【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、磁気共鳴イメージングシステム、磁気共鳴イメージングシステムの動作方法、及びコンピュータプログラムプロダクトを独立クレームで規定する。実施形態は、従属クレームで付与される。
【0010】
当業者には理解されるように、本発明の態様は、装置、方法又はコンピュータプログラムプロダクトとして具体化され得る。従って、本発明の態様は、全面的にハードウェア実施形態、全面的にソフトウェア実施形態(ファームウェア、常駐ソフトウェア、マイクロコード等を含む)又は本明細書において全て一般的に「回路」、「モジュール」若しくは「システム」と称され得るソフトウェア及びハードウェア態様を組み合わせた実施形態の形態をとり得る。更に、本発明の態様は、それ上で具体化されたコンピュータ実行可能コードを有する1つ又は複数のコンピュータ可読媒体において具体化されたコンピュータプログラムプロダクトの形態をとり得る。
【0011】
1つ又は複数のコンピュータ可読媒体の任意の組み合わせが利用されてもよい。コンピュータ可読媒体は、コンピュータ可読信号媒体又はコンピュータ可読ストレージ媒体でもよい。本明細書で使用される「コンピュータ可読ストレージ媒体」は、コンピューティングデバイスのプロセッサによって実行可能な命令を保存することができる任意の有形ストレージ媒体を包含する。コンピュータ可読ストレージ媒体は、コンピュータ可読非一時的ストレージ媒体と称される場合もある。コンピュータ可読ストレージ媒体はまた、有形コンピュータ可読媒体と称される場合もある。一部の実施形態では、コンピュータ可読ストレージ媒体はまた、コンピューティングデバイスのプロセッサによってアクセスされることが可能なデータを保存可能であってもよい。コンピュータ可読ストレージ媒体の例は、フロッピー(登録商標)ディスク、磁気ハードディスクドライブ、半導体ハードディスク、フラッシュメモリ、USBサムドライブ、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)、光ディスク、磁気光学ディスク、及びプロセッサのレジスタファイルを含むが、これらに限定されない。光ディスクの例は、例えば、CD−ROM、CD−RW、CD−R、DVD−ROM、DVD−RW、又はDVD−Rディスクといったコンパクトディスク(CD)及びデジタル多用途ディスク(DVD)を含む。コンピュータ可読ストレージ媒体という用語は、ネットワーク又は通信リンクを介してコンピュータデバイスによってアクセスされることが可能な様々な種類の記録媒体も指す。例えば、データは、モデムによって、インターネットによって、又はローカルエリアネットワークによって読み出されてもよい。コンピュータ可読媒体上で具体化されたコンピュータ実行可能コードは、限定されることはないが、無線、有線、光ファイバケーブル、RF等を含む任意の適切な媒体、又は上記の任意の適切な組み合わせを用いて送信されてもよい。
【0012】
コンピュータ可読信号媒体は、例えばベースバンドにおいて又は搬送波の一部として内部で具体化されたコンピュータ実行可能コードを備えた伝搬データ信号を含んでもよい。このような伝搬信号は、限定されることはないが電磁気、光学的、又はそれらの任意の適切な組み合わせを含む様々な形態の何れかをとり得る。コンピュータ可読信号媒体は、コンピュータ可読ストレージ媒体ではない及び命令実行システム、装置、又はデバイスによって又はそれと関連して使用するためのプログラムを通信、伝搬、又は輸送できる任意のコンピュータ可読媒体でもよい。
【0013】
「コンピュータメモリ」又は「メモリ」は、コンピュータ可読ストレージ媒体の一例である。コンピュータメモリは、プロセッサに直接アクセス可能な任意のメモリである。「コンピュータストレージ」又は「ストレージ」は、コンピュータ可読ストレージ媒体の更なる一例である。コンピュータストレージは、任意の不揮発性コンピュータ可読ストレージ媒体である。一部の実施形態では、コンピュータストレージは、コンピュータメモリであってもよい又はその逆でもよい。
【0014】
本明細書で使用される「プロセッサ」は、プログラム、機械実行可能命令、又はコンピュータ実行可能コードを実行可能な電子コンポーネントを包含する。「プロセッサ」を含むコンピューティングデバイスへの言及は、場合により、2つ以上のプロセッサ又は処理コアを含むと解釈されるべきである。プロセッサは、例えば、マルチコアプロセッサである。プロセッサは、また、単一のコンピュータシステム内の、又は複数のコンピュータシステムの中へ分配されたプロセッサの集合体も指す。コンピュータデバイスとの用語は、各々が一つ又は複数のプロセッサを有するコンピュータデバイスの集合体又はネットワークを指してもよいと理解されるべきである。コンピュータ実行可能コードは、同一のコンピュータデバイス内の、又は複数のコンピュータデバイス間に分配された複数のプロセッサによって実行される。
【0015】
コンピュータ実行可能コードは、本発明の態様をプロセッサに行わせる機械実行可能命令又はプログラムを含んでもよい。本発明の態様に関する動作を実施するためのコンピュータ実行可能コードは、Java(登録商標)、Smalltalk、又はC++等のオブジェクト指向プログラミング言語及び「C」プログラミング言語又は類似のプログラミング言語等の従来の手続きプログラミング言語を含む1つ又は複数のプログラミング言語の任意の組み合わせで書かれてもよい及び機械実行可能命令にコンパイルされてもよい。場合によっては、コンピュータ実行可能コードは、高水準言語の形態又は事前コンパイル形態でもよい及び臨機応変に機械実行可能命令を生成するインタプリタと共に使用されてもよい。
【0016】
コンピュータ実行可能コードは、完全にユーザのコンピュータ上で、部分的にユーザのコンピュータ上で、スタンドアローンソフトウェアパッケージとして、部分的にユーザのコンピュータ上で及び部分的にリモートコンピュータ上で、又は完全にリモートコンピュータ若しくはサーバ上で実行することができる。後者の場合、リモートコンピュータは、ローカルエリアネットワーク(LAN)若しくは広域ネットワーク(WAN)を含む任意の種類のネットワークを通してユーザのコンピュータに接続されてもよい、又はこの接続は外部コンピュータに対して(例えば、インターネットサービスプロバイダを使用したインターネットを通して)行われてもよい。
【0017】
本発明の態様は、本発明の実施形態による方法、装置(システム)及びコンピュータプログラムプロダクトのフローチャート、図及び/又はブロック図を参照して説明される。フローチャート、図、及び/又はブロック図の各ブロック又は複数のブロックの一部は、適用できる場合、コンピュータ実行可能コードの形態のコンピュータプログラム命令によって実施され得ることが理解されよう。相互排他的でなければ、異なるフローチャート、図、及び/又はブロック図におけるブロックの組み合わせが組み合わせられてもよいことが更に理解される。これらのコンピュータプログラム命令は、コンピュータ又は他のプログラム可能データ処理装置のプロセッサを介して実行する命令がフローチャート及び/又はブロック図の1つ又は複数のブロックにおいて指定された機能/行ためを実施するための手段を生じさせるように機械を作るために、汎用コンピュータ、特定用途コンピュータ、又は他のプログラム可能データ処理装置のプロセッサへと提供されてもよい。
【0018】
これらのコンピュータプログラム命令はまた、コンピュータ可読媒体に保存された命令がフローチャート及び/又はブロック図の1つ又は複数のブロックにおいて指定された機能/行ためを実施する命令を含む製品を作るように、コンピュータ、他のプログラム可能データ処理装置、又は他のデバイスにある特定の方法で機能するように命令することができるコンピュータ可読媒体に保存されてもよい。
【0019】
コンピュータプログラム命令はまた、コンピュータ又は他のプログラム可能装置上で実行する命令がフローチャート及び/又はブロック図の1つ又は複数のブロックにおいて指定された機能/行為を実施するためのプロセスを提供するように、一連の動作ステップがコンピュータ、他のプログラム可能装置又は他のデバイス上で行われるようにすることにより、コンピュータ実施プロセスを生じさせるために、コンピュータ、他のプログラム可能データ処理装置、又は他のデバイス上にロードされてもよい。
【0020】
本明細書で使用される「ユーザインタフェース」は、ユーザ又はオペレータがコンピュータ又はコンピュータシステムとインタラクトすることを可能にするインタフェースである。「ユーザインタフェース」は、「ヒューマンインタフェースデバイス」と称される場合もある。ユーザインタフェースは、情報若しくはデータをオペレータに提供することができる及び/又は情報若しくはデータをオペレータから受信することができる。ユーザインタフェースは、オペレータからの入力がコンピュータによって受信されることを可能にしてもよい及びコンピュータからユーザへ出力を提供してもよい。つまり、ユーザインタフェースはオペレータがコンピュータを制御する又は操作することを可能にしてもよい、及びインタフェースはコンピュータがオペレータの制御又は操作の結果を示すことを可能にしてもよい。ディスプレイ又はグラフィカルユーザインタフェース上のデータ又は情報の表示は、情報をオペレータに提供する一例である。キーボード、マウス、トラックボール、タッチパッド、指示棒、グラフィックタブレット、ジョイスティック、ゲームパッド、ウェブコム、ヘッドセット、ギアスティック、ステアリングホイール、ペダル、有線グローブ、ダンスパッド、リモコン、及び加速度計を介したデータの受信は、オペレータから情報又はデータの受信を可能にするユーザインタフェース要素の全例である。
【0021】
本明細書で使用される「ハードウェアインタフェース」は、コンピュータシステムのプロセッサが外部コンピューティングデバイス及び/又は装置とインタラクトする及び/又はそれを制御することを可能にするインタフェースを包含する。ハードウェアインタフェースは、プロセッサが外部コンピューティングデバイス及び/又は装置へ制御信号又は命令を送ることを可能にしてもよい。ハードウェアインタフェースはまた、プロセッサが外部コンピューティングデバイス及び/又は装置とデータを交換することを可能にしてもよい。ハードウェアインタフェースの例は、ユニバーサルシリアルバス、IEEE1394ポート、パラレルポート、IEEE1284ポート、シリアルポート、RS−232ポート、IEEE488ポート、ブルートゥース(登録商標)接続、無線LAN接続、TCP/IP接続、イーサネット(登録商標)接続、制御電圧インタフェース、MIDIインタフェース、アナログ入力インタフェース、及びデジタル入力インタフェースを含むが、これらに限定されない。
【0022】
本明細書で使用される「ディスプレイ」又は「ディスプレイデバイス」は、画像又はデータを表示するために構成された出力デバイス又はユーザインタフェースを包含する。ディスプレイは、視覚、音声、及び/又は触覚データを出力してもよい。ディスプレイの例は、コンピュータモニタ、テレビスクリーン、タッチスクリーン、触覚電子ディスプレイ、点字スクリーン、陰極線管(CRT)、蓄積管、双安定ディスプレイ、電子ペーパー、ベクターディスプレイ、平面パネルディスプレイ、真空蛍光ディスプレイ(VF)、発光ダイオード(LED)ディスプレイ、エレクトロルミネッセントディスプレイ(ELD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、液晶ディスプレイ(LCD)、有機発光ダイオードディスプレイ(OLED)、プロジェクタ、及びヘッドマウントディスプレイを含むが、これらに限定されない。
【0023】
磁気共鳴(MR)データは、本明細書においては、磁気共鳴イメージングスキャン中に磁気共鳴装置のアンテナによって原子スピンにより発せられた無線周波数信号の記録された測定結果として定義される。磁気共鳴データは、医療画像データの一例である。磁気共鳴イメージング(MRI)画像は、本明細書においては、磁気共鳴イメージングデータ内に含まれる解剖学的データの復元された2次元又は3次元視覚化として定義される。この視覚化は、コンピュータを使用して行うことができる。
【0024】
本明細書で使用されるときのパルスシーケンスデータは、磁気共鳴データを取得するように磁気共鳴撮像システムを制御するためにプロセッサが使用し得るコマンドを含むデータ、又はコマンドに変換され得るデータを包含する。
【0025】
本明細書で使用されるときの磁気共鳴撮像プロトコルは、磁気共鳴データを取得するための方法又は技法を包含する。磁気共鳴撮像プロトコルの実装は、パルスシーケンスデータを使用して実施され得る。即ち、磁気共鳴撮像プロトコルは、パルスシーケンスデータを使用してプログラムされ得る。
【0026】
本明細書で使用されるときのプロペラ磁気共鳴撮像プロトコルは、当技術分野で一般に知られているような、改良された再構成を伴う周期的に回転される重畳する並列ラインとしても知られている磁気共鳴撮像プロトコルを包含する。
【0027】
一態様では、本発明は、撮像区域から磁気共鳴データを取得するための磁気共鳴撮像システムを提供する。磁気共鳴撮像システムは、磁気共鳴データを取得するための無線周波数システムを備える。無線周波数システムは、複数のアンテナ要素を有する磁気共鳴アンテナを備える。また、無線周波数システムは、複数のアンテナ要素を使用して無線周波数信号を送信又は受信するための送信機又は受信機等のものも含み得る。複数のアンテナ要素は、それらに送達される無線周波数出力の振幅及び/又は位相を有し得る。磁気共鳴撮像システムは、磁気共鳴撮像システムを制御するためのプロセッサを更に備える。
【0028】
また、本明細書で使用されるときのプロセッサは、1つ又は複数のプロセッサを包含するものと理解される。1つ又は複数のプロセッサの場合、プロセッサは、例えば、1つ又は複数のコンピュータ又は制御システムの一部である複数又は2つ以上のプロセッサに分散され得る。磁気共鳴撮像システムは、更に、パルスシーケンスデータと、複数のアンテナ要素に関するコイル感度の組と、機械実行可能命令とを含むメモリを備える。本明細書で使用されるときの1つ又は複数のコイル感度という用語は、受信コイルのB1場の空間依存性を包含する。コイル感度の組は、複数のアンテナ要素のそれぞれに関するコイル感度を表す。本明細書で使用されるときのコイル感度という用語は、様々な並列撮像技法に関して当技術分野で一般に知られているものと解釈されることが意図されている。パルスシーケンスデータは、プロセッサに、プロペラ磁気共鳴撮像プロトコルに従って磁気共鳴データの複数のブレードとして磁気共鳴データを取得させるように構成される。本明細書で使用されるときの磁気共鳴データのブレードは、k空間の直線サンプリングを包含する。プロペラ磁気共鳴撮像プロトコルでは、それぞれ直線ブロックとして取得されるk空間の複数のグループが、互いに対して回転される。次いで、k空間の中央領域がオーバーサンプリングされる。磁気共鳴データ全体の取得中の被験者の並進を見込むために、k空間又は画像空間内で様々なブレードのk空間が互いに比較され得る。
【0029】
パルスシーケンスデータは、磁気共鳴データの複数のブレードが、複数のアンテナ要素のそれぞれに関して同時に取得されたコイル特有の磁気共鳴データを備えるように更に構成される。即ち、磁気共鳴データの複数のブレードのそれぞれが、並列撮像技法を使用して取得される。
【0030】
機械実行可能命令の実行は、プロセッサに、磁気共鳴撮像システムを制御するために、パルスシーケンスデータを使用して磁気共鳴データの複数のブレードを取得させる。機械実行可能命令の実行は、更に、プロセッサに、磁気共鳴データの複数のブレードのそれぞれに関して、並列撮像磁気共鳴撮像プロトコルに従って、各アンテナ要素に関するコイル特有の磁気共鳴データを使用してブレード画像を再構成させる。磁気共鳴データの各ブレードは、複数のアンテナ要素を使用して取得される。
【0031】
並列撮像磁気共鳴撮像プロトコルは、(コイル特有の磁気共鳴データから再構成された)測定コイル画像のそれぞれを組み合わせて完全なブレード画像にするために、コイル感度の組を使用し得る。
【0032】
命令の実行は、更に、プロセッサに、コイル感度の組、ブレード画像、及びコイル特有の磁気共鳴データを使用してブレード画像に関するカイマップを構成させる。カイマップは、ブレード画像内の各ボクセルに関するボクセルを備える。カイマップの各ボクセルは、ブレード画像のボクセルがアーチファクトを含む確率を表す。
【0033】
この実施形態は、カイマップの構成が各ブレード画像の信頼性の尺度を提供するため、有益であり得る。これは、特定のブレード画像又はブレード画像の特定の部分が破壊されているかどうかを評価するために使用され得る。特に、コイル感度の組が不正確である場合、ブレード画像にアーチファクト又は再構成誤差が存在し得る。従って、カイマップは、コイル感度の組が不正確であるかどうか、又は特定のブレード画像が不正確であるかどうかを判断するために検査され得る指標又は量として使用され得る。
【0034】
カイマップが閾値を設定され得るか、又は個々の値が、コイル感度の組の改良等の後の計算のため、若しくは画像補正の実施のための重み付け、若しくは確率として使用され得る。
【0035】
カイマップは、k空間又は画像空間内で計算され得る。画像空間内では、コイル磁気共鳴データを画像空間に変換し、次いで比較を行う。k空間内では、ブレード画像がk空間に変換され、k空間内の個々の値と比較され、次いで、このマップが変換されて画像空間内に戻され得る。
【0036】
別の実施形態では、機械実行可能命令の実行は、更に、プロセッサに、磁気共鳴データの複数のブレードのそれぞれに関して、コイル特有の磁気共鳴データを使用して、複数のアンテナ要素のそれぞれに関する測定コイル画像を再構成するステップを行わせる。特定のブレードに関して各アンテナ要素によって取得されたデータが、その特定のコイル要素に関する画像に再構成される。機械実行可能命令の実行は、更に、プロセッサに、複数のブレード画像のそれぞれに関して、コイル感度の組を使用してブレード画像をバックフォールディング(backfolding)することによって複数のアンテナ要素のそれぞれに関する参照コイル画像を構成するステップを行わせる。ブレード画像は、特定のブレードに関する全ての測定コイル画像から構成された。次いで、このブレード画像を使用して参照コイル画像が計算される。これは、例えば、コイル感度とブレード画像との行列又はベクトル乗算を行うことによって行われ得る。並列撮像技法において、各アンテナ要素からの測定値が、コイル感度の組を使用して単一の画像に「折り返され」得る。「バックフォールディング」では、逆の操作が行われる。ある画像から始めて、1つのみのコイル要素からの測定画像の最尤値を計算するためにコイル感度が使用される。この参照コイル画像又はバックフォールディング画像が画像空間内で扱われ得るか、又はバックフォールディング画像をk空間に変換するためにフーリエ変換が使用され得る。参照コイル画像は、特定のアンテナ要素に関する測定コイル画像と比較され得る。この比較は、いわゆるカイマップを構成することによって行われる。
【0037】
参照コイル画像の計算は逆投影とも呼ばれ得、これは、画像又はブレード画像を撮影し、コイル感度行列を乗算して、コイル感度行列が正確であった場合に測定値がどのようになるか決定するものである。これは、参照測定値の作成を可能にし、従って、取得中に適用されたものと同じサンプリングパターンを使用しさえすればよい。SENSEに関して、これは、SENSE式M=S×pを使用することによって画像空間内で簡単に行われ、ここで、最終的な画像の複数の画素pが、単一の測定値を構成するために互いに折り重なる。
【0038】
機械実行可能命令の実行は、更に、プロセッサに、磁気共鳴データの複数のブレードのそれぞれに関して、複数のアンテナ要素のそれぞれに関する測定コイル画像と参照コイル画像との差のノルムを取ることによってブレード画像に関するカイマップを構成させる。カイマップを構成する際、測定コイル画像と参照コイル画像との両方の画素又はボクセルが比較される。本明細書で使用されるときのノルムは、必ず正の長さ又はサイズを割り当てる数学的演算である。この比較は、画素毎に行われる。本明細書で使用されるときのノルムを取ることは、ベクトルのノルムを取ることと同様である。これは、幾つかのアンテナ要素が存在するからである。カイマップ内の各画素において、測定コイル画像と参照コイル画像とに関する比較がある。従って、カイマップの各画素又はボクセルは、複数のアンテナ要素のそれぞれ、並びにそれらのそれぞれに関する関連の測定コイル画像及び参照コイル画像に関して取られたノルムである。
【0039】
別の実施形態では、カイマップは、公式Chi=Σ
iNorm(m
i−S
ip)を使用して計算され、ここで、iは、複数のコイル要素から選択されるコイル要素を表し、S
iは、コイル要素iに関するコイル感度符号化行列であり、m
iは、コイル要素iに関する測定コイル画像であり、及びpは、ブレード画像である。上記式で、量(m
i−S
ip)は重要ではないことに留意すべきである。ノルムは、何れにしても正の値をもたらす。Normは、上記の量から取られたノルムを表す。
【0040】
別の実施形態では、ノルムは、絶対値、自乗平均、及び自乗平均平方根のうちの任意の1つである。
【0041】
別の実施形態では、機械実行可能命令の実行は、更に、プロセッサに、磁気共鳴データの複数のブレードのそれぞれに関して、各ブレード画像をk空間に変換することによってk空間ブレードデータを計算させる。
【0042】
別の実施形態では、機械実行可能命令の実行は、更に、プロセッサに、k空間ブレードデータからのk空間中央領域をフーリエ変換することによって磁気共鳴データの複数のブレードのそれぞれに関する低解像度ブレード画像を形成させる。プロペラ磁気共鳴撮像プロトコルでは、磁気共鳴データのブレードは、互いに対して回転される直線ブロックとして取得される。k空間中央領域は、複数のブレード全てによってサンプリングされるk空間領域と理解される。ブレード画像は、それを構成するためにより少ないk空間データの組が使用されるため、低解像度ブレード画像である。各ブレードでのk空間の直線部分は互いに対して回転され、それにより、正確に同じk空間データは取得されないが、各部分から取得されるデータは、k空間内部の同様の空間領域からのものであるため、同様である。
【0043】
低解像度ブレード画像は、指定された解像度を有していた。本明細書で使用されるときの指定された解像度は、画素又はボクセルで指定される特定の寸法を包含する。命令の実行は、更に、プロセッサに、各ブレード画像に関するカイマップを指定された解像度にマッピングすることによって、各ブレード画像に関する低解像度カイマップを作成させる。各ブレード画像に関するカイマップは、より高い解像度である。複数のブレードのそれぞれに関する低解像度カイマップは、より高い解像度のカイマップをより低い解像度のカイマップにマッピングすることによって生成され得る。これは、画像の解像度を低下させるのと同様であり、同じように行われ得る。低解像度カイマップでの値を補間又は近似するために、様々な手段が使用され得る。標準的な撮像処理技法が使用され得る。この実施形態は、低解像度ブレード画像に関するカイマップを生成するため、有益であり得る。これは、特定の低解像度ブレード画像に存在する誤差又はアーチファクトを考慮に入れた低解像度ブレード画像の比較を可能にし得る。
【0044】
別の実施形態では、命令の実行は、更に、プロセッサに、複数のブレードのそれぞれに関して、k空間変換ブレード画像及び低解像度カイマップを使用して改良型のプロペラ動き補正を行うことによって、補正されたk空間データを計算させる。プロペラ動き補正は、プロペラ磁気共鳴撮像プロトコルに従う技法を使用するk空間データの補正を表す。k空間データのシフト及びプロペラ動き補正は、並進又は回転を考慮し得る。プロペラ動き補正は、動き補正において低解像度カイマップが使用されるため、改良される。低解像度カイマップは、例えば、画素を識別して特定の低解像度ブレード画像を無視するために使用され得るか、又は特定の画素の重要性に重み付けするために使用され得る。例えば、誤差又はアーチファクトを有する確率が低いと判断される画素は、誤差又はアーチファクトを有する確率が高い画素よりも大きい重みを与えられ得る。
【0045】
別の実施形態では、命令の実行は、更に、プロセッサに、補正されたk空間データを使用して磁気共鳴画像を再構成させる。この実施形態は、より正確であり得る磁気共鳴画像を生成するため、有益であり得る。
【0046】
別の実施形態では、命令の実行は、更に、プロセッサに、磁気共鳴データの複数のブレードのそれぞれに関する低解像度ブレード画像を磁気共鳴データの複数のブレードのそれぞれに関する全ての他の低解像度ブレード画像と繰り返し比較することによって、改良型のプロペラ動き補正を行わせる。改良型のプロペラ動き補正は、磁気共鳴データの複数のブレードのそれぞれに関する低解像度カイマップの分析を組み込む。
【0047】
別の実施形態では、改良型のプロペラ動き補正は、低解像度カイマップ内の対応する画素が所定の閾値を超える場合に低解像度ブレード画像内の画素を無視することによって、低解像度カイマップを組み込む。例えば、低解像度プロペラ画像のそれぞれでのいわゆる不良な画素の組を決定するために低解像度カイマップの閾値設定が使用され得、次いで、様々な低解像度ブレード画像が比較されるとき、これらの画素は比較時に無視され、それにより画像の並進及び/又は回転のマッチングに影響を及ぼさない。
【0048】
別の実施形態では、改良型のプロペラ動き補正は、低解像度カイマップ内の対応する画素の値を使用して、繰返しの比較中に低解像度ブレード画像の画素に重み付けすることによって、低解像度カイマップを組み込む。これは、カイマップによって示される場合に低解像度画像での画素又はボクセルがより小さい重みを与えられるため、有益であり得る。
【0049】
別の実施形態では、命令の実行は、更に、プロセッサに、各ブレードに関する低解像度画像を平均化することによって、アーチファクトのない低解像度画像を計算させる。命令の実行は、更に、プロセッサに、各低解像度ブレード画像に関する低解像度カイマップを使用して各低解像度ブレード画像の各画素からの寄与に重み付けさせる。これを実現する様々な態様があるが、例示目的での1つの態様は、低解像度ブレード画像のそれぞれを単に追加し、各低解像度ブレード画像に関するカイマップを、平均のための重み付け係数として使用することである。
【0050】
この実施形態は、より正確な低解像度画像の構成を可能にし得るため、特に有益であり得る。この画像は、例えばコイル感度マップの計算に関して、他の取得されたデータ又は画像を比較するためにも使用され得る。
【0051】
別の実施形態では、命令の実行は、更に、プロセッサに、アーチファクトのない低解像度画像を使用して、複数のアンテナ要素のそれぞれに関して、補正されたコイル感度マップを計算させる。この実施形態は、複数のアンテナ要素のそれぞれに関して補正されたコイル感度マップが計算されるため、特に有益であり得る。これは、将来の測定で使用され得るか、又は既に取得されている磁気共鳴データを補正するために使用され得る。複数のアンテナ要素のそれぞれに関する補正されたコイル感度マップは、複数のアンテナ要素に関して補正されたコイル感度の組を構成するために使用され得る。例えば、補正されたコイル感度の組は、コイル感度の組の代わりに使用され得、磁気共鳴データの分析は、より正確なコイル感度の組を使用して再び実施され得る。コイル感度の組は、コイル感度マップの組とも呼ばれ得る。
【0052】
命令の実行は、更に、プロセッサに、複数のアンテナ要素のそれぞれに関する補正されたコイル感度マップを使用してコイル感度の組を置き換えさせる。命令の実行は、更に、プロセッサに、コイル感度マップを置き換えた後に、磁気共鳴データの複数のデータのそれぞれに関して、コイル特有の磁気共鳴データを使用して複数のアンテナ要素のそれぞれに関する測定コイル画像を再構成するステップと、複数のアンテナ要素のそれぞれに関して、コイル特有の磁気共鳴データを使用してブレード画像を再構成するステップと、コイル感度の組とブレード画像とを乗算することによって複数のアンテナ要素のそれぞれに関する参照コイル画像を構成するステップと、複数のアンテナ要素のそれぞれに関する測定コイル画像と参照コイル画像のノルムとを合算することによってブレード画像に関するカイマップを構成するステップと、各ブレード画像をk空間に変換することによってk空間変換ブレード画像を計算するステップとを反復させる。
【0053】
前述のステップは、コイル感度の組を繰り返し再計算するために、低解像度カイマップ及び低解像度画像の再構成に関連して複数回繰り返され得る。これは、測定値と一致するコイル感度の組に収束するために使用され得る。これは、例えば設定された回数だけ実施され得るか、又はコイル感度の組が特定の値に収束しているかどうか評価するために何らかの種類の尺度若しくは統計尺度が使用され得る。命令の実行は、更に、プロセッサに、コイル感度マップを置き換えた後に、k空間変換ブレード画像を使用して従来のプロペラ動き補正を実施することによって最終的なk空間データを計算させる。命令の実行は、更に、プロセッサに、最終的なk空間データを使用して最終的な磁気共鳴画像を計算させる。このプロペラ動き補正は、プロペラ動き補正でカイマップが使用されないため、従来のプロペラ動き補正と見なされ得る。コイル感度の組が補正されており、それにより、プロペラ動き補正を実施するときに低解像度カイマップの構成は必要ない。
【0054】
別の実施形態では、並列撮像磁気共鳴撮像プロトコルは、SENSEプロトコル、GRAPPAプロトコル、及びハイブリッドSENSE−GRAPPAプロトコルのうちの任意の1つである。
【0055】
別の態様では、本発明は、磁気共鳴撮像システムを動作させる方法を提供する。磁気共鳴撮像システムは、撮像区域から磁気共鳴データを取得するように構成される。磁気共鳴撮像システムは、磁気共鳴データを取得するための無線周波数システムを備える。無線周波数システムは、複数のアンテナ要素を有する磁気共鳴アンテナを備える。磁気共鳴撮像システムは、プロペラ磁気共鳴撮像プロトコルに従って、磁気共鳴データの複数のブレードとして磁気共鳴データを取得するように構成される。磁気共鳴撮像システムは、磁気共鳴データの複数のブレードが、複数のアンテナ要素のそれぞれに関して同時に取得されたコイル特有の磁気共鳴データを備えるように更に構成される。方法は、磁気共鳴撮像システムを制御するために、パルスシーケンスデータを使用して磁気共鳴データの複数のブレードを取得するステップを含む。パルスシーケンスデータは、プロセッサに、プロペラ磁気共鳴撮像プロトコルに従って磁気共鳴データの複数のブレードとして磁気共鳴データを取得させるように構成される。
【0056】
方法は、磁気共鳴データの各ブレードに関して、コイル特有の磁気共鳴データを使用して複数のアンテナ要素のそれぞれに関する測定コイル画像を再構成するステップを行うことを含む。方法は、更に、複数のアンテナブレードのそれぞれに関して、並列画像磁気共鳴撮像プロトコルに従って複数のアンテナ要素のそれぞれに関するコイル特有の磁気共鳴データを使用してブレード画像を再構成するステップを行うことを含む。方法は、更に、磁気共鳴データの各ブレードに関して、コイル感度の組とブレード画像とを乗算することによって複数のアンテナ要素のそれぞれに関する参照画像を構成するステップを行うことを含む。方法は、更に、磁気共鳴データの各ブレードに関して、複数のアンテナ要素のそれぞれに関する測定コイル画像と参照コイル画像との差のノルムを取ることによってブレード画像に関するカイマップを構成するステップを含む。
【0057】
別の態様では、本発明は、磁気共鳴撮像システムを制御するプロセッサによって実行するための機械実行可能命令を備えるコンピュータプログラム製品を提供する。磁気共鳴撮像システムは、撮像区域から磁気共鳴データを取得するように構成される。磁気共鳴撮像システムは、磁気共鳴データを取得するための無線周波数システムを備える。無線周波数システムは、パルスシーケンスデータと、複数のアンテナ要素に関するコイル感度の組とを含むメモリを更に備える。パルスシーケンスデータは、プロセッサに、プロペラ磁気共鳴撮像プロトコルに従って磁気共鳴データの複数のブレードとして磁気共鳴データを取得させるように構成される。パルスシーケンスデータは、磁気共鳴データの複数のブレードが、複数のアンテナ要素のそれぞれに関して同時に取得されたコイル特有の磁気共鳴データを備えるように更に構成される。
【0058】
機械実行可能命令の実行は、更に、プロセッサに、磁気共鳴撮像システムを制御するために、パルスシーケンスデータを使用して磁気共鳴データの複数のブレードを取得させる。機械実行可能命令の実行は、プロセッサに、磁気共鳴データの複数のブレードのそれぞれに関して、コイル特有の磁気共鳴データを使用して複数のアンテナ要素のそれぞれに関する測定コイル画像を再構成させる。機械実行可能命令の実行は、更に、プロセッサに、磁気共鳴データの複数のブレードのそれぞれに関して、並列画像磁気共鳴撮像プロトコルに従って、複数のアンテナ要素のそれぞれに関するコイル特有の磁気共鳴データを使用してブレード画像を再構成させる。命令の実行は、更に、プロセッサに、磁気共鳴データの複数のブレードのそれぞれに関して、コイル感度の組とブレード画像とを乗算することによって複数のアンテナ要素のそれぞれに関する参照コイル画像の構成を行わせる。機械実行可能命令の実行は、更に、プロセッサに、磁気共鳴データの複数のブレードのそれぞれに関して、複数のアンテナ要素のそれぞれに関する測定コイル画像と参照コイル画像との差のノルムを取ることによってブレード画像に関するカイマップを構成するステップを行わせる。
【0059】
本発明の上述した実施形態の1つ又は複数は、組み合わされる実施形態が相互に排他的でない限り組み合わされ得ることを理解されたい。
【0060】
以下、本発明の好ましい実施形態を、単に例として図面を参照して述べる。