(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6574494
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】アルカリ塩素法およびフィッシャー・トロプシュ合成の総合利用調整方法および装置
(51)【国際特許分類】
C10G 2/00 20060101AFI20190902BHJP
【FI】
C10G2/00
【請求項の数】15
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-563008(P2017-563008)
(86)(22)【出願日】2016年4月15日
(65)【公表番号】特表2018-521163(P2018-521163A)
(43)【公表日】2018年8月2日
(86)【国際出願番号】CN2016079381
(87)【国際公開番号】WO2016197702
(87)【国際公開日】20161215
【審査請求日】2018年2月1日
(31)【優先権主張番号】201510311714.9
(32)【優先日】2015年6月9日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】512244657
【氏名又は名称】武▲漢凱▼迪工程技▲術▼研究▲総▼院有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100103207
【弁理士】
【氏名又は名称】尾崎 隆弘
(72)【発明者】
【氏名】王大祥
(72)【発明者】
【氏名】▲くわい▼平宇
(72)【発明者】
【氏名】李蒙
(72)【発明者】
【氏名】張岩豊
【審査官】
森 健一
(56)【参考文献】
【文献】
中国特許出願公開第102660330(CN,A)
【文献】
特開昭61−069993(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0072583(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10G 2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ塩素法およびフィッシャー・トロプシュ合成の総合利用調整方法であって、
1)フィッシャー・トロプシュ合成のガス化原料をガス化して、H2、COおよびCO2を主要組成とする粗合成ガスを得る工程と、
2)工業用アルカリ塩素法を用いて飽和NaCl溶液を電気分解し、NaOH溶液、Cl2およびH2を得る工程と、
3)前記アルカリ塩素法で得られたNaOH溶液を用いて粗合成ガスからCO2を除去し、浄化合成ガスを得る工程と、
4)前記アルカリ塩素法で得られたH2を浄化合成ガスに導入し、フィッシャー・トロプシュ合成反応の要件を満たすように浄化合成ガス中の炭素水素モル比CO/H2を調整し、次いで対応する液体炭化水素およびパラフィン生成物を生成する工程と
を含むアルカリ塩素法およびフィッシャー・トロプシュ合成の総合利用調整方法。
【請求項2】
工程3)において、粗合成ガス中に分散されているCO2は、NaOH溶液と粗合成ガス直接気液接触により洗い流されて、浄化合成ガスが生成される、請求項1に記載のアルカリ塩素法およびフィッシャー・トロプシュ合成の総合利用調整方法。
【請求項3】
工程3)において、まずCO2を粗合成ガスから分離して浄化合成ガスを生成し、次いでNaOH溶液を用いてCO2を吸収させることを特徴とする請求項1に記載のアルカリ塩素法およびフィッシャー・トロプシュ合成の総合利用調整方法。
【請求項4】
工程3)において、粗合成ガス中のCO2を吸収した後にNaOH溶液の残存物があれば、凝縮、結晶化されて副生成物とされる、請求項1に記載のアルカリ塩素法およびフィッシャー・トロプシュ合成の総合利用調整方法。
【請求項5】
工程3)において、粗合成ガス中のCO2を吸収した後にNaOH溶液の残存物があれば、産業廃ガスまたは他の工程で生成されたガス中のCO2を除去するために使用される、請求項1に記載のアルカリ塩素法およびフィッシャー・トロプシュ合成の総合利用調整方法。
【請求項6】
工程4)において、浄化合成ガス中の炭素水素モル比CO/H2は1:1.5〜2.5に調整される、請求項1ないし5のいずれか一項に記載のアルカリ塩素法およびフィッシャー・トロプシュ合成の総合利用調整方法。
【請求項7】
工程1)において、得られる粗合成ガスの組成を、ドライベースでCO:5〜60%、H2:5〜45%、CO2:5〜30%、残りは不可避的不純物ガスとなるように制御する、請求項1ないし5のいずれか一項に記載のアルカリ塩素法およびフィッシャー・トロプシュ合成の総合利用調整方法。
【請求項8】
工程1)において、ガス化原料は石炭、バイオマス、重油、天然ガス、アグロフォレストリー廃棄物、家庭廃棄物、またはそれらの混合物である、請求項1ないし5のいずれか一項に記載のアルカリ塩素法およびフィッシャー・トロプシュ合成の総合利用調整方法。
【請求項9】
アルカリ塩素法およびフィッシャー・トロプシュ合成の総合利用調整装置であって、
ガス化装置(1)と、アルカリ塩素法電解槽(2)と、第1ガス洗浄装置(3)と、フィッシャー・トロプシュ合成反応器(4)とを含み、
前記ガス化装置(1)の合成ガス出口端(1-1)は、配管系を介して、前記第1ガス洗浄装置(3)のガス入口(3-1)に接続され、前記第1ガス洗浄装置(3)のガス出口(3-2)は、配管系を介して、前記フィッシャー・トロプシュ合成反応器(4)の供給ガス入口(4-1)に接続され、前記アルカリ塩素法電解槽(2)の水素出口(2-1)は、配管系を介して、前記フィッシャー・トロプシュ合成反応器(4)の供給ガス入口(4-1)に接続され、前記アルカリ塩素法電解槽(2)の苛性ソーダ溶液出口(2-2)は、配管系を介して、前記第1ガス洗浄装置(3)の洗浄液入口(3-3に接続される
ことを特徴とするアルカリ塩素法およびフィッシャー・トロプシュ合成の総合利用調整装置。
【請求項10】
前記アルカリ塩素法電解槽(2)の苛性ソーダ溶液出口(2-2)は、配管系を介して、第2ガス洗浄装置(5)の洗浄液入口(5-3)に接続され、前記第2ガス洗浄装置(5)のガス入口(5-1)は、廃ガスまたは他のCO2含有ガスを運ぶ管(7)に接続され、前記第2ガス洗浄装置(5)のガス出口(5-2)は、下流側工程の管(8)または大気に接続される、請求項9に記載のアルカリ塩素法およびフィッシャー・トロプシュ合成の総合利用調整装置。
【請求項11】
前記ガス洗浄装置は、充填塔、多孔板塔または噴霧塔である、請求項9または10に記載のアルカリ塩素法およびフィッシャー・トロプシュ合成の総合利用調整装置。
【請求項12】
アルカリ塩素法およびフィッシャー・トロプシュ合成の総合利用調整装置であって、
ガス化装置(1)と、アルカリ塩素法電解槽(2)と、脱炭装置(6)と、第1ガス洗浄装置(3)と、フィッシャー・トロプシュ合成反応器(4)とを含み
前記ガス化装置(1)の合成ガス出口端(1-1)は、配管系を介して、前記脱炭装置(6)の粗合成ガス入口(6-1)に接続され、前記脱炭装置(6)の浄化合成ガス出口(6-3)は、配管系を介して、前記フィッシャー・トロプシュ合成反応器(4)の供給ガス入口(4-1)に接続され、前記脱炭装置(6)の二酸化炭素出口(6-2)は、配管系を介して、前記第1ガス洗浄装置(3)のガス入口(3-1)に接続され、前記アルカリ塩素法電解槽(2)の水素出口(2-1)も、配管系を介して、前記フィッシャー・トロプシュ合成反応器(4)の供給ガス入口(4-1)に接続され、前記アルカリ塩素法電解槽(2)の苛性ソーダ溶液出口(2-2)は、配管系を介して、前記第1ガス洗浄装置(3)の洗浄液入口(3-3)に接続される
ことを特徴とするアルカリ塩素法およびフィッシャー・トロプシュ合成の総合利用調整装置。
【請求項13】
前記アルカリ塩素法電解槽(2)の苛性ソーダ溶液出口(2-2)は、配管系を介して、第2ガス洗浄装置(5)の洗浄液入口(5-3)に接続され、前記第2ガス洗浄装置(5)のガス入口(5-1)は、廃ガスまたは他のCO2含有ガスを運ぶ管(7)に接続され、前記第2ガス洗浄装置(5)のガス出口(5-2)は、下流側工程の管(8)または大気に接続される、請求項12に記載のアルカリ塩素法およびフィッシャー・トロプシュ合成の総合利用調整装置。
【請求項14】
前記ガス洗浄装置は、充填塔、多孔板塔または噴霧塔である、請求項12または13に記載のアルカリ塩素法およびフィッシャー・トロプシュ合成の総合利用調整装置。
【請求項15】
前記脱炭装置(6)は、圧力スイング吸着装置または低温メタノール洗浄装置である、請求項12または13に記載のアルカリ塩素法およびフィッシャー・トロプシュ合成の総合利用調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フィッシャー・トロプシュ合成技術に関し、より詳細には、アルカリ塩素法およびフィッシャー・トロプシュ合成の総合利用調整方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フィッシャー・トロプシュ合成は、石炭、天然ガスおよび他の化石エネルギー、バイオマスや他の再生可能エネルギー、または地方廃棄物やその他の廃棄物を合成ガスに変換し、次いで触媒の存在下で合成ガスを用いて液体炭化水素およびパラフィン生成物を製造するプロセスである。フィッシャー・トロプシュ合成は、石油エネルギーおよび化学生成物への依存を減らすのに役立ち、クリーンエネルギーの利用を促進する上で重要な役割を果たす。石炭またはバイオマスを原材料として生成される合成ガス中の水素/炭素比は、一般に、フィッシャー・トロプシュ合成の要件を直接満たすには低すぎる。同時に、フィッシャー・トロプシュ合成工場は、生成物の加工および触媒の削減のために十分な水素を供給できないという問題を依然として有している。
【0003】
通常、水性ガスシフトおよび脱炭工程における水素炭素比の調整後にのみ、供給ガスは炭化水素燃料または化学生成物を合成するための合成プロセスに入り、例えば、フィッシャー・トロプシュ合成法による炭化水素燃料の製造または触媒の存在下でのメタノールの合成がある。現在、原料合成ガス中の低水素/炭素比は、通常、フィッシャー・トロプシュ合成プロセスにおいて効果的に処理されない。例えば、特許文献1は、二段階のフィッシャー・トロプシュ合成法を提示している。これは、主として、アルカリ洗浄によってCO
2を除去した後のフィッシャー・トロプシュ合成の排ガスを合成ガスに転換し、合成ガスを供給ガスと混合し、得られた混合ガスを、水性ガスシフトおよび脱炭工程後にフィッシャー・トロプシュ合成反応の合成ガスとして使用する。この方法は、工程が長く、水性ガスシフト反応が複雑であり、処理コストが高い。別の例として、特許文献2は、二段階装置を用いてフィッシャー・トロプシュ合成により合成ガスから液体炭化水素生成物を製造する方法を提示しており、第1段のフィッシャー・トロプシュ合成装置を用いて製造された不活性ガスが第2段の装置に蓄積される。この方法は、実際の操作において、第2段の装置の循環ガス中の不活性ガス濃度を、第2段の装置からの排ガス排出量を増加させることによって減少させて、操作を維持し、それによってシステム全体の経済効率を低下させなければならず、また、原料合成ガス中の低水素/炭素比を効果的に処理することができない。さらに、特許文献3は、放出された排ガスを二酸化炭素改質装置に送り、脱炭工程からのメタンに富む非凝縮性排ガスと二酸化炭素との間の改質反応によって合成ガスを生成し、得られた合成ガスと原料ガスを混合した後、水性ガスシフトにより水素/炭素比を調整し、脱炭化により二酸化炭素を分離し、得られたガスをフィッシャー・トロプシュ合成反応の入口合成ガスとして使用する。複雑な水性ガスシフト工程だけでなく、その後の多量のCO
2排出にも悩まされる。
【0004】
さらに、工業界では、飽和NaCl溶液を電気分解してNaOH、Cl
2およびH
2を生成し、これを原料として使用して一連の化学生成物を製造している。これはアルカリ塩素工業と呼ばれており、アルカリ塩素工業は、最も基本的な化学工業の一つである。その原理は次のとおりである。
【0005】
アノード反応:2Cl
- - 2e
- = Cl
2↑(酸化反応)
【0006】
カソード反応:2H
+ + 2e
- = H
2↑(還元反応)
【0007】
工業的には、この反応機構は、通常、電解槽内でNaOH、Cl
2およびH
2を生成するために使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】中国特許CN200610140020.4
【特許文献2】中国特許CN200310108146.X
【特許文献3】中国特許CN101979468A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的の一つは、アルカリ塩素法およびフィッシャー・トロプシュ合成の総合利用調整方法および装置を提供することにある。本方法および装置は、水性ガスシフト工程の困難性およびコストを大幅に低減し、温室効果ガスCO
2の排出を減少させる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明の一実施形態に係り、アルカリ塩素法およびフィッシャー・トロプシュ合成の総合利用調整方法を提供する。本方法は、以下の工程を含む。
1)フィッシャー・トロプシュ合成のガス化原料をガス化して、H
2、COおよびCO
2を主要組成とする粗合成ガスを得る工程。
2)工業用アルカリ塩素法を用いて飽和NaCl溶液を電気分解し、NaOH溶液、Cl
2およびH
2を得る工程。
3)アルカリ塩素法で得られたNaOH溶液を用いて、粗合成ガスからCO
2を除去して浄化合成ガスを得る工程。
4)アルカリ塩素法で得られたH
2を浄化合成ガスに導入し、フィッシャー・トロプシュ合成反応の要件を満たすように浄化合成ガス中の炭素水素モル比CO/H
2を調整し、次いでフィッシャ・トロプシュ合成により液体炭化水素およびパラフィン生成物を生成する工程。
【0011】
一態様において、工程3)では、粗合成ガス中に分散するCO
2は、NaOH溶液と粗合成ガスの間の気液接触によって洗い流され、浄化合成ガスを生成する。
【0012】
一態様において、工程3)では、まずCO
2を粗合成ガスから分離して浄化合成ガスを生成し、次いでNaOH溶液を用いてCO
2を吸収する。
【0013】
一態様において、工程3)では、粗合成ガス中のCO
2を吸収した後にNaOH溶液の残存物があれば凝縮、結晶化して副生成物とする。
【0014】
一態様において、工程3)では、粗合成ガス中のCO
2を吸収した後にNaOH溶液の残存物があれば、産業廃棄ガスまたは他のプロセスで生成されたガス中のCO
2を除去するために使用される。
【0015】
一態様において、工程4)では、浄化合成ガス中の炭素水素モル比CO/H
2は、1:1.5〜2.5に調整される。
【0016】
一態様において、工程1)では、得られる粗合成ガスの組成は、ドライベースでCO:5〜60%、H
2:5〜45%、CO
2:5〜30%、残りは不可避的不純物ガスに制御される。
【0017】
一態様において、工程1)では、ガス化原料は、石炭、バイオマス、重油、天然ガス、アグロフォレストリー廃棄物、家庭廃棄物、またはそれらの混合物である。
【0018】
上記の方法を実現するために設計されたアルカリ塩素法およびフィッシャー・トロプシュ合成の総合利用調整装置は、ガス化装置、アルカリ塩素法電解槽、第1ガス洗浄装置、およびフィッシャー・トロプシュ合成反応器を備え、ガス化装置の合成ガス出口端は、配管系を介して、第1ガス洗浄装置のガス入口に接続され、第1ガス洗浄装置のガス出口は、配管系を介して、フィッシャー・トロプシュ合成反応器の供給ガス入口に接続され、アルカリ塩素法電解槽の水素出口も、配管系を介して、フィッシャー・トロプシュ合成反応器の供給ガス入口に接続され、アルカリ塩素法電解槽の苛性ソーダ溶液出口は、配管系を介して、第1ガス洗浄装置の洗浄液入口に接続される。
【0019】
一態様において、アルカリ塩素法電解槽の苛性ソーダ溶液出口は、配管系を介して、第2ガス洗浄装置の洗浄液入口にさらに接続され、第2ガス洗浄装置のガス入口は、煙道ガスまたは他のCO
2を含有するガスを運ぶ管に接続され、第2ガス洗浄装置のガス出口は、下流側工程の管または大気に接続される。
【0020】
一態様において、ガス洗浄装置は、充填塔、多孔板塔または噴霧塔である。
【0021】
上記方法を実現するように設計された別のアルカリ塩素法およびフィッシャー・トロプシュ合成の総合利用調整装置は、ガス化装置、アルカリ塩素法電解槽、脱炭装置、第1ガス洗浄装置およびフィッシャー・トロプシュ合成反応器を含み、ガス化装置の合成ガス出口端は、配管系を介して、脱炭装置の粗合成ガス出口に接続され、脱炭装置の浄化合成ガス出口は、配管系を介して、フィッシャー・トロプシュ合成反応器の供給ガス入口に接続され、脱炭装置の二酸化炭素出口は、配管系を介して、第1ガス洗浄装置のガス入口に接続される。アルカリ塩素法電解槽の水素出口も、配管系を介して、フィッシャー・トロプシュ合成反応器の供給ガス入口に接続され、アルカリ塩素法電解槽の苛性ソーダ溶液出口は、配管系を介して、第1ガス洗浄装置の洗浄液入口に接続される。
【0022】
一態様において、アルカリ塩素法電解槽の苛性ソーダ溶液出口は、配管系を介して、第2ガス洗浄装置の洗浄液入口にさらに接続され、第2ガス洗浄装置のガス入口は、煙道ガスまたは他のCO
2含有ガスを運ぶ管に接続され、第2ガス洗浄装置のガス出口は、下流側工程の管または大気に接続される。
【0023】
一態様において、ガス洗浄装置は、充填塔、多孔板塔または噴霧塔である。
【0024】
一態様において、脱炭装置は、圧力スイング吸着装置または低温メタノール洗浄装置である。
【発明の効果】
【0025】
従来技術と比べて、本発明の利点は、次のとおりである。
【0026】
第1に、本発明は、アルカリ塩素法をフィッシャー・トロプシュ合成法に導入し、アルカリ塩素工業をフィッシャー・トロプシュ合成と有機的に結合し、アルカリ塩素法の生成物である水素を使用して、フィッシャー・トロプシュ合成処理の浄化合成ガスの組成を調整することにより、合成ガス中の炭素水素モル比(CO/H
2)がフィッシャー・トロプシュ合成反応の吸気要件を満たすようにして、水性ガスシフト反応工程を簡素化し、フィッシャー・トロプシュ合成における変換プロセスを単純化または排除する。
【0027】
第2に、本発明は、アルカリ塩素法の別の生成物である苛性ソーダ溶液と二酸化炭素含有粗合成ガスとの接触によって粗合成ガスから二酸化炭素も除去するが、これは温室効果ガスの排出を低減するために重要であるだけでなく、アルカリ塩素法の生成物を効率的に使用する。
【0028】
第3に、本発明の装置は、フィッシャー・トロプシュ合成方法における変換工程を単純化し、フィッシャー・トロプシュ合成方法および装置の経済効率を大幅に改善する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の一実施形態によるアルカリ塩素法およびフィッシャー・トロプシュ合成の総合利用調整装置の構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明をさらに説明するために、アルカリ塩素法およびフィッシャー・トロプシュ合成の総合利用調整方法および装置を詳述する実施形態を以下に記載する。以下の実施例は、本発明を説明するためのものであり、本発明を限定するものではないことに留意されたい。
【0031】
図1は、ガス化装置1、アルカリ塩素法電解槽2、第1ガス洗浄装置3およびフィッシャー・トロプシュ合成反応器4を含む、アルカリ塩素法およびフィッシャー・トロプシュ合成の総合利用調整装置を示す。ガス化装置1はガス化炉であり、 ルイギ炉、テキサコ炉、シェル炉、またはハンディアン炉であり、原料入口1-2と、酸化剤入口1-3と、水入口1-4と、合成ガス出口端1-1を含む。アルカリ塩素法電解槽2は、水素出口2-1と、苛性ソーダ溶液出口2-2と、塩素出口2-3と、飽和NaCl溶液入口2-4を含む。フィッシャー・トロプシュ合成反応器4は、供給ガス入口4-1と、合成生成物出口4-2と、反応水排出物出口4-3と、テールガス出口4-4を含む。第1ガス洗浄装置3は、ガス入口3-1と、ガス出口3-2と、洗浄液入口3-3と、副生成物出口3-4を含む。第2ガス洗浄装置5は、ガス入口5-1と、ガス出口5-2と、洗浄液入口5-3を含む。ガス化装置1の合成ガス出口端1-1は、配管系を介して、第1ガス洗浄装置3のガス入口3-1に接続され、第1ガス洗浄装置3のガス出口3-2は、配管系を介して、フィッシャー・トロプシュ合成反応器4の供給ガス入口4-1に接続される。アルカリ塩素法電解槽2の水素出口2-1も、配管系を介して、フィッシャー・トロプシュ合成反応器4の供給ガス入口4-1に接続され、アルカリ塩素法電解槽2の苛性ソーダ溶液出口2-2は、配管系を介して、第1ガス洗浄装置3の洗浄液入口3-3に接続される。アルカリ塩素法電解槽2の苛性ソーダ溶液出口2-2は、配管系を介して、第2ガス洗浄装置5の洗浄液入口5-3にさらに接続され、第2ガス洗浄装置5のガス入口5-1は、廃ガスまたは他のCO
2含有ガスの管7と接続され、第2ガス洗浄装置5のガス出口5-2は、下流側工程の管8または大気に接続される。第1ガス洗浄装置3および第2ガス洗浄装置5は、それぞれ充填塔、多孔板塔または噴霧塔である。
【0032】
図2は、
図1のアルカリ塩素法およびフィッシャー・トロプシュ合成の総合利用調整装置の改変構造図を示し、ガス化装置1と、アルカリ塩素法電解槽2と、脱炭装置6と、第1ガス洗浄装置3とフィッシャー・トロプシュ合成反応器4を含む。ガス化装置1の合成ガス出口端1-1は、配管系を介して、脱炭装置6の粗合成ガス入口6-1に接続され、脱炭装置6の浄化合成ガス出口6-3は、配管系を介して、フィッシャー・トロプシュ合成反応器4の供給ガス入口4-1に接続され、脱炭装置6の二酸化炭素出口6-2は、配管系を介して、第1ガス洗浄装置3のガス入口3-1に接続され、アルカリ塩素法電解槽2の水素出口2-1も、配管系を介して、フィッシャー・トロプシュ合成反応器4の供給ガス入口4-1に接続され、アルカリ塩素法電解槽2の苛性ソーダ溶液出口2-2は、配管系を介して、第1ガス洗浄装置3の洗浄液入口3-3に接続される。アルカリ塩素法電解槽2の苛性ソーダ溶液出口2-2は、配管系を介して、第2ガス洗浄装置5の洗浄液入口5-3にさらに接続され、第2ガス洗浄装置5のガス入口5-1は、廃ガスまたは他のCO
2含有ガスの管7と接続され、第2ガス洗浄装置5のガス出口5-2は、下流側工程の管8または大気に接続される。第1ガス洗浄装置3および第2ガス洗浄装置5は、それぞれ充填塔、多孔板塔または噴霧塔である。また、脱炭装置6は、圧力スイング吸着装置または低温メタノール洗浄装置である。
【0033】
図1に示すアルカリ塩素法およびフィッシャー・トロプシュ合成の総合利用調整方法は、以下の工程を含む。フィッシャー・トロプシュ合成のための原料、酸化剤および水それぞれを、原料入口1-2、酸化剤入口1-3および水入口1-4からガス化装置1に導入し、ドライベースでCO:5〜60%、H
2:5〜45%およびCO
2:5〜30%の組成を有し、H
2、COおよびCO
2を主要組成とし、残りは不可避的不純物ガスである粗合成ガスを得る工程。ガス化装置1の合成ガス出口端1-1から出力された粗合成ガスは、第1ガス洗浄装置3のガス入口3-1から第1ガス洗浄装置3に流入する。同時に、飽和NaCl溶液は、アルカリ塩素法電解槽2において水素、塩素、水酸化ナトリウム溶液に電気分解され、電気分解により生成された水酸化ナトリウム溶液を、苛性ソーダ溶液出口2-2を介して、第1ガス洗浄装置3の洗浄液入口3-3から第1ガス洗浄装置3に導入し、粗合成ガス中のCO
2を除去することにより浄化合成ガスを得る。同時に、生成されたNaHCO
3およびNa
2CO
3溶液は、第1ガス洗浄装置3の副生成物出口3-4から排出され、濃縮および結晶化後に固体生成物として販売または使用される。粗合成ガスの吸収後の残りの水酸化ナトリウム溶液は、産業廃棄ガスまたは他の工程で生成されたガス中のCO
2を除去するために使用することができる。同時に、アルカリ塩素法を介して得られたH
2を、浄化合成ガスに導入し、フィッシャー・トロプシュ合成における水素流速制御の要件に従い、浄化合成ガス中の炭素水素モル比(CO/H
2)を1:1.5〜2.5に調整し、浄化合成ガスがフィッシャー・トロプシュ合成反応器4の原料ガス入口4-1からフィッシャー・トロプシュ合成反応器4に投入され、液体炭化水素およびパラフィン生成物が合成反応によって生成される。反応によって得られる液体炭化水素生成物は、合成生成物出口4-2から排出され、反応水および排出物は反応水排出物出口4-3から流出し、テールガスはテールガス出口4-4から放出される。詳細な作用工程については、実施例1〜3を参照されたい。
【0034】
図2に示す工程と
図1に示す工程の相違点としては、
図1では、浄化合成ガスは、NaOH溶液と粗合成ガスの充分な気液接触によって、粗合成ガス中のCO
2を除去することにより得られるが、
図2では、粗合成ガス中のCO
2を分散させることにより浄化合成ガスを得て、次に、分散により得られたCO
2を、NaOH溶液を用いて吸収する。詳細な作用工程については、実施例4〜6を参照されたい。
【0035】
さらに、アルカリ塩素法電解槽2での電気分解によって生成された水酸化ナトリウム溶液は、もはや粗合成ガスまたは煙道ガス中のCO
2を吸収するために使用されず、アルカリ塩素装置全体が、水素源として合成ガス中の炭素水素モル比を調整するためにのみ使用される。
【実施例1】
【0036】
常圧バイオマスガス化装置が使用される。バイオマスをガス化原料とし、空気を酸化剤として使用し、合成ガスの流量を8200kmol/hとし、ドライベースでの合成ガスの組成(モル%)は、CO:23.28%、H
2:8.65%、CO
2:16.82%、N
2:50.19%、Ar:0.65%、その他の不純物ガス:0.41%である。
【0037】
図1を参照する工程は次のとおりである。アルカリ塩素法における原料NaCl溶液の流量は5454.81kmol/hに制御され、そこから得られる水酸化ナトリウム溶液を用いて合成ガスを洗浄し、CO
2を吸収して浄化合成ガスを得る。本工程では、2759.14kmol/hの水酸化ナトリウム溶液が消費され、残りの水酸化ナトリウム(2695.67kmol/h)が煙道ガスを吸収するために使用される。アルカリ塩素法から得られた水素をガス洗浄後の浄化合成ガスと混合して、合成ガス中の水素/炭素比を調整し、フィッシャー・トロプシュ合成のための供給ガスとして混合ガスを使用し、アルカリ塩素法から得られた塩素を液体塩素に変換して販売する。ガス洗浄後の浄化合成ガス中のH
2含有量(モル%)は10.4%であり、水素調整後のフィッシャー・トロプシュ合成用供給ガス中のH
2含有量(モル%)は35.99%である。
【0038】
合成ガス中のCO
2吸収率は99%に達し、フィッシャー・トロプシュ合成のための供給ガス中のCO/H
2は1:1.8である。
【実施例2】
【0039】
常圧バイオマスガス化装置が使用される。バイオマスを原料とし、98%(モル%)のO
2を酸化剤として使用し、合成ガスの流量を8200kmol/hとし、ドライベースでの合成ガスの組成(モル%)は、CO:48.10%、H
2:23.29%、CO
2:20.84%、N
2:3.56%、その他の不純物ガス:4.20%である。
【0040】
図1を参照する工程は次のとおりである。アルカリ塩素法における原料NaCl溶液の流量は10380.08kmol/hに制御され、そこから得られる水酸化ナトリウム溶液を用いて合成ガスを洗浄し、CO
2を吸収して浄化合成ガスを得る。本工程では、1708.88kmol/hの水酸化ナトリウム溶液が消費され、残りの水酸化ナトリウム(8671.20kmol/h)が煙道ガスを吸収するために使用される。アルカリ塩素法から得られた水素をガス洗浄後の浄化合成ガスと混合して、合成ガス中の水素/炭素比を調整し、フィッシャー・トロプシュ合成のための供給ガスとして混合ガスを使用し、アルカリ塩素法から得られた塩素を液体塩素に変換して販売する。ガス洗浄後の浄化合成ガス中のH
2含有量(モル%)は29.43%であり、水素調整後のフィッシャー・トロプシュ合成用供給ガス中のH
2含有量(モル%)は60.78%である。
【0041】
合成ガス中のCO
2吸収率は99%に達し、フィッシャー・トロプシュ合成のための供給ガス中のCO/H
2は1:1.8である。
【実施例3】
【0042】
テキサコガス化炉が使用される。ガス化原料としての粗粒石炭と、酸化剤としての99%(モル%)の酸素を水と混合して水石炭スラリーを生成し、これをガス化炉に入れる。合成ガスの流量は23622kmol/hであり、ドライベースでの合成ガスの組成(モル%)は、CO:40.28%、H
2:48.28%、CO
2:7.94%、N
2:3.10%、その他の不純物ガス:0.40%である。
【0043】
図1を参照する工程は次のとおりである。アルカリ塩素法における原料NaCl溶液の流量は13347.37kmol/hに制御され、そこから得られる水酸化ナトリウム溶液を用いて合成ガスを洗浄し、CO
2を吸収して浄化合成ガスを得る。本工程では、3751.17kmol/hの水酸化ナトリウム溶液が消費され、残りの水酸化ナトリウム(9596.20kmol/h)が煙道ガスを吸収するために使用される。アルカリ塩素法から得られた水素をガス洗浄後の浄化合成ガスと混合して、合成ガス中の水素/炭素比を調整し、フィッシャー・トロプシュ合成のための供給ガスとして混合ガスを使用し、アルカリ塩素法から得られた塩素を液体塩素に変換して販売する。ガス洗浄後の浄化合成ガス中のH
2含有量(モル%)は52.44%であり、水素調整後のフィッシャー・トロプシュ合成用供給ガス中のH
2含有量(モル%)は63.61%である。
【0044】
CO
2吸収率は99%に達し、フィッシャー・トロプシュ合成のための供給ガス中のCO/H
2は1:1.9である。
【実施例4】
【0045】
常圧バイオマスガス化炉が使用される。バイオマスをガス化原料とし、空気を燃焼改良剤として使用し、合成ガスの流量を8200kmol/hとし、ドライベースでの合成ガスの組成(モル%)は、CO:23.28%、H
2:8.65%、CO
2:16.82%、N
2:50.19%、Ar:0.65%、その他の不純物ガス:0.41%である。
【0046】
図2を参照する工程は次のとおりである。アルカリ塩素法における原料NaCl溶液の流量は5454.81kmol/hに制御され、そこから得られる水酸化ナトリウム溶液を用いて吸着脱炭によりCO
2を吸収する。本工程では、2759.14kmol/hの水酸化ナトリウム溶液が消費され、脱炭工程では圧力スイング吸着脱炭が利用され、残りの水酸化ナトリウム(2695.67kmol/h)が煙道ガスを吸収するために使用される。アルカリ塩素法から得られた水素を脱炭後の浄化合成ガスと混合して、合成ガス中の水素/炭素比を調整し、フィッシャー・トロプシュ合成のための供給ガスとして混合ガスを使用し、アルカリ塩素法から得られた塩素を液体塩素に変換して販売する。脱炭後の浄化合成ガス中のH
2含有量(モル%)は10.4%であり、水素調整後のフィッシャー・トロプシュ合成用供給ガス中のH
2含有量(モル%)は35.99%である。
【0047】
CO
2吸収率は99%に達し、フィッシャー・トロプシュ合成のための供給ガス中のCO/H
2は1:1.8である。
【実施例5】
【0048】
常圧バイオマスガス化炉が使用される。バイオマスをガス化原料とし、空気を燃焼改良剤として使用し、合成ガスの流量を8200kmol/hとし、ドライベースでの合成ガスの組成(モル%)は、CO:48.10%、H
2:23.29%、CO
2:20.84%、N
2:3.56%、その他の不純物ガス:4.20%である。
【0049】
図2を参照する工程は次のとおりである。アルカリ塩素法における原料NaCl溶液の流量は10380.08kmol/hに制御され、そこから得られる水酸化ナトリウム溶液を用いて吸着脱炭によりCO
2を吸収する。本工程では、1708.88kmol/hの水酸化ナトリウム溶液が消費され、脱炭工程では圧力スイング吸着脱炭が利用され、残りの水酸化ナトリウム(8671.2kmol/h)が煙道ガスを吸収するために使用される。アルカリ塩素法から得られた水素を脱炭後の浄化合成ガスと混合して、合成ガス中の水素/炭素比を調整し、フィッシャー・トロプシュ合成のための供給ガスとして混合ガスを使用し、アルカリ塩素法から得られた塩素を液体塩素に変換して販売する。脱炭後の浄化合成ガス中のH
2含有量(モル%)は29.43%であり、水素調整後のフィッシャー・トロプシュ合成用供給ガス中のH
2含有量(モル%)は60.78%である。
【0050】
CO
2吸収率は99%に達し、フィッシャー・トロプシュ合成のための供給ガス中のCO/H
2は1:1.8である。
【実施例6】
【0051】
テキサコガス化炉が使用される。ガス化原料としての粗粒石炭と、酸化剤としての99%(モル%)の酸素を水と混合して水石炭スラリーを生成し、これをガス化炉に入れ、合成ガスの流量は23622kmol/hであり、ドライベースでの合成ガスの組成(モル%)は、CO:40.28%、H
2:48.28%、CO
2:7.94%、N
2:3.1%、その他の不純物ガス:0.40%である。
【0052】
図2を参照する工程は次のとおりである。アルカリ塩素法における原料NaCl溶液の流量は13347.37kmol/ hに制御され、そこから得られる水酸化ナトリウム溶液を用いて吸着脱炭によりCO
2を吸収する。本工程では、3751.17kmol/hの水酸化ナトリウム溶液が消費され、脱炭工程では低温メタノール洗浄脱炭が利用され、残りの水酸化ナトリウム(9596.20 kmol/h)が煙道ガスを吸収するために使用される。アルカリ塩素法から得られた水素をガス洗浄後の浄化合成ガスと混合して、合成ガス中の水素/炭素比を調整し、フィッシャー・トロプシュ合成のための供給ガスとして混合ガスを使用し、アルカリ塩素法から得られた塩素を液体塩素に変換して販売する。脱炭後の浄化合成ガス中のH
2含有量(モル%)は52.44%であり、水素調整後のフィッシャー・トロプシュ合成用供給ガス中のH
2含有量(モル%)は63.61%である。
【0053】
CO
2吸収率は99%に達し、フィッシャー・トロプシュ合成のための供給ガス中のCO/H
2は1:1.9である。
【符号の説明】
【0054】
1 ガス化装置
1−1 合成ガス出口端
1−2 原料入口
1−3 酸化剤入口
1−4 水入口
2 アルカリ塩素法電解槽
2−1 水素出口
2−2 苛性ソーダ溶液出口
2−3 塩素出口
2−4 飽和NaCl溶液入口
3 第1ガス洗浄装置
3−1 ガス入口
3−2 ガス出口
3−3 洗浄液入口
3−4 副生成物出口
4 フィッシャー・トロプシュ合成反応器
4−1 供給ガス入口
4−2 合成生成物出口
4−3 反応水排出物出口
4−4 テールガス出口
5 第2ガス洗浄装置
5−1 ガス入口
5−2 ガス出口
5−3 洗浄液入口
6 脱炭装置
6−1 粗合成ガス入口
6−2 二酸化炭素出口
6−3 浄化合成ガス出口
7 管
8 管