(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6574449
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】予測緊急派遣リスク評価を用いた個人緊急応答システム
(51)【国際特許分類】
G16H 50/50 20180101AFI20190902BHJP
H04M 3/487 20060101ALI20190902BHJP
H04M 11/04 20060101ALI20190902BHJP
H04M 3/51 20060101ALI20190902BHJP
G08B 25/04 20060101ALI20190902BHJP
G08B 25/10 20060101ALI20190902BHJP
G08B 21/02 20060101ALI20190902BHJP
【FI】
G16H50/50
H04M3/487
H04M11/04
H04M3/51
G08B25/04 K
G08B25/10 B
G08B21/02
【請求項の数】18
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2016-571713(P2016-571713)
(86)(22)【出願日】2015年6月9日
(65)【公表番号】特表2017-526033(P2017-526033A)
(43)【公表日】2017年9月7日
(86)【国際出願番号】IB2015054336
(87)【国際公開番号】WO2015189763
(87)【国際公開日】20151217
【審査請求日】2018年6月8日
(31)【優先権主張番号】62/010,660
(32)【優先日】2014年6月11日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/129,377
(32)【優先日】2015年3月6日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】特許業務法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】パウス ステフェン クラレンス
(72)【発明者】
【氏名】ナサビ モハマド ホセイン
(72)【発明者】
【氏名】シェルツァー リンダ
(72)【発明者】
【氏名】スミッツ ティーネ
(72)【発明者】
【氏名】オピ デン ブアイス ヨルン
(72)【発明者】
【氏名】ファン デウルセン パトリック ウィリアム
【審査官】
原 忠
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−041479(JP,A)
【文献】
MEDICAL ALARM,WIKIPEDIA ARTICLE [ONLINE],2014年 2月14日,URL,https://en.wikipedia.org/w/index.php?title=Medical_alam&oldid=595447623
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00 − 80/00
G08B 21/02
G08B 25/04
G08B 25/10
H04M 3/487
H04M 3/51
H04M 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも人口統計学的情報及び個人緊急応答システム(PERS)コールセンタへの過去のコールに関する情報を含めた個人緊急応答システム(PERS)クライアントに関するプロファイルを記憶する個人緊急応答システム(PERS)データベースと共に動作する個人緊急応答システムであって、前記過去のコールに関する情報が、前記PERSコールセンタによって開始された過去の緊急派遣事象に関する情報を含み、前記個人緊急応答システムは、
前記PERSデータベースから所与のPERSクライアントのプロファイルを検索するオペレーションと、
検索された前記所与のPERSクライアントの前記プロファイルに基づいて、前記所与のPERSクライアントに関する特徴量のセットの値を生成するオペレーションであって、前記特徴量のセットが、少なくとも1つの緊急派遣事象最新性特徴量を含むオペレーションと、
前記特徴量のセットの値に基づいて、前記PERSデータベースに記憶されている前記PERSクライアントに関するプロファイルで訓練された緊急派遣リスク回帰モデルを使用して、将来の対象期間にわたる前記PERSクライアントに関する緊急派遣リスク予測を計算するオペレーションと、
前記所与のPERSクライアントからのコールを含む1人又は複数のPERSクライアントから着信した1つ又は複数のコールを受けるオペレーションと、
前記緊急派遣リスク予測に基づいて、前記所与のPERSクライアントを含む1人又は複数のPERSクライアントから着信した前記1つ又は複数のコールをランク付けするオペレーションと、
前記ランク付けに基づいて、前記所与のPERSクライアントを含む1人又は複数のPERSクライアントに対する緊急資源の自動割当てを優先順位付けするオペレーションと、
前記優先順位付けに従って、前記緊急資源を自動割り当てするオペレーションと、
を含むオペレーションを行うようにプログラムされたPERSサーバコンピュータを備えるPERSサーバシステムを備える、
個人緊急応答システム。
【請求項2】
表示構成要素を含むPERSコールセンタコンピュータを更に備え、
前記PERSサーバコンピュータが、計算された前記緊急派遣リスク予測と、前記PERSデータベースから前記所与のPERSクライアントのプロファイルを検索する前記オペレーションで検索された前記プロファイルの一部又は全てとを前記PERSコールセンタコンピュータに通信する更なるオペレーションを行うようにプログラムされ、
前記PERSコールセンタコンピュータが、前記PERSコールセンタコンピュータの前記表示構成要素に、前記計算された緊急派遣リスク予測と、通信された前記プロファイルの前記一部又は全てとを表示するようにプログラムされる、
請求項1に記載の個人緊急応答システム。
【請求項3】
複数のウェアラブルコールデバイスと、
PERSクライアントの住居に配設された複数のスピーカフォンコンソールであって、それぞれ、前記ウェアラブルコールデバイスの対応する1つによってワイヤレスで作動されるスピーカフォンコンソールと
を更に備え、
前記スピーカフォンコンソールが、前記PERSコールセンタと電話接続されて、PERSクライアントが、前記PERSコールセンタにいるオペレータと会話できるようにする、
請求項2に記載の個人緊急応答システム。
【請求項4】
前記PERSサーバコンピュータが、
前記検索するオペレーション、前記生成するオペレーション、及び前記計算するオペレーションを繰り返して、前記PERSデータベースにプロファイルが記憶されているPERSクライアントの母集団に関して、将来の対象期間にわたる緊急派遣リスク予測を更に計算するオペレーションと、
前記PERSクライアントをランク付けして、PERSクライアントの前記母集団のうち最高の計算された緊急派遣リスク予測を有する部分集合を識別するオペレーションと、
PERSクライアントの前記母集団のうち最高の計算された緊急派遣リスク予測を有する、識別された前記部分集合のハードコピーの表示及び印刷の少なくとも一方を行うオペレーションとを更に行うようにプログラムされる、
請求項1に記載の個人緊急応答システム。
【請求項5】
前記PERSサーバコンピュータが、
前記検索するオペレーション、前記生成するオペレーション、及び前記計算するオペレーションを繰り返して、前記PERSデータベースにプロファイルが記憶されているPERSクライアントの母集団に関して、将来の対象期間にわたる緊急派遣リスク予測を更に計算するオペレーションと、
PERSクライアントの前記母集団に関する計算された前記緊急派遣リスク予測に基づいて、PERSクライアントの前記母集団又は前記母集団の部分集合に関して、将来の対象期間にわたる1つ又は複数の緊急派遣事象を生じるPERSクライアントの予想人数を計算するオペレーションと、
PERSクライアントの前記母集団に関する、前記将来の対象期間にわたる1つ又は複数の緊急派遣事象を生じる加入者の前記予想人数のハードコピーの表示及び印刷の少なくとも一方を行うオペレーションとを更に行うようにプログラムされる、
請求項1に記載の個人緊急応答システム。
【請求項6】
前記特徴量のセットが、少なくとも1つの緊急派遣事象頻度特徴量を更に含む、請求項1に記載の個人緊急応答システム。
【請求項7】
前記特徴量のセットが、複数の異なる緊急派遣事象最新性特徴量を含み、異なる緊急派遣事象最新性特徴量がそれぞれ、異なるタイプの医学的事象に関する緊急派遣の最新性を示す、請求項1に記載の個人緊急応答システム。
【請求項8】
前記特徴量のセットが、チェックインコール頻度特徴量を更に含み、前記緊急派遣リスク回帰モデルが、より高いチェックインコール頻度と、より高い緊急派遣リスク予測との正の相関を示すように訓練される、請求項1に記載の個人緊急応答システム。
【請求項9】
前記特徴量のセットが、過失コール頻度特徴量を更に含み、前記緊急派遣リスク回帰モデルが、より高い過失コール頻度と、より高い緊急派遣リスク予測との正の相関を示すように訓練される、請求項1に記載の個人緊急応答システム。
【請求項10】
個人緊急応答システム(PERS)サービスと共に行われる方法であって、PERSクライアントによるウェアラブルコールデバイスの作動により、スピーカフォンコンソールがPERSコールセンタと接続して、前記PERSクライアントが前記PERSコールセンタにいるオペレータと会話できるようにすると共に、前記PERSクライアントのプロファイルがPERSデータベースから検索され、前記プロファイルに含まれる情報が前記PERSコールセンタにある表示構成要素に表示され、前記方法が、
前記PERSデータベースから所与のPERSクライアントのプロファイルを検索するステップと、
コンピュータを使用して、検索された前記所与のPERSクライアントの前記プロファイルに基づいて、前記所与のPERSクライアントに関する特徴量のセットの値を生成するステップと、
前記コンピュータを使用して、前記特徴量のセットの値に基づいて、緊急派遣リスク回帰モデル及び生成された前記所与のPERSクライアントに関する前記特徴量のセットの値を使用して、将来の対象期間にわたる前記所与のPERSクライアントに関する緊急派遣リスク予測を計算するステップと、
前記プロファイルに含まれる表示された前記情報と共に、前記所与のPERSクライアントに関する計算された前記緊急派遣リスク予測を前記表示構成要素に表示するステップと、
前記所与のPERSクライアントからのコールを含む1人又は複数のPERSクライアントから着信した1つ又は複数のコールを受けるステップと、
前記緊急派遣リスク予測に基づいて、前記所与のPERSクライアントを含む1人又は複数のPERSクライアントから着信した前記1つ又は複数のコールをランク付けするステップと、
前記ランク付けに基づいて、前記所与のPERSクライアントを含む1人又は複数のPERSクライアントに対する緊急資源の自動割当てを優先順位付けするステップと、
前記緊急資源の自動割当ての前記優先順位付けに基づいて、前記緊急資源を自動割り当てするステップと、
を含む、方法。
【請求項11】
前記計算するステップが、
将来の対象期間にわたる、緊急医療サービス(EMS)車両の緊急派遣を前記PERSクライアントが必要とするリスク予測、
将来の対象期間にわたる、前記PERSクライアントが病院に搬送される緊急派遣を前記PERSクライアントが必要とするリスク予測、又は
将来の対象期間にわたる、前記PERSクライアントがフルタイム介護施設に入居させられるリスク予測
のうちの1つを計算するステップをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記生成するステップが、前記PERSコールセンタによって開始された前記PERSクライアントに関する過去の緊急派遣を定量化する少なくとも1つの特徴量に関する値を生成するステップを更に含み、
前記計算するステップが、前記PERSコールセンタによって開始された前記PERSクライアントに関する過去の緊急派遣を定量化する前記少なくとも1つの特徴量を含む前記特徴量のセットの値を入力として受信する緊急派遣リスク回帰モデルを使用して、緊急派遣リスク予測を計算するステップを更に含む、
請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記PERSコールセンタによって開始された前記所与のPERSクライアントに関する過去の緊急派遣を定量化する前記少なくとも1つの特徴量が、
前記PERSコールセンタによって開始された前記所与のPERSクライアントに関する最後の緊急派遣事象以降の時間を定量化する緊急派遣事象最新性特徴量と、
前記PERSコールセンタによって開始された前記所与のPERSクライアントに関する緊急派遣事象の回数又は頻度を定量化する緊急派遣事象頻度特徴量とを含む、
請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記生成するステップが、前記PERSコールセンタに対して前記PERSクライアントによって行われるチェックインコールの回数又は頻度を定量化するチェックインコール頻度特徴量に関する値を生成するステップを更に含み、
前記計算するステップが、前記チェックインコール頻度特徴量を更に含む前記特徴量のセットの値を入力として受信する前記緊急派遣リスク回帰モデルを使用して前記緊急派遣リスク予測を計算するステップを含み、前記緊急派遣リスク回帰モデルが、チェックインコールのより高い回数又は頻度と、より高い緊急派遣リスク予測との正の相関を示す、
請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記生成するステップが、前記PERSコールセンタに対して前記PERSクライアントによって行われる過失コールの回数又は頻度を定量化する過失コール頻度特徴量に関する値を生成するステップを更に含み、
前記計算するステップが、前記過失コール頻度特徴量を更に含む前記特徴量のセットの値を入力として受信する前記緊急派遣リスク回帰モデルを使用して前記緊急派遣リスク予測を計算するステップを更に含み、前記緊急派遣リスク回帰モデルが、過失コールのより高い回数又は頻度と、より高い緊急派遣リスク予測との正の相関を示す、
請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記ランク付けに基づいて、緊急資源の自動割当てを優先順位付けする前記ステップは、着信した前記PERSコールセンタへのコールを優先順位付けするステップを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
前記ランク付けに基づいて、緊急資源の自動割当てを優先順位付けする前記ステップは、着信した緊急派遣へのコールを優先順位付けするステップを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
前記ランク付けに基づいて、緊急資源の自動割当てを優先順位付けする前記ステップは、着信した緊急医療サービス車両へのコールを優先順位付けするステップを含む、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、一般に医療分野に関し、より詳細には、医療監視分野及び医療緊急応答分野等に関する。
【背景技術】
【0002】
高齢者、又は何らかの慢性的な医学的問題若しくはリスクファクタ(例えば、重症の肥満)等がある人は、転倒(特に骨折若しくは他の重症の怪我をもたらす転倒)、心臓発作、急性の喘息発作、又は呼吸に関する緊急事態等、特定のタイプの動けなくなるような医学的緊急事態のリスクがより高い。そのような人は、急に動けなくなる危険があり、それにより医療支援を求めることができない。訪問看護婦又は家庭介護者は、この問題に一部対応することができるが、費用がかかり、通常は、リスクを抱える人の傍に常にいることはできない。リスクを抱える人は、すぐに支援を求めることができるセル式電話(携帯電話)を携帯していることがある。しかし、携帯電話は比較的嵩張り、動けなくなるような事象の際、リスクを抱える人の傍にないことがあり、又はその事象中に失われることがある(例えば、激しい転倒時に携帯電話が落ちることがある)。また、携帯電話は通常、オペレーションにかなりの認知能力を必要とし、激しい転倒後に痛みがある又は心臓発作若しくは喘息発作を起こしている人は、携帯電話を使用して支援を要請することはできないことがある。別のオプションは、リスクを抱える人を老人ホームや他の訓練介護施設に入居させることであるが、このオプションもコストがかかり、しばしば、独立したいという人の望みに反する。
【0003】
個人緊急応答サービス(PERS:Personal Emergency Response Service)は、リスクを抱える人が引き続き自立していられるように、リスクを抱える人に、即座にアクセス可能な緊急支援を提供するように設計された専用システムである。これらのシステムは、リスクを抱える人が、必要とする時と場合に緊急支援に直ぐにアクセスできることを知っていることにより心の安らぎを得ることによって、自立して生活できるようにする。典型的なPERSサービスでは、リスクを抱える人が、ネックレスで着用されるペンダント又はブレスレットの形態でのコールボタンを設けられる。コールボタンを押すことによって、住居でのスピーカフォンコンソールが作動され、それにより、リスクを抱える人が、PERS組織又は提供業者によって保守されるコールセンタにいるオペレータとの電話連絡をできる。住居の電話番号に基づいて、コールセンタは、リスクを抱える人のアドレス及び識別を自動的に決定し、この情報は、応答側のコールセンタオペレータに対して、PERSデータベースから検索されたリスクを抱える人のプロファイルと共にコンピュータディスプレイ上に自動的に表示される。この個人プロファイルは、例として、名前、位置、人口統計学的情報、人の既知の慢性状態のリスト、人の投薬のリスト、最も近い病院の識別、緊急連絡先(同伴者、親戚、友人)のリスト、及び医師情報等を含み得る。この情報によって、コールセンタオペレータは、リスクを抱える人と会話してその人の状態を評価するための態勢をよく整えられている。適切であれば、オペレータは、人のPERSプロファイルにリストされた隣人への通知、又は救急車をリスクを抱える人の住居に召喚するための緊急派遣(ED:emergency dispatch)の要請等、適切な支援を要請することがある。追加として又は代替として、コールセンタオペレータは、発作を起こした人と話すことがあり、例えば喘息発作から回復させるために呼吸運動を人にコーチングする。他方、応答側のコールセンタオペレータがコールを開始したリスクを抱える人と通信できない場合、これは、人が既に動けない状態であり、従ってオペレータがすぐにEDを要請することを示唆することがある。
【0004】
上述の問題等に対処する新規の改良されたシステム及び方法を以下に開示する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
1つの開示される態様において、個人緊急応答システム(PERS)が開示される。PERSデータベースが、少なくとも人口統計学的情報及びPERSコールセンタへの過去のコールに関する情報を含めたPERSクライアントに関するプロファイルを記憶する。過去のコールに関する情報は、PERSコールセンタによって開始された過去の緊急派遣事象に関する情報を含む。PERSサーバシステムが、(i)PERSデータベースからPERSクライアントのプロファイルを検索するオペレーションと、(ii)少なくとも1つの緊急派遣事象最新性特徴量を含む検索されたプロファイルからPERSクライアントに関する特徴量のセットの値を生成するオペレーションと、(iii)PERSデータベースに記憶されているPERSクライアントプロファイルで訓練された緊急派遣リスクモデルを使用して、将来の対象期間にわたるPERSクライアントに関する緊急派遣リスク予測を計算し、オペレーション(ii)でPERSクライアントに関して生成された特徴量のセットの値を、計算のための入力として受信するオペレーションとを含むオペレーションとを行うようにプログラムされたPERSサーバコンピュータを備える。
【0006】
別の開示される態様では、個人緊急応答システム(PERS)が開示される。PERSサーバシステムが、PERSサーバコンピュータと、少なくとも人口統計学的情報及びPERSコールセンタへの過去のコールに関する情報を含めたPERSクライアントに関するプロファイルを記憶するPERSデータベースとを含む。過去のコールに関する情報は、PERSコールセンタによって開始された過去の緊急派遣事象に関する情報を含む。PERSコールセンタコンピュータは、PERSコールセンタに配設され、表示構成要素を含む。ウェアラブルコールデバイスが、スピーカフォンコンソールと共に提供され、スピーカフォンコンソールは、PERSコールセンタと接続するためにウェアラブルコールデバイスによってワイヤレスで作動されて、発呼側PERSクライアントがPERSコールセンタにいるオペレータと会話できるようにすると共に、発呼側PERSクライアントのプロファイルがPERSサーバコンピュータによってPERSデータベースから検索され、PERSコールセンタコンピュータの表示構成要素に表示される。PERSクライアントに対してPERSコールセンタによって開始された少なくとも1つの緊急派遣事象に関する情報を受信及び表示するようにモバイルデバイスをプログラムするモバイルデバイスアプリケーションがロードされたモバイルデバイスが提供される。
【0007】
開示される別の態様では、個人緊急応答システム(PERS)サービスと共に行われる方法であって、PERSクライアントによるウェアラブルコールデバイスの作動により、スピーカフォンコンソールがPERSコールセンタと接続して、PERSクライアントがPERSコールセンタにいるオペレータと会話できるようにすると共に、PERSクライアントのプロファイルがPERSデータベースから検索され、プロファイルに含まれる情報がPERSコールセンタにある表示構成要素に表示される、方法が提供される。この方法は、(i)プロファイルから、コンピュータを使用して、PERSクライアントに関する特徴量のセットの値を生成するステップと、(ii)コンピュータを使用して、生成されたPERSクライアントに関する特徴量のセットの値に基づいて、将来の対象期間にわたるPERSクライアントに関するリスク予測を計算するステップと、(iii)プロファイルに含まれる表示された情報と共に、PERSクライアントに関する計算されたリスク予測を表示構成要素に表示するステップとを含む。
【0008】
1つの利点は、例えば、PERSクライアントに関して将来の時間間隔にわたる緊急派遣を必要とするリスクを評価するため、又はPERSクライアントに関して将来の時間間隔にわたるフルタイム介護施設への入居を必要とするリスクを評価するために、予測リスク評価を含むPERSサービスを提供することにある。
【0009】
別の利点は、コンピュータのディスプレイが発呼側PERSクライアントの状態のより効率的で迅速な評価を提供する、PERSサービスのコールセンタオペレータコンピュータを提供することにある。
【0010】
別の利点は、親戚、友人、隣人、訪問看護婦等の「非公式介護者」に、モバイルデバイスを介して、PERSクライアントのPERSプロファイルに関する情報を提供することにある。任意選択的に、モバイルデバイスを介して予測リスク評価も提供される。
【0011】
別の利点は、緊急派遣(又は何らかの他のリスク)に関する最高リスクを有するPERSクライアントに関する情報を提供することにある。
【0012】
別の利点は、将来の時間間隔にわたる予想される緊急派遣の回数の推定を提供することにある。
【0013】
所与の実施形態は、上記の利点を0、1つ、2つ、それ以上、若しくは全て提供するか、及び/又は本開示を読んで理解すれば当業者には明らかになる他の利点も提供することがある。
【0014】
本発明は、様々な構成要素及び構成要素の構成、並びに様々なステップ及びステップの構成での形態を取り得る。図面は、好ましい実施形態を例示する目的のものにすぎず、本発明を限定するものと解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本明細書で開示する予測緊急派遣(ED)評価モジュールを含む個人緊急応答システム(PERS)を模式的に示す図である。
【
図2】
図1の予測ED評価モジュールの適切な実施形態を模式的に示す図である。
【
図3】
図1及び2の予測ED評価モジュールによって適切に行われるEDリスクモデル訓練プロセスを模式的に示す図である。
【
図4】加入者コールの取扱いと共に、
図1及び2の予測ED評価モジュールの動作を含む
図1のPERSコールセンタへの加入者コールの処理を模式的に示す図である。
【
図5】
図1及び2の予測ED評価モジュールによって適切に行われるPERS母集団分析プロセスを模式的に示す図である。
【
図6】本明細書で述べる例示的なEDリスクモデルを使用して生成された、30日の将来の対象期間にわたる病院搬送に関する真のアウトカムと予測EDリスクとの較正プロットを示す図である。
【
図7】例示的なEDリスクモデルの検証中に生成される、検証コーホートに関する受信者オペレーション曲線(ROC:Receiver Operating Curve)をプロットする図である。
【
図8】
図1及び
図2のED評価モジュールによって生成され得る、高いEDリスクを有する加入者(即ち「患者」)を強調するレポートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書では、PERSサービスによってサービス提供されるリスクを抱える人が緊急派遣(ED)を必要とする(何らかの対象期間にわたる)尤度の予測推定値を提供する個人緊急応答システム(PERS)サービス(及び/又はサポート機器及び/又はインフラストラクチャ)が開示される。このEDリスク予測は、PERSサービスによってサービス提供される人に関する定量的EDリスク評価を提供し、この定量的EDリスク評価は、様々な形で使用され得る。例えば、コールセンタへの発呼者に関するEDリスク予測が計算され、コールに応対しながらコールセンタオペレータが閲覧するディスプレイ上に表示され得る。この情報は、コールセンタオペレータが、EDを要請するかどうかの重要な決定を下すのを支援し、着信したコールへの優先順位付け等の他の目的にも使用され得る。別の用途では、EDリスク予測は、PERSサービスへの全ての加入者に関して計算され、それらの結果は、対象期間にわたって生じる可能性があるED事象の数を推定するために統計的に分析され、及び/又はそれらの結果は、リスク値によってランク付けされて、EDを必要とする最高リスクでの加入者を識別し、それにより、それらの高リスク加入者に対して事前介入が考慮され得る。幾つかの実施形態では、EDリスク評価は、様々なタイプの緊急事態に関して行われ、例えば、定量的EDリスク予測が以下のそれぞれに関して計算され得る:転倒に応答するED;心臓発作に応答するED;又は呼吸困難に応答するED等。このより詳細なED予測情報は、例えば、発呼者がこの情報をコールセンタオペレータに通信することが可能でない場合に、生じている可能性が最も高い緊急事態タイプをEMS人員に警告するために使用され得る。
【0017】
本明細書で使用される用語「緊急派遣」又は「ED」は、緊急支援を必要とする人の住居に救急車又は他の緊急医療サービス(EMS:Emergency Medical Service)車両が派遣される医学的緊急事態への応答であって、EMS車両で移動するEMS人員が、医学的緊急事態に陥っている人の医学的状態を評価する、医学的緊急事態への応答を表す。ED事象は、派遣されたEMS車両を使用して、医療的に適切な場合には現地の病院に人を送ることを更に含むことがある。本明細書での例示的実施形態では、ED事象は、実際に人が病院に運ばれるかどうかに関わらず、救急車又は他の緊急車両が住居に派遣される場合に計数される。
【0018】
代替実施形態では、ED事象は、実際に人が病院に運ばれる場合にのみ計数され得る(即ち、そのような代替実施形態では、ED事象は、救急車が派遣される場合には計数されず、救急車によって到着したEMS人員が、人が病院に運ばれる必要があると判断した場合に計数される)。更に他の代替実施形態では、両方のインスタンスのカウント、即ち、緊急車両が住居に派遣されるED事象のカウントと、それらのED事象のうち、実際に人が病院に運ばれる部分集合の(より低い)カウントとが保持される。
【0019】
EDサービスは、現地の行政(例えば市や国等)によって、又はEMSサービスを提供するために市によって契約された民間救急車サービス等の民間事業体によって提供され得る。典型的なシーケンスでは、ED事象は、指定の緊急電話番号をダイヤルすることによって、例えば、北アメリカでは「911」をダイヤルすることによって、又は欧州では「112」をダイヤルすることによって開始される。PERSコールセンタによって開始されるEDの場合、コールセンタオペレータは、従来の「911」若しくは「112」を使用してよく、又はEMSサービスへの異なる通信リンクを使用してよい。コールセンタオペレータは、緊急支援を必要とするリスクを抱える人の識別及び住所をEMS人員に教える必要があってもよく、及び/又は緊急事態の性質若しくは既知の慢性状態等の更なる情報を提供してもよい。
【0020】
便宜上、本明細書における例示の実施例では、PERSサービスによってサービス提供されるリスクを抱える人は、「PERS加入者」又は単に「加入者」と称される。これは、PERSサービスへの継続中のアクセスを維持するために加入者(又は加入者の友人若しくは親戚)が定期支払いの(例えば毎月の)加入料を支払うPERS加入サービスとしての一般的な実装形態を反映する。また、加入料は、スピーカフォンコンソール及びウェアラブルコールデバイス等の機器のための定期支払いのレンタル料をセットとして含んでいてもよい。便宜上この専門用語が使用されるが、「加入者」は、PERSサービスとの他の取り決め又は関係を有していてもよいことを理解されたい。例えば、加入者は、加入者にとって無料でPERSサービスを提供され得る(例えば、PERSサービスが、ローカルのEMSサービスの構成要素としてリスクを抱える居住者に無料で提供される場合);又は、PERSサービスは、医療保険会社若しくは他の民間事業体によって提供されるか、若しくはリスクを抱える軍人若しくは退役軍人の場合には軍によって提供されることがある。より一般的な用語は、「PERSクライアント」又は単に「クライアント」であり、これは、例示的なPERS加入者を包含し、更に、現地の行政、保険会社、雇用者、若しくは他の民間事業体、又は退役軍人組織等によって支援されるもの等、他の取り決めの下でのPERSサービスによってサービス提供されるリスクを抱える人を包含する。
【0021】
図1を参照すると、例示的なPERSサービスインフラストラクチャは、以下の構成要素を含む:各PERS加入者毎のウェアラブルコールデバイス10;加入者の各住居14毎のコミュニケータ又はスピーカフォンコンソール12;PERSサーバシステム16;及びコールセンタ18。例示的な
図1は、単一のコミュニケータ12を備える単一の住居14と、例示目的で加入者(図示せず)によって適切に着用された単一のウェアラブルコールデバイス10とを示す。しかし、PERSシステムが、PERSによってサービス提供される地理的領域にわたって分布された住居に住む加入者の集団にサービス提供し、各加入者が自分のウェアラブルコールデバイス10及び関連のコミュニケータ12を有することを理解されよう。住居14が十分に大きい場合、加入者によってアクセスされる全ての領域を完全に網羅するために住居に2つ以上のコミュニケータユニットが存在してもよい。例示的なウェアラブルコールデバイス10は、ネックレス24(一部示される)によって首の周りに着用された大きくて押しやすいコールボタン22を有するペンダント20である。より一般的には、ウェアラブルコールデバイスは、例示的なネックレスで着用されるペンダント又はブレスレット等、任意の適切なウェアラブルフォームファクタを有することができ、PERSコールセンタ18へのコールをトリガするための例示的なプッシュボタン22等、単純で効果的なメカニズムを含む。コールデバイス10は、完全な可搬性を実現にするために適切にバッテリ駆動式にされる。例示的な(好ましくは大きい)プッシュボタンが、便利なコールトリガメカニズムであるが、音声作動式のトリガメカニズム等他のコールトリガメカニズムが企図される。また、特定の入力に基づくコールを自動的にトリガするウェアラブルコールデバイスを提供することも企図される。例えば、ウェアラブルコールデバイス10は、加速度計を含むことがあり、コールデバイス10は、コールデバイス10を着用する加入者の高速の下向きの加速度(即ち突然の転倒)を加速度計が検出したときにコールをトリガする。ウェアラブルコールデバイス10は、任意選択的に他の属性を有し、例えば任意選択的に耐水性であり、従って浴室内で又はシャワー時に着用され得る。コールボタン22を押すこと、又は他のやり方でコールデバイス10を作動させることで、コールデバイス10がワイヤレス信号26(例えば短距離無線周波数信号)を放出し、ワイヤレス信号26は、コミュニケータ12によって受信されて、PERSコールセンタ18へのコールを開始する。ウェアラブルコールデバイス10は、任意選択的に、バッテリパワーレベル等の情報を提供するLEDインジケータライト又はLCDディスプレイ等、他のボタン又はユーザ入力部を有していてよい;しかし、コールデバイス10は、好ましくは、オペレーションが非常に単純であるように設計され(例えば、幾つかの実施形態では、単に、例示されるコールボタン22)、それにより、加入者は、大きな医学的苦痛があるときでさえ又は認知障害(例えば、医療関連のもの又は痛みによって引き起こされるもの)があるときでさえ、コールデバイス10をオペレーションすることができる。
【0022】
住居14にあるコミュニケータ又はスピーカフォンコンソール12は、インターコム機能を提供する。コールデバイス10によってトリガされるとき、コミュニケータ12は、PERSコールセンタ18との通信リンク30を自動的に確立し、PERSコールセンタ18を介して加入者がコールセンタオペレータと通信することができる。幾つかのPERSサービス構成では、通信リンク30は、陸上電話通信線を介する電話リンクである。この手法は、PERSコールセンタ18が、コミュニケータ12に関連付けられる電話番号に基づいて加入者を自動的に識別することができるという利点を有する。他の実施形態では、通信リンク30は、例えば3G又は4Gワイヤレス携帯電話ネットワークを介するワイヤレスリンクである。様々な組合せも企図され、例えば、住居全体に分布された複数のコミュニケータを有し、各コミュニケータがWiFi又は別のワイヤレス通信プロトコルを介して主基地局とワイヤレス接続され、主基地局は、陸上電話通信線を介してコールセンタと電話リンクされる。コミュニケータ12は拡声器32を含み、拡声器32は、コミュニケータ12によって網羅される居住領域全体にわたって加入者に聞こえるように十分なパワーを有し、同様に、加入者の声を拾うマイクロフォン(図示せず)も有する。既述のように、全域を網羅するために、必要とされる場合には、複数のコミュニケータが住居14内に配置され得る。幾つかの実施形態では、マイクロフォンは、ウェアラブルコールデバイス10に配置され、マイクロフォン信号は、ワイヤレス信号26の適切な変調によってコールデバイスからコミュニケータ12にワイヤレス伝送される。
【0023】
PERSコールセンタ18で、コールセンタオペレータ(図示せず)によって使用される例示的なコンピュータ40との通信リンク30が確立される。典型的には、加入者のコールに応対することができるコールセンタオペレータが常にいることを保証するのに十分な人数のオペレータ(それぞれが関連のコンピュータ40、41、42を有する)がコールセンタ18にいることを模式的に示すために、例示目的で、更なるオペレータコンピュータ41、42も図示されている。コールセンタオペレータの所要人数、従ってコンピュータ40、41、42の所要数は、コールセンタ18に割り当てられたPERS加入者の数、及び加入者コールの統計的頻度及び持続時間に依存する。PERSコールセンタ18は、コールルーティングシステム(図示せず)を有し、このシステムは、各着信した加入者コールを、電話に出られるコールセンタオペレータのコンピュータにルーティングする。コンピュータ40は、表示構成要素又はデバイス44と、コールオペレータの声を拾うためのマイクロフォン(図示せず)と、加入者の声がそこから聞こえる拡声器(図示せず)とを含み、発呼側加入者とコールに応対するコールセンタオペレータとの間での2方向音声会話の実施を可能にする。コールの受信時、発呼者IDユニット又はモジュール(図示せず)は、発呼側コミュニケータユニット12の電話番号を識別する。通信リンク30が電話リンクでない場合、使用される通信リンクのタイプに適した別の自動識別システムが好ましくは採用される。自動検出された識別子(例えば、発呼者IDによって獲得された電話番号)は、PERSサーバシステム16に送信される。
【0024】
PERSサーバシステム16は、サーバコンピュータ50及びPERSデータベース52によって適切に具現化され、PERSデータベース52は、RAIDディスクアレイ又は多重冗長ハードディスクドライブシステム等として実装され得る。計算及びデータ記憶ハードウェア50、52は、様々な形で実装され、様々な形で配置してもよく、例えば、PERSコールセンタ18がある場所に配置された若しくはPERSコールセンタ18から遠隔に配置されたサーバコンピュータの形態であり、又は、ネットワーク化された若しくは他の様式で動作可能に相互接続された複数のコンピュータとして実装されたサーバコンピュータ50を含む分散又はクラウドコンピューティングアーキテクチャとして実装され得る。サーバコンピュータ50は、本明細書で述べるPERSデータ記憶、検索、及び処理機能を実施するようにプログラムされる。この機能は、初期加入者セットアップ(
図1には示されない)を含み、これは、初期加入者プロファイル情報をセットアップすることを含む(例えば、名前、住所、電話番号、連絡先情報、医師情報、人口統計学的情報(例えば年齢や性別等)、初期加入時点での既知の慢性疾患等)。セットアップ情報は、例えば加入者によって(又は加入者の情報への認証されたアクセス権を有する加入者の友人若しくは親戚によって、又は加入者の相談に乗っているPERSシステムの加入相談従業員によって記入されたオンラインフォームを使用して)記入された加入申込書等、様々な情報源から取得され得る。幾つかのセットアップ情報は、任意選択的に、利用可能なデータベースから自動的に取得される。例えば、患者医療情報は、任意選択的に、1つ又は複数の電子医療記録(EMR:Electronic Medical Record)データベース54からPERSサーバシステム16によって自動的に獲得される。更なるそのような機能は、加入者プロファイル検索モジュール56、加入者インシデント入力モジュール58、及び予測緊急派遣(ED)リスク評価モジュール60として
図1に模式的に示される。例示的なコールに応答して、発呼者IDによって決定された通信リンク30の電話番号が加入者プロファイル検索モジュール56に送信され、加入者プロファイル検索モジュール56は、PERSデータベース52にアクセスして、その電話番号に対応する加入者プロファイルを検索し、検索された加入者プロファイルをコンピュータ40に送信し、コンピュータ40において、関連の加入者情報が、コールセンタオペレータによる閲覧のために表示デバイス又は構成要素44に表示される。この情報は、例えば以下のものを含んでいてよい:加入者名(任意の「ニックネーム」を含む);人口統計学的情報(性別、年齢、人種);住居住所;住居タイプ(1フロア、数フロア等);過去のインシデントの履歴;最後のED(もしあれば)からの時間;過去2年でのED事象の数等。加入者情報は、予測EDリスク評価モジュール60にも通信され、予測EDリスク評価モジュール60は、発呼側加入者に関するEDリスク予測を生成し、このEDリスク予測も、表示デバイス又は構成要素44での表示のためにコンピュータ40に送信される。従って、コールセンタオペレータは、発呼者のEDリスク予測を含めたこの情報へのアクセス権を有し、発呼側加入者と会話して、加入者の医学的状態を評価して、適切なコール解決に関する決定を下すための態勢をよく整えられている。
【0025】
EDが適切なアクションであるとコールセンタオペレータが判断する場合、オペレータは、現地の緊急医療サービス(EMS)派遣センタ70と連絡を取り、このEMS派遣センタ70が、救急車又は他のEMS車両72を住居14に派遣する。コールセンタオペレータがEMS派遣センタ70と連絡を取る通信リンク74は、緊急電話番号(例えば北アメリカでは「911」又は欧州では「112」)でよく、又は専用の単一用途の陸上回線等のEMS派遣センタ70への専用の有線及び/又は無線通信リンクでよい。典型的なPERS応答プロトコルでは、コールセンタオペレータがリンク30を介して発呼側加入者と有効に通信することが可能でない場合、EDが開始される。有効な通信が可能である場合、EDを開始するか否かの決定は、通信に基づいてオペレータによって成される医学的評価に依存する。
【0026】
コール解決のタイプに関わらず、コールセンタオペレータは、そのコールに関する加入者インシデントレポートをコンピュータ40を介して入力し、このレポートは、加入者インシデント入力モジュール58を介してPERSデータベース52に、より特定的にはPERSデータベース52内の加入者のプロファイル又は記録に記憶される。監査の目的で、そのようなインシデントレポートは、典型的には、コールが過失コール(即ち、自分のコールデバイス10のコールボタン20を誤って押すことによって加入者によって誤って行われたコール)、チェックインコール(即ち、PERS通信リンク30の動作を検証する目的で、コールセンタオペレータと会話する目的で、若しくは医学的緊急事態に関係付けられない何らかの他の目的で加入者によって意図的に行われるコール)、又はED若しくは他の重要な治療処置を必要としないコールであると判明した場合でさえ、オペレータによってファイリングされる。典型的には、インシデントレポートは、コールの日付/時間、持続時間、オペレータ識別(これらの情報は典型的には自動的に記録される)、コールタイプ(チェックイン、過失、医療関連)、及びコール解決情報(例えば、EDコール(それが行われた場合)に関する情報、又は、特定の隣人が連絡を取られた(それが、行われたアクションであった場合)という言明等)等の情報を含む。インシデント情報は、加入者プロファイルに追加される。
【0027】
上述したように、予測EDリスク評価モジュール60によって生成されたEDリスク予測は、有利には、コンピュータ40を介してコールセンタオペレータに提供されて、加入者コールに応対する際に考慮に入れられる。追加として又は代替として、EDリスク予測は、他の目的で使用され得る。例示的な
図1では、予測EDリスク評価モジュール60は、PERSサービス管理機能76による使用のために、PERSによってサービス提供される全ての加入者に関するEDのリスクのリスクレポートを行い得る。EDリスクレポートは、例えば、EDリスク分散ヒストグラム又は曲線の形態での匿名化されたEDリスク予測情報を提供してよく、及び/又はEDリスク予測が選択された閾値よりも高い加入者のリストを含んでいてよく、それにより、緊急派遣を必要とする高いリスクがあるそれらの加入者に対して事前アクションが取られ得る。
【0028】
EDリスク予測の別の用途では、モバイルデバイスアプリケーション(「アプリ」)82(アプリ82を示すアイコンによって
図1に模式的に示されている)がロードされているモバイルデバイス80を介して、加入者プロファイルがEDリスク予測と共に親戚、介護者、又は友人に提供され得る。モバイルデバイス80は、例えば、セル式電話又はタブレット若しくはスレートコンピュータ等でよい。モバイルデバイスアプリ82が第三者に加入者情報を提供する場合、加入者プロファイルの何らかの情報は、任意選択的に、適用可能なプライバシ規制(例えば米国ではHIPAA)に準拠して省かれ得る(同様に、例えば、医療関連の加入者情報を獲得及び記憶する前に、説明を受けた上での書面による同意(informed written consent)を加入者から得ることによって、PERSサービス全体が、全てのHIPAA又は他の適用可能な医療データプライバシ規制に準拠することが期待されることを理解されたい)。
【0029】
図2を参照して、予測EDリスク評価モジュール60の例示的な実装形態を述べる。EDリスクモデル訓練モジュール90は、PERSデータベース52から抽出された加入者プロファイルを含む訓練データを使用してEDリスクモデル92を訓練する。本明細書における幾つかの例示的実施形態では、EDリスクモデル92を訓練するために多変量ロジスティック回帰モデルが採用される;しかし、多変量線形回帰モデル、単純ベイズ(Naive Bayesian)モデル、又はニューラルネットワーク等、実質的に任意の他のタイプのモデルも採用され得る。訓練済みのEDリスクモデル92は、EDリスク推定モジュール94によって使用されて、PERSデータベース52から検索された加入者の現在のプロファイルに基づいて加入者に関するEDリスク予測を提供する。EDリスク統計モジュール96は、任意選択的に、PERS管理機能又はPERSサービスの提供業者76が使用できるように、PERSデータベース内の加入者のEDリスク予測に対する統計的分析又は他の分析を実施するために提供される。
【0030】
図3を参照して、EDリスクモデル訓練モジュール90によって適切に行われる例示的な訓練法を述べる。オペレーション100で、加入者プロファイル訓練データセット102が、PERSデータベース52から抽出される。オペレーション100は、任意選択的に、データアノマイゼーション又はフィルタリング(例えば、短すぎる加入者プロファイルを除去するため。例えば、1ヵ月前にPERSサービスに加入したばかりの加入者は、訓練に有用な十分な履歴を有さないことがある)等を含んでいてよい。加入者プロファイルは、以下のように注釈付きの訓練データとして使用され得る(ここで、予測対象期間が30日であると仮定される):各加入者について、最近30日にその加入者に関してEDが行われた場合には、その加入者は陽性サンプルとしてラベルを付けられる;最近30日にその加入者に関してEDが行われなかった場合には、その加入者は陰性サンプルとしてラベルを付けられる。各加入者について、特徴量セットが生成される。幾つかの例示的な特徴量は、以下のものの幾つか又は全てを含んでいてよい:加入者人口統計学的情報(年齢、性別、人種等);自己報告された医学的状態;電子医療記録(EMR)データベース54(利用可能であれば)から取得された医学的状態;加入者に関する最後のEDからの時間間隔;加入者の最後の入院;過去の対象期間(例えば幾つかの例示的な実施例では2年)にわたる加入者に関するEDコールの数;この過去の対象期間での入院の日数;及び住居のタイプ(1フロアの住居に比べて数フロアの住居で、加入者が激しく転倒する可能性がより高いことがある)等。最後のEDからの時間間隔、又は最後の入院からの時間間隔等の特徴量は、最後のそのような事象からの時間を定量化し、本明細書では「最新性」特徴量と称される。EDコールの数又は入院日数等の特徴量は、(典型的には、何らかの過去の対象期間にわたる、例えば最近2年にわたる)そのような事象の回数又は頻度を定量化し、本明細書では「頻度」特徴量と呼ぶ。ED頻度特徴量の値を計算する際により古いEDコールを割り引いて考慮に入れることによって等、様々なやり方で特徴量を調節することが企図される。
【0031】
上記の特徴量に加えて、実験は、EDリスクとの驚くべき相関性を示し、従って訓練データセット102での特徴量として適切に使用される幾つかの追加の特徴量を示している。1つのそのような特徴量は、加入者によって行われるチェックインコールの回数に関係する。チェックインコールは、PERS通信リンク30の動作を検証する目的で、コールセンタオペレータと会話する目的で、又は医学的緊急事態に関係付けられない何らかの他の目的で、加入者によって意図的に行われたコールである。加入者によるチェックインコールのより高い頻度が、加入者に関する後続のED事象と正の相関を示すことが判明している。任意の特定の動作理論に限定されることなく、チェックインコールの高い頻度は、加入者の側での高レベルの不安を示し得ると考えられる。幾つかの場合には、この不安は、例えば、加入者によって(まだ)自覚されていないことがある呼吸困難又は初発の心臓の問題等による生理学的な原因に基づくものであり得る。
【0032】
特定の実装形態では、加入者は、特定の信号を受信した時に、又は所定の定期的なチェックイン時点にチェックインするように要求される。チェックイン中、コールセンタとの音声通信が確立され、又は、全てが問題ないという標示を与えるために加入者によって特定のアクションが行われる。EDリスク評価に関する特徴量は、これらの「チェックイン規則」に対する加入者の遵守を表し得る。問題ない加入者は、これらの規則を遵守する又はチェックインをしないことさえあり、不安のある加入者は、必要な場合に助けを求めることができることを確信するために必要以上にチェックインすることがあると予想される。
【0033】
EDリスクと相関することが判明している、従って訓練データセットでの特徴量として適切に使用される別の特徴量は、自分のコールデバイス10のコールボタン20を誤って押すことによって加入者によって誤って行われる過失コールである。やはり任意の特定の動作理論に限定されることなく、過失コールの高い頻度は、加入者の側での健忘性又は精神衰弱の高まりを示し得る。そのような状態は、ED事象をもたらす事故(例えば激しい転倒)の尤度の増加をもたらすことがあり、又はED事象をもたらし得る生理学的な原因(例えば、心臓の問題による血流の減少、又は呼吸の問題による血中酸素濃度の減少)を有することがある。
【0034】
ウェアラブルコールデバイス10が、加速度計又は他の「自動転倒検出器」を含む場合、これは、任意選択的に、追加の特徴量を生成するために使用され得る。例えば、自動転倒検出器からの誤認警報が、「転倒しかけた(near fall)」又は危険であり得る状況を表す特徴量として使用され得る。
【0035】
図3を引き続き参照すると、例示的な訓練モジュールは、交差検証データセット区画化オペレーション104を採用し、このオペレーション104は、訓練データを訓練部分集合と検証部分集合に区画化する。訓練オペレーション106では、訓練部分集合は、時間依存共変動を伴う多変量ロジスティック回帰モデル(又は、他の実施形態では、線形若しくはロジスティック回帰モデルを採用する訓練オペレーション、決定木、AdaBoost(adaptive boosting)、ランダムフォレスト、若しくは他のタイプのモデル訓練アルゴリズム)を訓練するために使用されて、訓練済みのEDリスクモデル108を生成する。本明細書における例示的な実施例では、多変量ロジスティック回帰モデルは、差し迫ったEDの尤度を計算するために使用された。ロジスティック回帰モデルは、様々なファクタが(この場合にはED搬送に関する)リスクをどのように増加又は減少させるかを表す。添字iによって表される加入者に関する対数回帰式は、以下のように書かれ得る。
【数1】
ここで、加入者iに関するp
i(x)は、今後30日にEDを要する確率であり、回帰式での係数βを考慮して計算される。項x
i1、…、x
ikは、特徴量セットのk個の特徴量の加入者iに関する値を表し、係数β
1、…、β
kは、EDリスク予測モデルを生成するために訓練オペレーション106によって最適化される特徴量セットのk個の特徴量に関する係数である。ここでも、これは、ただ1つの例示的なEDリスクモデルであり、線形回帰モデル、決定木、AdaBoostモデル、又はランダムフォレストモデル等、他のモデル設計も採用され得る。
【0036】
一般に、モデルは、(1)加入者プロファイルから取得される特徴量のセットに関する値を入力として受信し、(2)加入者が事象対象期間に(例えば例示的な実施例では今後30日に)EDを必要とするリスクを示す値であるEDリスク予測を出力するように設計される。EDリスク予測は、様々な形で表され得る。幾つかの実施形態では、EDリスクモデルは、確率、即ち範囲[0,1]内のリスク予測を出力するように設計され、このとき、これはパーセンテージ値として表示されてもよい(例えば、低いパーセンテージ値は、EDが必要とされる低い尤度を示し、100%に近いパーセンテージ値は、今後30日にEDが必要とされる非常に高い尤度を示す)。他の実施形態では、EDリスクが定量化され、それにより、出力は、例えば、以下の定量化された値の1つである:「低リスク」、「中リスク」、「高リスク」。訓練オペレーション106の目標は、モデルによって予測されるEDリスクと訓練データの実際のEDの注釈との一致を最大にするようにEDリスクモデルのパラメータに関する値を選択すると共に、汎化可能な予測の過剰適合及び生成を避けることである。
【0037】
EDリスクモデル検証オペレーション110において、検証データ部分集合が、モデル108の検証を行うために使用される。この検証は、検証加入者サンプル(又は、より特定的には、それらそれぞれの特徴量セット)をEDリスクモデル108に入力し、偽陽性の数及び/又は偽陰性の数を評価する、又は他のやり方でEDリスクモデル108の性能を評価することを含む。検証が正常である(例えば、偽陽性及び/又は偽陰性の数が十分に低い)場合、EDリスクモデル108は、予測EDリスク評価モジュール60のEDリスクモデル92になる。検証が正常でない(例えば、偽陽性率が高すぎる及び/又は偽陰性率が高すぎる)場合、プロセスフローは、ブロック100(又は代替としてブロック104)に戻って、EDリスクモデルの更なる調整を行う。
【0038】
今述べた訓練プロセスでは、EDリスクモデル92が全体的なEDリスクに関するものであることが仮定される。幾つかの実施形態では、追加として又は代替として、例えば、激しい転倒に関するEDのリスクについて、急性の心臓状態に関するEDのリスクについて、又は呼吸困難に関するEDのリスクについて等、様々なタイプのEDリスクについてEDリスクモデルを訓練することが望まれる。ここで、加入者プロファイルは、以下のように適切に注釈を付けられる(ここで、予測対象期間はやはり30日と仮定される):各加入者について、及び各リスクタイプについて、最近30日にその加入者に関してそのリスクタイプに関するEDが行われた場合には、加入者は、そのタイプのリスクに応答するEDに関する陽性サンプルとラベル付けされる;最近30日にその加入者に関してそのリスクタイプに関するEDが行われなかった場合には、加入者は、そのタイプのリスクに応答するEDに関する陰性サンプルとラベル付けされる。次いで、訓練オペレーション104、106、108、110が、各リスクタイプについて(そのリスクタイプに関する陽性/陰性サンプルの注釈を使用して)独立して行われて、各リスクタイプに関するEDリスクモデルを生成する。この場合、最終的なEDリスクモデル92は、各リスクタイプ毎に1つ、及び場合によっては、見分けられないEDリスクについて1つの、複数のEDリスクモデルを実際に備える(代替手法では、単一のマルチラベル出力モデルを訓練するための既知の技法を採用してもよく、これは、有利には、異なるリスクタイプ間の相関の利用を可能にし得る)。
【0039】
EDリスクファクタは、時間と共に急速に変化するとは予想されない。しかし、何らかの変化があり得る。例えば、PERSサービス運用ガイドラインが時として更新されてもよく、そのような更新は、EDを開始するための基準の変更を生じ得る。同様に、EMSプロトコルが定期的に更新されてもよく、そのような更新は、人を病院に搬送する時を決定するために様々な基準が適用されるようにし得る。EDリスクファクタは、技術発展(例えば新たな監視デバイス)、人口統計学的な変化(例えば、高齢化する人口)、及び医療オプションの改良等によっても影響を及ぼされ得る。そのような経時的な変化を考慮に入れるために、EDリスクモデル更新が、定期的に(例えば毎月又は2週間毎等)開始され得る(112)。有利には、既存のEDリスクモデル92のパラメータが、モデル更新に関する初期値として使用されてもよく、EDリスクファクタが時間と共に比較的ゆっくりと変化すると予想されるので、モデル更新は一般に高速のプロセスである。
【0040】
図4を参照して、加入者コールのコンテキストでEDリスク推定モジュール94によって適切に行われる例示的な方法を述べる。オペレーション120で、加入者は、自分のウェアラブルコールデバイス10を作動させることによって、PERSコールセンタ18へのコールを開始する。PERSコールセンタ18の発呼者ID構成要素又は他の自動発呼者識別サブシステムは、発呼側加入者を識別し、オペレーション122で、加入者プロファイルがPERSデータベース52から検索される。オペレーション124で、発呼側加入者に関するEDリスクを予測するために、EDリスク推定モジュール94が呼び出される。このために、訓練プロセス(
図3)で使用されたのと同じ特徴量のセットに関する値が、オペレーション122で検索された発呼側加入者プロファイルから抽出される。オペレーション122で検索されたプロファイルから抽出される特徴量セットは、EDリスクモデル92が訓練された以降に生成された任意の「新規」プロファイルデータを含む。例えば、最後のED以来の時間の最新性特徴量は、モデル訓練以降に生じた任意のED事象を反映する(しかし、加入者に関する特徴量セットは、現在のコールによりもたらされる任意の更新を反映しない)。EDリスクモデル92がどのように設計されるかに応じて、モデル出力は、0(今後30日にEDのリスクが実質的にない)と1(今後30日にEDのリスクが非常に高い)との間にわたるEDリスク確率でよい。EDリスクモデル92が、異なるリスクタイプ(転倒、心臓、呼吸等)に関するモデルを含む場合、オペレーション124は、各そのようなタイプに特有のEDリスクモデルを適切に適用して、異なるリスクタイプそれぞれに関するEDリスク予測を生成する。
【0041】
オペレーション126で、加入者のプロファイルは、EDリスク予測(又は異なるリスクタイプに関する予測の場合には複数のリスク予測)の表示と共に、コールに応対するコールセンタオペレータによって使用されるコンピュータ40の表示デバイス44に表示される(
図1参照)。EDリスクが高い場合、任意選択的に、例えば赤色フォント又は閃光等を使用して、強調された様式で表示され得る。1つの企図される実施形態では、EDリスク予測が、ゲージの形態で表示される。別の企図される実施形態では、EDリスク予測は、赤=高リスク、黄色=中リスク、緑=低リスクでのトラフィックライトの形態で表示される。任意選択的に、高リスク加入者は、赤色フラグインジケータ又は他のインジケータでフラグされ得る。任意選択的に、加入者のリスク履歴は、(例えば、特定の時点の後に生成されたデータを人工的に除去してその特定の時点でのEDリスクを計算し、現在よりも前の幾つかの異なる時点に関して繰り返すことによって)時間の関数として計算してもよく、それらの結果は、線又は棒グラフとして示すことができ、加入者のEDリスクが時間と共に増加しているかどうかを示すことができる。
【0042】
表示されるEDリスク予測は、コールセンタオペレータが、発呼者を支援する際にEDリスクを考慮に入れることができるようにする。例えば、オペレータは、高リスク加入者に対してより多くの時間を費やし、根底にあるリスクファクタに関係付けられるより多くの情報をそれらの加入者から引き出し得る。コールセンタオペレータは、(可能であれば)加入者と会話し、コール解決128を進め、コール解決128は、適切であればEDの開始を含むことがあり、又は隣人への発呼、若しくは適切であれば発作を起こした加入者との会話でもよい。コールがチェックインコールである場合、コール解決128は、コールをチェックインコールとしてログを取ることである。コールが過失コールである場合、コール解決128は、コールを過失コールとしてログを取ることであり、場合によっては、コールの任意の注目に値する態様(加入者の認知状態等)の注記を伴う。オペレーション130で、コールセンタオペレータは、加入者プロファイルを最後のコールで更新し、これは、日付/時間スタンプ(典型的には自動的に記録される)、任意の自己報告された医学的状態の記録、並びにコール解決128及び任意の補助情報(EDの場合、利用可能であれば、派遣されたEMS車両の番号等)の入力を含む。このコール情報は、その後、発呼側加入者のプロファイルの一部となり、推移する加入者のEDリスクを計算するために使用される特徴量のセットに含まれ得る。従って、加入者によって開始されるコールにより、又は(他の実施例では)加入者に関する更新されたEMRデータにより、加入者のEDリスク予測が時間と共に推移し得ることが見られる。幾つかの実施形態では、現在のコールに応対した後のEDリスクの変化を計測するために、更新オペレーション130の完了直後にEDリスク推定モジュール94を呼び出すことによって、コールが完了した直後にEDリスク予測を更新することが企図される。
【0043】
図5を参照して、EDリスク推定モジュール94及び統計モジュール96によって適切に行われる例示的な方法を述べる。オペレーション140で、PERSデータベース52から(第1の)加入者プロファイルが検索され、このプロファイルから、特徴量のセットの値が生成される。オペレーション142で、オペレーション140でプロファイルが検索された加入者のEDリスクを予測するためにEDリスク推定モジュール94が呼び出される。ループオペレーション144で、PERSサービスによってサービス提供される加入者のプール内の各加入者について(又は、例えば目標が、特定の領域に関するデータを提供することである場合には、このプールの何らかの部分集合に関して)オペレーション140、142が繰り返される。EDリスクモデル92が、様々なリスクタイプに関する構成部分を含む場合、これらの構成部分は、オペレーション140、142、144で各加入者についてそれぞれ計算される。オペレーション140、142、144の結果は、各加入者に関するEDリスク(異なるリスクタイプに関して計算される異なるEDリスクが存在する場合には複数のリスク)のテーブル150である。このテーブル150は、様々な形で使用され得る。例えば、オペレーション152で、(任意選択的に所与のEDリスクタイプに関する)EDリスクがある閾値リスクを超える全ての加入者のリストが生成される。即ち、オペレーション152は、最高EDリスク加入者のリストを生成する。追加として又は代替として、オペレーション154で、テーブル150に含まれるデータが統計的に分析されて、例えば、対象期間(例えば今後30日)にわたって1回又は数回のED事象を生じる加入者の予想人数の推定を生成する。例えば、加入者が今後30日に1回又は数回のED事象を生じるリスクが確率Pとして定量化される場合、1回又は数回のED事象を生じる加入者の予想人数は、Σ
i∈popP
iとして推定することができ、ここで、和は、PERSサービスによってサービス提供される母集団(pop)にわたるものである。計算は、全てのPERS加入者について行われてよく、又は例えば地理的領域、医学的状態、特定の健康プログラム若しくは健康保険のメンバーシップによって定義されるPERS加入者の部分集団について行われてよい。別の企図される分析は、患者について時間の関数としてEDリスクを計算することである。時間と共に急速に上昇するEDリスクは、重大な医学的状態の発生を示し得る。オペレーション160で、PERSコールセンタ18でのスタッフ数の計画、緊急派遣に関する最高リスクの加入者のための事前介入の提供(事前介入は通常、緊急救急車コールよりも安価である)、又はEMS派遣センタ70との調整の改善等の管理オペレーションにおいてPERSサービス管理機能が使用できるように、適切なレポートが分析152、154から生成される。EMS派遣センタ70との調整の改善に関しては、レポートを準備する際にオンラインマッピングサービスにアクセスすることが企図されて、地理的マップ上に高リスク加入者の位置(即ち住居)をプロットし、救急車の展開の計画を補助する。また、同様のレポート構成部分が、病院への入院の予防を対象とするコミュニティ健康プログラムでも共有され得る。
【0044】
図6〜
図9を参照して、予測EDリスク評価モジュール60の更なる例示的な実施例を述べる。EDリスクモデル訓練モジュール90は、ここでも前述した多変量ロジスティック回帰モデルを採用する。例示的な実施例は、例として、以下のものを含む特徴量のセットを使用する:領域特徴量;2進値として表される、複数の自己報告された状態それぞれに関する特徴量(例えば、加入者が状態を報告している場合は「1」、そうでなければ「0」);加入者のサポートネットワークを示す特徴量;並びに様々なリスクタイプのコール及びED事象を特徴付ける最新性及び頻度特徴量。
図6は、30日の将来の対象期間にわたる病院搬送に関する、真のアウトカムと予測緊急派遣(ED)リスクとの較正プロットを示す。リスクの十分位数での集約平均が示されている。線形回帰から、調節されたR
2=0.999でy=1.03x−0.0002が得られた。
図7は、EDリスクモデル検証オペレーション110(
図3)によって生成される検証コーホートに関する受信者オペレーション曲線(ROC)をプロットする。ROC曲線の曲線下の面積(AUC:area-under-curve)は、AUC=0.7602である。
図8は、
図5のオペレーション152によって生成され得るタイプの典型的なレポートを示す。この例示的な実施例では、生成されるレポートは対話式オンライン又はコンピュータベースのレポートである(ただし、レポートのハードコピー版を印刷するためのオプションを含むことが企図される)ことを理解されたい。
図8のレポートの左側のウィンドウペインは、最高のEDリスクを有するPERS加入者(
図8のレポートでは「患者」と称される)のランク付けリストを示し、「搬送のリスクのある患者」という表題を付されている。1.00のEDリスク値が、母集団に関する平均EDリスクに対応するように、EDリスクは正規化される。左側のパネルは、EDリスクが閾値1.5よりも大きい患者をリストする。更に見られるように、更なる検討のために、(例えば、マウス、トラックボール、トラックパッド、又は他のポインティングユーザ入力デバイスによって制御される画面上のポインタを使用して)1人の加入者(「John Smith」)が選択されている。右側のパネルは、EDリスクのヒストグラムプロットで強調されたJohn Smithに関するEDリスク(EDリスク1.70)を示す。ヒストグラムは、対数正規分布であり、1.00が母集団に関する平均EDリスクに対応するようにEDリスク値が正規化されるので、1に近いEDリスクでピークを示す。事前アクションに関する閾値1.5も示される。従って、
図8の対話式のレポートは、PERS管理機能が、今後30日に緊急派遣を必要とする予測リスクが最高である加入者を迅速に識別できるようにする。この情報に基づいて、PERS人員は、事前アクションを実施し得て、例えば、これらのPERS加入者又は介護者若しくは代表者等(例えば、加入者のPERSプロファイルに示される親戚、友人、又は他の連絡先)と連絡を取って、PERS人員が医師の訪問を直ぐに予定していることを示唆する。
【0045】
例示的な実施例では、例示的な予測リスク評価モジュール60は、将来の対象期間にわたる緊急派遣(ED)のリスクを予測し、ここで、EDは、救急車コールのリスク(実際に人が病院に搬送されるかどうかに関わらず計数される)として、又はより特定的な、実際に救急車で病院に搬送されるリスク(実際に人が病院に搬送される場合にのみ計数される)として、特定の実装形態で様々な形で定義され得る。しかし、他のタイプのリスクを予測するためにPERSサービスと共に動作する予測リスク評価モジュールを構成する目的にも、開示される技法が容易に適用され得ることを理解されたい。例えば、予測リスク評価モジュールは、加入者が老人ホーム、高齢者介護施設、又は他のフルタイム介護施設に入居させられるリスクを予測するように設計され得る。この情報は、加入者が自宅に留まることができるようにし得る事前アクションをトリガするのに有用であり得る。
【0046】
図1を再び参照すると、幾つかの実施形態では、加入者プロファイル及び/又はEDリスク予測は、セル式電話又はタブレット若しくはスレートコンピュータ等の例示的なモバイルデバイス80で実行されるモバイルデバイスアプリ82によって親戚、介護者、又は友人に提供され得る。この態様は、幾つかのPERSサービスの大きな欠点、即ち、それらのサービスが、加入者の親戚、訪問看護婦、又は友人等の第三者を組み込むことができない加入関係で構築されているという欠点に対処する。そのような「非公式」の介護者は、加入者の医学的状態に関して知ることに関心があり、また、高いEDリスクについて警告を受ける利益も有する。
【0047】
開示されるモバイルデバイスアプリ82は、複数のモバイルデバイス上で実行してもよく(
図1での例では単一のデバイス/アプリインスタンスのみが示されている)、セル式電話ネットワーク、WiFiネットワーク、又は他のワイヤレスネットワークを介してモバイルデバイス間で同期する。1人のPERS加入者が、同時に複数人の非公式の介護者(例えば配偶者、1人又は複数の子供、訪問看護婦、隣人等)を持つこともでき、各介護者が、アプリ82のインスタンスを実行する携帯電話又は他のモバイルデバイスを所持する。インシデント取扱い、情報、及び応答機アクションの通信及び同期は、モバイルデバイスアプリ82を介するデータ共有によって向上される。例えば、PERSコールセンタオペレータが、転倒を隣人に通知して、PERSシステムでこれをログするとき、これは、アプリ82を介して加入者の全ての非公式の介護者間で適切に共有され、それにより、全ての非公式の介護者が、転倒インシデントを認識し、また隣人によって対応されていることを認識する。これは、非公式の介護者同士のチームワークを高める。
【0048】
以下、アプリ82の幾つかの更なる企図される機能を述べる。
【0049】
幾つかの実施形態では、アプリ82は、非公式の介護者が、様々なPERS加入者の短期(例えば90日)のEDリスクを比較できるようにする。リスクは、PERSサービスから利用可能なインシデントデータ及び健康データを使用してEDリスクモデル92によって計算される。この態様は、複数の異なるPERS加入者を介護しており、加入者の相対的な医学的状態を比較することを望むことがある訪問看護婦等の介護者に特に価値がある可能性が高い。
【0050】
幾つかの実施形態では、より長期(例えば1年)にわたって計算されたEDリスクが提供され、これは、全体の母集団(PERS母集団、又は地域若しくは国の母集団)のEDリスクと比較され得る。
【0051】
アプリ82は、入力部を備える「リスクダッシュボード」を提供してよく、入力部を介して、非公式の介護者は、PERS加入者が現在有していない健康状態、人口統計学的情報、又は聴力及び視力状態等に関係付けられるパラメータ等のパラメータを入力することができる。これらの入力から、予測EDリスク評価モジュール60は、そのような状態が生じた場合にはより長期のEDリスクを計算して、PERS加入者がそれらの状態を生じた場合には、PERS加入者に関するより長期のEDリスクを予想する。
【0052】
別の企図される変形形態では、アプリ82は、外部聴覚及び/又は視覚アラームをオペレーションしてよく、例えば、Lights over IPインターフェースをオペレーションして、ルームライトを点灯させて、PERSサービスが加入者の住居へのEDを開始していることを介護者に通知する。
【0053】
例示的な実施形態では、アプリ82は、予測EDリスク評価モジュール60を含む
図1の例示的PERSサービスと共に動作し、それに従って、加入者プロファイル情報(場合によっては、HIPAA又は他のプライバシ規制に従って、及び/又は加入者の命令に従って編集される)と、加入者に関するEDリスク予測との両方を含む情報を提供する。しかし、代替として、本明細書で開示されるアプリ82が、開示される予測EDリスク評価モジュール60を含まないPERSサービスと共に有用に提供され得ることを理解されたい。そのような実施形態では、アプリ82は、PERSコールセンタへの最近の医療関連の加入者コール及びそれらの解決の要約等の情報を非公式の介護者に有用に提供するが、EDリスク予測は提供しない。
【0054】
また、PERSサーバコンピュータ50及び/又はコールセンタコンピュータ40によって実施される開示される手法は、開示されるデータ処理オペレーションを実施するためにそのようなコンピュータ40、50によって可読であり実行可能な命令を記憶する非一時的な記憶媒体として具現化されてもよいことを理解されたい。そのような非一時的な記憶媒体は、例として以下のものを含んでいてよい:ハードディスクドライブ又は他の磁気記憶媒体;光ディスク若しくは他の光記憶媒体;読み出し専用メモリ(ROM)、電気的にプログラム可能な読み出し専用メモリ(PROM)、フラッシュメモリ、又は他の電子記憶媒体;及びそれらの様々な組合せ等。同様に、冗長を提供するRAIDアレイ又は他の非一時的な記憶媒体として有利には具現化される幾つかの実施形態では、PERSデータベース52は、そのような記憶媒体に記憶され得る。
【0055】
本発明を、好ましい実施形態を参照して説明してきた。上記の詳細な説明を読んで理解すれば、修正形態及び変形形態が想到されよう。本発明は、添付の特許請求の範囲又はそれらの均等形態の範囲内にある限り、全てのそのような修正形態及び変形形態を含むものと解釈されることが意図される。