特許第6574472号(P6574472)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 矢崎エナジーシステム株式会社の特許一覧

特許6574472ガス検知素子、及び、接触燃焼式ガスセンサ
<>
  • 特許6574472-ガス検知素子、及び、接触燃焼式ガスセンサ 図000002
  • 特許6574472-ガス検知素子、及び、接触燃焼式ガスセンサ 図000003
  • 特許6574472-ガス検知素子、及び、接触燃焼式ガスセンサ 図000004
  • 特許6574472-ガス検知素子、及び、接触燃焼式ガスセンサ 図000005
  • 特許6574472-ガス検知素子、及び、接触燃焼式ガスセンサ 図000006
  • 特許6574472-ガス検知素子、及び、接触燃焼式ガスセンサ 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6574472
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】ガス検知素子、及び、接触燃焼式ガスセンサ
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/16 20060101AFI20190902BHJP
【FI】
   G01N27/16 B
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-238215(P2017-238215)
(22)【出願日】2017年12月13日
(62)【分割の表示】特願2013-70019(P2013-70019)の分割
【原出願日】2013年3月28日
(65)【公開番号】特開2018-40814(P2018-40814A)
(43)【公開日】2018年3月15日
【審査請求日】2017年12月13日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】501418498
【氏名又は名称】矢崎エナジーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】宮城 敦子
(72)【発明者】
【氏名】奥野 辰行
【審査官】 小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−247239(JP,A)
【文献】 特開平07−244009(JP,A)
【文献】 特開平08−062169(JP,A)
【文献】 特開昭52−129592(JP,A)
【文献】 特開2007−263582(JP,A)
【文献】 特開2010−175367(JP,A)
【文献】 特開昭59−137849(JP,A)
【文献】 特開2007−114039(JP,A)
【文献】 特開2010−002376(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0297860(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 25/00 − G01N 27/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パラジウムが担持された多孔質のγ−アルミナ担体により発熱体が被覆されているメタンガス検知素子と、
触媒が担持されていない多孔質のγ−アルミナ担体により発熱体が被覆されている参照素子と、を備え、
前記メタンガス検知素子の前記γ−アルミナ担体におけるパラジウム担持量が30重量%であり、
前記メタンガス検知素子および前記参照素子の前記γ−アルミナ担体の比表面積が140m/g以上であることを特徴とする接触燃焼式ガスセンサ。
【請求項2】
前記接触燃焼式ガスセンサが、ダイアフラム型接触燃焼式ガスセンサであり、
前記メタンガス検知素子が、基板に設けられた空洞部上の薄膜に形成されることを特徴とする請求項1に記載の接触燃焼式ガスセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接触燃焼式ガスセンサ、特に低消費電力型の接触燃焼式ガスセンサの検知素子、及び、そのような検知素子を有する接触燃焼式ガスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
接触燃焼型ガスセンサの原理図を図1に示す。接触燃焼式ガスセンサは、被検対象ガスを燃焼させる酸化触媒が担持された多孔質担体により発熱体を被覆して構成されるガス検知素子F1(図2にガス検知素子F1をモデル的に示す)と、被検対象ガスが接触燃焼しないように処理された参照素子F2と、で構成され、電気抵抗R1及びR2とともにブリッジ回路を形成する。
【0003】
このような接触燃焼センサによる被検対象ガスの検知原理は、図2にモデル的に示すように被検対象ガスが発熱体1により加熱されたガス検知素子の多孔質担体2の酸化触媒に接触し、燃焼するときの温度上昇によりガス検知素子の発熱体1の電気抵抗値が変化して、ガス検知素子F1及び参照素子(温度補償素子)F2の2つの素子の間に生じた電位差を取り出すことにより検知対象ガスを検知する。
【0004】
ここで、従来の接触燃焼式ガスセンサ(特許文献1参照)では、ガス検知素子は数重量%〜十数重量%のパラジウムを酸化触媒として担持したγ−アルミナで発熱体を被覆し、参照素子はパラジウムを有しないγ一アルミナにより発熱体を被覆して、それぞれ構成されている。
【0005】
近年、省エネなどの観点から、低消費電力型センサの要求が高まり、ガス検知素子の小型化(例えば、図3に示すような、基板3に設けられた空洞部4上の薄膜に発熱体1とそれを覆う多孔質担体2からなるガス検知素子が形成された接触燃焼式ガスセンサ(ダイアフラム型(薄膜型)接触燃焼式ガスセンサ)等)に伴い、被検対象ガスに対する検出感度が低いことが問題となっており、より高い感度が得られるセンサが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−145656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記した従来の問題点を改善する、小型化及び低消費電力化を可能としながら、被検対象ガスに対する高い検出感度を達成するガス検出素子、及び、高い検出感度を有する接触燃焼式ガスセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の接触燃焼式ガスセンサは、上記課題を解決するため、請求項1に記載の通り、パラジウムが担持された多孔質のγ−アルミナ担体により発熱体が被覆されているガス検知素子と、触媒が担持されていない多孔質のγ−アルミナ担体により発熱体が被覆されている参照素子と、を備え、前記ガス検知素子の前記γ−アルミナ担体におけるパラジウム担持量が25重量%以上35重量%以下であり、前記ガス検知素子および前記参照素子の前記γ−アルミナ担体の比表面積が140m/g以上であることを特徴とする接触燃焼式ガスセンサである。
【0009】
また、前記接触燃焼式ガスセンサが、ダイアフラム型接触燃焼式ガスセンサであり、前記ガス検知素子が、基板に設けられた空洞部上の薄膜に形成されてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明のガス検知素子によれば、特許文献1に記載の従来タイプのコイル型ガス検出素子を用いた接触燃焼式ガスセンサの消費電力が400mW程度であるのに比べ、例えば100mW以下(平均消費電力)と低消費電力化され、かつ、小型化が可能な接触燃焼式ガスセンサを実現するガス検出素子でありながら、γ−アルミナ担体におけるパラジウム担持量を25重量%以上35重量%以下の範囲とすることにより、被検対象ガスに対する高い検出感度を有する接触燃焼式ガスセンサを得ることができる。
【0011】
さらに、本発明による効果として、以下のことも期待できる。すなわち、高感度であるためにエアーベース変動による誤報のマージンを増やすことができる。コイル式接触燃焼式ガスセンサにも活用することができるが、小型のセンサ、例えば、ダイアフラム型接触燃焼式ガスセンサに対しては特に効果的に被険対象ガスに対する感度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、一般的な接触燃焼式ガスセンサの構成と接触燃焼式ガスセンサを用いた被検ガス検出回路とを示すモデル説明図である。
図2図2は、従来技術にかかるガス検知素子を示すモデル説明図である。
図3図3は、小型化と低消費電力化とが可能なダイヤフラム型接触燃焼式ガスセンサのガス検知素子の一例を示すモデル断面図である。
図4】接触燃焼式ガスセンサにおいてガス検知素子の担体のパラジウム含有量を変化させたときのセンサ出力への影響を示すグラフである。
図5】ガス検知素子の担体のパラジウム含有量を変化させたときの担体の比表面積への影響を示すグラフである。
図6】従来例と実施例の接触燃焼式ガスセンサの、0〜5000ppmのメタンガス濃度に対する出力を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のガス検知素子は、上述のように、パラジウムが担持されたγ−アルミナ担体により発熱体が被覆されているガス検知素子において、前記γ−アルミナ担体におけるパラジウム担持量が25重量%以上35重量%以下であるガス検知素子である。特に好ましい範囲は28重量%以上33重量%以下である。
【0014】
ここで、パラジウム担持量が少なすぎると被検対象ガスを酸化させるサイトの存在量が不足し、その結果、十分な検出感度が得られない。また、パラジウム担持量が多すぎても、担体中でパラジウムの凝集が生じ、その結果、被検対象ガスを酸化させるサイトの存在量が不足し、やはり高い検出感度が得られない。
【0015】
ガス検知素子において被覆に用いる担体としてはγ−アルミナを用いる。γ−アルミナを用いて作成した被覆担体は多孔質となり、担体に配合されるパラジウムと被検対象ガスとの接触サイトが多くなり、高い検出感度をもたらす。さらに、参照素子における被覆は、ガス検知素子における被覆とパラジウムを含有しない他は同様にして作成するが、γ−アルミナは多孔質であっても触媒活性を有しないので、被検対象ガスに対して触媒活性が付与されたガス検知素子と触媒活性のない参照素子との挙動の差が大きくなり、その結果、被検対象ガスに対する高い感度を接触燃焼式ガスセンサに付与することができる。
【0016】
担体による被覆は、例えば次のようにして形成することができる。
【0017】
γ−アルミナを、必要に応じて十分に粉砕し、得られたアルミナ粉末とアルミナゾルとを混合したペーストを作製する。
【0018】
このように得たペーストを発熱体の上記のようなコイル様部分あるいはジグザク様部分にこれら部分を覆うように塗布する。その後、例えば800℃の熱処理をおこなって、γ−アルミナ担体を発熱体にγ−アルミナ担体を固着させる。参照素子はこの状態のものを用い、ガス検知素子には、さらに、そのγ−アルミナ担体にパラジウムを担持させる。
【0019】
このようにして得た、本発明のガス検知素子は、パラジウムの担持を行っていない、γ−アルミナ担体により発熱体が被覆されている参照素子とともに、図1に示すようなブリッジ回路に組み込まれて、例えば都市ガス、LPガスなどの可燃ガスの空気中における、検出、及び、濃度測定に用いることができる。
【0020】
ここで、図3に示した、ダイアフラム型の接触燃焼式ガスセンサについて、そのガス検知素子のγ−アルミナ担体のパラジウム担持量を15〜50重量%の範囲で変化させたものを作製した。
【0021】
これらガスセンサについて、メタンガスを3000ppm含む空気に対する出力を調べた。結果を図4に示す。なお、従来のガス検知素子(「従来品」とも云う)の担体中のパラジウム担持量は15重量%である。
【0022】
図4より、パラジウム担持量を従来品より増加させることで、ガス感度を向上させることができ、ある一定以上に増加させると感度が低下することが判る。そして、パラジウムの担持量が25重量%〜35重量%近傍でメタンガスに対する感度が最大となることが判る。
【0023】
ここで、感度の上昇は担体中のガスに対する反応点が増加することにより、担持量をある一定以上に増加させるとパラジウムの凝集が生じ、反応点が減少することによるものと考えられる。
【0024】
また、図5には、参照素子(パラジウム担持なし)、及び、上記で作製したガス検知素子の担体の比表面積を調べた結果を示す。
【0025】
図5より、パラジウム担持量が多くなるに従って比表面積が低下することから、担持量を限度を超えて多くしても、反応に寄与する触媒サイトの増加効果が得られないことが理解される。
【0026】
図6には、従来技術に係るセンサ(従来例:ガス検知素子の担体中のパラジウム担持量が15重量%)と本発明品(実施例:ガス検知素子の担体中のパラジウム担持量が30重量%)との、異なる濃度でメタンガスを含有する空気に対する出力の関係を示す。図6より、本発明に係るセンサは、従来例に比べてメタンガス感度が大きく、優れた直線性が得られることが判る。このように、本発明に係るセンサでは高いガス感度を得ることができる。
【0027】
以上、本発明について、好ましい実施形態を挙げて説明したが、本発明のガス検知素子、及び、接触燃焼式ガスセンサは、上記実施形態の構成に限定されるものではない。
【0028】
当業者は、従来公知の知見に従い、本発明のガス検知素子、及び、接触燃焼式ガスセンサを適宜改変することができる。このような改変によってもなお本発明のガス検知素子、及び、接触燃焼式ガスセンサを具備する限り、もちろん、本発明の範疇に含まれるものである。
【符号の説明】
【0029】
1 発熱体
1a コイル部
2 パラジウムが担持されたγ−アルミナ担体
3 基板
4 空洞部
図1
図2
図3
図4
図5
図6