特許第6574499号(P6574499)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6574499
(24)【登録日】2019年8月23日
(45)【発行日】2019年9月11日
(54)【発明の名称】セルフタンニング化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/35 20060101AFI20190902BHJP
   A61K 8/39 20060101ALI20190902BHJP
   A61K 8/365 20060101ALI20190902BHJP
   A61K 8/60 20060101ALI20190902BHJP
   A61Q 19/04 20060101ALI20190902BHJP
【FI】
   A61K8/35
   A61K8/39
   A61K8/365
   A61K8/60
   A61Q19/04
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-18450(P2018-18450)
(22)【出願日】2018年2月5日
(65)【公開番号】特開2019-135221(P2019-135221A)
(43)【公開日】2019年8月15日
【審査請求日】2018年2月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000114
【氏名又は名称】株式会社伊勢半
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮部 卓
【審査官】 松本 直子
(56)【参考文献】
【文献】 特表平09−510971(JP,A)
【文献】 特開2015−028000(JP,A)
【文献】 特開2002−338448(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/017921(WO,A1)
【文献】 米国特許第06113888(US,A)
【文献】 特表2013−537921(JP,A)
【文献】 特表2013−543033(JP,A)
【文献】 特開2013−216583(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0089484(US,A1)
【文献】 Brilliant Bronze Self Tanning Emulsion,Mintel GNPD,2004年 6月
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
JSTPlus(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/COSMET(STN)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ジヒドロキシアセトン、(B)多価アルコール、及び(C)pH調整剤、を含有するセルフタンニング化粧料であって、成分(B)が、メチルグルセス−10及びトリプロピレングリコールから選択される1種又は2種を含有する、セルフタンニング化粧料。
【請求項2】
(D)一価アルコール、を含有する、請求項1に記載のセルフタンニング化粧料。
【請求項3】
成分(D)がエタノールを含有する、請求項に記載のセルフタンニング化粧料。
【請求項4】
成分(C)がクエン酸及び/又はその塩を含有する、請求項1〜のいずれか1項に記載のセルフタンニング化粧料。
【請求項5】
pHが4以下である、請求項1〜のいずれか1項に記載のセルフタンニング化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルフタンニング(日焼け様)化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
セルフタンニング(日焼け様)化粧料は、日焼けした肌のように褐色肌を演出することができる化粧料である。
【0003】
ジヒドロキシアセトン(DHA)などのα−ヒドロキシアルデヒド又はケトンを肌に塗布すると、角質層中のアミノ酸とメイラード反応を生じ、褐色化合物を肌に形成し、日焼けした肌を演出できることが知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、セルフタンニング化粧料の主成分となるDHAは非常に反応性が高く、熱や光による分解により、ホルムアルデヒドが形成されやすい。さらには、DHAからは化粧料自体の黄変(褐変)につながるメチルグリオキサールも生成されやすい。また、DHAは塗布後の染着速度や染着強度も低く、さらには塗り斑も生じやすい。これらの理由により、化粧料としての安定性と実用性を確保することが非常に困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、本発明者が鋭意検討した結果、(A)ジヒドロキシアセトン、(B)多価アルコール、及び(C)pH調整剤、を含有するセルフタンニング化粧料であって、成分(B)が、メチルグルセス−10、トリプロピレングリコール、ジプロピレングリコール、及びブチレングリコールから選択される1種又は2種以上からなる、セルフタンニング化粧料が染着速度又は強度に優れることが見出された。
【0006】
すなわち、本発明は、下記の[発明1]〜[発明6]に関する。
[発明1]
(A)ジヒドロキシアセトン、(B)多価アルコール、及び(C)pH調整剤、を含有するセルフタンニング化粧料であって、成分(B)が、メチルグルセス−10、トリプロピレングリコール、ジプロピレングリコール、及びブチレングリコールから選択される1種又は2種以上を含有する、セルフタンニング化粧料。
[発明2]
成分(B)が、メチルグルセス−10及びトリプロピレングリコールから選択される1種又は2種を含有する、発明1に記載のセルフタンニング化粧料。
[発明3]
(D)一価アルコール、を含有する、発明1又は2に記載のセルフタンニング化粧料。
[発明4]
成分(D)がエタノールを含有する、発明3に記載のセルフタンニング化粧料。
[発明5]
成分(C)がクエン酸及び/又はその塩を含有する、発明1〜4のいずれか1に記載のセルフタンニング化粧料。
[発明6]
pHが4以下である、発明1〜5のいずれか1に記載のセルフタンニング化粧料。
【発明の効果】
【0007】
本発明は染着速度又は強度に優れる。一態様において、本発明はホルムアルデヒドの発生を抑制する。一態様において、本発明は黄変を抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−316216号公報
【特許文献2】特開2005−145860号公報
【特許文献3】特表2007−526216号公報
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】試験例1の結果を示すグラフである。
図2】試験例3の結果を示すグラフである。
図3】試験例4の結果を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<ジヒドロキシアセトン>
本発明のセルフタンニング化粧料は、日焼け様肌形成効果を奏する主成分(セルフタンニング剤)としてジヒドロキシアセトンを含有する。セルフタンニング剤として他のα−ヒドロキシアルデヒド又はケトンを追加で含有してもよい。
本発明で使用されるジヒドロキシアセトンは合成してもよいし市販品を使用してもよい。
ジヒドロキシアセトンの含有量は日焼け様肌を形成できる量であれば特に限定されない。例えば、0.5〜10質量%とすることができ、好ましくは1〜8質量%、より好ましくは3〜5質量%である。
【0011】
<多価アルコール>
本発明のセルフタンニング化粧料は多価アルコールを含有する。具体的には、メチルグルセス−10、トリプロピレングリコール、ジプロピレングリコール、及びブチレングリコールから選択される1種又は2種以上からなる。
多価アルコールは合成してもよいし市販品を使用してもよい。
多価アルコールの含有量は特に限定されない。例えば、0.1〜30質量%とすることができ、好ましくは0.5〜20質量%、より好ましくは1〜10質量%である。
【0012】
<pH調整剤>
本発明のセルフタンニング化粧料はpH調整剤を含有する。pH調整剤は特に限定されないが、酸性を保つpH調整剤が好ましい。化粧料を酸性に保つことにより化粧料の長期保存による黄変を効果的に抑制できる。pH調整剤として限定されないが、好ましくは有機酸及び/又はその塩である。有機酸として、例えばクエン酸、酢酸、乳酸、リンゴ酸等が挙げられる。その塩のカチオンとしては、例えばナトリウム、カリウム、アンモニウム等が挙げられる。好ましくはクエン酸及び/又はそのナトリウム塩を配合できる。pH調整剤は合成してもよいし市販品を使用してもよい。
本発明のセルフタンニング化粧料のpHは特に限定されないが、好ましくは7以下、より好ましくは6.1以下、さらに好ましくは4.8以下、さらに一層好ましくは4以下である。
【0013】
<一価アルコール>
本発明のセルフタンニング化粧料は一価アルコールを含有してもよい。一価アルコールを含有することにより、本発明の染着効果を高めることができる。一価アルコールは特に限定されない。例えば、エタノール、プロパノール、ブタノール(C2〜4一価アルコール)の1種又は2種以上を配合できる。好ましくはエタノールを配合できる。
一価アルコールは合成してもよいし市販品を使用してもよい。
一価アルコールの含有量は特に限定されない。例えば、0.1〜20質量%とすることができ、好ましくは0.5〜10質量%、より好ましくは1〜5質量%である。
【0014】
<形状、粘度、増粘剤>
本発明のセルフタンニング化粧料の形状は特に限定されないが、好ましくは乳化型又は水性(透明)の、ローション状又はジェル状である。その形状にするための化粧料原料を適宜配合できる。
粘度を調整する方法は特に限定されない、例えば水、水溶性油剤、増粘剤、などを含有してもよい。増粘剤は特に限定されない。例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースステアロキシエーテル、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ペンチレングリコール、ジステアルジモニウムヘクトライトなどを配合できる。好ましくはヒドロキシプロピルメチルセルロースを配合できる。
増粘剤は合成してもよいし市販品を使用してもよい。
増粘剤の含有量は特に限定されない。例えば、0.01〜20質量%とすることができ、好ましくは0.05〜10質量%、より好ましくは0.1〜3質量%である。
本発明のセルフタンニング化粧料の粘度も特に限定されない。例えば、100〜30000mPa・sとすることができ、好ましくは500〜6000mPa・s、より好ましくは1000〜3000mPa・sである。粘度を3000mPa・s以下にすることにより、塗り斑をなくすことができる。また、粘度を1000mPa・s以上とすることにより、皮膚への製剤のとどまりが良好となる。
【0015】
<他成分>
本発明のセルフタンニング化粧料は、本発明の効果を損ねない限り、更に公知の化粧料原料であって配合可能であると当業者が通常考えるものを一種又は二種以上含有してもよい。例えば、揮発性油剤、界面活性剤、ゲル化剤、抗ケーキング剤、乳化剤、分散化剤、安定剤、保湿剤、固形化剤、結合剤、増量剤、不透明化剤、滑沢剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、抗菌剤、防腐剤、スキンケア剤、抗炎症剤、潤滑剤、収斂剤、エモリエント剤、ツヤ出し剤、光沢剤、消泡剤、撥水性被膜剤、保護剤等が挙げられる。これら2つ以上の用途・効果が重複しているものも使用できる。
【実施例】
【0016】
以下、具体例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、これらの実施例は本発明の技術的範囲を何ら限定するものではない。当業者は要求される染着速度又は強度、経時安定性、その他の条件に応じて適宜配合を調整できる。なお、以下の例における配合量(含有量)は全て質量%である。
【0017】
<試験例1:多価アルコールの比較>
例1〜8
1)表1にしたがって各成分を混合し、例1〜8用のA液を調製した。
2)表2にしたがってB液を調製した(pH=3.998、ガラス電極式水素イオン濃度指示計型式F-55(堀場製作所製)で測定)。
3)0.5mLのA液及び0.5mLのB液を混合した。
4)混合から48時間経過後に440nmの吸光度を測定した(U-3310形分光光度計(日立製作所製))。なお、波長440nmの測定によりアミノカルボニル反応の進行度合いの指標となり(駒沢女子短期大学 研究紀要第37号 P.17〜22 2004)、すなわちセルフタンニング効果の指標となる。
測定の結果、例2(ジプロピレングリコール)、例3(ブチレングリコール)、例4(トリプロピレングリコール)、例6(ジグリセリン)、及び例7(メチルグルセス−10)において、例8(多価アルコールなし)よりも良好な染着効果が奏された(表3及び図1)。なかでも、例3及び4においてより良好な染着効果が奏され、例2において優れた染着効果が奏され、例7において顕著に優れた染着効果が奏された。
なお、pH7付近で同様の実験を行っても、種々の多価アルコールで良好な染着効果が奏され、なかでも、プロピレングリコール、ブチレングリコール、及びトリプロピレングリコールを用いた試料で特に良好な染着効果を奏された。
【0018】
【表1】
【0019】
【表2】
【0020】
【表3】
【0021】
<試験例2:皮膚への塗布>
例9
1)表4にしたがって各成分を混合し、例9の試料を作製した。
2)塗布前に分光測色計(CM-700d・600d(コニカミノルタ))を用いて、成人男性の前腕部の肌色を測色した。
3)同被験者の前腕部2cm×2cmにサンプル5mg/cmをスパチュラで塗布し塗布1時間後、2時間後、4時間後、6時間後、及び8時間後に拭き取った。
4)翌日、複数のモニターによる目視及び測色計を用いた染着度合いの評価を行った。
目視の評価の結果、時間の経過にしたがって肌の染着度合いが強まっていったことが確認された。
また、測色計を用いた染着度合いの評価でも、時間の経過にしたがって肌の染着度合いが強まっていったことが確認された(表5)。
【0022】
【表4】
【0023】
【表5】
【0024】
<試験例3:一価アルコールの添加>
例10〜14
一価アルコールを配合しなかった試料(例10:MG−10E(6%)、例11:TPG(6%)、例12:MG−10E(2%)及びTPG(2%))、多価アルコールを配合しなかった試料(例13:EtOH(6%))、及び多価アルコールと一価アルコールの両方を配合した試料(例14:MG−10E(2%)及びEtOH(2%))を表6にしたがって調製し、試験例2と同様に評価し、例10〜14を比較した(表7〜11、図2)。その結果、試験例1の結果とは異なり、例10(MG−10E(6%))は例11(TPG(6%))に比べ弱い染着となった。一方、例11(TPG(6%))では例13(EtOH(6%))よりも強く染着されたにもかかわらず、例12(MG−10E(2%)及びTPG(2%))と例14(MG−10E(2%)及びEtOH(2%))を比べると、EtOHが配合された例14の方が強く染着された。
また、多価アルコールとしてブチレングリコールのみを配合した試料、ジプロピレングリコールのみを配合した試料等でも皮膚への染着は確認された。
【0025】
【表6】
【0026】
【表7】
【0027】
【表8】
【0028】
【表9】
【0029】
【表10】
【0030】
【表11】
【0031】
<試験例4:pHと黄変>
例15〜19
1)表12にしたがって各成分を混合し、例15〜19の試料を作製した。
2)作製時のpHを測定した。
3)40℃で110日間保管した後の試料を観察したところ、例15(pH=3.2)及び例16(pH=3.7)は試料作製時の白色をほぼ保っていた。一方、例17(pH=4.8)及び例18(pH=6.1)はやや黄変しており、例19(pH=7.3)はさらに黄変していた(複数のモニターによる評価)(表12、図3)。図3は、左から順に例15、16、17、18、及び19の上記保管後の外観を示す。
【0032】
【表12】
【0033】
<試験例5:pHとホルムアルデヒド抑制>
例20〜24
1)試験例4の例15〜19の各試料約0.20gを量り、各々に少量のアセトニトリル/水混液(1:1)を加え、よく分散させた。
2)ここに、2,4−DNPH塩酸塩溶液0.4mLを加え撹拌し、アセトニトリル/水混液(1:1)を加えて正確に10mLとした。
3)最低30分静置した後、2mol/Lの水酸化ナトリウム試液を0.7mL加え、これを0.45μmメンブランフィルターでろ過し、ろ液を試料溶液とした(例20〜24)。試料溶液を密封容器に入れ、すぐに封をし、25℃で21日間保管した。
4)その後、容器内の試料溶液及び標準溶液を20.0μLずつ量り、液体クロマトグラフィーによりホルムアルデヒド濃度を測定した(超高速液体クロマトグラフNexera XR(島津製作所))(表13)。
その結果、例24(原料の例19試料のpH=7.3)及び例23(原料の例18試料のpH=6.1)に比べて、例22(原料の例17試料のpH=4.8)及び例21(原料の例16試料のpH=3.7)ではホルムアルデヒドの発生を抑制でき、例20(原料の例15試料のpH=3.2)ではホルムアルデヒドの発生をさらに抑制できた。
【0034】
【表13】
図1
図2
図3