(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記医療機器の前記識別特性が、少なくとも2つの超音波エミッタ/センサ要素からの検出信号に基づいて決定され、前記少なくとも2つの超音波エミッタ/センサ要素が、異なる方向に配向されている、請求項1に記載のシステム。
前記医療機器の前記識別特性が、圧電性超音波エミッタ/センサアレイ又は容量性マイクロマシン超音波エミッタ/センサアレイに由来する少なくとも1つの超音波エミッタ/センサ要素からの検出信号に基づいて決定される、請求項1に記載のシステム。
前記識別特性が、少なくとも音響結合材料を含む超音波エミッタ/センサ要素から受信された検出信号に基づいて、医療機器に対して決定される、請求項1に記載のシステム。
前記プロセッサが、前記装置に結合された前記医療機器の前記識別特性を医療機器の既知の識別特性のデータベースに追加することによって、前記データベースを更新するように動作可能である、請求項1に記載のシステム。
医療機器の既知の識別特性の前記データベースが、外部サーバ上に位置付けられており、前記装置が、前記外部サーバと通信を行って、少なくとも前記医療機器の前記識別特性の送信及び/又は受信を行う、請求項1に記載のシステム。
前記プロセッサが、特徴ベクトル差の2次ノルムに基づいて、データベースから前記医療機器の前記識別特性を認識するように動作可能である、請求項1に記載のシステム。
前記プロセッサが、前記医療機器の使用の所定の限度を超えた場合に、警告信号を前記システムのユーザに送信するように動作可能である、請求項11に記載のシステム。
前記装置が、前記所定の限度を超えた前記医療機器の使用に対する警告メッセージによって、外部サーバ上の医療機器の既知の識別特性の前記データベースを更新するように動作可能である、請求項11に記載のシステム。
組織にエネルギーを印加するエネルギー源ユニットをさらに備え、前記装置が、前記医療機器の使用の所定の限度を超えた場合に、前記エネルギー源ユニットから前記医療機器へのエネルギーの伝達を無効化する、請求項1に記載のシステム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、識別目的に特有の付加的な受動電子装置及び/又は能動電子装置を組み込むことなく、超音波エミッタ/センサ要素を備えた医療機器を識別するシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、上記目的は、少なくとも1つの超音波エミッタ/センサ要素を担持する医療機器の識別特性を認識するシステムであって、医療機器に対して動作可能に結合されるように構成された装置を備え、この装置が、超音波エミッタ/センサ要素に駆動信号を送信するとともに、超音波エミッタ/センサ要素から検出信号を受信するように構成され、この装置が、プロセッサをさらに備えており、プロセッサが、超音波エミッタ/センサからの検出信号を処理して医療機器の識別特性を決定するように動作可能であり、プロセッサが更に、装置に対する医療機器の結合の後、医療機器の既知の識別特性のデータベースから上記医療機器の識別特性を認識するように動作可能である、システムによって実現される。
【0008】
本発明の利点は、識別コードを保持する特定の電子機器並びに読み出し及び制御を目的とした電子装置を別途組み込む必要なく、システムの既存の構成要素を用いて、少なくとも1つの超音波エミッタ/センサ要素を備えた医療機器の同一性を決定することにある。
【0009】
超音波エミッタ/センサ要素は、電気駆動信号によって超音波を生成する能動部と、音響波を所望の媒体にのみ結合する受動部とを備える。受動部は、望ましくない方向の超音波の伝達を減衰させる基材(例えば、機器の近位シャフト)と、超音波を所望の方向で媒体へと効率的に結合する整合層(例えば、解剖学的構造、空気等)とを備える。
【0010】
医療機器に組み込まれた超音波エミッタ/センサ要素は、当該超音波エミッタ/センサ要素の能動部の面に固定された少なくとも1つの音響結合材料を含む。装置が送信した一定強度の電気駆動パルスシーケンスによって、能動部は超音波を生成するが、これは、音響結合材料内で散乱して反射する。超音波エミッタ/センサ要素の能動部は、その表面に達した超音波を検出し、検出信号を装置のプロセッサに送信するが、これは、超音波エミッタ/センサ要素の識別特性ひいては医療機器の識別特性を処理する。このような識別特性は、超音波エミッタ/センサ要素による検出無線周波数信号のデータサンプル部分集合を含む特徴ベクトルであってもよい。実際のデータサンプル部分集合は、超音波の伝達方向の音響結合材料の厚さに制限されているが、これは、超音波エミッタ/センサ構成のみによって決まり、周囲の状況とは無関係である。音響結合材料と周囲環境との界面から検出された超音波信号及び界面を越えて検出された超音波信号は、周囲の状況に強く依存するため、超音波エミッタ/センサ要素の識別目的には適していない。
【0011】
超音波エミッタ/センサ要素は、能動エミッタ/センサ要素、基材、音響結合層、及び接合材を含む音響スタックのわずかな固有の製造欠陥及び/又は偏差によって、電気駆動パルスシーケンスに対する一意の応答を提示する。さらには、同じ電気駆動パルスシーケンスに対して、より差別化された超音波エミッタ/センサ要素の応答が生成されるように、超音波エミッタ/センサ要素の製造プロセスに微小な欠陥が任意で追加されるようになっていてもよい。
【0012】
超音波エミッタ/センサ要素は、圧電性超音波エミッタ/センサアレイ又は容量性マイクロマシン超音波エミッタ/センサアレイに由来していてもよい。超音波エミッタ/センサアレイは、衝突した超音波によって解剖学的構造から散乱・反射する超音波を受信する開口部を増大する。
【0013】
アレイの複数の超音波エミッタ/センサ要素によって、個々の識別特性を組み合わせられる。本発明の一実施形態において、個々の特性の組み合わせは、超音波エミッタ/センサ要素の個々の特徴ベクトルを組み立てることにより、医療機器の特徴ベクトルを構成することによって実現される。
【0014】
医療機器の超音波エミッタ/センサ要素は、異なる方向に配向されていてもよい。医療機器に対して様々な配向で位置決めされた対象となる解剖学的構造(例えば、心腔に位置付けられたカテーテルに対する心臓生体構造)の場合、超音波エミッタ/センサ要素は、様々な方向の配向により、心臓生体構造の組織領域の関連位置と併せて、組織特性に関する情報を提供するのが好都合である。
【0015】
このシステムの一実施形態において、プロセッサは、装置に結合された上記医療機器の識別特性を医療機器の既知の識別特性のデータベースに追加することによって、当該データベースを更新するように動作可能である。データベースは、装置の内部メモリユニットに格納されていてもよいし、或いは、外部サーバのメモリユニットに格納されていてもよい。装置は、有線又は無線通信によって、継続的又は定期的に外部サーバと通信を行って、少なくとも医療機器の識別特性の送信及び/又は受信を行うように構成されていてもよい。
【0016】
このシステムの一実施形態において、プロセッサは、特徴ベクトル差の2次ノルムに基づいて、医療機器の既知の識別特性のデータベースから上記医療機器の識別特性を認識するように動作可能である。
【0017】
このシステムのさらなる実施形態において、プロセッサは、医療機器の使用の継続時間及び頻度に関するデータベースの情報を更新するように動作可能である。したがって、超音波エミッタ/センサ要素が組み込まれた医療機器の使用の程度を記録可能である。
【0018】
本発明のさらなる実施形態において、プロセッサは、医療機器の所定の使用を超えた場合に、警告信号をシステムのユーザに送信するように動作可能である。警告信号は、システムの画面に表示される視覚信号又はテキスト、触覚フィードバック、音響信号等であってもよい。
【0019】
本発明の別の実施形態において、装置は、所定の限度を超えた医療機器の使用に対する警告メッセージによって、外部サーバ上の医療機器の既知の識別特性のデータベースを更新するように動作可能である。その主要な利益として、発せられた警告信号に対するシステムのユーザの反応に関係なく、推奨限界から逸脱する医療機器の使用を記録可能である。
【0020】
このシステムの代替実施形態において、装置は、医療機器の所定の使用を超えた場合に、少なくとも1つの超音波エミッタ/センサ要素の使用を中断するように構成されている。その主要な利益として、医療機器の複数回の再利用に反復的な消毒サイクルが必要であり、材料疲労又は望ましくない化学反応によって危険な状態となり得る潜在的に危険な状態において、医療機器の再利用が阻止される。
【0021】
さらに別の実施形態において、このシステムは、組織にエネルギーを印加するエネルギー源ユニットをさらに備え、装置が、医療機器の所定の使用を超えた場合に、エネルギー源ユニットから医療機器へのエネルギーの伝達を許可しないように構成されている。組織にエネルギーを印加するように動作可能な医療機器は、潜在的に、単回使用の使い捨て機器であってもよい。医療機器の危険な使用は、医療機器の不適切な使用が試みられていることを認識した後、医療機器へのエネルギーの伝達を無効化することによって阻止される。
【0022】
本発明の追加の態様及び利点については、添付の図面の参照及び併用によって最も理解が深められる以下の詳細な説明から、より明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明に係るシステムの一実施形態を模式的且つ例示的に示した図である。
【
図2】本発明に係る医療機器の遠位端の一実施形態を模式的且つ例示的に示した図である。
【
図3A】本発明に係るシステムで使用する超音波エミッタ/センサ要素の断面を示した図である。
【
図3B】本発明に係るシステムで使用する超音波エミッタ/センサ要素の断面を示した図である。
【
図4】超音波エミッタ/センサ要素の検出信号をグラフ表示した図である。
【
図5A】本発明に係る医療機器の識別特性の決定に用いられる応答関数をグラフ表示した図である。
【
図5B】本発明に係る医療機器の識別特性の決定に用いられる応答関数をグラフ表示した図である。
【
図6A】本発明に係るシステムで使用する医療機器の遠位端の一実施形態を模式的且つ例示的に示した図である。
【
図6B】本発明に係るシステムで使用する医療機器の遠位端の一実施形態を模式的且つ例示的に示した図である。
【
図6C】本発明に係るシステムで使用する医療機器の遠位端の一実施形態を模式的且つ例示的に示した図である。
【
図7】複数の超音波エミッタ/センサ要素を備えた医療機器の識別特性の決定に用いられる応答関数をグラフ表示した図である。
【
図8A】2つの異なる段階における医療機器の応答関数をグラフ表示した図である。
【
図8B】2つの異なる段階における2つの医療機器の応答関数をグラフ表示した図である。
【
図9A】複数の超音波エミッタ/センサ要素を備えた医療機器について、2つの異なる段階で決定された応答関数をグラフ表示した図である。
【
図9B】複数の超音波エミッタ/センサ要素を備えた2つの異なる医療機器の応答関数をグラフ表示した図である。
【
図10A】医療機器の識別に用いられる特徴ベクトル差の2次ノルムを例示した図である。
【
図10B】医療機器の識別に用いられる特徴ベクトル差の2次ノルムを例示した図である。
【
図11】心臓組織にエネルギーを印加する医療機器を識別するシステムの一実施形態を模式的且つ例示的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1に示す本発明に係るシステム1の一実施形態は、医療機器3に対して動作可能に結合された装置2と、医療機器3で収集された超音波測定情報を表示する表示ユニット7とを含む。装置2は、伝送経路4を介して、医療機器3に組み込まれた少なくとも1つの超音波エミッタ/センサ要素に駆動信号を送信するとともに、同じ伝送経路を介して、超音波エミッタ/センサ要素から検出信号を受信するように構成されている。装置2は、医療機器3に組み込まれた超音波エミッタ/センサ要素からの検出信号を処理するように動作可能なプロセッサ22をさらに備える。
【0025】
装置は、検出信号を処理した結果のデータをローカルに格納する内部メモリユニット21を備える。或いは、内部メモリユニットは、取り外し可能なメモリユニットであってもよい。本発明に係る一実施形態において、装置2は、検出信号を処理した結果のデータの送信及び/又は受信を行う伝送経路6を介して、外部サーバ5と通信を行うように構成可能である。伝送経路6によれば、装置2の内部メモリユニット21に格納されたデータと外部サーバ5のメモリユニット51に格納されたデータとの同期が可能である。
【0026】
医療機器と装置2との間の伝送経路4及び装置2と外部サーバ5との間の伝送経路6は、有線接続であってもよいし、無線接続であってもよい。表示ユニット7は、装置2に組み込まれて、携帯型システムに利点をもたらすものであってもよい。
【0027】
医療機器3の細長本体は、伝送経路4を介して医療機器を装置2に結合させる近位端31と、遠位端32とを備える。医療機器3の近位端31は、伝送経路4を用いずに直接、装置2に結合されていてもよい。
【0028】
図2には、医療機器の遠位端32の一実施形態を模式的且つ例示的に示している。軸方向に配向された超音波エミッタ/センサ要素321がケーシング329に組み込まれている。超音波エミッタ/センサ要素321は、医療機器の遠位端32の前方の生体構造の情報を提供可能である。ケーシング329の材料は、電気絶縁特性又は導電特性を有していてもよい。ポリエーテルブロックアミド(例えば、PEBAX)等の電気絶縁材料が熱可塑性を示すことから、ケーシングは容易に形成可能である。一方、無線周波数電流の形態のエネルギーを組織に印加するのには、導電材料(例えば、プラチナ・イリジウム合金)が適している。
【0029】
超音波エミッタ/センサ要素321は、受信した電気駆動信号によって超音波を生成する能動部と、音響波を所望の方向の媒体に効率的に結合する受動部とを備えた多層スタック構成である。
図3Aは、能動部101として圧電材料(例えば、PZT5H、ポリフッ化ビニリデン)を含む超音波エミッタ/センサ要素321の断面を示している。能動部101の両面には、導電層が処理されて、電気駆動信号による圧電材料の励起が可能である。或いは、超音波エミッタ/センサ要素の能動部は、容量性マイクロマシン超音波トランスデューサ(CMUT)セル111であってもよい。
図3Bは、このような超音波エミッタ/センサ要素の断面を模式的に示している。電気駆動信号は、一方が膜に組み込まれ、他方が膜支持基体に組み込まれた2つの導電性電極112に適用される。いずれの場合も、能動素子が圧電材料101又はCMUTセル111であるならば、電気駆動信号の受信により生成された長手方向の超音波は、能動部の両面に垂直な両方向に伝わる。超音波を急速に減衰させるため、エミッタ/センサ要素の能動部の一方側には、基層102が適用されていてもよい。基層は通例、音響波を効率的に減衰させる材料マトリクス内の散乱粒子の複合材料である。超音波エミッタ/センサ要素の能動部の他面には、少なくとも1つの音響結合層103が処理されており、これは、超音波と周囲環境との効率的な結合、能動部の機械的、化学的、及び電気的保護等、複数の目的に対応する。適当な音響結合材料は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、各種ポリエーテルブロックアミド(PEBAX)、ポリブタジエン、パリレン等である。音響結合材料は、周囲環境に向かって超音波の焦点合わせ又は焦点外しを行うレンズ効果を備えた様々な形態を有していてもよい。
図4には、単サイクルの正弦波形状駆動信号による超音波エミッタ/センサ要素の検出信号230をグラフ表示している。本発明の説明のため、単サイクルの正弦波形状駆動信号を使用しているものの、各駆動信号の受信によって超音波センサ/エミッタ要素の能動部が超音波を生成可能であることを前提として、その他任意の形態の駆動信号を超音波エミッタ/センサ要素に適用可能である。
【0030】
検出信号230は、装置が受信した無線周波数(RF)信号である。このグラフ表示において、y軸は、RF信号の振幅を表し、x軸は、超音波の伝達方向の深さを表す。或いは、この深さは、超音波エミッタ/センサ要素を囲む媒体を通って超音波がある距離を進むのに掛かる時間である超音波の飛行時間で表されるようになっていてもよい。
【0031】
超音波が伝達される周囲環境の状態の再現性が非常に低いため、周囲環境から超音波エミッタ/センサ要素へと散乱・反射する超音波は事実上、時間的に可変である。超音波エミッタ/センサ要素の識別目的に検出信号を使用するため、周囲環境が検出信号に及ぼす影響は、取り除かれるようにするのが好ましい。
【0032】
超音波エミッタ/センサ要素の識別特性は、
図3A及び
図3Bに示す多層スタック内に由来する検出信号に基づくべきである。超音波エミッタ/センサ要素の識別特性の決定に使用可能な検出信号の実際の長さは、一方では電気駆動信号に対する超音波エミッタ/センサ要素の能動部の反応時点によって、他方では音響結合材料と周囲環境との界面からの超音波の反射によって決まる。したがって、音響結合材料103の厚さ及び組成は明らかである。多層スタックの超音波エミッタ/センサ要素の材料の厚さ及び組成が既知である場合、識別目的に使用可能な検出信号の長さは、多層スタックにおける音速に基づいて決定可能である。しかし、ほとんどの実際的事例においては、各層の厚さ、組成、及び表面仕上げの避けられないわずかな変動によって、それぞれの超音波エミッタ/センサ要素が一意となり、識別目的に使用可能な検出信号の長さの差はわずかである。
【0033】
周囲環境の如何なる状況にも本発明を実際に使用可能となるほか、多層スタックの組成が既知及び未知のいずれの超音波エミッタ/センサ要素に対しても本発明に影響が出ないようにするために、限られた時間内で同じ駆動信号に対して同じ超音波エミッタ/センサ要素の複数のRF検出信号線を処理することにより、検出信号が求められるのが好ましい。
【0034】
周囲環境の状況の変化が最も小さい場合は、検出信号が不安定になる可能性があり、ノイズ及び時間的に可変な信号(例えば、医療機器と心臓組織との間の相対運動)として現れる場合がある。好適な実施形態においては、再帰的低域通過フィルタによって、周囲環境の状況と関連する寄与を検出信号から取り除くことにより、超音波エミッタ/センサ要素の応答関数が求められる。再帰的フィルタは、以下の循環関係を用いて実現可能である。
y
d[n]=α・y
d[n−1]+β・{x
d[n]+x
d[n−1]} (式1)
ここで、x
d[n]は、深さdでの離散時間指数nにおけるRF線サンプル値であり、y
d[n]は、同じ時間及び深さ指数の場合の低域通過フィルタリング後のRF線サンプルである。パラメータα及びβは、以下により与えられる。
【0036】
【数2】
ここで、f
PRFは、パルス繰り返し数(ヘルツ)であり、τは、再帰の平均化継続時間(秒)又は有効期間を規定する時定数である。
【0037】
図5Aには、能動部として圧電材料を含む超音波エミッタ/センサ要素321の応答関数231をグラフ表示している。同じような方法で、能動部としてCMUTセル111を含む超音波エミッタ/センサ要素の応答関数241を求めることができ、これを
図5Bに例示している。
【0038】
プロセッサは、以下により、超音波エミッタ/センサ要素の識別特性を表す特徴ベクトルを演算するように構成されている。
【0039】
【数3】
ここで、ベクトルの要素は、特徴ベクトルの演算に考慮される最大深さd
maxまでの様々な深さにおける時間平均RF線値である。
【0040】
複数の超音波エミッタ/センサ要素が医療機器に組み入れられていてもよい。
図6A〜
図6Cには、このような実施形態を模式的且つ例示的に示している。
図6Aにおいて、医療機器3の遠位端32は、ケーシング329に組み込まれた軸方向配向の超音波エミッタ/センサ要素321及び半径方向配向の超音波エミッタ/センサ要素322、323の組み合わせを含む。本実施形態は、医療機器の遠位端32を囲む生体構造に関して、より多くの情報を提供可能である。
【0041】
医療機器に組み込まれた複数の超音波エミッタ/センサ要素によって、個々の識別特性を組み合わせられる。本発明の一実施形態において、個々の特性の組み合わせは、医療機器の特徴ベクトル
【0042】
【数4】
を構成することによって実現されるが、これは、超音波エミッタ/センサ要素の個々の特徴ベクトルを組み立てることによって求められる。
【0043】
【数5】
ここで、f
1...mは、医療機器の識別特性の決定にm個の超音波エミッタ/センサ要素が考慮される個々の超音波エミッタ/センサ要素の特徴ベクトルである。
【0044】
図7は、
図6Aに示す3つの超音波エミッタ/センサ要素が遠位端32に組み込まれた医療機器3の識別特性の決定に用いられる応答関数を示している。軸方向の超音波エミッタ/センサ要素は、
図2に示す医療機器のものと同一であると考えられ、応答関数231は
図5Aにて表される。医療機器の応答関数251には、軸方向の超音波エミッタ/センサ要素321の応答関数231のほか、半径方向に配向された2つの超音波エミッタ/センサ要素322及び323に対応する応答関数232及び233を含む。
【0045】
代替実施形態において、軸方向に配向された超音波エミッタ/センサ要素321は、
図6Bに示すように、超音波エミッタ/センサ要素マトリクス324に由来していてもよい。この構成は、医療機器3の遠位端32の前方の生体構造を表す3次元超音波情報を提供可能である。しかし、遠位先端を囲む生体構造の3次元レンダリングの最適な表現として、医療機器の遠位端は、網羅範囲が十分な超音波エミッタ/センサ要素マトリクスを必要とする場合がある。
図6Cには、このような実施形態を模式的且つ例示的に示しており、医療機器の遠位端には、軸方向、斜め方向、及び半径方向に配向された要素321、325、及び322をそれぞれ含む。
【0046】
超音波エミッタ/センサ要素のアレイ又はマトリクスを備えた医療機器の識別特性は、式5に従って超音波エミッタ/センサ要素の複数の個々の特徴ベクトルを組み立てることによって生成可能である。
【0047】
医療機器の構成に応じて、式4及び最終的に式5により医療機器3の識別特性が決まったら、装置2のプロセッサ22は、医療機器の識別特性のデータベース211を作成するように動作可能である。さらに、プロセッサは、装置2に結合された医療機器3の識別特性を医療機器の既知の識別特性の既存のデータベース211に追加することによって、当該データベースを更新するように動作可能である。データベース211は、装置2の内部メモリユニット21に格納されていてもよいし、或いは、外部サーバ5のメモリユニット51に格納されていてもよい。
【0048】
既知の医療機器の識別特性のデータベース511は、新たに製造される医療機器の生産施設で組み立て及び/又は更新が行われる中央データベースであってもよい。
【0049】
装置2は、継続的又は定期的に外部サーバ5と通信を行って、医療機器の少なくとも1つの識別特性の送信及び/又は受信を行うように構成されている。これにより、最初の使用場所での装置2に対する医療機器3の結合後、新たな医療機器の識別特性によって、既存のデータベース511を更新することができる。このような構成の主要な利点として、中央データベースには、複数の現場で製造された医療機器の識別特性を供給可能である。
【0050】
患者の診断及び/又は処置条件によっては、医療機器の表面上又は構造内に生物由来物質が取り込まれる可能性がある。医療機器を使用後に洗浄して消毒することにより、医療機器の再利用のための十分安全な状態を提供可能である。しかし、消毒時の材料疲労及び化学反応によって、医療機器のその後の使用が安全でない状態となる場合がある。したがって、緩い構造の構成要素(例えば、血流中のカテーテル構成要素)又は医療機器の再利用を原因として広がる感染病と関連する悪影響を回避するため、医療機器の使用を監視することの重要性が大きくなっている。
【0051】
超音波エミッタ/センサ要素の特徴ベクトルに基づく識別特性が付与された医療機器は、それぞれの使用時に識別可能である。
【0052】
超音波エミッタ/センサ要素からの検出信号を処理するように動作可能なプロセッサ22は、装置2に結合された場合に、同じ医療機器の識別特性を繰り返し決定することができる。さらに、装置のプロセッサは、装置に対する医療機器の結合後、医療機器の既知の識別特性のデータベース211又は511から上記医療機器の識別特性を認識するように動作可能である。データベースからの既知の機器による上記医療機器の識別の時点の超音波エミッタ/センサ要素の駆動信号は、当該医療機器の識別特性が初めて決定され、データベースに追加された時点の超音波エミッタ/センサ要素の駆動信号と形状及び振幅が同じである必要がある。
【0053】
図8Aのグラフ表示は、2つの異なる時点t
1及びt
2に決定された超音波エミッタ/センサ要素の応答関数が酷似しているため、応答関数231の表示が完全に重なっていることを示している。したがって、特徴ベクトルに基づいて2つの異なる時点に決定された同じ超音波エミッタ/センサ要素の識別特性についても、酷似することになる。これに対して、
図8Bでは、2つの似ていない超音波エミッタ/センサ要素の応答関数231及び235が著しく異なっており、その結果、識別特性も似ていない。
【0054】
複数の超音波エミッタ/センサ要素の個々の識別特性の組み合わせに基づく識別特性を有する医療機器の場合、様々な段階で決定された識別特性は、大きな類似性を示す。
図9Aのグラフ表示は、3つの超音波エミッタ/センサ要素を備えた医療機器(
図6A)について、2つの異なる段階で決定された応答関数が重なっており、その結果、識別特性も酷似していることを示している。一方、類似構成の2つの異なる医療機器は、似ていない応答関数251及び255を示しており、これを
図9Bにグラフ表示している。
【0055】
本発明の一実施態様において、医療機器の識別は、識別対象の医療機器の特徴ベクトルとデータベースからの既知の医療機器の特徴ベクトルとの差の2次ノルムに基づくことができる。2次ノルムは、以下に従って演算される。
【0056】
【数6】
ここで、qは、データベースの最大医療機器数である。Q
iが固定閾値
【0057】
【数7】
よりも小さい場合は、当該医療機器がデータベース中のi番目の医療機器と同一である。効率化のため、医療機器の識別後は、さらなる2次ノルムの演算が省略されるようになっていてもよい。
【0059】
【数8】
は、超音波エミッタ/センサ要素を備えた医療機器の大きな集合(好ましくは、100超(q>100))を取り込み、同じ駆動信号を超音波エミッタ/センサ要素に印加して2つの相対的に異なる時点t
1及びt
2にRF検出信号線を測定することによって、決定可能である。医療機器の応答関数及び特徴ベクトルを求めた後、すべての医療機器対i及びjについて、2次ノルムを演算可能である。q個の医療機器の場合、2つの異なる段階において、q×q個の2次ノルム値を求める。パラメータ
【0060】
【数9】
は、2次ノルム値に基づいて2つのクラスが分離され、第1のクラスが2つの異なる時点で同一の医療機器対i、iを含み、2次ノルムが
【0061】
【数10】
であり、第2のクラスが時点とは無関係に、似ていない医療機器対i、j(i≠j)を含み、2次ノルムが
【0062】
【数11】
であるように選定される。
【0063】
図10A及び
図10Bは、
図6Aに示す構成の7つの異なる医療機器の識別の結果を例示している。医療機器は、心臓生体構造を超音波撮像する軸方向に配向された1つの超音波エミッタ/センサ要素321及び半径方向に配向された2つの超音波エミッタ/センサ要素322、323を備えたカテーテルである。第1の段階t
1において、カテーテルは、超音波エミッタ/センサ要素に駆動信号を送信するとともに超音波エミッタ/センサ要素から検出信号を受信するように構成された装置2に結合されている。プロセッサは、式1〜式5に基づいて、各カテーテルの特徴ベクトルを演算するように構成されており、これらが、時点t
1におけるカテーテルの識別特性C1(t
1)・・C7(t
1)として割り当てられる。これらの識別特性は、データベース211の形態で、装置2の内部メモリ21に格納される。第2の段階t
2において、同じ7つのカテーテルは、第1の段階t
1と同じ駆動信号を超音波エミッタ/センサ要素に送信するように構成された装置2に結合されている。超音波エミッタ/センサ要素からの受信検出信号が処理されるとともに、式1〜式5に基づいて、各カテーテルの特徴ベクトルが演算され、これらがその後、時点t
2におけるカテーテルの識別特性C1(t
2)・・C7(t
2)として割り当てられる。プロセッサは、式6に従って、2つの異なる時点の考え得るすべてのカテーテル対の特徴ベクトル差の2次ノルムを演算するように動作可能であり、如何なるカテーテル対においても、識別特性の一方が第1の段階t
1、他方が第2の段階t
2に対応するようにする。
図10Aは、特徴ベクトル差の2次ノルムを表している。暗い矩形401の区域は、グラフ表示の対角に見られ、2つの異なる段階t
1及びt
2における同一カテーテルの比較の場合に、2次ノルムの値が小さいことを意味する。
【0064】
式7.1及び式7.2により決定された閾値
【0065】
【数12】
を用いることにより、
図10Bに示すように、似ているカテーテル識別特性と似ていないカテーテル識別特性との間の2成分分離が求められ得る。
【0066】
医療機器の識別は、安全上の理由から医療機器の使用を記録する必要がある場合の所要ステップを表す。
図1に示すシステム1により、医療機器の使用の追跡が可能となる。プロセッサ22は、医療機器3が装置2に結合された場合に、識別特性に基づいて、データベース211又は511から医療機器を識別するように動作可能である。医療機器を識別したら、プロセッサは、医療機器の使用の継続時間に関するデータベースの情報を更新するように動作可能である。装置2に対する医療機器3の複数の結合に際しても、プロセッサは同様に、データベースの医療機器の使用の頻度を更新するように構成されていてもよい。
【0067】
本発明のさらなる実施形態において、プロセッサは、医療機器の所定の使用を超えた場合に、警告信号を当該システムのユーザに送信するように動作可能である。警告信号は、システムの画面7に表示される視覚信号又はテキストであってもよい。或いは、警告信号は、システム1の構成要素のうちの1つに組み込まれたスピーカを通して伝わる音響信号であってもよいし、医療機器3の近位端31のハンドルの機械的振動等の触覚フィードバックであってもよい。
【0068】
本発明の別の実施形態において、装置2は、外部サーバ5と通信を行うとともに、所定の限度を超えた医療機器の使用に対する警告メッセージによって、医療機器の既知の識別特性のデータベース511を更新するように動作可能である。その主要な利益として、発せられた警告信号に対するシステムのユーザの反応に関係なく、推奨限界から逸脱する医療機器の使用を記録可能である。
【0069】
このシステムの代替実施形態において、装置は、医療機器の所定の使用を超えた場合に、少なくとも1つの超音波エミッタ/センサ要素の使用を中断するように構成されている。超音波エミッタ/センサ要素の使用の中断には、様々なメカニズムを使用可能である。プロセッサは、使用対象の医療機器を識別するように動作可能であり、さらに、データベース211又は511により、医療機器の使用に際して記録されたデータをチェックするように構成されている。医療機器の所定の使用に達した場合又は所定の使用を超えた場合、装置は、医療機器3に組み込まれた超音波エミッタ/センサ要素への駆動信号の送信を禁止するように構成されている。代替実施形態において、装置は、超音波エミッタ/センサ要素への駆動信号の送信を許可するように構成されているが、画面7への超音波情報の表示は遮る。さらに別の実施形態において、装置は、機器の所定の使用を超えた場合に、駆動信号を非常に短くて高い電圧信号に変換するように構成されており、結果として、超音波エミッタ/センサ要素の能動部が減極するため、如何なる駆動信号を別途受信した場合にも超音波を生成できない。
【0070】
図11は、システム1の構成要素のほか、伝送経路9で装置2に結合されたエネルギー源ユニット8を備えたシステム10の一実施形態を示している。接続経路4を通して医療機器3に接続されたエネルギー源ユニット8は、医療機器の遠位端32の導電ケーシング329に無線周波数電流を供給可能である。生物11の身体上に配置され、エネルギー源ユニット8に接続された中立電極(図示せず)は、生物の身体を通して電気回路が確実に閉じるようにする。エネルギー源ユニットは、無線周波数電流を供給して、医療機器3の遠位端32のケーシング329との心臓組織の接触点にて心臓12の組織を局所的に加熱するように動作可能である。類似の実施形態において、エネルギー源ユニット8は、電磁放射の形態のエネルギーを医療機器に供給するように構成されていてもよい。
【0071】
データベース211又は511により、システム10に結合された医療機器3がその所定の使用を超えた医療機器として識別された場合、装置2は、エネルギー源ユニット8から医療機器へのエネルギーの伝達を無効化し、その結果として、エネルギー印加による心臓組織の加熱を禁止するように構成されている。これは、エネルギー源ユニット8のプロセッサに信号を送信するように動作可能な装置2のプロセッサにより実現可能であり、この信号を受信して、エネルギー源ユニット8から医療機器3へのエネルギーの伝達が禁止される。心臓組織にエネルギーを印加するように動作可能な医療機器は、潜在的に、単回使用の使い捨て機器であってもよい。医療機器の危険な使用は、医療機器の不適切な使用が試みられていることを認識した後、医療機器へのエネルギーの伝達を禁止することによって阻止される。
【0072】
当業者であれば、図面、開示内容、及び添付の特許請求の範囲の検討によって、開示の実施形態の他の変形例を理解し、特許請求の範囲に係る発明の実施に際して実現可能である。
【0073】
医療機器は、生物の身体の内側又は外側で用いられる超音波エミッタ/センサ要素を備えた機器であってもよい。医療機器の機能的使用は、超音波撮像、光音響撮像、超音波を用いた機器追跡、エネルギー印加時の組織特性変化の超音波監視と組み合わされた高強度超音波又はその他任意のエネルギー形態による組織へのエネルギー印加等のインターベンション使用であってもよい。超音波エミッタ/センサ要素を備えたインターベンション医療機器の場合は、読み出し及び制御用電子装置と併せてマイクロチップ等の付加的な機器を組み込むよりも、識別目的として、システムに組み込み済みの要素及び電子装置を使用するのが有益である。医療機器の識別に用いられる超音波エミッタ/センサ要素は、必ずしも医療機器3の遠位端32に組み込まれる必要はなく、代わりに、近位端31のハンドル等、医療機器の任意の構造部に組み込まれていてもよい。
【0074】
特許請求の範囲に列挙する複数の項目の機能を単一のユニット又は機器が実行するようにしてもよい。相互に異なる従属請求項に特定の手段が列挙されているという事実だけでは、これら手段の組み合わせを都合良く使用できない、ということにならない。特許請求の範囲において、単語「備える(comprising)」は、他の要素又はステップを除外するものではなく、不定冠詞「a」又は「an」は、複数を除外するものではない。
【0075】
特許請求の範囲における如何なる参照記号も、その範囲を制限するものと解釈されるべきではない。