(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6574432
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】製油所重質炭化水素の石油化学製品へのアップグレードプロセス
(51)【国際特許分類】
C10G 65/02 20060101AFI20190902BHJP
C07C 15/04 20060101ALI20190902BHJP
C07C 15/06 20060101ALI20190902BHJP
C07C 15/08 20060101ALI20190902BHJP
C07C 15/073 20060101ALI20190902BHJP
C07C 6/08 20060101ALI20190902BHJP
【FI】
C10G65/02
C07C15/04
C07C15/06
C07C15/08
C07C15/073
C07C6/08
【請求項の数】21
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2016-553574(P2016-553574)
(86)(22)【出願日】2014年12月23日
(65)【公表番号】特表2017-509745(P2017-509745A)
(43)【公表日】2017年4月6日
(86)【国際出願番号】EP2014079193
(87)【国際公開番号】WO2015128036
(87)【国際公開日】20150903
【審査請求日】2017年10月17日
(31)【優先権主張番号】14156629.9
(32)【優先日】2014年2月25日
(33)【優先権主張国】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】503013200
【氏名又は名称】サウジ ベーシック インダストリーズ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】SAUDI BASIC INDUSTRIES CORPORAITON
(73)【特許権者】
【識別番号】508171804
【氏名又は名称】サビック グローバル テクノロジーズ ベスローテン フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】オプリンス、アーノ ヨハネス マリア
(72)【発明者】
【氏名】ヴェラスコ ペレズ、ラウル
【審査官】
森 健一
(56)【参考文献】
【文献】
特表2009−508881(JP,A)
【文献】
特表2014−500859(JP,A)
【文献】
特表2008−544061(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/116603(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10G 1/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)炭化水素原料を開環反応領域に供給し、得られた流れを、温度200℃〜600℃、圧力1〜12MPa、環開裂触媒上の前記得られた流れ1,000kg当たりの水素量50〜200kgの環開裂装置に送るステップと;
(b)(a)からの流出物を、軽質沸点炭化水素を含むガス流と、ナフサ沸点範囲炭化水素を含む液体流と、ディーゼル沸点範囲炭化水素を含む液体流と、を生成する分離装置に供給するステップと;
(c)ナフサ沸点範囲炭化水素を含む前記液体流を水素化分解装置に供給するステップと;
(d)ステップ(c)の前記水素化分解装置の反応生成物を、軽質沸騰炭化水素を含むオーバーヘッドガス流と、BTX(ベンゼン、トルエンおよびキシレンの混合物)含有底部流と、に分離するステップと;
(e)ステップ(d)の前記水素化分解装置からの前記オーバーヘッドガス流およびステップ(b)の前記分離装置からの前記ガス流を、水蒸気分解装置と、プロパン脱水素装置、ブタン脱水素装置およびプロパン−ブタン組み合わせ脱水素装置の群から選択された少なくとも1つの装置と、に供給するステップと、を備え、
ステップ(a)の前記開環反応領域で適用されるプロセス条件としては、温度が100℃〜500℃であり、圧力が2〜10MPa、芳香族化合物水素化触媒上の原料1,000kg当たりの水素量が50〜300kgであり、
ステップ(c)の前記水素化分解装置で適用されるプロセス条件としては、反応温度が300〜580℃であり、圧力が0.3〜5MPa(ゲージ圧)であり、単位時間当りの質量空間速度(WHSV)が0.1〜10/hであり、
前記分離装置からのディーゼル沸点範囲炭化水素を含む前記液体流を芳香族化合物飽和装置に供給するステップをさらに備えることを特徴とする製油所重質炭化水素の石油化学製品へのアップグレードプロセス。
【請求項2】
ステップ(d)の前記水素化分解装置からの前記オーバーヘッドガス流およびステップ(b)の前記分離装置からの前記ガス流を、前記ガス流から水素含有流れを分離後に、水蒸気分解装置と、プロパン脱水素装置、ブタン脱水素装置およびプロパン−ブタン組み合わせ脱水素装置の群から選択された少なくとも1つの装置と、に供給することを特徴とする請求項1に記載プロセス。
【請求項3】
ステップ(d)の前記水素化分解装置からの前記オーバーヘッドガス流およびステップ(b)の前記分離装置からの前記ガス流を別の分離装置に供給するステップと;こうして分離された流れを、前記水蒸気分解装置と前記脱水素装置に供給するステップと、をさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記脱水素プロセスは触媒プロセスであり、前記水蒸気分解プロセスは熱分解プロセスであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項5】
芳香族化合物抽出装置内で、前記炭化水素原料を前処理し、前記芳香族化合物抽出装置から芳香族化合物リッチな流れが前記開環反応領域内に供給されるステップをさらに備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記芳香族化合物抽出装置が、蒸留装置タイプ、分子篩タイプおよび溶剤抽出装置タイプの群から選択される請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
ナフサ沸点範囲炭化水素留分が前記水素化分解装置内に直接供給され、その重質留分が前記開環反応領域内に供給されるスプリッター装置内で、前記炭化水素原料を前処理するステップをさらに備えることを特徴とする請求項5または6に記載のプロセス。
【請求項8】
重質炭化水素留分が前記開環反応領域に供給され、ナフサ沸点範囲炭化水素を含む流れが前記水素化分解装置に直接供給され、LPGを含むガス流が、水蒸気分解装置と、プロパン脱水素装置、ブタン脱水素装置およびプロパン−ブタン組み合わせ脱水素装置の群から選択された1つまたは複数の装置と、に供給される事前水素化分解装置内で、前記炭化水素原料を前処理するステップをさらに備えることを特徴とする請求項5乃至7のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項9】
BTXEタイプの流れが得られ、重質炭化水素留分が前記開環反応領域に供給され、LPGを含むガス流が、水蒸気分解装置と、プロパン脱水素装置、ブタン脱水素装置およびプロパン−ブタン組み合わせ脱水素装置の群から選択された1つまたは複数の装置と、に供給される水素化脱アルキル/改質タイプ装置内で、前記炭化水素原料を前処理するステップをさらに備えることを特徴とする請求項5乃至8のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項10】
ステップ(b)の前記分離装置からの前記ガス流、前記水素化脱アルキル/改質タイプ装置からの前記ガス流および前記事前水素化分解装置からの前記ガス流の少なくとも1つを、前記水素化分解装置に供給するステップをさらに備えることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記水素化分解装置からの前記底部流をアルキル交換反応装置に供給するステップをさらに備えることを特徴とする請求項3乃至10のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記水素化分解装置からの前記オーバーヘッドガス流、ステップ(b)の前記分離装置からの前記ガス流、および場合により前記事前水素化分解装置と前記水素化脱アルキル/改質タイプ装置からの前記ガス流を、それぞれ主にC2パラフィン、C3パラフィンおよびC4パラフィンを含む個々の流れ内に分離するステップと、個々の流れのそれぞれを前記水蒸気分解装置の特定の炉部に供給するステップと、をさらに備え、水素含有流れは、1つまたは複数の水素消費プロセス装置に送られ;
C3−C4留分だけを、前記脱水素装置の少なくとも1つに供給するステップをさらに備えることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記水素消費プロセス装置が、前記(事前)水素化分解装置または前記開環反応領域であることを特徴とする請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
C3−C4留分だけを、別個のC3流およびC4流として、前記脱水素装置の少なくとも1つに供給するステップをさらに備えることを特徴とする請求項12または13に記載のプロセス。
【請求項15】
C3−C4留分だけを、C3+C4の混合流として、前記脱水素装置の少なくとも1つに供給するステップをさらに備えることを特徴とする請求項12または13に記載のプロセス。
【請求項16】
前記分離装置で適用されるプロセス条件としては、温度が149℃〜288℃であり、圧力がMPa〜17.3Mpaであることを特徴とする請求項1乃至15のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項17】
反応温度が、450〜580℃であるか、または470〜550℃であることを特徴とする請求項1乃至16のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項18】
圧力が、0.6〜3MPa(ゲージ圧)であるか、または1000〜2000kPa(ゲージ圧)であるか、または1〜2MPa(ゲージ圧)であるか、または1.2〜1.6Mpa(ゲージ圧)であることを特徴とする請求項1乃至17のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項19】
単位時間当りの質量空間速度(WHSV)が0.2〜6/hであるか、または0.4〜2/hであることを特徴とする請求項1乃至18のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項20】
前記水蒸気分解装置で適用されるプロセス条件としては、反応温度が750〜900℃であり、滞留時間が50〜1000msであり、圧力が大気圧〜175kPa(ゲージ圧)から選択されることを特徴とする請求項1乃至19のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項21】
ステップ(a)の前記炭化水素原料は、シェール油、原油、灯油、ディーゼル、常圧軽油(AGO)、ガスコンデンセート、ワックス、原油混入ナフサ、減圧軽油(VGO)、減圧残油、常圧残油、ナフサおよび前処理されたナフサ、軽質循環油/重質循環油(LCO/HCO)、コークス器ナフサおよびディーゼル、FCCナフサおよびディーゼル、スラリーオイルあるいはこれらの組み合わせの群から選択されることを特徴とする請求項1乃至20のいずれか1項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製油所重質炭化水素の石油化学製品へのアップグレードロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
欧州特許第EP1779929号は、イオウ含有炭化水素原料の自動車用ディーゼルでの使用に適した形態への変換プロセスに関する。
【0003】
米国特許出願第2012/000819号は、高付加価値アルキルベンゼンの製造方法とそれに使用する触媒に関しており、この方法では、不要な核水素化を起こさずに適切な水素化分解反応を起こすことによって、ナフテン開環反応が最小化される。
【0004】
米国特許第4,943,366号は、接触分解操作で得られる高芳香族留分の水素化分解によるハイオクガソリンの製造に関しており、軽油または残留供給物はFCC(流動式接触分解)装置内で分解され、分解生成物は分解分留装置と蒸留塔内で分留される。低沸点留分は、その後、水素化分解装置の第一ステージを構成する水素化処理装置に送られる。水素化処理された循環油は、その後水素化分解装置の第二ステージを構成する別の水素化分解装置に送られ、ここで、芳香族の飽和が継続して行われて開環と分解が起こり、水素化分解生成物が形成される。セパレータ内での水素分離後、水素化分解装置流出物は蒸留塔内で分留されて、乾性ガス、ガソリン、中間留分および塔底留分を含む生成物が形成される。
【0005】
国際出願第WO2007/055488号は、炭化水素混合物からの芳香族炭化水素と液化石油ガス(LPG)の調製方法に関しており、この方法は、(a)炭化水素原料混合物と水素を少なくとも1つの反応域に導入するステップと;(b)触媒の存在下、炭化水素原料混合物を、(i)水素化分解によって非芳香族炭化水素化合物と、(ii)この反応域内での脱アルキル/アルキル交換反応によって、ベンゼン、トルエンおよびキシレン(BTX)が豊富な芳香族炭化水素化合物と、に変換するステップと;(c)気液分離と蒸留によって,ステップ(b)の反応生成物からLPGと芳香族炭化水素化合物をそれぞれ回収するステップと、を備える。
【0006】
国際出願第WO99/22577号は低圧水素化分解に関しており、このプロセスは、(a)液状供給物を水素ガスと混合するステップと;(b)少なくとも2つの触媒粒子充填床を有する固定床水素化分解装置内で前記混合物を水素化分解して、軽質留分と重質留分とを生成するステップと;(c)重質留分の一部を、(1)再循環させる原料を水素化分解装置に送るステップと、(2)流出物の重質留分を再循環させるステップと、を備えた抽出(extinction)再循環プロセスにかけるステップと、を備える。
【0007】
米国特許出願第2012/205285号は、炭化水素供給物の水素化処理プロセスに関しており、このプロセスは、(a)この供給物を、(i)希釈剤と、(ii)水素と、に接触させて液状供給物を生成するステップと;(b)液状供給物を第1の処理域で第1の触媒に接触させて、第1の生成物流出物を生成するステップと;(c)第1の生成物流出物を第2の処理域で第2の触媒に接触させて、第2の生成物流出物を生成するステップと;(d)ステップ(a)における希釈剤に使用される再循環生成物流として、第2の生成物流出物の一部を再循環させるステップと、を備えており、第1の処理域は少なくとも2つのステージを含み、第1の触媒は水素化処理触媒であり、第2の触媒は開環触媒であり、第1および第2の処理域は液完全充填反応域である。
【0008】
米国特許出願第2012/083639号は、安定した粗ベンゼン引抜きを用いた高価値芳香族化合物製造の最大化プロセスに関しており、このプロセスは、C5留分とC6−C10留分を含む芳香族リアクタ流出物を、ベンゼンリッチな流れと、少なくとも1つの液流(ベンゼンを含まないこれらの液流の1つはベンゼンを含まないC6留分を含む)と、ベンゼンを含まない少なくとも1つの蒸気流と、の中に分離するステップと;ベンゼンリッチな流れからC5留分の少なくとも一部を除去するステップと、を備える。
【0009】
米国特許出願第2006/287561号は、炭化水素混合物から芳香族炭化水素混合物と液化石油ガス(LPG)を生成するプロセスと、前述のプロセスでの原料として使用される炭化水素原料を生成するプロセスと、を統合させることによって、C2−C4軽質オレフィン炭化水素の生産を増加させるプロセスに関する。
【0010】
米国特許出願第2007/062848号は、最大2個のC1−4アルキル基で置換されているまたは未置換の、少なくとも2個の縮合芳香環を含む少なくとも20質量%の1つまたは複数の芳香族化合物を含む供給物を水素化分解して、少なくとも35質量%のC2−4アルカン混合物を含む生成物流を製造するステップに関する。米国特許出願第2007/062848号では、オイルサンドからのビチューメンは従来の蒸留装置に供給され、蒸留装置からのナフサ流はナフサ水素化処理装置に供給される。オーバーヘッドガス流は軽質ガス/軽質パラフィン流であり、炭化水素分解装置に供給される。蒸留装置からのディーゼル流はディーゼル水素化処理装置に供給され、蒸留装置からの軽油流は減圧蒸留装置に供給され、減圧蒸留装置からの減圧軽油流は軽油水素化処理装置に供給される。軽油水素化処理装置からの軽質ガス流は炭化水素分解装置に供給される。減圧軽油水素化処理装置からの水素化処理された減圧軽油は接触分解装置に供給される。減圧蒸留装置からの底部流は減圧(重質)残留物であり、ナフサ水素化処理装置に送られるナフサ流などの多くの流れを生成する重質油熱分解装置に送られ、ディーゼル流はディーゼル水素化処理装置に送られて水素化処理されたディーゼルが生成され、軽油流は減圧軽油水素化処理装置に供給されて、接触分解装置に供給される水素化処理された軽油流が得られる。
米国特許第4,137,147号明細書は、蒸留点が約360℃より低く、1分子当たり少なくとも4個の炭素原子を有する直鎖パラフィン類およびイソパラフィン類を少なくとも含有する装荷物からエチレンおよびプロピレンを製造する方法に関する。該方法では、前記装荷物は、水素化分解区域内にて、触媒の存在下で水素化分解反応に付され、(b)水素化分解反応からの流出物が、分離区域に送られ、(i)該区域の頂部から、メタンおよび場合により水素が、(ii)該区域から1分子当たり2および3個の炭素原子を有する炭化水素から本質的になる留分が、(iii)該区域の底部から、1分子当たり少なくとも4個の炭素原子を有する炭化水素から本質的になる留分が排出され、(c)前記1分子当たり2および3個の炭素原子を有する炭化水素から本質的になる留分のみ、蒸気の存在下で水蒸気分解区域に送られて、1分子当たり2および3個の炭素原子を有する炭化水素の少なくとも一部をモノオレフィン系炭化水素に転換し;前記分離区域の底部から得られた、前記1分子当たり少なくとも4個の炭素原子を有する炭化水素から本質的になる留分が、触媒の存在下でそれが処理される第2の水素化分解区域に送られ、第2の水素化分解区域からの廃液が、分離区域に送られて、一方では、1分子当たり少なくとも4個の炭素原子を有する炭化水素が排出され、その少なくとも一部が前記第2の水素化分解区域に再循環され、他方では、水素と、メタンと1分子当たり2および3個の炭素原子を有する飽和炭化水素との混合物から本質的になる留分が排出され;水素の流れおよびメタンの流れが前記混合物から分離され、2および3個の炭素原子を有する前記混合物の炭化水素が、第1の水素化分解区域に続く前記分離区域から回収された、1分子当たり2および3個の炭素原子を有する炭化水素から本質的になる前記留分と共に、前記水蒸気分解区域に送られる。このようにして、水蒸気分解区域の出口では、メタンおよび水素の流れと、1分子当たり2および3個の炭素原子を有するパラフィン系炭化水素の流れに加えて、1分子当たり2および3個の炭素原子を有するオレフィンと、1分子当たり少なくとも4個の炭素原子を有する生成物が得られる。
欧州特許出願公開第0219195号明細書は、炭化水素化合物からなる供給物を、水素の存在下で触媒上へ接触させて、縮合二環式ヒドロ芳香族炭化水素化合物を選択的に水素化し、かつ水蒸気分解して、分子量がより低く、より高いオクタン生成物を生成することによって、炭化水素化合物からなる前記供給物を沸点がより低く、オクタン価がより高い炭化水素に転換する方法に関する。
国際公開第2012/071137号公報は、ガスクラッカー供給原料を調製する方法に関する。該方法は、4〜12個の炭素原子を有するパラフィン類の1種以上を含有する供給物を、水素の存在下で温度と圧力をそれぞれ上昇させて、触媒と接触させるステップと、供給物中の4〜12個の炭素原子を有するパラフィン類の合計質量に対して、4〜12個の炭素原子を有するパラフィン類の少なくとも40wt%を、エタンおよび/またはプロパンに転換して、エタンおよび/またはプロパンを含む水蒸気分解したガスクラッカー供給原料を得るステップと、を備える。
米国特許第6,187,984号明細書は、n−ブタンを含有する供給原料を、触媒の存在下でn−ブタンのブテン類への転換に適した反応条件下で接触させるステップを備える、n−ブタンのブテン類への脱水素化方法に関する。
米国特許出願公開第2003/232720号明細書は、脱水素可能な炭化水素を脱水素化複合触媒と接触させて、脱水素化した炭化水素を得るステップを含む、脱水素可能な炭化水素を脱水素化する方法に関する。
【0011】
従来から、原油は蒸留により、ナフサ、軽油および残油などの多くの成分(cuts)に処理される。これらの各成分には、ガソリンやディーゼルおよび灯油などの輸送燃料の生成や、あるいは一部の石油化学製品や他の処理装置への供給物としてなどの多くの潜在的な用途がある。
【0012】
ナフサや一部の軽油などの軽質原油成分は、炭化水素供給物流を蒸発させて蒸気希釈した後、炉(リアクタ)チューブ内で短い滞留時間(1秒未満)、非常な高温(750℃〜900℃)に暴露する水蒸気分解などのプロセスによる軽質オレフィンと単環芳香族化合物の生成に使用できる。こうしたプロセスでは、供給物中の炭化水素分子は、供給物分子に比べて、(平均で)より短い分子および水素とカーボンとの比がより小さい分子(オレフィンなど)に変換される。また、このプロセスでは、有用な副産物としての水素と、かなりの量の低価値副産物(メタン、C9+芳香族化合物、縮合芳香族種(端部を共有するより多くの芳香環を含む)など)と、が生成される。
【0013】
典型的には、残油などのより重質の(すなわちより高沸点の)芳香族種は原油精製装置内でさらに処理されて、原油からのより軽質の(蒸留性の)生成物の収率を最大化する。この処理は、水素化分解(これによって、水素化分解供給物は、同時に水素を添加することによって、供給物分子の一部をより短い炭化水素分子に分解させる条件下で適切な触媒に暴露される)などのプロセスによって実施できる。重質精製装置流の水素化分解は、典型的には高圧・高温で行われるため、資本コストは高い。
【0014】
重質原油成分は、相対的に、置換芳香族種、特に置換縮合芳香族種(端部を共有する複数の芳香環を含む)リッチであり、水蒸気分解条件下では、これらの材料によって、C9+芳香族化合物や縮合芳香族化合物などの重質副産物がかなりの量で生成される。従って、原油蒸留と水蒸気分解との従来の組み合わせの結果では、より重質の成分からの価値ある生成物の分解収率が、代替の製油所燃料価値と比較して十分に高いとは考えられないので、原油の実質的な留分は、水蒸気分解装置では好適に処理されないこととなる。
【0015】
上記に議論した技術の別の態様は、軽質原油成分(ナフサなど)だけが水蒸気分解で処理される場合であっても、供給物流のかなりの部分が低価値の重質副産物(C9+芳香族化合物や縮合芳香族化合物など)に変換されることである。典型的なナフサと軽油では、これらの重質副産物は全生成物収率の2〜25%を構成する場合もある(表VI、295ページ、熱分解:Lyle F.AlbrightらによるTheory and Industrial Practice、Academic Press(1983))。これは、従来の水蒸気分解装置の規模では、低価値材料中の高価なナフサおよびまたは軽油の経済的価値が大幅に下降することを表しており、これらの重質副産物の収率では、これらの材料をかなりの量のより高価値化学物質を製造し得る流れにアップグレードする(例えば水素化分解で)ために必要な資本投資は典型的には正当化されない。これは、一部には、水素化分解プラントの資本コストは高く、また、ほとんどの石油化学製品プロセスの場合と同様に、これらの装置の資本コストは、典型的には、処理量が0.6〜0.7乗に増えるのに伴って上昇するためである。その結果、小規模の水素化分解装置の資本コストは、通常、余りにも高いと考えられ、重質副産物の水蒸気分解プロセスへのこうした投資は正当化されない。
【0016】
残油などの重質精製装置流の従来の水素化分解の別の態様は、これらが、典型的には、所望の全面的な変換を達成するように選択された妥協条件下で実施されることである。供給物流は、分解の容易さが様々な範囲の種の混合物を含むので、比較的容易に水素化分解される種の水素化分解によって形成される蒸留性の生成物の一部が、水素化分解がより困難な種の水素化分解に必要な条件下でさらに変換されることになる。これによって、このプロセスに伴う水素消費量と熱管理の困難性が増すとともに、より価値がある種を犠牲にして、メタンなどの軽質分子の収率も増える。
【0017】
原油蒸留とより軽質な蒸留成分の水蒸気分解とがこうして組み合わせられる結果、水蒸気分解炉は、混合炭化水素と蒸気流を熱分解の促進に必要な高温に暴露する前に、これらの成分を確実に完全に蒸発させることが困難となる沸点が350℃超の材料をかなりの量含む成分の処理には典型的に適さないことになる。液体炭化水素の液滴が分解チューブの高温部に存在すると、コークスがチューブ表面に急速に堆積して伝熱の低下と圧力損失の上昇を招き、最終的には、デコーキングのために炉の停止が必要となり、分解チューブの稼働が削減される。この困難性によって、当初の原油のかなりの部分は、水蒸気分解装置によって軽質オレフィンおよび芳香族種へ処理できなくなる。
【0018】
米国特許出願第US2009/173665号は、多核芳香族化合物を含む炭化水素原料の単環芳香族化合物含有量を増加させる触媒とプロセスに関しており、単環芳香族化合物の増加は、不要な化合物を低減させながらガソリン/ディーゼルの収率を上げることによって達成されており、これによって、かなりの量の多核芳香族化合物を含む炭化水素をアップグレードする手段を提供している。
【0019】
国際出願第WO2009/008878号に開示されているUOP社のLCOユニクラッキングプロセスまたはLCO−Xプロセスでは、部分変換水素化分解を用いて、シンプルなワンススルーフロースキームで高品質のガソリンとディーゼル原料が製造される。この原料は前処理触媒上で処理された後、同じステージで水素化分解される。その後、この生成物は、液再循環の必要なく分離される。LCOユニクラッキングプロセスは、圧力要件が高度の水素化処理よりいくらか高いが従来の部分変換および全面変換水素化分解装置設計よりはるかに低い、より低圧運転用に設計できる。アップグレードされた中間留分生成物からは、好適な超低硫黄ディーゼル(ULSD)配合成分が製造される。LCO−Xの低圧水素化分解からのナフサ生成物は,超低硫黄および高オクタンであり、超低硫黄ガソリン(ULSG)プール内に直接配合できる。
【0020】
米国特許第7,513,988号は、複数の縮合芳香環を含む化合物を処理して少なくとも1つの環を飽和し、次に、得られた飽和環をこの化合物の芳香族部分から開裂させて、C2−C4アルカン流と芳香族流を生成するプロセスに関する。高含有量の縮合環芳香族化合物を含む処理オイルサンド、タールサンド、シェール油あるいは任意のオイルからの重質残油を処理して石油化学製品製造に適した流れを生成するために、こうしたプロセスを、分解装置からの水素を複数の芳香環を含む化合物の飽和・開裂に使用して、C2−C4アルカン流を炭化水素分解装置に供給するように炭化水素(例えばエチレン)(蒸気)分解装置と統合してもよく、あるいは、炭化水素分解装置(例えば水蒸気分解装置)およびエチルベンゼン装置と統合してもよい。
【0021】
米国特許出願第US2005/0101814号は、水蒸気分解装置への原料のパラフィン含有量を向上させるプロセスに関しており、このプロセスは、通常のC5−C9パラフィンを含むC5−C9炭化水素を含有する供給物流を、芳香族炭化水素をナフテンに変換する条件で作用する触媒と、ナフテンをパラフィンに変換する条件で作用する触媒と、を含む開環リアクタに通して、第2の供給物流を生成するステップと;第2の供給物流の少なくとも一部を水蒸気分解装置に通すステップと、を備える。
【0022】
米国特許第7,067,448号は、環式アルカン、アルケン、環式アルケンおよびまたは芳香族化合物を含む鉱油留分および熱または触媒変換プラントからの留分から、n−アルカンを製造するプロセスに関する。より詳細には、この公告は、芳香族化合物リッチの鉱油留分処理プロセスに言及しており、芳香族化合物の水素化後に得られる環式アルカンは、充填炭素の鎖長よりできるだけ短い鎖長のn−アルカンに変換される。
【0023】
上記に議論したように、LCOプロセスは、モノ芳香族化合物およびジ芳香族化合物含有流であるLCOのナフサへの全面変換水素化分解に関する。この全面変換水素化分解の結果、高ナフテン系・低オクタンナフサであって、生成物配合に必要なオクタン生成のために改質が必要なナフサが得られる。
【0024】
国際出願第WO2006/122275号は、重質炭化水素原油原料を、より低密度すなわち軽質で、当初の重質炭化水素原油原料よりイオウ分が少なく、オレフィンや芳香族化合物などの付加価値材料を製造できるオイルにアップグレードするプロセスに関しており、本プロセスは、とりわけ、重質炭化水素原油の一部を油溶性触媒と組み合わせて、反応混合物を形成するステップと;比較的低水素圧下で前処理された原料を反応させて、第1の部分が軽油を含み、第2の部分が重質原油残留物を含み、第3の部分が軽質炭化水素ガスを含む生成物流を形成するステップと;軽質炭化水素ガス流の一部を分解装置内に投入して、水素と少なくとも1つのオレフィンを含む流れを生成するステップと、を備える。
【0025】
国際出願第WO2011005476号は、原油、減圧残油、タールサンド、ビチューメンおよび減圧軽油を含む重質油を、触媒水素化処理前処理プロセスを用いて、具体的には水素化脱金属(HDM)および水素化脱硫(HDS)触媒を順次用いて処理し、以降のコーカー精製装置の効率を向上させるプロセスに関する。
【0026】
米国特許出願第US2008/194900号は、芳香族化合物含有ナフサ流を水蒸気分解するオレフィンプロセスに関しており、このプロセスは、水蒸気分解炉流出物からオレフィンと分解ガソリン流を回収し、分解ガソリン流を水素化してそこからC6−C8流を回収し、芳香族化合物含有ナフサ流を水素化処理してナフサ供給物を得、共通の芳香族化合物抽出装置内でナフサ供給物流を用いてC6−C8流を脱芳香族化してラフィネート流を得るステップと;ラフィネート流を水蒸気分解炉に供給するステップと、を備える。
【0027】
国際出願第WO2008/092232号は、石油や天然ガス凝縮液などの原料あるいは、あらゆる種類のナフサ原料などの石油化学原料からの化学成分抽出プロセスに関しており、このプロセスは、あらゆる種類のナフサ原料を脱硫黄化プロセスにかけるステップと;脱硫黄化されたあらゆる種類のナフサ原料からC6−C11炭化水素留分を分離するステップと;芳香族化合物抽出装置内で、C6−C11炭化水素留分から芳香族化合物留分、芳香族化合物前駆体留分およびラフィネート留分を回収するステップと;芳香族化合物前駆体留分中の芳香族化合物前駆体を芳香族化合物に変換するステップと;芳香族化合物抽出装置のステップから芳香族化合物を回収するステップと、を備える。
【発明の概要】
【0028】
本発明の目的は、重質炭化水素原料の芳香族化合物(BTXE)およびLPGへのアップグレード方法を提供することである。
【0029】
本発明の別の目的は、高収率の芳香族化合物が得られる重質重炭化水素原料から、軽質オレフィンと芳香族化合物を製造するプロセスを提供することである。
【0030】
本発明の別の目的は、原油原料を炭素利用率と水素取り込みが高い石油化学製品にアップグレードするプロセスを提供することである。
【0031】
従って、本発明は、
(a)炭化水素原料を開環反応領域に供給するステップと;
(b)(a)からの流出物を、軽質沸点炭化水素を含むガス流と、ナフサ沸点範囲炭化水素を含む液流と、ディーゼル沸点範囲炭化水素を含む液流と、を生成する分離装置に供給するステップと;
(c)ナフサ沸点範囲炭化水素を含む前記液流を水素化分解装置に供給するステップと;
(d)ステップ(c)の前記水素化分解装置の反応生成物を、軽質沸騰炭化水素を含むオーバーヘッドガス流と、BTX(ベンゼン、トルエンおよびキシレンの混合物)含有底部流と、に分離するステップと;
(e)ステップ(d)の水素化分解装置からのオーバーヘッドガス流およびステップ(b)の分離装置からのガス流を、好ましくは前記ガス流から水素含有流れを分離後に、水蒸気分解装置と、プロパン脱水素装置、ブタン脱水素装置およびプロパン−ブタン組み合わせ脱水素装置の群から選択された少なくとも1つの装置と、に供給するステップと、を備える、製油所重質炭化水素の石油化学製品へのアップグレードプロセスに関する。
【0032】
本発明者らは、開環プロセスと、水素化分解装置すなわち所謂ガソリン水素化分解装置/供給物水素化分解装置(「GHC/FHC」)と、を組み合わることにより、プロセス全体では、LPGとBTXEに加えて燃料が生成されることはもはやなく、LPGとBTXEだけが生成されると考えている。BTXEは、そのすべての共沸騰成分(co−boilers)が分解されるにつれて、精製流としても直接得られ得る。LPGは、水蒸気分解およびまたはPDH/BDHに使用できる。そこで生成された水素は、これらの水素化処理ステップへの供給に使用できる。水素化脱硫(HDS)が必要な場合、触媒/プロセス要件に準じて、水素化脱窒素(HDN)を適用できる。本明細書では、「水素化分解」を一般に容認される意味で使用しており、従って、高分圧の水素の存在によりアシストされる接触分解プロセスとして定義され得る;例えばAlfkeら(2007)を参照のこと。このプロセスでの生成物は飽和炭化水素であり、温度、圧力および空間速度などの反応条件と触媒活性に応じて、芳香族炭化水素にはBTXが含まれる。
【0033】
本明細書における「LPG」は、「液化石油ガス」として十分に確立された頭字語である。LPGは、一般に、C3−C4炭化水素のブレンド、すなわちC3炭化水素とC4炭化水素の混合物で構成される。
【0034】
本発明のプロセスで生成される石油製品の1つはBTXである。本明細書における「BTX」は、ベンゼン、トルエンおよびキシレンの混合物に関する。好ましくは、本発明のプロセスで生成される生成物は、エチルベンゼンなどの有用な芳香族炭化水素をさらに含む。従って、本発明は、好ましくはベンゼン、トルエン、キシレンおよびエチルベンゼン(「BTXE」)の混合物を生成するプロセスを提供する。生成されたままの生成物は、異なる芳香族炭化水素の物理的混合物の場合もあり、あるいは、例えば蒸留によってさらに直接分離されて、精製された異なる生成物流が提供される場合もある。こうした精製された生成物流には、ベンゼン生成物流、トルエン生成物流、キシレン生成物流およびまたはエチルベンゼン生成物流が含まれる場合もある。「ナフテン炭化水素」あるいは「ナフテン」あるいは「シクロアルカン」は、本明細書では確立した意味を有するものとして使用されており、従って、それらの分子の化学構造において、1つまたは複数の炭素原子環を有するアルカンの種類に関する。
【0035】
開環プロセスからの液流出物あるいはリアクタ全流出物でも、好ましくは複数の環成分を含むより重質の循環流を単に分離後に、水素化分解装置(「GHC/FHC」)に供給される。これによって、開環プロセスが非常に簡略され、必要となる装置内の重複が低減される。別の実施形態では、液流出物は、水素化分解装置に入る前に気化されることに留意のこと。従って、水素化分解装置への供給物は、液相、気相あるいは気液混合相であってもよい。複数の水素添加・注入ポイントを有する水素ループは、両装置回り、すなわち開環反応領域と水素化分解装置(「GHC/FHC」)回りに適用できる。別の実施形態では、ナフサ流またはその一部だけがFHC/GHC反応部に送られて、重質材料はすべて再循環されてさらに変換され得、これによってフローチャートが簡略化される。
【0036】
本プロセスは、ステップ(c)の前記水素化分解装置の反応生成物を、軽質沸騰炭化水素を含むオーバーヘッドガス流とBTX含有底部流とに分離するステップをさらに備える。水素含有ガス流は、軽質沸騰炭化水素を含むオーバーヘッドガス流から分離されてもよい。
【0037】
本プロセスは、好ましくは、ステップ(d)の水素化分解装置からのオーバーヘッドガス流およびステップ(b)の分離装置からのガス流を、別の分離装置に供給するステップと、こうして分離された流れを前記水蒸気分解装置と前記脱水素装置とに供給するステップと、をさらに備える。
【0038】
本発明では、脱水素プロセスは触媒プロセスであり、水蒸気分解プロセスは熱分解プロセスである。
【0039】
好適な実施形態では、本プロセスは、水素化分解装置からのオーバーヘッド流および分離装置からのガス流を、好ましくはこれらのガス流から水素含有流れを分離後に、水蒸気分解装置と、プロパン脱水素装置、ブタン脱水素装置およびプロパン−ブタン組み合わせ脱水素装置の群から選択された1つまたは複数の装置と、に供給するステップをさらに備える。
【0040】
開環の添加によって、FHC/GHC装置に直接送る場合に比べて、より重質の供給物の処理が可能となる。さらに、開環プロセスの前に分離装置を添加することによって、FHC/GHC装置により、ナフサ範囲内で沸騰する供給物流内の任意のナフテン酸を芳香族化合物/BTXに変換できる。この方法では、開環プロセスだけの場合に比べてBTX収率がより高くなる。なぜなら、この方法でなければ、これらのナフテン酸は開環プロセスで分解されて、BTXではなくLPGが生成され得るためである。
【0041】
好適な実施形態では、本プロセスは、スプリッター装置(この装置から、ナフサ沸点範囲炭化水素が水素化分解装置内に直接供給され、その重質留分が開環反応領域内に供給される)内で炭化水素原料を前処理するステップをさらに備える。
【0042】
本プロセスは、好ましくは、炭化水素原料を芳香族化合物抽出装置(この装置から、芳香族リッチな流れが開環反応領域内に供給され、この芳香族化合物抽出装置は、蒸留装置タイプ、分子ふるいタイプおよび溶剤抽出装置タイプの群から選択される)内で前処理するステップをさらに備える。
【0043】
上記したようなスプリッターに加えて、水素化分解技術を用いて供給物を事前分解することによって、BTXに対する収率はさらに向上できる。こうした好適なプロセスによって、FHC/GHC部で処理できる供給材料の種類に基づいて、高度のナフテン酸および芳香族ナフサ範囲材料が生成でき、開環プロセス内へ直接供給する場合に比べて、より多くのナフテン酸が再度変換されるのに伴ってBTXが最大化できる。
【0044】
3つの反応部に対する水素ループは、純度、カスケード、圧力レベルに関して最適化できる。開環リアクタの出口での重質未変換材料は、開環プロセスあるいは第1の水素化分解ステップのいずれかに再循環させられる。
【0045】
従って、本プロセスは、好ましくは、炭化水素原料を事前水素化分解装置(この装置から、LPGを含むガス流は、水蒸気分解装置と、プロパン脱水素装置、ブタン脱水素装置およびプロパン−ブタン組み合わせ脱水素装置の群から選択された少なくとも1つの装置と、に供給され、そのより重質の炭化水素留分は開環反応領域に供給され、ナフサ沸点範囲炭化水素を含む流れは水素化分解装置に直接供給される)内で前処理するステップをさらに備える。
【0046】
本発明者らは、別の実施形態では、第1の事前水素化分解ステップを水素化脱アルキル化/改質プロセスで置換すると、高純度のBTXE流が得られることを見出した。その結果、事前水素化分解ステップの実施形態に比べて、より多くのBTXが生成できる。なぜなら、改質タイプの第1のリアクタにおいて「活性の」芳香族化合物がさらに生成されるためであり、このことは、ナフテンが芳香族化されるだけでなく、一部の環がさらに形成されているに違いないことを意味する。
【0047】
従って、本プロセスは、好ましくは、炭化水素原料を水素化脱アルキル/改質タイプ装置(この装置から、BTXE流が得られ、LPGを含むガス流は、水蒸気分解装置、プロパン脱水素装置、ブタン脱水素装置およびプロパン−ブタン組み合わせ脱水素装置の群から選択された1つまたは複数の装置に供給され、そのより重質の炭化水素留分は開環反応領域内に供給される)内で前処理するステップをさらに備える。
【0048】
本プロセスは、好ましくは、水素化分解装置の底部流、例えばBTXリッチな流れをアルキル交換反応装置に供給するステップをさらに備える。
【0049】
また、本プロセスは、好ましくは、分離装置からのディーゼル沸点範囲炭化水素を含む液流を芳香族化合物飽和装置に供給するステップをさらに備える。
【0050】
本プロセスは、好ましくは、分離装置からのガス流、水素化脱アルキル/改質タイプ装置からのガス流および事前水素化分解装置からのガス流のうちの少なくとも1つを水素化分解装置に供給するステップをさらに備える。別の実施形態では、水素化脱アルキル/改質タイプ装置からの流れおよび事前水素化分解装置からの流れのうちの少なくとも1つは、開環反応領域に送られる。こうした流れはガス流であり得る。
【0051】
水素化分解装置からのオーバーヘッド流、分離装置からのガス流および潜在的には事前水素化分解装置と水素化脱アルキル/改質タイプ装置からのガス流は、それぞれ主にC2パラフィン、C3パラフィンおよびC4パラフィンを含む個々の流れ内に分離でき、個々の流れのそれぞれは、水蒸気分解装置の特定の炉部に供給され、水素含有流れは、水素化分解装置や開環反応領域などの1つまたは複数の水素消費プロセス装置に送られる。
【0052】
好適な実施形態では、水蒸気分解装置に送られるガス流の一部は脱水素装置に送られるが、この場合、特に別個のC3流とC4流として、より好適にはC3+C4の混合流として、C3−C4留分だけを脱水素装置に送ることが好ましい。
【0053】
従って、本方法は、混合生成物流を生成するために、水蒸気分解装置と、ブタン脱水素装置、プロパン脱水素装置、プロパン−ブタン組み合わせ脱水素装置あるいはこれらの装置の組み合わせの群から選択された少なくとも1つの装置と、の組み合わせを含む。装置のこの組み合わせによって、高収率の所望の生成物、すなわちオレフィンと芳香族石油化学製品が得られ、LPGに変換された原油の割合は著しく高い。
【0054】
好適な実施形態では、ガス流、例えばステップ(d)の水素化分解装置からのオーバーヘッドガス流およびステップ(b)の分離装置からのガス流は、1つまたは複数の流れ内に分離され、水素を含む流れは、好ましくは水素化分解目的用の水素源として使用され;メタンを含む流れは、好ましくは燃料源として使用され;エタンを含む流れは、好ましくは水蒸気分解装置用の供給物として使用され;プロパンを含む流れは、好ましくはプロパン脱水素装置用の供給物として使用され;ブタンを含む流れは、好ましくはブタン脱水素装置用の供給物として使用され;C1以下を含む流れは、好ましくは燃料源およびまたは水素源として使用され;C3以下を含む流れは、好ましくはプロパン脱水素装置用の供給物として使用されるが、別の実施形態では、水蒸気分解装置用の供給物としても使用され;C2−C3を含む流れは、好ましくはプロパン脱水素装置用の供給物として使用されるが、別の実施形態では、水蒸気分解装置用の供給物としても使用され;C1−C3を含む流れは、好ましくはプロパン脱水素装置用の供給物として使用されるが、別の実施形態では、水蒸気分解装置用の供給物としても使用され;C1−C4ブタンを含む流れは、好ましくはブタン脱水素装置用の供給物として使用され;C2−C4ブタンを含む流れは、好ましくはブタン脱水素装置用の供給物として使用され;C2以下を含む流れは、好ましくは水蒸気分解装置用の供給物として使用され;C3−C4を含む流れは、好ましくはプロパンまたはブタン脱水素装置用、あるいはプロパン−ブタン組み合わせ脱水素装置用の供給物として使用され;C4以下を含む流れは、好ましくはブタン脱水素装置用の供給物として使用される。
【0055】
本プロセスは、水蒸気分解装置、プロパン脱水素装置、ブタン脱水素装置およびプロパン−ブタン組み合わせ脱水素装置の群から選択された1つまたは複数の装置の反応生成物から水素を回収するステップと;こうして回収された水素を水素化分解装置および開環反応領域に供給するステップと、をさらに備え、特に、脱水素装置から水素を回収するステップと;こうして回収された水素を、水素化分解装置や開環反応領域などの任意の水素消費装置に供給するステップと、をさらに備える。
【0056】
開環反応領域で適用されるプロセス条件としては、好ましくは、温度が100℃〜500℃であり、圧力が2〜10MPaであり、芳香族化合物水素化触媒上の原料1,000kg当たりの水素量は50〜300kgであり、得られた流れは、温度200℃〜600℃、圧力1〜12MPa、環開裂触媒上の得られた流れ1,000kg当たりの水素量50〜200kgの環開裂装置に送られる。
【0057】
「(芳香族化合物)開環装置」は、沸点が灯油および軽油沸点範囲内の芳香族炭化水素が比較的リッチな供給物の変換に適した水素化分解プロセスにより、LPGと、プロセス条件に応じて軽質留出物(ARO由来ガソリン)と、を生成する精製装置を指す。こうした芳香環開環プロセス(AROプロセス)は、例えば米国特許第7,513,988号に記載されている。従って、AROプロセスは、芳香族化合物水素化触媒の存在下、温度300〜500℃、圧力2〜10MPa、水素量10〜30質量%(炭化水素原料に対して)の条件で実施される芳香環飽和と;環開裂触媒の存在下、温度200〜600℃、圧力1〜12MPa、水素量5〜20質量%(炭化水素原料に対して)の条件で実施される環開裂と、を備えていてもよく、前記芳香環飽和と環開裂は、1つのリアクタ内で行われても、あるいは2つの連続するリアクタ内で行なわれてもよい。芳香族化合物水素化触媒は、典型的にはアルミナである耐火性支持体上にNi、WおよびMoの混合物を含む触媒などの、従来の水素化/水素処理触媒であってもよい。環開裂触媒は金属成分と支持体を含み、好ましくは、Pd、Rh、Ru、Ir、Os、Cu、Co、Ni、Pt、Fe、Zn、Ga、In、Mo、WおよびVから構成される群から選択された1つまたは複数の金属を含む。芳香環飽和条件下での滞留時間を適応させることによって、完全飽和とその後のすべての環の開裂に向けて(芳香環飽和条件下で比較的長い滞留時間)、あるいは1つの芳香環の未飽和の維持とその後の1つを除くすべての環の開裂に向けて(芳香環飽和条件下で比較的短い滞留時間)、本プロセスを誘導できる。後者の場合、AROプロセスによって、1つの芳香環を有する炭化水素化合物が比較的リッチな軽質留出物(「AROガソリン」)が生成される。
【0058】
分離装置内で適用されるプロセス条件としては、好ましくは、温度が149℃〜288℃、圧力が1MPa〜17.3Mpaである。
【0059】
水素化分解装置内で適用されるプロセス条件としては、好ましくは、反応温度が300〜580℃、好適には450〜580℃、より好適には470〜550℃であり;圧力が0.3〜5MPa(ゲージ圧)、好適には0.6〜3MPa(ゲージ圧)、特に好適には1000〜2000kPa(ゲージ圧)、最も好適には1〜2MPa(ゲージ圧)、さらに最も好適には1.2〜1.6Mpa(ゲージ圧)であり;単位時間当りの質量空間速度(WHSV)が0.1〜10h、好適には0.2〜6h/h、より好適には0.4〜2/hである。
【0060】
水蒸気分解装置で適用されるプロセス条件としては、好ましくは、反応温度が750〜900℃であり、滞留時間が50〜1000msであり、圧力は大気圧〜175kPa(ゲージ圧)の範囲で選択される。
【0061】
アルカンからオレフィンへの変換プロセスとして非常に一般的なものは、本明細書で用いているような「水蒸気分解」を備えており、この「水蒸気分解」は、飽和炭化水素を小さな、多くの場合不飽和の炭化水素(エチレンやプロピレンなど)に分解する石油化学プロセスに関する。蒸気分解では、エタン、プロパン、ブタンあるいはこれらの混合物のようなガス状炭化水素供給物(ガス分解)、あるいはナフサや軽油のような液体炭化水素供給物(液体分解)は、蒸気で希釈され、酸素非存在下で短時間加熱される。典型的には、反応温度は約850℃と非常に高いが、反応は、滞留時間が通常50〜500msと非常に短い間だけ起こる。好ましくは、炭化水素化合物であるエタン、プロパンおよびブタンは最適条件で確実に分解されるように、別々に、従って専用の炉内で分解される。分解温度に達すると、クエンチングオイルを用いてガスを急冷し、搬送ライン熱交換器内あるいはクエンチングヘッダ内部の反応を停止させる。水蒸気分解によって、炭素の形態のコークスがリアクタ壁上にゆっくり堆積する。デコーキングでは、炉をプロセスから切り離す必要があり、その後、蒸気または蒸気/空気混合物を炉コイルを通過させて流す。これによって、硬い固体カーボン層を一酸化炭素と二酸化炭素に変換する。この反応が完了すると、炉は使用可能となる。水蒸気分解で生成される生成物は、供給物の組成および炭化水素と蒸気との比に、また分解温度と炉内滞留時間に依存する。エタン、プロパン、ブタンあるいは軽質ナフサなどの軽質炭化水素供給物では、エチレン、プロピレンおよびブタジエンを含むより軽質なポリマーグレードオレフィンリッチな生成物流が得られる。より重質な炭化水素(全範囲および重質ナフサと軽油留分)でも、芳香族炭化水素リッチな生成物が得られる。
【0062】
水蒸気分解によって生成された異なる炭化水素化合物を分離するには、分解ガスを分別装置に投入する。こうした分別装置は当分野では周知であり、重質留分(「カーボンブラックオイル」)と中間留分(「分解留出油」)を軽質留分とガスから分離する所謂ガソリン分別装置が挙げられ得る。以降の急冷塔では、水蒸気分解で生成された軽質留分(「分解ガソリン」あるいは「pygas」)の大部分は、軽質留分を液化させることによりガスから分離してもよい。その後、ガスを多段圧縮ステージにかけて、軽質留分の残りを圧縮ステージ間でガスから分離させてもよい。また、酸性ガス(CO
2とH
2S)を圧縮ステージ間で除去してもよい。次のステップで、熱分解で生成されたガスを、カスケード冷凍システムのステージ上で、気相には水素だけが残る程度までに部分的に液化させてもよい。異なる炭化水素化合物はその後単蒸留で分離してもよく、ここでは、エチレン、プロピレンおよびC4オレフィンが水蒸気分解で生成された最も重要な高価値化学物質となる。水蒸気分解で生成されたメタンは燃料ガスとして一般に使用され、水素は分離されて、水素化分解プロセスなどの水素消費プロセスに再循環されてもよい。水蒸気分解で生成されたアセチレンは、好ましくは選択的に水素化されてエチレンになる。分解ガス中に含まれるアルカンは、アルカンをオレフィンに変換するプロセスに再循環されてもよい。
【0063】
本明細書における「プロパン脱水素装置」は、プロパン供給物流をプロピレンと水素を含む生成物に変換する石油化学プロセス装置に関する。従って、「ブタン脱水素装置」は、ブタン供給物流をC4オレフィンに変換するプロセス装置に関する。プロパンやブタンなどの低級アルカンの脱水素プロセスは、共に低級アルカン脱水素プロセスとして記載される。低級アルカンの脱水素プロセスは当分野では周知であり、酸化的水素化プロセスと非酸化的脱水素プロセスが挙げられる。酸化的脱水素プロセスでは、プロセス加熱は、供給物中の低級アルカンの部分酸化によって得られる。本発明の文脈では好適な非酸化的脱水素プロセスでは、吸熱性の脱水素化反応用のプロセス加熱は、燃料ガスの燃焼または蒸気で得られる高温燃焼排ガスなどの外部熱源から得られる。例えば、UOP社のOleflexプロセスでは、流動床リアクタ内で、アルミナ上に担持されたプラチナを含む触媒の存在下、プロパンの脱水素によってプロピレンが形成され、(イソ)ブタンの脱水素によって(イソ)ブチレン(あるいはこれらの混合物)が形成される:例えば米国特許第4,827,072号を参照のこと。Uhde STARプロセスでは、亜鉛−アルミナスピネル上に担持された促進白金触媒の存在下、プロパンの脱水素によってプロピレンが形成され、ブタンの脱水素によってブチレンが形成される:例えば米国特許第4,926,005号を参照のこと。STARプロセスは、最近、オキシ脱水素の原理を適用することによって改良された。リアクタ内の第2の断熱帯において、中間生成物からの水素の一部は、添加された酸素と共に選択的に変換されて水を形成する。これによって熱力学的平衡がより高い変換にシフトし、より高い収率が達成される。また、吸熱性の脱水素化反応に必要な外部熱の一部は、発熱を伴う水素変換によって供給される。Lummus Catofinプロセスでは、周期的に作動する多くの固定床リアクタを用いている。触媒は、18〜20質量%のクロムを含浸させた活性アルミナである;例えば欧州特許第EP0192059A1号および英国特許第GB2162082A号を参照のこと。Catofinプロセスは耐久性があり、白金触媒の作用を減じ得る不純物に対応できるとされる。ブタン脱水素プロセスで生成される生成物は、使用されたブタン供給物とブタン脱水素プロセスの特質に依存する。また、Catofinプロセスでは、ブタンの脱水素によってブチレンが形成される:例えば米国特許第7,622,623号を参照のこと。
【0064】
ステップ(a)の炭化水素原料は、シェール油、原油、灯油、ディーゼル、常圧軽油(AGO)、ガスコンデンセート、ワックス、原油混入ナフサ、減圧軽油(VGO)、減圧残油、常圧残油、ナフサおよび前処理されたナフサ、あるいはこれらの組み合わせの群から選択される。他の好適な原料は、軽質循環油/重質循環油(LCO/HCO)、コークス器ナフサおよびディーゼル、FCCナフサおよびディーゼル、さらにはスラリーオイルである。
【0065】
以下、添付図を参照して本発明をさらに詳細に説明する。図面中、同じまたは同様の要素は同じ参照番号で示す。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【
図1】本発明のプロセスのある実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0067】
図1に概略的に示したプロセスと装置を参照して、プロセス101は、製油所重質炭化水素を石油化学製品にアップグレードするものである。炭化水素原料5は開環反応領域1に送られ、その流出物17は、LPGを含むガス流4、ナフサ沸点範囲炭化水素を含む液流18およびディーゼル沸点範囲炭化水素を含む液流15を生成する分離装置2に送られる。ディーゼル沸点範囲炭化水素を含む流れ15は、好ましくは開環反応領域1の入口に再循環される。ナフサ沸点範囲炭化水素を含む流れ18は、LPGを含むオーバーヘッドガス流9と、BTXなどの芳香族炭化水素を含む底部流11と、を生成する水素化分解装置3に送られる。流れ4と流れ9は流れ10として混合されて、水蒸気分解装置内と、プロパン脱水素装置、ブタン脱水素装置およびプロパン−ブタン組み合わせ脱水素装置の群から選択された脱水素装置内でさらに処理される。この実施形態では、ガス流10は、最初に分離装置20で個々の流れ24、25、26内に分離される。しかしながら、流れの数は限定されない。軽質炭化水素留分24はガス水蒸気分解装置22に送られ、その流出物は、いくつかの分離装置を備え得るさらなる分離部23に送られる。流れ25と26は、プロパン脱水素装置、ブタン脱水素装置およびプロパン−ブタン組み合わせ脱水素装置などのいくつかの脱水素装置を備え得る脱水素部21内で処理される。脱水素流出物28は分離装置23に送られ、例えばオレフィン含有流れなどの個々の流れ29、30内に分離される。しかしながら、流れの数は限定されない。別の実施形態では、流れ4(の一部)は、LPGを含むオーバーヘッドガス流9と、BTXなどの芳香族炭化水素を含む底部流11と、を生成する水素化分解装置3に送られてもよい。
【0068】
プロセス201(
図2参照)では、炭化水素原料5は、ナフサ沸点範囲炭化水素を含む流れ16を生成するスプリッター装置5内で前処理される。流れ16は、水素化分解装置3に直接送られる。重質炭化水素を含むスプリッター装置5の流出物は、開環反応領域1に送られる。開環反応領域1では、流出物流17が生成される。流れ17は、LPGを含むガス流4、ナフサ沸点範囲炭化水素を含む液流18、およびディーゼル沸点範囲炭化水素を含む流れ15を生成する分離装置2に送られる。ディーゼル沸点範囲炭化水素を含む流れ15は、好ましくは開環反応領域1の入口に再循環される。流れ18は、LPGを含むオーバーヘッドガス流9と、BTXを含む底部流11と、を生成する水素化分解装置3内でさらに変換される。上記の
図1の議論で言及したように、流れ4と流れ9を流れ10として混合して、さらに処理してもよい。別の実施形態では、流れ4(の一部)は、LPGを含むオーバーヘッドガス流9と、BTXなどの芳香族炭化水素を含む底部流11と、を生成する水素化分解装置3に送られてもよい。
【0069】
BTXに対する収率は、
図2で上記に議論したスプリッター装置5に加えて、事前水素化分解装置6を設けることによってさらに向上させられる。
図3のプロセス301では、炭化水素原料5は、ガス流13とナフサを含む底部流8とを生成する事前水素化分解装置6内で事前水素化分解される。流れ8は、水素化分解装置3に直接送られる。事前水素化分解装置6からの重質留分は、開環反応領域1に送られる。開環反応領域1では、事前水素化分解装置6からの炭化水素は流出物17内に変換される。流出物17は、LPGを含むガス流4、ナフサ沸点範囲炭化水素を含む液流18、およびディーゼル沸点範囲炭化水素を含む流れ15を生成する分離装置2に送られる。ディーゼル沸点範囲炭化水素を含む流れ15は、事前水素化分解装置6の入口に再循環される。流れ18は、LPGを含むオーバーヘッドガス流9とBTXを含む底部流11とを生成する水素化分解装置3に供給される。
図1で上記に議論したように、ガス流4と9を流れ10として混合して、さらに処理してもよい。
【0070】
別の実施形態では、流れ4と流れ13(の一部)は、LPGを含むオーバーヘッドガス流9と、BTXなどの芳香族炭化水素を含む底部流11と、を生成する水素化分解装置3に送られてもよい。また、流れ13(の一部)は、開環反応領域1に送られてもよい。
図4のプロセス4に示す別の実施形態では、
図3で上記に議論した第1の水素化分解ステップは、BTXE流12とLPGを含むガス流14とが得られる水素化脱アルキル装置7で置換されてもよい。装置7からの重質留分は、開環反応領域1に送られて流出物17が生成される。開環反応領域1からの流出物17は、LPGを含むガス流4、ナフサ沸点範囲炭化水素を含む液流18、およびディーゼル沸点範囲炭化水素を含む流れ15を生成する分離装置2に送られる。ディーゼル沸点範囲炭化水素を含む流れ15は、水素化脱アルキル装置7の入口に再循環される。流れ18は、LPGを含むオーバーヘッドガス流9とBTXを含む底部流11とを生成する水素化分解装置3に送られる。装置7で生成されたBTXEリッチの流れは、水素化分解装置3内でさらに処理されてもよい。上記
図1で議論したように、ガス流14、4および9を流れ10として混合して、さらに処理してもよい。別の実施形態(図示せず)では、流れ4と流れ14(の一部)は、LPGを含むオーバーヘッドガス流9と、BTXなどの芳香族炭化水素を含む底部流11と、を生成する水素化分解装置3に送られてもよい。また、流れ14(の一部)は、開環反応領域1に送られてもよい。
【0071】
図5に示すような好適な実施形態において、製油所重質炭化水素を石油化学製品にアップグレードするプロセス501では、炭化水素原料5は開環反応領域1に送られ、その流出物17は、LPGを含むガス流4、ナフサ沸点範囲炭化水素を含む液流18、およびディーゼル沸点範囲炭化水素を含む液流15を生成する分離装置2に送られる。ディーゼル沸点範囲炭化水素を含む流れ15(の一部)は、開環反応領域1の入口に再循環させてもよい。
図5は、ディーゼル沸点範囲炭化水素を含む流れ15が、流れ51を生成する芳香族化合物飽和装置50に、流れ49として送られることも示している。残りのプロセス装置と流れは、上記の
図1で言及したものと同様である。別の実施形態では、流れ4(の一部)は、LPGを含むオーバーヘッドガス流9と、BTXなどの芳香族炭化水素を含む底部流11と、を生成する水素化分解装置3に送られてもよい。
【0072】
別の好適な実施形態では、ベンゼンとトルエンの少なくとも一部およびC9−C10芳香族化合物は、アルキル交換反応帯に導入される。プロセス601として
図6に示したこの実施形態では、流れ11は、キシレン化合物の生成を高めるアルキル交換反応帯60に導入されて、流れ62が生成される。ワンススルー水素リッチガス流61もアルキル交換反応帯60に導入される。水蒸気分解装置や脱水素装置の反応生成物から回収された水素などのこのガス流61は、他の水素生成装置から得られてもよい。アルキル交換反応帯で好適に採用される運転条件としては、温度が177℃〜525℃であり、単位時間当たりの液空間速度が0.2〜10/hの範囲である。このアルキル交換反応帯では、適切なアルキル交換反応触媒の任意のものを使用してもよい。好適なアルキル交換反応触媒は、分子篩、耐火性無機酸化物および還元非フレームワーク弱金属(a reduced non−framework weak metal)を含む。好適な分子篩は、シリカとアルミナとの比が10超であり、気孔径が5〜8Åであれば任意のものでよい、MFIタイプのゼオライトなどのゼオライト系アルミノシリケートである。別の実施形態では、流れ4(の一部)は、LPGを含むオーバーヘッドガス流9と、BTXなどの芳香族炭化水素を含む底部流11と、を生成する水素化分解装置3に送られてもよい。
【0073】
(実施例)
ここで使用されるプロセススキームは、
図1に示したプロセスに準じたものである。炭化水素原料5は開環反応領域1内に供給され、この反応領域から生成された反応生成物17は、装置2によって、オーバーヘッド流4、側流18および底部流15内に分離される。側流18はガソリン水素化分解(GHC)装置3内に供給され、GHC装置3の反応生成物は、C2−C4パラフィン、水素およびメタンなどの軽質成分を含むオーバーヘッドガス流9内と、主に芳香族炭化水素化合物と非芳香族炭化水素化合物を含む流れ11内と、に分離される。ガソリン水素化分解装置(GHC)装置3からのオーバーヘッドガス流9は、装置2からの流れ4と混合される。
【0074】
ケース1(本発明による実施例)では、原料としての灯油は開環反応領域に送られ、その側流はガソリン水素化分解(GHC)装置に送られ、LPG留分は、装置2のオーバーヘッドから分離される。
【0075】
ケース2(本発明による実施例)では、原料としての軽質減圧軽油(LVGO)は開環反応領域に送られ、その側流はガソリン水素化分解(GHC)装置に送られ、LPG留分は装置2のオーバーヘッドから分離される。
【0076】
灯油とLVGOの特性を表1に示す。表2は、供給物中の単環芳香族化合物および複数の環を有する芳香族分子(2+芳香族化合物)の割合を示す。表3は、バッテリーリミット生成物スレート(the battery limit product slate)(原料中の質量%)を示す。
【0080】
上記のデータは、開環反応領域と供給物のガソリン水素化分解(GHC)を設けることによって、多環芳香族分子がより価値のある単環芳香族化合物とLPGに変換されることを示している。また、BTXは、ナフテンの単環芳香族化合物への脱水素からも得られる。