【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、有機性廃棄物燃焼手段からの高温排ガスを洗浄する排ガス洗浄手段から排出される洗浄排水を低温熱源とし、当該排ガス洗浄手段の前段において、前記有機性廃棄物燃焼手段からの高温排ガスと熱交換した高温空気を高温熱源として利用する複数熱源発電装置において、当該発電装置に持ち込む前記低熱源の熱量と前記高熱源の熱量の総量が一定の場合、発電量を最大とするためには、前記低温熱源と高温熱源の熱源分配比率を調節し、最適な熱源配分比率とすることが重要であることを突き止めた。ここで、最適な熱源配分とは、タービン入口蒸気の流量と過熱度のバランスが取れた状態における低温熱源と高温熱源の熱源配分比率をいう。
【0009】
上記複数熱源発電装置において、低温熱源はタービン入口蒸気の流量を、高温熱源は蒸気の過熱度を決める要素である。そして、低温熱源と高温熱源の熱量配分は、有機性廃棄物燃焼手段に投入する有機性廃棄物の含水率、及び有機性廃棄物の燃焼手段から排出される高温排ガスが前記排ガス洗浄手段に到達するときの排ガス温度で決まる。
【0010】
すなわち、前記有機性廃棄物燃焼手段に投入する有機性廃棄物の含水率が大きければ、前記有機性廃棄物燃焼手段から排出される排ガス中の水蒸気量が多くなり、これらの水蒸気は前記排ガス洗浄手段で凝縮し洗浄排水として排出されるので低温熱源の量が多くなる。また、有機性廃棄物の燃焼炉から排出される高温排ガスと熱交換する流体、例えば燃焼用空気、流動焼却炉における流動用空気又は白煙防止用空気の流量を増加させれば、高温空気量が増加して高温熱源の熱量が増加する一方、前記排ガス洗浄手段に到達する排ガス温度は低下するので低熱源の熱量は減少し、逆に、前記燃焼用空気又は白煙防止用空気の流量を減少させれば、高温空気量が減少して高温熱源の熱量が減少する一方、前記排ガス洗浄手段に到達する排ガス温度は上昇するので低熱源の熱量は増大する。
【0011】
本発明では、排ガス洗浄手段に到達するときの排ガス温度を調整するか、及び/又は、有機性廃棄物燃焼手段に投入する有機性廃棄物の含水率を調整することによって、複数熱源発電装置に持ち込む高温熱源と低温熱源の分配を最適化し、複数熱源発電装置の発電量が最大となるようにしている。
【0012】
本発明の制御は以下のような原理に基づいている。
(i)複数熱源発電装置に用いられるエネルギーは、すべて燃焼排ガスに含まれる熱量からである。
(ii)燃焼排ガスに含まれる熱量は2つ部分からなる。
燃焼排ガスに含まれる顕熱と、燃焼排ガス中の水蒸気に含まれる潜熱である。
(iii)燃焼排ガスに含まれる熱量が一定で、廃棄物の含水率が高い場合、水分が蒸発する際に水蒸気に使用される熱(潜熱)が多くなるため、燃焼排ガスに含まれる顕熱が少なくなる廃棄物の含水率が低い場合、その逆である。
(iv)燃焼排ガスに含まれる顕熱は、複数熱源発電装置の高温熱源、又は低温熱源として利用可能である。
(v)燃焼排ガス中の水蒸気に含まれる潜熱は、複数熱源発電装置の低温熱源としてしか利用できない。
(vi)複数熱源発電装置の発電量は、タービン入口蒸気の過熱度と流量によって決められる。
(vii)複数熱源発電装置のタービン入口蒸気の過熱度は高温熱源によって決められ、タービン入口蒸気の流量は低温熱源によって決められる。
(viii)タービン入口蒸気の過熱度の複数熱源発電装置の発電量への影響は、タービン入口蒸気の流量の複数熱源発電装置の発電量への影響より大きい。このため、高温熱源と低温熱源の分配制御において、高温熱源のほうが優先的に確保し、余った熱量があれば、低温熱源へ移行させ、低温熱源を増やす。
【0013】
本発明の実施態様は、以下のとおりである。
(1)有機性廃棄物の燃焼手段、該燃焼手段からの排ガスを洗浄する排ガス洗浄手段、並びに該排ガス洗浄手段からの洗浄排水から回収される低温熱源及び該排ガス洗浄手段の上流側の排ガスから回収される高温熱源を利用する複数熱源発電装置、を備えた有機性廃棄物燃焼プラントにおいて、タービン前後の作動流体の有効熱落差が最大となるよう、前記排ガス洗浄手段に導入される排ガス温度を調整するか、及び/又は、前記燃焼手段の前段に備えられた有機性廃棄物の低含水化手段の含水率を調整する、ことを特徴とする有機性廃棄物燃焼プラントの制御方法。
(2)排ガス洗浄手段に導入される排ガス温度として、該排ガス洗浄手段の直前に設けられた乾式除塵装置に導入される排ガス温度を採用する(1)に記載の有機性廃棄物燃焼プラントの制御方法。
(3)高温熱源として排ガス洗浄手段の上流側の排ガスの排熱との熱交換によって得られた白煙防止用高温空気を利用する(1)又は(2)に記載の有機性廃棄物燃焼プラントの制御方法。
(4)有機性廃棄物の燃焼手段、該燃焼手段からの排ガスを洗浄する排ガス洗浄手段、該排ガス洗浄手段からの洗浄排水から回収される低温熱源及び該排ガス洗浄手段の上流側の排ガスから回収される高温熱源を利用する複数熱源発電装置、タービン前後の作動流体の有効熱落差測定手段、前記複数熱源発電装置における蒸気過熱器出口空気の温度測定手段、前記有効熱落差測定手段の測定値に基づいて、排ガス洗浄手段に導入される排ガス温度を調整する制御手段、及び/又は、低含水化手段における含水率を調整する制御手段、を備えた有機性廃棄物燃焼プラント。
(5)排ガス洗浄手段に導入される排ガス温度を調整する制御手段、及び/又は、低含水化手段における含水率を調整する制御手段が、前記有効熱落差測定手段の測定値及び前記蒸気過熱器出口空気の温度測定手段の測定値に基づいて制御する手段である(4)の有機性廃棄物燃焼プラント。
(6)排ガス洗浄手段に導入される排ガス温度として、該排ガス洗浄手段の直前に設けられた乾式除塵装置に導入される排ガス温度を採用する(4)又は(5)の有機性廃棄物燃焼プラント。
(7)高温熱源として排ガス洗浄手段の上流側の排ガスの排熱との熱交換によって得られた白煙防止用高温空気を利用する(4)ないし(6)のいずれかの有機性廃棄物燃焼プラント。
【0014】
本発明でいう「有機性廃棄物」とは、下水処理施設からの汚泥、家庭からの生活廃棄物、製材所や木材加工業から排出される木質チップなどの可燃性産業廃棄物や、レストランなどの飲食産業や食品加工業などからの廃棄物などであり、有機物の含有量が多い廃棄物をいう。
【0015】
本発明でいう「低含水化手段」とは、有機性廃棄物の含水量を低減できるものであれば種類を問わず、公知の脱水機や乾燥機を用いることができる。一般的には、凝集剤と脱水機を組み合わせて低含水化することが多い。また、もともと含水率が低く、自燃可能な有機性廃棄物の場合は、低含水化手段を省略することも可能である。
【0016】
本発明でいう「有機性廃棄物の燃焼手段」には、有機性廃棄物の安定化や減量化のための焼却炉やガス化炉が含まれる。例えば、有機性廃棄物の中でも汚泥のように含水率が高いものは流動焼却炉が用いられることが多く、また、近年、様々な形態の有機性廃棄物を比較的均一なガス(H2,CO,CO2など)と炭化物に分解するガス化炉も実用化されている。何れの排ガスも粉塵や有害ガスを含むため、除塵やガス洗浄処理が不可欠である。
【0017】
本発明でいう「排ガス洗浄手段」とは、排ガス中の有害ガスを洗浄水との接触により吸収除去するもので、スプレー、棚段、充填層、あるいはこれらを組み合わせた、公知の気液接触手段が利用できる。
【0018】
本発明でいう「複数熱源発電装置」は、タービンを駆動させる作動流体を気化蒸発させるための比較的低温の熱源と、気化された作動流体の過熱度を高める比較的高温の熱源を利用して発電する装置をいうが、夫々の熱源として2以上の異なる温度の熱源を利用することができる。
本発明では、排ガス中の水分が冷却されて生じた凝縮水や、排ガスの洗浄排水を前記比較的低温の熱源として利用することから、前記作動流体としてはアンモニアなどの低沸点流体を利用することが好ましい。
【0019】
本発明でいう「乾式除塵装置」とは、バクフィルタやセラミックフィルタなどの乾式の固気分離手段をいうが、耐熱性と分離効率の点からセラミックフィルタ又は冷却塔とバグフィルタとの組み合わせが好適に使用できる。
【0020】
本発明でいう「有効熱落差」とは、タービン前後の断熱熱落差にタービン効率をかけたものである。また、タービン前部での温度変動に比べタービン後部での温度変動は小さくタービン入口での蒸気温度を測定すれば、断熱熱落差を推定することができるので、本発明でいう「タービン前後の作動流体の有効熱落差の測定手段」とは、タービン入口の温度の測定手段を含む。