特許第6574468号(P6574468)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6574468
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】離型フィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20190902BHJP
   B32B 3/30 20060101ALI20190902BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20190902BHJP
【FI】
   B32B27/00 L
   B32B3/30
   B32B27/36 103
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-192635(P2017-192635)
(22)【出願日】2017年10月2日
(62)【分割の表示】特願2014-121820(P2014-121820)の分割
【原出願日】2014年6月12日
(65)【公開番号】特開2018-12340(P2018-12340A)
(43)【公開日】2018年1月25日
【審査請求日】2017年10月27日
(31)【優先権主張番号】特願2013-162657(P2013-162657)
(32)【優先日】2013年8月5日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中尾 洋祐
(72)【発明者】
【氏名】土谷 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】宇都 航平
【審査官】 藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/141512(WO,A1)
【文献】 特開2005−246836(JP,A)
【文献】 特開2005−122147(JP,A)
【文献】 特開2009−241410(JP,A)
【文献】 特開2010−234794(JP,A)
【文献】 特開2008−246882(JP,A)
【文献】 特開2009−090647(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
C08J 5/00− 5/02
5/12− 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレキシブル回路基板の製造に適した離型フィルムであって、
表面及び背面をそれぞれ構成する2つの離型層と、中間層とを有する多層フィルムからなり、
表面及び背面が粗面化されており、
前記表面の十点平均粗さRzが4μm以上20μm以下であり、かつ、前記背面を構成する離型層の厚みが35μm以上であ(ただし、前記表面の十点平均粗さRzが4μm以上5μm以下であり、かつ、前記背面を構成する離型層の厚みが35μm以上36μm以下である場合を除く)
前記表面及び背面をそれぞれ構成する2つの離型層のうち、表面を構成する離型層がポリブチレンテレフタレート樹脂を含有する
ことを特徴とする離型フィルム。
【請求項2】
表面の光沢面比率が35%以上85%以下であることを特徴とする請求項1記載の離型フィルム。
【請求項3】
表面の十点平均粗さRzが4μm以上20μm以下であり、かつ、前記背面を構成する離型層の厚みが37μm以上であるか、又は、表面の十点平均粗さRzが8μm以上15μm以下であり、かつ、前記背面を構成する離型層の厚みが35μm以上37μm未満であることを特徴とする請求項1又は2記載の離型フィルム。
【請求項4】
表面及び背面をそれぞれ構成する2つの離型層の合計厚みが、離型フィルムの厚みのうち半分を超える厚みを占めることを特徴とする請求項1記載の離型フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブル回路基板の製造に適した離型フィルムであって、離型性を維持したままでシワの発生を抑制できる離型フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
フレキシブル回路基板の製造工程においては、銅回路を形成したフレキシブル回路基板本体に、熱硬化型接着剤又は熱硬化型接着シートによってカバーレイフィルムが熱プレス接着される。このとき、カバーレイフィルムと熱プレス板とが接着するのを防止するために離型フィルムが広く使用されている。
【0003】
これまで、メチルペンテン樹脂、ポリエステル樹脂、シンジオタクチックポリスチレン樹脂等の様々な樹脂からなる離型フィルムが提案されている(特許文献1〜3)。
例えば、特許文献1には、ポリメチルペンテン樹脂を含む積層体からなる離型フィルムが記載されている。特許文献2には、表面粗さを定めたポリブチレンテレフタレートを含む厚みの薄い離型層とクッション層と副離型層とを有する離型フィルムが記載されている。特許文献3には、シンジオタクチックポリスチレン樹脂からなる離型層とクッション層とを有する離型フィルムが記載されている。
【0004】
近年、スマートフォン、タブレットPC等の普及に伴い、フレキシブル回路基板は高機能化し、薄膜化が進んでいる。また、ロールツーロール(RtoR)方法等の製造方法の自動化も進んでおり、このような製造方法の自動化に伴って、フレキシブル回路基板の製造工程で離型フィルムに生じたシワがフレキシブル回路基板へ転写するという問題が生じている。
従って、離型フィルムに対してシワの発生を抑制できることが要求されているが、他の要求性能(例えば、埋め込み性、離型性等)を維持したままでシワの発生を抑制できる離型フィルムを得ることは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第06/120983号パンフレット
【特許文献2】特開2009−73195号公報
【特許文献3】特開2011−161747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、フレキシブル回路基板の製造に適した離型フィルムであって、離型性を維持したままでシワの発生を抑制できる離型フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、フレキシブル回路基板の製造に適した離型フィルムであって、表面及び背面をそれぞれ構成する2つの離型層と、中間層とを有する多層フィルムからなり、表面及び背面が粗面化されており、前記表面の十点平均粗さRzが4μm以上20μm以下であり、かつ、前記背面を構成する離型層の厚みが35μm以上である(ただし、前記表面の十点平均粗さRzが4μm以上5μm以下であり、かつ、前記背面を構成する離型層の厚みが35μm以上36μm以下である場合を除く)離型フィルムである。
以下、本発明を詳述する。
【0008】
本発明者は、表面及び背面の両面が粗面化されており、更に、表面の十点平均粗さRzと、背面を構成する離型層の厚みとが所定の範囲を満たす離型フィルムであれば、離型性を維持したままでシワの発生を抑制できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
本発明の離型フィルムは、フレキシブル回路基板の製造に適した離型フィルムである。
本発明の離型フィルムは、表面及び背面が粗面化されている。片面だけではなく、表面及び背面の両面が粗面化されていることにより、本発明の離型フィルムは、離型性を維持したままでシワの発生を抑制できるものとなる。
【0010】
本明細書中、「粗面化されている」とは、例えば、エンボス加工、薬品又はプラズマを用いたエッチング処理、フィルム成形時のメルトフラクチャー等によって凹凸形状が形成されている状態を意味する。粗面化状態は光学顕微鏡により確認することができる。
【0011】
本発明の離型フィルムは、上記表面の十点平均粗さRzが4μm以上20μm以下であり、かつ、上記背面を構成する離型層の厚みが35μm以上である(ただし、上記表面の十点平均粗さRzが4μm以上5μm以下であり、かつ、上記背面を構成する離型層の厚みが35μm以上36μm以下である場合を除く)。
上記表面の十点平均粗さRzと、上記背面を構成する離型層の厚みとが上記範囲を満たすことにより、本発明の離型フィルムは、離型性を維持したままでシワの発生を抑制できるものとなる。上記表面の十点平均粗さRzが上記範囲より小さいと、離型フィルムにシワが多数発生してしまう。上記表面の十点平均粗さRzが上記範囲を超えると、離型フィルムの離型性が低下する。また、上記背面を構成する離型層の厚みが上記範囲より小さくても、離型フィルムにシワが多数発生してしまう。上記背面を構成する離型層の厚みの上限は特に限定されないが、好ましい上限は100μm、より好ましい上限は50μmである。
離型性を維持したままで効果的にシワの発生を抑制する観点から、上記表面の十点平均粗さRzが4μm以上20μm以下であり、かつ、上記背面を構成する離型層の厚みが37μm以上であるか、又は、上記表面の十点平均粗さRzが8μm以上15μm以下であり、かつ、上記背面を構成する離型層の厚みが35μm以上37μm未満であることがより好ましい。
【0012】
本明細書中、「表面」とは、フレキシブル回路基板の製造工程においてフレキシブル回路基板側となる面を意味し、「背面」とは、フレキシブル回路基板の製造工程において熱プレス板側となる面を意味する。ただし、離型フィルム単体において必ずしも「表面」又は「背面」の区別があるわけではなく、十点平均粗さRzが上記範囲を満たす面を「表面」とする。
【0013】
本明細書中、「十点平均粗さRz」とは、基準長さLにおいて最も高い山頂から高さが5番目までの山頂の標高をそれぞれYp1、Yp2、Yp3、Yp4及びYp5、最も深い谷底から深さが5番目までの谷底の標高をそれぞれYv1、Yv2、Yv3、Yv4及びYv5としたとき、下記式(1)によって求められる値を意味する。「十点平均粗さRz」の値が大きいほど面が全体として粗く、値が小さいほど面が全体として平滑であることを意味する。「十点平均粗さRz」は、触針式表面粗さ測定機(例えば、Mitsutoyo社製のサーフテストSJ−301等)を用い、JIS B0601:2001に準拠する方法で、先端半径2μm、円錐のテーパ角60°の触針を用い、測定力0.75mN、カットオフ値λs=2.5μm(なお、測定しようとする対象の表面粗さがカットオフ値未満である場合はカットオフ値を調整してもよい)、λc=0.8mmの条件にて測定することができる。
【0014】
【数1】
【0015】
なお、上記表面の十点平均粗さRzと、上記背面を構成する離型層の厚みとの範囲は、実施例及び比較例で得られた「表面の十点平均粗さRz」と、「背面を構成する離型層の厚み」とから、離型性を維持したままでシワの発生を抑制できる範囲として導かれたものである。
図1に、実施例(いくつかの実施例を除く)及び比較例で得られた「表面の十点平均粗さRz」と、「背面を構成する離型層の厚み」とをプロットしたグラフを示す。図1では、本発明で規定する「表面の十点平均粗さRz」と、「背面を構成する離型層の厚み」との範囲を斜線で示す。ただし、「背面を構成する離型層の厚み」の上限は、図1の斜線で示される範囲に限定されない。
【0016】
上記表面の十点平均粗さRzと、上記背面を構成する離型層の厚みとが上記範囲を満たすように調整する方法として、例えば、離型フィルムを構成する樹脂を押出機のTダイより押出して目的の厚みに成形した樹脂フィルムの表面に対して、表面に模様が加工された冷却ロールを押し当て、冷却ロール表面に加工された模様を樹脂フィルム表面に転写させる方法等が挙げられる。
上記表面に模様が加工された冷却ロールを製造する方法は特に限定されず、例えば、平滑なロールの表面に凹模様を形成した後に、該ロールの平滑部分の粗さを調整する方法等が挙げられる。上記冷却ロール表面に加工された模様は特に限定されず、例えば、単一な形状の凹凸模様、大きなブラスト材による凹凸模様に細かな凹凸を重畳した複数の形状の凹凸模様等が挙げられる。
【0017】
本発明の離型フィルムは、上記表面の光沢面比率が35%以上85%以下であることが好ましい。上記光沢面比率が35%未満であると、離型フィルムの離型性が低下することがある。上記光沢面比率が85%を超えると、離型フィルムにシワが発生することがある。
【0018】
本明細書中、「光沢面比率」とは、離型フィルム表面を光学顕微鏡を用いて20倍に拡大して観察し、観察視野(700μm×525μm)における平滑面の面積を測り、観察視野に占める平滑面の面積の百分率を求めて得られた値を意味する。
【0019】
本発明の離型フィルムの上記背面の十点平均粗さRzは特に限定されないが、1〜45μmであることが好ましく、上述したような表面の十点平均粗さRzと同じであってもよい。また、上記背面の光沢面比率は特に限定されないが、上述したような表面の光沢面比率と同じであってもよい。
【0020】
本発明の多層離型フィルムは、離型性を向上させる目的で、上記表面及び/又は上記背面に離型処理が施されていることが好ましい。
上記離型処理の方法は特に限定されず、例えば、上記表面及び/又は上記背面にシリコーン系、フッ素系等の離型剤を塗布又は散布する方法、熱処理、摩擦処理等を行う方法等の公知の方法を用いることができる。これらの離型処理は単独で用いてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0021】
本発明の離型フィルムは、上述したような表面及び背面を有していれば、その層構成は特に限定されず、上記表面及び上記背面をそれぞれ構成する2つの離型層と、中間層とを有する多層フィルムからなっていてもよいし、上記表面及び上記背面を構成する1つの離型層のみからなる単層フィルムであってもよい。
【0022】
本発明の離型フィルムが多層フィルムからなる場合、上記表面及び背面をそれぞれ構成する2つの離型層を構成する樹脂は特に限定されず、表面を構成する離型層と背面を構成する離型層とが同じ樹脂組成であってもよいし、異なる樹脂組成であってもよいが、表面を構成する離型層が結晶性芳香族ポリエステル樹脂を含有することが好ましい。
上記結晶性芳香族ポリエステル樹脂は特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリヘキサメチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリブチレンナフタレート樹脂、テレフタル酸ブタンジオールポリテトラメチレングリコール共重合体等が挙げられる。これらの結晶性芳香族ポリエステル樹脂は単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。なかでも、非汚染性及び結晶性に優れることから、ポリブチレンテレフタレート樹脂が好適に用いられる。
【0023】
本明細書中、「ポリブチレンテレフタレート樹脂」には、ポリブチレンテレフタレート単独の樹脂のほかに、ポリブチレンテレフタレートと、ポリエーテル又はポリエステル等との共重合体も含む。
上記ポリブチレンテレフタレート樹脂は特に限定されず、一般に用いられているものを使用することができ、具体的には例えば、ポリブチレンテレフタレートと脂肪族ポリエーテルとのブロック共重合体、ポリブチレンテレフタレートと脂肪族ポリエステルとのブロック共重合体等が挙げられる。これらのポリブチレンテレフタレート樹脂は単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。なかでも、耐熱性、離型性、フレキシブル回路基板の凹凸への追従性等のバランスの観点から、ポリブチレンテレフタレート樹脂に、ポリブチレンテレフタレートと脂肪族ポリエーテルとのブロック共重合体を混合した混合樹脂が好ましい。
【0024】
上記結晶性芳香族ポリエステル樹脂は、フィルム成膜性の観点から、メルトボリュームフローレートが30cm/10min以下であることが好ましく、20cm/10min以下であることがより好ましい。なお、メルトボリュームフローレートは、ISO1133に従って、測定温度250℃、荷重2.16kgで測定することができる。
【0025】
上記結晶性芳香族ポリエステル樹脂のうち、市販されているものとして、例えば、「ペルプレン(登録商標)」(東洋紡績社製)、「ハイトレル(登録商標)」(東レ・デュポン社製)、「ジュラネックス(登録商標)」(ポリプラスチック社製)、「ノバデュラン(登録商標)」(三菱エンジニアリングプラスチック社製)等を好適に用いることができる。
【0026】
本発明の離型フィルムが多層フィルムからなる場合、上記背面を構成する離型層の厚みが35μm以上であることに加えて、上記表面を構成する離型層の厚みが1μm以上20μm以下であることが好ましい。
上記表面を構成する離型層の厚みが1μm未満であると、離型フィルムにシワが発生することがある。上記表面を構成する離型層の厚みが20μmを超えると、離型フィルムの離型性が低下することがある。上記表面を構成する離型層の厚みのより好ましい下限は5μm、より好ましい上限は18μmである。
【0027】
上記表面及び背面をそれぞれ構成する2つの離型層は、本発明の効果を損なわない範囲で、更に、繊維、無機充填剤、難燃剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、無機物、高級脂肪酸塩等の添加剤を含有してもよい。
【0028】
また、本発明の離型フィルムが多層フィルムからなる場合、上記表面及び背面をそれぞれ構成する2つの離型層の合計厚みは、離型フィルムの厚みのうち半分を超える厚みを占めることが好ましい。上記表面及び背面をそれぞれ構成する2つの離型層の合計厚みが上記範囲を満たすことにより、離型フィルムは更に効果的にシワの発生を抑制することができる。
【0029】
本発明の離型フィルムが多層フィルムからなる場合、上記中間層を構成する樹脂は特に限定されないが、上記中間層がポリオレフィン樹脂を含有することが好ましい。
上記ポリオレフィン樹脂は特に限定されず、例えば、ポリエチレン樹脂や、ポリプロピレン樹脂や、エチレン−酢酸ビニル共重合体や、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体等のエチレン−アクリル系モノマー共重合体等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
上記中間層は、本発明の目的を阻害しない範囲で、更に、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスルフォン、ポリエステル等の樹脂を含有してもよい。
【0030】
上記中間層は、本発明の効果を損なわない範囲で、更に、繊維、無機充填剤、難燃剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、無機物、高級脂肪酸塩等の添加剤を含有してもよい。
【0031】
上記中間層の厚みは特に限定されないが、好ましい下限は15μm、好ましい上限は80μmである。上記中間層の厚みが15μm未満であると、離型フィルムを用いた熱プレス接着において中間層を構成する樹脂が軟化した場合、部分的に中間層が存在しない箇所が発生し、圧力をフレキシブル回路基板に均一に荷重することができないことがある。上記中間層の厚みが80μmを超えると、離型フィルムにシワが発生することがある。上記中間層の厚みのより好ましい下限は30μm、より好ましい上限は65μmである。
【0032】
本発明の離型フィルムが単層フィルムである場合、1つの離型層で上記表面及び上記背面が構成されている。該離型層を構成する樹脂は特に限定されないが、結晶性芳香族ポリエステル樹脂を含有することが好ましい。
上記結晶性芳香族ポリエステル樹脂は特に限定されず、上述したような多層フィルムに含まれる結晶性芳香族ポリエステル樹脂と同じものが挙げられる。また、上述したような多層フィルムに含まれるポリブチレンテレフタレート樹脂と同じものが好適に用いられる。
【0033】
単層フィルムを構成する離型層は、本発明の効果を損なわない範囲で、更に、繊維、無機充填剤、難燃剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、無機物、高級脂肪酸塩等の添加剤を含有してもよい。
【0034】
本発明の離型フィルムの厚みは特に限定されないが、好ましい上限は300μm、より好ましい上限は200μm、更に好ましい上限は150μmである。
【0035】
本発明の離型フィルムを製造する方法は特に限定されず、例えば、目的の厚みの多層フィルム又は単層フィルムを作製した後、得られた多層フィルム又は単層フィルムの表面に対して、上述したような冷却ロールを用いた方法等によって上記表面の十点平均粗さRzと、上記背面を構成する離型層の厚みとが上記範囲を満たすように調整する方法等が挙げられる。
本発明の離型フィルムが多層フィルムからなる場合、該多層フィルムを作製する方法は特に限定されず、例えば、水冷式又は空冷式共押出インフレーション法、共押出Tダイ法で製膜する方法、一方の離型層となるフィルムを作製した後、このフィルムに中間層を押出ラミネート法にて積層し、次いで他方の離型層をドライラミネーションする方法、一方の離型層となるフィルム、中間層となるフィルム及び他方の離型層となるフィルムをドライラミネーションする方法、溶剤キャスティング法、熱プレス成形法等が挙げられる。なかでも、各層の厚み制御に優れる点から、共押出Tダイ法で製膜する方法が好適である。
【0036】
本発明の離型フィルムは、フレキシブル回路基板の製造に適した離型フィルムである。このため、本発明の離型フィルムの用途は特に限定されないが、銅回路を形成したフレキシブル回路基板本体に、熱硬化型接着剤又は熱硬化型接着シートによってカバーレイフィルムを熱プレス接着する際、カバーレイフィルムと熱プレス板との間に本発明の離型フィルムを挟むことにより、カバーレイフィルムと熱プレス板とが接着するのを防止できる。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、フレキシブル回路基板の製造に適した離型フィルムであって、離型性を維持したままでシワの発生を抑制できる離型フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】実施例(いくつかの実施例を除く)及び比較例で得られた「表面の十点平均粗さRz」と、「背面を構成する離型層の厚み」とをプロットし、本発明で規定する「表面の十点平均粗さRz」と、「背面を構成する離型層の厚み」との範囲を斜線で示したグラフである。
図2】光沢面比率が38%であった離型フィルム表面の光学顕微鏡写真である。
図3】光沢面比率が42%であった離型フィルム表面の光学顕微鏡写真である。
図4】光沢面比率が72%であった離型フィルム表面の光学顕微鏡写真である。
図5】光沢面比率が82%であった離型フィルム表面の光学顕微鏡写真である。
図6】光沢面比率が77%であった離型フィルム表面の光学顕微鏡写真である。
図7】光沢面比率が0%であった離型フィルム表面の光学顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0040】
(実施例1〜38、比較例1〜18)
ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリプロピレン樹脂とを押出機(ジーエムエンジニアリング社製、GM30−28(スクリュー径30mm、L/D28))を用いてTダイ幅400mmにて共押出して成形することにより、厚み65μmのポリプロピレン樹脂層(中間層)の表裏に、それぞれ表1に示す厚みを有する2つのポリブチレンテレフタレート樹脂層(背面を構成する離型層、及び、表面を構成する離型層)が積層された3層樹脂フィルムを得た。
次いで、得られた3層樹脂フィルムの表面を構成する離型層の離型面に対して、表面に模様が加工された冷却ロールを押し当て、冷却ロール表面に加工された模様を転写させることにより離型面に凹凸を形成し、離型フィルムを得た。なお、凹凸を形成した離型面が表面、他方の離型面が背面である。得られた離型フィルムの表面及び背面の粗面化状態を光学顕微鏡により確認し、表面の十点平均粗さRzを測定して、これらの結果を表1に示した。なお、実施例及び比較例で得られた離型フィルムそれぞれの背面の十点平均粗さRzは1.0〜3.0μmの範囲内であった。
【0041】
<評価>
実施例1〜38及び比較例1〜18で得られた離型フィルムについて以下の評価を行った。結果を表1に示した。
【0042】
(1)光沢面比率
離型フィルム表面を光学顕微鏡(キーエンス社製、レーザーマイクロスコープVK8710)を用いて20倍に拡大して観察した。観察視野(700μm×525μm)における平滑面の面積を測り、観察視野に占める平滑面の面積の百分率を求め、得られた値を光沢面比率(%)とした。なお、光沢面比率が38%、42%、72%、82%、77%、0%であった離型フィルム表面の光学顕微鏡写真をそれぞれ図2〜7に示した。
【0043】
(2)シワの発生(防シワ性)に関する性能評価
CCL(20cm×20cm、ポリイミド厚25μm、銅箔35μm)、カバーレイ(20cm×20cm、ポリイミド厚15μm、エポキシ系樹脂接着剤層25μm)、及び、離型フィルムを下からこの順番に積み上げ、スライド式真空ヒータプレス(MKP−3000V−WH−ST、ミカドテクノス社製)を用いて予め180℃で加熱したプレス金型間に置いて位置合わせをした後、プレスを開始し(設置から実際に圧力がかかるまでに約10秒)、真空条件下、50kg/cmで2分間プレスすることにより、CCLとカバーレイとからなるフレキシブル回路基板(FPC)評価サンプルを作製した。
その後、FPC評価サンプル及び離型フィルムを取り出し、離型フィルムを剥がした後、カバーレイ表面上に転写されたシワの個数を測定した。シワの個数が0個であった場合を「◎」と、1〜10個であった場合を「○」と、11〜20個であった場合を「△」と、21個以上であった場合を「×」と評価した。
なお、シワの個数が20個以内の場合には、フレキシブル回路基板を製造する際の離型フィルムとして充分な防シワ性を有するといえる。より好ましくは、シワの個数が10個以内である。
【0044】
(3)離型性に関する性能評価
CCL(20cm×20cm、ポリイミド厚25μm、銅箔35μm)、カバーレイ(20cm×20cm、ポリイミド厚25μm、エポキシ系樹脂接着剤層35μm)、及び、離型フィルムを下からこの順番に積み上げ、スライド式真空ヒータプレス(MKP−3000V−WH−ST、ミカドテクノス社製)を用いて予め180℃で加熱したプレス金型間に置いて位置合わせをした後、プレスを開始し(設置から実際に圧力がかかるまでに約10秒)、50kg/cmで2分間プレスすることにより、CCLとカバーレイとからなるFPC評価サンプルを作製した。
その後、FPC評価サンプル及び離型フィルムを取り出し、机上に放置し、離型フィルムがFPC評価サンプルから剥がれるまでの時間を計測した。具体的には、離型フィルムとFPC評価サンプルとが密着している状態から、離型フィルムとFPC評価サンプルとの間に空気が入っていくことにより、離型フィルム側から見た色調が変わるため、FPC評価サンプル及び離型フィルムを取り出した時点から、色調の変化が完了した時点までの時間を離型フィルムが剥がれるまでの時間とした。
離型フィルムが剥がれるまでの時間が30秒以下であった場合を「◎」と、30秒は超えるが60秒以下であった場合を「○」と、60秒は超えるが90秒以下であった場合を「△」とした。
なお、離型フィルムが剥がれるまでの時間が60秒以下の場合には、フレキシブル回路基板を製造する際の離型フィルムとして充分な離型性を有するといえる。より好ましくは、離型フィルムが剥がれるまでの時間が30秒以下である。
【0045】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明によれば、フレキシブル回路基板の製造に適した離型フィルムであって、離型性を維持したままでシワの発生を抑制できる離型フィルムを提供することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7