてもよい。それらは、コーティングされた、もしくはコーティングされていない硬または軟シェルゼラチンカプセルに封入されてもよく、錠剤に押し固められてもよく、または患者の食事の食糧に直接組み込まれてもよい。経口治療投与に関して、化合物は、1つ以上の賦形剤と合わされてもよく、摂取可能な錠剤、口腔錠、トローチ、カプセル、エリキシル剤、懸濁液、シロップ、水等の形状で使用されてもよい。ヒトへの投与に適した組成物に関して、「賦形剤」という用語は、限定されないが、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,Lippincott Williams & Wilkins,21st ed.(2006)(以下、Remington's)に記載の成分を含むことを意味する。
【0079】
化合物は、微細な不活性粉末担体と合わされてもよく、対象によって吸入もしくは吹送されてもよい。そのような組成物及び調製物は、少なくとも0.1%の化合物を含むべきである。組成物及び調製物のパーセンテージは、当然のことながら、変化してもよく、好都合には、所与の単位剤形の重量の約2%〜約60%であり得る。
【0080】
錠剤、トローチ、丸剤、カプセル等は、次のものも含み得る:タラカントガム、アカシア、トウモロコシデンプン、もしくはゼラチン等の結合剤、リン酸二カルシウム等の賦形剤、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、アルギン酸等の崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム等の潤滑剤、ならびにスクロース、フルクトース、ラクトース、もしくはアスパルテーム等の甘味料またはペパーミント、ウィンターグリーンの油、もしくはチェリー香料等の着香料が添加されてもよい。単位剤形がカプセルの場合、上記種類の材料に加えて、植物油またはポリエチレングリコール等の液体担体を含有してもよい。シロップまたはエリキシル剤は、活性化合物、甘味料としてスクロースまたはフルクトース、防腐剤としてメチル及びプロピルパラベン、チェリー風味またはオレンジ風味等の色素及び香料を含有してもよい。
【0081】
種々の他の材料は、コーティングとして、または他の方法で固形単位剤形の物理的形状を改変するために、存在し得る。例えば、錠剤、丸剤、またはカプセルは、ゼラチン、蝋、セラック、または糖等でコーティングされ得る。当然のことながら、任意の単位剤形の調製において使用される任意の材料は、薬学的に許容され、用いられる量で実質的に無毒性であるべきである。
【0082】
加えて、化合物は、持続放出調製物及び装置に組み込まれてもよい。例えば、化合物は、持効性放出カプセル、持効性放出錠剤、及び持効性放出丸剤に組み込まれてもよい。いくつかの実施形態では、組成物は、発泡錠、経口崩壊錠、胃での保持時間を増加するように設計される浮遊錠、頬パッチ、及び舌下錠から成る群から選択される剤形を使用して投与される。
【0083】
化合物はまた、注入もしくは注射によって静脈内に、または腹腔内に投与されてもよい。化合物の溶液は、水中で、任意に無毒性界面活性剤と混合して調製され得る。分散液もまた、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、トリアセチン、及びそれらの混合物中で、ならびに油中で調製され得る。通常の貯蔵及び使用条件下で、これらの調製物は、微生物の成長を予防するための防腐剤を含有することができる。
【0084】
注射または注入に適した薬学的剤形には、任意にリポソームに封入される、無菌の注射可能もしくは注入可能な溶液または分散液の即時調製に適応する化合物を含む、無菌水溶液もしくは分散液または無菌粉末が挙げられる。すべての場合において、最終的な剤形は、無菌の流体であり、製造及び貯蔵の条件下において安定すべきである。液体担体またはビヒクルは、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール等)、植物油、無毒性グリセリルエステル、及びそれらの好適な混合物を含む、溶媒または液体分散媒であってもよい。適切な流動性は、例えば、リポソームの形成によって、分散液の場合、必要とされる粒径の維持によって、または界面活性剤の使用によって、維持することができる。
【0085】
無菌注射可能溶液は、必要量の化合物を、必要に応じて上に列挙される種々の他の成分を含む適切な溶媒に組み込み、その後、濾過滅菌することによって調製される。無菌注射可能溶液の調製のための無菌粉末の場合では、調製の好ましい方法は、所望の成分活性成分に追加して事前に滅菌濾過された溶液中に存在する任意の追加の粉末を得る真空乾燥及び凍結乾燥技法である。
【0086】
局所投与に関して、化合物は、純粋な形態で適用されてもよい。しかしながら、固体または液体であり得る皮膚科学的に許容可能な担体と組み合わせて、それらを組成物または製剤として皮膚へ投与することが一般的に望ましいだろう。
【0087】
有用な固体担体には、タルク、粘土、微結晶性セルロース、シリカ、アルミナ等の微粉化した固体を含む。他の固体担体は、従来の無毒性ポリマーナノ粒子またはマイクロ粒子が挙げられる。有用な液体担体には、化合物が、任意に無毒性界面活性剤を用いて有効なレベルで溶解または分散され得る水、アルコール、もしくはグリコール、または水/アルコール/グリコールブレンドを含む。香料及び追加の抗微生物剤等のアジュバントが、所与の用途のための特性を最適化するために添加されてもよい。結果として得られる液体組成物は、含浸性包帯及び他の包帯材に使用される吸収性パッドから適用されてもよく、またはポンプ型もしくはエアロゾル噴霧器を使用して患部上に噴霧されてもよい。
【0088】
式1の化合物の有用な投薬量は、それらのインビトロ活性、及び動物モデルにおけるインビボ活性と比較することによって決定することができる。マウス及び他の動物からヒトまでの有効な投薬量を推定するための方法は、当該技術分野で既知である。
【0089】
例えば、ローション等の液体組成物における化合物の濃度は、約0.1〜25重量%または約0.5〜10重量%であり得る。ゲルもしくは粉末等の半固体または固体組成物における濃度は、約0.1〜5重量%または約0.5〜2.5重量%であり得る。
【0090】
本発明の薬剤の有効な投薬量及び投与経路は、従来のものである。薬剤の正確な量(有効用量)は、例えば、対象の種属、年齢、体重、及び全身状態または臨床状態、治療される任意の障害の重症度または機序、使用される特定の薬剤またはビヒクル、投与の方法及びスケジュール等によって、対象によって異なるだろう。治療的有効用量は、経験的に、当業者に既知の従来の手順によって決定することができる。例えば、The Pharmacological Basis of Therapeutics,Goodman and Gilman,eds.,Macmillan Publishing Co.,New Yorkを参照されたい。例えば、有効用量は、細胞培養アッセイにおいて、または好適な動物モデルにおいてのいずれかで、最初に推定することができる。また、動物モデルを使用して、適切な濃度範囲及び投与経路を決定することもできる。次いで、そのような情報を使用して、ヒトにおける有用な用量及び投与経路を決定することができる。治療的用量はまた、比較可能な治療薬の投薬量に対する類似性から選択することもできる。
【0091】
特定の投与様式及び投薬レジメンは、症例の特徴(例えば、対象、疾患、関与する疾患状態、及び治療が予防的であるかどうか)を考慮して、担当臨床医によって選択されるだろう。治療は、数日間、数ヶ月間、またはさらに数年間の期間にわたって、化合物(複数可)の1日用量または数日用量を含み得る。
【0092】
しかしながら、一般的に、好適な用量は、約0.001〜約100mg/kg、例えば、キログラム当たり約0.1mg超といった1日当たり体重の約0.01〜約100mg/kg、または1日当たりレシピエントの体重のキログラム当たり約1〜約10mgの範囲であるだろう。例えば、好適な用量は、1日当たり体重の約1mg/kg、10mg/kg、または50mg/kgであり得る。
【0093】
化合物は、好都合に、例えば、単位剤形1つ当たり0.05〜10000mg、0.5〜10000mg、5〜1000mg、または約100mgの活性成分を含有する単位剤形で投与される。いくつかの実施形態では、投薬単位は、約1mg、約10mg、約25mg、約50mg、約75mg、約100mg、約150mg、約200mg、約250mg、約300mg、約350mg、約400mg、約450mg、約500mg、約750mg、または約1000mgの活性成分を含有する。
【0094】
本発明はまた、本明細書に示される結晶構造のうちの1つの構造表現を提供するか、または本明細書に示されるアッセイ結果を記憶及び/もしくは評価するコンピュータ可読媒体等のコンピュータに関係する実施形態も含む。
【0095】
p53構造表現を含む記憶媒体(コンピュータ可読媒体)は、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM、例えば、CDROM)、ディスケット、磁気記憶媒体、これらのカテゴリーの混合物等であり得る。記憶媒体は、コンピュータに局在化していてもよく、または遠隔(例えば、インターネットを含む、ネットワークされた記憶媒体)であってもよい。本発明はまた、本発明の3D構造の座標を含むコンピュータ可読データベース、本発明の3D構造に関する情報が組み込まれているかまたはそれを含むコンピュータ可読媒体、(例えば、p53セグメントの構造の特徴付けるための、またはペプチド阻害剤を設計及び/もしくは選択するための)本発明の方法を行うようにプログラムされたコンピュータ、ならびに本明細書に示される方法を行うためのプログラムがその上に保存されたデータキャリアを生成する方法も提供する。
【0096】
任意の好適なコンピュータを本発明において使用することができる。
【0097】
本明細書で考察される計算装置または任意の他のコンピュータシステムもしくはその計算装置構成要素のうちのいずれかを実装するために使用され得る1つ以上の実施形態に従う計算装置を実装するための例示的アーキテクチャが以下に記載される。クライアントまたはサーバー等の本計算装置とともに使用することができる他の装置が、同様に構成され得ることが理解されるだろう。計算装置は、バス、プロセッサ、メモリ、読み取り専用メモリ(ROM)、記憶装置、入力装置、出力装置、及び通信インタフェースを含み得る。
【0098】
バスは、計算装置の構成要素間の通信を可能にする1つ以上の相互接続を含み得る。プロセッサは、任意の種類のプロセッサ、マイクロプロセッサ、または命令を解釈及び実行することができる処理論理回路(例えば、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA))を含み得る。プロセッサは、単一装置(例えば、シングルコア)及び/または装置の群(例えば、マルチコア)を含み得る。メモリは、ランダムアクセスメモリ(RAM)、またはプロセッサによって実行するための情報及び命令を記憶することができる別の種類の動的記憶装置を含み得る。メモリはまた、プロセッサによる命令を実行中に一時的数値変数または他の中間情報を記憶するために使用することもできる。
【0099】
ROMは、ROM装置、及び/またはプロセッサの静的情報及び命令を記憶することができる別の種類の静的記憶装置を含み得る。記憶装置は、情報及び/または命令を記憶するための磁気ディスク及び/または光ディスクならびにその対応するドライブを含み得る。記憶装置は、単一記憶装置、または並行して動作する複数の記憶装置等の複数の記憶装置を含み得る。さらに、記憶装置は、計算装置上に局在的に常駐してもよく、ならびに/またはサーバーに対して遠隔であってもよく、ネットワーク及び/または専用通信もしくはチャネル等の別の種類の接続を介してそこに接続されてもよい。
【0100】
入力装置は、キーボード、マウス、接触感応ディスプレイ装置、マイクロホン、ペンベースのポインティング装置、ならびに/または音声認識装置及び/もしくは指紋走査装置等の生体識別入力装置等の操作者が情報を計算装置に入力することを可能にする任意の機構もしくは機構の組み合わせを含み得る。出力装置は、ディスプレイ、プリンター、スピーカーを含む、情報を操作者に出力することを可能にする任意の機構もしくは機構の組み合わせを含み得る。
【0101】
通信インタフェースは、計算装置がクライアント、サーバー、ライセンス管理、ベンダー等の他の装置及び/またはシステムと通信することを可能にする任意のトランシーバーのような機構を含み得る。例えば、通信インタフェースは、ネットワークに連結される第1のインタフェース及び/またはライセンス管理に連結される第2のインタフェース等の1つ以上のインタフェースを含み得る。あるいは、通信インタフェースは、無線ネットワーク等のネットワークを介する通信のための他の機構(例えば、無線インタフェース)を含み得る。1つの実装において、通信インタフェースは、汎用ハードウェア(例えば、パーソナルコンピュータフォームファクタ)、専用ハードウェア(例えば、モデルもしくはモデルの一部のコンパイル版を実行するように適応するデジタルシグナル処理(DSP)装置)等を含み得る標的となる装置等の目的地装置にコードを送信するための論理回路を含み得る。
【0102】
計算装置は、メモリ等のコンピュータ可読媒体に含まれるソフトウェア命令を実行するプロセッサに応答して、ある特定の機能を実施することができる。代替となる実施形態では、本開示の原理と一致する特性を実装するために、ソフトウェア命令の代わりに、またはそれと組み合わせて配線接続された回路が使用されてもよい。このため、本開示の原理と一致する実装は、ハードウェア回路及びソフトウェアの任意の特定の組み合わせに限定されない。
【0103】
例示的実施形態は、ソフトウェア構成要素として、多くの異なる方法で具体化され得る。例えば、独立型ソフトウェアパッケージ、ソフトウェアパッケージの組み合わせであってもよく、またはより大きいソフトウェア製品において「ツール」として組み込まれるソフトウェアパッケージであってもよい。それは、既存のソフトウェアアプリケーションにインストールするための独立型製品として、または拡張パッケージとして、ネットワーク、例えば、ウェブサイトからダウンロードされ得る。またそれは、クライアント−サーバーソフトウェアアプリケーションとして、またはウェブ対応ソフトウェアアプリケーションとしても利用可能である。またそれは、ハードウェア装置上にインストールされるソフトウェアパッケージとして具体化されてもよい。
【実施例】
【0104】
実施例I−阻害性ペプチド及びCPP阻害剤の設計及び特徴付け
p53の線維形成セグメントの原子構造の特定に基づいて、本発明者らは、合理的に、インビトロでの凝集を減退させる一連の阻害剤を設計した。本発明者らは、p53の成長する凝集体を「キャップする」ペプチド阻害剤を設計した。ZipperDBアルゴリズム(Goldschmidt et al.2010)を使用して、本発明者らは、配列ILTIITL(SEQ ID NO:2)を同定したXu et al.,2011によって突然変異体p53凝集に重要であるとも報告された領域における、結晶化可能アミロイド形成セグメントを同定した。本発明者らは、p53
252−258及びp53
253−258セグメントを化学的に合成し、それらを結晶化して、マイクロ結晶学によってそれらの三次元構造を決定した(
図1)。構造は、「フェイストゥバック(face−to−back)」(p53
252−258に関して)及び「フェイストゥフェイス(face−to−face)」(p53
253−258に関して)方向で疎水性側鎖を介して噛み合う平行整列(parallel in−register)のβ鎖及びβシートを有する典型的な立体ジッパーアーキテクチャを示した(Sawaya et al,Nature,2007)。
【0105】
p53
253−258(TIITLE)(SEQ ID NO:20)及びp53
252−258(LTIITLE)(SEQ ID NO:21)構造の原子座標を、それぞれ、表3及び4に示す。
【0106】
(表3)
【0107】
(表4)
【0108】
表5は、p53セグメントの結晶構造に対するX線データ収集及び精密化の統計を示す。表5は、SEQ ID NO:21の「LTIITLE」及びSEQ ID NO:20の「TIITLE」を開示する。
【0109】
(表5)
a. 括弧内の値は、最高解像度シェルに対応する
b. R
merge=Σ|/−</>|/Σ/
c. R
work=Σ|F
o−F
c|/ΣF
o
d. R
free=Σ|F
o−F
c|/ΣF
o、構造精密化を通して含まれなかった反射を含有するランダム集合を使用して計算される
【0110】
本発明者らは、それらのRosettaに基づく方法(Sievers et al,Nature,2011)を適用し、p53
252−258構造を鋳型として使用してp53凝集を妨害する阻害剤を設計した。本発明の他の実施形態では、p53
253−258構造を鋳型として使用して、阻害剤を設計する。
【0111】
本出願で先に示された表1は、本方法で得られる16個の代表的な配列の一覧を示す。
【0112】
表6は、阻害剤の選択の計算特性を示す。
【0113】
(表6)設計された阻害剤の凝集傾向及びキャッピングエネルギー。
【0114】
表6のペプチドは、上から下に向かって、SEQ ID NO:21、4、7、5、8、6、12、14、及び13によって表される。
【0115】
図2は、p53
252−258構造をモデルにしたINH−1R阻害剤を示す。明らかであるように、ARG置換は、隣接するシートと衝突して、新たなモノマーが自由な線維末端に付着することを効率的に阻害し、さらなる成長を予防する。
【0116】
設計された阻害剤を合成し、インビトロチオフラビンT凝集アッセイにおいて試験した(
図3)。最も有効な設計であるINH−1Rは、凝集の開始を遅らせ、阻害剤1対p53分子10のモル比であっても、試験したすべての濃度で存在する凝集体の量を低下させた(
図3)。
【0117】
阻害剤を細胞透過性にするために、本発明者らは、内在性p53配列に由来する配列RPIの3残基のリンカーを介してペプチド−阻害剤パネルを9残基のポリアルギニンタグに融合した。細胞に進入するそれらの能力を確認するため、蛍光顕微鏡検査によってプローブの細胞内局在化を検出するために細胞透過性INH−1R阻害剤をFITC部分に結合した(
図4)。本発明者は、OVCAR−3、CAOV−3、WiDr、Detroit 562、ならびに癌患者に由来する初代細胞を含むが、これらに限定されない異なる癌細胞株を、FITCで標識された阻害剤で24時間処置した。結合していない阻害剤を除去するための徹底的な洗浄後、細胞をホルムアルデヒドに固定し、p53を市販のp53抗体を使用して染色した。
図4Aに見られるように、阻害剤は、細胞膜を透過することができるだけでなく、実際に核に進入し、その標的であるp53と共局在化することができた。さらに、阻害剤は、立体構造特異的抗体OCによって染色されるタンパク質凝集体と共局在化することが分かった(Kayed et al,2007、
図4B)。
【0118】
構造誘導型の合理的に設計された本発明のp53アミロイド阻害剤は、異常な立体構造を有するp53分子(例えば、凝集したまたは誤って折り畳まれたp53)を持つ癌細胞を特異的に標的とする。本発明者は、インビトロでの凝集進行を停止する阻害剤の能力を実証した(
図3)。本発明者は、次いで、本発明者の発見の臨床的関連性を確認するために、確立された癌細胞株上で、ならびに漿液性卵巣癌患者に由来する初代細胞上で、阻害剤を試験した。本発明者の阻害剤は、変更された誤って折り畳まれた形態のp53を発現する腫瘍細胞を特異的に標的とするように設計され、機能性であり適切に折り畳まれたp53または凝集機能のないp53突然変異体をもつ細胞では効果を有するべきではない。これを確認するために、本発明者は、いくつかの対照を含めた。1つはWTp53(MCF−7)を持ち、2つはp53凝集状態に関して事前に特徴付けられた(一方は凝集していない突然変異(WiDr)を有し、他方はp53凝集傾向のある突然変異(Detroit 562)を有する)、3つの確立された細胞株を、陰性対象及び陽性対照として使用した。阻害剤の効果のうちの1つは、サイトゾル区画から核へのp53の再局在化を引き起こすことであった(
図5)。この効果は、細胞MCF7を持つWT p53の場合には観察されず(
図2a)、p53が構造の整合性を喪失するときにのみ、INH−1Rが活性であることを示唆する。
【0119】
阻害剤の別の効果は、誤って折り畳まれたp53をWTのような機能的立体構造に再び折り畳むことであった。PA40細胞においてINH−1Rで処置されたp53は、部分的に折り畳まれていない突然変異体p53を特異的に標的とする抗体PAb240によって認識されず(
図6)、再局在化がタンパク質の再折り畳みを伴ったことを示す。生理学的な折り畳みを維持するp53の結果として、処置された細胞中のp53タンパク質のレベルは、用量依存的に減少した。適切に折り畳まれたp53は、制御機構として細胞中で急速に分解される。誤って折り畳まれた/凝集したp53は、分解に対して効率的に標的とされることができず、そのため、阻害剤の不在下ではタンパク質レベルは高い。これは、折り畳まれたp53の集団を生成するINH−1Rの能力のさらなる証拠である。あらゆる特定の機序に束縛されるものではないが、これが、既存のp53凝集体を除去する(titrating out)阻害剤が、曝露される凝集傾向のあるセグメントに介添えするか、またはそれをマスクすることによる、凝集した/誤って折り畳まれた/折り畳まれたp53の間の平衡を変化させることによるものであることが示唆される。
【0120】
INH−1Rは、標準MTSアッセイによって検出されるように、2D培養系において10μMの用量での処置のたった24時間後に癌細胞生存の50%未満で用量依存的に細胞死を引き起こした(
図7A)。INH−1Rの効果は、ポリ−ARG単独またはスクランブル阻害剤配列がいかなる効果も引き出さなかったことから、特異的である。3D培養系で成長した癌細胞または初代細胞の両方から同様の結果が得られた。この場合、細胞を1:1のPrEGM:マトリゲルの混合物に播種した。細胞層が固体化した後、0.1〜10μMの濃度で阻害剤またはスクランブル対照ペプチドのいずれかを含有する温かいPrEGM培地を、5〜7日間細胞に重層した。
【0121】
阻害剤は、アネキシンV染色の増加及びKi67染色の減少によって証明されるように、用量依存的なアポトーシスの増加及び細胞増殖の減少の両方を引き起こした(
図7B及び7C)。スクランブルペプチド配列とは対照的に、また、組み合わせたHoechst/PI/YO−PRO−1染色によっても証明されるように、INH−1Rでの処置によりアポトーシスならびにネクローシスが特異的に誘発された(
図8)。細胞死は、
図9に見られるようにFACS法によっても監視することができ、10μMの阻害剤で24時間処置されたOVCAR−3細胞は、細胞死の典型的な兆候である、細胞の大きさの減少及び粒度の上昇を示した。
【0122】
QPCR(
図8)またはRNAseq法によって試験されるように、凝集傾向のある突然変異を持つ腫瘍細胞のみにおけるp53標的遺伝子の上方制御によって、INH−1Rの特異性及び有効性を確認した。
【0123】
本発明者のインビボ研究において、本発明者は、微小残存腫瘍量を有する患者が化学療法を施される、減量手術後の状況を模倣することを試みた。NOD/SCIDマウスに、凝集傾向のあるp53 R248Q突然変異を持つOVCAR−3細胞を皮下に注射し、単独治療薬としてINH−1R、対照スクランブルペプチド、またはビヒクルのいずれか(15mg/kg)で14日間にわたって毎日腹腔内に処置した(
図9)。INH−1Rで処置されたマウスは、75重量%低減した異種移植片質量を有する減退した腫瘍増殖を示した(
図9B及び9C)。残存する腫瘍組織は、p53活性化を示す明白なp21及びMDM2の活性化を示した(
図9D)。また、阻害剤を、同様の効果で既存の腫瘍を保有するマウスにおいてインビボで試験した。
【0124】
腹腔内に注入されたペプチドの薬物動態プロファイルは、注射の1時間後に約1.2μMの血清ピーク濃度を示した。ペプチド濃度は、注入の2時間後に約0.3μMまで低下し、最大12時間安定したままであった(
図10)。血清中のペプチドが相対的に安定性であれば、IV投与は、許容される代替となる投薬経路である。
【0125】
前述の説明から、当業者であれば、本発明の不可欠な特徴を容易に確認することができ、その趣旨と範囲から逸脱することなく、本発明の変更及び修正を行い、それを種々の用法及び条件に適用し、本発明を最大限に利用することができる。先行の好ましい特定の実施形態は、単なる例示として解釈され、どのような形であっても本発明の範囲を制限するものではない。2013年5月8日出願の米国仮特許出願第61/821,157号及びその図面を含む、本明細書に引用されるすべての出願、特許、及び刊行物の全開示は、特にそれらが引用される情報に関して、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0126】
参考文献