(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6574437
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】安定性と熱効率が向上された二重調理容器
(51)【国際特許分類】
A47J 27/00 20060101AFI20190902BHJP
【FI】
A47J27/00 101C
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-557861(P2016-557861)
(86)(22)【出願日】2014年12月5日
(65)【公表番号】特表2016-539780(P2016-539780A)
(43)【公表日】2016年12月22日
(86)【国際出願番号】KR2014011959
(87)【国際公開番号】WO2015084109
(87)【国際公開日】20150611
【審査請求日】2017年12月5日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0150355
(32)【優先日】2013年12月5日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】516167613
【氏名又は名称】サンミ インダストリアル カンパニー
【氏名又は名称原語表記】SAMMI INDUSTRIAL CO.
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】特許業務法人共生国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100125254
【弁理士】
【氏名又は名称】別役 重尚
(74)【代理人】
【識別番号】100118278
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 聡
(72)【発明者】
【氏名】キム チャシク
【審査官】
根本 徳子
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2012/0217252(US,A1)
【文献】
韓国公開特許第10−2008−0095456(KR,A)
【文献】
特表平07−506996(JP,A)
【文献】
国際公開第92/013476(WO,A1)
【文献】
特開平10−099190(JP,A)
【文献】
特開平4−325124(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外筒(1)の内側に内筒(2)が備えられて二重構造を形成し、前記内筒を外筒の内側に挿入して前記外筒の底面と前記内筒の底面が一定間隔を保持して保熱空間(3)を形成し、前記保熱空間と連通するように前記外筒と前記内筒との間に側面流路(4)が形成された二重調理容器において、
前記外筒(1)に側面流路(4)と連通する1つまたは複数の排出孔(5)が形成され、前記排出孔(5)の総断面積が1〜25πmm2であり、前記保熱空間(3)の高さが3〜15mmであり、前記排出孔(5)の直径が2〜6mmであり、前記保熱空間(3)の体積が7〜15clであることを特徴とする二重調理容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安定性と熱効率が向上された二重調理容器に関するもので、詳しくは、外筒の内側に内筒が備えられた二重構造を形成し、上記内筒を外筒の内側に挿入して、上記外筒の底面と上記内筒の底面が一定間隔を保持して保熱空間を形成し、上記保熱空間と連通するように上記外筒と上記内筒との間に側面流路が形成された二重調理容器において、上記外筒に側面流路と連通する1つまたは複数の排出孔が形成され、安定性を確保しながらも高い熱効率を実現するために、上記排出孔の総断面積が一定範囲以内に制御されることを特徴とする。
【背景技術】
【0002】
一般に、調理容器は底面から熱を加えると、底面の熱伝導によって内部に収容された食物の調理が行われるが、この時、上記調理容器の底面は熱伝達が即時に行われるように単層に構成される。
【0003】
しかしながら、調理容器の底面が単層からなる場合、食物の調理容器内の位置によって加熱される程度が異なるため、ある部分は焦げ、ある部分は煮が足りないという問題が発生することがある。
【0004】
このような問題を解決するために、調理容器の底面を二重に構成して外筒と内筒との間に空間を形成することにより、内筒の内側に収容された食物が均一に加熱されるようにする製品が開発されている。
【0005】
上記のように、底面を二重に構成した調理容器の場合、内部空間の体積の膨張による爆発などの安全事故を防止するために、一般的に外筒の部分に直径1mm以下の微細な排出孔を形成する。
【0006】
しかしながら、調理容器の場合、洗浄過程を経るため、上記排出孔を通じて内部空間に水のような異物が流入されやすく、水の場合、水蒸気で膨張しながら体積が約1000倍程度増えるため、従来のように排出孔を形成した場合でも、管理が不十分な場合、爆発が発生したり、容器が変形することが発生した。また、このような問題点を解決するために、排出孔の大きさをむやみに増やす場合、熱効率が急激に低下して、調理時間が長くなる問題が発生することがある。
【0007】
そこで、水のような異物が流入した場合でも、事故や製品の変形を防止することができ、排出孔の形成による熱効率の低下を最小化することができる二重調理容器の開発が必要になった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のような問題点を解決するために、本発明は、排出孔の総断面積を一定範囲以内に制御することにより、水のような異物が流入した場合でも、調理過程で事故や製品の変形を防止することができ、排出孔の形成により熱効率の低下を最小化することができる安定性と熱効率が向上された二重調理容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述したような目的を達成するために、本発明の二重調理容器は、外筒(1)の内側に内筒(2)が備えられて二重構造を形成し、前記内筒を外筒の内側に挿入して前記外筒の底面と前記内筒の底面が一定間隔を保持して保熱空間(3)を形成し、前記保熱空間と連通するように前記外筒と前記内筒との間に側面流路(4)が形成された二重調理容器において、前記外筒(1)に側面流路(4)と連通する1つまたは複数の排出孔(5)が形成され、前記排出孔(5)の総断面積が1〜25πmm
2で
あり、前記保熱空間(3)の高さが3〜15mmであり、前記排出孔(5)の直径が2〜6mmであり、前記保熱空間(3)の体積が7〜15clであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
以上で説明したように、本発明による二重調理容器は、従来の二重調理容器とは異なって、排出孔の総断面積を制御することにより、水のような異物が流入した場合でも、調理過程で事故や製品の変形を防止することができ、排出孔の形成による熱効率の低下を最小化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明による二重調理容器の構成を説明するための断面図である。
【
図2a】本発明の一実施例による一つの排出孔が形成された二重調理容器の排出孔の断面積による調理時間の変化を示すグラフである。
【
図2b】本発明の一実施例による2つの排出孔が形成された二重調理容器の排出孔の断面積による調理時間の変化を示すグラフである。
【
図2c】本発明の一実施例によるバイメタルセンサーが形成された二重調理容器の排出孔の断面積による調理時間の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下では、本発明の安定性と熱効率が向上された二重調理容器を実施例及び図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
本発明の二重調理容器は、
図1に示すように、外筒1の内側に内筒2が備えられて二重構造を形成し、上記内筒を外筒の内側に挿入して上記外筒の底面と上記内筒の底面が一定間隔を保持して保熱空間3を形成し、上記保熱空間と連通するように上記外筒と上記内筒との間に側面流路4が形成された二重調理容器において、上記外筒1に側面流路4と連通する1つまたは複数の排出孔5が形成され、安定性を確保しながらも高い熱効率を実現するために、上記排出孔5の総断面積は1〜25πmm
2であることを特徴とする。
【0017】
一般的な二重構造を有する調理容器の場合、加熱による体積膨張に起因する事故を防止するために、外筒の一部分に直径1mm以下の微細な排出孔を形成することが一般的である。しかしながら、調理容器の場合、洗浄過程で排出孔を通じて内部空間に水のような異物が流入されやすく、水の場合、水蒸気で膨張しながら体積が約1700倍程度増えるため、従来のように排出孔を形成した場合でも管理が不十分で爆発が発生したり、容器が変形されることが頻繁に発生した。また、このような問題点を解決するために、排出孔の大きさをむやみに増やす場合、熱効率が低下して調理時間が長くなるという欠点がある。
【0018】
そこで、本発明では、1つまたは複数の排出孔5を側面流路4と連通するように形成し、その断面積が1〜25πmm
2の範囲以内に制御されることにより、爆発や容器形態の変形を防止するとともに、熱効率の低下を最小化することができる。
【0019】
この時、上記断面積を有する排出孔5と連通する保熱空間3の高さは3〜15mmであり、体積は7〜15mlあることが好ましい。一般の調理容器は、用途によって、直径16cm以上から32cm以下まで、多様な大きさを有するが、調理容器の大きさに関係なく、上記保熱空間3の高さと体積は一定範囲を保持することが好ましい。
【0020】
詳しくは、大きさ、つまり直径の小さい調理容器の場合、保熱空間3の高さを一定範囲に高めて底面の温度が急速に加熱されて食物が焦げることを防止し、大きさの大きい調理容器の場合、保熱空間3の高さを一定範囲に下げて、調理時間があまりにも長くなることを防止することができる。
【0021】
一方、上記保熱空間3の内部に水が入る場合、水蒸気の発生による突然の体積膨張により調理容器が爆発したり形が変形される問題を防止するために、上記の断面積を有する排出孔5の直径は最小2mm以上であることが好ましく、この時、熱効率の低下や異物の流入などを考慮して、上記排出孔5の直径は2〜6mmであることが好ましく、さらに好ましくは3〜5mmに形成することができる。
【0022】
また、上記排出孔5が形成された側面流路4の一側には、
図1に示すように、上記保熱空間3と側面流路4の温度によって自動的に開閉されるバイメタルセンサー6を装着することができる。上記側面流路4の一側に形成されたバイメタルセンサー6は、保熱空間3と側面流路4の温度によって排出孔5の自動開閉動作をする。
【0023】
上記バイメタルセンサー6は、一定温度に達するまで排出孔5を塞ぐ役割を果たすので、加熱初期に熱効率を上げる役割を果たすとともに、洗浄工程などで異物の流入を防止する役割も果たすことができる。この時、熱効率および外部異物の流入などを考慮して、上記バイメタルセンサー6が装着された排出孔5の直径を2〜10mmに形成することができる。
【0024】
上記バイメタルセンサー6は、温度によって伸長される長さが互いに異なるように設定された金属からなるバイメタル素材で製作され、その他にも設定温度または設定圧力等により動作する多様な装置を適用することができ、一実施例として設定圧力以上である時に動作する板バネで別途の開閉装置を作ることができる。
【0025】
上記バイメタルセンサー6は、商業的に適用可能な多様な方式で上記排出孔5に装着することができる。一実施例として、
図1に示すように、側面流路4の上側に保熱空間3と連通された吐出孔5が備えられ、その下側には、ヒンジ締結ネジが締結されるためのヒンジ締結具が備えられ、上記バイメタルセンサー6は、上記吐出孔5を塞ぐために突出して形成されたエンボシング部の上側に備えられ、下側にはヒンジ締結ねじによって締結されるための孔が備えられることができる。
【0026】
上記のような構成を通じて設定温度以上である場合、バイメタルセンサー6が下側に締結された部分を中心に外筒1と遠くなる方向に回転されてエンボシング部が吐出孔5から離隔されるように動作させることができる。
【0027】
上記バイメタルセンサー6の代わりに板バネを使用する場合は、上記保熱空間3の内側が加熱されて高温高圧になる場合、上記保熱空間3の空気が上記板バネを押して外側に排気されるように動作させることもできる。
【0028】
一方、上記外筒の内側に内筒を固定するに際において、多様な方式が制限なく適用されることができ、
図1に示すように、固定部材の締結作業によって側面が加圧されて固定されるように構成することもでき、別途の焼成加工や皮膜処理を通じて固定することもできる。また、必要に応じてハンドルなどを設置することができる。
【0029】
以下、本発明の一実施形態による安定性と熱効率が向上された二重調理容器の多様な実施例について説明する。しかし、本発明の範囲が以下の好ましい実施例に限定されるのではなく、当業者であれば、本発明の権利範囲内で本明細書に記載された内容の様々な変形された形態に実施することができる。
【0030】
[実施例1]吐出孔の直径による二重調理容器の形態変形測定
外筒と内筒の二重構造からなり、外筒の底面と内筒の底面との間の保熱空間の体積が10mlで、直径24cmの二重調理容器を吐出孔の直径の大きさ別に用意した。上記保熱空間に1mlの水を流入させた後、家庭用ガスレンジの強い火で調理容器内の水が沸騰するまで加熱させて二重調理容器の形態変形の有無を測定した。
【0032】
上記のような結果は、吐出孔の数に関係なく、繰り返し実験によって確認することができ、これを通じて水のような異物が流入した場合、調理過程で事故や製品の変形を防止するために排出孔の大きさが2mm以上である必要があることを確認することができた。
【0033】
[実施例2]一つの排出孔が形成された二重調理容器の排出孔の断面積による調理時間の変化測定
外筒と内筒の二重構造からなり、外筒の底面と内筒の底面との間の保熱空間の体積が10mlであり、一つの排出孔が形成された直径24cmの二重調理容器を排出孔の断面積大きさ別(直径2mm以上)に用意した。上記用意された二重調理容器を家庭用ガスレンジの強い火で加熱させて調理容器内の水が沸騰するまでかかる時間を測定した後、その結果を
図2aに示した。図面から分かるように、排出孔の断面積が25πmm
2を超える時調理時間が明確に増加することが分かる。
【0034】
[実施例3]二つの排出孔が形成された二重調理容器の排出孔の断面積による調理時間の変化測定
外筒と内筒の二重構造からなり、外筒の底面と内筒の底面との間の保熱空間の体積が10mlで、同じ大きさの2つの排出孔が形成された直径24cmの二重調理容器を排出孔の断面積大きさ別(直径2mm以上)に用意した。上記用意された二重調理容器を家庭用ガスレンジの強い火で加熱させて調理容器内の水が沸騰するまでかかる時間を測定した後、その結果を
図2bに示した。図面から分かるように、排出孔の断面積が25πmm
2を超える時調理時間が明確に増加することが分かる。
【0035】
[実施例4]バイメタルセンサーが形成された二重調理容器の排出孔の断面積による調理時間の変化測定
実施例2のように二重調理容器を排出孔の断面積大きさ別(直径2mm以上)に用意し、排出孔にバイメタルセンサーを搭載した。上記用意された二重調理容器を家庭用ガスレンジの強い火で加熱させて調理容器内の水が沸騰するまでかかる時間を測定した後、その結果を
図2cに示した。図面から分かるように、バイメタルを装着した場合、熱効率がより向上されたことを確認することができ、また排出孔の断面積が25πmm
2を超える時理時間が明確に増加することが分かる。
【0036】
本発明は上述した特定の実施例及び説明に限定されず、特許請求範囲で請求する本発明の要旨を逸脱することなく、当該発明が属する技術分野において通常の知識を有する者であれば誰でも様々な変形実施が可能であり、そのような変形は、本発明の保護内に属するすべきである。